上の意義 : ウィルフレッド・ブラウンの所論の中
心として
著者
幸田 浩文
著者別名
Kohda Hirofumi
雑誌名
経営論集
巻
27
ページ
33-66
発行年
1986-03-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005778/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja目 1. 2 。3.4.5.6.
グレー シャー計画 の特質 と
その経営 組織論史上 の意義
ウィルフ レ ッド ・ ブ ラ ウンの所論 を中 心 とし て
幸m
浩
文
グレ ーシ ャー計画
33から導き出され
次
問題の所在 ’
・
グレーシャー計画に至る道
ブラウンの組織概念
官僚制組織としてのグレーシャー組織
ブラウン理論と経営組織論 の交錯
結-
むすびにかえてー
1. 問 題 の 所 在 ト ム。 ■jI ¥ ・f1930 年 代 の メ イ ヨ ー(Mayo,Elton ) を 中 心 と す る , レ ス リ ス バ ー ガ ー (Roethlisberger,F,j. ) や ホ ワ イ ト ヘ ッ ド(WMtehead,T,N. ) ら の い わ ゆ る ・ヽ− バ ー ド 一 派 に よ る ウ ェ ス タ ン ・ エ レ ク ト リ ッ ク 社 (theWesternElectricCompany ) で の ホ ー ソ ン 実 験 (HawthornResearch ) の 影 響 で ,1940 年 代 の 調 査 研 究 風 土 ぱ か な り 人 間 関 係 論 指 向 に な っ て い た 。 当 時 の 組 織 に つ い て の 主 な 関 心 は , 従 業 員 の 態 度 や 生 産 性 の 向 上 を 改 善 す る こ と を 目 的 と し て 構 築 さ れ た , 組 織 に お け る 人 間 の“ 真 の ” 性 格 を 解 明 す る こ と に 向 け ら れ て い た 。1920 年 代 的 な 合 理 的 ・ 機 械 的 人 間 観 を も っ た 生 産 技 術 者 は 工 場 現 場 か ら 姿 を 消 し , そ れ に か わ っ て ,“ 従 業 員 の 満 足 の 増 大 が 生 産 性 の 向 上 に つ な が る ” と い っ た 「 満 足 − モ ラ ー ル 一 生 産 性 」 仮 説 が 提 示 さ れ , 産 業 民 主 主 義 , 労 働1)
者 参加, そし て モ ラール とい った 概 念 が台 頭し て く る。
この ような組 織観・ 人間 観が定 着し つっ あ った40 年 代 後半(1948年4 月)か
ら およそ20 年に わ た り,イ ギリ ス の グレ ーシ ャ ー金属 会jRkとタ ヴィ ストッ グ3
)
人 間関 係研究所 が共 同で同 社=t ソド ソエ 場 で 実 施し て きた,業 務組 織 と合理
化 計画 につ いて のフィ ールド研 究
だ 一 連 の 成 果 , そ れ が 「 グ レ ー シ ャ ー 理 論 」 で あ る 。( 第1 図 参 照 ) こ の グ レ ■―-y ャ ー 理 論 は 二 つ の 理 論 か ら 成 り 立 っ て い る 。 一 つ は , 「裁 量 の 時 間 幅 」4 )5 ) (Time-SpanofDiscretion ) とイ 公 正 な 給 料 」(EquitablePayment ) に つ い て の エ リ オ ッ ト ・ ジ ャ ッ クズ )(Jaques ,Emott ) の 研 究 と , 今 一 つ は , 組 織 構 造 (OrganizationalStructure )と 組 織 プl=z セ ス (OrganizationalProcess ) に つ い て の ウ ィ ル フ レ ッ ド ・ ブ ラ ウ ン (Brown,Wilfred ) の 研 究 で あ る 。 し た が っ て , 小 稿 で 取 り 上 げ る 「 グ レ ー シ ャ ー 理 論 」 と は , ジ ャ ッ ク ス と ブ ラ ウ ン 両 者 の 業 績 を 合 わ せ た も の を い う 。 第1 図 グ レ ー シ ャ ー 研 究 の フ レ ー ム ・ ワ ー ク 組 紹と要 因( イ ン プ ッ ト) 外部 環境 の 変化 ( ジャックス,ブラウン) グレーシャー理論 最終 生産物( アウトプ ット) 課業 の能率註 政 策 調 査 方 法( 社 会 分 析 的 手 法) 従業員 の満足
インタビュー
書類の調査
観 察
(ジャックス,タヴイストックのメンバー)
こ の グレ 二
し い経 営理 論 の中 で最 も論 議を 生 んだ理論 であ る。 こ れに対 し て は,“新し
い ボト ルに 人う た 古い ワイ ン
とか,“科学的 管 理運動 以来 のマ ネジ メ ン ト7
)
の進歩 ” とい っ た よ うに い ろいろ な評 価 が加えら れて きた。 だ が, グレ ーシ
ャー理 論に つ い て詳 述し た 経営学 の入門的 な教科 書や 専門 書は ほ とん どみあ
たら ない 。た とえ あっ た とし て も,人事管 理 の観点か ら ,グレ ーシ ャ ―理論 の
一つ の柱で あ る公正 給 与制 度 の紹 介,あ るい は グレ ーシ ャ ー理論に 対 する検8
)
討に 紙面を 割い てい る も のが大多数 であ る。 そ れ も, もっぱ ら ジ ャッ クスの
9) 社 会 分 析 的 手 法 か ら 開 発 さ れ た 「T裁 量 の 時 間 幅 概 念 」 の 妥 当 性 と 信 頼 性 の 批判に集 中し てい る。そ れ は,まるで テイ ラ ー(Taylor,F.W.)
が労使 双 方に有
益で あ る とし て 開発し た 差 別出 来高給 制 度(科学的管理法)が,そ の意に 反し
て結 果的 に は双 方に受 け 入れ られ なく なった経緯 に 似 てい る。 つ ま り, テイTLo
)
ラ ーは労 働 組合 と団体 交 渉 の必要 性を否 定し た とい うこ とで, そし て, ジ ャ
ッ クス の場 合 は, 横断 的 な公 正 賃金 決定 技法 とし て0 裁 量 の時 間幅 の普 及・
グ1/−J/ヤー計画の特質とその経営組織論史上の意義35 適 用 に こだ わ る 余 り, 団 体 交 渉 プ ロ セ ス の 存 在 を 否 定 し , さ らに そ の 理 論 を 国 家 レ ベ ル に ま で 敷 行 し 政 治 問 題 化 さ せ て し ま っ た こ と で 導 入 が 拒 ま れ て い る。 な ぜ な ら, モ れ が 賃 金 決 定 機 構 一 団 体 交 渉 や 経 営 へ の 参 加 を 機 能 とす る 組 合の 必 要 性 を 排 除 す るか ら で あ る。 こ うし て政 治的 側 面 が 強 調 さ れ る にっ れ て グ レ ーシ ャ ー理 論 は , 社 会 に 受 け 入 れ ら れ な く な っ て い っ た の で あ る。 さて , わ れ わ れ は , こ れ ま で , グ レ ーシ ャ ー理 論 の一 方 め 柱 で あ る シ ャ ツn ) ク ス理 論 の妥 当 性 と 信 頼 性 に つ い て 検 討 し て きた 。 モ こ か らは , 裁 量 の時 間 幅 の応 用 の可 能 性 か ら 支 持 す る 見 解 も あ っ た が , 全 般 的 に そ の主 観 性 と追 実 験 の困 難 性 か ら 批 判的 あ る万い は 消 極 的 な も の し か 出 て こ な か っ た 。 そ こ で 小 稿 で は , グ レ ーシ ャ ー理 論 の 今− う の 柱 で あ る ブ ラ ウ ン の管 理 な ら び に 組 織
概念一
以降これをブラウン理論と呼ぶことにする
したい。
を取 り上げ る ことに
そ の 中 心 テ ー マ は , ① グ レ ー シ ャ ー 計 画 実 施 の 背 景 ,(D ブ ラ ウ ン の 経 営 シ ス テ ム の 特 徴 , ⑧ 官 僚 制 組 織 論 と し て の ブ ラ ウ ン 理 論 の 特 質 , そ し て ④ 官 僚 制 組 織 論 と 経 営 組 織 論 と の ブ ラ ウ ン 組 織 理 論 の 交 錯 点 に つ い て 検 討 す る こ と に あ る 。 さ ら に , こ れ ら を 吟 味 す る こ と で , こ れ ま で イ ギ リ ス を 除 く 学 界 や 実 務 界 で 無 視 ・ 軽 視 さ れ て き た ブ ラ ウ ン の 組 織 理 論 を 評 価 す る と と も に 経 営 組 織 論 史 上 に 位 置 づ け , 現 代 経 営 組 織 論 に ど の よ う な 貢 献 を 成 し て い る か を 明 ら か に す る 。 注 十1 ) 阪 柳 豊 秋 「 人 間 関 係 論 の 特 質 と そ の 組 織 論 的 意 義 」『 経 済 研 究JNo.342, 明 治 学 院 大 学 経 済 学 会,1983 年 ,pp.35 ∼65. 同 論 稿 で は , 人 間 関 係 論 が フ ォ ー マ ル 組 織 へ の 影 響 要 因 と し て イ ン フ ォ ー マ ル 組 織 を 解 明 し た と い う観 点 か ら , そ れ を 伝 統 的 組 織 論 と 現 代 的 組 織 論 の 橋 渡 し 的 役 割 を 果 し た も0 と し て 位 置 づ け て い る 。