- 1 - 高砂報218号 平成22 年 10 月 21 日
第 140 回葛飾高砂会
井出 正、真砂慶一郎、大越松司 担当 加藤光敏院長、加藤則子管理栄養士 校正 平成 22 年 10 月 21 日(木)午後 0 時 30 分から 2 時 30 分までクリニック B1 集会室にて、定例 患者会が開かれました。 1.「さかえ 10 月号・11 号を読む会」12:30~13:00 花島実・加藤則子管理栄養士 ○「さかえ 10 月号」 ● 糖尿病で視力を失わないために (8~13ページ) 白内障・・・日帰り手術も可能であ る。 ただし、一般にはヘモグロ ビン A1c8.5%未満でないと手 術を受けることができません。ヘ モグロビン A1c が8.5% 以上で は術後合併症が起きやすく危険度が高いからです。糖尿病の方は若くても白内障が進行 しやすいですから血糖コントロールを良くしましょう。自覚症状がなくても定期的に眼 科受診を続けて下さい。 1 日 1 回、目のチェックをしましょう。片目ずつ、同じカレンダーなどを見て、見え方 が変わらないかどうかを調べることも、視野欠損などの早期発見に重要です。 ● 管理栄養士の英国だより (47ページ) 英国の大学病院メディカルセンターでも、糖尿病週間に血糖値や腹囲を測定するイベン トを実施しました。ポスターや食事療法のリーフレットを展示・配布し、糖尿病に関す る認知向上運動を展開しました。 ● 切手に見る糖尿病の歴史 (48ページ) 糖尿病合併症により、失明の危険性があるものとして、黄斑浮腫(おおはんふしゅ)、 緑内障そして角膜症があります。たかが糖尿病の眼合併症とあなどることなく、早期発 見、早期からの適切な対応により、失明を防ぐことができることを肝に銘じたいもので す。 ● 彼が病気になったとき (50ページ) 約 20 年前に糖尿病を発症するも、不定期な病院通い、そして自分勝手なインスリン注射 の結果、目のかすみに気づき眼科を受診した時には、右眼は網膜症でほとんど失明、左 眼もかなり進行していました。 2 型糖尿病では、糖尿病と診断される前から網膜症が進んでいる場合もあるので、自覚 症状がなくとも早い段階から定期的な眼科検診を受けて血糖コントロールを良好に保つ ことが重要です。- 2 - ○「さかえ 11 月号」 ● 足のケアをしよう (9~14ページ) 糖尿病をもっていると、ちょっとした刺激で足に傷ができ、そのままにしておくと、潰 瘍(かいよう)や壊疽(えそ)へと悪化する可能性があります。足の観察と適切な手入れ で、足の障害を予防しましょう。ストレッチや足指のトレーニングが有効です。 2. ヨーロッパ糖尿病学会への参加報告 加藤光敏院長 :以下は多くの写真を見ながら院長より解 説されました。 2010年 9 月 21~23 日まで、スウェ ーデンのストックホルムで開かれたヨー ロッパ糖尿病学会に出席し、新しい情報 を集めてきました。今日はその中からイ ンスリンポンプについて話をしたいと思 います。 スウェーデンはスカンジナビア半島に あり、氷河でけずられたフィヨルドが沢 山あります。ストックホルムは 14 の島から成っています。町で売られているパンはライ麦や 胚芽入りがほとんどです。線維が多く健康的なパンです。日本は白パンにしてしまうので残念 です。私は家で食べるパンはほとんどがライ麦パンなど色の付いたパンです。おいしいです よ! スウェーデンはノーベル賞の贈呈国としても有名です。そのノーベル賞の晩餐会(バンサン カイ)が開かれる市庁舎で、あるグループの懇親会(コンシンカイ)とレセプションがありま した。スウェーデンスで有名なのは、このノーベル賞とボルボ(自動車)そしてアバ(歌手) です(笑)。この写真は現在活躍中の代替わりしたアバ4人です。ダンシングクウィーン、マ ンマミーアの主題歌など目の前で本物が出てきて何曲も歌ってくれたので驚きました。 ノーベル博物館で、第1号のインスリン製剤と注射器、そしてインスリン発見者のバンティ ングの資料などを見学してきました。これは実際に臨床で使用されていた初めてのインスリン の入ったアンプルと注射器ですが、本物を見て感動しました。このインスリンの発見により多 くの人の命が救われたのです! 学会場ではマイルス社が世界に先駆けて製作実用化した血糖測定器が展示されていました。 私が医者の駆け出しの頃に使用した懐かしいものです。当時は耳たぶにランセットや注射針を 刺して、血を一滴テープに盛り上げる位に取り、1 分後に血液を洗い流し、測定器にテープを 挿入して色の変化を針の振れで血糖値を読みとったものでした。今は本当に良い時代になりま した。尐し痛い位は、あの頃から考えたら何でもありません。 インスリンポンプについて 1963 年にアーノルド博士が大きな背負いタイプのバックパイプのインスリンポンプを発明 しました。 体の中へ細い管を入れインスリンを供給するタイプの人工膵臓です。
