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「地域中核病院の総合内科訪問診療による在宅療養を支えるシステムを構築する」

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Academic year: 2021

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(1)2013 年度(前期)一般公募 「在宅医療研究への助成」完了報告書. (テーマ). 地域中核病院の総合内科訪問診療による在宅療養を支 えるシステムを構築する。. (申請者名). 山田. (所属機関・職名). 江別市立病院. (所属機関所在地・電話番号). 〒067-8585. 和美. 総合内科部長 江別市若草町6 011(832)5151. (提出年月日). 平成 26 年 8 月 20 日. 1.

(2) 1.研究目的 今後急増することが予想される医療必要度の高い老年期患者の療養形態のひ とつとして、在宅療養の必要性が高まってきている。現行の急性期病床・療養 病床への入院対応ではすでに限界にきている。 一方で、国民の意識調査では 60%以上の国民が終末期における自宅療養を望 んでいる。 1) 訪問診療は定期診察・投薬のみの外来診療に近いものから使用可能な医療器 材を導入し入院に近い医療までの幅広い対応が可能であり、この分野の有効な 運用が今後の医療を支える土台となりうると考える。この研究では病院型訪問 診療をコアとした在宅医療支援の可能性を提起したい。 当院内科はかつて、内科医全員退職により内科病棟の閉鎖、外来診療縮小を 経験しており、この経験をもとに臓器別縦割り専門医医療から総合医による総 合内科医療を導入した日本でも特色のある病院となっている。総合医研修の一 環として訪問診療を導入した経緯があり、当院の総合内科 100 床がバックベッ トとなり、外来・入院・訪問診療で切れ目なく医療を提供できる環境となって いる。さらに包括的判断を得意とする総合医による訪問診療という特徴があり、 導入や検査・治療入院においてもその必要性・有効性が適切に判断され、医療 行為の適正化を図ることが可能である。これにより、地域における医療・介護 資源の有効利用に寄与できうると自負している。 現行の医療保険制度では診療所型訪問診療が優遇され、病院型訪問診療は尐 数派となってきている。一方で、優遇され年々増加しているはずの在宅療養支 援診療所での看取り実績率は、平成22年でも 47%、在宅療養支援病院ですら 39%と診療所型訪問診療を経済的に誘導しても、期待通りの成果が実際には出 てきていないのも事実である。 2) 当院においてはその経済的メリットがない中でも、臨床研修プログラムに取 り入れることによる人材育成目的と、退院調整時のひとつの選択肢としての役 割を重視し継続している。この研究では時代の趨勢には逆行しているように見 える自治体の総合病院において、総合内科が行う訪問診療の実態を明らかにし、 病院型訪問診療が有効な患者群を同定し、診療所型訪問診療との役割分担とネ ットワーク化を模索する。 実態調査から得られる、患者背景、適応、その後の経過、入院病歴、終結像 から、病院型訪問診療と診療所型訪問診療のどちらがより適切であったかの判 断を行うことが可能となる。これを踏まえて今後の患者導入時の適応を最適化 することができ、訪問診療の病診連携を進めることが可能となる。 2.

(3) また、病院型ならではの外来・入院を組み合わせた、変則型訪問診療の活用 可能性を探る。難航しがちな要介護状態・医療依存度の高い入院患者の退院調 整のひとつの選択枝としての価値も期待できる。 一方で将来の医療を担う人材育成の場としての訪問診療を推進し、病院のベ ッド上だけではなく、患者の実際の生活状態まで配慮できる臨床家を育てる役 割も期待できる。この視点は、核家族化が進み自己の生育の中で多様な生活環 境・世代間差を学ぶ機会が減ってしまっている若い世代には貴重な経験となる と思われる。将来の在宅医療家への導入の役割を担えると思われる。. 2.当研究の背景 Ⅰ.江別市について. 3). 江別市は人口 189 万人(平成 23 年 10 月現在)の札幌市の北東に接する人口 12 万人の市である。面積は 187.9km 2 ほどで東京 23 区合計面積の約 30%程度であ る。札幌市中心部から JR で約 20 分、一般道路使用の車で約 40 分の通勤・通学 圏内のため、札幌のベットタウンとして昭和 50 年代より宅地造成が進み、人口 が増加した。平坦な地形で市街化区域内のほぼ 75%が居住地域で下水道普及率 は 97.4%である。 江別市は国道12号線とJR函館線に沿って細長い形になっている。西から 東に大麻地区、野幌地区、江別地区の位置関係となる。江別市内人口は平成 24 年 4 月 1 日現在で 12 万 940 人、そのうち 65 歳以上の老年人口比率は 23.5%で ある。大麻地区は札幌市に接しており人口 2.8 万人. 最も古い新興住宅街であ. ったため現在急速に高齢化が進んでおり老年人口は 26.4%を占める。この地区 の問題点は宅地造成が北海道でもごく初期に行われたため、狭い道路で分けら れた細かい区画となっており、しかも通り抜けのできない袋小路も多く冬場の 排雪が難しい構造となっている。高齢化に伴い冬場の除雪は大きな問題となっ てきており高齢者・障害者の自力外出の妨げとなりかつ転倒などの外傷リスク にもなっている。野幌地区は江別の商業地区・行政機関が集中する地区で新興 住宅地の造成が今も行われ、人口 4.3 万人. 老年人口比率は 23.1%。江別地区. は基盤の農業・工業地帯と新興住宅地を含む地区で人口 5.0 万人 率は 20.6%である。(平成 23 年 10 月 1 日現在). 老年人口比. 江別地区の特に農業地帯は冬. 場にはさえぎる建物がない道路に石狩湾から吹き込む強風のため頻回に吹雪や 地吹雪になる。道路での視界が遮られ交通にも支障をきたす。しかも公共交通 機関は利用できるものがほとんどなく自家用車での移動ができなければ陸の孤 島となってしまう地区である。ADL の低下した患者にとって特に冬場の通院は困 3.

