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コロイド結晶のフラクタル成長 利用統計を見る

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(1)

コロイド結晶のフラクタル成長

著者名(日)

森本 久雄

雑誌名

工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告

31

ページ

35-38

発行年

2009

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002034/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

(2)

コロイド結晶のフラクタル成長

森本久雄*

1.はじめに  液体に分散した数ナノメートル∼サブミクロンサイズ のコロイド粒子が,ある条件下において通常の結品と類 似した規則配列をもった構造を形成することが知られて いる1)舎6).近年,このような微粒子の白発的な構造形成 を利用して,新規電子デバイスや光学素子を開発しよう とする試みが数多く行われている7)・8).コロイド粒子の 結品は,通常の原子・分子結品に比べてその構成単位が 大きいために,より簡易な実験手法によって結品構造や 結品成長プロセスの観察を行う事が可能である.このこ とからコロイド粒子系は,結品の性質やその成長プロセ スを原子・分子レベルで理解しようとする科学者にとっ て有用な物理モデルとして注目されている9)・10).  一般に液体中のコロイド粒子表面は帯電しており,こ れに起因して粒子間に反発力が働く.この反発力の強さ は溶媒のイオン雰囲気によって変化するが,反発力の作 用範囲が平均粒子間距離と同等になると,Alder転移と 類似の結品配列化が起こる3)’11)・12).このようなコロイド 結品に関しては,結晶化の条件や結晶の構造転移など数 多くの研究が行われてきたが,結品成長過程のメカニズ ムについてはまだ十分理解されているとは言えない.そ こで本研究では,帯電コロイド粒子が反発力によって結 品配列化する過程に着目し,そのダイナミクスを数値シ ミュレーションにより明らかにする. 2.解析系および解析手法  本研究では,液体中に分散したコロイド粒子の結品化 過程をBrown動力学シミュレーションにより解析す る.前述のように液体中のコロイド粒子表面は帯電して おり,溶液中に存在する粒子表面と反対符号の対イオン が粒子表面に集まって拡散電気二重層を形成する(Fig. 1参照).この電気二重層の厚さDは3)・11)・12), D− 堰│〔  つ4πe‘nεkT〕一; (1)  ここで,K,θ, n,ε,.kおよびTはそれぞれ, Debye パラメター,対イオンの電荷,対イオンの濃度,溶媒の 誘電率,Boltzmann定数および温度である.粒子が互 いに接近し,電気二重層が重なると粒子間に反発力が働 く.電気二重層の厚さが粒子直径に比べて十分大きい場 合,この粒子間反発相互作用は11)・ 12)・13),       u一πε醜Ψ[一κ(トみ]  (・) と表わされる.ここで,d,φおよびrはそれぞれ,粒 子の直径,粒子の表面電位および粒子の中心間距離であ る.本研究では,eq.(2)が成立っような電気二重層の厚 さがト分厚い条件を解析の対象とする.このとき,粒子 は反発力によって互いに粒径の数倍程度の距離を保って 存在するため,粒子間のvan der Waals相互作用は無 視することができる.そこで本解析では,粒子間相互作 用としてeq.(2)のみを考慮した.  コロイド粒子の運動の緩和時間は,溶媒分子のそれに 比べて非常に長いため,粒子の運動はLangevin方程式 によってよく記述される.         巴=一!u+』こ+P    (3)         ∂t  m 「 m  ここで,u、, t,ζおよびmはそれぞれ,粒子iの速 度,時間,摩擦係数(ζニ3πηd,η:溶媒の粘性係数)お よび粒子の質量である.また,Eは粒子iに働く力の          /

      //

、麹 ξ  mm Cotloidal particle  糸  一      ”−Electric double Iayer Flg,1 Colloidal partlcles 総和であり,eq.(2)より求められる. Pは溶媒分子の衝 突によるランダムカであり,平均および分散が以下のよ うに与えられる白色雑音である.    〈R>一・,〈R(・)P,(t・△’)〉一三・(△t)6,,(・)       m  ここで,云ノニ1,2,3であり,これらはランダムカの 成分を表わす指標である.δ(_)はDiracのデルタ関数, ,SiはKroneckerのデルタである.  本研究では二次元系を対象とし,eq.(3)を数値積分す ることによりシミュレーションを行った14).また,計算 条件は水中に分散したラテソクス粒子を想定し,各パラ プ機械L学科 工業技術No.31(2009)

