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Effects of Fiber Reinforcement Pattern on High Frequency Induction Heating Behavior of Unidirectional and Woven CFRTP Laminates

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Academic year: 2021

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(1)

一方向および織物熱可塑性

CFRP 積層板の繊維強化形態が高周波誘導

加熱挙動に及ぼす影響

田邉 大貴

倉内 海

**

西籔 和明

***

倉敷 哲生

Effects of Fiber Reinforcement Pattern on High Frequency Induction Heating Behavior of

Unidirectional and Woven CFRTP Laminates

by

Daiki T

ANABE

*, Kai K

URAUCHI

**

Kazuaki N

ISHIYABU

*** and Tetsusei K

URASHIKI

*

This study aims to reveal the induction heating behavior of CFRTP composites by high-frequency induction heating method. The material used is unidirectional CF/PPS (UD-CF/PPS) and satin weave CF/PPS (woven-CF/PPS) laminates. The effects of geometry of induction coils, coil height, heating time and the carbon fiber reinforcement of CFRTP laminates on heating behavior of CFRTP composites in induction heating were investigated. The experimental results revealed that the surface temperature of UD-CF/PPS and woven-CF/PPS laminates was increased with increasing the heating time. Moreover, the surface temperature was increased with decreasing remarkably the coil distance. It was also confirmed that the carbon fiber reinforcement of CFRTP laminates has an effect on induction heating behavior.

Key words:

Induction heating, CFRTP, CF/PPS, Thermal distribution, Heating behavior 1 緒    言

熱可塑性樹脂を母材とした炭素繊維強化熱可塑性プラ スチック(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics, CFRTP) が,電気自動車や航空宇宙機器および情報端末分野など で注目されている1).これまでは,数mm の短い炭素繊維 で強化されたCFRTP が射出成形法により生産されてきた. 近年では一方向や織物等の連続した炭素繊維で強化され たCFRTP が,加熱プレス成形やハイブリッド射出成形お よび自動積層成形により製造され始めている1)~3).このよ うな連続した炭素繊維で強化されたCFRTP は,生産性や 耐衝撃性およびリサイクル性に優れており,今後は様々 な分野への応用も期待されている.しかし,CFRTP の母 材樹脂の溶融粘度が高く,炭素繊維の変形能も乏しいた め,CFRTP の構造部材は比較的単純な形状に限られる. そのため,大型構造材や複雑形状を有する部材を製造す るためには,それらの部材間を接合する必要がある4). CFRP の代表的な接合方法として,機械的接合5)や接着 接合が挙げられるが,機械的接合では穴加工による繊維 の切断や応力集中および重量増加等の課題がある.また, 接着接合は機械的接合と比較して応力集中の低減や軽量 化等の点で優れているが,硬化時間が必要で熱可塑性樹 脂には化学的結合が困難であるため,CFRTP の接合方法 としては不適である.そのため,CFRTP 部材の接合には 接合面の母材の樹脂を溶融させ,加圧・冷却することに より部材同士を融着接合する必要がある6).著者らはこれ までに,Ni-Cr 線や種々の繊維形態を有する炭素繊維を抵 抗発熱体として用いたCFRTP の電気式融着接合手法を提 案し7), 8),融着メカニズムの解明や,引張せん断強度の向 上を実現し,欧州諸国の研究機関が発表している引張せ ん断強度と同等もしくはそれ以上の強度を実現すること に成功している8).これまで得られている知見から,炭素 繊維に通電した際に生じるジュール発熱を利用して,接 合面の樹脂を内部加熱により溶融させて融着接合を行う ことは,接合強度やリサイクル性の向上に貢献できるこ とを見出している. 一方で,CFRTP の融着接合手法として,高周波誘導加 熱を利用した誘導融着接合法が欧州の研究機関で提案さ れている 9), 10).本手法は,他の融着接合手法では実現が 困難な連続した融着が可能であり,生産性に優れている が,接合対象物の間にサセプタと呼ばれる金属製の発熱 体を挿入し,数百kHz 帯域の高周波誘導加熱装置を用い てサセプタを加熱して融着接合を行うため,接合面にサ

† 原稿受理㻌 平成28年1月13日㻌 Received 㻌 Jan. 13, 2016㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 2016 The Society of Materials Science, Japan * 正 会 員㻌 大阪大学大学院 工学研究科 ビジネスエンジニアリング専攻㻌 〒565-0871 吹田市山田丘

Dept. of Management of Industry and technology, Graduate School of Eng., Osaka University, Yamadaoka, Suita 565-0871 **㻌 元 近畿大学理工学部 機械工学科㻌 〒577-8502㻌 東大阪市小若江

*** Dept. of Mechanical Engineering, Faculty of Science and Eng., Kindai University, Kowakae, Higashiosaka 577-8502 *** 正 会 員㻌 近畿大学理工学部 機械工学科㻌 〒577-8502㻌 東大阪市小若江

(2)

Adjustment High-frequency

power source

Infrared thermometer camera 2 Induction coil Infrared thermometer camera 1

150 150 zc Holding device Test specimen 150 150

Fig.2 Schematic drawing of induction heating experiment.

誘導コイルにはFig.3 に示すような,(a)ソレノイド型お よび(b)パンケーキ型の二種類のコイルを用いた.いずれ のコイルも銅製パイプ(外径4 mm,内径 3 mm)をガス バーナーで加熱しながら曲げ加工して製作し,コイル部 の外径はφ=30 mm とした.銅製パイプ同士が接触するこ とによる短絡を防止するために,耐熱ガラスクロステー プでパイプ表面を被覆した.いずれのコイルも誘導加熱 時にコイル自身が発熱することを防止するために,銅製 パイプ内に冷却水を流す構造になっている.

(a) Solenoid coil (b) Pancake coil

A pp ea ran ce Sc he m at ic dr aw ing φ 30mm I φ 30mm I

Fig.3 Appearance of solenoid and pancake coil.

