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低温処理による花木類の開花促進に関する研究 VI. シナレンギョウ(Forsythia uiridissima LINDL.)の花芽形成要因-香川大学学術情報リポジトリ

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63 低温処理による花木類の開花促進に関する研究 Ⅵ シナレンギョウ(魚γ叩侮α〝才7査成■ざざ吉例αLINDL.)の花芽形成要因 五 井 正 Ⅰ緒 言 前報(5)において,著者らは,自然条件7■におけるシナレンギョウの花芽形成過程を調べ,その結果から花芽形成要 因を推定し,さらに低温処理による実用的を開花促進方法を明らかにした”その際に,低温の開花促進効果は花芽発 達ステー・ジと密接に関係していること,また,花芽形成は外的要因,とくに気温に強く影響されている可能性がある ことを示した. この報告は,シナレンギョウの花芽形成の全過程を通じて,花芽形成に関与する要因とその作用を明らかにし,よ り正催な開花調節の基礎にするために行をったものである. なお,こ.の実験を進めるにあたり,本学部附属農場,伊藤芳」・,森俊夫両技官のお世話になり,庵原教授には本稿 の徴校閲を頂いたい ここに記して感謝の意を表する. ⅠⅠ実験材料および方法 実験材料としては,これまでの実験におけると同様,シナレンギョウ(釣γ:5ツ£ゐ去α∽最ゐ√5よ−∽αLINDl..)を用いた. 1969年3月に挿木して得られた萬を同年11月に畑に定植し,2年間養成した。1972年3月上旬に,これらの箇を掘り 上げて労定し,21cm駄温鉢に定植し,戸外で栽培した“実験に使用するまでの栽培においては,春の発芽前に着花 枝をすべて勢除し,また弱い枝はすべて除去した.なお,詳細を実験方法は,それぞれの実験結果と関連して述べる ことにする. ⅠⅠⅠ実 験 結 果 1.潜花特性 シナレンギョウの花芽持薬腋に単生または花房状に族生するが,花芽数の増加には以下のようを特異性があった. すなわち,まず薬腋に形成される腋芽としては,軸側に大きい主芽が,それと英柄の基部との間に小さい副芽が,ほ ぼ同時に形成される. この主芽の生長点に最初の花芽が分化し,それが発達し始めると,腋芽を包んでいる基部の2枚のリンペンの内側 に形成された生長点から,つぎの花芽が分化 発達してくる.それと前後して,副芽も花芽となる.ただし,この一 連の過程がすべての薬厳において起こるわけではなく,栄養条件のわるい枝などにおいては,しばしば,主芽だけし か花芽にならないばあいがあり,また,これと逆に,副芽にも腋生の花芽が形成されることがあった. 前報においては,このような花数増加過程の初期を花房分化期として示したが,主芽を中心としてみたばあいは, 主芽の生長点に由来する花芽が花弁形成期前後に達した後に花数増加が始まるために,花芽形成ステージとして花房 分化期を示すことば不適当であると考えられる.したがって,この実験においては,花芽形成ステージとしての花房 分化期を省くこととした. 2‖ 生長開始期と花芽形成との関係 これまでの実験において,早春に促成した株から発生した新棉には,4∼5月に花芽が形成されることが認められ た.これは,早く生長し始めた故においては,遅く生長を始めた枝でよりも,花芽形成期が早くをることを示してい る.そこで1973年1月31日および2月28日に,自然の低温を受けた株を2株ずつ入室し,暫定後,最低夜温120C以

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香川大学農学部学術報告 64 上で栽培した‖ ただし,厳塞期にお小ては100C以下となることがあった.なお,いずれの材料も4月1引]に自然条 件下■に移した 3 4 &−ぶS 二ご〇こ﹂〇 パUてuI C(川t Jこ川31 11(!l)28 Stalti咽(1ilte OflolCi帽 Figl11Flowelfbrmationonthcplantswhichbcgantogrowinthegreenhouseondi触entdatesin WintcrinFbriythiauiridl$∼imaLINDL