(4) 難となる土地柄である。. Ⅱ.. 江別市の医療資源について. 3). この地域の医療資源は平成 22 年 10 月 1 日現在、病院 5 箇所、診療所 71 箇所 (歯科を除く)で、病床数は病院 940 床(一般 623 床. 精神 138 床. 療養 179 床)、. 診療所 102 床の計 1042 床、一般医師数は 152 人で医師一人当たりの人口は 804 人となっており全国平均 484.7 人より明らかに多く、人口の割に医師数が圧倒 的に尐ない地区となっている。大都市近郊で高い専門性を持つ医療機関が近く、 通院も可能なこの地域の利点によるものか、北海道という広い地域の医療をカ バーするうえで後回しになりやすい位置関係によるものかは不明ではあるが、 一旦、通院困難な状態になってしまった患者にとっては尐ない医療資源環境で あることは想像に難くない。それに加えかつて地域の開業医が地域住民のかか りつけ医として慢性疾患の管理、予防、生活一般の相談ごとを一手に引き受け、 一方で病院は特殊な検査や治療を引き受ける、そんな役割分担がはっきりして いた時代もあった。しかし最近では患者の専門医志向もあり、開業される先生 方がご自分の専門性を前面に出すスタイルをとられることも定着してきており、 診療所にても臓器別医療がおこなわれ、地域でかかりつけ医の役割を担ってく れる医師がさらに尐なくなっている。このため複数の内科臓器別診療所にかけ もち通院していた患者が ADL 低下をきたし通院困難となってきたことで当院総 合内科に紹介転医するケースも実際に増加してきている。 当地での訪問診療実施医療機関(歯科を除く)は、病院 2 箇所、有床診療所 2 箇所、無床診療所 5 箇所となっている。しかし訪問診療を専任で行っている医 師は一人もおらず、すべての機関で外来診療を行いながら必要に迫られた患者 に対して訪問しているのが現状である。. Ⅲ.当院総合内科の背景. 4.5.6). 全国で地域医療の崩壊、病棟勤務医の慢性的不足が問題になる中、当院は平 成 18 年 10 月に 12 名の内科常勤医が全員退職する医療崩壊を経験した。もとも と当院は地域唯一の総合病院で医療崩壊前は大学医局からの医師派遣により 15 診療科、一般病床 278 床・精神科病床 130 床(合計 408 床)となっていた。 このうち内科領域は臓器別の循環器科、呼吸器科、消化器科、神経内科、糖尿 病・甲状腺疾患を扱う内科の 5 科・医師 14 人による臓器別縦割り専門医医療の 形態で 98 床を担っていた。 平成 16 年に新医師臨床研修制度が開始され、大学医局への入局者が減尐した ため関連病院への医師派遣が困難になり、必然的に「大病院への医師派遣の集 4.

(5) 約化」と「中・小病院からの医師の引き上げ・派遣中止」をせざるを得なくな り当院は後者に該当することとなった。医師数の減尐に伴い救急受け入れを主 に担っていた内科常勤医の過重労働が引き起こされた。その結果、勤務医から 診療所開業を選択する医師が相次ぎ、後任医師のめどがたたない状態のまま内 科医師全員退職にいたることとなった。内科病棟を閉鎖し内科疾患を有する患 者の入院診療機能が停止する事態となり、外来診療の縮小をもせざるを得なく なった。 その後地域医療振興協会から平成 18 年 12 月に総合医の診療応援を受けるこ とができ、北海道保健福祉部、札幌医大地域医療総合医学講座の協力を得て、 総合医の増員を行うことができた。この常勤医確保の経過のなかで専門領域に とらわれることなく幅広い疾患に対応する総合医による総合内科医療を内科の 基盤にすえることで外来診療の拡充、入院診療の再開を行い、平成 20 年 4 月総 合内科を院内標榜するにいたった。全国の大病院には総合診療科・総合内科を 有する病院も多々あるがそのほとんどが臓器別専門科の隙間を埋めるように後 付けで創設されており、専門科で診断にいたらなかった症例を診療することが 多く、総合といえども診療内容に偏りが生じやすくなっている。一方で当院は 内科医ゼロから出発し地域の必要に迫られて尐ない内科医でできるところから 診療体制を整えてきたため、内科の初診患者・救急患者を総合内科がまず主体 的に診て、その上で必要であれば専門内科や他科への相談・紹介をおこなうと いう日本でも特色のある病院となっている。当初は初期診断・救急処置を行っ たうえでの他院への紹介・搬送も多かったが、総合内科医の増員にともない対 応範囲が広がり、コンサルタント機能をもつ尐数精鋭の臓器別専門医との連携 により当院内で診療を完遂できる分野が増えてきている。現在は総合内科と臓 器別専門内科の協働によって内科領域をより広く、深くカバーする体制を整え ている途上である。 一方で人材確保のため自前での総合内科医の育成が必要となった。当院では 人材育成・教育を重視し医学生の地域医療実習を受け入れ、休止していた初期 研修を再開し、後期研修医の自院採用の他に他機関との研修プログラム連携を 行っており、年々研修医が増加している。当院で研修した医師がその後スタッ フとなり研修医の指導にあたりながら更なる研鑽を積む流れが形成されてきて いる。 このような中で再開した外来診療と入院診療において在宅希望で通院困難に なってきた患者の受け皿として平成 19 年 8 月総合内科による訪問診療が開始さ れた。こうして当院の総合内科 100 床がバックベットとなり、外来・入院・訪 問診療で切れ目のない医療を提供できる環境が作られている。 5.

(6) 3.研究計画・方法 本研究は、Ⅰ.現段階での実態調査、Ⅱ.地域連携の模索、Ⅲ.人材育成の3つ を短期研究の柱とし、それを踏まえて、Ⅳ.在宅医療支援センター作りとその運 用を長期目標とするものである。 Ⅰ.訪問診療5年間の実態調査を行い、診療所型訪問診療との差別化できる部 分を検索する。病院型の有効利用可能性の探求、実際の経済効果の検討を行い、 現状の医療体制においてこの地域での継続可能な医療・介護環境となりうるの かを考える。 Ⅱ.地域への啓蒙活動・他職種との連携. 広報紙、市民講座などで、ひとつの. 療養形態として提案を行う。 Ⅲ.人材育成. 医学生・研修医の地域医療研修受け入れ、ナース・プラク ショ. ナーの臨床研修受け入れ。 これらを踏まえて、病院型訪問診療が地域において有効であるならば、次のス テップに入ってゆく。 Ⅳ.地域の在宅医療支援センター作り。現在想定している内容は、この地域の 介護・医療情報の集約・共有の基盤づくり、診療所・訪問看護ステーション対 象のサプライセンター、検査・入院の受け入れの簡素化・簡便化システムの構 築である。. 4.研究結果 今回はⅠからⅢの短期研究について実施した。. Ⅰ.訪問診療5年間の実態調査 5 年間の導入例 199 人の背景、訪問診療導入の理由、実際に行った医療処置、 必要とした介護サービス内容、診療期間を行った期間・回数、終結例 157 例で の終結までの入院状況、終結の状態などの実態を調査した。すでに解析が進み 結果は煩雑となるので別掲 1.に詳細をまとめて掲載した。この内容は研究会や 学会に発表することができ、現在まで 2 本の論文にまとめて 1 本は公表済みで もう 1 本は投稿中である。 終結時以外の入院を要した患者は実際には全体の 1/4 程度でこのうち予測不 6.