(p.65. ) こ の人 間 関 係 論 的 組 織 論 が グ ∼− ジ ャ ー計 画 に 及 ぼ し た 影 響 は 多 大 で あ る 。 本 稿2 .(b)人 間 関 係 論 か ら 課 業 ア ブpt ―チ へ の 転 換 , を 参 照 の こ と ○ ダ2 ) 今 世 紀 初 頭 に , 小 さ な 製 鉄 会 社 と し て 設 立 さ れ た グ レ ー シ ャ ー金 属 株 式 会 社 (GlacierMetalCompany ) ぱ , 軽 エ,ソ ジ ュ ア リ ン ダ業 界 の リ ー ダ ー的 な 専 門 会 社 と し て , ブ レ イ ン ・ ベ ア リ ン グ の 開 発 ・ 製 造 を 専 門 に 行 な っ て き た 。 資 本 金389,500 ポ ン ド の 株 式 会 社 で あ る 同 社 は , 二 つ の 主 力 工 場 と 二 つ の 小 規 模 工 場 に お よ そ1,800 人 (1950 年 代 現 在 ) の 従 業 員 を 擁 す る , こ の 業 界 で は3 ― ロ ッ パ 随 一 の 規 模 を 誇 る ベ ア リ ン グ ・ メ ー カ ー で あ っ た 。 そ の 主 力 工 場 の 一 つ 力沁 ソ ド ソ 郊 外 ア ル パ ー ト ソ (Alperton ) に あ る ロ ン ド ン 工 場 ( 従 業 員1,350 人 ) で , そ れは 自 社 内 に 鋳 造 所 を 持 つ か な り 近 代 的 な 作 業 所 で あ っ た 。 そ こ に は 当 時 と し て は も っ と も 進 ん だ 人 事 部 門 , レ ン ト ゲ ン や 物 理 療 法 を 完 倚 し た 医 務 室 , 娯 楽 施 設 , そ し て 運 動 場 が 備 え ら れ て い たo ■ ■3 )TavistockInstituteofHumanRelations: ロ ン ド ン に1946 年 に 創 設 さ れ た 家 族 , 作 業 集 団 , 組 織 に お け る 人 間 関 係 を 研 究 す る 機 関 で あ る 。 社 会 = 技 術 シ ス テ ム 論 め 発 展 に 貢 献 し た 。六 大Marsli,A.I.&Evans,E.O.,TheDictionaryof ・IndustrialRelations,HutchinsonofLondon,1976,p.306.4 )i> ャ ッ ク ス に よ っ て , グ レ ー シ ャ ー 計 画 の 調 査 研 究 プl= ・ セ ス で 開 発 さ れ た , こ の 「 裁 量 の 時 間 幅 」 方 式 は , 職 務 内 容 を 構 成 す る 指 定 限 界 と 裁 量 内 容 の う ち 裁 量 内 容 の 行 使 の 結 果 の 適 否 が 判 明 す る ま で の 時 間= === 「 裁 量 の 時 間 幅 」 を , 面 接 に お い て 段 階 的 接 近 技 法 な る 分 析 手 法 に よ う て 責 任 の 水 準 を 測 定 し よ う と す る も の で あ る 。 裁 量 の 行 使 の 結 果 に お け る 適 否 を 検 閲 す る に は , 直 接 検 閲 と 間 接 検 閲 の 二 つ の 手 段 が あ る 鶴 一 般 的 に は 後 者 が と ら れ る 。 こ こ で い う 時 間 幅 の 測 定 と は , 管 理 者 が 部 下 と の 面 接 に お い て 部 下 の 行 っ て い る 役 割 の 仕 事 水 準 を 見 つ け 出 す こ と で あ り , そ の 役 割 に は 一 時 に 従 事 す べ き 課 業 が た っ た 一 つ し か な い 単 式 課 業 役 割 と , プ1==・ グ ラ ム を 組 み か っ 進 行 し な け れ ば な ら な い 継 続 的 あ る い は 断 続 的 課 業 を 含 む 複 式 課 業 役 割 と が あ る 。5 ) ジ ャ ッ ク ス に よ っ て , 「 裁 量 の 時 間 幅 」 で 測 っ た 仕 事 水 準 と , そ こ に 従 事 す る 従 業 員 が 直 観 的 に 述 べ る 「 公 正 な 給 料 」 と の 間 に 相 関 関 係 が あ る こ と が 発 見 さ れ た 。 す な わ ち , あ る 仕 事 水 準 に 従 事 す る も の は ほ ぼ 同 じ 額 の 「 公 正 な 給 料 」 を 欲 す る と い う の で あ る 。6 ) ジ ャ ッ ク ス は , カ ナ ダ 出 身 の 精 神 分 析 医 で , い=l ソ ト 大 学 で 科 学 の 学 士 そ し て 心 理 学 で 修 士 の 学 位 を , そ し て , ジ ョ ソ ズ ・ ホ プ キ ン ス 医 科 大 学 で 博 士 号 を 取 得 し た 。1948 年 に タ ヴ ィ ス ト ッ ク 人 間 関 係 研 究 所 ( 注2 参 。照 ) の 調 査 団 の]) ー ダ ー (SeniorStaffMember ) と し て , グ レ ー シ ャ ー 計 画 に 参 加 し,1952 年 以 降 , 個 人 的 資 格 で 同 社 の コ ン サ ル タV ト と し て 従 事 し た 。1965 年 よ り イ ギ リ ス の ブ ル ネ ル 大 学 社 会 科 学 部 長 の 職 に 就 き,70 年 ま で , グ レ ー シ ャ ー 金 属 会 社 会 長 を 辞 職 し 輸 出 担 当 大 臣 と な っ た ブ ラ ウ ン 卿 の ア ド ヴ ァ イ ザ ー を 務 め た 。 彼 は , グ レ ー シ ャ ー 計 画 の 調 査 研 究 プ ロ セ ス で 開 発 し た 「 裁 量 の 時 間 幅 」 と い う , 仕 事 上 で 生 じ る 不 安 が 解 消 さ れ る ま で の 経 過 時 間 を 媒 体 と し て 用 い , 仕 事 ・ 給 料 ・ 能 力 の3 要 素 を 関 連 ・ 統 合 さ せ る 均 衡 理 論 を 構 築 す る 。 こ の 均 衡 理 論 を ジ ャ ッ ク ス 理 論 と い う 。7 )TheGlacierProject:ConceptsandCritiques,EditedbyGray,JerryL.Crane,Russak&Company,Inc.,NewYork,1976,p.11.8 ) グ レ ー シ ャ ー 理 論 に う い て は , 人 事 管 理 論 の 古 典 的 教 科 書 で あ る , ピ ゴ ー ズ = マ イ ヤ ー ズ の 『 人 事 労 務 』 ( 竹 沢 信 一/ 横 山 哲 夫 監 訳 , マ ダ ロ ウ ヒ ル 新 社 ,1980 年 ) (Pieors,P.&Myers,C,PersonnelAdministration,6thed.,McGraw-HillBookCo.,1969,p.511. ) が , 脚 注 で 公 正 給 与 制 度 に つ い て 触 れ て い る 程 度 で あ
グレ ーv/ヤ ー計画 の特質 とそ の経営 組 織論 史上 の意 義37
る 。 そ の 他 , 意 思 決 定 を 評 価 要 素 と す る 新 し い 職 務 評 価 技 法 と し て , こ の 理 論 を
紹 介 し て い る も の に,Paterson,T.T. のJobEvaluation (Vol.1,2,BusinessBooksLtd.,1973 ) が , ま た,PaymentSystem (Ed.Lupton,T. ,PenguinBooksLtd.,1972 ) の17 ∼ ]。8章 (pp.306 ∼336 ) で は , 公 正 給 与 制 度 の 中 心 的 概 念 で あ る 裁 量 の 時 間 幅 を 取 り上 げ て い る 。 ち な み に , 後 二 者 は イ ギ リ ス か ら 出 版 さ れ た も の で あ る ○- 。 さ て , わ が 国 で , 積 極 的 に こ の グ レ ー シ ャ ー理 論 の 紹 介 に 努 め た の が 大 阪 大 学 の 北 野 利 信 教 授 で あ る 。 同 教 授 は , こ の 理 論 を テ イ ラ ー , フ ォ ー ド , フ ァ ヨ ー ル を 代 表 と す る , 合 理 性 を 追 求 す る 経 営 学 説 の 一 つ と し て 紹 介 し て い る ( 北 野 利 信 編 工第4 節 ウ ィル フ レ ッ ド・ブ ラ ウ ン と エ リ オ ッ ト・ジ ャ ッ ク ス )『 経 営 学 説 入 門 』 有 斐 閣 新 書,pp.28 ∼29 に 掲 載 )。 ジ ャ ッ タ ス に 言 及 し て い る も の と し て は , 安 藤 瑞 夫『 産 業 心 理 学 』( 新 曜 社,1982 年,p.150. ), 二 村 敏 子 他 編 『 組 織 の 中 の 人 間 行 動 』( 有 斐 閣,1982 年pp.273 ∼300. ),彼 の 翻 訳 書 と し て は 『 責 任 の 測 定 』( 評 論 社 ,1970 年 ),『 公 正 な 給 料 』( ダ イ ヤ モ ン ド 社,1974 年- い ず れ も 北 野 訳 ) が あ る 。 