オランダ国際家族法立法に関する研究ノート : -婚
姻抵触法および相続抵触法を中心として-著者名(日)
笠原 俊宏
雑誌名
東洋法学
巻
44
号
1
ページ
161-191
発行年
2000-09-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000426/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja︻研究ノート︼
オランダ国際家族法立法に関する研究ノート
ー婚姻抵触法および相続抵触法を中心として
笠
原
俊
宏
東洋法学
六五四三二一
︵参考資料︶ 其の一 其の二 其の三 其の四 目 次 緒言 オランダ国際家族法立法の概観 婚姻抵触法および婚姻抵触法修正法の概要 相続抵触法の概要 オランダ国際家族法立法の特徴 結語 離婚抵触法︵一九八一年︶ 婚姻抵触法︵一九八九年︶ 氏名抵触法︵一九八九年︶ 相続抵触法︵一九九六年︶ 161オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 緒 言 今日、世界的な国際私法条約としてその中心的な役割を担っているのが、ハーグ国際私法会議によって採択さ れた一連の条約であることに異論はないであろう。採択された条約の数、それらの条約の規律事項の範囲、同会 議に参加している国々の数のいずれを取ってみても、群を抜いていることは明白である。近年、いずれかのハー グ国際私法条約が批准された場合は勿論であるが、そうでない場合においても、それによって採られた立場はし ばしば諸国の国内国際私法立法において踏襲されており、同条約が多大な影響力を有していることが看取される。 その意味から、これまで、世界の国際私法はハーグ国際私法条約によって先導されてきたとみられるが、今後も その傾向が続くであろうことが推測される。 オランダがハーグ国際私法会議の本拠が存在する国として、殊の外、それによって採択された条約の批准にお いて積極的であることはよく知られているところである。この小稿において言及される四つのオランダ国際家族 法関連立法の中、一九九〇年一月一日から施行されている﹁婚姻事件における抵触法規定のための一九八九年九 月七日法律﹂︵婚姻抵触法︶は、一九七八年三月一四日の﹁婚姻締結および婚姻の有効性の承認に関するハーグ 条約﹂︵以下、ハーグ婚姻締結条約として引用︶の批准の結果、国内立法化されたものであり、また、 一九九六 年一〇月一日から施行されている﹁相続の抵触法に関する一九九六年九月四日法律﹂︵相続抵触法︶もまた、 一 九八九年八月一日の﹁死因相続の準拠法に関するハーグ条約﹂︵以下、ハーグ相続準拠法条約として引用︶の批 162
准の結果、国内立法化されたものである。 この小稿の主たる目的は、とくに右の二つのオランダ新立法を比較法的観点から紹介することにある。また、 いまひとつの目的は、必ずしも近時のオランダ国際家族法立法のみに限られたことではないが、そこに明瞭に看 取される二つの特徴的傾向、すなわち、準拠法の選定における当事者自治の立場、および、択一的連結の立場の 導入について、すでに拙稿によって取り上げられた立法であるが、﹁婚姻の解消および別居についての法律抵触 規則に関する一九八一年三月二五日法律﹂︵離婚抵触法︶︵杉林信義H笠原俊宏﹁オランダの国際離婚法について﹂秋 田法学七号一六六頁以下︶、および、﹁氏名についての法律の抵触の規律に関する一九八九年七月三日法律﹂︵氏名 抵触法︶︵笠原俊宏﹁外国国際私法立法に関する研究ノート︵五︶ オランダ氏名抵触法︵一九八九年︶・フィンランド 家族氏名法︵一九八五年︶ ﹂大阪国際大学紀要国際研究論叢一一巻一号九五頁以下︶の二つの立法にも言及するこ とにより、若干の考察を試みることにある。 ニ オランダ国際家族法立法の概観
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永きに亘り、オランダ国際私法の主要な法源として重要な地位を占めていたのは、今日もなお施行されている 一八二九年五月一五日の﹁王国の立法のための総則に関する法律﹂中の僅か三箇条、すなわち、属人法に関する 第六条、不動産の準拠法に関する第七条、および、行為の方式に関する第一〇条の諸規定である︵評三≦窃 2雲Φ国9設o冠琶鳴巳ヨ昌一aR目9&ωo冨巳勺勾営ωび①ωo昌αR①汐αR勾Φo拝ω蜜Φoど轟︸妻嚢詠駄恥篭ミ恥§§§ミ§、嵐ミ妹− 163オランダ国際家族法立法に関する研究ノート §駄く鳴さミ§Gつ蕊qミω︵以下、毫§として引用︶一8ρψお“。参照。また、それらの条文の邦訳として、笠原俊宏﹃国際 私法立法総覧﹄︵一九八九年、冨山房︶七八頁参照︶。従って、法規の欠敏の補充により、従来、オランダ最高裁判 所︵国o鴨男器α︶が同国国際私法の発展のために果たしてきた役割は極めて大きい︵≦舞置創参照︶。また、 国際条約もオランダ国際私法にとって重要な法源であり、二〇〇〇年三月一日現在、ハーグ国際私法会議が第二 次大戦後に採択した三三の条約の中、未発効の二つを含む二四のそれがオランダによって批准されている︵戦後 のハーグ国際私法条約の批准状況については、肉鳴ミミミ譜ミ魯箋蔑試ミ鳴§ミ§ミ辱註鼠︵以下、塑9bト勺として引 用︶80ρP一目魯霊劉参照。ちなみに、わが国によって批准されている同条約は六つにとどまる︶。しかし、以下に 見られるように、オランダ国際私法が統一的法典を有せず、判例法に依存した時代は今や過去のことであり、そ の立法化に向けた努力には瞠目するものがある。 オランダにおける精力的な国際私法の立法化の発端となったのは、一九八一年四月一〇日に発効した前出離婚 抵触法︵参考資料・其の一︶である。これは、一九六七年九月八日の﹁婚姻関係についての裁判の承認に関する 国際戸籍委員会協定﹂︵いわゆるクルセンブルグ条約︶および一九七〇年六月一日の﹁離婚および別居の承認に関 するハーグ条約﹂の批准に伴う立法であり、準拠法選定規則のみならず、外国離婚の承認規則についても規定し ている︵杉林H笠原・前掲一六七頁以下、一八六頁以下参照︶。次が、ともに一九九〇年一月一日に発効した前出婚 姻抵触法︵参考資料・其の二︶、および、前出氏名抵触法︵参考資料・其の三︶である。前者は、前述の通り、 一 九七八年三月一四日のハーグ婚姻締結条約の批准に伴う立法であり、他方、後者は、一九八O年九月五日の欧州 164
