1993
,
Vol.
11,
No.
2,
1(B−
111意味 記
憶
に
お
け る
動 詞
の
記
憶構
造
に
つ いて
中
條
不
「光
早 稲田大 学
The
Memory
Structure
ofVerbs
in
Semantic
Memory
Kazumitsu
CHUJO
*Waseda
UniversitN
Fillmore
(1968)’
s case grammar suggested that verbs shouldbe
classified according tothe logical structures of their case
frame
and the semantic constraints of each case rela.
tion in the case frame.
An
original binary tree model based on case grammar was designed to explain the memory structure of verbs in semantic lnemory.
Two
experiments were car.
ried out to examine the predictionderived
from
the modeLi.
e,
whether the case frame and the semantic c〔mstraints of each case relation that were determined by processingpreceded noun phrases serve as cues for retrieving verbs from semantic memory
.
In bothexperiments
,
subjects were required to classify letter strings as words or nonwofds underthe following conditions : (a)when the target was preceded
by
a string of two noun phra.
ses (the noun phrase was“
a noun 十 apost−
particle”
;the post−
particle is∫apanese equivalent of a surface case marker ) (b)when the target was precededby
a string of eightblank
circles.
Target words were verbs or nonsense syllables.
Results
showed the presentationof the string Qf noun phrases facilitated the classification of the appropriate verbs whereas
it
interfered
with the classification of inappropriate verbs.
These results were cQnsistent wlth the prediction.
Key
words : memory structure,
semantic memory , verb,
priming,
lexical
decision
文を理 解 する時に
,
我々 は文を構 成 する個々 の 単 語に つ いて何を知っ て い る必 要があるのだ ろ うか.
ま た,
そ も そもそ れらの単語はどの よ う に構 造 化され 記 憶されて い るのだろ うか.
これは,
我々 の言語の 使用 を支え る心 的 辞 書 (mental lexion)に関わ る問 題で あり, 意 味 記 憶 研 究の領 域におい て研 究 が進め ら れ てきた問 題であ る.
特に,
名詞に関し て我々が持っ て い る “知識の構造”に つ いて は早 くか ら検 討が加 え られて きて おり,
概 念 間の 階 層 的ネ ヅ ト ワー
クモ デル (Collins
&Quillian
,1969
)や概 念 の 意 味 素 性モ デル (Smith
,
Shoben
& Rips,
1974
) な どと して定 式 化 されてい る.
ところが,
動詞に 関 する知 識の 構 造につ いては,
これ まで に必 ずしも十 分 な研 究が な さ れて きた とは言い難い面がある.
し か し,
近 年,
命 題 表 象 理 論に基づ く文 理 解モ デル で は,
動 詞に関し て我々 が保 有し てい る知 識が文 理 解 過程 * 1−
8−
2−
413Toyooka, Iruma
・
shi, Saitama 358に おい て 重要 な役 割を果たすこと が指 摘さ れて い る
.
例 えば, Minsky (1975)の フ レー
ム理 論で は,
動詞は人が 場 面を認知 する過程で枠 組み と し て機能 するもの と考 え ら れてい る.
フ レー
ム理論に おける枠とは,
場 面 搆 成 要 素 間の 関 係 付 けに関 するス テ レオ タイ プ的 知 識 と も 詳 う べ き ものであ り,
“
与 える”
とい う動 詞に よ る枠の場 合で あ れ ば,
“与え る”
に よっ て意 味される 動作 (所有の 移 動) と,
動 作 主,
対 象 物,
源泉,
目標など,
その動作に 対 する意 昧 的 関 係 が標示 された空ス ロ ッ ト か ら成る.
場 面の 認知は こ の空ス 巨 ッ トに適切 な 内容物を充 当する こ とで成 立 する と考え るの である,
ま た,
Kintseh (1974) は,
文を読 解 する こ とに よっ て形 成され る命題表 象の論 理構 造に関する情 報が動 詞に よっ て保 有されて い るこ と を 示唆してい る.
つ ま り,
命 題 表 象理論に おい ては動詞 は本 来個 々独立 な概 念 (これ らは名 詞に よっ て指示され る1
を 関 係 付 け,
命 題を形 成 する機 能を果し て い る と位104 基 礎 心 理 学 研 究 第
11
巻 第2
号 VEFB +Object +Agent{
瓢
一
A
… t{
訓
し
AGO
]:LA
+hum O+con,
−
ani G+hum】 与え る:
LA
+hum O−
con G+hum】伝える[
_
AO1 :LA
+hum O+con.
−
ani}食べ る
LA
+hum (),huml 叱るLGO1
’
LO
】 :L.
o+con,
−
anil 溶け るFlg
,
1.
A tentative model of memory organization on verbs in semantic melnory :This
model was composed
based
ollCook
(1979
)’
s case frame matrix modeL Goal in thepresented model means Experiencer
,
Benefactive orLocative,
according to the classi・
貸cation
by
Cook
(1979).
置づけら れる.
こ の よ うに動 詞の機 能を捉 えるならば,
動 詞に関し て我々が何 を 知っ
てお り,
またそ れ らを どの よ うに記 憶してい るか を研 究 することの 重 要 性は自ずか ら明か であろ う,
そこ で,
本 研 究は近 年の命 題 表 象 理 論に多大の影響を 与え たFillmore
(1968,1970
)の格文 法理論に立脚し,
意 味 記 憶に おける動 詞の記 憶構造につ い て検 討 すること を 目的とする.