Twooffouryearoldplantsgrownin21cmclaypotsinoutdoorswereputinthegreenhouse

onJan3landFeb…28,1973L reSpeCtively,andgrownat120Corabovethroughthewinterto

thesprlngTheywcrecarriedoutofdoorsagalnOnthelastdayofAprillTenofmainaxillary

buds,eaChofwhichwasthelargeroneofthetwobudsformedineachaxilofcurrentshoots)Were

sampled onMay31anddissected with thestereoscoplCmicroscopetoestimate the stage of

80WerfbrmationThe mean且oralstagc fbr ten ofmain axillaIy buds onthcnormalshoots

emergedfkomtheupperPartSOftheplahtisillustratcd

ThefloIalstageindexmeansthefo1lows: 0:Vegetative,1:Sepalfbrmation,2‥PetalfbImation,3‥Stamenformation,4:Pistil fbrmation,5:Ovulcfbrmation,6:Pollenfbrmation,7:Anthcsis 5月31日における花芽観察の結果は,第1凶の通りであった.すなわち,白然区においてはまだ新梢は軟弱で花芽 は認められなかったが,1月31日および2月28日入室区においては,花芽が,それぞれ,胚珠形成期と雌ずい形成期 に達していた.これらの花芽の一・部は,多少異常ではあったが,7月に開花した この実験とは別に,1974年5月9日,31日および6月20日に,伸長中の新柏を基部2節のみ残して切除し,その後 に発生した新梢(側芽)における花芽形成を検討した.その結果は第2図の通りで,8月16日における観察では,切

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65 第27巻第59号(1976) 1)1・un11iI唱date 3 4 誌虚s−戸岩云︼〇霊Pt−Ⅰ

Atlg.16

0ct.21

Sanll)1iIlg date

Fig”2lFlowerformation onthe plants prunned on di触ent dates duringthc growlngSeaSOnin

月明両独川前ゐ∼査∽αLINDl Fouryearoldplantsgrownin2lcmclaypotsinoutdoorswereprunnedonMarch28,1974, andtenofnewshootswereallowedtogrow‖ AllofcurrentshootsontwoplantsweIeCutOff leavingtwobasalnodesonMay9,May31andJune20,reSpeCtivelylTenofmainaxi11ary budsontherenewedshootsweredissected り返し日が遅いほど,明らかに花芽形成は遅れた.しかし,この差は秋までにほとんど無くなった. 3小 日長と花芽形成との関係 1973年5月16日から,伸長中の新棺に短日(自然光11時間)および長日(短日+2時間光中断)処理をおこない, 6月6Elおよび6月16日に腋芽を観察したが,花芽形成は確認されをかった. 4、.温度と花芽形成との関係 1)花芽始発と温度との関係 花芽始発と温度の関係を明らかにするため,1974年5月1日に戸外で生長中の株を,ファイトトロンの15,20, 250C室(各自然光)にそれぞれ2株ずつ搬入し,6月6日より4週間ごとに花芽観察をおこをったu

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香川大学農学部学術報告 0 0 0 0 0 0 9 8 7 6 qい、 已○州︸d∈hO︸hむき○屯︸○︶已むリーむd 0 0 0 0 5 4 3 2 Sこ1111l)li】1g(late O一一0心1g261うasals】100t トーAug26Nol111alsIlOひt ひ・・OSel)121うasillsllOOt か・一Scl)12Ⅰ\01Ⅷals】100t Natural15 20 Temperature(Oc) ご5

Fig.3、Theratio ofthcaxillarybuds bcaring鮎werbuds to totalaxi11ary buds(pcrccntofflower fbrmation)inFbrLV,ihiaviridi5‡imaLINDLr grOWnathighcrtemperatureSl