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戸籍委員会︵CIEC︶氏名条約の批准に伴う立法である︵≦β一げす参照︶。さらに、一九七八年三月一四日の ﹁夫婦財産制の準拠法に関するハーグ条約﹂︵以下、ハーグ夫婦財産制条約として引用︶の批准に伴い、一九九一 年一一月二〇日の夫婦財産制抵触法が制定され、一九九二年九月一日に発効している。さらに、また、同ハ:グ 条約が規定していない婚姻の一般的効果について、一九九三年九月一六日の婚姻効果抵触法が制定され、一九九 四年一月一日から施行されている︵以上については、≦舞置創参照︶。そして、それに続くのが、章を改めて言 及される前出相続抵触法︵参考資料・其の四︶である。なお、婚姻抵触法については、次の章において言及され るように、一九九八年二一月一七日法律︵一九九九年一月一五日発効︶により、婚姻の方式に関する第四条が改 正され、また、氏名抵触法については、一九九八年一二月二四日法律︵一九九九年二月一五日発効︶により、オラ ンダの領域外において取得された氏の承認に関する第五a条、および、氏の選択に関するオランダ実質法の適用 範囲を定める第五b条が追加されている︵9邑言①守巳80冨巳口ひq唇ヨ巽岳鴨8鐙ヨΦω霞冨旨器おきq 質o︿こ冒ひQ胤o﹃曽αo讐一〇昌げ<ω曽ヨΦωΦ図8⊆三Φρヨm昌餌讐昌鵬営︷o同ヨ簿一〇昌o口8Rヨαo昌gω”曽昌α一〇房o剛胃一く象Φ一旨Φヨm− け一〇轟=ρヨ昇>呂圏睾一W巴昌蝉白︵3ン↓訂巨①ヨ呂o墨一撃笥εo眺富巨牙一餌類N。。。Φ鼻δpN。。ρ葛臼も。国望g ω8●参照︶。 以上のように、オランダ国際私法︵国際家族法︶の立法化は、特定の分野・事項ごとの部分的な法典化と いう形態をもって展開されてきた。その一方、包括的な国際私法典を求める声が揚がっていたが、同国国際 私法学界において徐々に集約された見解における方針は、単に、現存する抵触規則を確定するということであ 165オランダ国際家族法立法に関する研究ノート った︵≦鋤ωる聾,ρψ這伊参照︶。オランダ司法省がそのための作業を開始したのが一九八二年であるが、 一九 九二年八月には、国際私法の一般規定についての﹁素描﹂︵ω臨N器︶とも呼ぶべき﹁草案﹂が内閣によって発 表されている。その序文によれば、﹁草案﹂は法典化の原型となるものであり、また、それは現行法規を確定 するものであるばかりか、提案されるべき規定の概要でもある︵≦舞量阜参照︶。その意味において、﹁草案﹂ は実定法であるオランダ国際私法の近時の立法、判例を編纂したものであるとともに、学説に見られる抵触法規 定の立場を集約したものである。従って、それは、通常、予備草案︵く自窪薯ξ︷︶とか、法案︵OΦω①訂8窪箸a一︶ とか呼ばれるものとは性質を異にするものである︵民薗9畳墨切8一①−薫8一貫因oα一穿呂88ω巳a豊ぎ爵魯窪 冒冨旨蝕9巴窪零貯卑昌αくR貯ぼ8ω希魯貫賠渇嚢一89ψN竃宍参照︶。オランダ国際私法について論ずる際には、 それへの言及を欠くことは許されないであろう。 オランダ国際私法﹁草案﹂は二六箇条を有し、また、それは次のような九つの章によって構成されている。 すなわち、第一章﹁総則規定﹂︵第一条ないし第一〇条︶、第二章﹁人事法および家族法﹂︵第一一条ないし第六四条︶、 第三章﹁相続法﹂︵第六五条ないし第七〇条︶、第四章﹁会社﹂︵第七一条ないし第七六条︶、第五章﹁財産法﹂︵第七 七条ないし第一〇五条︶、第六章﹁海上および内海航行法﹂︵第一〇六条ないし第一一一条︶、第七章﹁方式規定﹂ ︵第二二条ないし第二四条︶、第八章﹁経過規定﹂︵第一一五条︶および第九章﹁最終規定﹂︵第一一六条︶がそ れらの内容である。これらの中、総則規定としては、原則的な反致の禁止︵第一条︶、既成事実︵H巴980B呂︶ の承認︵第二条︶、実効的な国籍への連結︵第一二条︶、無国籍者、国籍不明者および避難民の属人法︵第四条︶、常 166
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居所の確定︵第五条︶、﹁手続きは法廷地法による﹂の原則︵第六条︶、公序︵第八条︶、内国および外国の介入規 定の特別連結︵第九条および第一〇条︶について規定されている。性質決定、適応問題、先決問題等については 規定されていない︵ゆ8一Φ−≦8豪る﹄●ρ矯ω.困㎝R参照︶。また、国際人事法および国際家族法に関連する規定と しては、一九八九年の氏名抵触法︵第一一条ないし第一六条︶、一九八九年の婚姻抵触法︵第一七条ないし第二二条︶、 一九九三年の婚姻効果抵触法︵第壬二条ないし第二六条︶、一九九一年の夫婦財産制抵触法︵第二七条ないし第三五 条︶、一九八一年の離婚抵触法︵第三六条ないし第三九条︶、血統、認知および準正︵第四〇条ないし第五〇条︶、養 子縁組︵第五一条ないし第五七条︶、未成年および行為能力︵第五八条および第五九条︶、親による監護ならびに人 身および財産の保護措置︵第六〇条および第六一条︶、未成年者保護および国際的な子の連れ去り︵第六二条およ び第六一二条︶、扶養︵第六四条︶、一九九六年の相続抵触法︵第六五条ないし第七〇条︶が規定されている︵ω8す 薫o色貫卑鉾○‘ψまS参照︶。 ちなみに、﹁草案﹂中に規定されていない法律関係の性質決定、適応問題、先決問題に関するオランダ国際私 法の立場について極く簡略的に付言するならば、次のようにまとめることができるであろう。まず、性質決定に ついて、オランダ裁判所が通例として採っているのは法廷地法説の立場である。また、適応問題として、同国裁 判所が法廷地法と外国法の双方の柔軟な解釈に努めていることが、個々の事件における判断から窺い知られる。 さらに、先決問題については、法廷地法説の立場が最高裁判所を含む同国裁判所によって多くの場合において採 られているが、その一方、例えば、扶養請求の先決問題である親子関係存否確認の問題の場合におけるように、 167オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 準拠法説の立場が採られることもある ZΦ島R一彗房藁㊤o 。8マ謹一①け器ρ参照︶。 ︵勾Φ泳く弩勾。。ご\霞四琶。Φくもo一畏㌔暑讐。巨。旨呂。墨=睾営跨① 三 婚姻抵触法および婚姻抵触法修正法の概要 婚姻抵触法第一条が謳っているごとく、同法は、オランダにおける婚姻の締結の際の準拠法の決定、および、 外国における婚姻の承認の二つを目的としている。