動詞がどの ような構造で記 憶さ れて い る に せ よ,
その記憶構造は我々が日常そ れ を利 用 する際,
例 えぽ文を 読む際に行う動 詞の検索 過 程に反 映 されると 考 えるこ とは妥 当であろ う.
そこで,
単 文の読 解に 近 似 した事 態を 設定し,
そこ で行われる 動 詞の検索過程 を 明 らか にすること を通 して動 詞がどの よ う な構 造で記憶さ れて い る かを検 討 する.
こ こ で,
Fillmore (1968,1970)の格 文 法理論に お い て 動 詞が どの よ うに扱 わ れてい る かを 手 短に見てお こ う.
命 題表象理論との か か わ り の深い この理論に お い て は,
文の意 味は,
動詞 を述 語 (predicator)とし,
名 詞を項 (argument )とする述 語 命題 として記 述 される.
その際,
述語 (動詞) と項 (名詞) の間の関 係は格 関 係 (case re !ation )と呼 ぼ れる、
格 関 係と は, 述 語 (動 詞 )が意 味 する行 為におい て,
各 項 (名 詞 〉が担 うべ き役割であり,
例え ば行 為 者格,
対 象格,
道具格などがある.
Fillmore (1970
)は,
命 題を形 成 する た めに動詞につ い て保 持 すべ き情 報 として,
次の2
つ を挙げている,
第 1 は, 各 動 詞に よっ て意 昧さ れ る行 為が成立するため に 必須の格 関 係は何か.
第 2は,
その時それ ぞ れの格関 係 に よっ て指 定さ れる名 詞に必要 な意 味 的 属 性は何か とい う情 報で ある.
前 者は格 枠 と呼び,
後 者を選 択制限と呼 ぶ.
これ ら2種 類の.
i
青報に基づい て,
命 題 内の動 詞,
名 詞 問の意 味 的 呼 応がな され るの で ある.
上記の格 文 法の仮 定に従え ぽ,
動 詞の格 枠に よっ て動 詞を分 類 するこ と も可能で ある.
ま た,
格 枠に よ る分類の下位分類と し て, 選択制 限に よ る分 類を行うこ ともでぎる.
そこ で,
本 研 究で は Fig、
1 の よ うな形で動 詞 分 類を行っ た.
Fig.
1 は Cook (1979
)の格 文 法に よ る英 語 動 詞の 分 類を参 考に し,
動 詞 が どの よ うな格 枠を 必須とする か とい う基準で二進木を 作 成した もので ある.
ま た,
そ れ ぞれの格枠分類内の選 択 制 限に よ る下 位 分 類は並 列で ある と仮定して い る.
Fig.
1 で は,
下位分waiC
つ い ては実験 1,
2 に関 す る も の のみ を記述し た.
さて,
意味記 憶内で の動 詞の記 憶構造 がFig,
1 の 分 類に対応 す る と考えるな ら ば,
それは単文を理解する際 に行 われる動 詞の検 索 過 程に どの よう に反 映されるだろ うか.
も し,
個々 の動詞 が格枠, 選択制 限とい う2者の情 報 を持つ とする と,
文を構成する個々の名 詞の持つ 意 味,
及びそ れ らの名 詞}こ対し文に お い て統 語 的 (助 詞,
語 順 ) に指 定される格 関 係は,
逆にその文で用い ることので き る動 詞 を 制 限 する ことに なる.
したがっ て,Fig,1
の も とでは, 文の読解過程におい て動 詞に先行 する名 詞 句列 が 先ん じ て処 理されることで 各名詞に 格 関 係 が付与さ れ,
Fig,
1の経 路に沿っ て検索 するべ き動 詞の 範 囲 を漸 次 狭め ることがで きる,
こ の検 索 範 囲の特定は,
それ が 適 切な場 合に は文 末の動 詞の 適 切 な 予期 として働 き動詞 の検索を促 進 する と考え ら れ る.
逆に不適 切な検 索 範 囲 の特 定は動 詞の検 索 を 妨 害 すると 考 え ら れ る.
本 研 究 で は,
Fig.
1の動 詞 分類 を意 味 記 憶に おけ る動詞の記憶 構 造と して仮定し,
そこ か ら導かれ る上記の予 測 を 実 験 1,2 に よ り検証する.
実 験 1で は動 詞に先 行 する名 詞 句の処理に よっ て格枠 が設定される場合に つ い て検 討する.
実 験2で は格 枠に 加 え て選 択 制 限に よっ て動 詞 検 索の範 囲が さ らに厳 密に特 定さ れ る場 合につ いて検 討する
.
実 験 1Table
L
Examples of stimulus used ln
Experiment
L
動詞 の提 示 に先 だっ て
,
“
人 名+助 詞・
人 名+助詞”
とい う名詞句列を提 示し,
そ れ らの処 理が動 詞の検 索に 及ぼす 影 響 を検 討し た.
表 層的に助詞“
が”
が名 詞に彳∫ 為 者 格を与 え,
助 詞“
を”
が名 詞に対象格,
助詞 “ に” が 日標格を 与 え る もの とす る と,
Fig.
1 の動詞の記憶 構 造の仮 定か ら は動詞の検 索 範 囲は次の ように特 定さ れ る だ ろ う.
すな わ ち, 名詞句列 “ 人名+が・
人名+を”
が処 理 さ れ る と,
検 索 範 囲と してLA
十hum O十 hum 】1) 動 詞が,
また名 詞 句 列 随 人名+が。
人名+ に”
の 処理 に よっ て はLA
十hu皿 (0)G十hum ]動詞が 指 定 さ れ るこ とにな る.