(3)

コロイド結晶のフラクタル成長 メターはd=90nm,κ=3.3×106 m’1,φ=0.79 Vと した.粒子の充填率φは0.64%とした.総粒子数2V は196,400,784,1600と変化させて解析を行った. まず粒子を計算領域(縦横比2パ/iiの長方形)にラン ダムに配置し,周期境界条件のもとで粒子が結品配列化 していく過程を解析した. 3,結果および考察  本解析より得られた粒子の結品配列化過程のスナップ ショットの一例をFig.2に示す.本研究では,結品配 tニ0.2ms t=1 .4 ms

撒難

t=7.8ms Fig.2 Crystal growth of colloidal particles. Black and white    circles show ordered and disordered particles, respectively. 列化過程を定量的に評価するために,次のようにクラス ターを定義した11):(1)注目する粒子を取り囲むVoronoi 多角形の辺の数および近接する粒子との距離Rijを評 価する.(2)Voronoi多角形が六角形であり,全ての近接 粒子との距離が0.8n≦Rij≦1.2 r1の条件を満たす粒 子を選ぶ.ここで,ハは粒子全てが結品配列化した際の 二体相関関数の第一ピークの位置である.(3)(2)で選ば れた粒子が互いにVoronoi多角形の辺を共有している とき,これらの粒子はクラスターを形成しているとみな す,Fig.2において,クラスターを構成する粒子は“秩 序化した粒子”として黒丸で示してある.Fig.3はクラ スター構成粒子数の平均値と最大値の時間変化を表わす グラフである.両者共に約0.7msを超えたところから クラスター構成粒子数(クラスターサイズ)の揺らぎが 6  5  4  3  2  1  0 0  0  0  0  0  0 Φ型ω﹂Φ窃20⊂偵ΦεOΦN=苗∈﹂OZ 8    6    4    2    0 0    0    0    0 ΦN ω曇の⊇三ぎる∈葛量∈OZ 0   0,5   1   1.5   2      Time(ms) 2,5  3 O   O.5   1   t.5   2   2.5   3      Tirne(ms} Fig.3 Temporal evolutions of the mean cluster size(a)and    the maximal cluster size(b), which are normalized    by the total number ofparticles. 10 1 q  O,1 0.01 …… O.OOI  O.00†  O.Ol  O.1   1        Time〔ms} 10  iOO Fig.4 Time variations of the normalized number density of    the ordered particles, P. 東洋大学工業技術研究所報告

(4)

大きくなると共に急激に増加していることがわかる.こ れは成長したクラスターどうしが互いに結合してより大 きいクラスターが形成されたためである.この小さいク ラスターどうしの結合によって形成されるクラスターは 系のサイズに達するものであり,このクラスター成長モ ードがパーコレーション転移に類似したものであること がわかる.ここで,格子パーコレーションモデルにおけ る占有格子点の割合に相当するものとして,秩序粒子の 濃度(秩序粒子数/総粒子数)pを定義する.パーコレ ーションモデルでは,占有格子点の割合が制御変数とな っており,これがあるしきい値を越えるとパーコレーシ ョン転移が起こる.一方,コロイド粒子の結品成長では, 占有格子点の割合に相当する秋序粒子の濃度は時間と共 に変化し,これがあるしきい値をこえるとパーコレーシ ョンが起こる.Fig.4のグラフは,秩序粒子の濃度pの 時間変化である.結晶成長過程のきわめて初期およびパ ーコレーション後の後期過程を除いてpがべきで増加 していることがわかる.Fig.4にはより充填率が低い, φニ0.32%での計算結果を比較して示してある.充填率 の違いに応じてべき指数に変化がみられた.このpの べき乗則およびべき指数の充填率依存性については,今 後のより詳細な解析が必要である.  パーコレーションクラスターの形成をより詳細に検討 するために最大クラスターサイズのp依存性を調べた. これをFig. 5aに示す,このグラフには,総粒子数が196, 8     6     4     2     0 0     0     0     0 Φ恩⑬o﹂Φ一の⊃一〇一■o’ヒ↓X⑩’ヒ▽①N=田⊂E﹂OZ (a) 熟慾梁・・ 0   0.2