従って、一〇箇条から成る婚姻抵触法の主要な規定は、大別 して、準拠法選定規則に関する諸規定︵第二条ないし第四条︶、および、外国婚姻の承認に関する諸規定︵第五条 ないし第八条︶によって構成されている。婚姻締結の有効性の確認の国際的裁判管轄権については、婚姻抵触法 はそれを規律の範囲に含めていない︵第一条第二文参照︶。 まず、準拠法の選定についていえば、第二条は婚姻が成立する場合として次の二つを定めている。すなわち、 ﹁婚姻当事者のそれぞれが、オランダ法に従い、婚姻締結の要件を満たし、かつ、それらの者たちの一方がオラ ンダ国籍を有するか、もしくは、オランダにその者の常居所を有するとき﹂、および、﹁婚姻当事者のそれぞれが、 その者が有する国籍が属する国家の婚姻締結の要件を満たすとき﹂がそれである。従って、婚姻締結を希望する 婚姻当事者の双方がオランダ法上の実質的要件を満たしているときは、婚姻締結の成立を﹁強制する﹂ことがで きるというのが、同法の立法者が意図するところである︵内緯訂鼠墨ω○巴①ーミ8一屏凶﹂勺甲08①9鴨ゴ轟ぎα窪 Z一8R一きα窪IU霧Z餌日窪ざ≡匹8甲§α3ω国ぎ犀○田巴○霧鴨器辞Nー”賠謁§一80︵以下、ω8すミO巴貫勲讐ρと 168
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して引用されるのは、同教授のこの論稿とするンψ逡9参照︶。しかし、そのためには、婚姻当事者のいずれか一方 がオランダ国籍を有するか、または、オランダに常居所を有することが条件である。その場合に問題となりうる のは後者の認定であり、そして、その判断基準となるのは、またしても居所の継続性および関連性という一般的 基準である︵ω8す薫8蒙る.鉾○.堕ω詮R参照︶。従って、オランダ法が適用されるべきか否かは、ひとえに同 条の運用のいかんに掛かっているといわざるをえない。一方、重国籍の場合には、﹁あらゆる事情の考慮のもと に、婚姻当事者が最も密接に結び付けられている国家への帰属が基準とされる。﹂︵第二条b号第二文︶。そこに見 られる立場は、離婚抵触法第一条第三項︵笠原・前掲書七九頁参照︶および氏名抵触法第一条第二項︵笠原・前掲 九九頁参照︶と同一の立場である。 かくして、オランダ法上、婚姻締結が有効に成立する場合には、婚姻当事者のそれぞれの本国法上の要件が満 たされていないときであっても、婚姻は成立することとなる。これは、婚姻当事者が希望する身分の形成を可及 的に保護しようとする立場、すなわち、婚姻保護︵鼠<9ヨ讐ユ日2ビヨ︶という優遇主義の立場にほかならない。 第二条は、全体として、婚姻保護の観点から択一的連結の立場を採るものであり、実現すべき身分関係の保護、 つまり、この場合には婚姻の保護に沿った準拠法の選択を裁判官に命ずるものである。それと同様な観点から抵 触規則が表現されている点において直ちに連想されるのが、わが現行国際私法の法例第一七条である。同条が、 文言上、子が嫡出子となる場合についてのみ言及しているにも拘わらず、嫡出でない場合、つまり、非嫡出の場 合についても規律するものであることは、判例および学説において確立された解釈となっている︵笠原俊宏﹁日 169オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 本人夫がタイ人妻との婚姻中に生まれた子を相手方にして嫡出否認の申立てをした事例﹂私法判例リマータス一九号一六 三頁参照︶。同様に、このオランダ法第二条についても、それを次のような双方的抵触規定として理解すること ができるであろう。すなわち、﹁婚姻の要件については、オランダ法およびそれぞれの本国法の中、婚姻締結の 要件を満たす法に依る。但し、婚姻当事者の一方がオランダ国籍を有するか、または、オランダに常居所を有す るときにのみ、オランダ法に依ることができる。﹂とするのがそれである。 さらに、注目されるべきは第三条の公序条項であろう。同条第一項本文に謳われている一般公序とともに、特 別公序として具体的に掲げられているのが、次の四つの場合である。すなわち、第一に、婚姻当事者が一五歳の 年齢に達していないとき、第二に、婚姻当事者が血統によるか、または、養子縁組により、互いに直系の親族ま たは兄弟姉妹として親族であるとき、第三に、婚姻当事者のいずれか一方の自由な同意がないか、または、それ らの者たちのいずれか一方の精神能力が、その者の意思を決定することができないか、もしくは、その者の意思 表示の意味を理解することができないほどに障害があるとき、そして、第四に、婚姻により、夫は同時にひとり の妻とのみ、妻はひとりの夫とのみ結合されることができるとの規定が違反されることとなるとき、がそれらで ある。このように、オランダにおける婚姻締結の場合の公序違反については具体的である。それに対して、外国 における婚姻の有効性の承認の場合には、第五条に見られるようにその判断基準は抽象的である。そのような違 いの理由として指摘されているのはオランダとの内国関連性の有無の差である︵ωoΦ一Φ−白8産る如,○こψ認H参 照︶。例えば、デンマーク法のように、同性間の婚姻が許容されている法の適用については、それはオランダの 170
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公序に反するため認められないが、外国における外国人同性間の婚姻については、第六条に反することはなく、 従って、承認されるとみられるのが第三条と第六条との立場の違いから導かれる結果であるということになるで あろう︵ωo巴o−薫8匿る●鉾ρ”ψ巽。’参照︶。 一方、方式については、第四条は、外交婚・領事婚の場合を除き、オランダにおいて締結される婚姻はすべて オランダ法上の方式が遵守されるべきこと、つまり、挙行地法主義の下の単一的連結の規則を定めている。この ような立場は、身分形成の保護のため、少なくとも方式の面からそれが無効となることがないよう、連結の多元 化が図られている今日的立法の一般的傾向に鑑みれば、やはり心細いといわざるをえない。しかも、一九九八年 一二月一七日の婚姻抵触法修正法は、婚姻当事者の一方または双方がオランダ国籍を有するか、または、オラン ダ国籍をも有する重国籍者であるときは、外交婚・領事婚の方式によることができない、つまり、オランダ法上 の方式を踏まなければならないとする修正を施しており︵閃o巳98おFや謡一。参照︶、その結果、婚姻の方式に ついて、オランダ法の適用への傾斜はさらに強められている。 