3・3 評価方法 高周波誘導加熱時の各積層板の加熱挙動を評価するた め,赤外線放射温度計を用いて,積層板の加熱面と裏面 を観察し,温度挙動をモニタリングした.また,Fig.4 に 示すように,UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6で は,積層板の成形時に細径のK 型熱電対(石川産業㈱製, 線径0.076 mm)を挿入し,積層板の厚さ方向の加熱挙動 をデータロガー (グラフテック㈱製,midi LOGGER GL200A)を用いてモニタリングした.積層板表面の熱電 対はポリイミドテープ(厚さ0.012 mm)で固定した.そ の際,熱電対の位置は積層板端部から65 mm の位置とし, 誘導コイルの銅製パイプの直下となるようにした. 150 150 65 UD-CF/PPS prepreg Thermocouple D at a lo gg er D at a lo gg er T1 T7 …

Position of induction coil

x y

z

Fig.4 Mounting position of thermocouples.

4 実験結果および考察 4・1 コイル形状の影響 Woven-CF/PPS 材をソレノイド型およびパンケーキ型 コイルを用いて,高周波電流出力 P=100%,コイル高さ zc=5 mmでt=20 s間加熱した際の表面の加熱温度分布およ び温度プロファイルをFig.5 および Fig.6 に示す.温度プ ロファイルは加熱温度分布上に示す A-A’ライン上の計測 結果でありx=-40 mm は A 部,x=40 mm は A’部に対応し ている.また,x=0 mm はコイルの中央部である.誘導コ イル部は,コイル内部に流れる冷却水により冷却されて いるため,温度がT=50ºC 程度を示した.(a)ソレノイド型 では,誘導コイルの内側でT=400ºC 程度を示しているが, 誘導コイルの中心部では磁束密度が低いため,温度も低 下している.また,誘導コイルの外側では T=350ºC に達 しており,コイル中心部から遠ざかるほど,温度が低下 していることが分かった.一方,(b)パンケーキ型のコイ ル中心部はT=500ºC に達しており,(a)ソレノイド型と比 較して 150ºC 程度高いことが分かった.誘導コイル部の 周囲で顕著に加熱されているため,コイル部の直下では 特に温度が上昇していると推察される. 10mm

A

A’

[ºC] 300 500 400 200 100 20

(a) Solenoid coil

10mm A A’ [ºC] 300 500 400 200 100 20 (b) Pancake coil

Fig.5 Temperature distribution of woven-CF/PPS using solenoid and pancake coil (adverse side).

セプタが残留し,接合強度やリサイクル性が低下する課 題がある. 炭素繊維は導電性を有しているため,誘導加熱が原理 的に可能であるが,誘導加熱時の表皮効果により,数MHz の特殊な帯域での誘導加熱が有効とされている.この炭 素繊維の導電性を利用することで,サセプタを挿入せず にCFRTP 積層板内部の炭素繊維を高周波誘導加熱し,融 着接合できる可能性がある.しかし,炭素繊維は電気的 に強い異方性を示すため,積層板中の繊維配向角やテキ スタイル構造により,高周波誘導加熱時の加熱挙動が異 なることが考えられるが,既往の研究 9)~11)ではそれらに ついて詳細に明らかにされていない.本研究では,CFRTP 積層板中の炭素繊維を高周波誘導加熱して融着接合する ために,コイルの形状や積層板の繊維強化形態が誘導加 熱挙動に及ぼす影響を実験的に評価した結果について報 告する. 2 周波数帯域の選定  CFRTP を高周波誘導加熱する際,CFRTP 積層板内部の 炭素繊維を高周波誘導加熱することになる.誘導コイル によって生じる磁束に対して直角の方向に誘導電流が生 じるが,この誘導電流は高周波電流であるために,加熱 対象物の表面に集中する.この現象は表皮効果と呼ばれ るもので,加熱対象物の表面からの深さに対し,指数関 数的に減少し,1/e 倍となる深さを浸透深さ δ と呼び,式 (1)で表される12) f r 5 10 03 . 5    (1) (1)において,ρ [Ω・m]は加熱対象物の電気抵抗率で, μr は加熱対象物の比透磁率および f [Hz]は周波数を表し ている.浸透深さ δ が表面に近いほど狭い範囲を誘導電 流が流れるため,高周波抵抗が増加して加熱効率が良く なる傾向がある.式(1)を用いて算出した炭素繊維と各種 金属材料の周波数と浸透深さの関係をFig.1 に示す. D ep th o f cu rren t p en et rat io n, δ [mm ] 0.1 1 10 100 100 1000 10000 100000100000010000000 De pth of cur re nt pe ne tra tion, δ (c m) Frequency, f (Hz) 1000 100 10 1 100Hz 1kHz 10kHz 100kHz 1MHz 10MHz Frequency, f PAN-CF Cu Al SUS304

Fig.1 Relationship between frequency and depth of current penetration. 各材料について,比透磁率μrは全てμr=1 として算出し た値である.炭素繊維は製造方法や短繊維や連続繊維な どの繊維形態により,電気抵抗率が ρ=0.2×10-5~15×10-5 Ω・m と範囲が広く,金属材料と比較して高い周波数が望 まれることが分かる.本研究で加熱対象としたCFRTP 積 層板に用いられている炭素繊維はPAN 系(PAN-CF)であ り,繊維方向の電気抵抗率はρ=1.7×10-5 Ω・mであるため, 積層板のような厚さが数mm 程度の加熱には MHz 級の周 波数帯域が適していると考えられるため,本研究では MHz 帯域の高周波電源を用いた. 3 実験方法および条件 3・1 使用材料 使用した材料は,Table 1 に示す一方向炭素繊維強化PPS 樹脂積層板(TenCate 社製,CETEX®,繊維体積割合V f=60 vol%,厚さ 0.7 mm,以下 UD-CF/PPS)および織物炭素繊 維強化PPS 樹脂積層板(TenCate 社製,CETEX®5H 朱子 織,繊維体積割合 Vf=45 vol%,厚さ 1.2 mm,以下 Woven-CF/PPS)である.UD-CF/PPS については,積層構 成の異なるUD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]62 種類を用いた.

