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創立40周年記念

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大阪府立茨木支援学校創立 40 周年記念

「とり」

生徒作品

自立活動のとりくみ

(2)

はじめに

この記録は2009年,40周年創立記念誌として編集されたものです。本校での自立

活動の実践を基に、「からだ」、「コミュニケーション」や介助法等について

自立活動担当者が中心となってまとめています。

指導や介助の現場ですぐに役立つものを目指したため、理論や解説を最小限に

とどめ、実用性を重視した内容となっています。

特に経験の浅い指導者、介助者にとって本書がより専門性を高めるきっかけと

なることを望みます。

「Ⅶ.二次障がいを防ぐために」は本校卒業生にとって大きな課題である二次

障がいに焦点を絞って書かれています。進路先である施設や作業所等で参考に

していただければ幸いです。

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Ⅰ.からだ

日常生活を通して行っている姿勢作り、動き作りをあげ、子どもたちが使用している装具、補装具等 を紹介する。

1.子どもの見方

・ 障がいの基礎疾患、合併症を把握しておく。同疾患であっても、一人ひとりの子どもによって異なる ことを知り、その子どもの全体像を見ていく。 ・ 身体面、認識面の正常発達を学習する。そのことによって「何が問題なのか」「どこでつまずいてい るのか」等が見えやすくなる。

2.身体の見方

・ 子どもの全体の障がい像を見て、次に細部を見る。 ・ 具体的には、身体の各部位の左右の高さ、太さなどを比較することで障がい像が見えてくる。 肩の高さ 乳頭の高さ 肩甲骨下角の高さ 肋骨弓の高さ へその位置 後腸骨稜の高さ (上下左右) 前腸骨稜の高さ 大転子の高さ 膝の高さ (1) 筋緊張の程度 <例> 硬くこわばりがあるか 弛緩しているか 曲げる方向に強いか 伸びる方向に強いか 顔の向き

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(2) 変形の程度 ・ 脊柱側わん ・ 股関節脱臼 ・ 足部の外反足or内反足 (3)拘縮の程度 各関節の動く範囲を確認する (4)子どもの持っている運動能力を見極め、特徴を知る

3.姿勢と動き

(1)臥位姿勢 ※ 重度の子どもには、リラックスした背臥位姿勢、できる限り両方向の側臥位姿勢、もっとも困難 な腹臥位姿勢、とバリエーションを作ることは大切である。 ① 背臥位姿勢 <ポイント> ・ 頭を正中位にする ・ あごをひく ・ 体幹、骨盤は左右対称

・ 下肢を軽く屈曲する ・ 股関節は外転位にする ② 左右の側臥位姿勢 ※ 体幹(側わん)を伸ばしやすい姿勢。 ※ 目と手の協応がしやすい姿勢 <ポイント> ・ クッション、抱き枕で身体を安定させる

図が入る

・ 股の内転防止クッションを使用する

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③ 腹臥位姿勢 ※ どの子どもにとっても全身を伸ばす大切な抗重力姿勢 ※ 両手で遊びやすい姿勢 <ポイント> ・ 三角マット、ロールをを使用する ・ 頭部のコントロール (2) 寝返り ※ 臥位での動きはあるが、曲げる方向と伸ばす方向との動きが組み合わさった動きである。頭の回 旋、体幹の回旋、骨盤の回旋が必要である。 ① 頭部を介助しての寝返り <ポイント> ・ 身体の小さい子どもや、頭部の反り返りの強い子ど もには、頭を前屈させるように援助して、身体全体 を寝返りさせていく ・ 急激に回旋させないこと。 ② 両手を介助しての寝 <ポイント>

・ 上肢の引き込みの強い子どもや、頭部の反り返り の強い子どもには、両腕を上にあげ、リラックス

させながら援助し、体幹・骨盤の回旋をしていく。

③ 骨盤・下肢を介助しての寝返り

<ポイント> ・下肢を突っ張る子ども、また、逆に曲げてしまう子ども、下肢 に動きの尐ない子どもに骨盤からの回旋を上半身の動きにつ なげていく。

(3) 座位姿勢 ※ 自力で座れない子どもであっても、座位は日常生活の中で不可欠な抗重力姿勢である。いろいろ な座り方があるが、曲げる力と伸ばす力が組み合わさっている姿勢である。座位がとれることに よって上肢が使えることになる。

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① マット上での座位 とんび座り 正座 横座り <ポイント> ・骨盤を安定させる ・次の動きにつなげていく あぐら座位 長座 ※ 座位は日常生活に不可欠な姿勢である。自力で座れない子どもには目的に合わせて、その子ども に合った座位保持椅子等を作成す ②椅子座位 (4)四つ這い姿勢 ※ 4点で支持する対称姿勢。上肢は伸ばす力下肢は曲げる力で保持できる姿勢 <ポイント> ・ ひじを伸ばして支持する

・ 股の内転を防ぐ(ロール等) ※ とんび座り: 障がいを持つ人に多い。股は内転、内旋している。おしりは落ちこんでいる。 ※ あぐら座位: 股が外転、外旋している座位姿勢。股関節のためには良い姿勢である。

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(5)四つ這い移動 ※ 四つ這い姿勢から、上肢、下肢を左右交互に動かす <ポイント>

・ 長いロールを入れ、足を交互に出す きっかけを作る ・ 股が内側に入らないようにする ・ 坂などの抵抗を与える (6)膝立ち位、立位 ① 膝立ち位 ※ この姿勢は、立位ができない子どもへの抗重力姿勢のひとつ。股関節周辺に緊張の強い子ども は、おしりが突き出て股関節を伸ばすことが難しい。 ② 立位 ※ 重心が高くなり、足底が床につくことで安定する姿勢

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<ポイント> 立ったときに左右対称姿勢になっているかどうかを確認すること(骨盤の位置 かかとが浮いていないか、など) (7)歩行 ※ 実用性に幅はあっても、移動能力を持ち歩けるということは、子どもの発達には大切なことである。 安全面に注意し、限りなく可能性を求め、長期的な取り組みが大切である。二次障がいを進めない ため、無理をさせてはいけない。 ① SRC-W による歩行

絵or写真

※ 体幹パッドとテーブルで 上半身を保持し、サドル で下半身の荷重を軽減で き、重度の子どもに有用 な歩行器である。 ② U字型歩行器による歩行

※ 一般整形で昔から使用さ れ、前後左右と小回りが きく歩行器である。本体 のみで使用することは尐 なく、サドルを付けたり、 体幹部の安定、下肢の振 り出しをスムーズに行わ せ る な ど 仕 様 の 工 夫 を し、使用している。 ③ PCWによる歩行

※ 前方にのみ進み、両下肢まひの子どもが 使用することが多い。(上肢の支持が必 要)

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4.起こりやすい変形、拘縮

(1)内反

足部が内がえし(足の裏が内側を向き、通常は足関節が底※屈する)の状態を示す。 ※ 底屈‥‥つま先立ちするときのような足首の動き。 (2)外反

足部が外がえし(足の裏が外側を向き、通常は足関節が背※屈する)の状態を示す。 ※ 背屈‥‥足指を浮かせてかかとで立つような足首の動き。

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(3)内転 (4)外転 (ex.股関節)

体幹(胴体)の中心に向かって近づく動き 体幹の中心から外側方向に離れていく動き。腕を横に上 げる。脚を横に上げるなど (5)内旋 (6)外旋

(ex.股関節) 腕を内側にひねる、脚を内側にひねる 腕を外側にひねる、脚を外側にひねる など長軸を中心にしてその骨が内側に向 など長軸を中心にしてその骨が外側に向 かって回る動き かって回る動き