〆ぷ

04   0.6   0、8 メ) 30、01 9 (・) i・一・・4・ 至0,008    三 二      {ソ\.         冷 .ξ0、006

き    δも

… °・°°4 繋

1α゜°2驚穫.

冨 0、    .__・撫ワ⊥迂… >    0   02  0.4  06  08 Fig.5 Maximal cluster size(a)and the variance of the    maximal cluster size(b)as a fUnction of the total    number of particles,.、’andμ○,,、▼=196;□,,1’=400;    △,.V= 784; ◇, AJ= 1600. 400,784,1600のときの結果を比較して示してある. pの増加にともなって最大クラスターサイズが増加し ていくが,あるpの1直において最大クラスターサイズ が急激に増加していることがわかる.また系のサイズ (総粒子数)が大きくなるにしたがって,この増加の立ち 上がりがより急激になっていく傾向にあることがわかる. ここで,グラフの変曲点はパーコレーション転移点Pc の近似値を与える.本研究の解析条件では転移点のサイ ズ依存性はみられず,Pe 一 O.43であった.  Fig.5bは,最大クラスターサイズの揺らぎをpの関 数として示したものである.転移点p。 一 O.43近傍で揺 らぎが増大していることがわかる.また,系のサイズ(総 粒子数)が大きくなるにしたがって,このピークがより シャープになっていく傾向がわかる.二次元パーコレー ションの転移点は,正方格子では0.592745,二角格子 では0.5(いずれもサイト過程の場合)であり15),本解 析で得られたしきい値はこれらに比べてやや低い.  パーコレーション転移点では,クラスターはフラクタ ルな構造を示し,様々な物理量が異常を示す.このよう な転移点近傍での系の振舞いは,モデルに依らない普遍 則にしたがうことが知られている.Fig.6は,本解析よ り得られたp。 −0.43での最大クラスターの一例である. 明らかにコンパクトでないフラクタルな構造をしている ことがわかる.転移点でのクラスターのフラクタル次元 を評価するために,クラスターの構成粒子数と慣性半径 との関係をプロットした.これをFig. 7aに示す.両者 の関係はべき則にしたがい,そのべき指数からフラクタ ル次元が1.60であることがわかった.さらに,転移点 における最大クラスターの構成粒子数と系のサイズ(計 工業技術No.31(2009)       (膓       1玲%        51:tt.     、・/・議㌶ピ「     o  JLノ.、δ三

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’こ e1イニごゑ・いv ら・∵ c)銭)()・、(・.、  ・.し句o (・>1  』二・壌 Fig.6 Snapshot of a percolation cluster(ρ=0.43).

(5)