Twooffiveycaroldplantsgrownin21cmclaypotsinoutdoorswereputineachchamberof

thephytotroncontrolled at15120and250Con Mayl)1974)Whcn the young shoots were aboutlOcminlength. 先ず温度と花芽形成率の関係は,第3図の通りであった.普通校では頂芽以外のすべての腋芽に対する,また徒長 枝(主にベイサル・シ.ユ・−・ト)では,枝の基部に形成される栄養芽のうちの最上部の芽より上部の全腋芽に対する, 花芽形成腋芽の割合で表わした着花率は,温度が高いほど高くなり,また普通枝では徒長枝でよりも,また9月12日 にば,8月26日におけるよりも,それぞれ高くなった.これに対し,花芽ステージで示したばあいは,花芽始発は 200C区でヤヤ早くをったが,温度による差は小さかった.胚珠形成期に達するのは200C,150C,自然区の順に早く, 250C区では処理開始後8か月日の1975年1月9日においても,花芽の約半数は灘ずい形成期のままであった(第4 図)小小花の生長,薪,噸ずいの発達は,15および20◇C区においてはほほ同じように促進されたが,250C区では 著しく抑制された(第5,6,7図)1. なお,自然条件下では,9月中・下旬以後に,花芽が急速に生長した.. 2)花芽始発後の温度要因と花芽形成 前報(5)において,著者は,レンギョウの花芽始発は高温で,また花芽発達は低温で,それぞれ促進される可能性が あることを示した. そこで,自然条件下ですべての腋芽に花芽形成が認められた時,すなわち1974年7月19日から,ファイトトロンで 前述の方法で温度処理をおこをい,花芽発達と温度の関係を検討したn l葉腋あたりの花芽数は第8図の通りであった.すなわち,処理開始後約5週間目の8月26日には,200C区普通 枝の3、3花を除いて,枝の状態や温度による差はほとんどなかった.9月12日には,徒良枝では温度間の差ほほとん ど無くて,ほほ2∼215花であったが,普通校では,自然,15,20,250Cの順に,それぞれ4.7,3、8,3、5,2‖1花で あった..花芽ステー・ジからみた花芽発達の状態ほ,第9園の通りで,第4図におけると同様,15および200C区に おいては花芽が急激に発達したのに対し,250C区では調査打ち切り日の10月23日においても,雌ずい形成期のまま であった.また,小花の大きさヤ雌ずい長は,15および200C区では急激に増加したが,250C区ではきわめて徐々 にしか増加しをかった(第10,11図). 以上のように,花芽始発後の花芽発達は150Cで最も促進されたので,150C以下の温度についても検討する必要

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67 第27巻第59号(1976) 5 4 3 2 品雲S−空01叫叫○パ名ul 4 3 3 2 2 1 1U≡U二三二﹂・−王ここ一≡≡二こ二手ご、− 5ハ13ハ租 31ハ】L 28ハⅦ125/1笠 23/号 20/Ⅹ上 27/1 Sal叩1i帽date

Fig4L Flowcr fbrmation at highcr tempcraturcsin

釣叩励αぴまrまぁ‡如焔LINDL

Matelials and procedures werc the same as thoscdescribcdinFig3・Themcan Roralstage fbrtcnofmainaxillarybudsonthenormalshoots isillustrated ■ l 27/Ⅰ 3川[31ハ≠ 28/Ⅶ125/Ⅸ 23/Ⅹ 20/Ⅵ Sal叩1i噂date

Fig.5、Growthof鎖owerbuds athigher tempcratures

il一]bTリ・(/Li{1こ・iTjdit−i′情7LTNDL

Materials and procedures were the same as

thosedescribcdin Figl3”The meanlengthfor tenof■mainnowcrbuds on thc normalshootsis illustrated.

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香川大学農学部学術報告

68

SamI)1ir唱date

Fig.6.Development of pistils at higher temperatures

in且明〆払=加は5‡査∽αLINDL‥

Materialsandprocedureswerethesameasthose

dcscribedin Fig。3,The mcanlengthfor ten plStilsofmain魚ower buds on thc normalshoots

isillustrated.