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(7)回内 (8)回外 手に持ったコップの水を、親指を下にして捨てるような動きが回内。反対の動きが回外。これらの 動きは、手首ではなく前腕の動きが関係している。 (9)側わん ① 側わんは、「機能性側わん症」と「構築性側わん症」に分けられる。 ア、「機能性側わん症」...背骨に対する筋肉や重力の働きによって起こり、いつも同じ方向にか ばんをかけている、痛みをかばって身体をねじっている、といった生活習慣によって 引きおこされる。背骨の骨そのものは変形しておらず、原因を取り除けば背骨はまっ すぐになる。そのため、特に治療の必要はない。 イ、「構築性側わん症」...一部の骨がくさび型に変形している。そのため、背骨そのものがカー ブし、背骨全体に特有のねじれ(タオルを絞ったような状態をイメージ)がでる。そ のため、身体をひっぱってみてもカーブは消えない。 (機能性側わん症) (構築性側わん症)

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② 側わんのカーブは、形や現れる位置によって、12種類くらいに分かれる。主なも のは、下の表の4つ。 シングルカーブ(カーブが1つ) 逆Cカーブ 胸椎型(右凸が多い) 胸腰椎型 Cカーブ 腰椎型(左凸が多い) ダブルカーブ(カーブが2つ) S字カーブ 胸椎と腰椎にカーブがある (胸椎型)逆Cカーブ 胸腰椎型 腰椎型 S字カーブ ③ カーブの程度による分類 コブ角の度数 子どもで10度以下、大人で15度以下 正常範囲(ほとんど心配いらない) 10/15~25度 軽度 25度~45度 中度 (装具療法が勧められる) 46度以上 重度 (手術が検討される) 80度以上 高度 ④ コブ角の測定法 「コブ(Cobb)」とは、その測り方を考案した医師の 名前。 「コブ度」とは、背骨の曲がり具合を数字で表したもので 測定には、レントゲン写真を使用する。 右の図は、コブ角の測り方を示したもので、数字が大き くなるほど重症ということになる。

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5.装具、補装具

1) 種類と目的

上肢装具、体幹装具、下肢装具がある。病気、けが、障がいなどによる身体の機能障がいの補完、 代替をすることを目的として使用する補助器具。治療、リハビリ、日常生活の補助に使用するものや、 予防や矯正を目的とするものもある。 ① 上肢装具:装具は、装着する目的、外観、機能、製作材料などにより分類される。基本的な型分類 としては、手関節固定装具、手関節指固定装具、長・短対立装具、 Bunnell型装具、把持装具、指装具、肘および肩装具、balanced forearm orthosis(BFO) などがある。 ② 下肢装具:おもな構成材料によりプラスチック装具、金属支柱付き装具、軟性装具などがある。通 常は、装具が身体を覆う部分、すなわち装着部位によって整形靴、足装具、短下肢装具(AFO)、 長下肢装具、膝装具、股装具、骨盤帯長下肢装具、骨盤帯装具、脊椎長下肢装具、脊椎膝装具など の名称で分類されることが多い。 ③ 体幹装具:目的や固定の範囲により分類する方法もあるが、脊椎の部位別に分けると、頚椎装具、 胸腰仙椎装具、腰仙椎装具に分類される。 (2) よく使われる装具の例 ①短下肢装具 a、SLB(支柱付き短下肢装具) ( 0リング付きSLB ) ( Yベルト付きSLB )

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<SLBの着け方のポイント> ① かかとを装具のかかと部分にしっかりつける。 ② 内側に足関節止めベルトがある場合は、それを引っぱり踵が浮かないようにする。 ③ 外側の足関節のベルトを止める。 ④ 残りのベルトを止める。 ※ Oリングは支柱の内側を通す。 Yストラップは支柱の外側を通す。 ⑤ 膝下のベルトも忘れないように止める。 b、ポリプロ装具 <ポリプロ装具の着け方のポイント> ① 踵を装具の踵部分にしっかりつける。 ② 足関節のベルトを止める。足が浮かないように気をつけ る。 ③ 残りのベルトを止める。 ④ 膝下のベルトも忘れないようにとめる。 ②.体幹装具 ( 軟性コルセット ) ( 硬性コルセット )

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6. 介助の方法

(1)抱き方 子どもの障がいにより違うが、頭が反り返ったり腕や足が体の外に落ちないように注意す る。身体の大きな子どもは無理せず複数で介助する。抱える際はできるだけ自分の身体に 引き寄せると、子どもの不安感もなくなり抱える側も腰を痛めにくい。 (2)車いすの乗せ方 ① 普通型(背もたれが垂直) 足をしっかりと足台に乗せて、子どもがおじぎを するように身体を前へ倒しながら深く座る。 ②ティルト型 ティルトの角度を最後まで倒す。背もたれに 沿うように深く座らせ、骨盤が正しい場所に きたら、なるべく骨盤が水平になるようにして 骨盤ベルトを締める。その後胸ベルトをつける。 側わんがある場合は姿勢を整えてから胸ベルト を締める。 (3)車いすからの立ち上がらせ方 子どもの障がいにより違うが、足置き台をはずして足をしっかり床につける。向かい合っ て手や肘などを介助し、子どもがおじぎをするように立つ。両わきから2人で介助する場 合もある。

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Ⅱ.からだの取り組み

本校では、特別な技法・手技にとらわれず、身体へのアプローチを行っている。その一部を紹介する。

(1)子どもの動きに逆らった動かし方をしない。安全を第一とする。

(2)無理な動かし方をせず、子どもの動き・反応に合わせ、ゆっくりうごかしていく。

(3)基本的には、身体の中枢部から抹消部へと動かしていく。

(4)子どもの得意な側(左右)

、動き(屈伸等)から動かしていく。

1.背中全体

(1)背中を丸める(前方屈曲) <ねらい> 背中の可動範囲を広げ支持力をつけるとともに呼吸を楽にする。 <方法> ①あぐら座位にさせ、指導者は背中側に座る。 ②頭を前傾させるとともに、両腕を胸に抱え込ませて両肩をすぼめる。 ③上半身を前傾させて、背中を丸めるようにする <ポイント> ・ 途中で頭を反る、肩を広げる等の緊張があらわれても、無理に押さえ込んで はいけない。 ・子どもを落ち着かせて緊張が緩むのを待つことが大切である。

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(2)後に反らす(後方伸展

<ねらい> 背中の可動範囲を広げ支持力をつけるとともに呼吸を楽にする。 <方法> ①うつ伏せ姿勢をとり胸に三角マットを入れて頭を高くする。指導者は横に座る ②お尻が浮かないようにして頭を反らせ、両肩を開くようにする。 <ポイント> ・子どもの両腕は体側につけ、両肩をゆっくり開くようにする。 ・お尻が浮くのは、股関節が屈曲していることが原因である。(5)股関節の項を参照 (3)回旋(左右にひねる) <ねらい> 背中の可動範囲を広げ支持力をつけるとともに呼吸を楽にする。 <方法> ①横向きに寝かせ指導者は背中側に座る。 ②指導者の手と膝で、子どものお尻を固定する。 ③子どもの上側の肩を背中側に引き、肩を開く。 <ポイント> ・お尻は前後に動かないようにする。 ・無理な力で肩を開いてはいけない。