十 二ブ ラ ウ ン に 言 及 し て い る も の と し て は , 森 本 三 男 『 経 営 組 織 論 』( 丸 善,1975 年 ), ジ ャ ッ ク ろ と の 共 著 『 グ レ ー シ ャ ー計 画 』( 北 野 訳 , 評 論 社,1970 年 ) の 翻 訳 が 出 版 さ れ て い る 。 ま た , ブ ラ ウ ン 理 論 を 目 標 管 理 の 一 類 型 と し て 取 り 上 げ て い る も の に , 松 岡 磐 木 『経 営 組 織 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社,1970 年,pp.216, 『 経 営 管 理 論 ( 改 訂 版 )』有 斐 閣,1984 年,pp.190 ∼ ]。91が あ る 。 ニ9 ) こ れ は , ジ ャ ッ ク ス 自 身 が 「 グ レ ー シ ャ ー研 究 の 経 験 か ら 編 み 出 し た 組 織 問 題 処 理 の 方 法 」 で , 「 そ の 本 質 は , 組 織 内 の 個 人 な い し 集 団 が か れ ら の 直 面 す る 具 体 的 組 織 問 題 を 解 決 し よ う と す る の を , 専 門 的 立 場 か ら の 問 題 分 析 に よ っ て 援 助 し よ う と す る に あ る 。 … … 社 会 分 析 は 精 神 分 析 概 念 を 社 会 問 題 の 処 理 に 応 用 し た も の 」 で あ る 。 (E ・ ジ ャ ッ ク ス 『 責 任 の 測 定 』 北 野 利 信 訳 , 評 論 社,1970 年 の23 ∼24 頁 の 訳 者 注 ) 詳 し く は,Jaques,E., “Social-Analysisand.theGlacierProject",GlacierProjectPapers,HeinemannEducationalBooksLtd.,1971,pp.29 ∼47.,HumanRelations,Vol.17,Nov.,1964,pp.361 ∼375. (E ・ ジ ャ ッ ク ス 「 社 会 分 析 と グ レ ー シ ャ ー計 画 」『 グI/ ー シ ャ ー計 画 』 北 野 利 信 訳 , 評 論 社,1970 年.pp.49 ∼76 ) を 参 照 の こ と。10 ) テ イ ラ ーは , 科 学 的 管 理 法 を 労 使 双 方 に 協 調 的 な シ ス テ ム と し て 強 調 し た の だ が , 結 果 的 に は , 団 体 交 渉 と 労 働 組 合 の 活 動 を 制 約 し て し ま う可 能 性 を 生 み 出 し て し ま っ た 。 組 合 側 と し て は , 当 然 , こ の よ うに 団 体 交 渉 の 有 効 性 の 否 定 と 労 働 環 境 の 支 配 権 の 喪 失 の 恐 れ の あ る シ ス テ ムに 猛 然 と反 対 し た の で あ る 。 (Tillett,A.,Kempner,T.&Wills,G.,ManagementThinkers,AllenLaneThePenguinPressLtd.,1970, 岡 田 和 秀 他 共 訳 『 現 代 経 営 学 へ の 道 程 一 経 営 ・ 学 説 ・ 背 景 − 』 文 具 堂 ,1978 年,p.55. )11 ) 拙 稿 「 能 力 ・ 仕 事 ・ 賃 金 の 心 理 的 均 衡 に つ い て の 一 考 察 一ElliottJaques の 所 論 を 中 心 に 」『 商 学 研 究 科 紀 要 』早 稲 田 大 学 大 学 院 商 学 研 究 科 ,1983 年,pp.73 ∼87 を 参 照 の こ と 。
2.
グレ ーシ ャー計画 に至 る道 程
グレ ーシ ャー 金属会社 は,1933
年 の不 況時にAEU
(AmalgamatedEngi-neeringUnion
)が, 組合を 組 織し よ うとし て未熟 練労 働者 に スト ライ キを 打
つ よ う命令 し た が失 敗に 終 わった とい う, 他 のコ=
。
ンジ ュア リン グ会社 とは全
ぐ違 っま二経 験を もつ企 業であ る。 プラ ウこ
ソは, クTレー シ ャ ―が1935 年に公 企
業 に なっ た と同時 に 経営陣に 加 わ り,!939 年に 取 締役 社長 とな り全権を引 き
継 ぐ と,進 歩的 経営 や人 間関係に 関す る最 新 の手 法を 数多 く導 入し ていく。
そ うし た 中 で, ブ ラウンは, 第 二次大 戦中イ ギ リス政 府に よって設 置させ ら
れた 合 同生 産 委員 会を より一 層民主 化 させ た業 務 組織 に つ く りか え るために ,1
)
‥
タ ヴィスト ッ ク人間関係研究所に調査を 依頼す る。つ まり,旧来 の機械的組
織を人間関 係論の考えに沿って,個人間のインフ ォーマルな連帯を増進させ
ることを 目的 とした組織改革を目論 んだのである。そ こで,労使協議した結
果,伝統的 な組合機構と会社 の代表 システ ムとを最高 の形で統合し ようとす
る新しい計画が立てられ,実行に移されるこ と と な っ た。こ の計画こそが
「 グレ ーシ ャー計画(プロジ。クト)」である。
(a) グレ ー-y ャー計画
こうし て, グレ ーシャー計画は1948年4 月に始まる のだが,その調査期間
は,調査援助母体 の政府から同社へ の移管,調査研究 機関 のグレーシャー人
間関係研究所 のメンバ ーからコンサルタント としてり ジャッ クスヘ の移動,
さらには,それに伴う調査目的 の変更といった理由か ら以下に示すような二
つの段階に 分けられる。
第一 段階-
(1948∼1951年)
グレ ーシ 十一計画の第一段階は,1948年 から1951年にかけてであった。に
こでの目的は, ①工場の社会構造に影響を 及ぼす心理的・社会的 な諸力につ
2) こ =3 ) い て の 研 究 , ②“ 工 場 協 議 会 ” に 関 連 す る 調 査 , な ど で あ っ た 。 つ ま り , 心理的・社会的な要因がどのように集団行動に影響しているかを 研究し,社会
的 ス ト レ ス不満,緊 張,抵抗など
を 取 り除 く, よ り効果的 な方法を
合意に もとづく望ましい社会変 革を促進する ということであ
研 究 ・ 開 発 し ,4 ) つた 。ます,調査が,人間関係の改善と生産性 の向上といった二つの別 々の目的
グレ ージャー計画の特質とその経営組織論史上の意義39 に 沿 って 進 め ら れ た 。 つ ま り, 組 織 目 標 が , 良 き 人 間 関 係 へ の 関 心 か ら課 業 へ と置 か れ た の で あ る 。 望 ま し い 結 果 を 達 成 す る た め の 技 術 や 手 続 き を 開 発 す る こ と が 主 た る 目的 だ っ た 。 調 査 ノ ソバ ーた ち は, 環 境 を 変 え る こ とが で き, 組 織資 源 の有 効 活 用 を 助 け る 新 し い 技 術 が 提 供 で き れば , 従 業 員 の個 人 的 満足 が得 ら れ るか もし れ な い と考 え て い た の で あ る 。 こ め 計 画 推 進 に あ た っ て は , タ ヴ ィ ス ト ッ ク人 間 関 係 研 究 所 の メ ン ■s-と 組 合側 と の協 力 態 勢 を 必 要 とす る た め , 工 場 協 議 会 は , ク ヴ ィ ス ト ッ クか ら 派 遣 さ れ た 調 査 チ ー ム と と もに , 計 画 の立 案 を 目 的 と す る 経 営 側 代 表2 人 と 組 合 側 代 表3 人 か ら な る 計 画 小 委 員 会 を 設 立 し た 。 さ ら に , ジ ャ ッ クスは , 個 人 また は 集 団 が 直 面 す る 組 織 問 題 の解 決を 専 門 家 の 立 場 か ら プ ド ヴ ァイ ス す るた め に , 社 会 分 析 と い う精 神 分 析 概 念 を 社 会 問 題 の 処 理 に 応 用 す る特 殊5 ) な ア プ ロ ー チ 方 法 を 用 い た 。 そ の結 果 , 社 会 的 ス ト レ ス が , 工 場 協 議 会 を 原 因 と す る , 下 級 管 理 者 階 層 で 発 生 し た 身 分 の 上 下 に よ る 賃 金 格 差 を め ぐ っ て 発 生 し て い る こ とが わ か っ た 。 不 満 が , 役 割 平 身 分 か 不 明 確 で あ る とい っ た 組 織 上 の欠 陥 に 起 因 し て い6 ) た ので あ る。 す な わ ち , 従 業 員 は ,「 自分 自 身 と同 僚 の 双 方 に と っ て 容 認 で き る よ うな 様 式 で 明 確 に 規 定 さ れ た , 役 割 と 身 分 」 を 必 要 とし て い る こ と が7 ) 判 明し た の で あ る。 ニ こ の よ うに , 第 一 段 階 で は , 工 場 協 議 会 設 置 に よ っ て 労 働 者 を 経 営 に 参 加 さ せ労 使 協 調 を 図 ろ う と し た ブ ラ ウ ン の政 策 は 失 敗 に 終 わ り, そ の 原 因 が 会 社 の文 化 を 無 視 し て, 単 に 制 度 の 変 革 を 行 お う とし た こ とに あ る こ とが 調 査 を 通し て 明 ら か と な っ た 。 犬 六卜・ し 犬
