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留学生教育 第6号 

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Academic year: 2021

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(1)

日本語教育における「日本事情」の捉え方

ー日本事情用教材分析から考察ー

Perception of Japanese Culture and Society in Japanese Education:

The study through analysis of textbooks on Japanese Culture and Society

京 祥太郎(東京外語専門学校)

Shotaro MIYAKO(Tokyo Foreign Language College)

目 次

I

.はじめに 且.テクスト分析

1.

分析目的

2

.各テクストのねらいの分析

(D

各テクストのねらい

(2

) 共通テーマにおける内容比較 皿.結果と考察

IV

.今後の課題 キーワード:日本事情教育、日本語教育、異文化適応教育、異文化理解教育、 予備教育機関、

I

.はじめに

現在、専門学校の日本語科(予備教育機関)で日本語教師に従事しているが、日本語教育とくに予備教育 機関における日本事情の捉え方には常々、疑間に思っていたことがある。日本事情と一言でいっても、日本 事情の授業を実際に行うと、そこには様々な要素が含まれていることが分かるが、どのように指導していけば 良いのかは、各教師、各学校の裁量に任されている感がる。また、日本事情としてどのような学習目標があ り、何をもって評価 するのかなど、日本事情教育については未だ暖昧な点が多い。 現在、筆者が教鞭をとっている学校では、『日本で円滑に生活できるための総合力を養う』という教育目標 の下、中級クラスから「科目立て」を採用しており、「読解」「会話」「作文」などの科目と共に、「日本事情」 も行っている。授業は週

1

回(

1

90

分授業)で

15

週行われ、最後

15

週目に期末試験を行い、最終評価を

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活できる為の力、自分自身を見直し自分で考える力、を養えることを目標にして、様々な角度から授業を行 っている。「読解」「会話」「作文」などの科目の学習目標が、「日本語力の向上」であるのに対し、「日本事情」 では「他の科目で習ったスキルをフルに使用し、学習者自らさまざまな情報を得て、その情報を基に学習者 自身が考え、各自が持つ力を最大限活用し発信する」のが学習目標になっている0 学習する内容(トピック やアクティビティー、テクストなど)は各クラスの状況に応じて各教師が決めており、各教師の個性が表に 出た授業が行われている。 そこで、本稿では日本事情の授業を行う上で、最低限抑えておきたい学習項目や指導方法などがあるかど うかを考察していく。

且.テクスト分析

1. 分析目的 時代によって内容が変っていく日本事情には「核」となる考えがあるのかを調査するため、日本事情用に 開発され市販されている代表的なテクストを分析する。 今回、ここで分析するテクストは、 ①『日本語・日本事情リソース型総合教材 過渡期の「日本」を考える』(1 9 9 7) 凡人社。 目次】第 1課 日本人の「働き方」 第 2 課 若者の選択 第 3 課 家族とは 第 4 課 日本人の意識 第 5 課 揺れる日本語 第 6 課 「食」事情 第 7 課 人間都市 第 8 課 国際社会における日本 第 9 課 真の豊かさ 第 10 課 共生を求めて ②『日本を話そう一 15 のテーマで学ぶ日本事情一』(1 9 94) TheJapanTimes0 目次:第 1課 住宅事情 第 2 課 結婚と女性の社会進出 第 3 課 高齢化社会 第 4 課 日本料理 第 5 課 平等社会と中流意識