Fig∴7.Developmentofanthersathigher temperatureS

in凡叩祓αひどr査ゐ‡ま∽αLINDL

Materials and procedures were the same as those describedin Fig”3.・Measurement was doneof mainflower buds on the normalshoots andthemcanlengthfbr20anthersisillustratcd

(7)

69 第27巻第59号(1976) San叩1i帽date O−・・・・O NorlllalSllOOt

Aug,26

いOBasalsllOOt

2 3 4 〓雲一旦s芯・;l︸︺。誌q∈nZ 4 3 2 5 &電︸S−巴○〓葛宏puI 25 Natし11al15 20 1 ̄e叫)erこItt−1e(℃)

Fig”8u The number offlorctsformedineach axilat

higher temperaturcs after thein;tiation ofmain

flower bud had begun in each axil of current

shootsin凡叩励α最γまゐ∼之∽αLINDL

Two oi five year old plants wele carried into

cach chambcr ofthcphytotron controlled at15,

20 and 25OC onJuly19,1974,When the formationofthcfirst且oret(themain鎖ower bud) hadbegunin each axilofcuIrent Shootsい The meannumber offloretsforlOO axilsisillustrated.

28川11 25/Ⅸ 23/Ⅹ Sampling date

19川L 31川l

Fig一9L・Flower development at higher−temPeratureS afterthefbImationofmain点owerbudhadbegun in each axilof current shootsin Fbriythia

ひ∠r査成;‡ま∽αLIND工…

Materials and procedures were the sameas

thosedescribedinFig8.Themean且oIalstagc fortenofmainflower budson the normalshoots

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香川大学虚学部学術報告 70 ∈∈u−芯・l①〓 ︸〇・l霊室完岩 OU 6 4 1 1 1 l100 賀ヒ≡二≡Sld;ll芯uUJ 19ハ1131ハ】【28/11n 25/】て 23/て 20/M 27/1 Sal叩1i帽d;lte

Figl10”GIOWthofflowcr buds at higher ternpcratures afterthcfbrmationofmainaowerbudhadbcgun ineachaxilofcuIrentShootsinFbrv,lhiaviridiHima

LINDI.‥

Materials and procedurcs werc the same as those describedinFig‖8.Thc mcan diametcr for ten of main flowcr buds on the normal shoots

isi11ustrated.

19ハl【31ハⅡ 28ハ1ほ 25/1X 23/て 20】/追 27/I Samplil唱date

Fig. II Development of pistils at higher temperaturess aftertheformationof main鎖owerbudhadbegun

in each axilof current shoots in 涙流動南血αLmDI…

Materials and procedures werc the same as those describedin Fig・8.Themean】engthfoz tcn pIStils ofmainliowcr buds on the normal shootsisillustratcd

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71 第27巻第59号(1976) ⋮∈ ≡ ︺ミニ〓 ﹂こ ﹂三∑≡ご﹂ 6 4 1 1 19ハ†128/11I1 25/】1 23/て 20/Ⅵ SamI)liIⅦ(hte

Fig.12.Growthof80Werbuds atlower temperatuTeS aftertheformationofmainflowerbudhad begun

in each axilof current shootsin lbriythia

び哀γま成‡血ⅦLINDL

Two of丘ve year old plants grownin2lcm clay potsin outdoors were putin cach dark chamber kept at5,10and150C onJuly19,

1974,When the fbrmation of petals or stamens had begunin the main flower buds The mean diameterfor ten of main flower buds on the normalshootsisillustrated 0 8 6 4 1000 ∈∈l〓≡S竃叫○‘協uむ﹁l 20/氾 19/Ⅶ 28ハ≠ 25/Ⅸ 23/‡ Sampling dates

Figり13..Developmentofpistils atlower temperatures after the formation of main 魚ower bud had begunin eachaxilofcurrent shootsin

衰γ吉成i∼査∽d LINDI.‥

Materials and procedures were the same as

thosedescIibedinFig.12.Themeanlengthfor ten plStils of main80Wer buds on thenormal