名 詞句列の処理に よっ て上記の よ う に検索範囲が指定 され た後に,
動 詞 (LA
十hum O 十hum ]動詞
,
あるい は [_
A+hum O G十hum ] 動 詞 ), ま た は無意味綴りを提 示し,
被 験 者にそ れ が有 意 昧 である か,
無 意 味 綴りであるか とい う判 断 (詰彙判 断 課 題 )を求め,
動 詞に対 し有 意 味 語である と判 断 する の に 要 した反 応 時 間を測 定した.
反 応時間に基づ い て動 詞 検 索に及ぼす名 詞 句 列の効 果を検討する ために,
統 制 条 約 と して名 詞 句 列の代わ りに“
○ ○ ○ ○ ○ ○○ ○”
を 提 示 する条 件 を 設 け,
同 様に語彙判断を課し反応時 間を測 定 した.
語 彙 判 断に要 する反応時 間につ い て は,
Fig.
1 よ り,
特定された動詞検 索 範 囲と動 詞の格 枠 情 報が一
致 する場 合に は,
統 制 条 件よ り反 応 時 問が短 くな り (促 進 効 果 ),
逆に不一
致の場 合に は統制 条件よ り も反応時間が長くな る (抑 制 効 果 )とい う予 測が成 り立つ.
方 法 被 験 者 大 学 生 18 名を被 験 者と した.
実 験 計 画 3x2 の要因 計画を用いた.
要因はすべ て 被験者 内変 数で あっ た.
第 1の要 因は名 詞 旬 列 条 件であ り,
統 制 条 件を含め て次の3
条 件 を 設 定 した.
第 1 は 名詞 句列“
人名+が・
人名+ を”
を提 示 する AO 条 件で 1) 各 動 詞の格 枠 情 報, 及び格 関 係の意 味 的 選択制 限 情 報につ い て は,
以下の よ うに表 記す る.
例 えば行 為 者 格と 対象 格を 必 須 と す る格 枠を持ち,
行 為者格に は人 間とい う意 味 的 属 性 を指 定し,
ま た 対象 格に は 生 物 以 外の具 体 物 を 指 定 する ような動 詞の場合には
,
LA
+hum O+ con,−
ani ]と表 記す る.
こ の時
,
行 為 者格に付 され た属 性+hum
は,
その格 関 係 が 与えられる名 詞の意 味に人 とい う属 性が含まれ てい ること を示し,
対 象 格に付さ れた属 性 十 con,
−
ani は対象格の与え られる名 詞の意 味に具 体 物 と い う属 性を持ち生物とい う属性 を持た ない こと を示 す.
Condition Two・
place verbAO : AG : NF : た ろ うが (Agent ) たろ うが (
Agent
>QOOO
は なこを しか っ た.
(Object
) ([_
AO ]) はなこ に しか っ た.
(Object) ([_AOD
QOOO
しかっ た.
([−
AO 」)Three
.
place verbAO
: た ろ うが はなごを (Agent
) (Object)AG
: たろ うが はなこに 〔Agent
) (Object
) NF : ○ ○OO
OOOO
てわ た し た,
([_AGO
ユ) てわ た した.
([_AGO
】) てわ た し た.
(【_
AGO 】) あり,
第 2 は“
人名+が・
人名+ に”
を提 示 する AG 条 件で あっ た,
第 3 は統制 条件であり,
“ ○○○ ○ ○ ○ ○ ○”
が 提 示 さ れ る NF 条件であっ た.
第 2 の安 因 は動 詞の格 枠であ り,
LA
+hum
O
+hum
]とい う情 報 を持つ 動 詞 を 提 示 す る二項 動 詞 条 件,
LA
+hum OG
+hum ] とい う情報を持つ 動詞 を用いた三項 動詞条件 の 2 条 件であっ た.
し たがっ て,
検 索 範 囲と動 詞の格枠が一
致し促 進 効果 が予 測さ れる の は, AO 条 件と二項 動 詞 条 件,
AG
条 件 と三項 動 詞 条 件の組 合せ であ り,
逆に一
致せず 抑 制 効 果 が 予 測 さ れ るのは,
AO 条 件と三項 動 詞,
AG 条 件と 二 項 動詞の組合せ であっ た.
刺激材 料 名 詞旬列を構 成 する名 詞はすべ て 3 音節 (拍 )の人名を用いた.
動詞 は 石綿。
荻野 (1983)の 日本 語 用言の結合価表に記 載された動詞に依 拠し,
表層 での 結 合 価を参 考に勁 詞の 2 条 件につ い て各々 15語 ずっ を 選 択し て“
動詞連用 形十た”
の形 態で用い た (Appendix A).
また語 彙 判 断 課 題 を 課したので,
動 詞と同 数の無 意 味 綴 りを“
無 意 味 綴り+ た”
の形 態で用いた.
材 料はす べ て 平仮 名 表 記で あっ た.
実 験 1 で用いた材 料の例を Table 1 に示す.
なお,
動 詞 毎の親 近.
性,
使 用 頻 度の 効 果を 相 殺 す る た めに,
各動詞 につ い て そ れ ぞれ に名詞 句列の3
条件 (AO,
AG , NF 条件)を作 成し,
それらを3 リス 1・
}こ割 り当て た.
ま た, 無意識 綴りにつ い て も, 名詞 旬 列の 3 条 件を作成し た.
こ の よ うに し て作成し た 3通 りの リス トを それぞれ6
名の被 験者に提示 し た.
また, 上記の本 試 行 用の材 料とは別に, 練 習 試 行のた めに名詞 句列 3条 件×動詞 2条 件を含 む12
試 行よ りな る練習 リス トを作成 し た.
