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線画命名課題の連想関連によるプライミング効果

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Academic year: 2021

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人は時の流れの中に存在し,絶え間なく刺激にさら される。人の適応過程は周囲の刺激とどのように向き 合い,それらを受けとめるかの問題として捉え得る側 面を有する。従って,継時的な刺激処理場面は適応の モデル事態として扱い得る。 刺激処理は,常に同じように行われるのではない。 先行経験によって刺激処理は促進あるいは抑制され る。先行刺激(プライム)と後続刺激(ターゲット) の刺激連鎖条件(音韻,形態,意味など)によって刺 激処理が影響を受けるプライミング効果は,その代表 的な例である1,2,3)。 意味プライミングは,意味記憶が刺激処理に影響を 与え出現すると考えられてきた。意味記憶とは,長期 記憶に分類される知識貯蔵の領域であり,ネットワー ク構造が想定される。プライミング効果は,概念間を 結ぶネットワークを通じて活性化の拡散がなされ生じ ると説明されてきた4,5)。 意味プライミング研究では,カテゴリ情報(例.動 物,身体部位,家具など)の有効性について論じられ てきた。何らかの基準に従って,無数に存在する事 物・事象を類似するものとしてまとめあげたものがカ テゴリである。カテゴリとは区分であり,知識の貯蔵 と深く関わる。高度な情報処理を実行するためには, 情報を相互に関連させ整理し貯蔵することが必要とな る。その意味で,カテゴリ情報は有益といえる。しか し,長期記憶の利用にカテゴリ情報の使用が不可欠と いうことではない。課題状況に応じ,ネットワーク上 の必要な情報を利用して刺激処理は行われると考えら れる6,7,8)。 吉川は,連続する刺激のカテゴリが一致するときに プライミング効果が生じるかについて,カテゴリ判断 と命名の2種の課題を用いて検討した9)。その結果, カテゴリ一致条件は,カテゴリ判断が要求される課題 においてのみ,プライミング効果を生じさせると報告 した。しかし,同一カテゴリ内であっても,刺激間の 関連強度には差があると考えられる。川口はカテゴリ 名をプライム,事例をターゲットとして用いた場合, 事例の典型性の高低によってプライミング効果に差が 生 じ る こ と を 見 出 し た10)。 Hines, Czerwinski, Sawyer, & Dwyerはプライム,ターゲットにカテゴリ

線画命名課題の連想関連によるプライミング効果

村 田 祥 子

(2008年9月30日受付,2008年12月8日受理) 要旨:関連する先行刺激が後続刺激の処理を促進することは知られている。本論文では線画命 名課題を用い,連想関連によって生じるプライミング効果について,被験者に対してできるか ぎり迅速に同定する(線画命名)ことを要求する事態で検討した。26枚の線画をターゲットと して選択し,各ターゲットについて4つのプライム画を用意した。実験では刺激を対提示し, プライムに続いてターゲットを提示した。反応時間はターゲット提示時点から測定した。命名 課題後,被験者は各対の連想関連強度を1から4で評価した。また,プライムとターゲットが 同じカテゴリに属しているかいないか判断した。3タイプのプライムとターゲット対に分類さ れ,それらは関連(カテゴリ同一),関連(非カテゴリ同一),非関連条件であった。関連対 (カテゴリ同一,非カテゴリ同一)の命名反応時間は非関連対よりも速かった。より連想関連 強度が高いプライム画が命名潜時に効果があった。プライミングにおける意味カテゴリの役割 は限られたものであった。これらの結果は,線画命名課題でのプライミング効果は連想関係と いった基礎的関連の働きによって生じる可能性を示した。 キーワード:線画命名課題,プライミング,カテゴリ,命名潜時,連想関連 群馬大学医学部保健学科