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2.肩

(1)腕を前方に上げバンザイする。 <ねらい> 腕の動く範囲を広げ手の機能の向上を図る。 <方法> ①横向きにねかせる。指導者は背中側に座る。 ②子どものお尻に膝をあて姿勢が崩れないようにする。 ③子どもの肩と上腕に指導者の手をあて、ゆっくり腕を前方に持ち上げる。 <ポイント> ・子どもの頭や背中が後ろに反らないようにする。 (2)腕を後に上げる <ねらい> 腕の動く範囲を広げ手の機能の向上を図る。 <方法> ①横向きにねかせて、指導者は背中側に座る。 ②子どものお尻に膝をあて姿勢が崩れないようにする。 ③子どもの肩と上腕に指導者の手をあて、ゆっくりと腕を後方に持ち上げる。 <ポイント> ・子どもの頭や背中が後ろに反らないようにする。

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(3)腕を大きく回す。 <ねらい> 腕の動く範囲を広げて手の機能の向上を図る。 <方法> ①横向きにねかせて、指導者は背中側に座る。 ②子どものお尻に膝をあて、姿勢が崩れないようにする。 ③子どもの肩と上腕に指導者の手をあて、ゆっくり腕を大きく回す。 前回しと後ろ回しがある。 <ポイント> ・子どもの頭や背中が後ろに反らないようにする。

3.肘、前腕、手首

(1)肘を曲げる(屈曲)、伸ばす(伸展) <ねらい> 腕の動く範囲を広げ手の機能の向上を図る。 <方法> ①あおむけに寝かせて指導者は横に座る。 ②子どもの腕を横に伸ばし、手で子どもの肘をはさんで上腕と前腕にあてる。 ③指導者は前腕にあてた手の力で、肘を曲げる(屈曲)。 ④③と同様に前腕にあてた手の力で肘を伸ばす。(伸展) <ポイント> ・子どもの肘を安定させるため、指導者は上腕にあてた手をしっかり固定する。 ・肘に無理な力を加えない。 動作前 肘を曲げる 動作前 肘を伸ばす

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(2)前腕を回す(回内、回外) <ねらい> 腕の動きを向上させ手の機能を高める。 <方法> ①あおむけに寝かせて指導者は横に座る。 ②子供の腕を横に伸ばす。 ③指導者の手で、子どもの肘上と手首を押さえる。 ④指導者は子どもの手首においた手を動かし手のひらが下を向くようにす る。(回内) ⑤④と同様に子どもの手首においた手を動かして手のひらが上を向くよう にする。(回外) <ポイント> ・写真参照のこと。腕の動きがわかりやすいように棒を握っている。 ・子どもの腕が不安定にならないように、指導者は肘上にあてた手でしっかり固 定する。 動作前 回内 動作前 回外

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(3)手首を曲げる(屈曲)伸ばす(伸展) <ねらい> 腕の動く範囲を広げ手の機能の向上を図る。 <方法> ①座位または、あおむけに寝かせる。(写真は座位での場合)指導者は横に座る。 ②子どもの腕を横に伸ばす。 ③手で子どもの前腕を固定し、もう一方で手の甲を押さえて力を加える。 (屈曲) ④③と同様に前腕を固定し、もう一方の手のひらを押さえて力を加える。(伸展) <ポイント> ・無理な力で曲げ伸ばしをしてはいけない。 動作前 手首を曲げる 動作前 手首を伸ばす

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4.腰 (1)骨盤のコントロール <ねらい> 骨盤周囲の筋を緩める。腰はからだの要といわれる。下肢のストレッチをするときは、 まず、腰や股関節を緩めることが大切である。 <方法>(背臥位) ・子どもの骨盤のゆがみをみる。脊柱とも連携して左右にねじれていることが多い。下の写真では、右 腰が浮いて、ねじれている。 ・子どもの両膝を尐しあげて、そこに指導者の片方の脚をいれる。 ・その状態で、子どもの骨盤を触り、右股関節に注意しながら、脊柱を中心に左右へ動かしてみる。だ んだんとゆるんでいくのが、指導者の手の平に感じられる。 <ポイント>股関節脱臼の子どももいるので、ゆっくりと動かす。 (2)腰を緩める <ねらい>:腰部がかたかったり、腰椎の前わんのある子どもに対して、腰を緩める。 <方法>(背臥位) ・指導者が足の方から両手で膝がしらを持ち、股関節、膝関節を屈曲させていく。 ・子どものおしりが浮いたら、そこに指導者の両膝をいれる。その状態で左右前後にゆっくりと動かす。 <ポイント>:股関節脱臼のある子どもやそりかえりの強い子どもには、適応できない場合がある。

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5.

股関節

(1)股関節を緩める <ねらい>:下肢伸展の前段階として、股関節を緩める <方法>(腹臥位) ・下肢を尐しひらき股関節を外旋させる。 ・おしりから順に太腿に圧をかける。 <ポイント>:股関節脱臼のある場合は注意して行なう。 (2)股関節を伸ばす <ねらい>:立位をとるために、股関節の屈曲筋を伸ばす。 <方法>(背臥位) ・指導者が子どもの片方の脚を股関節・膝関節とまげていく。 ・伸びている方の子どもの足を指導者の足ではさむようにして固定し、指導者の手は、子どもの大腿部 を持つ。 ・他方の手で子どもの膝がしらを持ち、股関節と膝関節を連動させて下肢を曲げていく。写真では左下 肢を曲げていくことによって、右股関節が伸ばしやすくなっている。 <ポイント> ・この時も股関節の脱臼のある子どもは、痛みがでない程度ですることが必要である。 ・股関節屈曲筋は拘縮しやすいところであり、ここをしっかり伸ばすことで歩容もよくなる。

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(3)股関節を伸ばす <ねらい>:立位をとるために、股関節の屈曲筋を伸ばす。 <方法>(腹臥位) ・指導者は子どもの横に直角に座る。片方の手は子どものお尻の上にのせ、他方の手で膝を曲げていく。 ・その時、子どものお尻があがってくるので、ゆっくりと押さえる。それを左右の下肢に順番に行なう。 <ポイント> ・股関節が尐し屈曲するとお尻があがるので、押さえている方の手で、おしりのあがりぐあいを確か めながら行なう。ゆっくりとソフトにすることが必要である。 ・股関節脱臼のある子どもは、注意して行なう。 ・股関節屈曲筋は拘縮しやすいところであり、ここをしっかり伸ばすことで歩容もよくなる。 ④股関節を伸ばす(軽度な子ども) <ねらい>:強めのストレッチの方法で、股関節の屈曲筋を伸ばす。 <方法>(背臥位) ・指導者は子どものおしりを押さえる。 ・他方の手で、大腿前面(ふともも)を下から持ち上げて、股関節を伸ばす。 <ポイント> ・強いストレッチになりがちなので、ゆっくりと子どもの様子を見て行なう。 ・股関節屈曲筋は拘縮しやすいところであり、ここをしっかり伸ばすことで歩容もよくなる。

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⑤股関節内転筋を伸ばす <ねらい>:下肢の交叉があったり、開きにくい子どもに対して、股関節内転筋を伸ばす。 <方法>(背臥位) ・子どもの両膝を尐しあげて、そこに指導者の片方の脚を入れる。 ・指導者は伸ばしている下肢の大腿前面(ふともも)を片手で固定し、他の手で股関節、膝関節をゆっくり と曲げ、股関節を外へひろげる。 <ポイント> 股関節脱臼のある子どもは、痛みが出ない範囲で動かす。 ⑥股関節内転筋を伸ばす <ねらい>:あぐら座位で、股関節内転筋を伸ばす。。 <方法>(あぐら座位) ・後ろから両方の大腿(ふともも)をゆっくり押すことにより股関節を緩める。 <ポイント>:あぐら座位は股関節が開いているので、おすすめの姿勢である。

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⑦股関節の外旋 <ねらい>:股関節が内旋している子どもに対して、股関節を外旋する。 <方法>(背臥位) ・股関節と膝関節をまげて、指導者は膝がしらを持ち、他方の手で下腿を内や外へ動かす。ゆっくりと 行なう。 <ポイント>:動かす時に、子どもが痛がったりしない範囲ですること。また、股関節脱臼や半月板損 傷ある子どもには、注意する。必要があれば、内旋方向にも動かす。

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⑧股関節の外旋 <ねらい>:股関節が内旋している子どもに対して、股関節を外旋する。 <方法>(腹臥位) ・指導者は子どもの膝を曲げ、大腿を押さえながら、他の手で子どもの足首を持ち、内側にゆっくり動 かす。 <ポイント>:動かす時に、子どもが痛がったりしない範囲ですること。また、股関節脱臼 や半月板 損傷ある子どもには、注意する。強くしすぎないこと。

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6.