第二段 階一
(1952∼1965年)
そ ういった中でジャッ クス自身 の関心も1950年代初 頭頃には,組織の心理
学的側面(人間関係論)の研究 から仕事の社会学へと, また調査内容も在籍者
の役割 の心理学的特質から仕事そ れ自体の構造へと移って行く。 組織分析に
従事していた研究 チームのメソバ ―たち も,仕事役割 の特性 とその役割の金8
)
銭的価値との関係を 明らかにし ようとしていた。一
そこで,ブラウンは,政府からの研究補助の打ち切 りを契機に,タ ヴィスト
ック研究を終了 させ,ジ ャックスを グレーシ ャーに コンサルタントとして留 ま
るよう要請する。
・
仕 事 役割 の価値は ,そ の役 割に肘 廿 ら れた規定 内 容に は 無関 係 で,むしろ
裁量 内容に 関 係し てい る と仮定した ジ ャッ クスは, こ こ から 出発し ,時間幅
概念 を つか っ て 組織 モデ ルを 構策し ,付 加的 なデ ー タ を収 集 後,『公正 な給
料』 に 述べ ら れ た ような公正 仕事 給尺 度を 案出 し た ので あ る。 同 様に ウィ ル
フ レ ッド・ ブ ラ ウン 乱
役割 の定 義 と役割 の関 係に つ い て の組 織分 析理論 を9
)
開発 す る。(執行システム,代表システム,立法システムそして上訴システムといっ
た四つの役割システムから構成される最適〈requisite〉組織については後述する。
)
グレ ーシ ャ ー計 画にお いて, す でに 述べ た ようなイ ン フ ォ ーマ ル組織か ら
フ ォ ーマ ル組 織へ と焦点 の転換 が行わ れた。 初 期 の グレ ーシ ャ ー計 画での人
間関 係論的 仮説 導入に よる失 敗 がイン フ ォ ーマ ル組織 へ の不 信 の原 因 とたっ
て いた ので あ る。 また, 人 間関 係機能 は 集団 があ る程 度 仕 事をし ない とい う
こ とを 暗 黙 に認 めて い るのだ が, ブ ラウ ンに は こ の種 の 集団活 動が, たいへ
ん時 間 の無 駄に 思えた のか もし れ ない。 とは いえ , ブ ラ ウンが あ る点 で( グZ
レープ・ダイナミックを認めないということで)タ ヴィ スト ッ ク研究所 と考 え を
異に し た とし て も, ブ ラ ウソの経営 理 論 の開 発 が タ ヴ ィ スト ッ ク研究所 の研10
)
究者 だも の業 績に 依存 す る ところが大 きかっ た こ とは 確 かで あ る。
(b) 人間関係論から課業 アプ= −チヘ の転換
第二次大 戦以後,企業をシステ ムとしてアプ=t−チす る研究が組織論や産
業社会学を中心に行なわれるようになるとともに,企業 経営においても, ソ
フトな人間関係論からより積極的でダイナミッ クな課業 論へと転換が図られ
11) る 。 そ れ は グ レ ー シ ャ ー に お い 七 も 例 外 で は な か っ た 。グレ ーシャーにおいて人間関係運動が絶頂期を迎えていた当時, ブラウン
は,「能率を上げて満足感を得ようとするのは, 馬0 前に車をつなぐような
ものである。不正,不平あるいは不満の感情を抱いている内は,仕事の能率
は上がらない。このような状況では よい仕事などできない。したがって,マ
ネジャーの課業 とい うものは,満足 感に よって能率が向上できるようにすべ12
)
きである」とい う人間関係論の
「満足一生産性向上」仮説を強調し ていたが,
一転し て,「業 務組織に含 まれるすべての役割を組織の目的から合理的 に 割
り出し,目的 と役割の関連を組織設計り 上に明確に表 現すること」
,そ し て
「 業務組織を外部市場への適応とい う基本的課業に関連づけ ること」に よっ
グレ ―シ-V- 計画 の特 質 とそ の経営 組織論 史 上 の意義41 13) て 「 内 部 の 社 会 的 ス ト レ ス か ら 業 務 組 織 を 守 る 最 善 の 方 法 」 で あ る と い う 課
業 アプ= −チ(TaskApproach )を主 張するようになる。
だが,このように, 役割についている人間の問題か ら役割関係の問題へと
焦点が移ったこ とが, グレ ーシャー計画全体を混乱に 導いた。そ れは,人間
関係論 と課業管理0 違いが,そ の種類ではなく程度の差にあ るといっても。14)
従業員には表面上かな りそ の焦点が違っているように見えたからである。
そこで次章では,当初インフォーマル組織に対して 寛容的 であったが,後
に批判的 な態度を取るに至ったブラウンが考える組織概念にっいてみてみる
ことにし よう。
注 1 ) 赤 岡 功 「 社 会 ・ 技 術 シ ス テ ム 論 の 発 展 と 作 業 組 織 の 再 編 成 」 『 経 済 論 叢JVol.117,No.5 ・6, 京 都 大 学 経 済 学 会 ,1976 年 ,p.313. 』2 ) 戦 時 中 , 労 働 者 参 加 を 組 織 す る た め , ブ ラ ウ ン に よ っ て 設 置 さ れ た も の で あ る 。 そ の 後 (1950 年 ), 労 働 組 合 に よ っ て 新 し く 正 式 承 認 さ れ , 政 策 制 定 機 関 に な っ た 。 詳 し く は,Jaques,E.,TheChangingCultureofaFactory,Routledge &KeganPaul,19510Chap.5 (pp.:106 ∼155 ) を 参 照 の こ と 。3 )McCarty,JohnJ., &Shull,FremontA.,Jr.,"ProductivityasaFunctionofRoleDesign",InTheGlacierProject:ConceptsandCritiques,Ed.,Gray,JerryL.,Crane,Russak&Company,Inc.,1976,p.4. ハT ≫ 一 `r-kc^TT!_1nTnTT*^_ ・ 一二r^TiTT/".-"'=-/j^.. 。- 。。。 ハ 再-〃 一一 ‘ ごー-↓Jy\,.。-*ノPugh,D 。S.,Hickson,D.J.& こHinings,C.R.,WritersonK ノi ぷ ぶmi!,u&iリni>,EurobooksLtd.,1964,
ピ ュ ー, ヒ ッ ク ソ ソ , ヒ ニ シ ダ ス イ 組 織 と は 何 か / 諸 学 説 へ の ア プ ロ ー チ 』( 北 野 利 信 訳 )評 論 社,1983 年,p.178. 詳 し く は,Jaques,E., “StudiesintheSocialDevelopmentofanIndustrialCommunity" 。(Gla-cierProject-Partl ),HumanRelations3,No.3,1950,pp.223. ダ レ ー シ ャ ― 金 属 会 社 と タ ヴ ィ ス ト ッ ク 人 間 関 係 研 究 所 に よ っ て1948 年4 月 か ら 開 始 さ れ た , 産 業 心 理 学 に 関 す る フ ィ ー ル ド 研 究 の 諸 側 面 に つ い て の 一 連 の 論 文 集 と し て ,TheGlacierSocialAnalysisSeries ( グ レ ー シ ャ ー 社 会 分 析 シ リ ー ズ ) が ヒ ュ ー マ シ ・ リ レ ー シ ョ ン ズ 誌 にI ∼ Ⅷ ま で 連 載 さ れ て い る 。5 ) 拙 稿 『 前 掲 書Jp.74.1. 問 題 の 所 在 の 注 (9 ) を 参 照 の こ と 。 社 会 分 析 の 方 法 は , ① グ ル ー プ 討 議.(D 問 題 点 を さ ぐ る た め の 個 人 的 討 議 そ し て ③ 個 人 的 討 議 と 分 析 の3 段 階 か ら 構 成 さ れ て い る 。 ま た , ジ ャ ッ ク ス は , こ の 社 会 分 析 を 実 施 す る 上 で り 留 意 点 と し て , ① 個 人 的 要 請 が な け れ ば 話 合 い を し な い, ④ 話 合 い の 内 容 は 秘 密 と す る. ③ あ く ま で も 相 談 相 手 と し て 接 す る , つ ま り イ ェ シ ア チ ブ を と ら な い , そ し て ④ 相 手 側 か ら 要 請 が あ っ た 場 合 の み 報 告 す る , な ど を 挙 げ て い る 。 ブ ラ ウ ン ・ ジ ャ ッ ク ス 『 グ レ ー シ ャ ー 計 画Jpp.51 ∼52,Jaques,E.,"Social-AnalysisandtheGlacierProject",p.370, ジ ャ ッ ク
ス『公正な給料Jp.176. ‥6 』 北野利信編て前掲書JP.29,33. レ7
)Pughetal. (翻訳 書Jp.179.8
)McCarty,JohnJ.i &Gray,JerryU ヅ'TheHistory,Nature,andScopeoftheGlacierProject,p.7.9