(7) 能の緊急入院(感染症の併発・慢性疾患の急性増悪)はのべ入院回数の 3/4 で あった。訪問診療期間の中央値が 2 週間であることから導入後 1 か月を過ぎて 安定して過ごせる廃用疾患・慢性疾患のケースでは診療所型訪問診療への移行 ができる可能性があると思われた。一方で退院し訪問診療を導入しても病状が 不安定で 1~2 週間で再入院するケースも多く入退院が頻回で煩雑になる例では 病院型での対応メリットが大きいと思われた。特に癌末期だが自宅で尐しでも 長く過ごしたいが病状悪化時には速やかに入院を希望するケースでは担当医が 切れ目なく関われることで不安の軽減にもなり終末期を有意義にすごすことを 可能にしていた。また冬季のみ訪問診療を行い雪がなくなったら電動車いすで の自力外来受診へ移行する季節限定例、レスパイトケアと病状評価目的の短期 予定入院・症状緩和目的の短期入院を入れながら訪問診療をおこなう例など、 変則型の訪問診療も有効であった。 実際の経済効果の検討については在宅療養を行った患者とほぼ同じ状況の入 院継続患者とをペアリングし必要となった医療費・介護費を比較する研究を共 同研究者の芋生(高橋)・年藤と共にパイロットで行ってみたが、マッチングが 難しいのと昨今の介護保険と医療保険の改正が頻回であることが障害となり比 較が簡単ではない事がわかった。この点は残念ながら最終的に結果が出せなか った。今後制度が安定した段階で再挑戦したいと考えている。 (1)研究会・学会発表 2013.6.5 大阪. 第 55 回日本老年医学会「大都市近郊地域中核病院の総合内科. 訪問診療の実態調査」江別市立病院 2013.8.6 筑波. 総合内科. 山田. 和美(別掲 2.). 第 39 回日本診療情報管理学会学術大会「在宅医療(終末期医. 療を含む)の提供と診療情報管理」. 江別市立病院. 高橋. 文(投稿中論文との. 関連があるため現時点では内容の公表を差し控える) 2013.12.07. 札幌. 第 135 回北海道診療情報管理研究会「病院型在宅医療提. 供に関する診療情報の把握とその分析」. 江別市立病院. 高橋. 文(投稿中論. 文との関連があるため現時点では内容の公表を差し控える) (2)論文 山田. 和美. 「総合内科訪問診療終結例 157 人の実態調査」江別病院誌7. (1)2014:6-11(別掲 3.) 高橋. 文. 「総合内科による訪問診療導入後の病院型在宅医療の診療情報分. 析」投稿中. Ⅱ.地域への啓蒙活動・他職種との連携 7.

(8) 広報紙、市民講座などでもうひとつの療養形態として市民への提案をおこな っている。家族からの依頼により導入するケース、ケア・マネージャーからの 紹介で導入するケース、市内・市外の他院からの紹介で導入するケースも増え てきている。3 月には在宅医療推進のための江別市における多職種連携研修会に 参加し当院の訪問診療の実態を報告し当院で行いうるサポートを提示し多職種 とのさらなる連携をすすめている。今後も広くすすめて、病院型訪問診療のメ リット・デメリットを使用者側、関係者側から確認しより使いやすい形態に変 化させていきたいと考えている。御本人・御家族、介護スタッフ、医療スタッ フ間の毎日の状況連絡・確認に役立つベットサイドノートを作成した。今後使 用しながらさらなる改善をしていきたい。 (1)多職種研修会 2014.3.8.江別市. 平成 25 年度「在宅医療推進のための江別市における多職. 種連携研修会」にて「江別市立病院の訪問診療」について報告(別掲 4.) (2)ベットサイドノート 患者さん・ご家族、訪問介護、訪問看護師、訪問診療医師の間で自然発生 した療養覚書を整理し今回の研究費の支援をえて、共同研究者の角谷・清水や 訪問看護師たちが中心となり作成し印刷物とし患者さん宅や江別市内の訪問看 護ステーションに配布予定である。 1.療養記録(別掲 5.) 2.看取りのパンフレット(別掲 6.) 3.褥創予防のパンフレット(別掲 7.). Ⅲ.人材育成 医学生・研修医の地域医療研修受け入れ、ナース・プラクショナーの臨床研 修受け入れを行っており、将来の担い手を育てている。若い世代のみではなく 今後訪問診療を担っていく希望のある医師の研修受け入れもおこなっている。 25 年度の医学生の訪問診療参加者は 2 医科大学から 2 年生から 6 年生まで 10 人 16 回となっている。助成期間内(平成 25 年 9 月~26 年 8 月)には自治医大 4 年生 1 人 5 年生 1 人・札幌医大 2 年生 2 人 5 年生 17 人の計 21 人 22 回となっ ている。地域の実際の患者さんの生活状況まで関わることで地域医療への動機 づけとなっている。ナース・プラクショナー研修生は 3 人であった。末期癌患 者や廃用症候群の症状コントロールや在宅看取りの実際を主体的に研修しても らった。症例はまだ尐ないが後期研修医が入院で担当し在宅療養になっても引 き続き訪問診療を行い看取りまで対応するケースも出てきている。 8.

(9) 2014.7.22 医学生・初期研修医向けレクチャー(別掲 8.). 5.感想 今回は勇美財団の助成を受けて以前からすすめたかった事業の振り返りのため の研究ができました。毎日の業務の中で 1 例 1 例にはその場その場でできうる 限りの対応をしてきていますが症例を重ねながら全体像がつかめていなかった ことが認識できました。当科の訪問診療の歴史はまだ浅く、この地域での存在 もまだ認知が不十分と思われ、必要な状態なのに出会えていない患者さま・そ れを支えるご家族もまだまだいらっしゃると思います。1 例 1 例への関わりの中 で多職種の連携の力を高めて広げて江別でできる在宅療養の幅と深みをひろげ る活動をこれからも続けていきたいと思います。次の 5 年で再度実態を見直す 予定です。その際には今回との比較で差がでてくると幸いです。御援助ありが とうございました。 「公益財団法人. 在宅医療助成. 勇美記念財団の助成による」. 6.参考文献 1)終末期医療のあり方に関する懇談会:平成 20 年終末期医療に関する調査、 厚生労働省 2)鳥羽. 平成 22 年 10 月第6回懇談会資料 研二:在宅医療の体制構築に係る指針. 病院 71 巻 3 号 2012 年 3 月. 190(22) 3)江別市統計 4)梶井. 江別市. 平成 24 年度. 直文:内科医ゼロから再生までの軌跡―総合内科が地域医療を救う!. 北海道江別市―医療再生はこの病院・地域に学べ! 洋泉社新書 5)梶井. 2009,79-101. 直文:ピンチ(崩壊の危機)をチャンス(再生の好機)に~内科医ゼロか. ら総合内科を中心に病院再生 6)濱口. 東京、(株)洋泉社、初版、. 病院 71 巻 2 号 2012 年 2 月 132(44). 杉大(研究代表者):厚生労働科学研究補助金. 地域医療基盤開発推. 進研究事業「若手総合医育成による医師不足対策について」平成 21 年度~22 年度総合研究報告書、平成 22 年度総括研究報告書、2011. 9.