106 基 礎 心 理 学 研 究 第 11巻 第 2号
Table
2.
Means
oflexical
decision times (in mg.
ec)for the conditi ns of Experiment LThe string of noun phrases
Verb type AO
AG
NFMean
SD
Mean
SD
Mean
SD
Two
−
place Three−
place0
◎ ワ冒
86だ
07 130.
4204.
7 133077 163.
3132.
3 424477 160,
0180.
1 手 続 刺 激 材 料の提示の制 御,
被 験 者の反 応の記 録,
反応 時 間の 測 定は す べ てマ イク 卩 コ ンピュー
ター
を用 い,
反 応 時 間は ミ リ秒 単 位で記 録し た.
刺激は グリー
ン ディ ス プレー
を用い て,
ディ ス プレー
中 央に 16×16 ド ッ ト文 字で提 示された.
各 試 行の 始ま り は 0.
5 秒間の ビー
プ音と,
名 詞 句 列の 先頭 位 置を 示す 記 号“
*”
の提 示に よ り合図 し た.
“
*”
を2
秒 間 提 示し た後に,
1 秒の間隔を おいて名 詞 句 列を提 示し た (NF
条 件で は○ ○ ○…
を提示 した ).
名 詞 旬 列の処 理につ い て被験 者に与え た教示 は 「何が 書かれてい る か を 十分に確 認で き た な らばス ペー
ス キー
を 押 し て下 さい」であっ た.
こ こ で名詞 句列の提示か ら 被 験 者がス ペー
スキー
を押 すまで の時 間 が 測 定さ れ た (名 詞 旬 列 処理時 間 〉.
被 験 者に よっ てス ペー
スキー
が 押 さ れる と画面上で は遅延な しに , 名詞 句 列の末 尾か ら 2 文字分の空 白を置いて動詞 (あ るいは無 意 味 綴 り)が提 示 された.
こ の時,
名詞 句 列は ラ ソ ダム ドッ トパ ター
ン で隠さ れた.
動 詞 (ある い は無 意 味 綴 り)が提示 さ れ る と,
被 験 者は で きる だけ 速 く語 彙 判 断を行い,
有意味語 であ ればYES
キー
(キー
ボー
ド の K キー
を使 用 ), 無 意味綴りで あれば NO キー
(G キー
) を押した.
こ こ で 動詞の提示か ら被験 者の反応 ま で の時 間を 測 定 し た (語 彙 判 断 時 間 ).
以上の試行を, 練習リス ト につい て
12
回,
続いて本 試 行とし て60
回 行っ た.
本 試 行の 提 示順序は被験者毎 に無 作 為に設 定し た.
結 果 まず,
名詞 句列の平 均 処 理時 間を分 析 する と,
名 詞句 列を提示 したAO
条 件,AG
条 件の各 平 均 処 理 時 問は,
AO
条 件 1056 ms,
AG
条 件 1072 ms であっ た.
分 散 分 析を 行っ た ところ,
有為 な 差は見ら れ ず (F(1.
17)= ・.
358 ,p
>.
10),被 験 者 が 両 条 件の名 詞 旬 列に対し同 等の処 理を 行っ ていた と考え て良い と考 えら れた.
次に各 枠 条 件毎の語 彙 判 断 時 間 (動詞1・
c対し て有意 味 語と反 応 する の に要 し た平 均 反 応 時 間 )をTable
2 に 示し た.
語 彙 判 断 時 間に つ いて,
名詞句 列 ×格枠の 2要 因の分散 分 析を行っ た とこ ろ,
交互作 用の み有 意であっTable 3
.
Percentage of errors for the condi−
tions Df Experiment 1
.
Verb type
The string of noun
phrases AO AG NF Two
・
place Three−
place 8766 1ρ
り 151 1 4343 1T
∈ 30 苫冒 芒ξ
20 コt−
o£ 10 ∈』 く三〇 雷
一
10ε
=
幽
20r−
−
oo−
30誓
塁
.
、。 oゆ
E 呂.
50 く L−
60Two■
plaee Three.
placeVERB TYPE
AG
F;g
.
2.
Facilitation (bene
丘t) and inhibitlon (cost )of RT in the lexical decision task.
た (
F
(2, 34)=
3.
86,P=,
03).
予測された名詞句 列の促 進 効 果,
抑 制 効 果を検討する た めに NF 条 件との差を求め め た (Fig.
2).
そ れぞれの動 詞 格 枠 条 件に お い て,
NF
条 件とAO
条 件及びAG
条 件 間の対 比較を行っ た とこ ろ,
二 項 動 詞に おいて は AO 条 件で促 進 効 果が見ら れ た (t=
2.
287,
df=
・
72,
p
く,
05).
また 烹項動詞 に おいて は AG 条 件で促 進の傾 向が見 ら れ た (t=
1.
674,
df=
72,P
〈.
10
).
抑 制 効 果につ い て は二項動詞条 件 (AG
条 件), 三項 動詞条件 (AO
条 件 )と もに見 られ な かっ た.
な お,
各条件に おい て 生じ た誤 反 応 (動 詞に対 する無 意 味綴 り とい う反 応 )の生 起 率を Table 3 に示した.
実 験 2 実 験
1
で検 討し た格 枠 情 報に加えて,
選 択 制 限に よっ て ざ らに動 詞の検 索 範 開が狭め られる事 態に おい て,
先 行 する名 詞 句 列の処理 が動 詞の検 索に及ぼす 影 響を検 討 した.
Fig.