)Ibid.,p.7. ニi う う . り012111 Kelly,op.cit.,p.260. Ibid.,p.260. Brown,Wilfred. &Raphael,W.,Managers,MenandMorale,M:ac-DonaldandEvans,1948,PP.4 ∼5. 13 ) 北 野 利 信 編 『 前 掲 書Jp.30.14 』McCarty,JohnJ.&Gray,JerryL,.,op.cit.,p.8. 3. ブ ラ ウ ン の 組 織 概 念 ブ ラ ウ ン は , 人 が 個 人 的 満 足 を 獲 得 す る た め に , 己 れ の 能 力 を 生 か せ る よ う な 創 造 的 な 活 動 に 従 事 す る こ と に 異 議 を 唱 え は し な か っ た が , こ の 目 標 を 達 成 す る た め に 次 の よ う な 対 策 や 概 念 を 採 用 す る こ と に は 批 判 的 で あ っ た 。 つ ま り , ① フ ォ ー マ ル 組 織 に お け る 課 業 や 活 動 の 制 限 緩 和 の 必 要 性 ,(D 従 業 員 が 参 加 意 欲 や 忠 誠 心 を も つ こ と を 前 提 と し た 上 で の イ ン フ ォ ー マ ル 組 織 の 必 要 性, ③ 個 人 の 特 性 ( 能 力 や 心 理 的 特 徴 ) に 適 し た 役 割 を 創 造 す る 自 由 の 必 要 性 , そ し て ④ フ ォ ー マ ル 組 織 の 欠 陥 を こ と さ ら 。 強 調 す る 経 営 者 教 育 の 必1 ) 要 性 な ど に は 全 面 的 に 反 対 す る 。 と い う の は , 本 来 , 組 織 の 目 標 と い う も の が , 「 仕 事 そ の も の が 人 々 の 創 造 的 努 力 の 対 象 と な る よ う , も の ご と を 整 え る こ と2) 」 あ っ た は ず な の に け 組 織 と 個 人 の ニ ー ズ が 不 一 致 だ 力 丿 ら と い っ て , 組 織 り 問 題 に 積 極 的 に 取 り 組 ま ず , 人 間 の 問 題 に の み 目 を 向 け , 即 そ の 対 応 策 を 考 え る の は 消 極 的 か つ 短 絡 的 で は な い か と い う こ と で あ る 。 ブ ラ ウ ン は , イ ソ フ ォ ー マ ル 組 織 の 方 が プ オ ー 十マ ル 組 織 に 比 べ て 順 応 性 が 高 く , 硬 直 性 が 低 い め で 組 織 構 造 と し て は 前 者 が 相 応 \し い と い う 考 え 方 に 対 ・a ㎜ ■ ’S 七 て , そ れ は 組 織 内 を ア ナ ー キ ー 状 態 に 導 く も の" ぐ あ る と 反 発 す る 。 フ ォ ー マ ル 組 織 の 制 度 化 に は , 従 業 員 に 明 確 な 準 拠 枠 を 提 供 す る と い う 利 点 が あ る 。 こ の た め に は , 課 業 に 関 す る 政 策 牛 裁 量 を 明 確 に し な け れ ば な ら な い 。 そ こ で 能 率 向 上 の 妨 げ の 原 因 を , 経 営 に 関 す る 用 語 の 欠 如 に あ り と す る ブ ラ ウ ン は , 「 産 業 組 織 に つ い て 考 え た り 話 し た り す る の に 用 い ら れ て い る 用 語 や 概
グ /―ジャー計画の特質とその経営組織論史上の意義43 念 が , し ば し ば 実 際 の 調 査 資 料 と 矛 盾し てお り, そ の 結 果 とし て , 経 営 者 と し て のわ れ わ れ の 考 え 方 に そ れ ほ ど建 設 的 で な い 面 が 多 々残 っ て い る。 … … こ の よ うな 用 語 が 欠 け て い る と き に は , わ れ わ れ は 自 分 た ち の問 題 さえ 明 確 に定 義 で き な い 。 モ の結 果 とし て , わ れ わ れ が た が い に 話 合 う と き, こ とば の意 味 に 混 乱 が 起 き る 」 と, 組 織 に 関 す る 隠 語 の 基 準 化 , 統 一 化 そ し て定 義3 ) 化 の 必 要 性 を 提 唱 す る。 だ が , そ の結 果 , 例 え ば,conjointrelationship ( 連帯関 係),contrac-tionofexecutivelines (執 行者の伝達 経路 の緊 縮),timespanofdiscretion (裁量 の時 間幅),collateralrelationship (並 立関 係) と い っ た い わ ゆ る “ グ レ ーシ ャ ー ・ ス ピ ー ク (Glacierspeak ) と呼 ば れ る 役 所 言 葉 を 工 場 内 に 氾4 ) 濫 さ せ る こ と に な る。 こ うい った 第 三 者 に 理 解 不 能 な 隠 語 は , グ レ ーシ ャ ー 計 画に 関 す る文 献 に は 数 多 く み ら れ , こ の こ と が 理 論 の受 け 入 れ を 妨げ る 原 因 の一 つ に な っ て い る。
ブ ラ ウ ン は , フ ァ ヨ ール (Fayol ,Henri ) の よ うに 管 理 (management ) を “計 画, 組 織 化 , 命 令, 調 整 そ し て 統 制 ” とい った 要 素 で 分 析 す る の で は な く,「 管 理 者 の 活 動 そ の も の の性 質 よ りは む し ろ , 管 理 者 が モ れを 通 し て 働 く社 会 組 織 , な い し 一 組 の社 会 シ ス テ ム … … を 意 識 七 , 認 識 す る こ と に よっ5 ) て, 管 理 の 質 が 向 上 す る 」 と い う視 点 で 分 析 す る。 第2 図 グレーシ ャー・シ ステ ム 上司 の 決定 に 不服の 者はよ り高位 へ上訴 レ ベ クレ 全 般 経 営 者 工 場 長(unitmanager) 部 門 作 業 場 長(sectionmanager) 監 督 者(supervisor) 現 場 労 働 者 /
匹
亙 回
匹
[匹
二四
回 ]
そこでブラウンは,組織の目的 から合理的に割 り出し た 役割(roles)をも
とに設 計された課業(task)からな る業務組織を,第2 図の ような(執行・代
表・立法そして上訴といった)四つ の社会システムの相互作用に よ っ て円滑に
運営し よう とする。
(a) 執行 シ ス テ ム(executivesystem )
これ は, 一 般に「 職階 層 」
「組 織 図 」な ど と 呼 ば れて い る 雇用 役 割シ ステ
ム(systemofemploymentroles
)の こ とでご 仕 事に結び っ い た地 位 のネ ット6
)
ワ ー ク, あ るい は企業 の事 業 目的を 達 成す るた めのシ ス テ ムのこ とで もあ る。
例えば ,経 営 担当 取締 役(組織的にはわが国の社長に該 当する;ManagingDi-rector
)の仕事 は, マ ーケ ヅト・ ニ ー ズに応じ て 組織一 会 社を変 革す る ことで
あ る。 彼は, あ る製品を 開 発 ・製 造・ 販売 す るという 組 織 目標を 満 たすた め
に ,直 属0 部 下を 通じ て全 従業 員に 仕 事を配 分し なけ れ ばな ら ない。 換言す
れば, す べて の会 社機 能は, 製品 また はサ ービ スの開発(D:Development ),
生 産 または 製造
(M:Manufacturing ),お よび マ ーケ ティ ン グまた ぱ販売(Mk:Marketing
) とい った, 以 下に示 す よ う な三つ の主 要 な タ イ プ の業 務 仕事7
)
(operationalwork )か ら構 成 さ れてい る。(D)
一
製 品開 発 とは, 現 在 のあ るいは 潜在的 な市場 の 需要を 満 たす ため の,
新し い 製品 やサ ービ スの創 造に 関連 す る機能 であ る。
佃一
製 造 とは, 財だ け で なく サ ービ スの生 産に 関す る原 材料 の調 達・購
入 ・貯 蔵か ら製品 への加工 , 市場 へ の発 送に 至 る,す べ ての プl=
・セ スに 関連
す る機能 で あ る。
(Mk )
調 査に よる 需要 の半U定 ,広 告 や営業 業 務を 通じ て の市 場 への 働きかけ に 関連
す る機能 であ る。
最 高執 行者 は, 市 場 の 需要を 満 たす ために(D)(M)
(Mk )機能 のす べ てに責 任
を 負い, これ らを 直 下 の階 層に そ れぞ れ委 譲す る。 さ らに そ こに は各機 能一
仕 事を担 当 す る管理 者 が置 かれ ,必 要に 応じ て順 次下位 階 層 へ と役割 分割 さ
れ てい く。 こ れが業 務仕 事(operationalwork )と呼ば れ る ものであ る。
他 方, この業 務仕 事に は,① 組織 や人事 に 関す る仕事(p;person ),②生 産
に 用 い られ る技術に 関 す る仕 事(T;technique ), そし て ③業務 のバ ラン ス,
D =製品開発M= 製 造 才Mk =マ ーケティング グレ ージ ャ ー計画 の特質 と その経 営 組 織論 史上 の 意義45 第3 図 執 行 シ ス テ ム 1 54321層 層 層 層 層 階 階 階 階 階 執行組織の各水準
p =組織及び人事的側面np-,.