膝関節

(1)膝をのばす <ねらい>:膝が曲がっている子どもに対して、膝を伸ばす。 <方法>(背臥位) ・指導者は子どもの足の方に座る。 ・子どもの下肢を股関節・膝関節と屈曲させる。 ・指導者はふとももと下腿を持つ。そして子どもの膝の角度をひらいていく。膝の角度を大きくするに したがって、股関節の角度も連動して大きくなる。 <ポイント>:半月板損傷のある子どもには、慎重に行なう。強くしすぎないように注意する。 (2)膝をのばす(腹臥位) <ねらい>:膝が曲がっている子どもに対して、膝を伸ばす。 <方法>(腹臥位) ・指導者は子どもの横にすわり、片手で子どもの大腿を固定する。 ・他方の手で、子どもの下腿を持ち、ゆっくりと膝の角度をひろげていく。 <ポイント>:半月板損傷のある子どもには、慎重に行なう。強くしすぎないように注意する。

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7.足部

(1)アキレス腱を伸ばす <ねらい> 尖足のある子どもに対して、アキレス腱を伸ばす。 <方法>(背臥位) ・手は下腿部を固定し、他の手はかかとを持つ。 ・股関節を尐し屈曲させた状態で、ゆっくりとアキレス腱を伸ばす。 <ポイント> 指導者の指でアキレス腱を触り、伸びるのを確認しながら行なう。 (2)アキレス腱を伸ばす <ねらい>:尖足のある子どもに対して、アキレス腱を伸ばす。 <方法>(腹臥位) ・指導者は子どもの膝を直角に曲げる。 ・足底を掌で押さえながら足首の後ろ側にあるアキレス腱を伸ばす。 <ポイント>:子どもの足関節の状態をみて、無理のないように行なう。

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8.身体の動かし方(一人で身体を動かせる子どもの取り組み)

(1)起き上がり <ねらい> 腹筋を強くする <方法> ・背臥位になり、ひざを肩幅に広げて立てる。 ・手は頭のうしろで組む。 ・上体を起こしてひざの高さまで頭を上げる。 ・ゆっくりと元に戻る。10 回程度繰り返す。 <ポイント> ・両手を前に伸ばして行なうと比較的らくにできる。 ・腰を痛めている時は無理をしない。頭をひざの高さまで上げなくて も、おへそを見る程度でもよい。 (2)背筋運動 <ねらい> 背筋を鍛える <方法> ・腹臥位になる。手は顔の横あたりに置く。 ・ゆっくり上体と両足を同時に持ち上げる。 ・持ち上げたら、そのまま10秒キープ。 ・ゆっくりと最初の状態に戻す。 ・上記を2,3回繰り返す。 <ポイント> ・呼吸は止めない。自然に呼吸しながら行なう。 ・腰を痛めているときは無理せず、左手と右足、右手と左足というように交互に 上げてもよい。

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(3)背中のストレッチ <ねらい> 背中をゆっくり、じっくり伸ばす <方法> ・両手を組み合わせて頭の上に乗せ、その手の平を上に向けてゆっくり伸ばしていく。 15~30 秒程度キープする。 ・元に戻す。 ・身体の正面で両手を組み合わせ、その手の平を身体の前に向かってゆっくりと伸 ばしていく。15~30 秒程度キープする。 ・元に戻す。 <ポイント> ・伸びをするような感じで大きく身体を伸ばす。 (4)身体ひねり1 <ねらい> 腰からお尻にかけて伸ばす <方法> ・両足を伸ばして座り、右足を曲げ左膝の向こう側につく。 ・右手はお尻のうしろの床につける。 ・左手をまっすぐ伸ばして、ひじで右膝を押しながら、上半身 を右後方へまわし後ろを見る。10~30 秒キープ。 ・反対側も同じように行なう。 <ポイント> ・呼吸は止めず、息は細長く吐きながらリラックスして行なう。 ・顔の向きと反対の後ろ側が伸びているのを意識しながら行なう。

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(5)身体ひねり2 <ねらい> 腰からお尻にかけて伸ばす。 <方法> ・背臥位に寝る。両手は横に伸ばして十字の形になる。 ・腰からひねるように左足を右側へ倒す。10~30 秒キープ。 ・ゆっくりと元に戻す。反対側も同じように行なう。 <ポイント> ・肩が床から離れないように注意する。 ・顔は曲げた足と反対方向に向ける。 (6)

道具を使って自分でできるもの

①ストレッチポール <ねらい> 身体のリラクゼーション <方法> ・ストレッチポールの上に背臥位で寝る。ひざは立てて肩幅に開く(写真1) ・両ひじと手首を床につけたまま、手のひらを小さく円を描くようにクルクルと まわす。手のひらはどんな向きでもよい。反対回しもする。(写真2) ・両手を天井に向けて、「前へならえ」の状態で伸ばす。(写真3) ・腕を軽く伸ばしたまま、天井へ引っぱられるように上げる。 ・腕は伸ばしたまま、肩を下にストンと落とす。 <ポイント> ・以上の動作を5分~10 分程度で行い、呼吸が深くなるのを意識する。 (写真1) (写真2) (写真3)

(33)

②ファシリテーションポール <ねらい> 心と身体のリラクゼーション <方法> ・うつぶせに乗る。 ・足の裏を床につけて座り、上下や左右の揺れを楽しむ。 <ポイント> ・揺れ、振動などの刺激を感じると同時に、バランスや姿勢の保持など自発的な 動きを引き出す。 ③バランスボード <ねらい> バランス感覚を養う <方法> ・立位で乗る。 ・座位で乗る。 <ポイント> 揺れ、振動などの刺激を感じると同時に、バランスや姿勢の保持な ど自発的な動きを引き出す。

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④ベンチ(腕ささえをする)

<ねらい> 腕の筋力をつけるとともに、背筋・腹筋もきたえる。

<方法> ・できるだけ身体をベンチから前へ出して、肘をしっかり伸ばして 支える。

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Ⅲ.上肢の動きを育てる

1.人の手がはたす役割

人間は、誰しも成長したい、発達したいという願いをもち、それを実感できたとき、心から喜びを感 じるものである。子どもたちは、「これができた。あれができた。もっと色々なことができるようになり たい。」と常に前向きである。ただ、本校に通う子どもたちの多くは、さまざまな要因によって子ども本 来の活動や生活が制限されやすい。それらの困難に対してさまざまな援助を受けながら取り組みを積み 重ねる中で生活や遊びの幅を広げていく。そうして、人間性を豊かにし心も育っていけるのである。カ ントは「手は人間の外部の脳」と言っている。手は人間にひめられたさまざまな能力を表出し、手を使 うことによって脳の働きを高める事もできる。「手」を使うということは、全人的な発達に大きな影響力 を与えるものである。 (1)手とは 手は人間が生活していく中でとても重要な役割を果たしている。特に発達途上の子どもたちは遊びや 生活を通して手を使い新しい動きを学習している。大脳皮質の運動野は身体の各部に運動を命令する場 所であるが、その中でも手の領域は大変広く、特に親指の占める割合が大きいことが知られている。 生まれて、まもなく手の機能が発達し始め、手を使ってさまざまな活動をしていくことで手の動きが 育ち脳が発達し、言語中枢が形成されてくる。このように手は成長段階の早期から発達し、日常生活の 中で大変大きな役割を果たしている。