1の動 詞 分 類で は,
動 詞が どの よ うな格 関 係と と もに使 用さ れる か とい う格 枠に よ る分 類に加えて選 択 制 限に よ る下 位 分 類を行っ てい る.
例 え ば,
同一
の格枠.
膺 報LAO
] を持つ 動詞“
叱る”
と“
飲む”
と を 例 に と る と, 両 者は対 象 格 (0)と し て共 起できる名 詞の属 性が異 な り,
“
叱る”
は [_
A 十humO
十hum
】,
“
飲 む”
はLA
十huln O 十 c(m,−
alli]の よ うに分 類され る.
実 験2
では,
この よ うな 選 択 制限の違い に よっ て, 名詞旬 列の処 理に よ る検 索範 躙の特 定 が 下 位 分 類に まで及 ぶ 場 合につい て検 討し た.
f
続 きは 実験 1 とほぼ同 様で あるが,
勳詞提示 に先 行 し て名詞句列 と し て “ 人名+が・
人名+を”
と“
人 名+ が・
人名 以 外の具体 物 名+を”
を 用いた.
Fig.
1 を検索 経 路 と対 応 する と仮定す れば,
‘
‘
人名+が・
人名+ を” の処 理に よ・
)てはLA
十httm O 十hum ]動 詞に,
ま た“
人名十が ・ 人名 以 外の 具 体 物 名十を”
の処 理に よって は
LA
十hum
O
十con,−
ani]動 詞に検 索 範 囲が特定さ れ る
.
上記の よ うな検 索 範 囲の方 向 付 けが行われた 後に,LA
十hum O 十hum ] 動 詞,
LA
十hum
O
+hum
,−
aniユ 動 詞,
LO
+con,−
ani]動詞の い ず れか を,
無 意 味 綴りに交 えて提 示し語 彙 判 断 時 間を測定 し た。
方 法 被 験 者 実 験 1 に参加 し な か っ た大 学生 18 名を被験 者 とし た.
案験計画 3x3 の要 因 計 画を用い た.
要因はすべ て 被 験 者 内 変 数であっ
た.
第 1 の要因は名詞句列の 条件で あ り,
助 詞’
‘
を”
を 伴 う名 詞の属 性で操 作した.
第 1 は “ 人名+ を”
を提示 し た +h 条件であっ た.
第 2 は“
人 名 以 外の具 体 物 名十を”
を提 示し た一
h 条件で あっ た.
第3
は実 験1
と同 じ く統 制 条 件であり,
“ ○ ○…
○○”
を提 示 する NF 条件で あっ た.
第 2 の要 囚は,
動 詞の 格 枠・
選 択 制限の 条件であ り, 次の3
条 件があっ た.
第 1は二項 十hum 条 件で [_A
十humO
十hum ]動 詞 を 用いた.
第 2 は二 項一
hum 条 件でL
−
A 十hum O.
1−
COTI ,−
anil 動 詞 を 用い た.
第3
は一
項 条 件でLO
+COn ,−
ani ]動言司を用いた.
した がっ て,
促 進 効 果は検 索 範囲 と動 詞の格 枠・
選 択 制 限が一
致 する +h
条 件 と二 項 +hum,−
h 条 件と二 項一
hum の組 合せ で予 測された,
ま た,
逆に抑 制 効 果 は 十h 条 件と二項一
hum ,−
h 条 件と二項一hum
の 組 合せ,
そし て +]1,− h
条 件の どちらの名詞 句 列に よ っ て も適 切な検 索 範囲 が特 定され ない一
項動詞条件で予 測された,
Table
4.
Examples
of stimulus used in Experiment2,
ConditionTwo
−
place 十huln verb 十h:一h
: NF : た ろ う が (A+hum ) た ろ うが (A +hum ) ○ ○ ○ ○ は なごを (〇 +hum ) えんぴつ を (0+ con,−
ani ) ○ ○OO
しか っ た,
([_
A 十humO
十humD しか っ た.
([_
A十hum O十hum ]) し か っ た,
([_
A 十hum
O
十hum ])Two .
place−
hum verbH
−
h:一
h:NF
: た ろ うが (A
十hum ) た ろ うが (A +hum
) ○ (⊃OO
はなごを (0
+hum
) え ん ぴつ を (0
+ cOII,・
ani ) ○000
け ずっ た.
([
_A
十hurn O十 con,・
anil) け ずっ た,
(
LA
+humO
+con,−
ani ])け ずっ た
.
(
L
.
A十hum
O
十cI)n,−
ani ])One
−
place− hum
verb 十h:一
h:NF
: た ろ うが (A
+hum ) たろ うが (A
+hum ) ○○ ○○ はなごを (0
+hum
) こ お りを (0
+con ド ani ) ○ ○ ○ ○ と け た.
([_
O十con,・
ani]) とけた,
(LO
+ con,・
ani ]) とけた.
([_
O十 COII,−
ani】)108 基 礎 心 理 学 研 究 第 11 巻 第2号
Table 5
.
Means
oflexical
decision
tirnes (in msec >for the conditions ofExperiment
2.
The string of noun phrases
Verb type 十h
一
h NFMean
SD Mean SD Mean SDTwo −
place 十humTwo
−
place−
hunl One・
piace−
hum733727760146
.
1142
,
4185.
6790628718
144.
0105
.
9156
.
0752687741
156.
3151.
4187.
1 刺 激 材 料 人名は実 験1 と同じ3音 節 (拍 )の語 を 用 い た.