技術的側面PR
=プロ グラミング的測面
資料 出 所;Brown,W.,ExplorationinManagement,JohnWiley&Sons,1960,p.150.タイ ミン グ,定 量 化に 関す るプ13 グラ ミソ ダ の仕事(Pr;programme )の三 つ
の次元 があ る。 こ れは,業 務仕 事を 支援 す る活動
門 , 生 産 管 理 部 門 な どに 該 当 す る も の8 ) と呼 ば れ る も の で あ る6人 事 部門, 生産技 術部
で,専 門職 仕 事(specialistwork)
こ の よりに 執 行シ ス テ ムは, 業 務 仕事 と専 門職 仕事 が相 互 関連し た九つ の
仕事(会計業務は除かれている)に 大別 さ れ, ジ ャ ッ クスの裁量 の時 間幅 の ス
ペ クト ラ ムに対 応し た五 つ の仕事 水 準 の ラン クか らな る役割 の ハイ アラ ーキ
ー(階層)を 形 成す る。
( 第3 図参照)
(b) 代表-y ステム(representativessystem
)
これは,従業員が「 執行-y ステム」とは別に もっ役割システムのことであ
る。簡単にいえば,組合活動シ ステ ムである。従業員 は,一つは純粋に業務
遂行そして事業目標の達成を 目的 とし た仕事役割からなる「 執行システ ム」
と,今一つは各階層から,例えば職場委員などを選出し,各自のあるいは集
団とし ての意見や不平を彼らの代表者を通じ て,企業 の一般政策に反映させ
ることを 目的 とした仕事役割からなる「 代表-y ステ ム」の二つ の役割を 保有9
)
している。
この代表システムは,執行システ ムとは別の共通した考えを もっ広範囲に
及ぶ支配力の下にある人々の集団なので,代表者を通さずに,彼らとコミュ
ニ ケ ーシa ソを とるこ とは きわめ て難し い。つ ま り, マ ネ ージ ャーと部下 と
の コ ミュニケ ーシ ョンに は制 約があ る ので, 代表 シ ス テ ムは, 執 行シ ス テム
と の コミ ュニ ケ ーシ ョン が取 れない場 合 の一 種り 安 全弁 とな り, 討議 の場 を10
)
要求 す る とい う機 能を もつ のであ るj
グレ ーシ ャ ーで は,す でに 図示し た ように , 経営担 当 取締 役を 頂点 とす る
事業 部 々 ネジ ャ ー, 部 門 マネジ ャ ー, そ の他上 級職員 か ら成 る一 等 職員 ,部
門作業 場 長, 上 級 書記 職員 , そ の他上 級技 術・事 務職 員 か ら成 る二等 職員,
事 務・ 書記 職員 とモ の監督 者,工 場 内の監 督者,= 技 術者 から成 る三 等職員,
そ し て機 械 作業 員 ・人夫 ・ 職人 な どから成 る時 間給 作業 員 の四 つ の階 層を 構
成し て い る。 各 階 層 は, 独自 の代表 組 織とし てそ れぞ れ の職 場 委員 会を もつ。
ま た, 現場 労 働者 層 は, 職場 委員(ショップ・スチュワード)か ら成 る工場 委員11
)
会(WorksCommittee
)を もつ のであ る。
こ の工場 委員 会 はレ ① 職場委員 会 と工場 協 議会(WorksCouncil ) との円滑
な コ ミ ムニケ ーシ ョソを 図 る, ②従業 員 と経営 者側 との コ ミュ ニケ ーシ ョソ
を 図 る, ③ 従業 員 と会社 に 関わ る事業に つい て の協議 機 関 どな る, そし て④
能 率 の向上 と従業員 の安心 を 確保す るた めに 建設的, 協 同的 な手 段を 提 供す
る, とい った 機能 を もち, 委員 会 の幹 部であ る議長 , 副 議長 ,そ し て 書記 は,
運 営 委員 会(SteeringCommittee )を通じ て工 場委 員会 や 各 種小 委員 会 の仕事12
)
を 調 整す る機能を 果 さ なけ れば なら ない。
13)(c)
・ 立 法システム(legislativesystem)
これは,執行者,代表者,株主,顧客 といった関係集 団回 の意見や感情の
調整を図ることを目的 としたシステムのことである。第4 図にみられるよう
に,従業員は自らの利益を守るために代表者を選出し 組合活動などを通じて,
株主は自分かちの代表者を取締役会へ自らの代表者を送 り込むことで,そし
て顧客は不特定多数ではあるが販売組織を通じて執行者に圧力をかけること
ができる。これら三つのシステムは,相互作用す ることに よって,会社業務
を最適の能率で遂行できるような条件つまり立法システ ムを生み出す。それ
らはまた権力システムとして執行システ ムとも相互作用し,遂行すべぎ課業
内容を規制する立 法的枠組みを制定する。
具体的には, グレ ーシ ャ ー で は,工場協議会 の議事 録 で あ る 政策文書
AA グレ ージ ャ ―計 画の特質 とその経営 組 織論 史上 の意義47 第4 図 権 力 集 団 の 役 割
BBBB
AA; あらゆる形で雇用階層に影響を及ぼす現行の法律BB;
雇用階層と権力集団との相互作用によって生み出 される政策の範囲
AA 資料出所;Brown,W 。Organization,HeinetnannEducationalBooksLtd ・,1971,p.159. (PolicyDocuments )が 同 社 の “ 憲 法 ” と な る 。 こ の 工 場 協 議 会 は , ブ ラ ウ ン に よ っ て1941 年 に 設 置 さ れ た も の で , 決 議 は 全 員 一 致 の 原 則 (unanimousagreement) に 基 づ い て な さ れ た が , い く つ か 欠 陥 が あ っ た た め,1949 年 に 修 正 が 加 え ら れ,1950 年 に 政 策 制 定 機 関 と な っ た 。 工 場 協 議 会 は , 第2 図 に 示 さ れ て い る よ う に , 工 場 委 員 会 か ら 組 合 の 代 表 と し て7 名 ( 議 長 , 副 議 長 , 書 記 , 工 場 委 員 会 委 員4 名 ), 各 階 層 別 の 職 場 委 員 会 か ら6 名 (1 等 職 場 委 員 会1 名,2 等2 名,3 等3 名 ) そ し て 議 長 と し て 経 営 側 か ら1 名( 経 営 担 当 取 締 役 )の14 ) 計14 名 に よ っ て 運 営 さ れ る 。 次 に 政 策 文 書 で あ る が , こ れ は 「 株 主 と 従 業 員 が 個 人 的 ・ 集 合 的 に 会 社 と モ の 従 業 員 全 体 に と っ て 最 大 の 利 益 と な る よ う な15) 政 策 を つ く り 上 げ る た め 最 善 の 努 力 を 尽 す 」 こ と を 目 的 と す る も の で , 従 業 員 や 会 社 に 関 す る あ ら ゆ る 事 項 を 取 り 上 げ , な お そ0 決 議 は 原 則 と し て 全 員 一 致 の 決 定 に よ ら な け れ ば な ら な い 。 そ こ に は [ 協 議 会 の 審 議 を 全 員 一 致 に ]6) 到 達 す る ま で 続 行 」 し て ま で も 労 使 双 方 に 最 大 の 利 益 を も た ら せ よ う と す る 意 図 が 含 ま れ て い る 。 こ の よ う に , 政 策 は , 全 員 一 致 の 原 則 に し た が っ て 決 定 さ れ , も し 不 一 致の場 合 は 決定 は保 留さ れ,次 の よ うな処 置が とら れる こ とに なる。 つ ま り,
①現行 の政 策を 継続 す る,かあ るい は, ②現行 の政 策 で はカ バ■
―で きない,
そ の政 策 の解 釈が食 い違 う,そし てそ の行 動 が会社 の利 益に なる と考 えら れ
る場 合, 経 営 側の メンバ ーが適当 であ る と思わ れ る決 定 が直ちに 下 される の]7)
であ る。
(d) 上 訴手 続あ るいは シ ステ ム(appealsprocedureormechanism
)
こ れは, 工場 協議 会 とと もに 第二 次大 戦 中に 設 置さ れ た もので, 上司 の決定
に 異議り あ る 部下が, よ り高位 の権威 者 に 訴え る こと が でき るシ ステ ムであ
るo つ ま り, 従業 員 が, 上 司に よっ て下 さ れた 賃金 ,昇 進 ,雇用 に関 わる重
要 な決定 に不 服 があ るとか, 経営 者に よって な され た 決定 が会社 の政策に反
す る と思わ れ る場 合, 順次, より高位 の権威 に 再審 査を 請求 で きる正式 な訴
訟 手 続 のこ とであ る。 これは 国 の法 律と 同様に, 会 社組 織に おい て 乱 事業 目
的 遂 行 のた め の執行シ ステ ムと は別に 不 公平 な取 扱い に 対す る 訴訟手続 とし
て の上 訴シ ス テ ムが必 要であ る とい うこ とであ る。1961 年に は,個 人 と集 団
と の上 訴 の手 続 き方法や 上 訴に 関 連す る各 階 層 の執 行者 の役割 の違 い 訴明確18
)
化 さ れ, 翌62 年に は,裁 定者 も従来 の外 部者 か ら内 部者 へ と変 更 さ れてい る。
こ の ように, ロソド ソエ 場り す べて の メン バ ー は, 管理 者 の判 断(間違っ
た指示や不公正評価など)に 対し て, 例えば , マ ネジ ャ
,の①政策文 書 の解 釈,
②当 該事 項に 関す る解 釈 と評 価, そし て ③特 別 なあ るい は 異常 な状態にお け
る上 訴 人につ い ての政策 の解 釈に対 し て 異議 があ る場 合,上 訴す る権利を も
っ てい る。 とはいえ, 上 訴す るに先 立 って ,当 該 マ ネ ジ ャ ーとそ の事 項につ
い て十 分 に討 議す る必要 があ る。
上 訴 中に 同意を みた場 合 マネ ジ ャ ーは上 訴を 打 ち 切 るが, 解 決がつ かない
場 合, 別 のマネ ジ ャ ーに よっ て上 訴 の内 容 と目的 につ い て の事情 聴取 が行 な
わ れ る。 上 訴人 とマ ネ ジ ャーの両者 は, 事 情 聴取を し た マ ネジ ャ ーの決定に
対し て , さらに より高位 の々 ネジ ャー( 経営担当取締役を含む)に 訴え る 権 利
も保有 し てい る。
そ し て 最 終的には, 証 人に よる証 拠 ・証 言 の提 出・ 調 査 の後, 両当 事者 の
出席 の もとに 上訴 の決定 が下 され る ことに な る。 モ の他, 経 営担当 取 締役に