一体、第四条が右に述べられたような修正を受けるに至った理由は何であるか。その契機となったのが一九九 六年一二月二二日のオランダ最高裁判所判決である。これは、妻がオランダ国籍をも有するモロッコ人夫婦が在 ロッテルダム・モロッコ領事館において挙行した婚姻の有効性が争われた事件の判決である。婚姻当事者の一方 または双方がオランダ国籍を有する場合、外交婚・領事婚の挙行は許されるべきではなく、従って、その場合、 戸籍係への届出という一般的な方式が踏まれるべきかについては、旧第四条は言及しておらず、また、一九七八 171オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 年のハーグ婚姻締結条約第九条も同様に明確な立場を示していない。それに対して、右判決は、まず、一九〇二 年のハーグ婚姻締結条約がかような婚姻を禁止していたのに対し、一九七八年のハーグ婚姻締結条約はその禁止 について言及していないこと、また、妻によるオランダ国籍の取得が最近であること、さらに、一九七八年のハー グ婚姻締結条約が婚姻保護を理念としていることを理由として、当該婚姻を有効とする判断を下した。欧州人権 条約︵人権および基本的自由の保護のための欧州条約︶第八条︵私的生活および家庭生活の尊重︶および第一二 条︵婚姻の権利︶もまた関連する条項であった︵男o巳98おF葛竃。訂8’参照︶。 それにも拘わらず、婚姻抵触法修正法は、同修正法が施行された後における前述のような婚姻の挙行を無効と する立場を採用するに至っている。その理由については次のように説明されている。前記最高裁判所判決の立場 は領事の実務と全面的に争うものである。匹敵する情況において、かような婚姻を支持する国は欧州には他に存 在しない。かような婚姻の有効性につき、条約はいずれの立場も表明していない。領事婚の場合には婚姻成立前 の審査が国内婚姻の場合に比して厳密でないため、その抑制には相当な理由がある。オランダに居住するオラン ダ国籍者に対し、戸籍係を経由する一般的手続の利用を期待することは妥当性を欠くものではない。婚姻成立の 通知につき、オランダ官庁が外国領事に期限を課すことができない。以上のごとくである︵閃o巳98らF息認’ 参照︶。さらに、修正第四条について指摘されるべきは、わが法例第二二条第三項但書との類似性であろう。婚 姻が日本において挙行される場合であって、婚姻当事者の一方が日本人であるときは、報告的届出よりも創設的 届出を奨励すべきとして、結局、婚姻挙行地法である日本法に依るべきとする同但書の立場は、正しく修正第四 172
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条の立場と一致する。しかしながら、周知の通り、そのような立場は少なからず批判に晒されている︵例えば、 鳥居淳子﹁内外人の婚姻と離婚 いわゆる日本人条項について ﹂﹃講座現代家族法第二巻﹄︵一九九一年、日本評 論社︶三〇九頁以下参照︶。なお、修正法の経過規定によれば、一九九〇年一月一日︵婚姻抵触法の発効日︶から一 九九九年一月一四日︵婚姻抵触法修正法の発効日前日︶までに締結された外交婚・領事婚は、婚姻当事者の一方ま たは双方がオランダ国籍を有する者か、または、オランダ国籍をも有する重国籍者であっても有効である ︵閃oaΦぴ8おFP謡N.V。 四 相続抵触法の概要 まず、オランダ国際相続法の主たる法源となるのが前出ハーグ相続準拠法条約であることが明言されている ︵相続抵触法第一条参照︶。従って、準拠法選定規則を始めとして、同条約において採用されている立場はそのま まオランダ法の立場でもある︵ちなみに、二〇〇〇年三月一日現在、同条約の批准国はオランダのみである。 塑9賢﹄抽88も器一。参照︶。同条約については、わが国においてもすでに多くの研究が発表されているところで あるが︵例えば、木棚照一﹃国際相続法の研究﹄︵一九九五年、有斐閣︶九二頁以下、同﹁法例二六条、二七条の改正に 関する一考察﹂ジュリスト一一四三号六九頁以下、溜池良夫﹃国際私法講義第二版﹄︵一九九九年、有斐閣︶五〇八頁以 下、松岡博﹁渉外相続の準拠法について﹂法曹時報四九巻一二号二七頁以下、原優﹁へーグ国際私法会議第一六会期の概 要−相続の準拠法条約を中心として﹂民事月報四四巻一号一五頁以下、同﹁﹁死亡による財産の相続の準拠法に関す 173オランダ国際家族法立法に関する研究ノート る条約﹂の成立﹂国際商事法務一七巻一号四〇頁以下等参照V、ここにおいて重ねていえば、同条約の内容の特徴と しては次のような諸点が挙げられるであろう。まず、相続統マ王義︵α段9琶αω讐NαRZ8巨霧ω皿嘗簿︶が採用 されていること︵同条約第七条第一項参照︶、次に、制限的当事者自治が導入されていること︵同条約第五条および 第六条参照︶、さらに、客観的連結として、国籍主義と常居所主義との組み合わせによる段階的連結の規則が定 められていること︵同条約第三条参照︶、そして、死因処分の方式、遺言能力、夫婦財産制や生前処分の諸問題が 適用範囲から除外されていること︵同条約第一条第二項参照︶である︵ゑ&鴉轟名32目富旨畳9巴8卑耳9辟 営α雪蜜aR冨民Φ戸霜褻N8ρψ今さらに、早川眞一郎﹁国際的な局面における相続﹂国際私法年報一号八六頁参照︶。 ちなみに、重国籍者および無国籍者についての規定は欠けており、また、反致および転致は一定の場合︵同条約 第四条参照︶を除いて認められていない︵同条約第一七条参照︶。 それに対して、一方的抵触規定の形式をもって、オランダ法が適用されるべき場合について定めているのが相 続抵触法第四条および第五条である。すなわち、前者は遺産分割につき、また、後者は清算に関連して、被相続 人がオランダにその者の最後の常居所を有した場合には、オランダ法が適用されるべきことを定めている ︵≦o一齢蝉轟﹂びす参照︶。 相続抵触法第二条は遺産が複数の法域に所在する場合の調整に関する規定であり、また、第三条は、被相続人 による生前処分の撤回が、その者によって選択された準拠法の撤回をも含むものと推定されることを明らかにし ている。そして、第六条は法律の廃止に関する規定であり、第七条は経過規定である。同条は、同法の発効後に 174
発生した相続に適用されるとしながら︵同条第一項参照︶、その発効前にオランダにおいては不可能であった準拠 法の選択についても、それがハーグ相続準拠法条約第五条ないし第一一条に従って行なわれたそれである場合に は、それを有効と見倣している︵同条第二項ないし第四項参照︶。 五 オランダ国際家族法立法の特徴