(10) 別掲 1.. 訪問診療 5 年間の実態調査結果 (1).対象・方法(図1、図 2) 平成 19 年 8 月から開始した総合内科による訪問診療の初回患者数の時間推移 を図1に示した。22 年までは月に 2~3 人の導入で推移している。医師数の増加 と安定した体制が取れるようになってきたため増加傾向となってきている。. 人数(人) 35 30 25 20 15 10 5 0. 26. 20 11. 13. 16. 19 14. 14. 17. 29. 20. 図1 訪問診療開始患者数推移 月別の訪問診療実施数の推移は図2に示した。開始患者数の増加に伴い増加 傾向となっている。診療回数と診療人数を見るとほとんどの患者が月 1 回の訪 問となっている。当院では寝たきり老人在宅総合診療料を加算していないため、 病状の悪化時には臨時の訪問を行っているが、安定して経過されているときに は月 1 回の定期訪問となっているためである。. 10.

(11) 60 訪問診療回数 訪問診療人数. 40. 20. 0 19年 20年. 21年. 22年. 23年. 24年. 図2 訪問診療実施数推移(月別) 本研究の対象は平成 19 年 8 月より平成 24 年 9 月までに訪問診療を受けた 199 人で訪問診療継続中の 42 人を含んでいる。 方法は患者背景・病歴を平成 24 年 10 月以降に外来カルテ・入院カルテから 検索し検討をおこなった。. (2).結果 1.対象患者属性(199 人の基礎データ)(表1). 11.

(12) ①性別 男性 87 人(43.7%)、女性 112 人(56.3%)と女性が多かった。23 年 10 月 1 日現 在の江別市の人口 12.2 万人に対し男性 5.8 万人女性 6.4 万人と女性が多く、特 に 65 歳以上の 2.8 万人では男性が 1.2 万人(42.78%)、女性が 1.6 万人(57.21%) の人口分布となっている。 1) 平成 20 年の厚生労働省「患者調査」による全国の 受療率(入院・外来)、北海道の受療率(入院)の人口 10 万対や推計患者数で も女性が多いことから、 2) 妥当な分布とおもわれた。 ②訪問診療開始時年齢分布(図 3A) 年齢分布では 35 歳未満 3 人(1.5%)、35~44 歳 3 人(1.5%)、45~54 歳 0 人 (0.0%)、55~64 歳 13 人(6.5%)、65~74 歳 21 人(10.5%)、75~84 歳 77 人 (38.7%)、85~94 歳 72 人(36.2%)、95 歳~10 人(5.0%)で、65 歳以上が 9 割 を占め、75 歳以上の後期高齢者で 8 割を占めている。全国と比較すると平成 20 年 11 月実施患者調査では 65 歳以上の外来患者 307.7 万人の 2.8%(86.6 千人) が在宅医療(歯科を除く)を受けており、在宅医療を受けている患者 98.7 千人の 12.

(13) 77%(86.6 千人)が 65 歳以上となっている。 3) 当科の訪問診療患者はさらに高齢 傾向が高いことが分かる。 ③住所分布 江別地区 109 人(54.8%)、野幌地区 58 人(29.1%)、大麻地区 30 人(15.1%)、 市外近郊 12 市町村 2 人(1.0%)、であった。基礎事項として江別市内人口は平成 23 年 10 月 1 日現在で 12.2 万人となっており江別地区 5.0 万人(41.0%)、野幌 地区 4.3 万人(35.4%)、大麻地区 2.8 万人(23.5%)の人口分布となっている。1) 野幌地区には訪問診療を行っている病院があり、大麻地区には訪問診療を行っ ている有床診療所があることが大麻・野幌地区と比べて江別地区の分布が高い 要因と思われる。 ④同居人数 独居 8 人(4.0%)、2 名 57 人(28.6%)、3 名 58 人(29.1%)、4 名 35 人(17.6%)、 5 名 18 人(9.0%)、6 名 13 人(6.5%)、8 名 1 人(0.5%)、施設入所 8 人(4.0%)、 不明 1 人(0.5%)となっており、夫婦もしくは親子が中心で独居の患者も 4%含ま れ、マンパワー不足の世帯が中心となっている。日本全国の世帯構造別にみた 65 歳以上の者のいる世帯(全世帯の 4 割を占める)では 65 歳以上の者のみの世帯 が平成 23 年で 49.2%となっており、単身世帯 24.2%、夫婦のみ世帯 30.0%、親 と未婚の子のみの世帯 19.3%、3 世代世帯 15.4%、その他の世帯 11.2%の分布と なっている。4) 当院の訪問診療の患者は ADL 低下に伴う通院困難者が多いため独 居生活は難しく尐ないと思われる。 ⑤住形態(図 3B) 実際に訪問した場所は自宅 162 人(81.4%)、子供宅 17 人(8.5%)、高齢者施設 8 人(4.0%)、不明 12 人(6.0%)であった。約 9 割がまさに個人宅であった。 ⑥介護必要度(図 3C) ここでは導入時に再申請したあとの介護必要度を明示する。新規申請中 8 人 (4.0%)、要支援 1 要介護 2 介護 5. 9 人(4.5%)、要支援 2. 23 人(11.6%)、要介護 3. 10 人(5.0%)、要介護 1. 17 人(8.5%)、要介護 4. 17 人(8.5%)、. 30 人(15.1%)、要. 46 人(23.1%)、無申請 39 人(19.6%)であった。末期の癌症例では介護度. 判定が下りる前に終結にいたることが多いため申請中や無申請が多くなってい る。 ⑦訪問診療主病名(図 3D) 訪問診療開始時の主病名は末期の癌 下している廃用症候群. 76 人(38.2%)、原因は様々だが ADL が低. 76 人(38.2%)、慢性疾患の末期. 47 人(23.6%)[肝不全 6. 人(3.0%)、呼吸不全 16 人(8.0%)、腎不全 5 人(2.5%)、神経疾患 14 人(7.0%)、 その他の慢性疾患 6 人(3.0%)]であった。 13.

