グレーシ ャー研究は,ジ ャックス, ブラウンそし てタ ヴィストック研究所 の共同研究の成果であ るが,本稿では, とくにブラウンを取 り上げレ グレー シ ャー計画実施の背景やト ップ・マネジメントとし てのブラウンの組織開発 に関する政策 の変遷について検討を加えてきた。そこからは,次 のようなこ とがわかった。
第一に, ブラウンは強いリーダーシ ップと高いカリスマ性に よって,次々 と新しい経営手法を導入し より高い収益性を上げ ようとしていた。そこから は彼の経営者としての進取の精神を伺い知るこ とができる。 一例としては,
モの時代の最新の研究成果を取 り入れ実践の場に応用していることである。
岑らに,それが失敗するとみるやいなや,原因を究明す るた めの手段を講じ,
グ /‑ ジャー計画の特質とモの経営組織論史上の意義63 モ の結果 とし て ブ ラ ウ ン は 官 僚制 組 織 とし て の グ レ ーシ ャ ー・ シ ス テ ムを 構
築 する。 執 行 シ ス テ ムだ げ を み れ ば , ウ ェ ーバ ー の理 念 型 に 類 似 し た , か な り高度 に 官 僚化 さ れ た 組 織 とい え る が , こ れは あ く ま で も業 務 の 効 率 化 を 高 め るた め に 執 行 シ ス テ ムか ら 人 間 関 係 的 要 素 を 排 除 し た も の に す ぎ な い 。 従 業 員 の もつ 社 会 的 ス ト レ ス に 対 し て は モ の他 の 三 つ の シ ス テ ム一 代 表 ・ 立 法 ・上 訴− が受 け 皿 と た っ て い る 。 ブ ラ ウ ン の 真 意 は , 仕 事 シ ス 尹 ムに 個 人 的 感情 を 持 ち 込 む な とい う こ と で あ ろ う。
次 に , わ れ わ れは 本 稿 に お い て , グ レ ーシ ャ ー組 織 と 官 僚 制 の理 念 型 と の 類 似点 を 指 摘 す る こ と で グ レ ー シ ャ ー組 織 を 高 度 に 官 僚 化 さ れ た 組 織 とし て 評 価 す る と と もに , そ れ が い わ ゆ る 官 僚制 の逆 機 能 に 修 正 を 加 え た か な り機能 的 な シ ス テ ムで あ る と い う こ と を 明 らか に し た 。 す べ て の フ ォ ーマ ル 組 織 とい う も の は , 程 度 の差 こ そ あ れ 官 僚 制 組 織 で あ り, 企 業 組 織 は 官 僚制1
組 織の典型あ るい は本 流 とい うことがで きる。 こ の ような理 由 から, グレ ー
)シ ャー組織 も官 僚制 組 織 であ る が,ただ 官 僚制 とい うと ど うし て もそ の機能 よ りも逆機能 が問 題 と なる。そ うし た点 か ら グレ ーシ ャ ー組 織 もシ ス テ ムと し てかな り弊害 があ る ような先 入観 が もたれ る。し かし , 会 社 の 憲法 と し ての政策文 書に 基づ く職 務遂 行に よる制 限 があ るとは いえ ,従 業 員 にはあ る程度 の自由裁 量 が認 め られ てい る。 グレ ーシ ャ ーでは 官 僚制 組 織 の特色で あ る没 人格的 な 行動を とってい て は業 績 が上げ られ ない シス テ ムに なってい
る ので ある。
第三 に, これ まで 繰返し 述べ て きた ように, グレ ーシ ャ ー計 画 の成 果は,
こ の妥当 性 と信頼性を 理 由 とし て, (研究が行われたイギリスでの評価を別に し て)ほ とんど の経営 学 者 ・実務 家 か ら無 視されて きた が, 一 部 の研究 者は,
ブ ラウン理論を 官 僚制 組 織 の修正 理論 とし て位置づ け, ブ ラ ウンを課業 アプa
ーチの代表 的論 者 とし て評 価し てい る。 ブ ラウン理論 は, 官 僚制 組 織論 の
発展段階 とし て位 置づ け られ るので あ る。 また, これは 経営 組 織 の官 僚制 化
とい う観点 か ら経 営 組 織論 史上 に位 置づ け るこ とがで き る。 つ ま り,「 仕事
の組織 」= フ ォ ーマ ル組 織に重 点を お いた ものとみる ことが で きる。 とはい
っても, ブラウ ン理論 は, い わ ゆる伝 統的あ るい は古 典的 経営 組 織理論 で は
ない ことは 明らか であ る。 な ぜ なら「 人間 の組 織」 とい った非 合理的 な側面
砕 も配 慮し たシ ステ ム理 論 であ るか ら であ る。 ブ ラウ ン の業 績 は, 構 造論 的
では あ るが,「 仕 事の組 織 」と「 人 間 の組 織」を総 合し 『 人 間 の仕事 の組 織 』 を構 築し た ものでは なく, 両 シス テ ムを 明確に 区 別し た ところ にあ る といえ
よ う。 ・ 十
最 後に, ブ ラウン理論 は, 目 標管 理や シス テ ム論 と くに 社 会・ 技 術システ ム論 の萌 芽を 発 するこ とで, 現代 経営管 理論 あ るいは 組 織論 と交 錯し てい る2 とい うこと であ る。 )
① 目 標 に よる 管 理 と ブ ラ ウ ン 理 論;
目 標 に よ る 管 理 (ManagementByObjectives;MBO ) と は , 一 般 的 に , 会 社 の 目 標 と個 人 の 努 力 目 標を 統 合 す る こ と で 会 社 の業 績 を 向 上 さ せ , 従業 員3
) を 動 機 づ け , 評 価 し , そ し て 訓 練 し よ う と す る シ ス テ ムの こ と で あ り, こ れ に つ い て は , ド ラ ッカ ー(Drucker,P.F. ), ツ ユレ イ (Schleh,E.C. ), マ グ4
)
レ ガ ー(McGregor,D. ), そ し て マ ッ コ ソ キ ー(McConkey,D.D. ) な どに よ る 貢 献 が あ る こ とは 周 知 の 通 りで あ る。
さ て , ブ ラ ウ ンに よれば , グ レ ー シ ャ ーで は 従業 員 に 対 し て ,(a)仕 事 の 指 定 要 素 を 政 策 (文 書) と 目 標 を 用 い て 表 示 し ,(b)指 定 さ れ た 限 界 内 で の 自 由 裁 量 を 認 め る こ と で , 企 業 が 従 業 員 に 要 求 す る 行 動 と 個 人 の 取 ろ う と す る 要
求 と の 間 で 発 生 す る コ ソ フ リ ク ト を 減 少 さ せ る こ と で 大 き な メ リ ッ ト を あ げ5
) ‥ ‥. ‥...