人名以外の具体 物 名を表 す 名詞は 2 音 節 (拍 )〜
4 音 節 (拍 ) (平 均 3 音節 (拍))であっ た.
勤 詞は実 験 1 と 同 じく石綿・
荻野 (1983)に依 拠し,
各条件に つ き 18語 を選択 し使 用 し た (Appendix B),
実 験 2 で使胴 し た材 料の例 を Table 4 に示 す.
刺 激材料の リス トは実 験 1 と同様に 3 通 り (各リス トの試 行 数は 108 回 〉 を作 成し,
それ ぞれ 6 名の被 験 者に提示 した.
練 習 試 行 用リス トにつ い ても実 験1
と同 様の手順で作成 し た.
手 続 測 定の手 続は実 験1
と同 じで ある.
た だ し,
被 験 者は 18同の練 習 試 行を行っ た後に本 試 行108
回 を行・
)た,
結 果 先 行 提 示された名 詞 旬 列の平 均 処 理 時 間は, +h 条 件 1168ms,
−
h 条 件 1184 ms であっ た.
分 散 分 析を行っ た ところ両 条 件 間に有 意な 差は 見 ら れ な か っ た (F
(1, 17)=.
728,P
>.
10
).
実 験2
においても, 両条件で の名詞 句 列に加 え られた処 理は同 等であっ た とみ な して良い で あろう.
Table 5 に格 枠・
選 択 制 限 条 件 毎の語 彙 判 断 時 間を 示 した.
分 散分析 を行っ た ところ,
格 枠・
選 択 制 限 条 件の 主 効 果 (F (2, 34)=12.
77,P
〈、
OOI),
格 枠。
選 択 制 限 条 件 と名 詞 句 列 条件の交 互 作 用 (F
(4,
68)=6.
68,P
<.
001>が 有意であっ た.
格枠
。
選 択 制 限の条 件 毎に,
予 測された促 進 効 果,
抑 制 効 果 が 生じてい るか否かを検討 するた めに NF 条件 との対 比 較 を 行っ た 〔Fig,
3)、
その結 果,
促 進 効 果が予 測 された条 件の うち,
二項一
hum 動 詞と一h
条 件の 組 合せ で有意な促進 効 果 が 見 られ た (t=・
2.
524,
df=
102,
p
〈.
01).
し か し,
二項 十hum 動詞 と 十h 条 件の組 合せ で はNF
条 件 との差は な く促進効 果は見ら れ な かっ た.
抑 制効果の 予 測さ れた 二項 十hu皿 動詞 と一
h 条 件 の組 舎せ (t=
1.
668,df=
102,
P
く.
10),
二項一
hum 条 件 と +h 条件 との組 合せ (t=
1.
710,df=
102,♪く,
10
)で NF 条 件との差の傾 向 があ り, 抑 制が生じ たこ とが伺わTable
6.
Percentage of errorsfor
the condi−
tions of Experiment 2
.
The
string of nounV
。,b
typ。P
鯵
es 十h
一h
NFTwo −
place十humTwo
−
place−
humOne ・
Place− hum
8
只り
6224
ρ
00 Ω U 502 7ρ
03 35 只 U 冨 60950
右 置 40 誉£
3。言
至
2。籠
1・ 0 富一
109
−
20 ぢ岩
’
301i
:
iiTwo
−
Pbce 丁wo
・
place One−
place ÷hu階一
hum・
humVERB TYPE
Fig
,
3.
Facilitation (benefit) and inhibition(cost )of RT in the
lexical
decision
task.
れ た
.一
項動 詞につ い ては,
+h,−
h 両 条 件 下で抑制 効 果が予 測さ れ たに も か か わ らず 効 果は見 られ なかっ た.
Table
6
に は,
各 条 件下で の誤反 応の生 起 率を示 した.
な お,
格枠・
選 択 制 限 の 主 効 果 が 有 意で あっ たこと は,
動 詞の分類間で名 詞 句 列 条 件に関わ り なく語彙判 断 時 間に差 があ るこ と を意 味し て い る.
そこで,
多 重比較 を行っ た ところ,
全 体 とし て 二項一hum
動 詞が他の 2 条件 よ り も 語彙判断 時 間が速い こ とがわ か っ た.
ま た, 名 詞 句 列の影 響を受け ないNF
条 件につ い て の み多重 比較を行っ た ところ,
同様に二項一hum
の みが他の動 詞2条 件よ りも語 彙 判 断 時間 が 速 か っ た.
考 察 本 研 究で は
,
F川 more (1968)の格文 法理 論に 依 拠 し て意 味 記 憶 に お け る動詞の 記 億 構 造の試 論 的モデル (Fig.
1)を作 成し,
その 妥 当性 を語 彙 判 断 時 間を指 標と する動詞の検索 時 閻に よっ て検 討する こ と を 目的と し た.
実 験 1で は,
動詞に先ん じ て提示される名 詞 句 列の持 つ格 関 係 情 報 (助 詞 )の処 理が,
動 詞 検 索に与 える影 響 を険 討した.
Fig.
1 の記 憶構造モ デル からは,
名 詞 句列 の持つ 格関 係.
清報を手がか りと して適切に動詞の検 索 範 囲を特 定で きた場 合には,
動詞の検 索 が 促 進されるこ と が予 測さ れた.
また,
逆に名 詞句 列に よっ て特 定さ れ た 検索範囲外の動詞 が提示 された場 合には,
名詞 句列の処 理がその動詞の検 索に対 し抑制 的効果を持つ ことが 予測 された.