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日本語教育における「日本事情」の捉え方 第 6 課 教育 第 7 課 伝統芸術 第 8 課 日本的経営 第 9 課 日本人の労働観 第 10 課 集団意識と肩書き 第 11 課 社会保障と社会参加活動 第 12 課 年中行事 第 13 課 政治のしくみ 第 14 課 日本の歴史 1 第 15 課 日本の歴史 2 ③『中・上級日本語教科書 日本への招待』(2001)東京大学出版会。 目次:はじめに ステレオタイプへの挑戦 イメージの日本・日本人 テーマ 1 女性の生き方 テーマ 2 変る教育 テーマ 3 若者の感性 テーマ 4 仕事への意識 テーマ 5 日本の外国人 テーマ 6 豊かさの意味 おわりに ステレオタイプを超えて一多様化する日本・日本人 以上の 3 テクスト(日本語学習中級以上の学生を対象に開発されたテクスト)とする。 2. 各テクストのねらいの分析 各テクストの構成・特徴・テーマの選び方(ねらい)を要約し、 3 テクスト共通に取り上げられているテー マ「日本人の労働観」「女性・結婚」について具体的に比較すると、以下のようになる。 (D 各テクストのねらい ①『日本語・日本事情リソース型総合教材 過渡期の「日本」を考える』 上級および超上級レベルの学習者を対象にした日本語・日本事情リソース型総合教材であり、特に、大学 や専門学校等で日本語を用いて学習・研究活動を行う必要がある留学生を主な学習対象者として作成。 1つ のテーマのもとに、読む・書く・話す・聞くという 4 技能を養う言語活動が機能的に結び付くように配慮し た構成。日本社会が従来の価値観の再考を迫られている、いわゆる「過渡期」にあるという観点から、さま ざまなテーマを多角的に抽出されていて、「日本事情」のクラスで現在日本の課題を探る手がかりとして使用 するに足る、充実した内容 ②『日本を話そう一 15 のテーマで学ぶ日本事情―』 中級程度の日本語力を持つ学生が、日本の社会、文化、生活、ものの考え方について学び、理解を深める

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項目が多いのが特徴で、広い範囲から満遍なくテーマを選び、日本及び日本人について総合的に学べるよう 構成。 ③『中・上級日本語教科書 日本への招待』 対象とする学習者は、中級修了から上級前半程度の成人学習者。日本語の中・上級レベルの学習のために 必要な情報を整理し、そこから学習者が日本語で自ら発信する技術を養成することがねらい。そのために、

1

つのテーマにいついて視点の異なる複数の資料(読み物、図、グラフなど)を提供し、それらをもとにし た知的営みのために具体的な教室活動が可能になるような構成。各テーマはいずれも学習者が日本語運用能 力を高めながら、同時に、現代日本社会の抱える「多様化」という課題へ注意を喚起するよう構成。

(2

) 共通テーマにおける内容比較 ① 第

1

課 日本人の「働き方」 従来の日本人の「会社」とのかかわりを紹介し、「会社国家」のしくみを変えるために、会社や社会はどう 変らなければならないのか、また、個人はどうしたらいいのかを考える内容。 ② 第

9

課 日本人の労働観 日本会社の休暇制度についての紹介と、なぜ、日本人がよく働くようになったのかが、稲作文化、儒教の 影響、階級制度がなくなったことが関係していると紹介し、日本人の仕事に対する意識の変化について考え る内容。 ③ テーマ

4

仕事への意識 就職、終身雇用、残業、転勤、単身赴任、リストラ、転職といったキーワードを中心に、日本社会で働く 人について考える内容。 ④ 第

3

課 家族とは 旧東ドイツの女性の社会進出についての紹介や、夫婦別姓や結婚や離婚について、また、現在における「家 族」の矛盾について取り上げられていて、家族像や結婚像について考える内容。 ⑤ 第

2

課 結婚と女性の社会進出 日本の結婚と女性の社会進出についての紹介から、男女の役割観などについて考える内容。 ⑥ テーマ

1

女性の生き方 女性の意識、社会進出、差別(男女差別、就職差別、職場での差別)、少子化、高齢化社会、専業主婦、共 稼ぎ、家事の負担、子育て、しつけといったキーワードを中心に、日本の女性の生活について考える内容。

皿.結果と考察

各テクストとも、一般的な日本紹介にとどまらず、問題点も提示し、学習者が生きた現在の日本に接する ようにすることをねらいとしていることが分かる。取り扱っているテーマとしても、子どもをとりまく環境、 女性の生き方、若者の価値観、組織の中での個人のあり方、日本国内の外国人、日本社会・日本人の意識や