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香川大学農学部学術報告 72 2 0 18 1.6 14 ∈ ≡ ≡12 ゝ■ こ ..】= 完10 く⊃ J= 昏08 q) J O6 04 02 0000 ∈≡ ≡ 三コノこ ︼こ・;ヰ宣じで二 2 0 8 1 1 0 19ハ汀 28ハ1王1 25/Ⅸ 23/号 20/M

SamI)1iIlg date 19ハ邪 28/Ⅷ 28/Ⅸ 23/Ⅹ 20/黒 Sampling date Figl15Devclopmentofovules atlower temperatures

after the formation of main nower bud had begunineach axilofcurrent shootsin

ひ査r吉成;5ま∽αLINDL

Materials and procedures were the same as thosedcscribedinFig.12.The mean diameter for200Vulesof’main鎖ower buds on the normal

shootsisillustrated

Fig”14・Developmentofanthers atlower temperaturCS after the fbrmation of main 魚ower bud had begunineachaxilofcurrentshootsin Fbrv,ihia

ひ査rよ成∼‡ま∽αLINDI.

Materials and procedures were the same as thosedescribedinFig…12… Themeanlengthfor 20anLhersoftenmainflower buds on thenormal

shootsisillustrated があった… そこで,1974年7月19日から,5,10および150C定温暗黒条件で処理したところ,小花の大きさ,雌 ずい長,荊の大きさなどの増加促進,胚珠形成促進などの点から考えて,100Cが花芽発達を最も促進する(第12, 13,14,15図)と考えられた. ⅠⅤ 考 察 花木類の花芽のうち,複数の小花からなる花序では,総状花序では下位の小花ほど,また集散花序では上位の小花 ほど,それぞれ早く分化し発達するのが普通である..その過程を花芽ステ・−ジで表わしたばあい,茎損または腋芽の 生長点から,ある数の,ほとんど花としては未分化の小花原基が先ず形成される.これが花房分化期である.個々の 小花はその後一・定の順序で発達するため,一・般的には,これらの花芽観察は特定の位置の小花についてなされること が多い(6,8). シナレンギョウでは,前述のように,腋穿として形成された芽は単に1偶の花とをるだけで,その生長点から複数 の花は分化しないが,その基部のリンペン内に二次的に形成される芽が花芽とをって,外見的には圧縮された集散花 序のようになるばあいが多い。これが集散花序であるのかどうかについてはさらに詳細な観察が必要であるが,形態 的には,サルスベリなどの花序の一・部と同じように考えられる.