よる決 定に不 満があ る場 合に も代表 者委 員 会(RepresentativeCommittee )CO
グレージャー計画の特質とその経営組織論史上の意義4919 ) 運 営 委 員 会 に 諮 問 す る こ と が で き る。 以 上 の よ うに , ま ず ブ ラ ウ ン は , 本 来 , 業 務 執 行 シ ス テ ム と い う も のは 外 部 市 場 の 需 要 に 適 応 し た 課業 を 遂 行 で き る よ う設 計 さ れ た も の で あ り,実 際 , 課 業 の 変 化 に 順 応 で き, 各 役 割 担 当 者 に 分 割 で き なけ れ ば な ら な い も のだ と20) い う。 だ が , 組 織 内 の 個 人 や 集 団 は , 企 業 の 事 業 目的 とは 違 っ た 目 的 ― 意 見 や 感 情− を 持 っ て お り, そ の ま まで は 執 行 シ ス テ ムに そ れ ら が 表 出 す る恐 れ か お る 。 そ うな れば , シ ス テ ムは 混 乱 を き た し 機 能 障 害 を 引 き 起 こ す か もし れ な い 。 だ か ら と い っ て そ の 意 見 や 感 情 を 抑 制 す れば 社 会 的 ス ト レ スを 生 み 出 そ う。 そ こ で , 業 務 組 織( 執行システ ム) の外 に , 代 表 者 シ ス テ ム,立 法 シ ス テ ムそ し て 上 訴 シ ス テ ムを 設 け れば , 本 来 の 役 割 シ ス テ ムを 合 理 的に 機 能 さ せ る , すな わ ち 事 業 目 標 が 達 成 で き, 同 時 に 社 会 的 ス ト レ ス の 発 生 も防 止 で き る と い う の で あ る。 そ の た め に は 純 粋 な 執 行 シ ス テ ムを 設 計し なけ れば な ら な い 。 こ の こ とは フ ォ ーマ ル 組 織 を 制 度 化 す る こ と で あ る。 だ 昿 当 時 の 組 織 論 で は ,ブ ラ ウ ン も述 べ て い る よ うに フ ォ ー マ ル 組 織 は ,「( 集団 の心理 的 相互作用 とか個人が会社 と一 体化す るとい う) こ れ ら の 非 公 式 な 結 合 メカ ユ ズ21 ) ムを 破 壊 す る も の 」 と考 え ら れ て い た 。 こ れ に 対 し て , 彼 は , 「 今 日 こ れ ほ ど多 く の 人 々が 組 織 を 非 公式 な ま まに 維 持 す る こ とを 主 張 す る のは , 個 人 の 能 力 が 成 長 す る と き に , か れ が 思 い の ま ま に 自 分 の仕 事 を 拡 大 し , そ の 水 準22 ) を 上 昇 さ せ る こ と が で き る よ うに と の 希 望 か ら 出 て い る の で あ ろ うか 」,「 も
し 最悪 の浪費
人 間能 力の浪費
を 避 け よ うとす れば , 明確 な思考 と一
連 の 明 確 な 計 画 お よ び 政 策 が 必 要 で あ る と , 知 る べ き で あ る 。 非 公 式 組 織 の23) 理 論 は 無 為 無 策 の い い わ け に す ぎ な い と い え は し た い で あ ろ う か 」 と , 当 時 の 人 間 関 係 論 へ の 安 易 で , 無 批 判 な 傾 倒 の 風 潮 を 消 極 的 な 態 度 ・ 言 い 逃 が れ と 喝 破 し て い る 。 注1 )Brown,W 。GlacierProjectPapers,pp.144 ∼145. ( 前 掲 訳 書,pp.203 ∼205. )2 )Ibid. ,p.145. ( 前 掲 訳 書 ,p.205. )3 )Ibid.,p.196. ( 前 掲 訳 書 ,p.273. )4 ) 『 執 行 者 の 伝 達 経 路 の 緊 縮 』 に つ い て は ,ibid.,pp.198 ∼199. ( 前 掲 訳 書.pp.276 ∼277. ),『 並 立 関 係 』 に つ い て は ,ibid.,p.113. ( 前 掲 訳 書 ,p.188. ) を 参 照 の こ と 。 そ の 他,themanageronceremoved,loopedinstruction,adaptivesegregation と い っ た グ レ ー シ ャ ー ・ ス ピ ー ク が , 工 場 内 で 使 わ れ る の が 一般 的 で あ っ た 。5 )Pughetal.,op.cit., ( 前 掲 訳 書,p.92. )6 )Brown,W.,GlacierProjectPapers,p.146. ( 前 掲 訳 書,p.206 )7 )Ibid.,pp.164 ∼167. ( 前 掲 訳 書,pp 。231∼234. ) こ れ に つ い て の 記 述 は ,「 経 営 者 教 育 」(ManagementTeaching ) と い う 小 論 の 中 に み ら れ る 。 そ の 目 的 は , 仕 事 を10 の 範 躊 に 分 類 す る こ と に よ っ て , 例 え ば , ビ ジ ネ ス ・ ス ク ール な ど で の 経 営 者 教 育 ・ 管 理 者 訓 練 に 役 立 つ よ うに , 仕 事 の 機 能 ・ 次 元 に 細 文 化 す る こ と で あ った 。 な お, (Mk ) マ ー ケ テ ィ ン グ機 能 と い う名 称 は , ブ ラ ウ ン の そ の 後 の 著 作 の 中 で 使 わ れ た も の で , そ の 時 点 で は ,(S ) 販 売 機 能 に な っ て い た 。8 )Brown,W.,Organization,HeinemannEducationalBooksLtd.,1971,pp.eo ∼es.9
)Brown,W 。GlacierI ニ\oiectPapers ,p.197. ( 前 掲 訳 書,p.274. ). 北 野 利 信 『 前 掲 書Jp.31.10
』Brown,W 。ExplorationinManagement,JohnWiley &Sons,1960,p.207.11
)Jaques,E.,MeasurementofResponsibility,TavistockPublicationsLtd.,1962, 『 責 任 の 測 定 』( 北 野 利 信 訳 ) ダ イ ヤ モ ン ド 社1970 年pp.45 ∼46.:12 )Brown,W.,Organization,p.176. 工 場 委 員 会 の 仝 メ ン バ ―は , 議 長 と 書 記 を 除 い て 任 期 は1 年 間 で あ る 。 ま た , 正 当 な 理 由 な く し て 欠 席 し た メ ン バ ー は , 辞 任 し た と み な さ れ る 。 議 長 は , 毎 年8 月31 日以 降 に 開 催 さ れ る 最 初 の 会 議 に お い て , 工 場 委 員 会 の メ ン バ ―か ら 選 出 さ れ る 。 毎 年1 月1 日 か ら12 ヵ 月 間 そ の 職 に 就 き 再 選 は 可 能 で あ る 。 副 議 長 は ,2 月 の 最 初 の 会 議 に お い て , 委 員 会 の メ ン バ ー の 互 選 で 決 め る 。 任 期 は1 年 間 で あ る 。 そ し て , 書 記 は 工 場 の 組 合 員 の 全 て に 被 選 挙 権 が あ り 任 期 は2 年 間 で あ る 。13 ) ブ ラ ウ ン は , 当 初 “ 立 法 ” と い う 用 語 を , 全 て の 従 業 員 と マ ネ ジ ャ ー に 適 用 さ れ る 企 業 内 部 で の “ 法 律 ” を 工 場 協 議 会 で つ く る と い う 意 味 合 い で 用 い て い た が , 「( 立 法 と い う 言 葉 の ) 用 語 法 を 私 は 聞 違 っ て 使 っ て い た ら し い 」 の で , か わ り に “ 政 策 制 定 ”(Policy-Making ) と い う 言 葉 を 使 う こ と に し た と 述 べ て い る 。ibid.,p.196,fn.2.14 )Jaques,'E.,MeasurementofResponsibility, ( 前 掲 訳 書,pp.45 ∼47. ) ニ15 )Brown,'W 、,GlacierProjectPapers,pp.157 ―'158.( 前 掲 訳 書,p.222. )16 )Ibid. ,p.223,fn.1. ( 前 掲 訳 書,p.354. ) こ こ に は ,以 下 に 示 す よ う な1954 年 当 時 の 会 社 政 策 文 書 の 前 書 き が 転 載 さ れ て い る 。 「 こ の 文 書 は 取 締 役 会 が 工 場 協 議 会 の 協 力 を 得 て 会 社 の業 務 組 織 を 統 轄 し よ う と す る と き に 準 拠 す べ き 政 策 を 制 定 す る も の で あ る 。 こ の 政 策 に お い て は , 株 主 と 従 業 員 が 個 人 的 ・ 集 合 的 に 会 社 と そ の 従 業 員 全 体 に と っ て 最 大 の 利 益 と な る よ うな 政 策 を つ く り上 げ る た め 最 善 の 努 力 を 尽 す 意 欲 を 有 し て い る こ と , お よび , か れ ら が こ の 目 標 を 達 成 す る た め に は 政 策 に 存 在 す る 若 干 の 欠 陥 を 許 容 す る 意 思 を 有 し て い る こ と を , 仮 定 し て い る 。 こ れ ら の 仮 定 は , 協 議 会 の 審 議 を 全 員 一 致
り う り り り り り78901231112222 グレ ーシ ャー計画 の特 質 とその経営 組 織論 史上 の 意義51 に 到 達 す る ま で 続 行 す る と い う原 則 の 中 に 体 現 さ れ て い る 。」Brown,W.,Organization,pp.196 ∼197.Brown,W.,GlacierProjectPapers,p.38. ( 前 掲 訳 書 ,p.63. )Brown, χW.,Organization ,pp.221 ∼226.Brown,V^ 、,GlacierProjectPapers,p.147. ( 前 掲 訳 書,p.207. )Ibid.,-9.158 に( 前 掲 訳 書 ,p.223. )Ibid. ,v>.l<60.( 前 掲 訳 書,p.225. )Ibid.,p.162. ( 前 掲 訳 書,p.228. )
4.