Table 1 Test specimens used for experiment.

ID UD-CF/PPS [0] 6 UD-CF/PPS [0/90]6 Woven-CF/PPS Fiber content, Vf [vol%] 60 60 45 Reinforcing

configuration Unidirectional Unidirectional 5H-sateen weave Stacking sequence [0]6 [0/90]6 [0/90]4 Surface image Fiber dire cti on 5mm 3・2 実験方法 本研究では,一方向や織物などの炭素繊維の強化形態 や繊維の配向角が高周波誘導加熱時の加熱挙動に及ぼす 影響を明らかにするため,Fig.2 に示すような高周波誘導 加熱実験装置を製作した.熱可塑性 CFRP を高周波誘導 加熱するために高周波誘導加熱装置(ワイエス電子工業 ㈱製,IH-012MH3,AC200V,周波数 f=2 MHz,出力 1 kW) を用い,ソレノイド型またはパンケーキ型の 2 種類のコ イルを用いて加熱挙動を赤外線放射温度計(㈱Apiste 製, FSV-1200,レンズ 8 mm,測定温度範囲-40~500ºC,放射 率ε=0.85)により観察した.その際,誘導コイルと積層 板間の高さzc [mm]を種々変化させた.

(3)

Adjustment High-frequency

power source

Infrared thermometer camera 2 Induction coil Infrared thermometer camera 1

150 150 zc Holding device Test specimen 150 150

Fig.2 Schematic drawing of induction heating experiment.

誘導コイルにはFig.3 に示すような,(a)ソレノイド型お よび(b)パンケーキ型の二種類のコイルを用いた.いずれ のコイルも銅製パイプ(外径4 mm,内径 3 mm)をガス バーナーで加熱しながら曲げ加工して製作し,コイル部 の外径はφ=30 mm とした.銅製パイプ同士が接触するこ とによる短絡を防止するために,耐熱ガラスクロステー プでパイプ表面を被覆した.いずれのコイルも誘導加熱 時にコイル自身が発熱することを防止するために,銅製 パイプ内に冷却水を流す構造になっている.

(a) Solenoid coil (b) Pancake coil

A pp ea ran ce Sc he m at ic dr aw ing φ 30mm I φ 30mm I

Fig.3 Appearance of solenoid and pancake coil.

3・3 評価方法 高周波誘導加熱時の各積層板の加熱挙動を評価するた め,赤外線放射温度計を用いて,積層板の加熱面と裏面 を観察し,温度挙動をモニタリングした.また,Fig.4 に 示すように,UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6で は,積層板の成形時に細径のK 型熱電対(石川産業㈱製, 線径0.076 mm)を挿入し,積層板の厚さ方向の加熱挙動 をデータロガー (グラフテック㈱製,midi LOGGER GL200A)を用いてモニタリングした.積層板表面の熱電 対はポリイミドテープ(厚さ0.012 mm)で固定した.そ の際,熱電対の位置は積層板端部から65 mm の位置とし, 誘導コイルの銅製パイプの直下となるようにした. 150 150 65 UD-CF/PPS prepreg Thermocouple D at a lo gg er D at a lo gg er T1 T7 …

Position of induction coil

x y

z

Fig.4 Mounting position of thermocouples.

4 実験結果および考察 4・1 コイル形状の影響 Woven-CF/PPS 材をソレノイド型およびパンケーキ型 コイルを用いて,高周波電流出力 P=100%,コイル高さ zc=5 mmでt=20 s間加熱した際の表面の加熱温度分布およ び温度プロファイルをFig.5 および Fig.6 に示す.温度プ ロファイルは加熱温度分布上に示す A-A’ライン上の計測 結果でありx=-40 mm は A 部,x=40 mm は A’部に対応し ている.また,x=0 mm はコイルの中央部である.誘導コ イル部は,コイル内部に流れる冷却水により冷却されて いるため,温度がT=50ºC 程度を示した.(a)ソレノイド型 では,誘導コイルの内側でT=400ºC 程度を示しているが, 誘導コイルの中心部では磁束密度が低いため,温度も低 下している.また,誘導コイルの外側では T=350ºC に達 しており,コイル中心部から遠ざかるほど,温度が低下 していることが分かった.一方,(b)パンケーキ型のコイ ル中心部はT=500ºC に達しており,(a)ソレノイド型と比 較して 150ºC 程度高いことが分かった.誘導コイル部の 周囲で顕著に加熱されているため,コイル部の直下では 特に温度が上昇していると推察される. 10mm

A

A’

[ºC] 300 500 400 200 100 20

(a) Solenoid coil

10mm A A’ [ºC] 300 500 400 200 100 20 (b) Pancake coil

Fig.5 Temperature distribution of woven-CF/PPS using solenoid and pancake coil (adverse side).

セプタが残留し,接合強度やリサイクル性が低下する課 題がある. 炭素繊維は導電性を有しているため,誘導加熱が原理 的に可能であるが,誘導加熱時の表皮効果により,数MHz の特殊な帯域での誘導加熱が有効とされている.この炭 素繊維の導電性を利用することで,サセプタを挿入せず にCFRTP 積層板内部の炭素繊維を高周波誘導加熱し,融 着接合できる可能性がある.しかし,炭素繊維は電気的 に強い異方性を示すため,積層板中の繊維配向角やテキ スタイル構造により,高周波誘導加熱時の加熱挙動が異 なることが考えられるが,既往の研究 9)~11)ではそれらに ついて詳細に明らかにされていない.本研究では,CFRTP 積層板中の炭素繊維を高周波誘導加熱して融着接合する ために,コイルの形状や積層板の繊維強化形態が誘導加 熱挙動に及ぼす影響を実験的に評価した結果について報 告する. 2 周波数帯域の選定  CFRTP を高周波誘導加熱する際,CFRTP 積層板内部の 炭素繊維を高周波誘導加熱することになる.誘導コイル によって生じる磁束に対して直角の方向に誘導電流が生 じるが,この誘導電流は高周波電流であるために,加熱 対象物の表面に集中する.この現象は表皮効果と呼ばれ るもので,加熱対象物の表面からの深さに対し,指数関 数的に減少し,1/e 倍となる深さを浸透深さ δ と呼び,式 (1)で表される12) f r 5 10 03 . 5    (1) (1)において,ρ [Ω・m]は加熱対象物の電気抵抗率で, μr は加熱対象物の比透磁率および f [Hz]は周波数を表し ている.浸透深さ δ が表面に近いほど狭い範囲を誘導電 流が流れるため,高周波抵抗が増加して加熱効率が良く なる傾向がある.式(1)を用いて算出した炭素繊維と各種 金属材料の周波数と浸透深さの関係をFig.1 に示す. D ep th o f cu rren t p en et rat io n, δ [mm ] 0.1 1 10 100 100 1000 10000 100000100000010000000 De pth of cur re nt pe ne tra tion, δ (c m) Frequency, f (Hz) 1000 100 10 1 100Hz 1kHz 10kHz 100kHz 1MHz 10MHz Frequency, f PAN-CF Cu Al SUS304