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かつて、拙稿において、今後における国際家族法立法のあり方について、次のように結論されたことがある。 すなわち、そのひとつは、一定の実質的利益を保護するための多元的連結︵択一的連結︶の規則の採用であり、 そして、いまひとつは、当事者意思を尊重するという意味における当事者自治の拡大である。これらふたつの立 場に立った連結規則によって、今後の国際私法︵国際家族法︶は整理される時代を迎えているとみられる、とい うのがそれである︵笠原俊宏﹁わが国際私法における利益衡量﹂東洋︵東洋大学通信教育部紀要︶三四巻三号二七頁︶。 いみじくも、オランダ国際家族法立法は右の拙見を裏付けるかのような立場を軸として展開されているよ、フに思 われる。そのような観点から、次に、とくに離婚抵触法、婚姻抵触法、氏名抵触法、相続抵触法の四つの立法に 論及することとしたい。 まず、択一的連結についてである。この形態の連結が前提としているのが、実質的な利益衡量のもとにおいて 一定の利益を優先させようとする優遇主義であることはいうまでもない。前述の通り、婚姻抵触法第二条が採っ ているのが、婚姻成立の実質的要件につき、婚姻当事者のいずれか一方がオランダ国籍またはオランダにおける 175オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 常居所を有することを条件として、法廷地法であるオランダ法に依るか、または、婚姻当事者のそれぞれの本国 法に依るべきとする択一的連結の立場であり、婚姻の有効性を保護しようとする婚姻保護の立場である。裁判官 は、それらの連結の中、婚姻の成立を有効とする法への連結を基準としてその実質的判断を行なわなければなら ない。また、前記﹁草案﹂中にも、子の保護を顧慮したいくつかの規定がある。例えば、父性否認に関する第四 一条は、本則として、父母の共通本国法、父母の共通常居所地法、子の常居所地法の段階的連結の規則による親 子関係の準拠法と同一の法に依りながら︵同条第一項︶、右の法によって父性否認が認められないときは、両親 の申立てに基づき、子の常居所地法または法廷地法のいずれかの法の適用が子の利益に適うならば、その法に依 ると定めている︵同条第三項。内緯冨鼠惹切8すミ8涛一る舘冨冒島q僧きαORけ望8酵o款U旨9賓一茜けΦ営8旨甲 け凶o暴=曽≦讐浮ΦΦ&o脇浮Φ898導仁曙“牢o讐Φωω○﹃8鷺Φωωぎ一R留ヨΦgO留ヨ①o巳αΦρ汐一く讐Φ一暮R轟試○惹一 一m≦暮浮ΦΦ且99①8浮o窪什a質零o鴨8ω○二①鴨8£℃88も●竃。●参照︶。また、同じく﹁草案﹂中、認知または 準正に関する第四三条においても、認知する者の本国法、子の常居所地法、子の本国法、認知する者の常居所地 法の段階的連結の規則が、実質的な認知の許容へと方向付けられている︵同条第一項︶。同様な規則は、認知に 対する母の承諾の問題にも適用される︵同条第四項。切8す薫8渥﹂○霧け轟鋤且望8昌○採8。息けも●竃。。参照︶。 さらに、オランダ判例においても、しばしば、子の利益が留意されている。海外に常居所を有する子の離婚後の 監護の事件において、オランダ法が子の利益に適うときは同法に依るとし、また、親子関係についても、本則で ある父母の本国法の適用は、子の利益のため、子の常居所地法または法廷地法としてのオランダ法の適用によっ 176
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て優先されている︵ωo巴Φ−譲8蒙﹂oおけ轟鋤&望8嘗o採8らFPω5参照︶。 次に、当事者自治についてである。従来から、契約については、当事者自治の立場は原則的準拠法として確立 されており、今日、その他の財産法の分野へのその適用の拡大が模索されている︵例えば、笠原俊宏﹁ドイツ国際 私法における契約外債務および物権の準拠法﹂東洋法学四三巻二号一八七頁以下参照︶。それに対して、国際家族法の 分野における当事者自治について現実性を帯びた論議が重ねられるようになり、そして、それが制限的に認めら れるようになったのは、ここ二、三十年のことである。現在、夫婦財産制について当事者自治が導入されている 立法例は、わが法例第一五条第一項但書をも含め、決して少なくない。オランダ国際私法においても、前述の通 り、夫婦による準拠法の選択を認める前出ハーグ夫婦財産制条約を批准しており、その結果は前出夫婦財産制抵 触法としてすでに結実している。また、相続準拠法の選択における当事者自治の原則も、この度、オランダ国際 私法において実定法として確立されるに至った。それらの立法に先立ち、実効的な社会的紐帯を欠く共通国籍を 連結点として決定される共通本国法やオランダ法の選択を認める一九八一年の離婚抵触法第一条第二項および第 四項を発端として、オランダ国際家族法においては当事者自治の立場が導入されていたが︵杉林1 1笠原・前掲一 八一頁参照︶、それに続いたのが一九八九年の氏名抵触法である。その第三条は、本人の意思により、本則によ る準拠法に服しない補充的な称氏の選択を認めている︵笠原・前掲国際研究論叢九七頁参照︶。 最後に、オランダ国際家族法立法の特徴との関連において、その立場と同じ流れに立つものとして、離婚後扶 養に関する一九九七年二月二七日のオランダ最高裁判所判決に論及しておきたい。一九七三年の﹁扶養義務の準 177オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 拠法に関するハーグ条約﹂第八条は、離婚後扶養の義務について、離婚に適用されたと同一の法に依るべきこと を定めている。同条約を批准しているオランダにおいては、それはそのまま同国国際私法上の立場でもある。そ れにも拘わらず、同条約の適用を退け、当事者による離婚準拠法︵イラン法︶以外の法︵オランダ法︶の選択を 認めたのが右判決である︵国象冨ユ冨切o巴Φ−≦o巴犀ど︾辞涛Φ一〇 。国鎧晦Rd暮①跨巴富螂げR①冒屏oヨ日窪ω$9ΦぎR 園Φ魯房≦魯一巳o鐸窪眞Φ鴨P賠§一。。o 。”ω。お曽h参照︶。これは、オランダ国際離婚法における離婚準拠法の 選択の自由を論拠として、それと同様に、離婚後扶養の準拠法の選択の自由も認められるべきであるとする立場 である︵切8すミ8蒙﹂2鋒曽き儀即8嘗o糞8おF℃.8卜参照︶。