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(2)手を動かす 手の操作や発達に関しては全身運動の一領域であり、手を動かすにあたっては手くび、 肩、上腕、肘、手関節を総合的に調整した結果、「握る」「つまむ」などの操作が可能とな る。また、物を手にするまでの位置関係や距離など視覚により物をとらえ、実行されるま での計算は、脳が働き筋の調節がなされ触覚や知覚により正確にとらえられるのである。 上肢体と上肢の骨格 (3)

手の役割

① バランスをとる 歩く時は両手を使ってバランスをとっている。手には移動運動や安定した姿勢をとるためにバランス を補助する働きがある。 ② 身体を支える 階段で手摺りを利用して身体を支える。立つときに物につかまったり、寄りかかったり、 また転びそうになったとき反射的に手を前に出すなど身体を防護したり支えたりなどの 働きをする。 ③ 表現する 身振り、手振りで表現し、コミュニケーションとしての働きをする。手話や指文字など の手指を用いた表現もある。

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④ 物をつかむ 基本的な操作で最も多く行われる行動である。目的のところに運んだり目の前にもって きたりなど目と手を協応させながら動作を行う。また、つかむという動作にもさまざまある。 a.つまみ動作(指先A・指腹B・側面C) 親指と他の指を用いるつまみ動作。 b.握り動作(正確D・力E) 指と手のひらで行う握り動作。 c.鍵つまみ動作(F) 親指以外の四指に引っかけるように握る動作 A B C D E F ⑤ 感覚器としての手 物を識別する能力(知覚機能)があり、重要な働きをしている。割れやすい卵をそっと 持つ、滑りやすいコンニャクなどを落とさず持つ、などである。感覚のなかで、触覚は指先になるほど 鋭敏になり点字を読むこともできる。 ⑥ 道具を使う手(操作) 手の機能で最も特徴的な働きで、一つの手で複数の動作が同時に行える。たとえば小さな物をいくつ か同時に持ち、細かな複合動作でナイフを使って果物の皮をむくなど左右の手がバランス良くかつ視覚 及び手の触覚で確認しながら皮をむいていく事ができる。手が知覚と運動機能を同時にバランス良く働 かせる事ができるからである。 日常生活の中で物を操作したり、必要な道具を使う動作は手を前に持ってきたり、つかんだり、離し たり、つまんだり、手渡したりなど複数の組み合わさった動きと知覚と運動機能のバランスのとれた動 きからなり、子どもの頃からさまざまな経験や練習によって獲得されるものである。

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年齢と発達段階

乳児期から幼児期にかけて発達の過程を追うとともにその年齢で獲得する動作についてまとめた。 0ヶ月 ・ ・ ・ ・ 6ヶ月 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12 ヶ月 ・ ・ ・ ・ 18 ヶ月 ・ ・ ・ ・ 24 ヶ月 ・ ・ 30 ヶ月 ・ 36 ヶ月 ・ ・ 48 ヶ月 両手は握り拳をつくっている状態(把握反射) 両手のひらが軽く開かれてくる 「がらがら」おもちゃを握る。口へ持っていく、持替えようとする。 自分の手を見て観察、両手を組み合わせる、両手が身体の正中線にくる。 おもちゃに手を伸ばし触ることができる。 『聴覚優位から視覚優位へ』 おもちゃを片手でつかむ(握る)手のひら全体で握る。手のひら全体で持ち替える 両手で別々に物を持つことができる。手から落ちた物を拾い上げられる。 手にしたおもちゃをまわしたり、向きを変えたり落とさないように保持できる。物 を落として楽しむ『手の操作から指の操作に変化していく時期』 『目と手の協応動作のはじまり』 親指と人差し指で摘む『共同動作のはじまり』 (手を使うために身体の固定が大切) 他の人の手の中や小さな口の容器に物を入れることができる。 『指腹で摘む状態から指先で摘む状態へ変化していく時期』 指の力が増し、紙破りなどができる 2.5cmの積み木を 2~3個積めるようになる。 砂場などでのスコップですくい上げられる。(指の分化が不十分) 食事動作でスプーンが使えるようになってくる。 簡卖なふたであれば親指と他指で回してふたを開けられる。 マジックやクレヨンでなぐり書きができる。 縦、横の線をまねて書くことができる。(肘、肩の外方向への動き) コップからコップへ水を移すことができる。 2.5cmの積み木を 6 個以上積めるようになる。 『両手のコントロールが安定する。』 グルグル書きができるようになる。(手、手関節、肩の総合的な動き) 『3指把握で微細な動きが可能に』 右手と左手が違う動作ができる。(右手がグーで左手がパー) 両手操作で服のボタン掛けができるようになる。 『体幹の支持という制約から解放され手としてさらに発展していく』 はさみで紙を切ることができる。丸がかける。(丸の模写)

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2.上肢の評価 ~実態把握~

上肢の機能向上を目指した取り組みは身体へのアプローチと同様に、個々の児童生徒に対し、それぞ れに応じた目標を立て、一人ひとりに適した取り組み内容を設定するなど、個々の指導計画に基づいて 実践されなければならない。指導計画を立てるにあたっては、児童生徒の上肢の機能・状態を的確に把 握し評価することで、その時々の児童生徒の実態に合った活動内容を設定し実践していくことができる。 (1) 観察による実態把握 日常的な場面で児童生徒のありのままの自然な姿や様子を観察したり、環境条件を操作することによ って特定の行動を誘発させたり変化させて様子を観察する方法がある。 ① 日常場面での観察 発達が未分化であるほど、子どもたちは環境条件や周りの人たちの影響を受けやすく、設定された場 面の観察だけではありのままの姿をとらえることは難しい。家庭での様子や親による実態理解と、学校 の授業や指導場面での様子に差異が生じる場合もある。遊びや食事場面の様子、リラックスしている場 面など、家庭と学校の様子を保護者と共有し、日常的な様子を総合的に把握し、評価することが大切で ある。 遊んでいる場面などでは、楽しみながら積極的に手指・上肢を動かしている様子をみることができる ので、授業場面等では見られにくい、本来持っている潜在的な機能・能力を見つけ易い場面である。食 事場面では、姿勢・スプーンなど自助具の形状・持ち方や握り方・手の運び等、リラックスしている場 面では、緊張の弛緩した状態での肩関節・肘関節・手関節・指関節の屈曲伸展などの状態を観察するこ とができる。 より的確に実態を把握するためには、より多くの場面・状況で観察をする必要があるが、上肢の機能 や動きにポイントを置いて観察するだけでなく、姿勢保持の能力や状態もチェックし把握することが不 可欠である。 日常場面の様子 日常場面の様子 <上肢の動き> ・上肢関節(手関節・肘関節・肩関節)の動き ・動作時の上肢(手指・前腕・上腕・肩)の筋緊張 ・利き手でない方の手(補助手)の動き[連合反応等] ・ペンや鉛筆・スプーンの持ち方・握り方 ・使用している自助具の形状 etc <姿勢の様子> ・動作時の姿勢(臥位 or 座位 or 立位、姿勢の崩れ等) ・姿勢保持のために使用している器具 (椅子・立位台やコルセット等) ・動作時の体幹部・頸部の筋緊張 ・動作時の下肢の筋緊張 etc

