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国際協力分野での理学療法士・作業療法士活動の効果研究

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 160 43 巻第 2 号 160 ∼ 161 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 25 年度研究助成報告書. 国際協力分野での理学療法士・作業療法 士活動の効果研究 ―青年海外協力隊経験者への調査― 知脇 希 1) 1). 帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科 図 1 地域・職種別派遣数(n = 639). 要 旨: 青 年 海 外 協 力 隊 PT・OT 帰 国 者 に 対 し WEB 調 査 を 実施し,派遣の効果について分析した。帰国者 639 名のうち URL を送付できたのは 275 名,回答があったのは 111 名であっ.  JICA はボランティア事業の目的である「開発途上国・地域. た。WEB 調査の結果,1 日患者数平均は 8.1 名,勉強会実施は. の経済および社会の発展または復興への寄与」(以下,開発協. 8 割,任国では交流を活発にしており,帰国後 4 割がボランティ. 力)「開発途上国・地域と我が国との間の友好親善および相互. ア活動を実施していた。主観的評価の肯定的回答は「リハビリ. 理解の深化」(以下,友好親善),「ボランティア経験の社会へ. テーションの発展に寄与した」が 4 割と低く, 「任国と日本の. の還元」(以下,社会還元)を 3 つの視点としてボランティア. 相互理解を深めた」は 8 割と高かった。勉強会開催数はこのふ. 事業全体を評価している. たつの評価と弱い相関が認められた。本研究から,ボランティ. 発協力では「任国のリハビリテーションの発展に寄与した」. 2). 。本調査では主観的評価として,開. ア事業の目的は果たされている傾向にあり,友好親善で効果が. 「任国の障害者の生活改善に寄与した」 ,友好親善では「任国. 高く,一部の主観的評価には,技術移転に関する勉強会開催数. と日本の友好親善に貢献した」「任国と日本の相互理解を深め. が関係していることが示唆された。. た」,社会還元では「ボランティア経験を社会へ還元している」. キーワード:青年海外協力隊,理学療法士,作業療法士. を尋ね,5 段階評価で回答する形式とした。  ボランティア事業の目的の外生変数として,開発協力指標で. はじめに. は,1 日平均患者数,勉強会開催数,友好親善指標として,活.  理学療法士(以下,PT) ・作業療法士(以下,OT)による. 動期間時の友人宅訪問,イベント開催,帰国後のコミュニケー. 国際協力は様々な組織や団体が実施している。その中でも国際. ション,社会還元指標として,帰国後の任国支援,ボランティ. 協力機構(以下,JICA)青年海外協力隊(以下,協力隊)の. ア経験を尋ねた。また,属性,任国,配属先を尋ねた。. 活動実績は多い。しかし,網羅的に調査を実施したものは,平.  統計解析では主観的評価と目的の外生変数の関連,外生変数. 成 10 年の「理学療法士青年海外協力隊アンケート調査報告. と属性,任国,配属先との関連について分析を行った。. 書」1)以来見あたらない。このため,協力隊帰国者へ WEB 調.  本研究は,帝京平成大学倫理委員会の承認を受けている(承. 査を実施し,派遣の効果について分析した。. 認番号 25-050)。. 対象および方法. 結  果.  調査対象者は,協力隊 PT・OT として派遣され帰国した者.   調 査 の 結 果, 回 答 が あ っ た の は 111 名 で あ る。 回 答 率 は. とした。JICA 青年海外協力隊事務局(以下,事務局)に協力. URL を送付した者を母数とすると 40.4%であった。. を仰ぎ,調査対象者の派遣国,隊次,職種の情報を得た。平成.  回答者の職種は PT59 名,OT52 名,性別は男性 42 名,女. 26 年 1 月 31 日までに帰国した協力隊経験者 639 名で,地域・. 性 69 名,派遣時年齢平均値は 28.0 歳,派遣時の経験年数平. 職種別分布は図 1 のとおりである。. 均値は 5.2 年であった。配属先は病院 27.0%,経営母体は公立.  調査対象者のうち,事務局に e-mail アドレスを登録してい. 65.8%,配属先の従業員数は 1 ∼ 29 人 51.4%がもっとも多く,. る者に対しては,事務局から調査協力依頼と調査を実施する. PT は病院,OT は小児施設の派遣がもっとも多かった。. URL を記載した e-mail を送付した。送付できたのは 258 名で.  主観的評価の結果をみると,肯定的回答は「リハビリテー. あった。帰国者全体に対しては,青年海外協力協会のニュー. ションの発展に寄与した」が 4 割と低く, 「任国と日本の相互. ズレター「協力隊かわら版」,PT・OT の協力隊 OB・OG 会. 理解を深めた」は 8 割と高かった(図 2)。. 「JOCV リハビリテーションネットワーク」のメーリングリス.  開発協力指標をみると,配属先が病院または福祉施設であっ. トで協力を呼びかけ,連絡を受けたもの 17 名に対し URL を返. た者の 1 日平均患者数は 8.1(n = 83,最小値 1,最大値 25,. 信した。. 最頻値 5)人であった。勉強会を開催した者は 79.3%,勉強会.  調査対象者 639 名のうち URL を送付したのは 275 名であっ. 回数平均は平均 7.8(160 回以上の 2 名をはずれ値として除外,. た。調査期間は 2014 年 3 月 3 日∼ 30 日とした。アンケート調. n = 99,最小値 0,最大値 100,最頻値 3)回であった。友好. 査は,株式会社ネオマーケティングに委託し,WEB 上で調査. 親善指標をみると,派遣中任国の友人宅への訪問状況は,「頻. を実施した。. 繁に訪問した」40.5%「時々訪問した」56.8%,青年海外協力.