そこに見られる同裁判所の見解によれば、同 条約第八条は家族法における当事者自治の進展とは無縁のものとして解釈されるべきであり、主観的連結規則で ある当事者自治により、離婚準拠法とは異なる法が選択されたとしても、客観的連結規則である同条約上の規則 は変更されたことにはならない。すなわち、主観的連結が行なわれなかったときにのみ、客観的連結が行なわれ るべきであるというのがその見解である︵ω8一Φ−薫8蒙し2弩餌餌且ω8Φ昌o貴酵P参照︶。もとより、同条約に ついては、とくにその第八条をめぐり、オランダにおける批准の際にすでに相当な論議があったところである ︵円劉ζ﹂Φω09↓冨=謎信①Oo珠RΦ蓉ΦきαU旨o﹃魯o一80コ曽妻“ωo目ΦR一賦o一ω日曽呂曽霊駒閃Φω賦o昌﹂目日]≦○ >ωωRヲω葺量計↓ぎ鼠ξ窪80律訂=餌讐ΦOo嘗R窪89零一黄け巴耳Φヨ蝕9巴一鋤声一8ωもφ参照︶。しかも、同 条約が採択されてからすでに二五年以上の年月が経過しており、その間には、離婚、夫婦財産制、相続等、国際 家族法の多くの分野において当事者自治が導入されているのが現実である。それを理由として、近い将来、同条 178
約そのものがハーグ国際私法会議によって改正されるべきであるという端的な指摘がなされている︵切8一①− ゑoΦ一貫冒議酔轟きα誓8浮o舞一玄9参照。なお、同様な結論を導くものとして、笠原俊宏﹁国際私法における離婚後扶 養について﹂比較法三五号二七頁以下、とくに六二頁参照︶。
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六 結 語 オランダ国際家族法の展開を概観することによって痛感されることは、またしても、わが国際私法に温存され ている形式主義に対する反省の欠如である。一世紀にも亘り両性平等に欠ける抵触規則が行なわれてきたことの 反動があるとしても、実質的な解決の如何を顧みることもなく、ひたすらケーゲルの梯子と呼ばれる夫婦の同一 法主義に固執し、その徹底のために反致さえも大胆に制限しようとする立場はあまりにも狂信的であるとしか評 することができない︵笠原俊宏﹁わが国際私法における反致条項﹂東洋︵東洋大学通信教育部紀要︶三五巻三号一八頁 以下︶。そのような意味において、平成元年の法例改正は部分的に後退する立場を内容とするものであったとい うべきであると思われる。それに対して、オランダ国際私法においては、一九六三年以後、同国最高裁判所の積 極的・進歩的な立場から、右に見られたようにハーグ条約さえも実質的には修正されている。目下、オランダ国 際私法の法典化の作業は緩慢であるけれども、着実に歩んでいると評されているが︵く﹃ωも﹄.ρψ8ε、その 所以はまさにそのような点にあるといえるであろう。少なくとも国際私法の視野で眺める限り、オランダはわが 国を凌ぐ大国であり、奇しくも、わが国において再び﹁蘭学﹂が重要性を有する情況が到来している感がある。 179オランダ国際家族法立法に関する研究ノート ﹁草案﹂がいかに実定法化されるかということをも含め、今後におけるオランダ国際私法の展開から目を離すこ とはできないように思われる。 次に掲げるのはオランダ離婚抵触法、婚姻抵触法、氏名抵触法、相続抵触法の試訳である。それらの中、離婚 抵触法および氏名抵触法はすでに前掲の拙稿においてその邦訳が試みられたものであるが、オランダ国際家族法 の全容の理解の一助とするため、部分的に手を加えたうえ転載したものである。訳出に際し、婚姻抵触法および 相続抵触法の双方につき、それぞれ、、ミ熱の魯篭ミ鳴ミ&帆§ミ§、蕊ミトミ§織﹃鳴さミ§のミ息冴お。ρψo 。ω。 。hF 8。ρψ$hに掲載されている独語訳に依拠した︵ちなみに、離婚抵触法の邦訳は却Ω宣﹄勺一。。 。一も。。 。8簿豊ヨに 掲載された臼竃,○>ωωR目ω葺⋮けによる仏語訳に拠ったものであり、また、氏名抵触法のそれは鴫謁§一㊤Oρψ器鳶に 掲載された独語訳に拠ったものである︶。なお、婚姻抵触法の訳文の各条の標題は、便宜のため、邦訳に際して訳 者によって付されたものであり、原文にはないものである。 180
︵参考資料︶ 其の一・離婚抵触法︵一九八一年︶ 婚姻の解消およぴ別居についての法律抵触規則に関する一九八一年三月二五目法律︵離婚抵触法に 関する法律︶ ︵オランダ官報一九八一年第一六六号︶
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第一条 一 婚姻の解消または別居が請求されることができるかの問題、および、いかなる原因に基づき請求されることができる かの問題は、次に掲げる法によって解決される。 a 当事者が共通本国法を有するときは、その法 b 共通本国法がないときは、当事者の常居所地法 c 共通本国法および同一国における常居所地法がないときは、オランダ法 二 前項の適用については、当事者の一方にとって、共通国籍国との実効的な社会的紐帯が明らかに欠ける場合は、共通 本国法は存在しないものとみなされる。但し、この場合においても、当事者がともに共通本国法を選択するか、または、 当事者の一方によるこのような選択が争われなかったときは、その法が適用される。 三 当事者の一方が複数の国の国籍を有するときは、その者の本国法は、その者がその国籍を有する国であって、ー 181オランダ国際家族法立法に関する研究ノート すべての事情を考慮してーその者がそれと最も強い紐帯を有する国の法とみなされる。 四 前三項にかかわらず、当事者がともにオランダ法を選択するか、または、当事者の一方によるこのような選択が争わ れなかったときは、その法が適用される。 第二条 一 適正な手続きに従ってオランダ王国外において取得された婚姻の解消または別居は、それが、裁判所またはそのため の権限を有する他の官庁の裁判によって生じたとき、オランダにおいて承認される。 ニ オランダ王国外において取得された婚姻の解消または別居であって、前項において定めている条件のひとつもしくは いくつかを充足しないものであっても、外国手続きにおける他方当事者が、手続き中に、明示的または黙示的に婚姻の 解消または別居に同意したか、判決によってそれに服従したことが明らかであるときは、オランダにおいて承認される。 第三条 夫の一方的な宣告のみによってオランダ王国外において生じた婚姻の解消は、次に掲げるときでなければ承認されない。 a この形式のもとにおける婚姻の解消が、夫の属人法に従ったものであるとき b 夫の一方的な宣告が行なわれた地において、婚姻の解消が法的効力を有するとき、および c 妻が、明示的または黙示的に、婚姻の解消に同意したか、または、それに服従したことが明らかであるとき 第四条 最終規定 一 この法律は、それが登載されている官報の発行日の翌日発効する。 二 この法律は、発効日後に下された婚姻の解消または別居に関する外国裁判の承認についても適用される。 182