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リラックスした 状態での様子 ・上肢・体幹・頸部の筋緊張 ・各関節の状態(屈曲・伸展、回内・回外、内旋・外旋等) ・各関節の変形拘縮 etc <日常場面での観察のポイント> ② 授業など設定場面での観察 条件操作し設定した場面で児童生徒の様子を観察し、実態把握を行う方法であり、授業や指導場面を 含む活動の場で行われる様々な作業をとおして、手の動きや機能、作業能力、姿勢等の様子をみる。 手の基本的な動き *基本的な動作ができているか ・つかむ → はこぶ → はなす ・把握…握り ― 丸いものを握る 丸い棒状のものを握る 握力計を握る 平らなものを握る …つまみ-指先つまみ、指腹つまみ、側面つまみ *その他の動作ができているか ・手のひら内での持ち替え ・ねじる(ペットボトルの蓋、ねじまわし、雑巾しぼり) ・グーチョキパー・順次屈伸・拇指対立 ・手首の動き(橈尺屈、掌背屈) 作 業 能 力 作 業 能 力 *実際にできるかどうか ・ものを見つめる(数秒間) ・ものを追視する ・手に持ったおもちゃ(ガラガラ等)を動かす ・もの(おもちゃ等)に手を伸ばし、触る ・両手でものをつかむ ・手から手へものを持ち替える ・持っているものを見る ・指先でつまむ ・ものをつかんで容器に入れる ・両手に持ったものを打ち合わせる ・要求に対し、ものを人にわたす ・積み木を積む ・ボールを投げる ・穴にひもを通す ・なぐり書きをする ・なぞり書きをする

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・はさみを使う ・ボタンをとめる etc 姿 勢 (体幹・頸部・頭部) 姿勢保持能力:「手を使う・作業する」ために必要な姿勢が保持できるか ① 手を使いやすい姿勢(椅子座位が可能か、座位・立位・臥位・・・) ② 作業時の姿勢(臀部・骨盤の位置、体幹のねじれ、下肢の状態・・・) ③ 異常な姿勢反射や筋緊張の有無 ④ 頸部のコントロール力 ⑤ 変形拘縮の有無 ⑥ 椅子座位での安定性(上肢動作時の様子) ⑦ 姿勢保持のために必要なもの(ベルト・クッション等) ⑧ トランスファー(移乗) etc 感 覚 機 能 ・視覚(どの程度見えているのか) ・視知覚(ものの認識) ・触覚 ・聴覚 etc <授業など設定場面での観察のポイント> (2) 検査や測定による実態把握 ① 筋力 どの程度握る力があるのか、どの重さまで持ち上げることができるのか等を把握しておくと、本人に 合った目標設定・課題設定がし易くなる。 ② 関節可動域 可動域の角度を実際に測定し、記録すると良い。個々の児童生徒の概ねの状態を把握し、記録してお くことでも十分に取り組みに活かすことができる。 ・肩関節…屈曲・伸展(前方挙上)・・・手のひらは常に内側 …外転・内転(側方挙上)・・・手のひらは常に内側 …水平屈曲・水平伸展 …外旋・内旋 ・肘関節…屈曲・伸展・・・上腕を固定し、屈曲伸展 屈曲時、手のひらは肩方向 伸展時、手のひらは下方 ・前腕…回外・回内・・・肘関節を 90°屈曲した状態で 回外は手のひらが上、回内は手のひらが下 ・手関節…屈曲(掌屈)伸展(背屈)…前腕を固定する …橈屈・尺屈・・・前腕を固定する

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・指関節…親指屈曲・伸展・・・四指を固定する …四指屈曲・伸展 ワンポイントアドバイス 【同じ姿勢を長時間とらない】 私たちは寝ていても座っていても、いつも重心をこまめに 動かしバランスを保っています。まわりは気づかないこと も多いですが、とにかくじっとはしていません。そのことを 頭におき、子どもたちの姿勢を考えましょう。また本当にじ っとしていると筋肉はすぐ硬くなり、変形や拘縮になりま す。健常者で実験しても 10 時間程で拘縮は始まることがわ かっています。

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3.重い障がいをもつひとの「手」の活動

(1)手の役割 手にはさまざまな役割があり、私たち人間は、手を自由に使えることによって火を使い、道具を作り 使用するなかで生物と進化してきた。 「手」は握る、つまむ、はなすなどさまざまな動作を駆使して道具を使ったり、体を支えたり、歩く ときにバランスをとるなど、日常生活を送る上で重要な役割を果たしている。 ほかにも「手」は私たちが生活する上で重要な役割を担っている。 ひとつは、感覚器としての役割である。触覚・圧覚・温覚・痛覚などの体性感覚と、手にした物の重 みを感じるなど、自分自身のからだがどのように動いているのかを感じる固有感覚を通して環境からの 情報を受け入れている。また表現手段として、手振りやジェスチャーで自分の思いや感情を伝えるとい うコミュニケーションとしての役割がある。これらの働きを通して、「脳」の発達を促し、さらに手のし なやかな動きや操作性を高めていき、全体の発達につながっている。 このように手を使うことは、脳やさまざまな感覚に刺激をあたえることにもつながり、手を使う経験 を早期から意識的にとりいれることはとても重要である。 (2)遊びを通して手の使いかたを豊かに 私たちは「遊び」を通してさまざまなことを学んできた。自分で見て、聞いて、触って、味わったこ とから周囲の世界をとらえ、知性、情緒、コミュニケーション、粗大運動、巧緻運動などの能力を高め ている。 しかし、本校に通う子どもたちの多くはまひや痙性により姿勢が安定しにくく、動作が著しく制限さ れている。そのため、おもちゃなどで遊ぶ経験の尐ない子どもが見受けられる。 まひなどにより、子どものもっている力が限られていても、尐しの手助けで遊びの世界がひろがるこ とがある。 手を使うときやおもちゃで遊ぶときの援助のポイントを以下にあげる。 ① 姿勢の安定 座位が不安定であるなど手が使いにくい姿勢では、たのしく集中して遊ぶことができない。座って遊 ぶ場合は、骨盤や体幹が安定するように介助する。座位姿勢がとりにくいからといって、背臥位や背も たれにリクライニングした姿勢では重力にまかせた姿勢となり、手を動かしにくく、視覚情報も得にく くなってしまう。このような場合は、お腹の下に三角マットを入れた腹臥位や側臥位、後方からの介助 で姿勢を安定させるとよい。 ③ 肢の安定性 手を使おうと思っても、まひや痙性によって必要以上に動かしてしまったり、うまく動かせなかった りすることがある。肩や肘など大きな関節の粗大な動きをサポートしてあげ、使わない部位は介助して 安定性をあたえると、ものを持つ・はなすなど、目的的な動作がやりやすくなる。 ④ 味・関心・集中力 遊びは自発的で楽しいものである。子どもは本来自分の持っている能力を発揮したいという欲求があ り、欲求が満たされれば、そのことで好奇心がさらに増していくものである。子どもの発達に合わせた