- 3 - 1970 年代には、医療技術の一層の進展により、レンガのサイズまで縮小されたものが誕生 しました。1983年にミニメドの最初の小型インスリンポンプはアメリカの糖尿病学会で発 表され、この新しい医療機器は糖尿病治療の世界で新しい波を作りました。医療技術の進歩は、 インスリンポンプを念頭において患者の快適さを維持する為に、さらなる改良を加えました。 今日では、海外では1型糖尿病インスリン療法の患者さんのある割合がインスリンポンプに 切り替えられています。インスリンポンプは患者への皮下注入を使用して、所定の設定量のイ ンスリンを提供するコンパクトなコンピュータ・インスリン供給装置です。インスリンポンプ はいくつかの理由で日本では普及が遅れています。 ● 長所 インスリンポンプはポケットに入れるか、ベルトに装着して服の下に隠すことができます。 また頻繁に自分の血糖値の検査結果に基づいて、インスリン投与量の調節が容易なため、頻 繁に注射する必要がありません。その結果、糖尿病に伴う合併症の予防に役立ち、持続時間 が正常に近い血糖値を維持することができます。インスリンポンプは非常に小さく安定して 使用され、インスリン投与時に投与されるため、不均一なインスリンの吸収と作用に関連す る危険性を減らすことができます。 ● 短所 インスリンポンプを使用し処理する特別な訓練を必要とし、正常に動作するように学習し なければなりません。当院でも理解力のある方が使用しています。 ユーザーは数時間ごとに血糖値をモニターする必要があります。食事前の血糖値が急激に上 した場合には、セットを変更する手間があります。そしてインスリンポンプは1台60万円 など高額なものです。使用する患者さんには保険が効きますが、インスリン療法の時より支 払いは何割か高くなります。しかしインスリンの総使用量は減尐するとされます。 インスリン注入のセットは、一部の人の間で瘢痕化(ハンコン化)の原因となっています。 インスリンポンプに伴い、血糖測定器もどんどん良くなっています。 持続血糖測定(CGM)は、専用の機器を使い血糖値の変動を 24 時間から 3 日~4 日間くら い連続的に測定、記録し得られた血糖データを治療に反映させようという方法です。 血糖値は食事やインスリン注射などの影響を受け、1 日の中で常に変化しています。どの ようなときに高血糖や低血糖が起こるかを正確に知ることができれば、より的確な対策を行 なえるようになり血糖コントロールが向上すると見られています。 日本でインスリンポンプの販売許可されているのは 2 社しかないと思います。インスリン ポンプの中のインスリンは自動的に出てきます。食事の際にボタンを押すことにより、適量 のインスリンを挿入します。機械の調節は簡単にできます。またシャワーを浴びる時は、ポ ンプの口にフタをして機械をつけたまま浴びることができます。 海外の製品の展示会場で この海外の会社の写真のインスリンポンプは、データはアイポッドとの間でやりとりしま す。付けたままシャワーにも入れます。日本で使用されているのと異なりこんなに小さな物 です。 またこの写真は韓国でも安くて、性能がいい機械を作っていて、中国での販売実績トップ を目指しています。「日本に入れようとしても、敷居が非常に高く苦労で結果が出せずイライ ラしてしまう。米国よりずっと認可のため費用を使ったのに何も動かなかった」と不満を漏