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73 第27巻第59号(1976) しかしをがら,腋芽の主芽を対象として花芽形成を調べたとき,この主芽の花芽形成は,後にその基部に分化ナ る腋生の花芽よりもほるかに早く始まるため,花数増加期を花序分化期として表示することば,ほとんど不可能であ った..また,後に述べるように,シナレンギョウでは,花芽始発条件(すなわち,腋芽の主芽が花芽分化するに必要 を条件)と基部リンペン内に花芽が分化するための条件がやや異なっているために,これら花芽の増加期を花房分化 期と分けて考えるのが安当であるように考えられる.したがって,ここでは,花芽形成過程としての花房分化期(小 花原基形成期)は省いて表示することとした. 生長開始後から自然における花芽形成開始期直前までの日長処理は,花芽形成に何の影響も与えなかった..この実 験では,処理期間が短かかったために,処理の効果が表われる前に実験が打ち切られた可能性もあるが,自然におけ る花芽形成期との比較から考えて,日長の効果はほとんど認められないと考え.られた… 温帯の落葉花木の多くは花芽 分化において明りょうな日長反応を示さないと考えられているが(8・7・8),レンギョウもおそらく例外ではをいであろう. これに対し,温度は花芽形成に決定的な影響を与えた.生長初期から連続処理したばあい,花芽形成率は高温区ほ ど高くなり,とくに徒長枝において,あるいは花芽形成初期において,この傾向が強かった1.しかし,花芽ステ・−・ジ で表わしたとき,花芽形成はほとんど温度にかかわりなく始まった¶ これらの事実から,高温が直接シナレンギョウ の花芽始発を促進することも考えられるが,また,生長促進と枝の充実促進を通して二次的に花芽始発を早めること も考えられる. 花木の花芽形成要因については,これまでにいくつかの報告(1・2・4・8,7,9,10・12)があるが,枝の充実度と花芽形成との関 係にまで言及したものはほとんどない.しかし,温度や日長は,他の植物におけると同様花木においても,同化盈ヤ 枝の伸長あるいは伸長停止に決定的な影響を与えることがある(2・11)い また,花芽形成のためには,特定の成分以外に 相当盈の同化産物が必要であると考えられる… したがって,枝の充実と花芽形成とが同時におこるばあいには,花芽 形成のための主要因が何であるかを見分ける必要がある. この実験においては,花芽形成開始期に関してほ温度による差がないにもかかわらず,花芽形成率(第3図)は新 棺の木化が早く進んだ高温区ほど高くをり,木化の遅れた区(150C区)では低くなった… このような差が生じた原 因については,今後,さらに検討する必要があるが,この実験の範囲では,充実度の低い枝では少数の花芽を形成す るための巻分は供給できたが,すべての腋芽が花芽となるに必要な養分の供給が不可儲であったために,花芽形成率 が低かったと考え.られる… ここで,新柄の木化が直ちに枝の充実を示すかどうかば明言できないが養分苔積という意 味においては,ほほ同じであろうと考え.るこ.ともできるようである(8)い したがって,シナレンギョウの花芽は,すくなくとも15∼250Cの鞄囲であれば,枝が−・定の熟度に達しさえす れば,温度と無関係に分化すると考え.ることができる… 他の花木においても,これと似た現象が観察されるが,サク ラ(8)やモモ(4)において多少報告されている程度で,多くは今後の問題として残されている… 以上のように,花芽始発は日長ヤ温度の影響を受けなかったが,花芽発達は高温で抑制され,10∼150Cで著しく 促進された..とくに1英腋あたりの着花数の増加,胚珠,花粉の形成は,100C前後の温度で促進されたn したがっ て,この温度の下では,花芽は外見的には短期間で完成した… −・般に,夏に花芽分化する多くの花木において,分化彼の花芽発達は10∼150Cの温度で促進され,高温では抑 制されることが知られている(1・8).その中で,サザンカヤツバキは自然温度の下で10月までに花粉を形成し,サザン カは花粉形成後そのまま開花に到るが,他のほとんどの種類では,10∼150Cで花芽が速やかに完成する例はほとん ど知られていない.とくに落葉樹では,胚珠や花粉形成のために冬の低温に準じた低温の直接的あるいは間接的(り) 作用を必要とするものが多い。レンギョウは,15∼200Cにおいてさえ,胚珠と花粉を形成したから,花芽完成のた めには特定の低温を必要としないと考えられ,この点からは,ツバキ類ヤツツジ類に似ていると言える. しかし,このようにして外見的に完成したレンギョウの花芽は,たとえ200Cをいしそれ以上の温度におかれても, 開花するわけではない.前報(5)で述べたように,花芽は低温(適温−20C,約6週間)を受け,さらに150C桂皮に 加温されたとき,はじめて正常に開花する.すをわち,開花のための前提条件として,低温を必要とする.低温は, 花芽がほほ雌ずい形成期であればある程度まで開花を促進するが,胚珠,花粉形成期であればさらに効果的に開花を 促進すると考えられるから,低温は胚珠や花粉に直接何らかの効果(充実,数の増加)を与えると考えられる.また, 花弁の展開なとにも影響していると考えられるが,これらの点については,今後検討する予定である.