其の二・婚姻抵触法︵一九八九年︶ 婚姻締結および婚姻の有効性の承認に関する一九七八年三月一四日のハーグ条約の批准に伴う婚姻 事件における抵触法規定のための一九八九年九月七日法律︵婚姻抵触法に関する法律︶ ︵オランダ官報一九八九年第三九二号︶
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第一条︵本法の適用範囲︶ 本法は、婚姻当事者の国籍または住所との関連において、いずれの法が婚姻締結の要件を支配するかの問題について選 択されなければならないとき、オランダにおける婚姻の締結につき、また、外国において締結された婚姻のオランダにお ける承認について適用される。本法は戸籍吏の管轄権については適用されない。 第二条︵準拠法の選択︶ 婚姻は次に掲げるときに締結される。 a 婚姻当事者のそれぞれが、オランダ法に従い、婚姻締結の要件を満たし、かつ、それらの者たちの一方がオランダ 国籍を有するか、もしくは、オランダにその者の常居所を有するとき、または、 b 婚姻当事者のそれぞれが、その者が有する国籍が属する国家の婚姻締結の要件を満たすとき。多数の国籍の所有の 場合には、あらゆる事情の考慮のもとに、婚姻当事者が最も密接に結び付けられている国家への帰属が基準とされる。 第一一一条︵公序︶ 一 第二条に拘わらず、婚姻が公の秩序と相容れないこととなるときは、それは締結されることができない。それは、次 183 〆オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 婚姻当事者が一五歳の年齢に達していないとき 婚姻当事者が血統によるか、または、養子縁組により、互いに直系の親族または兄弟姉妹として親族であるとき 婚姻当事者のいずれか一方の自由な同意がないか、または、それらの者たちのいずれか一方の精神能力が、その者 の意思を決定することができないか、もしくは、その者の意思表示の意味を理解することができないほどに障害があ るとき こととなるとき 二 婚姻の締結は、婚姻当事者のいずれか一方が有する国籍が属する国家の法に従い、オランダの公序と相容れない婚姻 C b a に掲げるとき、いずれの場合においても該当する。 d 婚姻により、夫は同時にひとりの妻とのみ、妻はひとりの夫とのみ結合されることができるとの規定が違反される 障害がそれを妨げていることを理由に拒否されてはならない。 第四条︵婚姻の方式︶ 方式に関しては、オランダにおける婚姻は、外国の外交官および領事官の権能を留保のうえ、戸籍官吏により、オラン ダ法上の規定の考慮のもとにおいてのみ有効に締結されることができる。 ︵訳者注・一九九八年一二月一七日法律により、本文における解説の通り修正されている︶ 第五条︵外国婚姻の承認︶ 一 オランダ外において締結された婚姻であって、婚姻の締結が行なわれた国家の法に従って法的に有効であるか、また は、後に法的に有効になっているものは、かようなものとして承認される。 ニ オランダ外において外交官または領事官の面前において締結された婚姻であって、それらの官吏が代表する国家の法 184
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オランダ外において締結された婚姻の有効性の承認は、承認が公序と相容れなかったときは、第五条に拘わらず拒否さ 第六条︵外国婚姻の不承認︶ 四 婚姻証書がいずれかの管轄官庁によって発行されたときは、婚姻の有効性は推定されるものとする。 三 第一項および第二項の適用に際しては、送致は抵触法上の規則をも含むものとする。 ものとして承認される。 上の要件に合致するものは、婚姻の締結が行なわれた国家におけるそれが禁止されていなかったときは、法的に有効な れるものとする。 第七条︵先決問題の承認︶ 第五条および第六条は、いずれかの婚姻の有効性の承認が、他のいずれかの解決すべき問題との関連において、本問題 としてであるか、または、先決問題としてであるかを考慮することなく適用されるものとする。 第八条︵承認の不遡及︶ 本法はその発効日の前に締結された婚姻の有効性の承認については適用されないものとする。 第九条︵発効日︶ 本法は国王の決定によって確定されるべき時点に発効する。 第一〇条︵本法の名称︶ 本法は﹁婚姻抵触法﹂として引用されるものとする。 185オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 其の三・氏名抵触法︵一九八九年︶ 氏名の準拠法に関する一九八○年九月五日のミュンヘン条約の批准のための氏名についての法律の 抵触の規律に関する一九八九年七月三日法律︵氏名抵触法に関する法律︶ ︵オランダ官報一九八九年第二八八号︶ 第︻条 一 外国人の氏名は、その者がその国籍を有する国家の法に服する。同法は、抵触法規則をも含む。氏名の決定が依存す る事情は、同法のみに従って判断される。 二 当事者が複数の国籍を有するときは、あらゆる事情を考慮して、その者が最も密接に関連する国家の国籍が基準とな る。 第二条 オランダ国籍を有する者の氏名は、その者が他の国籍をも有するか否かにかかわらず、オランダの国内法に服する。家 族的法律関係であって、その成立または消滅が氏に影響を与えうるものについて外国法が適用されるときもまた、同様と する。 第三条 複数の国籍を有する者は、戸籍吏に対し、その者が本法第一条第二項または第二条に従えば適用されないいずれかの国 家法に従って称する氏の欄外注記をその者の出生証書へ記載してもらうことを申請することができる。 186