実 験 1に お い て は,
上記の予 測の 内,
適 切に検 索 範 囲を特 定 する名 詞句列に よ る促 進 効 果の み が確 認さ れた,
そこで,
実 験2
では名 詞 旬 列の格 関 係 情 報に加え て, 名 詞の意 味に よっ て与 え ら れ る 選 択 制 限 情 報に よ り,
実 験1
よ りも さ らに厳 密に倹 索 範 囲 が 特 定される事 態におい て名詞句 列の 効 果を検討した.
その結 果,
促 進 効 果に加 えて,
名詞句 列の処 理に よっ て不適切に検索範 囲が特定さ れ るこ とで語彙判断時間に抑 制 が 生じ る傾 向 が見い だ さ れ た.
これは抑 制 効 果 を示唆 すると考えられ た.
し か し,
検 索の抑 制が予 測さ れ た一
項 動 詞 条件では 抑 制 効 果は見られなか っ た.
以上の結果は,
部 分 的にではあるが, 本 研 究の試 論 的 モ デル の妥 当姓を支 持 する もの と 言 え よ う.
実 験1,2
を 通し て 見 ら れ た 名 詞 旬 列に よる 動 詞検 索の促 進 効 果は,
動 詞が格 枠・
選 択 制 限に よ り分 類さ れ記 億 されてい るこ と を示 すもの である.
し か し,・
一
方で他の解釈の 可能性もある.
そ れは,
名 詞 句 列に含ま れ る名詞 と動詞 との連合を経 由し た検 索で あり,
両者の連想 関 係 が 非 常に強い な ら ば語 彙 判 断が促 進さ れ ることが考え られる.
実験 1,
2 で は検索 範 闘と 動 詞の 格 枠・
選択制限 が.
・
.
.
t
致 する条件で は容 認 可 能な文 と な り,
一
致し ない条 件では 非 文 と なる ような材 料を用 い た,
そのため に一
致 する条 件,
特に一
hum 名 詞を 用 い た条 件で連 想 関 係が強い ように思わ れる.
し か し,
実 験 を 通し て確 認さ れ た促 進 効 果 が すべて 単語 間の連想 関 係t’
L依存し てい る とする ならば, 実験 2 の一
項 動詞 条件 で も名詞 句列一
h 条 件で は促 進 が 見 られ な け れ ぽな ら ず,
こ の解 釈に よっ て は今 回の結 果 を 説 明できない と考 えら れる.
むしろ,
名 詞と動 詞の連 想 関 係はそ れ ら が文とい う枠 組みに匱かれることで一
層 際だっ て見 えると も考 えられ る.
Deese (1965
)に よれ ば成 人の場 合,
語か らの連 想は 主}こ同一
品詞内で生じる (パ ラ デ ィ グマ テ ィッ ク para・
digmatlc)こ とが 報 告 さ れ て い る.
この こ と は文 枠 組 み を形 成しない先行 刺激の提 示 (単 語 を 単 独で提 示 す る 等)では, 名 詞か ら動 詞へ の連 想は起こ りに くい こ とを 意 味し て お り,
実 験 1,
2 の促 進 効 果は単 純に連 想に よ るとい うよ りも,
「文 枠 組み に よ る連 想の方向付けの効 果」と も呼ぶべ き もの と も言え よ う.
名詞が 文枠組みの 中に提 示されることでそ れを 目的 語 (対 象 格 )とし て取 り得る動詞に連想が方向付けられ た とも考えられ る.
そ こ で,
先 行 する名詞句列の処 理 に よ る動 詞 検 索 範 囲の特 定の過 程で は,
単語の意 味 素 性 も検 索 範囲の特 定に寄 与 す る とい う仮 定を付け加え ることは必要である と考え ら れ る.
ま た,
実 験2に おい て見られた検 索時間の 抑 制の傾 向 は,
名 詞句列の処 理に よっ て,
十 分な格枠・
選 択 制 限の 情報が与 え ら れ る と 被験者 がか な り強 固に動 詞の予 期を 行 うこ と を 示唆してお り, 促 進 効 果に よっ て確 認さ れ た 動 詞の記 憶構造の存在を強 く裏付 けるもの と 言え る.
こ こ で,
実 験1で は予 測され た抑 制 効 果が見られな かっ た 理 由につ い て考 えて み ると,
実 験 1.
では名 詞 句 列の助 詞 を操 作 するこ とで格 枠の みが検 索 手がか り と して与えら れ たこ と, それに加 えて,
:三項 動詞検索のため には本 来 必 須であるべ き対 象 格に相 当する名詞旬 が名詞 句 列AG
条 件で提示 さ れ な かっ たこ との 2つが考え ら れ る.
これ らの理 由に よ りト分な検索の方 向 付けが 生 じなか っ た た め に抑 制 効 果 が 見られな かっ たの で あろ う.
表 3に示し た よ うに実 験1に おいて は 三項 動詞条件で誤 反 応が多 く 見 られるが,
同じ理rtiに よ る と考 えられ よ う.
し か し実 験2に お い て一
項 動 詞 条 件の 検 索 時間に関し て予 測された抑制効 果が見 られ なか っ たこ と は, 本 研 究 の モ デルに多少の修 正を迫るものと 言え る か も知れ な い.
つ ま り,
実験 2 の 結 果 は Cook (1979)が行っ た一
項,
二項,
三項とい う命 題表象の論理構造に よ る述 語 (動詞)の分 類の心 理 的 実 在 性に 疑 問を投 げるもの とも 斉え る か らで ある,
例 え ば,
日本 語に も見られ る “ 汚 れ る一
汚ず’
の よ う な一
項 動詞 と二項 動詞の対 応や,“
濁 る一
濁らせ る” の よ う な ‘‘
.