コロイド結晶のフラクタル成長 ΦN一⑩﹂Φ一のコ一〇一即戸に一× oo@  oo   lo   1 0       ー イ CO=m﹂>O﹂O吻⊃︸匂句﹂一〇CO一ω⊂Φ’己一▽己Oフ一 10000 1000 tOO 10 1 O.1 1     to Cluster size 100        1   10   100  1000        NOndimenSiOnal System size Fig.7 Fractal dimensions of the clusters at the percolation       transition point Pc∼0.43.(a)shows the dependence       of the radius of gyration of a cluster on the number       of particles belonging to the cluster.(b)shows the       dependence of the maximal cluster size on the       system Slze. 算領域の代表長さ)との関係を調べた.これをFig.7b に示す.やはり両者の関係はべき則にしたがい,そのべ き指数より,パーコレーションクラスターのフラクタル 次元は1.68であることがわかった.パーコレーション 転移点におけるクラスターのフラクタル次元は,91/48 (:1.90)であり,p<Pcにおいては1.56である15)(と もに二次元の場合).本解析で得られたフラクタル次元は, これらの中間の値である.本解析結果とパーコレーショ ンモデルをより詳細に比較・検討するためには,有限サ イズスケーリングなどによって,より正確に転移点近傍 の系の振舞いを評価する必要がある. 4.おわりに   本研究では,コロイド結晶の成長過程をBrown動力 学シミュレーションにより解析した,クラスターを構成 する粒子濃度があるしきい値を超えると,個々のクラス ターが結合して系のサイズに達するクラスターが形成さ れた.この成長モードはパーコレーション転移に類似し たものであり,転移点においてクラスターがフラクタル な構造を示すことがわかった.今後は有限サイズスケー リングなどにより,転移点近傍における系の振舞いを詳 細に解析する. ︶ 1 ︶ 9︼ ︶ 3 ︶ 4 ︶ 5 6) ︶ 7 ︶ 8 ︸ 9 10) 11) 12) 13) 14) 15} 参考文献 A.H. Marcus and S. A. Rice, Phase transitions in a confined quasi・two・dimensional colloid suspension, Phys、 Rev. E, Vol.55, 637(1997), E.H, A de Hoog, W. K. Kegel, A, van Blaaderen and H. N. W. Lekkerkerker, Direct observation of crystallization and aggregation in a phase・separating colloid・polymer suspenslon, Phys. Rev. E, Vbl,64,021407(2001). M.Ishikawa and T. Okubo, Nucleation kinetics of polystyrene colloidal crystallization in highly deienized water, J. Cryst. Growth, VbL 233,408(2001). S.R. Yeh, M, Seul and B.1. Shraiman、 Assembly of ordered colloidal aggregates by electric・field・induced fluid flow, Nature, Vb1.386,57(1997). A.Yethiraj and A. van Blaaderen, A colloidal model system with an interaction tunable from hard sphere to soft and dipolar, Nature, VOI.421,513(2003). A.T. Skjeltorp、 Ordering phenomena of particles dispersed in magnetic fluids, J,Appl. Phys.,Vol.57,3285(1985). R.C, Hayward, D. A. Savme and I. A, Aksay, Electrophoretic assembly of colloidal crystals with optically tunable 血cropatterns, Nature, Vol.404、56(2000). H.E, Horng, C Y Hong, S. L. Lee, C. H. Ho, S. Y Yang and H, C.Yang, Magnetochromatics resulted from optical gratings of magnetic fluid fi1皿s subjected to perpendicular magnetic fields, J.Appl. Phys., Vb1.88,5904(2000). A.E.1.arsen and D. G. Grier, Like・charge attractions in metastable colloidal crystallites, Nature, Vbl.385,230(1997), S.Auer and D、 Frenkel, Prediction of absolute crystal・nucleation rate in hard・sphere colloids, Nature, Vbl.409,1020(2001), M.Ishikawa, H. Morimoto and T. Maekawa, Particle ordering at the initial stage of colloidal crystallization:implication fbr non・classical dynamic behavior, J. Cryst. Growth, Vo1.237, 1825(2002), M.Ishikawa, H. Morimoto, T. Okubo and T. Maekawa, Growth of colloidal crystals under microgravity, Int. J. Mod. Phys. B Vol. 16,338(2002). H.1.6wen, T, Palberg and R, Simon, Dynamical criterion fbr 廿eezing of colloidal liquids, Phys. Rev. Lett., VbL 70,1557 (1993). H,Morimoto and T. Maekawa, Cluster structures and cluster’cluster  aggregations  in  a  two’dimensional ferromagnetic colloidal system, J. Phys. A:Math. Gen., Vo1.33、 247(2000). 小田垣孝,ハーコレーションの科学,裳華房,東京(1993)

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東洋大学工業技術研究所報告

参照

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