Fig.1 Relationship between frequency and depth of current penetration. 各材料について,比透磁率μrは全てμr=1 として算出し た値である.炭素繊維は製造方法や短繊維や連続繊維な どの繊維形態により,電気抵抗率が ρ=0.2×10-5~15×10-5 Ω・m と範囲が広く,金属材料と比較して高い周波数が望 まれることが分かる.本研究で加熱対象としたCFRTP 積 層板に用いられている炭素繊維はPAN 系(PAN-CF)であ り,繊維方向の電気抵抗率はρ=1.7×10-5 Ω・mであるため, 積層板のような厚さが数mm 程度の加熱には MHz 級の周 波数帯域が適していると考えられるため,本研究では MHz 帯域の高周波電源を用いた. 3 実験方法および条件 3・1 使用材料 使用した材料は,Table 1 に示す一方向炭素繊維強化PPS 樹脂積層板(TenCate 社製,CETEX®,繊維体積割合V f=60 vol%,厚さ 0.7 mm,以下 UD-CF/PPS)および織物炭素繊 維強化PPS 樹脂積層板(TenCate 社製,CETEX®5H 朱子 織,繊維体積割合 Vf=45 vol%,厚さ 1.2 mm,以下 Woven-CF/PPS)である.UD-CF/PPS については,積層構 成の異なるUD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]62 種類を用いた.

Table 1 Test specimens used for experiment.

ID UD-CF/PPS [0] 6 UD-CF/PPS [0/90]6 Woven-CF/PPS Fiber content, Vf [vol%] 60 60 45 Reinforcing

configuration Unidirectional Unidirectional 5H-sateen weave Stacking sequence [0]6 [0/90]6 [0/90]4 Surface image Fiber dire cti on 5mm 3・2 実験方法 本研究では,一方向や織物などの炭素繊維の強化形態 や繊維の配向角が高周波誘導加熱時の加熱挙動に及ぼす 影響を明らかにするため,Fig.2 に示すような高周波誘導 加熱実験装置を製作した.熱可塑性 CFRP を高周波誘導 加熱するために高周波誘導加熱装置(ワイエス電子工業 ㈱製,IH-012MH3,AC200V,周波数 f=2 MHz,出力 1 kW) を用い,ソレノイド型またはパンケーキ型の 2 種類のコ イルを用いて加熱挙動を赤外線放射温度計(㈱Apiste 製, FSV-1200,レンズ 8 mm,測定温度範囲-40~500ºC,放射 率ε=0.85)により観察した.その際,誘導コイルと積層 板間の高さzc [mm]を種々変化させた.

(4)

積層板の層間部で炭素繊維が交差しているため電気経路 が形成されやすく,交差部での接触抵抗によるジュール 損失で加熱されやすいと考えられる.また,織り構造を 有する Woven-CF/PPS は炭素繊維束が織り部で交差して おり,織り構造部の接触抵抗によるジュール損失が大き いため,繊維体積割合の高い一方向材よりも顕著に加熱 [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 A A’ Fiber direction 10mm (a) UD-CF/PPS [0]6 [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 A A’ 10mm (a) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.9 Temperature distribution of UD-CF/PPS [0]6 and UD-CF/PPS

[0/90]6 (back side). 0 100 200 300 400 500 600 0 37.5 75 112.5 150 温度 , T (ºC) 加熱時間, t (s)

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0 (a) UD-CF/PPS [0]6 0 100 200 300 400 500 600 0 37.5 75 112.5 150 温度 , T (º C) 試験片長さ, l (mm)

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0 (a) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.10 Temperature profiles of UD-CF/PPS [0]6 and UD-CF/PPS

[0/90]6 (back side). されると考えられる.このような積層板の繊維強化形態 により加熱挙動が異なる現象は,周波数f=1MHz 以下の高 周波誘導加熱装置を用いたR. Rudolf ら5)の研究でも同様 の傾向が示されている. UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6をパンケーキ 型コイルを用いて,高周波電流出力P=100%,コイル高さ zc=5 mmでt=20 s間加熱した際の熱電対による温度計測結 果をFig.11 に示す.各熱電対は Fig.4 に示した位置に挿入 した.UD-CF/PPS [0]6の熱電対T4,T5 および UD-CF/PPS [0/90]6の熱電対T5 は成形時に断線したため,計測不能で あった.全体的な傾向として,どちらの試験片も加熱時 間が長くなるほど,温度が上昇した.また,すべての熱 電対でt=20 s 経過しても温度が上昇していることが分か った.(a)UD-CF/PPS [0]6T=100ºC 以下であり加熱され にくいが,(b)UD-CF/PPS [0/90]6では,時間経過とともに 顕著に加熱されることが分かった.なお,UD-CF/PPS [0/90]6の熱電対T7 において,t=11~12 s 付近で温度が停 滞しているが,これは試験片が加熱時に熱変形し,熱電 対の接触不良が生じたためであると推察される. 0 100 200 300 400 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] T1 T2 T3 T6 T7 (a) UD-CF/PPS [0]6 0 100 200 300 400 0 5 10 15 20 Tem peratu re, T [ºC] Heating time, t [s] T1 T2 T3 T4 T6 T7 (b) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.11 Relationship between heating time and temperature.

UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6の加熱面から の厚さ方向の距離と加熱温度の関係をFig.12 に示す.こ れらの結果は,加熱開始から t=20s 後の温度である.(a) UD-CF/PPS [0]6では,すべての層間で温度はT=70ºC 程度 でほぼ一定値を示した.一方,(b) UD-CF/PPS [0/90]6では,

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0

(a) Solenoid coil

-40 -20 0 20 40 0 100 200 300 400 500 600 0 20 40 60 80 温度 , T (º C) 試験片長さ, l (mm)

Tem

perat

ure,

T

C

]

x-coordinate, x [mm]

(b) Pancake coil

Fig.6 Temperature profile (A-A’) of woven-CF/PPSusing solenoid and pancake coil (adverse side).

Woven-CF/PPS 材をソレノイド型コイルおよびパンケ ーキ型コイルを用いて,高周波電流出力P=100%,コイル 高さzc=5 mm で t=20 s 間加熱した際の裏面の加熱温度分 布および温度プロファイルをFig.7 および Fig.8 に示す. どちらのコイルでも,コイル部の直下で温度が高くなっ ていることが分かる.(a)ソレノイド型コイルでは,(b)パ ンケーキ型コイルと比較して,コイルの端部で不均一な 加熱分布を示しており,最高温度も低いことが分かった. (b)パンケーキ型コイルでは,コイル周辺部で加熱領域が 大きく,最高温度もT=500ºC 以上に達した. A A’ [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 10mm

(a) Solenoid coil

A A’ [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 10mm (b) Pancake coil

Fig.7 Temperature distribution of woven-CF/PPS using solenoid and pancake coil (back side).

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0

(a) Solenoid coil

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

0 100 200 300 400 500 600 0 20 40 60 80 温度 , T (ºC) 試験片長さ, l(mm) 600 500 400 300 200 100 0 (b) Pancake coil

Fig.8 Temperature profile (A-A’) of woven-CF/PPS using solenoid and pancake coil (back side).

これらの実験的事実より,(b)パンケーキ型コイルは(a) ソレノイド型コイルと比較して積層板表面の最高温度が 高く,均一な加熱温度分布が得られていることが分かっ た.そのため,本研究では本節以降の実験ではパンケー キ型コイルを採用した.一方で,どちらの誘導コイルも PPS 樹脂の融点以上に達していることから,加熱条件の適 正化が必要であることが分かった. 4・2 繊維強化形態の影響 UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6をパンケーキ 型コイルを用いて,高周波電流出力P=100%,コイル高さ zc=5 mm で t=20 s 間加熱した際の裏面の加熱温度分布を

Fig.9 に示し,温度プロファイルを Fig.10 に示す.(a) UD-CF/PPS [0]6では,全体的にT=50ºC 以下の低温で,炭 素繊維方向にわずかに加熱されていることが分かった. 一方,(b) UD-CF/PPS [0/90]6の場合では,コイル直下で T=350ºC 程度に達しており,(a) UD-CF/PPS [0]6と比較し て顕著に加熱されていることが分かった. これらの実験的事実から,積層板の炭素繊維方向がす べて同一方向である(a) UD-CF/PPS [0]6は,高周波誘導加 熱に適しておらず,炭素繊維が何らかの方向に交差して い る(b) UD-CF/PPS [0/90]6 や 織 り 構 造 を 有 す る Woven-CF/PPSでは高周波誘導加熱することが可能である ことが分かった.(a) UD-CF/PPS [0]6は炭素繊維が同一方 向であるため,繊維方向にのみ高い導電性を有しており, 誘導電流の電気回路が形成されにくく,ジュール発熱量 が小さいと考えられる.一方,(b) UD-CF/PPS [0/90]6では

(5)

積層板の層間部で炭素繊維が交差しているため電気経路 が形成されやすく,交差部での接触抵抗によるジュール 損失で加熱されやすいと考えられる.また,織り構造を 有する Woven-CF/PPS は炭素繊維束が織り部で交差して おり,織り構造部の接触抵抗によるジュール損失が大き いため,繊維体積割合の高い一方向材よりも顕著に加熱 [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 A A’ Fiber direction 10mm (a) UD-CF/PPS [0]6 [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 A A’ 10mm (a) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.9 Temperature distribution of UD-CF/PPS [0]6 and UD-CF/PPS

[0/90]6 (back side). 0 100 200 300 400 500 600 0 37.5 75 112.5 150 温度 , T (ºC) 加熱時間, t (s)

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0 (a) UD-CF/PPS [0]6 0 100 200 300 400 500 600 0 37.5 75 112.5 150 温度 , T (º C) 試験片長さ, l (mm)

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0 (a) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.10 Temperature profiles of UD-CF/PPS [0]6 and UD-CF/PPS

[0/90]6 (back side). されると考えられる.このような積層板の繊維強化形態 により加熱挙動が異なる現象は,周波数f=1MHz 以下の高 周波誘導加熱装置を用いたR. Rudolf ら5)の研究でも同様 の傾向が示されている. UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6をパンケーキ 型コイルを用いて,高周波電流出力P=100%,コイル高さ zc=5 mmでt=20 s間加熱した際の熱電対による温度計測結 果をFig.11 に示す.各熱電対は Fig.4 に示した位置に挿入 した.UD-CF/PPS [0]6の熱電対T4,T5 および UD-CF/PPS [0/90]6の熱電対T5 は成形時に断線したため,計測不能で あった.全体的な傾向として,どちらの試験片も加熱時 間が長くなるほど,温度が上昇した.また,すべての熱 電対でt=20 s 経過しても温度が上昇していることが分か った.(a)UD-CF/PPS [0]6T=100ºC 以下であり加熱され にくいが,(b)UD-CF/PPS [0/90]6では,時間経過とともに 顕著に加熱されることが分かった.なお,UD-CF/PPS [0/90]6の熱電対T7 において,t=11~12 s 付近で温度が停 滞しているが,これは試験片が加熱時に熱変形し,熱電 対の接触不良が生じたためであると推察される. 0 100 200 300 400 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] T1 T2 T3 T6 T7 (a) UD-CF/PPS [0]6 0 100 200 300 400 0 5 10 15 20 Tem peratu re, T [ºC] Heating time, t [s] T1 T2 T3 T4 T6 T7 (b) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.11 Relationship between heating time and temperature.

UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6の加熱面から の厚さ方向の距離と加熱温度の関係をFig.12 に示す.こ れらの結果は,加熱開始から t=20s 後の温度である.(a) UD-CF/PPS [0]6では,すべての層間で温度はT=70ºC 程度 でほぼ一定値を示した.一方,(b) UD-CF/PPS [0/90]6では,

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0

(a) Solenoid coil

-40 -20 0 20 40 0 100 200 300 400 500 600 0 20 40 60 80 温度 , T (º C) 試験片長さ, l (mm)

Tem

perat

ure,

T

C

]

x-coordinate, x [mm]

(b) Pancake coil

Fig.6 Temperature profile (A-A’) of woven-CF/PPSusing solenoid and pancake coil (adverse side).

Woven-CF/PPS 材をソレノイド型コイルおよびパンケ ーキ型コイルを用いて,高周波電流出力P=100%,コイル 高さzc=5 mm で t=20 s 間加熱した際の裏面の加熱温度分 布および温度プロファイルをFig.7 および Fig.8 に示す. どちらのコイルでも,コイル部の直下で温度が高くなっ ていることが分かる.(a)ソレノイド型コイルでは,(b)パ ンケーキ型コイルと比較して,コイルの端部で不均一な 加熱分布を示しており,最高温度も低いことが分かった. (b)パンケーキ型コイルでは,コイル周辺部で加熱領域が 大きく,最高温度もT=500ºC 以上に達した. A A’ [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 10mm

(a) Solenoid coil

A A’ [ºC] 400 600 500 300 200 100 20 10mm (b) Pancake coil

Fig.7 Temperature distribution of woven-CF/PPS using solenoid and pancake coil (back side).

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

600 500 400 300 200 100 0

(a) Solenoid coil

Tem

perat

ure,

T

[ºC

]

-40 -20 0 20 40

x-coordinate, x [mm]

0 100 200 300 400 500 600 0 20 40 60 80 温度 , T (ºC) 試験片長さ, l(mm) 600 500 400 300 200 100 0 (b) Pancake coil

Fig.8 Temperature profile (A-A’) of woven-CF/PPS using solenoid and pancake coil (back side).

これらの実験的事実より,(b)パンケーキ型コイルは(a) ソレノイド型コイルと比較して積層板表面の最高温度が 高く,均一な加熱温度分布が得られていることが分かっ た.そのため,本研究では本節以降の実験ではパンケー キ型コイルを採用した.一方で,どちらの誘導コイルも PPS 樹脂の融点以上に達していることから,加熱条件の適 正化が必要であることが分かった. 4・2 繊維強化形態の影響 UD-CF/PPS [0]6およびUD-CF/PPS [0/90]6をパンケーキ 型コイルを用いて,高周波電流出力P=100%,コイル高さ zc=5 mm で t=20 s 間加熱した際の裏面の加熱温度分布を

Fig.9 に示し,温度プロファイルを Fig.10 に示す.(a) UD-CF/PPS [0]6では,全体的にT=50ºC 以下の低温で,炭 素繊維方向にわずかに加熱されていることが分かった. 一方,(b) UD-CF/PPS [0/90]6の場合では,コイル直下で T=350ºC 程度に達しており,(a) UD-CF/PPS [0]6と比較し て顕著に加熱されていることが分かった. これらの実験的事実から,積層板の炭素繊維方向がす べて同一方向である(a) UD-CF/PPS [0]6は,高周波誘導加 熱に適しておらず,炭素繊維が何らかの方向に交差して い る(b) UD-CF/PPS [0/90]6 や 織 り 構 造 を 有 す る Woven-CF/PPSでは高周波誘導加熱することが可能である ことが分かった.(a) UD-CF/PPS [0]6は炭素繊維が同一方 向であるため,繊維方向にのみ高い導電性を有しており, 誘導電流の電気回路が形成されにくく,ジュール発熱量 が小さいと考えられる.一方,(b) UD-CF/PPS [0/90]6では

(6)

素繊維で強化されたCFRTP 積層板を MHz 帯域で高周波 誘導加熱した際の加熱挙動を評価した. ソレノイド型およびパンケーキ型の二種類の誘導コ イルを用いて,誘導加熱を試みた結果,パンケーキ型は ソレノイド型と比較して積層板表面の温度が高く,コイ ル形状に沿って均一に加熱されるため,平板形状の誘導 融着に適していることが分かった. CFRTP 積層板の炭素繊維の繊維配向角や繊維強化形 態が,高周波誘導加熱挙動に与える影響を評価した結果, 炭素繊維が同一方向に配向している一方向の[0]6材では, 炭素繊維の電気的異方性が強く,電気回路が形成されに くいため,母材樹脂の融点以上に加熱することは困難で, 誘導融着に適していないことを確認した.一方,一方向 の[0/90]6材や織物材では,積層板内部の炭素繊維が交差 しており,積層板内部で電気回路が形成されやすく,良 好に加熱されることを確かめた. 誘導コイルと CFRTP の距離が小さくなるほど,積層 板は短時間で高温に加熱されるため,融着接合時には誘 導コイルと積層板の距離を可能な限り近づけることで, 高い効率で融着接合することが可能であるが,母材樹脂 の熱分解温度に注意する必要がある. 参 考 文 献

1) M. Yamane, “Technology of Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics –Material ・ Molding ・ Processing ・ Recycle–”,Science & Technology Co., Ltd.,(2015). 2) G. Gardiner, “Aerospace-grade compression molding”,

High Performance Composites, No.7, pp.34-40, (2010). 3) A. Köver, “Simulation and Manufacturing of an

Automotive Part for Mass Production”, 2rd International Conference and Exhibition on Thermoplastic Composites (ITHEC2014) Proceedings, A-3, pp.21-25, (2014).