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内の連想度の高い事例と低い事例を用いて実験を行 い,プライムに連想度の高い事例を用いた際にプライ ミング効果が生じることを確認した11)。 以上の先行研究は,カテゴリ情報のプライミング効 果に対する有効性は限定的であることを示唆してい る。さらに,カテゴリ情報よりも刺激間の連想度の高 低がプライミング効果には重要な要因となる可能性を 示している。 表象の記述レベルについては,基礎レベル(例.机), 下位レベル(例.居間の机),上位レベル(例.家具) の三つに分類することが提案されてきた12)。カテゴ リ情報は,上位レベルと密接に関わる概念ネットワー クの要素のひとつにすぎない。そのように考えるなら ば,プライミング効果に対するカテゴリ情報の限定的 な働きを説明し得る。 本論文では,課題を基礎レベルの線画命名課題に設 定し,連想関連強度とプライミング効果との関係につ いて検討する。仮説は以下のとおりである。プライミ ング効果は2刺激間の連想関連強度を反映して出現す る。連想関連強度が高まるに従い刺激処理に要する時 間は短縮する。また,カテゴリが一致しない場合であ っても,連想関連強度が高い場合にはプライミング効 果は出現する。 実験 対象と方法 [被験者]20歳から27歳の大学生11名(男性8名,女 性3名)が実験に参加した。心理学実験参加希望者を 募り自主的に申し出た学生を被験者とした。実験開始 前に実験の方法について説明し,参加の同意を得て署 名を求めた。視力は矯正視力を含め0.8以上であり, 課題遂行上,支障はなかった。 [材料]線画図形は「記憶用 picture 刺激の標準化」13) に基づいて作成し,動物,乗り物,身体部位,家具, 食べ物,衣服カテゴリなどに属する名詞を用いた。 ターゲット画として命名時間の安定している26枚の 線画を選択した。事前に行った連想関連語調査(大学 生23名を対象として100単語について実施)に従い, 各ターゲット画と関連強度の高かった名詞を2つ選択 し52対を作成した(関連条件:related 条件)。さらに, 他のターゲット画に用いたプライム画を組み替えて52 対を作成した(非関連条件:unrelated 条件)。 各刺激画は黒地に白の線画像とした。線画刺激は視 角にして縦4°×横4°の大きさの四角形内に提示し た。 [装置]時間制御はパーソナルコンピュータ(NEC PC-9801-vm4)によって行った。また,刺激は付属の 14インチの CRT(640×400ドット)で提示した。 CRT 画面までの距離は70cm に設定した。反応時間の 計測は,命名までの反応時間を音声keyによってタイ マ(竹井機器製)で測定した。 [手続き]練習試行を26回行った後,本試行を行った。 本試行は4系列とし,各系列26試行とした。各系列間 に1分間の休憩をおいた。各試行は CRT 上に「キー を押してください」の文字が提示された後,被験者が 与えられたスタートキーを任意に押すことによって開 始された。スタートキーを押してから,1010ms 後に プライム画(持続時間100ms),刺激onset間隔690ms でターゲット画(持続時間200ms)を提示した。刺激 対の提示間隔は,最も短い場合を6s とし,被験者に よって決定された。被験者は,ターゲット画に対して 迅速に命名し口頭により報告することが求められた。 線画命名課題終了後,質問紙を用いて命名課題で用 いたプライムとターゲットの各対について連想関連強 度の評価とカテゴリ判断を求めた。連想関連強度評価 は4段階で行い、関連強度が最も高い場合を1とし最 も低い場合を4とした。また,カテゴリ判断は同一カ テゴリであるかについて Yes,No で判断した。 結果 命名を誤った試行と標準偏差の2倍以上の反応時間 を示した試行を誤答とした。誤答試行を除いた各試行 を分析の対象とした。 命名課題後の連想関連強度評価について各対の平均 を求めた後,related,unrelated 条件別に平均を求め た。related 条件の各対の平均評価は2以下であった。 また,unrelated 条件の各対の平均評価は2.4以上であ った。 各対について,被験者全員がプライム,ターゲット が同一カテゴリに属すると判断した対をカテゴリ同一 条件(same category :SC)とし,それ以外の対を非 カテゴリ同一条件(different category :DC)に分類し た。related 条件対の内42対が SC 条件,10対が DC 条件と判断された。また,全ての unrelated 条件52対 が DC 条件と判断された。 連想関連強度評価の平均は related(SC)条件1.5, related(DC)条件1.7, unrelated 条件3.5であった。プ ライム条件について分散分析を行った結果,その差は 統計的に有意であった(F(2,20)=11.76(p<0.05)。 Tukey’s HSD 検定によって多重比較を行った結果, unrelated 条件と related(SC)条件,unrelated 条件 と related(DC)条件との間にそれぞれ差が認められ

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た(p<0.05)。 プライム条件ごとに平均反応時間を求めた(Fig. 1)。反応時間は,related(SC)条件550ms, related (DC)条件570ms, unrelated 条件622ms の順であった。 プライム条件について分散分析を行った結果,その差 は統計的に有意であった(F(2,20)=22.99(p<0.05))。 Tukey’s HSD検定によって多重比較を行った結果, unrelated 条件と related(SC)条件,unrelated 条件 と related(DC)条件との間にそれぞれ差が認められ た(p<0.05)。 各刺激対の連想関連強度と反応時間は,連想関連強 度が高い場合に反応時間が短縮する傾向を示した (Fig.2)。連想関連強度と反応時間の相関係数は0.6で あり,比較的強い相関関係が認められた。この相関は 統計的に有意であった(df=104,t=7.58,p<0.05) 考察 反応時間を指標とした実験で,連続する刺激の連想 関連強度が線画命名課題に与える影響について検討し た。条件対のカテゴリ判断では,related(SC)条件 に分類された対はrelated(DC)条件よりも多かった。 これは,カテゴリ情報が意味記憶と深く関わることを 再確認させる結果となった。また,連想関連関係とカ テゴリ同一関係とは,重なる部分が存在する。 連想関連強度評価は unrelated 条件とその他2条件 との間には差が認められた。しかし,related(SC) 条件と related(DC)条件との間には差が認められな かった。これは,カテゴリが一致しない場合であって も連想関連が成立することを示している。 刺激間の連想関連強度が高まるに従いターゲット処 理時間が短縮することを見出した。連想関連強度と命 Fig.1 プライム条件別の平均反応時間 Fig.2 各プライム‐ターゲット対の連想関連強度と平均反応時間