(2) 国際協力分野での理学療法士・作業療法士活動の効果研究. 161. 図 2 ボランティア事業の目的に対応した主観的評価の分布(n = 111). 2). ,他職種ボラン. 隊員と協力してイベントを開催した者は 68.5%,帰国後も任国. 対し,派遣先は高評価であるとの報告があり. の友人と連絡をとっているかについては,「頻繁に連絡を取っ. ティアと同様の傾向と考えられる。これらから,PT・OT の活. ている」17.1%,「時々連絡をとっている」63.1%と回答してい. 動において,ボランティア事業の目的は果たされている傾向に. る。社会還元指標をみると,帰国後も任国への支援を行ってい. あり,友好親善で効果が高いと考えられる。. る者は 18.9%であった。災害ボランティアに参加している者は.  Spearman の順位相関係数を求めた結果,患者数とは有意な. 全体の 37.8%である。その他のボランティア活動に参加した者. 相関が認められず,勉強会開催数と「リハビリテーションの発. は 25.2%であった。. 展に寄与した」「任国と日本の相互理解を深めた」は弱い相関.  主観的評価と担当患者数,勉強会開催数の Spearman の順位. が認められた。協力隊は原則 2 年での派遣であり,派遣後後任. 相関係数を求めた。その結果,勉強会開催数と「リハビリテー. のボランティアが派遣されることもあるが永続的ではない。勉. ションの発展に寄与した」 「任国と日本の相互理解を深めた」. 強会によって,自らの知識や技術を現地スタッフに伝えること. はそれぞれ 0.31,0.30 の弱い相関が有意に認められた。1 日平. が,リハビリテーションの発展に寄与したという評価に,また. 均患者数とは,有意な相関が認められなかった。. 現地スタッフからも学ぶことが相互理解を深めたという評価に.  また,一元配置の分散分析の結果,担当患者数,勉強会開催. 繋がることは,整合的であろう。しかし,回答者の属性,配属. 数と地域,派遣形態(グループ派遣,技術協力プロジェクト,. 先に関する設問で有意な差は認められず,具体的にどのような. それ以外)で有意な差は認められなかった。Spearman の順位. 条件であれば勉強会開催数が増えるのかは,今回の調査では明. 相関係数を求めた結果,配属先の規模,協力隊員の経験年数で. らかにならなかった。. は有意な結果は得られなかった。. 文  献. 考  察  1 日患者数は平均 8 名,勉強会実施は 8 割,任国での交流活 発にしており,帰国後ボランティア活動を 4 割が実施していた。 友好親善には多くの者が貢献できている一方,開発協力「任国 のリハビリテーションの発展に寄与した」は約 4 割のみ肯定的 回答をしている。このようなボランティアの自己評価の低さに. 1)日本理学療法士協会:理学療法士青年海外協力隊アンケー ト調査報告書.1998. 2)国際協力機構青年海外協力隊事務局 平成 18 年度ボラン ティア事業評価報告書.http://www.jica.go.jp/volunteer/ outline/publication/report/pdf/volunteer_h18.pdf(2012 年 10 月 3 日引用).

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