4) S. Deng, L. Djukic, R. Paton and L. Ye, “Thermoplastic–epoxy interactions and their potential applications in joining composite structures – A review”, Composites: Part A, Vol.68, pp.121-132, (2015).

5) Y. Nozaki, “Present and Future of the joint technology of FRP Chapter 5, the self-piercing rivet”, Journal of the Japan Society for Composite Materials, Vol.39, No.3, pp.85-88, (2013).

6) Y. Mizutani, “Present and Future of the joint technology of FRP, Chapter 2, Welding of FRP”, Journal of the Japan Society for Composite Materials, Vol.39, No.1, pp.2-6, (2013).

7) D. Tanabe, K. Nishiyabu, T. Kurashiki, “Electro-fusion behavior of CF/PPS laminates using Ni-Cr wire resistance heating element”, Transactions of the JSME (in Japanese),Vol.80, No. 815, p. SMM0189, (2014). 8) D. Tanabe, K. Nishiyabu, T. Kurashiki, “Effects of

processing parameters on electro-fusion joining of CF/PPS composites using carbon fiber heating elements”, Transactions of the JSME (in Japanese),Vol.81, No. 826, p.15-00005, (2015).

9) R. Rudolf, P. Mitschang and M. Neitzel, “Induction heating of continuous carbon-fibre-reinforced thermoplastics”, Composites: Part A, Vol.31, pp.1191-1202, (2000).

10) L. Moser, P. Mitschang and A. Schlarb, “Induction welding of thermoplastic polymer composites using robotic techniques, SAMPE Journal, Vol. 44, No.5, pp.43-49, (2008).

11) T. Bayerl, M. Duhovic, P. Mitschang and D. Bhattacharyya, “The heating of polymer composites by electromagnetic induction”, Composites: Part A, Vol.57, pp.27-40, (2014).

12) K. Takahashi, “Foundation and Application of the High Frequency”, Tokyo Denki University Press, (1990).

積層板の加熱面と裏面で温度が低く,積層板の内部では 高い温度を示した.表皮効果により,理論的には積層板 の加熱面が最も温度が高くなると予測されたが,積層板 の加熱面と裏面は空気に接しており,放熱されるため, 積層板の内部で温度が高くなることが分かった. 40 60 80 100 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Tem perat ure, T [ºC]

Distance from heating face, z [mm]

(a) UD-CF/PPS [0]6 200 250 300 350 400 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Tem perat ure, T [ºC]

Distance from heating face, z [mm]

(b) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.12 Relationship between distance from heating face and temperature at t=20s. 4・3 コイル高さの影響 コイル高さをzc=5~12 mm まで種々変化させた際の加 熱時間とパンケーキ型コイル中心部直下の積層板の表面 温度の関係をFig.13 に示す.全体的な傾向として,いず れの試験片でも,加熱時間が長くなり,コイル高さが減 少するほど,積層板の表面温度が上昇する傾向が見られ た. (a) UD-CF/PPS [0]6の場合では,t=20 s 後でも 10ºC 程度 しか昇温されず,PPS 樹脂の融点 Tmには到底達していな いことが分かった.これは積層板内部の炭素繊維がすべ て同一方向に配向しており,積層板内部で誘導電流の電 気 回 路 が 形 成 さ れ な か っ た た め と 考 え ら れ る .(b) UD-CF/PPS [0/90]6では,(a) UD-CF/PPS [0]6と比較して,

顕著に加熱されるが,コイル中心部をPPS 樹脂の融点 Tm 以上に昇温するためにはt=20 s 以上加熱する必要がある ことが分かった.一方,(c) Woven-CF/PPS では,コイル高 さがzc=5 mm の場合で PPS 樹脂の融点以上に達している ことが分かった. これらの結果より,コイルと積層板間の距離を小さく し,加熱時間を長くするほど高温に加熱できると考えら れる.また,前節の熱電対による温度計測結果から,積 層板の表層よりも内部で温度が高くなる傾向が分かって いるため,母材樹脂の熱分解は積層板の内部から開始さ れると推察される.そのため,積層板の母材樹脂の熱分 解を防ぐために,強制的に送風する等の何らかの冷却対 策が必要であると考えられる.

T

d 0 100 200 300 400 500 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] 5mm 8mm 10mm 12mm

T

m

T

g (a) UD-CF/PPS [0]6

T

d

T

m

T

g 0 100 200 300 400 500 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] 5mm 8mm 10mm 12mm (b) UD-CF/PPS [0/90]6 0 100 200 300 400 500 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] 5mm 8mm 10mm 12mm Td Tm Tg (c) Woven-CF/PPS Fig.13 Effects of coil height on surface temperature.