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興味をもちそうなおもちゃを選び、子ども自身のスピードと自発性を尊重し、必要なときに援助をおこ なう。子どもたちは、おもちゃがもたらす楽しさと共存する困難さと向き合いながら遊んでいることを 理解する必要がある。「やり始めたことをやり遂げる」ことよりも、興味や関心を大切にすることが重要 である。また、姿勢の不安定さや手の使いにくさもあり、集中できる時間は限られている。子どもに多 くを求めすぎると、興味を失い、遊びが楽しいものでなくなってしまいかねないので注意が必要である。 (3)姿勢づくりの重要性 手を使うとき、安定した姿勢を確保することはとても大切である。 姿勢には、大きく分けて安静的な姿勢と活動的な姿勢がある。安静的な姿勢は体幹後傾姿勢ともいい、 背中をもたれさせる座位姿勢のことである。この姿勢は、リラックスしやすい反面、からだを後方にあ ずけるため、重力の影響を受けやすく、胸郭や肩甲部、上肢の動きが制限され、活動しにくくなる。活 動的な姿勢は体幹前傾姿勢ともいい、重力に抗する姿勢でテーブルに肘や前腕、手首を支持することで 姿勢が安定し、肩甲部が解放されるため手が使いやすくなる。また、視野が広がり前方や手元を見やす くなる。 安定した姿勢を確保することは、本来もっている上肢の操作能力を十分に発揮するための土台を築く ことにつながる。 安定した姿勢づくりを考える上で重要なことは頭部・体幹を安定させることである。そのためには座 位の場合は座面や骨盤を安定させるために角度を調整したり、クッションを入れたりして工夫をする必 要となる。 臥位の場合も三角マットやパッド、クッションを合わせてその子どもに合ったものを用意するとよい。 プロンボードなどでの立位が可能であれば、対称的な姿勢をとりやすく手が使いやすくなる。 どうしても安定した姿勢がむずかしい場合は、側臥位を試してみてもよい。側臥位の場合はどちらか 得意な向きがある場合が多いので、呼吸や緊張状態などをみて、得意な向きで安定できる姿勢を見つけ るようにする。 (4)重い障がいをもつ人の「手」の活動をすすめるために 手の活動性を高めるためのとりくみについて、以下に例示する。 ① 姿勢面 ・腹臥位がとれるようになる 手をバンザイの位置にもっていけるように肩甲部・肩関節の可動域をひろげる。 頭を上げられるように背筋の強化をはかる。 ・前腕をついてからだを支えられるようになる お腹の下に三角マットなどを入れてもよい。 ・手を使ってあぐらで座れるようになる 不安定な場合は指導者が骨盤や体幹をサポートする。 ② 手の使いかた ・ブロックや積み木を押す、引き寄せて倒す ブロックは尐しの力でたおれるようなもので、その子どもに合わせて大きさは工夫する。

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手の操作性や目と手の協応、うまくたおせたときの達成感を味わう。 ・物を握る、はなす 物を握るのがむずかしい場合は、指導者の手指などを握らせると、援助しやすい。 ・手渡しをする 輪投げの輪などで受け渡しをする。その輪を輪投げの棒に入れるなどの練習をする。このとき、自分の からだの中心(正中線)を越えて手を動かす練習もおこなう。 「手」の活動をひろげるためには自分の手を意識(認知)させることが大切である。また、手を動か そうとする意欲を引き出すために、本人の好きなものや興味のあるものを使うよう心がける。

4.手の使いかたの指導展開例

(1)注視と追視 【ねらい】 ① 近い距離のものをしっかり見られるようになる。 ② 左右・上下に動くものに視線を合わせることができるようになる。 ③ テーブルの上の小さなものをしっかり見られるようになる。 ④ テーブルの上を横切るおもちゃを目で追うことができるようになる。 【具体的な展開例】 座位姿勢が安定している場合は椅子に座る。座位姿勢が不安定で努力を要する場合は、無理に座位姿 勢をとらず、背臥位でよい。③④の段階では、座位保持装置などで安定した座位を整える。 提示するものは、色の鮮やかなボールやおもちゃ、コントラストのはっきりした写真などがよい。気 持ちを向けやすいように、指差しや音をならして注意を向けながらおこなう。 ① 顔から20~30cm のところにおもちゃなどをもっていく。子どもがその物を見たら、ゆっくりと 数 cm ずつ横へ動かす。左右ともに行う。物より人に興味を示すこともあるので指導者の顔をしっかり見 るか、追視ができるかをみてもよい。 ② ①と同様におもちゃなどを顔の前にもっていく。子どもがその物を見たら 6~7cm右へ動かし、ま た中央に戻してから左へ 6~7cm動かす。このとき、しっかり見ていれば①よりも速く動かす。さらに、 上へ 6~7cm動かし、目の高さに戻してから下にも同様に動かす。(緊張の強い子どもは背臥位で上にあ るものを見ようとすると筋緊張をさらに強めてしまうことがあるので留意する) ③ 見る力がついてくれば、徐々に対象物を小さくしていく。あずき程度の大きさのものを注視できる とよい。 ④ ボールや車のおもちゃをテーブルの中央に置き、左右に動かす。追視できればテーブルの左から右、 また右から左に移動させる。はじめに目的物を注視するように促す。 (2)物に手を伸ばす 【ねらい】 ① 物に手を伸ばすことができるようになる。 ② からだの正面に両手をもってくることができるようになる。

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【具体的な展開例】 重力を軽減できるので、背臥位よりも座位のほうが手を使いやすい。姿勢はどちらでもよいので子ど もに合わせる。 ① 子どもの手の届くところに好きなおもちゃなどをひもでつるす。つるしたものをゆっ くりと左右に動かす。上からつるせないときは、テーブルの上に置くか指導者がもって操作する。物へ 手を伸ばすことを促すよう、腕を前に出しやすいように肩を前に押し出すように介助する。数 cm 手を動 かすと触れられるようにおもちゃなどをセッティングし、徐々に手からの距離を離していく。 ② 子どもが手を前に出しやすいように、両肩を前に押し出すように介助する。また安定性を高めるよ うにし、自分の手を意識できるように援助する。緊張の強い子どもには、上腕や前腕を介助するとよい。 自分の手をこすり合わせる、指を合わせる、さらに両手に持ってあそべるような物を渡す。手を握った まま手遊びに発展しにくい子どもの場合は、前腕をもって手を上下にふると、手を開くなど、リラック スしやすくなる。 (3)物をつかむ 【ねらい】 ① つるしてある物に手を伸ばしてつかむことができるようになる ② 物に手を伸ばしてつかめるようになる 【具体的な展開例】 座位姿勢が安定している場合は椅子に座る。ひとりで安定することがむずかしい場合は座位保持装置 など安定した座位を整える。 ① 好きなおもちゃなどを手に持たせる。左右の手で数秒間つかんでいられるようになれば、 次のステップにすすみ、子どもの手の届く範囲で目の前に好きなおもちゃなどをひもでつるす。手から おもちゃの距離は4cm 程度からはじめ、徐々に距離をはなしていく。腕の長さくらいの距離にあるおも ちゃに手を伸ばしてつかむ。 ② 子どもの前にテーブルをセッティングし、その上に積み木やブロックを置く。うまく 取れないようならば、手にそれをつかませる。遊びの中で繰り返していく。この段階では、薬指と小指 を中心に熊手状に手を引き寄せるところからはじまり、親指や人差し指、中指を使って熊手状に手を引 き寄せていく。親指と人差し指がうまく使えるようになってくると、つまみ動作に発展する。 (4)はなす 【ねらい】 ① 手から手へ物を持ちかえられるようになる ② 目的物(缶や箱)に物を入れられるようになる ③ 積み木を積めるようになる 【具体的な展開例】 座位の安定がむずかしい場合、①は背臥位でもよい。ひとりで安定することがむずかしい場合は座位 保持装置などで安定した座位を整える。 ① 輪や音のなるおもちゃなどで遊ばせる。手を目の前に持ってきて遊べるようになると、持ちかえら