(14) ⑧訪問診療導入形態(図 3E) 訪問診療は、訪問診療が必要とご本人やご家族、関わった医療スタッフに判 断されご本人・ご家族の希望を確認したうえで開始される。導入形態としては 定期通院で経過をみていた内科外来からが 34 人(17.1%)、院内他科外来から 人(8.0%)、他院からの紹介. 26 人(13.1%)、ご家族からの問い合わせ. (4.0%)、内科入院で必要性に気づかれて 依頼. 16 8 人. 99 人(49.7%)、他科入院で退院時. 7 人(3.5%)、他院から転院の上で訪問依頼. 9 人(4.5%)となっている。. 最も多いのは入院時に初めて ADL・認知機能を含む全身状態の評価を受け、生 活・家族の状態を確認し退院調整の一環で導入されるケースとなっている。. A.. 35歳未満 35~44歳 1% 1% 95歳以上 55~64歳 5% 7% 65~74歳 11% 85~94歳 36% 75~84歳 39%. B. 訪問診療場所(187人) 高齢者 子供宅 9%. C. 新規申 要支援1. 施設 4%. 無申請 20%. 請中 4%. 要介護2 12%. 要介護4 15% その他 神経疾 の慢性 患 疾患 腎不全 7% 3% 呼吸不 3% 全 8% 癌(末 肝不全 期) 3% 38% 廃用症 候群 38%. D.. E.. 他科入院 3%. 要支援2 5% 要介護1 8%. 要介護5 23%. 自宅 87%. 4%. 要介護3 9%. 他院転院 依頼・紹介 5% 内科外来 17%. 内科入院 50%. 図3 対象患者属性. 院内他科 から依頼・ 紹介 8%. 他院から 依頼・紹介 家族から 13% 依頼 4%. 2.訪問診療で必要とした在宅医療行為(図 4) 訪問診療を終結した 157 人について必要となった医療行為のうち最も多かっ たのは末梢補液 43 人(27.4%)、ついで麻薬管理を含む疼痛管理 38 人(24.2%)、 在宅酸素療法 HOT35 人(22.3%)であった。病状により栄養経路変更や、尿路変更、 それに伴う様々なチューブ管理・交換を適宜行っている。. 14.

(15) 3.在宅療養を行う上で導入した介護サービス(図 5) ケア・マネージャーとの連携で介護サービスを導入しているが、実際に導入 したサービスを示す。訪問看護は 141 人(89.8%)で導入しており、当院の訪問看 護ステーション「いたわり」が 125 人(88.6%)で他 11.3%は市内のそれぞれの訪 問看護ステーションに指示書を出して依頼していた。 在宅療養を支える家族の介護負担の軽減目的とご本人の気分転換・リハビリ 目的で通所が可能な病状であればデイサービス 47 人(30.0%)、ショートステイ 19 人(12.1%)、通所が困難なケースでは介護ヘルパー48 人(30.6%)、訪問リハビ リ 5 人(3.2%)、訪問入浴 56 人(35.6%)を導入していた。また在宅療養中に用意 した物品は電動ベット 53 人(33.7%)、褥創予防・対策での耐圧分散マット 47 人 (29.9%)、その他(車椅子・歩行器・手すり・ポータブルトイレ・段差解消スロ 15.

(16) ープなど)45 人(28.6%)であった。. 図5 導入した在宅介護サービス 4.訪問期間と回数(図 6A.B) 終結した 157 人の訪問回数は(図 6A)に示した。1 回~58 回で中央値 3 回ほと んどが 5 回以内となっていた。終結までの訪問期間(図 6B)は 1 日から 48 カ月に わたり、中央値は 2 週間。1 か月以内がほとんどであった。 訪問期間が非常に短いため、主病名別で再度検討してみた。癌 72 人で訪問期 間 1 日~12 か月となっており中央値 2 週間、慢性疾患 32 人で 1 日~34 ヵ月(中 央値 3 週間)、廃用症候群 53 人で 1 日~48 カ月(中央値 4 か月)となっていた。 癌の占める割合が多く、全体の訪問期間の短期化に影響を及ぼしていると思わ れた。. 16.

(17) A.訪問回数. 34 30. 30 人数(人). 訪問回数 1~58回 中央値3回. 22. 20. 14. 10. 7 6 6 5 4. 2 1 3 2 2 1 2 1 1 1 2 1 2 2 1 1 1 1 1 1. 0 1. 3. 5. 7. 9 11 13 16 18 20 25 27 30 46 59 訪問回数(回). 訪問期間 1日~48カ月 中央値2週間. 人数(人). B.訪問期間. 図6 訪問回数と訪問期間 5.訪問診療経過中の入院(図 7A.B.C.D) 在宅療養継続を難しくする原因の一つとして病状の悪化、家族の介護困難が 予想される。このため終結例の訪問期間中の入院を調べてみた。入院回数(図 7A) をみると 0 回が 58 人(36.9%)、1 回が 66 人(42.0%)、2 回が 15 人(9.6%)、3 回が 7 人(4.5%)、4 回が 4 人(2.5%)、5 回が 5 人(3.2%)、6 回以上が 2 人(1.2%)であ った。これらのうち終結時入院以外の入院についてみる(図 7B)と 0 回が 119 人 (75.8%)、1 回が 20 人(12.7%)、2 回が 6 人(3.8%)、3 回が 5 人(3.2%)、4 回が 3 人(1.9%)、5 回が 3 人(1.9%)、15 回が 1 人(0.6%)であった。実に 3/4 の患者が 経過途中では入院を要していなかった。. 17.

(18) A.全入院回数. 3 4.5%. 5 4 3.2% 2.5%. B.終結時入院を除く入院回数 5 4 1.9% 3 15 1.9% 3.2% 0.6% 2 3.8%. 6 16 0.6% 0.6%. 2 9.6%. 0 36.9%. 1 12.7%. 0 75.8%. 1 42.0%. 図7 訪問診療経過中入院回数 終結時以外に入院となった 38 人の入院回数 Y(回数)と訪問期間 X(月数)の分 布(図 7C)をみると Y=0.1084X+1.0243(r 2=0.3207)であり、訪問期間の長さに規定 されてはおらず、疾患特異性も認めなかった。. C. 訪問期間と入院回数の分布図 (終結時以外入院あり38人) 16 14. 入院回数(回). 12 10 8. y = 0.1084x + 1.0243 R² = 0.3207. 6 4. 2 0 0. 12. 24. 訪問診療期間(月). 18. 36. 48.