5 結   言

本研究では,CFRTP 積層板内部の炭素繊維を高周波誘

(7)

素繊維で強化されたCFRTP 積層板を MHz 帯域で高周波 誘導加熱した際の加熱挙動を評価した. ソレノイド型およびパンケーキ型の二種類の誘導コ イルを用いて,誘導加熱を試みた結果,パンケーキ型は ソレノイド型と比較して積層板表面の温度が高く,コイ ル形状に沿って均一に加熱されるため,平板形状の誘導 融着に適していることが分かった. CFRTP 積層板の炭素繊維の繊維配向角や繊維強化形 態が,高周波誘導加熱挙動に与える影響を評価した結果, 炭素繊維が同一方向に配向している一方向の[0]6材では, 炭素繊維の電気的異方性が強く,電気回路が形成されに くいため,母材樹脂の融点以上に加熱することは困難で, 誘導融着に適していないことを確認した.一方,一方向 の[0/90]6材や織物材では,積層板内部の炭素繊維が交差 しており,積層板内部で電気回路が形成されやすく,良 好に加熱されることを確かめた. 誘導コイルと CFRTP の距離が小さくなるほど,積層 板は短時間で高温に加熱されるため,融着接合時には誘 導コイルと積層板の距離を可能な限り近づけることで, 高い効率で融着接合することが可能であるが,母材樹脂 の熱分解温度に注意する必要がある. 参 考 文 献

1) M. Yamane, “Technology of Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics –Material ・ Molding ・ Processing ・ Recycle–”,Science & Technology Co., Ltd.,(2015). 2) G. Gardiner, “Aerospace-grade compression molding”,

High Performance Composites, No.7, pp.34-40, (2010). 3) A. Köver, “Simulation and Manufacturing of an

Automotive Part for Mass Production”, 2rd International Conference and Exhibition on Thermoplastic Composites (ITHEC2014) Proceedings, A-3, pp.21-25, (2014).

4) S. Deng, L. Djukic, R. Paton and L. Ye, “Thermoplastic–epoxy interactions and their potential applications in joining composite structures – A review”, Composites: Part A, Vol.68, pp.121-132, (2015).

5) Y. Nozaki, “Present and Future of the joint technology of FRP Chapter 5, the self-piercing rivet”, Journal of the Japan Society for Composite Materials, Vol.39, No.3, pp.85-88, (2013).

6) Y. Mizutani, “Present and Future of the joint technology of FRP, Chapter 2, Welding of FRP”, Journal of the Japan Society for Composite Materials, Vol.39, No.1, pp.2-6, (2013).

7) D. Tanabe, K. Nishiyabu, T. Kurashiki, “Electro-fusion behavior of CF/PPS laminates using Ni-Cr wire resistance heating element”, Transactions of the JSME (in Japanese),Vol.80, No. 815, p. SMM0189, (2014). 8) D. Tanabe, K. Nishiyabu, T. Kurashiki, “Effects of

processing parameters on electro-fusion joining of CF/PPS composites using carbon fiber heating elements”, Transactions of the JSME (in Japanese),Vol.81, No. 826, p.15-00005, (2015).

9) R. Rudolf, P. Mitschang and M. Neitzel, “Induction heating of continuous carbon-fibre-reinforced thermoplastics”, Composites: Part A, Vol.31, pp.1191-1202, (2000).

10) L. Moser, P. Mitschang and A. Schlarb, “Induction welding of thermoplastic polymer composites using robotic techniques, SAMPE Journal, Vol. 44, No.5, pp.43-49, (2008).

11) T. Bayerl, M. Duhovic, P. Mitschang and D. Bhattacharyya, “The heating of polymer composites by electromagnetic induction”, Composites: Part A, Vol.57, pp.27-40, (2014).

12) K. Takahashi, “Foundation and Application of the High Frequency”, Tokyo Denki University Press, (1990).

積層板の加熱面と裏面で温度が低く,積層板の内部では 高い温度を示した.表皮効果により,理論的には積層板 の加熱面が最も温度が高くなると予測されたが,積層板 の加熱面と裏面は空気に接しており,放熱されるため, 積層板の内部で温度が高くなることが分かった. 40 60 80 100 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Tem perat ure, T [ºC]

Distance from heating face, z [mm]

(a) UD-CF/PPS [0]6 200 250 300 350 400 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Tem perat ure, T [ºC]

Distance from heating face, z [mm]

(b) UD-CF/PPS [0/90]6

Fig.12 Relationship between distance from heating face and temperature at t=20s. 4・3 コイル高さの影響 コイル高さをzc=5~12 mm まで種々変化させた際の加 熱時間とパンケーキ型コイル中心部直下の積層板の表面 温度の関係をFig.13 に示す.全体的な傾向として,いず れの試験片でも,加熱時間が長くなり,コイル高さが減 少するほど,積層板の表面温度が上昇する傾向が見られ た. (a) UD-CF/PPS [0]6の場合では,t=20 s 後でも 10ºC 程度 しか昇温されず,PPS 樹脂の融点 Tmには到底達していな いことが分かった.これは積層板内部の炭素繊維がすべ て同一方向に配向しており,積層板内部で誘導電流の電 気 回 路 が 形 成 さ れ な か っ た た め と 考 え ら れ る .(b) UD-CF/PPS [0/90]6では,(a) UD-CF/PPS [0]6と比較して,

顕著に加熱されるが,コイル中心部をPPS 樹脂の融点 Tm 以上に昇温するためにはt=20 s 以上加熱する必要がある ことが分かった.一方,(c) Woven-CF/PPS では,コイル高 さがzc=5 mm の場合で PPS 樹脂の融点以上に達している ことが分かった. これらの結果より,コイルと積層板間の距離を小さく し,加熱時間を長くするほど高温に加熱できると考えら れる.また,前節の熱電対による温度計測結果から,積 層板の表層よりも内部で温度が高くなる傾向が分かって いるため,母材樹脂の熱分解は積層板の内部から開始さ れると推察される.そのため,積層板の母材樹脂の熱分 解を防ぐために,強制的に送風する等の何らかの冷却対 策が必要であると考えられる.

T

d 0 100 200 300 400 500 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] 5mm 8mm 10mm 12mm

T

m

T

g (a) UD-CF/PPS [0]6

T

d

T

m

T

g 0 100 200 300 400 500 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] 5mm 8mm 10mm 12mm (b) UD-CF/PPS [0/90]6 0 100 200 300 400 500 0 5 10 15 20 Tem perat ure, T [ºC] Heating time, t [s] 5mm 8mm 10mm 12mm Td Tm Tg (c) Woven-CF/PPS Fig.13 Effects of coil height on surface temperature.

5 結   言

本研究では,CFRTP 積層板内部の炭素繊維を高周波誘

Table 1  Test specimens used for experiment.
Table 1  Test specimens used for experiment.

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