- 4 - らしていました。韓国のこの企業の社長さんとスタッフと気があっていろいろと話し込んで 情報交換をしてきました。このような安い便利なものが日本に入ってこないので、患者さん にとってもマイナスです。日本の糖尿病の医療はレベルが高いのですが、最先端の器機が認 可されにくいことによって海外より遅れ始めている面があることを肌で感じました。 パッチみたいに体に貼ってインスリンが出てきて使えるものも研究されていますが、現在 許可されておりません。 CGM( 持続血糖測定 )とインスリンポンプを組み合わせて「人工膵臓」実現の夢 インスリンポンプと持続血糖測定器が一体になったものもあります。このインスリンポン プは、低血糖状態になるとコンピューターが判断してインスリンをストップします。皆さん が見ているグラフのここの部分で警報が鳴りインスリンの注入がストップし、血糖上昇を感 知してまたインスリンの注入が始まるのです。 日本でも CGM を使った臨床研究が行なわれていますが、保険の制約が強く、日常の治療 に一部しか導入されていないので使用例はまだ多くありません。海外では CGM に関する さまざまな臨床研究が発表され検討が行なわれています。この分野でも日本は完全に遅れを とっています。 今年 5 月に CGM により、1 型糖尿病患者の血糖コントロールが著しく改善するとする対 照研究が、米国糖尿病学会が発行する医学誌に発表されました。国際若年性糖尿病財団によ るこれらの研究では「低血糖を低減しながら血糖コントロールを改善することは、すべての 年齢層の患者にとって有益である」と強調されています。 3.糖尿病連携手帳から 加藤則子管理栄養士 「さかえ 10 月号」に紹介され ていますので、今日は皆さんと一 緒にそれについて勉強をしてい きたいと思います。この手帳は歯 科医、眼科医の方々と一緒に糖尿 病の情報を共有していくための 手帳です。その中でヘモグロビン A1c の値が変わりますとかいて あります。クリニックで 6. 5% と言われた人は、海外の値 と比べるときには6.9% にな ります。すなわち、従来の数値に 0.4 を加えた数値になります。 しかし国内でもそのようにするのはまだ先ですので、皆さんは当分の間、日本の同じ値(JDS 値)でご自身の血糖コントロールをそのまま比較していて結構です。
- 5 - あなたが医療者であったら糖尿病患者の方にどのようにアドバイスしますか? ○治療がつらいと感じたことがありますか? ある 17 名 ない 9 名 (1)「つらい」と感じることとしては、食事制限と注射が最も多かった。 (2) 食事では、アルコールや甘い菓子の制限をつらいと感じる意見が多い。 (3)注射は「つらいというより面倒」という意見がある。 ○これは続けられそうにないなと感じた治療はありますか? ある 8 名 ない 15 名 食事(アルコール、甘い菓子類を含む)が最も多く、運動、注射と続いています。 質問1 どのくらい甘いものを食べてもいいですか? ---70 代女性です。甘いものが好きなんです、とのくらい食べていいのですか? 例えば ・10 時にガリガリ、アイスキャンデー1 本 ・3 時にクッキー2~3 枚と砂 糖はほんの尐しの紅茶 ・夕食後に、だいふくもち 1 個 ○あなたなら、どう答えますか。 (1)やせてるならいいんじゃない。(2)糖尿病なんだもの、甘いものなんてダメ。 (3) 夜はだめだけど、昼間なら良いはずよ。 (4)甘い物の量と回数によるか な。 毎日ダイフク 1 個は多いわね。 (5) 私はコーヒーとミルクを作って冷蔵庫に用意しています。 低カロリー甘味料 で甘みも OK です。(6) 血糖見ちゃうと、困っちゃうのよね。 ○甘いものを食べたいこの方は。 (1)実はとても食べたい。でも食べてはいけないと思うので、自分でも悩んでいる。 (2) 医師からの指示であれば、従うべき。食べないと決めたら食べない。健康 優先の 生き方を信条としている。 (3)大好きな和菓子を食べるため、医師から「尐しなら良いよ」という譲歩を引き 出したい。 質問2 これからもずっと酒を飲まない方がいいのでしょうか? --- 60代男性、独身です。今までずっと夕食は居酒屋で飲んでいましたが、 糖尿病で血糖が高いと言われて、今では弁当を買って一人で食べています。 今 日まで頑張ってきたのですが、やっぱりこれからも酒は飲まない方が良いのでし ょうか? ○あなたなら、どう答えますか? (1)血糖が良くなったら、350ml1本飲んでも大丈夫だよ。 (2)時々休肝日も作れば大丈夫。 (3)ビールはだめだけと、焼酎なら大丈夫、血糖値が上がらないと聞いたよ。 (4)ご飯を食べればいいんだよ。 (5)まあ、時々ハメをはずしたいね。 (井出さん同感とのこと!) *(加藤光敏院長) アルコールを沢山飲むと糖が体の中で作られないため、血 糖は下がります。お酒を飲む時にご飯を食べないという人がいますが、ご飯は 炭水化物です。炭水化物を摂らない食事を続けると確かに血糖は上がりにくく なりますが、時々炭水化物を摂った際には、血糖はハネ上がり易くなります。 ○どんなタイプ?