(19) この 38 人ののべ入院件数は 89 件(図. 7D)でこのうち 10 件(11.2%)7 人はレ. スパイトケア目的の入院。10 件(11.2%)9 人は癌や慢性疾患のための緩和治療・ 胃瘻栄養・中心静脈栄養・呼吸器導入目的の入院であった。これより訪問診療 を 行 う 上 で 最 も ス ト レ ス に な り う る 予 期 せ ぬ 病 状 で の 急 な 入 院 は 結 局 69 件 (77.5%)であった。その入院原因は 39 件(43.8%)16 人が細菌感染症(肺炎 25 件、 尿路感染症 5 件、胆管炎 4 件、蜂窩織炎 2 件、褥創感染 2 件、敗血症 1 件)、2 件 2 人が骨折で整形外科入院、1 件が膀胱結石で泌尿器科入院、その他 27 件 (31.0%)は慢性疾患の急性増悪(心不全・呼吸不全・腎不全・肝不全など)であっ た。. D. 終結時以外入院89件(38人)の入院病名 骨折 膀胱結石 1% 2%. レスパイトケア 11% 症状コントロール目的 11%. 慢性疾患急性増悪 31%. 肺炎 28%. 敗血症 1% 褥創感染 2% 蜂窩織炎 2%. 胆道系感染 尿路感染症 5% 6%. 6.終結時転帰(図 8A.B.C.) 終結時の転帰(図 8A)では生存終結は 42 人(26.7%)、死亡終結は 115 人(73.2%) となっている。 死亡終結(図 8B)では 40 人(34.8%)が在宅死に至っている。死線期に家族の動 揺があり救急搬送となったのが 7 人(6.1%)、救急外来で死亡診断となっている。 68 人(59.1%)が病状の変化で当科入院となり死亡に至っている。 生存終結(図 8C)では、介護困難で施設入所希望 7 人(16.7%)、療養病床入院希 19.

(20) 望 9 人(21.4%)だったが待機期間を在宅療養したケース、再度病状悪化あり再入 院後施設入所 5 人(11.9%)や療養病床転院 12 人(28.6%)、病状悪化時他院入院予 定で在宅療養を行った 1 人(2.4%)が含まれる。比較的病状の安定していた 1 例 で他院訪問診療へ紹介移行できた。当初通院困難だったが、訪問診療で病状が 整理でき症状コントロールがついたことで外来通院が可能となり外来移行でき たのが 5 人(11.9%)含まれている。訪問診療導入時に想定していた役割・目的を 完遂できたのは 140 人(88.6%)、17 例(10.7%)では病状の進行や家族の介護限界 となり在宅療養が継続できなくなって終結にいたっていた。. A.転帰 死亡, 115, 73%. 生存, 42, 27%. B.死亡115人の転帰. 入院死亡 59.1%. C.生存42人の転帰 他院訪問診療 他院紹介 紹介先戻り 2.4% 2.4% 2.4% 外来移行 他科入院 11.9% 2.4%. 在宅死 34.8%. 入院後療養病床 入院 28.6%. 救急搬送外来死 亡確認 6.1%. 入院後施設入所 11.9%. 施設入所 16.7%. 療養病床入院 21.4%. 図8 訪問診療の終結時転帰. (3).考察 江別のみならず日本中で今後老年人口が急増する見通しである。この群は老 年症候群と総称される眼科・耳鼻科・精神科・内科・整形外科・泌尿器科をま たぐさまざまな病態が混在しそれにより自立生活能力が低下をしていく傾向が 強く、医療必要度、介護必要度が高くなる傾向が強い。しかし、運動機能や認 知機能が低下すると医療機関への受診がどんどん難しくなり、さらに当地は冬 場路面状態が悪く、さらなる外傷のリスクが高まる土地柄でもある。医療必要 20.

(21) 度の高い通院困難な老年期患者の受け皿としては今までは療養病床への入院対 応が選択されてきたが、すでにその運用は限界にきており今後療養病床数を増 加させる方向はなく、限られた医療資源の有効利用がさらに求められている。 一方で国民の意識調査では 60%以上の国民が終末期における自宅療養を望んで いるという結果が示されており、5) 医療必要度の高い通院困難な老年期患者の療 養形態のひとつとして在宅療養の必要性が急速に高まってきている。 当院内科はかつて内科病棟の閉鎖、外来診療縮小を経験しており、この経験 をもとに総合内科を導入し、総合医研修の一環として訪問診療を導入した経緯 がある。訪問診療は患者の実際の生活空間に出向くことで病状評価のみならず、 生活上の問題点や介護者の負担状況を評価し、必要ならば在宅で使用可能な医 療器材を導入し、介護保険主治医意見書を作製し、ケア・マネージャーと連携 し介護サービスを調整することで療養環境を整え、入院・外来・施設入所・療 養病床入院・終焉としての看取りまで切れ目のないサポートを提供できる。 今回導入初期 5 年間で訪問診療を行った 199 人とその後終結に至った 157 人 の実情・経過を確認した。当科訪問診療症例の特徴としては高齢、江別地区住 人、核家族、9 割個人宅、7 割要介護者、末期癌 4 割、廃用症候群 4 割、その他 慢性疾患末期であった。訪問診療の導入は半数が退院調整の一環として行われ、 実際に行った医療行為は補液、在宅酸素、麻薬使用による疼痛管理が多かった。 生存終結例では 8 割が施設入所・療養病床待ち期間のつなぎの役割を担ってお り、死亡終結例では 3 割 5 分が在宅死亡となっており、6 割が病状悪化で入院後 死亡となっていた。実際の訪問回数の中央値が 3 回であり、訪問期間の中央値 が 2 週間程度と非常に短期となっていることも特徴的であった。 以上より当科の訪問診療患者は①癌により余命が限られ、病状の進行に伴い 今後急速な全身状態の悪化が予想されるが、緩和ケアを受けて自宅で過ごすこ とを希望されるケース。②廃用の進行のため介護必要度が増し、通院が難しく なったが医療管理が必要なケース。③神経疾患を含む慢性疾患の終末期で通院 が困難となり、全身状態が不安定ではあるが可能な限り在宅療養を希望される ケース。④主に入院時に気付かれるが、病状に比べて家族介護力が乏しく、状 況判断のサポートが必要となるケース(老老介護、介護者の認知症・精神疾患な ど)。⑤ご本人の受診拒否や病状がわからずどこに受診すべきかご家族が困って いるケース。に大別される。 病院型訪問診療では、訪問診療から入院、再度の訪問診療の流れを一貫して 行うことができ、入院時病名の検査・治療のみならず、在宅療養を行う上で確 認しておきたい事項や導入しておきたい処置の施行を短期間に効率よく行うこ とが可能である。一方で病棟医が導入した治療の効果や副反応への対応の可能 21.