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名反応時間との間に相関関係が確認された。また,本 実験の unrelated,related(DC)条件は,ともにDC 条件に分類される。related(DC)条件は,related (SC)条件との間に反応時間の差は認められなかった が,unrelated 条件との間には差が認められた。 Lupker は,カテゴリ内の連想関連強度の高い対で はターゲット処理の促進効果が認められたが,低い対 では促進効果が認められなかったと報告した14)。こ の結果は,カテゴリ情報がプライミング効果を生じさ せるためのひとつの要素にすぎない可能性を示した。 今回の実験結果は,これに加えてプライムとターゲッ トのカテゴリが一致しない場合であっても,連想関連 強度が高いときにはプライミング効果が生じることを 見出した。 連想とは概念の連合に基づき新しい概念を想起する ことである。ひとつの概念はそれに結合した概念を, 個人の経験に基づいて想起させる。それは,概念ネッ トワーク上の結合の存在を意味する15,16)。 カテゴリ情報は概念ネットワークの階層を構築する 要素のひとつにすぎない。表象の三つのレベルを考え るならば,カテゴリ情報は表象の上位レベルに相当す る12)。概念ネットワークでは同一レベルでの結合と 異なるレベルでの結合が同時に存在し,結果的に複層 的なネットワークが形成されている。命名課題におけ るカテゴリ情報は垂直的結合とより深く関わり,一方, 連想関連情報は垂直,水平的結合の双方に関わると予 想される。 プライムによって生じる活性化の伝播は,階層構造 を前提に考える必要がある。ネットワーク上の活性化 は複数の層にわたり,同時に拡散する4)。連想関連強 度は,感覚的結合,意味的結合,情動体験による結合 など,さまざまな質的,量的な生体の有する経験強度 に基づいて決定され,多く曖昧なものをも含む。しか し,曖昧で雑多な情報を含むが故に複数のレベル12) と関わり,ネットワークの広範囲な活性化を可能とす る。 また,プライミング効果に関する発達的研究によれ ば,低年齢時にはカテゴリ関連よりも連想関連がプラ イミング効果を生じさせるのに有効である17)。また, 記憶の群化に関する発達的研究は,年齢がすすむに従 いカテゴリ,系列順序が強く作用する傾向を明らかに している18)。これらの結果は,知識貯蔵過程におい ては先に連想関係が形成され,その後にカテゴリ情報 の利用が可能な状態となることを示唆している。この ような記憶構造の発達的変化は,概念間の結合強度に 反映すると考えられる。成人の記憶において連想関連 による結合がその根幹部分に強固に保持される可能性 は高い。本実験では,線画命名課題において刺激間の 連想関連強度が高まるに従い,プライミング効果が段 階的に生じるという結果を得た。これは,概念ネット ワークの基盤として連想関連が重要な役割を果してい ることを示したものと捉えることができる。 結語 反応時間を指標とし,連続する刺激の連想関連が線 画命名処理過程に与える影響について検討し,連想関 連強度がターゲットの処理速度に段階的に影響を及ぼ すことを見出した。刺激間の連想関連情報は,カテゴ リ情報などとともに個人の概念間ネットワークの構造 を決定する重要な基本要素である可能性を示した。 文献

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Priming effects of associative relationships on picture naming task

Sachiko MURATA

Abstract:Prior presentation of related priming stimuli can facilitate responding to subsequent. This paper investigated priming effects of associative relationships on picture naming task. The effects of priming on picture processing were assessed under conditions in which subjects were required to identify stimuli (name pictures) as rapidly as possible. Twenty‐six pictures were selected as targets and four prime pictures were prepared for each target. In experiment, stimuli were presented in pairs (a prime followed by target). Reaction time was measured from the onset of target picture. After naming task, subjects were asked to rate associative strength of each pair on a scale of 1 to 4, and to decide whether prime and target belong to same category or not. The prime-target pairs were classified into three types: related (SC: same category), related (DC: different category), unrelated. Naming reaction times for target pictures in related pairs (SC and DC) were faster than those in unrelated pairs. Strongly associative related primes were more effective on naming latency than weakly related primes. The role of semantic category in the priming process was somewhat limited. These results were suggested that priming in picture naming task was a function of the most basic relationships like association.

Key words:picture naming task, priming, category, naming latency, associative relationships,

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