項 動詞十 させ る” に よ るr 項 動 詞の 二項 動 詞 化の 例があ る.
これ らの例か ら も考 え ら れ る ように,一
項動詞と二 項動詞を全 く独立の分類 と 考える ことに は問 題 が残る かも 知 れ ない.
また,
こ の動 詞の分 類の問 題は,
語 義の分 解の問 題に も関 連 するか も知れ ない..
・
一
般に自然 言 語の動 詞は多 義 的であるが,
その語義をい くつ か の基 本 的な動 詞,
ある110 羞 礎 心 理 学 研究 第
11
巻 第 2号 いは抽象的な述語の組合せ に還 元 するこ とで, そ れぞれ の意味を一
義的に記 述で きる.
こ の語 義の分解に よっ て 脱 曖 昧 化さ れた意 味 表象を考え るこ と は,
計 算機に よ る 言語 処 理 や,
命 題 表 象理論に よっ て推 論 過程 を説 明 す る 際に は有 効で ある.
こ の よ うな語 義分解 の 立 場に 立つ と, 例え ぽ二項動詞“
落とず’
は“
落ち る十させ る” に 分解で き,
さ ら に“
落ちる”
もま た よ り基 本 的 な 表 現に 分 解 可能で あ る.
し た がっ てその よ うな基本 的 な述 語の 複 合 体と して動詞の記 憶 表 象を位 置づ け る な ら ば,
その 記 憶 構 造は本 研 究で仮定し た以 上に複 雑なもの にな る だ ろ う.
以ヒの
一
項動詞の結 果よ り喚起 され る問 題につ い て は, 今後さ らに検 索 経 路につ い ての詳細 な実 験 を積み重 ね実 証 約に解 明 する 必要がある と言えよう.
最 後に実 験 2で見られた動詞 分 類 問の語 彙判 断 時 間の 差につ い て考 察を加 えて お く
.
こ の結 果は本 研 究で は予測し て いなか っ たもの であっ
k .
しか し,
こ の反 応 時 間の差がモデル に し たがっ て動 詞を分 類し た こ とに由 来 するとする な ら ば,
以 下の よ う に解 釈できると考 えら れる.
もし
,
「活 性 化の レベ ル の同じ動 詞の 検 索に 要す る時 間は等しい」を前 提 とする な らば,
動詞 分 類 問の差は活 性 化の拡散 (C
・Ili・ ・& L・ft
・・,
1975)の理 謝 こ よっ て次 の ように説 明されるだろ う.
まず
,
ある動詞につ い て語彙 判断を行 うこ とでその 動 詞 とリン ク し た動 詞の活 性 化の水 準が高め られる.
予め 活性化の水 準の高め ら れ た動詞につ い て語彙判 断を行 う 場合には,
検 索に要する時 間は 短 くて す む・
もし 二項一
humとい う分類内で は他の分 類よ りも動詞の リソ ク が密であり活 性 化の 拡散がよ り顕著であっ た な ら ば
・
NF
条件に お い て も検 索は促 進さ れ語彙 判断時間は短 く なる、
こ の よ うに考え ると動 詞の分 類間 で語彙判 断時間 に差 がみられ たとい う実験 2の結 果は,
リン ク の粗密と い う記 憶 ネヅ トワー
ク上の実態を反 映し たもの と なり, 仮 説し たモ デル の心的実在 性を鋳 証 するもの とも言 えよ う.
し か し,
本 研 究のみでは上 記の解 釈が 正し い か どうか を 判 断 することは できない.
実験 1,
2 と もに語 彙 判 断 の対象とした語 (動 詞 )は該当する分類から実 験 者が任 意に選 択し た ものであ り,
同一
分 類 内の動詞相互の連想 強度につ い ては不 明である.
ま た, 各 分 類を構成 する動 詞の個数も不詳である.
これ らを 明らか に した 上 で,
動 詞 を プラ イマー
とする プラ イ ミング手 続 きに よ る実 験な どを行 う必 要がある だ ろ う.
ま た,
検 索 経 路の モ デル に心 理的実在性がある,
す な わち分 類 内の動 詞が相互に リン ク し て い る と し た 場合に は,
も う一
つ の解 釈が可 能であろ う,
そ れ は, その分類 の成 員につ い て判断するこ とで特 定の分 類 全 体の活 性化 水 準 が 高め られ る場合で ある.
こ の場合に は,
動詞の条 件 間の差は,
実 験で扱っ た動詞がそ れが属する分 類の興 型であっ たか ど うか に関わる か も知れ ない.
あるい は被 験 者 が 動 詞の分類に気づ いたか ど うか に関わるか も知れ な い.
こ の解釈につ いても本 研 究からは結 論 を下 すこと は で ぎないが,
検 証さ れ る な らば同様に モ デル を支 持 す るもの となろう,
これ もま た今後の課 題 とな る.
以 上,
本 研 究で は動 詞を命題 形 成の ため の枠 組みと提 え,
その命 題 形 成機能 を記 述する ための 2つ の 情報,
す なわち格 枠 情 報と選択制限情報と に よっ て動 詞が分 類さ れ,
記 憶 されて い る こ と を実験に よっ て確 認し た.
し か し,
本研究の モ デル の妥 当 性につ い て は, い ま だ部 分 的 な支持を得た に留まっ てい る.
そこで,
今 後,
よ り広 範 な動 詞 分 類に わ た る実験的 検 討を加えモデル の妥 当 性 を さらに高め る必要が ある.
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