(22) 性を考え入院継続で経過を見たい症例でも、訪問診療でその後を直接確認する ことが可能となる。スピード感をもった対応ができ、特に余命が限られ最期の 時間を大切にしたい患者やそのご家族に対して有効な診療形態と思われた。終 末期患者では導入段階での看取りの場所の決定が必要ではなく、24 時間・365 日入院可能である安心感があり、患者の症状の推移にあわせて入院後の看取り も、穏やかに家で最期を迎えることも可能となっている。 当科の訪問診療患者の訪問回数が尐なく、訪問期間が短い理由には、このよ うないつ入院治療が必要になってもおかしくない不安定な病状の患者への一歩 踏み込んだ訪問診療となっていることがあげられる。 退院調整で問題となってくる入院治療で病状の安定をみたものの、要介護状 態と不安定な病状を抱えた介護施設での受け入れ困難例の退院後の対応が可能 で、在宅療養を続けるためには独居では難しいものの、病状の変化を連絡して くれる同居者がいてくれるならば介護サービスを併用することで介護負担を軽 減し療養継続が可能となる。長期療養病床入院待機期間の一時在宅療養など介 護と医療の隙間にはまり受け入れ先がなかなか見つからない例や経済負担が尐 ないため長期待機となりがちな施設入所まち期間を埋めることがもうひとつの 役割となっている。 さらに特記すべきはご本人の受診拒否や原因不明だが動けなくなって家族が 困って依頼してきた症例において、とりあえず訪問し状況を整理し初期対応を 行うことで整形外科や精神科診療につながり通院可能となって終結しているケ ースがみられていることで、必要な医療・介護サービスへの導入の役割も担っ ていた。 導入初期で急変が多かった印象であったが予期せぬ病状変化のため入院が必 要となったケースは実際には全体の 1/4 程度にすぎなかった。病状やその評価 が行われていれば事前に予測できることも多く予定を組みながら対応すること が可能であった。この結果から事前に病状や生活状況の情報提示を行っていた だいて患者登録を行うことで診療所の訪問診療患者へのスムーズな後方支援も 可能となると思われ、この分野の病診連携の一つのヒントと思われた。 今回の調査では訪問回数が尐なく、訪問期間の中央値が非常に短期となって いることが特徴的であった。これは長期にわたって訪問診療を行っている医療 機関. 6). と比較しても明らかに短くなっている。その理由としては訪問診療への. 認識が浸透できておらず、病状がすすみギリギリの状態になって導入すること が 多 か っ た た め と 思 わ れ る 。 導 入 前 に は 頻 回 に 入 退 院 を 繰 り 返 し た が 訪 問診 療・訪問看護により介護者・ご本人の不安が軽減され病状の変化を早期に察す 22.

(23) ることにより対応し悪化せずに穏やかに在宅療養を続ける事例も増えてきてい る。現在では地域の中で症例経験を積み重ねてきており、訪問診療という選択 肢が地域に浸透することでケア・マネージャーからの導入依頼や高次医療機関 からの早めのかかりつけ医移行で開始するケースが増えてきている。これによ り在宅医療の本来の目的である、住み慣れた場所で穏やかに家族と暮らす時間 をささえることが可能となってくる見通しである。次の 5 年後、10 年後の調査 では今回との差が浮かび上がってくることを期待したい。病院型訪問診療は病 気になっても障害を負っても住み慣れたこの町・愛着のある家で暮らしていけ る地域をつくる一助となれる診療形態と思われた。. (4).参考文献 1)江別市統計. 江別市. 2)患者統計の年次推移. 平成 24 年度 東京、財団法人. 厚生統計協会、厚生の指標. 増刊. 2010;901 3)鳥羽. 研二:在宅医療の体制構築に係る指針. 病院 71 巻 3 号 2012 年 3 月 190. (22) 4)国民の福祉と介護の動向 の指標. 増刊. 2012/2013. 財団法人. 厚生労働統計協会. 厚生. 2012;929. 5)終末期医療のあり方に関する懇談会:平成 20 年終末期医療に関する調査、 厚生労働省 6)小松. 平成 22 年 10 月第6回懇談会資料. 裕和:佐久総合病院の在宅医療. 本研究は「公益財団法人. 在宅医療助成. ある。. 23. 治療 95 巻 2 号 2013 年 2 月,281-288 勇美記念財団の助成による」研究で.

(24) 大都市近郊地域中核病院の 総合内科訪問診療の実態調査. 別掲.2. 江別市立病院 総合内科 山田 和美. 目的 地域中核病院 総合内科が行う病院型訪問診療の実態を明らかにし、診療所型訪問診療との役割分担・連携の可能性を検討する。. はじめに 江別市立病院 内科の変遷. 札幌市の隣にある江別市. 内科 病床数 循環器科 408床 呼吸器科 一般(278床) 精神科(130床) 消化器科 うち、内科98床 神経内科. 札幌市への交通アクセスの良さ(JR各駅停車で約20分、 自動車(一般道路使用)で約40分)のため 昭和50年代より札幌市のベットタウンとして人口が増加。 基盤産業は酪農と農業、レンガ・ヤツメウナギが特産品. 内科病棟閉鎖. 平成18年12月 総合医による 内科診療開始. 外来診療のみ 平成19年8月 訪問診療開始. 337床 一般(278床) 精神科(59床) うち、総合内科90床. 病院 5か所 940病床(一般623 精神138 療養179) 診療所 71か所 102病床 一般医師数 152人 医師1人あたり人口 804人(全国平均484.7人) 訪問診療実施医療機関 病院2、有床診療所2、無床診療所5. 20. 16. 13. 14. 19. 14. 17. 20. 29. 26. B.訪問診療実施数推移(月別). 総合内科医師3人 半日診療 現在週4回. 病床数. 市内医療機関状況(平成22年10月1日現在). 人数(人) 35 30 25 20 11 15 10 5 0. 平成18年10月内科医全員退職. (院内他科) 外科・整形外科 眼科・耳鼻科 泌尿器科・産婦人科 精神科・小児科・麻酔科. 人口 120940人 (平成24年4月1日現在) 面積 187.87km2 (東京23区合計面積の約30%) 高齢者(65歳以上)比率 23.49%. A.訪問診療開始患者数推移. 60. 訪問診療回数 訪問診療人数. 40. 平成20年4月. 20. 総合内科病棟開設 0 19年 20年. 21年. 22年. 23年. 24年. 対象と方法 対象 平成19年8月より平成24年9月までに訪問診療を受けた199人(現在訪問継続中の42人を含む) 方法 199人の患者の背景・病歴を24年10月以降に外来カルテ・入院カルテから検索し検討した。. 結果 1.患者背景(199人) B.開始時年齢. 男性 87 43.72%. 女性 112 56.28%. 35~44歳 1% 55~64歳 7% 65~74歳 11%. 30. 30. 訪問回数 1~58回 中央値3回. 22. 20. 1.全入院回数. 14. 10. 7 6 6 5 4. 1. 3. 5. 7. 9 11 13 16 18 20 25 27 30 46 59 訪問回数(回). B.訪問期間 75~84歳 39%. 訪問期間 1日~48カ月 中央値2週間. 2.終結時入院を除く入院回数. 5 6 16 4 3.2% 0.6% 0.6% 3 2.5% 4.5%. 2 1 3 2 2 1 2 1 1 1 2 1 2 2 1 1 1 1 1 1. 0. 85~94歳 36%. C.訪問場所(187人). D.訪問診療経過中入院回数. 34. 人数(人). 35歳未満 1% 95歳以上 5%. A.訪問回数. 2 9.6%. 3 3.2% 2 3.8% 0 36.9%. 5 1.9% 15 4 1.9% 0.6%. 1 12.7%. 人数(人). A.性別. 3.訪問診療の経過(終結例157人). 0 75.8%. 1 42.0%. D.同居人数. 高齢者施設 子供宅 4% 9%. E. 訪問期間と入院回数の分布図 (終結時以外入院あり38人). C.主病名別終結までの訪問期間 50. 自宅 87%. 16 14. 40. 廃用19人 癌13人 慢性疾患6人. F.要介護度. その他の慢性 神経疾患 疾患 7% 3% 腎不全 3% 呼吸不全 8% 癌(末期) 肝不全 38% 3%. 廃用 20. 慢性疾患. 2. 0 0. 6. 8%. 18. 24. 30. 36. 42. 0. 48. 0. 12. 24. 36. 訪問診療期間(月). 要介護2 12%. A.導入契機. 要介護3 要介護4 9% 15%. 4.訪問診療の終結(157人) A.転帰. B.在宅医療行為 (%) 25. 他院転院依 頼・紹介 5%. 20. 19. 22. 21. 死亡, 115, 73%. 15. 1. 3 0.5. 1. 0.5. 1. 0.5. 皮膚病変処置. 0.5. 2. ストマ. 1.5. 3.5. B.死亡115人の転帰. 4.5. 関注. 4. PTCD. 6. じょく創管理. 喀痰吸引. 間欠導尿. 膀胱ろう. 腎ろう. 膀胱留置カテーテル. HPN. 経管栄養(経鼻胃管). 末梢補液. HMV(TPPV). HOT(Home oxygen therapy):在宅酸素療法 HMV(Home mechanical ventilation):在宅人工呼吸療法 NPPV(Noninvasive positive pressure ventilation):マスク使用による非侵襲的陽圧換気 TPPV(Tracheostomy intermittent positive pressure ventilation):気管切開を介する人工呼吸器管理 PEG(Percutaneous endoscopic gastorostomy):胃瘻 HPN(Home parenteral nutrition):在宅高カロリー輸液 PTCD(Percutaneous transhepatic biliary drairge):経皮経肝胆管ドレナージ. 生存, 42, 27%. C.生存42人の転帰 他院訪問診療 他院紹介 紹介先戻り 2.4% 2.4% 2.4%. 0 HMV(NPPV). 家族から依頼 4%. 2.5. HOT. 他院から依頼・ 紹介 13%. 5 疼痛管理(麻薬含む). 院内他科から 依頼・紹介 8%. 7. 気管カニューレ. 10. 経管栄養(PEG). 内科外来 17%. 内科入院 50%. 12. 訪問期間(月). 2.訪問診療の導入(199人) 他科入院 3%. 入 10 院 回 8 数 回 6 ) 4. 癌. 10. 新規申請中 要支援1 4% 4% 要支援2 無申請 5% 20% 要介護1. 要介護5 23%. 廃用症候群 38%. 30. (. E.主病名分布. 人数(人). 12. 他科入院 2.4% 入院死亡 59.1%. 在宅死 34.8%. 救急搬送外来死亡 確認 6.1%. 入院後療養病床 入院 28.6%. 外来移行 11.9% 施設入所 16.7%. 療養病床入院 21.4% 入院後施設入所 11.9%. 48.