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日本語教育における「日本事情」の捉え方 行動様式など多岐にわたる内容であり、現代日本社会の抱える多様化という課題や過渡期にある現代日本を 理解し 21世紀を視野に入れて将来を考えることのできるようなテーマであるといえる。(ただし、内容的に 古いデータのものが多く、現在日本事情とはいえないものが多い。)そして、各テクストともに、 1つのテー マをもとに、読む・書く・話す・聞くという 4 技能を養う言語活動がそれぞれ機能的に結び付くように、文 型練習や読解、作文といった練習問題が取り入れてられており、各教師は必要に応じてそれらを選択できる よう配慮されている。 危険性として示唆されるのは、多岐にわたるテーマの選択を各教師に委ねることにより、各教師の主観、 教育観といった主点でテーマを選択してしまい、偏った内容になってしまう恐れがあることなどがあげられ る。また、テーマ別に比較してみても、同じテーマでも各テクストにより切り口が違うことが分かり、どのテ クストを使用したかによって、同じテーマでも学習者に与える印象はかわってしまうと思われる。 テクストを分析した上では、日本事情の授業を行う際、最低限抑えておきたい学習項目や指導方法につい ては見出せなかった。

'V

.今後の課題

今後の課題としては、日本語教育における日本事情のテクストが少なく、特に、予備教育機関(日本語学 校等)で使用できる内容のテクストが開発されていないことである。現在、市販されている日本事情用テク ストの多くは、大学などでの使用目的で開発されたテクストであるため、予備教育の現場では使いにくい内 容となっている。多くの予備教育機関(日本語学校など)では、「会話」「読解」「作文」などの授業と同様に、 「日本事情」授業を行っているとはいえず、日本事情は一教科として成り立っていないのが現状である。理 由として考えられる事としては、予備教育機関では対象になる学習者の多くが大学などの高等教育機関へ進 学をするため、予備教育機関での授業が学習者の「日本語力の向上」に目的がおかれていたからだといえる。 しかし、今後、予備教育機関でも「総合力を養う」授業が必要とされる時代になりつつある。今後行われる 「日本留学試験」も「総合力」を問う試験である。今、時代の流れは「総合力を養う日本事情」授業を必要 としているものと示唆され、「日本事情」という科目を予備教育機関でも取り入れるべきかと思われる。 今後は予備教育機関でも使用しやすい内容のテクストの開発を行う予定である。また、どのような方法に より、学習者の学習効果が得られたか、日本事情の評価にはどのようなものが適しているのかについても今 後引き続き考察していく予定である。 最後に、具体的な日本事情の授業のあり方として、細川(1994)は次のように述べている。 「学習者一人ひとりが「日本とは何か」を発見し、それらによって、日本および日本人を理解し、それら について自分の考えを日本語で的確に表現する力を身につけること、それが「日本事情」における当面の目 的である。」(細川、 1994)

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0)三牧陽子・村岡貴子・伊藤博子共著(1997)『日本語・日本事情リソース型総合教材 過渡期の「日本」を考える』凡 人社。 (2)日鉄ヒューマンデベロプメント・日本外国語専門学校著(1994)『日本を話そう一 15のテーマで学ぶ日本事情一』The Japan Times. (3)東京大学 AIKOM 日本語プログラム 近藤安月子・丸山千歌編(2000)『中・上級日本語教科書 日本への招待』東京 大学出版会。 参考文献 0)川上郁雄(1997)「日本文化を書く一「日本事情」を通じてどのような力を育成するか一」『宮城教育大学紀要』第 32 巻。 (2)河野理恵(1998)「異文化間教育としての「日本事情」の課題 「比較文化」の落とし穴一」『留学生教育』第 3 号、 留学生教育学会。 (3) J ・Vネウストプニ (1995)『新しい日本語教育のために』大修館書店。 (4) J ・Vネウストプニー 宮崎里司共著(1999)『日本語教育と日本語学習』 くろしお出版。 (5) 121 世紀の『日本事情』」編集委員会編(1999) F21 世紀の「日本事情」 日本語教育から文化リテラシーへ 創刊 号』 くろしお出版。 (6) 121 世紀の『日本事情』」編集委員会編(2000) r21 世紀の「日本事情」ー日本語教育から文化リテラシーへー 第 2 号』 くろしお出版。 (7)細川英雄(1987)「教育方法論としての「口本事情」 その位置付けと可能性一」『日本語教育』 日本語教育学会。 (8)細川英雄(1994)『日本語教育と日本事情』明石書店。 (9)細川英雄(1994)『実践「日本事情」入門』大修館書店。 (10)水谷修 佐々木瑞枝 細川英雄 池田裕編(1995)『日本事情ハンドブック』大修館書店。 (11)山田泉(1986)『異文化適応教育と日本語教育 2 社会派日本語教育のすすめ』凡人社。

参照

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