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れるようになることが多い。両手を前に持っていきにくい場合は、肩を介助して手が前にくるようにす る。把握反射が残っている場合はボールなど、やわらかくて大きいものを使うと手が開きやすくなる。 ② 積み木やブロックなどで遊ばせる。積み木などが入れられる口の大きな容器を用意し、そこに積み 木などを入れて見せる。同じように容器に入れるように促す。緊張が入ってしまい、うまくコントロー ルできない場合は、上腕や前腕を介助する。 ③ ②で上肢のコントロールが上手にできるようになれば、積み木を積んでいく。テーブルに積み木を 2 個、3 個と積み上げるところを見せ、同じように積むように促す。積み木の大きさなどは試しながらやり やすいものを選ぶ。 (5)目と手の協応動作 【ねらい】 ・自分の手を視野に入れ、認知する。 ・位置や空間の認知(方向や位置決め、送りなど) ・集中力と周りの状況判断 【具体的な展開例】 ① つかむ・はなす(スポンジボールや積み木など) 手の指を全部開き親指が外側に来るように握る、手のひらを下に向けて離すなど慣れるにしたがい固い 物にしていく。 柔らかい素材から固い物へ。握りやすいものから大きい物へ。 ② にぎる・ひらく 食器洗い用のスポンジなどを用いスポンジを水の中で膨らませ水面から持ち上げて握る ことで水が絞られる事で動きを意識する。小麦粉粘土などすこし抵抗のある物で行い、動かした手の変 化が目で見て確認できる。 ③ 前へ手を伸ばす 一本輪投げを用意し、輪を握らせて支柱に入れたり抜いたりする。箱を用意し、ボールの出し入れを する。しっかり手を伸ばすことや手元を見るようにし、利き手から行う。 ④ 積み重ねる 積み木や箱などを用意し、積み重ねていく。身体の中心を意識し、利き手から取り組んでいく。 ⑤ 手を上に伸ばす。 壁や立て板に貼り付けた布製のおもちゃをはがしたり、貼ったりする。貼り付ける場所は布製でおも ちゃには簡卖にできるようにマジックテープなどを付けておく。指示されたおもちゃをとったり貼った りする。 ⑥ 色・数字あわせ(下地に合わせる) 色や数字のピースをつかみ下地をみてあわせ入れる。 (6)両手の協応動作

ねらい】 ・手を中心に寄せ両手動作ができるようにする。

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・両手の交互運動 ・位置や空間での認知 ・適度な力のコントロール 【具体的な展開例】 ① 押し上げ・引き下げ 両手で取っ手を握り、両肘を同時に伸ばしたり引き下げたりする。できれば角度や重さに変化を付け る。 ② 引っ張る フェイスタオルや手ぬぐいなどの両端を握り両手で引っ張ったり緩めたりする。 ③ 中心へ手を寄せる 両手で、円筒形の取っ手を握り片方の手で取っ手を回し、もう一方の手で固定し、巻き取っているも のが落ちないようにする。長さや重さを変えて変化させる。 ④ たたく 太鼓を用意し、手首を使って叩く。利き手からはじめ片手で叩き、上手くなってきたら両手で叩く。 リズムに合わせたり、速さに変化を付けたりしても良い。 ⑤ 包丁でトントン 利き手でおもちゃの包丁を持ち、もう一方の手で食材の模型をおさえる。マジックテープであらかじ め接合されている部分に垂直に包丁をあわせ下ろす。 ⑥ 布袋の出し入れ 片手でチャックやボタンを持ちもう一方に手で袋を押さえる。チャックやボタンを外し、中の物を取 り出す。この動作を逆に行うことも取り組みの一つである。 (7)指先の巧緻動作を育てる 【ねらい】 ・小さなものを「つまむ」「運ぶ」「放す」ができるようになる。 ・指の細かな動き・力のコントロールを育てる。 【具体的な展開例】 ① ペグボード 片手でペグをつまみ、所定の穴の位置まで運び、差し込んで手から離す。ペグの大きさや形状を変え ることで、それぞれの能力・課題に合った取り組みとなり得る。左右両側の手でおこなうようにする。 ② 玉移し ペグなど棒状のものの操作から、球状のもの(パチンコ玉等)にすることで、より微妙なつまみを練 習することができる。 ③ ペグ回し(ねじ式ペグボード)・ペットボトルの蓋 つまむ動作に加え、より複雑な指の動きの要素が加わり、①の取り組みよりも難易度が高くなる。 ④ ビーズ通し つまみの能力の向上とともに目と両手の協応性も育てることができる。作業は、ビーズや紐を机上に 置くのではなく、空間でおこなうようにする。課題に応じてビーズ自体の大きさや穴の大きさを変える

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と良い。また、紐のしなやかさによっても難易度が異なるので、課題に応じた素材を選ぶ必要がある。 針金など固定性の高いものは比較的容易である。ただ卖にビーズを通していく卖純な作業として行うの ではなく、暖簾やキーホルダーなど製作の要素を入れると本人のモチベーション向上にも繋がり、達成 感を得ることにも繋がる。 ⑤ 画びょう刺し 元々画びょうが刺さっていた穴に、再び画びょうを刺す作業である。画びょうを刺した穴はごく小さ いのでペグボードの取り組みよりも難易度が高い。段ボール紙等を利用して比較的簡卖にボードを作成 し準備することができる。色の付いた画びょうを用い、刺すポイントも色分けをするなどすると、色の 識別能力や目と手の協応性も同時に養うことができ、またゲームの要素を取り入れたりもできる。 (8)手首や前腕をスムーズに動かす 【ねらい】 ・前腕の回内外や手首の掌背屈の動きを引き出す。 ・手首の微細な動きを育てる。 【具体的な展開例】 ① 紐結び 片手で穴の開いた木板や木のブロックなどを持ち、もう片方の手で紐を持って穴に通していく。紐を 通すターゲットが大きいため、ビーズ通しとは異なり、紐を持った側の手首の動きが必要となる。板の 表面(本人から見て手前側)から紐を通すときは回内、板の裏面(本人から見て向こう側)から通すと きは回外の動きが要求される。ビーズ通しのときと同様に、空間で作業をおこなうようにする。また、 ターゲットとなる木板を様々な位置・角度で固定することで、紐を持った手の様々な動きを引き出すこ とが可能である。 ② ドアノブ回し ドアのノブを回す動作には回内・回外の動きが必要となる。握る力を上手くコントロールすることが 必要で、力が弱すぎると手の中でノブがすべり、上手く回すことができない。 ③ コイン入れ コインを入れるターゲットの穴を、様々な角度で準備することで、前腕の回内・回外を引き出すこと ができる。コインやターゲットの大きさを徐々に小さくしていくことで、難易度を上げていくことがで きる。この取り組みの成果を確かめる場として、実際に自動販売機でジュース等を購入しに行く機会を 設定するなどすると、より実践的な取り組みとなるほか、モチベーションの向上にも繋がる。 ④ ねじ回し ドライバーを使ってねじを締めたり緩めたりする。回内・回外の動きを必要とするほか、道具を使っ て行う作業なので、より微妙な力のコントロールが要求される。握る力以外にも、前腕・上腕を使って

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