(25) 考察 大都市近郊の特性 • 大都市に隣接するため、高い専門性を持つ豊富な医療機関への通院が可能。 • 地域の医師数は全国平均を下回っている。(医師一人当たりの人口 江別804 人 全国484.7人) • かつての新興住宅地の住人は同時に高齢化する。 • 通院困難な状態になった患者にとっては尐ない医療資源環境+今後の患者の 急激な増加が予想される。. • 医療処置が必要だが外来受診が難しい場合 • 慢性疾患の治療を行っているが在宅での治療効果の判定が必要な場合 • 病状に比べて家族介護力が乏しく、状況判断のサポートが必要となる場合・不安 が強い場合(老老介護、介護者の認知症・精神疾患など). 病院型訪問診療とは. 今回わかった当院訪問診療の実態 • • • • • • • • • •. 入院から訪問診療導入するケース. 65歳以上が9割、75歳以上が8割の高齢者 訪問先は9割個人宅・同居人数2~3人の核家族 7割が要介護者(末期癌患者は申請なし多い) 主病名は末期癌4割、廃用症候群4割、その他慢性疾患末期 訪問診療への導入は半数が退院調整の一環として行われている 在宅医療行為は補液、在宅酸素、麻薬使用による疼痛管理が多い 生存終結例の8割が施設入所・療養病床入院待ち期間のつなぎの役割 死亡終結例では3割5分が在宅死亡、6割が病状悪化で入院後死亡 訪問回数の中央値が3回、訪問期間の中央値が2週間程度で非常に短期 終結時入院以外の入院が必要だったのは2割5分のみ. 訪問診療を希望される患者・家族 • 癌などの進行性疾患で余命が限られ、今後急速な全身状態の悪化が予想されるが 自宅での療養を希望される場合 • 廃用の進行に伴い、介護必要度が増し通院困難になったが医療管理が必要なケー ス(介護施設・療養病床への入所・入院まで時間がかかる間在宅療養が必要になる ケースを含む) • 神経疾患を含む慢性疾患の終末期で全身状態が不安定ではあるが可能な限り在 宅療養を希望されるケース • ご本人の受診拒否で通院困難となって家族が困っているケース. • いつ入院治療が必要になってもおかしくない不安定な病状の患者への一歩踏み込ん だ訪問が可能。~入退院の簡素化・短期間化 • 訪問診療~入院~訪問診療が一貫して行える。~患者の臨床経過を切れ目なく把握・ 対応できる • 要介護状態と不安定な病状を抱えた介護施設での受け入れ不能例への対応が可能 ~介護と医療の狭間を埋める • 看取りが近い患者・家族に対して導入段階での看取りの場所の決定が必要ではなく、 24時間・365日、常に入院可能である安心感がある。 • 一方で死戦期に入っての救急車搬送のリスクが高いことが問題点・改善点である。. 結論 • 病院型訪問診療の対象患者は通院困難になった終末期患者が多く、病状の変 化が急激で病診連携が難しいと予想されたケースが多かった。 • 病状の変化のため訪問が短期終結となっている。 • 実際には終結時以外の入院が必要になったのは25%にすぎなかった。 • 患者・家族が安心して在宅医療へ移行するためには病院型訪問診療もひとつの 選択肢となると思われた。 • 安定して経過されるケースで病診連携の可能性がある。. 今後の展望 • 在宅療養で安定しているケースを受け入れてくれる診療所との連携をすすめる • 地域における診療所との情報共有・今後の役割分担を模索 • 在宅療養患者の病状評価目的検査入院・レスパイト入院の受け入れ 発表者:演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある 企業などはありません。 第55回老年医学会.大阪 平成25年6月5日ポスター.

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参照

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