官僚制 組織 として のグレ ーシ ャー 組織
ヶ リ ー(Kelly,JO
に ょ れば, 組 織とし て の グレ ーシ ャ ーは , い わ ゆ る官1
)
僚制 組織を発 展さ せた ものであ る とい う。 また, ジ ャッ クス も『 官 僚制 の一
般 理論 』におい て グレ ーシ ャ ー・ シ ステ ムを 官 僚制 組織 の一 シ ステ ムとして2
)
言 及し てい る。そこ で, まず 最初 に こ れら の見 解を吟味 するた めに , ドイ ツ
の社会学 者 マ ッ クス・ ウ ェ ーバ ー(Weber,Max
) の官 僚制 組織を み て み る3
)
こ とにし よ う。4
)
ウェ ーバ ーは, 組 織 の理 念型 とし て の官 僚制的 構造0 特 色を 次 の よ うに ま
とめてい る。
≒①
( 組織 のために 必 要 な正 規 の活動 は,一 定 の方法 で職務 とし て配 分さ5
)
れる」
ダ③
「 職務機 関 の組 織は ヒ:x,ラルヒ ーの原理にし たが う。 す な わち, 各下
級機関は上 級 機関 の統制 と監督 の もとに おか れ る」
し
③
「 抽象的 な規 則で で きた 恒常 的 な制度 に よって」 支 配 され, 「 …( モ
し て)
, これら の規則 の個 々 の事 例 へ の適 用 とい う形 を とる」
④
「 理念型 とし て の職員 は …形式 主 義 的な非 情性 とい う精神(に おいて),
す なわち 憎し み も愛 心な く, か くて愛 着 も熱 意 もな し にそ の職 務を おこ6
)
な う」
⑤
( それは 経歴を つ くる。 そ こには年 功 あ るい は功 労, また は両 者に よ7
)
る『栄進』 の制 度が あ る 」
要す るに, 理念 的な 官 僚制 組 織は, ①規則に もとづ く正 規 の活動, ③垂直
的次元におけ る階 統制, ③抽 象的 規則 の遵 守, ④没 人格 的 な行 動, そ し て⑥
特 定基準 での能力主 義 とい う特 徴に よっ て, 高度 の能率 を 達成す る こ とがで
き るとい うので あ る。
・
・
。
・│
”
これに対 し て は, 周知 の通 りマ ートン(Merton,R.K.
)
, セ ル ズ ユ ッ ク
(Selznick,P. ), あるい は グルドナ ー(Gouldner,A.W.
)らに よっ て, ウ ェ
ーバ ーの こ の合法的 支 配形態 とし ての官 僚制 組 織が, モ の 組織 行動に おい て
初 期 の目的 か ら派 生し た予期し なかった 結果, つ ま り逆機能 を生 じ させる こ
とが指 摘 さ れてい る。 この ことに よ り, この“官 僚制 ”
(Biirokratie;bureac-racy
)とい う用 語 は,そ の本 来の意 味 とは ち が って, モ の 目的 と手段を 取 り
違 え, 進歩 を 妨げ る, 同一 の基 準や手 順へ の奴隷 的 な 服従 を表 す言 葉 と誤解
され る ことに な る。 実際,す でに19 世 紀当 時 にお いて , 日常的 な用 語 とし て8
)
は 一 般的に 軽蔑 的 な意味を 含ん で用い ら れてい た ようだ が, こ れは本質的に
なん ら悪い 意 味を 持つ ものでは なく, 組 織の “理念型 ”を 意味 す る用語 とし9
)
て用い られ た のであ る。
次に上 述し た こ の理念型 とし て の官 僚制 組 織 の諸 特 徴 と グレ ーシ ャ ー組 織
のそ れ とを 比 較, 検 討す る ことに よって, グレ ーシ ャ ー組 織が官 僚制組 織の
発 展(修正)形 態 であ る ことを み てみ るこ とに す る。
①
規則 に もとづ く正 規 の活動
官 僚制 組 織で は, 仕事 が明確に 分業 さ れ, 担当 者に は各 職 務を効果 的に 遂
行 す る とい う責 任が 負わさ れてい る。 グレ ーシ ャ ーで は,「 会 社 の仕事 が割
り当 てら れた 地 位」,す な わち「 執 行役割 」と呼 ば れ る地位 の体系に 全従業員10
)
が当 ては め ら れ る。 雇用 役割 シ 不テ ムとし て 仕事 に結 びつ い た地 位 のネ ット
ワ ー ク, つ ま り執行 シ ス テ ムが構築 さ れてい る。 こ0 シ ステ ムは,従業員 の
責任 の所 在 を 明 確にす る ことを 前 提 とし て設 計 された ものであ る。 こ うす る
ことに よって, 従業 員 の潜 在能 力を 十 分に活 用 で きるば か りでな く, 存在す
るはず もない 超 人を 必要 とす る役割 シ ステ ムを 生 み出 す こ とを 回 避で きる。
③
垂直的次元におけ る階統制
伝統的組織論にみられる,いわゆるピラミッド型組織の下で の,階層的構
造と職能 分化がここでのポイントとなる。 とくに,垂直的次元において,こ
の組織構造が意味するところは,上位は下位 よりも権限が大きいとい うこと
である。 部下に対して上司が権限を有するとい うことは部下 の仕事に対して
責任を とるとい うことでもある。上司は部下に対して仕事上命令す る権限を
グlノーゾヤー計画の特質とその経営組織論史上の意義53 もち, 部 下 は そ れに 従 う義 務 を もつ わ け で あ る。 こ の際 , 部 下 の 活 動 に 対 し て 効果 的 に 命 令し , 調 整 し , そ し て 統 制 す る 原 理 が 「 命 令 の一 元 性 」 で あ る。 グ レ ーシ ャ ー ・ シ ス テ ムで も, 各 々 の 部 下 は , ワソ ボ スを 持 つ よ うに 配 置 さ れて い る。 ウ ェ ーバ ーに よれ ば , こ の よ うな シ ス テ ムは , し っ か りと 決 め ら れた 方 法 で , 低 位 の も の が 高 位 の 権 威 に 上 訴 す る 可 能 性 を 被 管 理 者 に 提 供11) す る と い う こ と で あ る 。 こ れ は , ま さ に グ レ ーシ ャ ーの 上 訴 シ ス テ ムが 行 っ て い る こ と で あ る。 こ れ は , 上 司 に よ づ て 下 さ れ た 賃 金 , 昇 進 , 雇 用 に 関 す る 決定 に 不 満 が あ る 場 合 , よ り高 位 の も の の判 断 を あ お ぐ と い う シ ス テ ムで あ る。 グ レ ーシ ャ ーの 上 訴 シ ス テ ムが 導 入 さ れ た 時 , そ れ は 裁 判 め 性 格 を 上 司 一部 下 の 関 係 に 確 実 に 適 用 す る 独 立 し た シ ス テ ム と考 え ら れ て い た が , 次12 ) 第 に, 人 事 担 当 者 に よ る 第 二 次 的 な 検 閲 と 考 え ら れ る よ うに な っ て い った 。