てい る とい う 「。 つ ま り, 裁量 の使用 に 限度を 課 すこ とに よって はじ めて従 業 員 の能 力を 最 大 限に有 効活用 す るこ とが で きる のであ る。
こ れにつ い て, 法政大 学 の松 岡磐木 教 授は,こ のブ ラウン の主 張 する指 定 限界 内で の 自由裁 量に 基づ く 行動を「 方 針(policy)に よる管 理 」 と呼び, 目 標に よる管 理 の一 類型 とし て取 り上げ てい る。 す なわ ち √従業 員 の行動をそ の上 位 者 の指 示 や方 針に よっ て規定し ,そ の枠 内で自 己 の判 断に 基づ いて 行 動す る 自由 裁量 を認 めれば ,指 定さ れた 限界 内 で の自 発的 行動 は自己統制O6 対 象 とな る とい うのであ る。 )
こ の よ うに, ブ ラウン理論 は 目標を 達成 す るため の 方法 であ り, 目標に よ る管理 も結 果指 向 の管 理技 法であ る ので, 両者 は同じ も のとい え よ う。
③ システム理論とブラウン理論;
いわゆる一般シ ステム理論は,われわれに企業 内0 各 分野や諸部門を相互
グ1/ーシャー計画の特質とその経営組織論史上の意義65
関 連づ け る た め の 概 念 的 枠 組 み を , さ ら に シ ス テ ムズ ・ ア プ ロ ーチ は , 問 題7) を 全 体 の 枠 の 中 で 解 決 す る と い う視 点 を 与 え て く れた 。 そ の一 つ は , 企 業 組 織 は シ ス テ ムで あ る とい う考 え 方 で あ り, そ れ に し た が え ば , ブ ラ ウ ン理 論 は , 執 行 , 代 表 , 立 法 , そ し て 上 訴 とト う四 つ の シ ス テ ムに よ っ て 組 織を 分 析 す る 規 範 的 な シ ス テ ム理 論 と い え よ う。 さ ら に , 組 織 は 社 会 シ ス テ ムあ る い は社 会 ・ 技 術 シ ス テ ムで あ る とい う観 点 に 立 てば , ブ ラ ウ ン の 課 業 論 は , 組 織 が 仕 事 , 資 源 そ し て 技 術 の 関 数 で あ る とい う点 か ら , 社 会 に 役 立 つ 技 術 の 型 が 社 会 構 造 の 決 定 要 因 で あ る と い う社 会 ・ 技 術 シ ス テ ム論 で あ る とい え よ う。
ス コ ッ ト (Scott,W.R. )は , い わ ゆ る クr=・− ズ ド ・ シ ス テ ム と オ ープ ン 。8 シ ス テ ム と い う二 分 法 を 用 い て 組 織 モ デ ル を 史 的 展 開 順 に 四 つ に 整 理 す る。) こ れに よ れば , ブ ラ ウ ン 理 論 は , オ ー プ ン ・ シ ス テ ム の 合 理 的 モ デ ル に該 当 し よ う。 こ れ は, ( 環 境 と の 関 連 に お い て 組 織 構 造 自 体 のあ り方 も考 慮 に 入9 れ な が ら, 複 雑 な 組 織現 象 の 全 体 像 」を 解 明 し よ う と す る も の で あ る。)
また , ア ス ト レ ー =ヴ ァ ソ ・ ド ・ ヴ ェ ソ(Astley,W.G.&VandeVen ) は , 分 析 レ ベ ル ( マ クロあ るいは ミクO そ し て 行 動 の決 定 因 ( 決定論的あ る い
は自由意志論的)とい う観点か ら, 現代 組織論 を, (a)自然 選択 論
決 定論 的 ,(b)集 合 行 為 論
ミ クロ・ 決定 論的, そし て(d)戦 略 選択 論
マ ク ロ ・