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第四条 一 国籍の変更の場合においては、新しい国籍の国家の法が、氏に対する国籍変更の効果に関する同法上の規則を含めて 適用される。 二 外国人によるオランダ国籍の取得は、オランダ王国官報一九八四年第六二八号オランダ国籍に関する王国法律第一二 条の規定の留保の下に、その者の氏名についていかなる影響をも与えない。 第五条 一 外国人の氏名が記載されなければならない身分証書の作成に際し、その氏の決定について適用されるべき法を知るこ とができない状態の戸籍吏は、オランダ法を適用する。戸籍吏は、直ちに、証文が身分登録簿に記載される地区におけ る地方裁判所の検察官にその者の決定を通知する。 二 前項に従って作成された証書は、民法典第一篇第二九条に従い、いずれかの当事者の申立てまたは検察庁の告訴に基 づき、変更されることができる。当事者の申立ては、職務上、オランダ王国官報一九五七年第二二三号貧困者のための 法律相談および訴訟費用扶助を規律する法律の適用の下に、無料で取り扱われる。 第五a条 人の氏が、オランダの領域外において、その地の国際私法規則に従って確定または変更され、かつ、その地の要件に従っ て証書に記載されているときは、かように登録または変更によって取得された氏は、オランダにおいて承認されるものと する。単にオランダ法以外の法律が適用されたことを理由とする公序を根拠として、承認は拒否されてはならない。 ︵一九九入年一二月二四日法律による追加︶ 第五b条 187オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 一 本規定はオランダの領域外において認知または準正された子に適用され、また、認知または準正により、父子間にお ける法的親子関係が生じ、子はオランダ国籍を取得または保有する。オランダ実質氏名法に従った子の氏の選択が認知 または準正の後に行なわれなかったときは、子を認知または準正する母および男子は、認知または準正に続く二年内に 子の氏について選択することができる。子が認知または準正の当時一六歳の年齢に達していたときは、子はその後の二 年内に母または父の氏を採るか否かを選択することができる。 二 ︵省略︶ 三 ︵省略︶ ︵一九九八年一二月二四日法律による追加︶ 第六条 一 本法の規定は、法律上、その発効日前に登録簿に記載された身分証書に記載されている氏名については適用されない。 二 第一項に記された身分証書中の氏名の記載は、当事者の申立てに基づき、本法の規定に従って変更されることができ る。外国人の申立てが問題となる場合においては、変更は、その者が国籍を有する国家の権限を有する官庁によって作成 された証書によって証明されなければならない。 三 第二項に記された変更は、考慮されるべき身分証書において、欄外注記の形式をもって行なわれる。 第七条 本法は、﹁氏名抵触法﹂として引用される。 第八条 本法は、国王の決定によって定められた時点において発効する。 188
其の四・相続抵触法︵一九九六年︶ 相続の準拠法に関する一九八九年八月一目のハーグ条約の批准に伴う相続ならびに遺産の清算およ び分割の抵触法規定のための一九九六年九月四目法律︵相続抵触法に関する法律︶ ︵オランダ官報一九九六年第四五七号︶
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第一条 相続について適用される法は、相続について適用される法について一九八九年八月一日ハーグにおいて締結された条約 の規定であって、その仏文および英文がオランダ語訳とともに官報一九九四年第四九号に公表されているものによって決 定される。 第二条 一 分割されるべき遺産の権利者が、外国に所在する何らかの目的物の所在地国国際私法が指定する法のそれへの適用に より、他のいずれかの権利者に対して不利に扱われるときは、それゆえ、同法に従い、他の権利者または第三者によっ て取得されているその目的物は、有効に取得されたものと認められる。 二 但し、不利に扱われた権利者は、その者と有利に扱われた権利者との間における遺産分割に際し、被った不利益まで は清算が行なわれることを主張することができる。清算が可能であるのは、専ら遺産価値とであるか、または、負担の 軽減によってである。 三 前諸項において、権利者とは遺産相続人、受贈者または賦課受益者を意味する。 189オランダ国際家族法立法に関する研究ノート 第三条 被相続人がその者によって予め作成された死因処分をすべて撤回するときは、それは、その者によって予め行なわれた 選択であって、その者の遺産の相続が服する法のそれを含むものと推定される。 第四条 一 被相続人がオランダにその者の最後の常居所を有したときは、遺産分割はオランダ法に服するものとする。とくに、 第一条に挙げられた条約に従って適用される法によって引用されている相続人の責任、被相続人の債務、および、相続 人がその者の責任を排除または制限することができる条件については、オランダの規定が適用されるものとする。 二 遺産の分配が行なわれる方法は、遺産分割当事者が一致して他のいずれかの国家の法を選択しない限り、被相続人が オランダにその者の最後の常居所を有したときは、オランダ法に服する。積極財産の所在地の物権法上の要件は考慮さ れるものとする。 第五条 一 被相続人がオランダにその者の最後の常居所を有したときは、被相続人によって指定された清算人の任務および権能 はオランダ法に服する。 二 略式手続きにおける単独判事の権能にかかわらず、裁判所は、当事者の申立てに基づき、オランダに所在する遺産の 構成部分の相続につき、第一条に挙げられた条約に従って適用される法が遵守されることを保証するために措置を講ず ることができる。裁判所はそれとの関連において担保が提供されることを命じることができる。 第六条 ︵一八六九年四月七日法律の廃止︶ 190
第七条 一 本法はその発効の時点の後に死亡する者の相続に適用される。 二 被相続人が本法の発効に先行する時点までにその者の相続に適用される法を選択した場合には、その選択が第一条に 挙げられた条約の第五条の規定を満足させるときは、それは有効と見倣される。 三 共同の死因処分の当事者が本法の発効に先行する時点までにその共同処分に適用される法を選択した場合には、その 選択が第一条に挙げられた条約の第二条の規定を満足させるときは、それは有効と見倣される。 四 前諸項の規定にかかわらず、被相続人によって行なわれたその者の遺産に適用される法の選択、または、かような選 択の変更であって、本法の発効前に生じているものは、本法が当時かような選択を定めていないことのみを理由として 無効と見倣されてはならない。