- 6 - ・飲みたいが飲めず、強い葛藤状態にある真面目人間 ・専門家の指示であれば 「断酒」をもいとわない決意を持っている ・内心そろそろ飲酒を始めたいので 医師から譲歩を引き出したい まとめ-- 正解はありません。まずは気持ちを言葉にして、目標を明らかにすること ・血糖値を良くしたいのか ・体重を減らしたいのか ・ストレスを発散させたい のか ・食べること、飲むこと以外に方法はないのか、自分はどう努力しているの か考えてみましょう。 ○糖尿病は合併症を引き起こします。 3大合併症として神経障害、腎症、網膜症があり、 それ以外に動脈硬化があります。 糖尿病の合併症は全身に起こります。脳梗塞、心筋梗塞、皮膚の感染(尿道からの感 染など)こむらがえり、しびれ、立ちくらみ、顔面まひ、などいろいろな合併症が起 こります。 ○合併症は ・良好な血糖コントロールで合併症を予防できることを理解している はい・いいえ ・次の合併症を知っていますか?---糖尿病網膜症、腎症、神経障害、大血管障害、 足病変、歯周病 ※(加藤院長) 血管は食後の血糖が毎回高いとだんだん傷んできます。 その結果、 脳梗塞、心筋梗塞や足の閉塞性動脈硬化症などが起こってきます。糖尿病予備軍 の時から大血管障害が始まっています。 ○医師から糖尿病と言われた人における合併症の割合 (20才以上、総数) 神経障害あり 101人11.8% 腎症あり 95人 11.1% 網膜症あり 91人 10.6% 足えそあり 6人 0.7% ○尿中微量アルブミンが 30mg/dLより多いということは? ---糖尿性腎症では、糸球体の中のアルブミン及びタンパクが--- 早期腎症---尿中にアルブミン出現 顕性腎症---尿中にアルブミン、タンパク出現 腎不全期---毒の蓄積 (尿毒症) ※腎症の第2期である早期腎症になると微量アルブミン尿が現れます。 ○糖尿病連携手帳では---腎症はなし・早期腎症・顕性腎症前期・顕性腎症後期・腎不 全期 の5つに分類されています。 「あなたは、早期腎症です。尿アルブミンは80mg/dL です。」などのように、 その他、尿タンパク、畜尿などの検査結果を手帳に記入します。 ·合併症 網膜症---なし・あり 腎症---なし・あり 神経障害---なし・あり 歯周病---なし・あり 動脈硬化---なし・あり
- 7 - ·既往歴 虚血性心疾患 ---あり・なし 脳血管疾患---あり・なし 肝疾患 ---- あり・なし 肥満 ----あり・なし 悪性疾患 ---- あり・なし その他 ·家族歴 糖尿病---あり・なし 脂質異常性---あり・なし 高血圧---あり・なし 脳血管疾患---あり・なし 虚血性心疾患---あり・なし その他 悪性疾患---あり・なし · 療養指導を受けた日 年 月 日 · 教育入院した日 年 月 日 · エネルギー摂取量 K Cal / 日(タンパク制限なし、ありg 塩分制限 なし、ありg) ○糖尿病治療の基本は日常生活の改善、食事、運動療法で、薬物療法は、これらを補う 治療法です。 飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレス、運動不足,タバコ、過労、睡眠不足、不規則な生 活等の生活習慣の改善のため、食事・運動療法を行い、血糖コントロールがうまくい かない場合に薬物療法を行ないます。 ○ 合併症を起こさないために、血糖コントロールを徹底しましょう。 合併症が進行してからでは、治療に時間や費用がかかりますし、日常生活に支障 をきたすこともあります。合併症にならないためには、血管コントロールを、でき る限り早く 「優」「良」に近づけることが大切です。 優 良 ヘモグロビン A1c 5.8未満 5.8~6.5 未満 空腹時血糖値 80~110未満 110~130未満 食後2時間血糖値 80~140未満 140~180未満 ・血糖コントロールの意義 ヘモグロビン A1c の意味や、一般的な目標値をよく理解していますか。 合併症とヘモグロビン A1c や血糖の関係を理解していますか。 ・食事療法 食事時間 朝、 昼、 夕 は何時ですか、または不規則ですか。間食、飲 酒、喫 煙をしていますか。 食事療法について指示摂取量を覚えていますか。規則正しくバランスのよい食 事を摂取することを理解していますか。 ○メタボレス メニュー さかえ10月号---豆腐の月見団子 さかえ11月号---卯の花のコロッケ ---(季節の献立)秋さばのあんかけ、さつまいものきんぴら、みぞれあえ、 けんちん汁----以上が紹介されています。 ぜひ、参考にして下さい。 以上 (不許転載・患者会使用可 加藤内科クリニック 加藤光敏、加藤則子)