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香川大学農学部学術報告 74 Ⅴ 摘 要 シナレンギョウ(爪別項伽α最rまぁsよ∽αLINDI.)の花芽形成に関与する要因を検討した結果,以下の知見が得られ た. (1)1月31日および2月28日に鉢栴の材料を温室に入れて,佳長閑始期を変えたり,生長中の新杓を5月9日, 31日または6月20日に切り返したとき,処理開始後に発芽した枝における花芽形成は,処理開始期が早いほど早く始 まった“ (2)自然条件下で花芽が形成されはじめる直前の5月15日から6月16日までの間日長処理したとき,日長は花芽 形成に全然影響しをかった“ (3)これに対し,生長期間および花芽形成期における温度は,花芽形成に著しい影響を与えた.まず,15∼ 250Cの範囲では,花芽ステー・ジで表わしたばあいの花芽始発(花芽形成開始)は,すべての普通校でほほ同時期で あった.しかし,花芽形成率は高温で育てられた株の枚ほど高く怒り,とくにべ・−サル・シュ・−トにおいてその傾向 が強かった. (4)以上の事実から,シナレンギョウの花芽始発は,温度よりもむしろ新梢の充実度と関係が深いと考えられる… 温度は主にこの新栴の充実に影響していると考えられる. (5)これに対して,花芽ステ・−ジあるいは1恭腋あたりに形成される小花数で表わした花芽発達は,250Cでは 著しく妨蕃され,やや低い温度の下では促進された.そのばあい,5∼200Cの範囲で花芽発達は正常であったが, 適温はほぼ10◇Cであった. (6)しかし,100Cあるいは150Cの下で完成した花芽も,低温(−20C6−8weeks)を受けなければ開花しなか った. 参 考 文 献 (7)−−,川西玉夫,庵原 遜:低温処理によ る花木類の開花促進に関する研究 Ⅴ コデマリ (鼻血紬狛施政叩e乃一ゞ去二ゞLouR..)の開花特性,香川 大農学軌 26(2),84−92(1975)

(8)∴

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period on the vegetative and reproductive

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(13)

第27巻第59号(1976) 75

STUDIES ON THE ACCELERATION OF FLOWERINGIN WOODY

()RNAMENTALS BY LOW TEMPERATURE TREATMENTS

VI The factorsinvoIvedinflowerfbrmationinFbrワthiaviridi5∼ima LINDL‥

MasanoriGoI

Sllmmary

TherelationshipsbetweensomefactorsandflowerformationwerestudiedinFbYI伊thiaviridi5−

5imaLINDL..Theresultswereasfbllows:

1.When the beginnlngOfshoot elongation was controlled by puttlng the plantsinthe

greenhouseonJan”31and/orFebl280rCuttingbackthecurrentShootsof.theplantinoutdoors

onMay9,May3land/orJune20,nOWerformationonthecurrentshootsorrenewedshoots

wasfbundearlierintheearliertreatedplantSthaninthelaterones

2“Underthenaturaltemperatures,anyPhotoperiodic treatmentsduringtheperiod丘om

May15toJune16didnotinfluenceuponnowerformationinFbriythiao

3u TemperaturesduringthegTOWlngPeriodandtheformativeperiodofnower,however,

gavesomeimportante鮎ctsonaowerfbrmationdirectlyorindir・eCtlyl一IntherangeOftem−

peratures丘om15to250C〉flower・initiationoccurredappr・0Ⅹimatelyatthesametimeonthe

normalshootsemergedfiomtheupperpartsoftheplants・

Ontheother・hand,PerCentOfaowerfbrmation(theratioofaxilsbearingnOWerbudstototal

axils)increasedwithincreasingtemperatures,eSPeCiallyonthebasalshoots・

4.Fromthefactsmentionedabove,flowerbudinitiationseemednottobea鮎cted bythe

temperaturedirectlybuttobea鮎ctedbythematurltyOfcurrentshootwhichmightbea鮪cted

tocertainextentbytemperature・

5・Flowerdevelopmentshownbythefloralstageandtheincreaseinthenumberofflorets

per・aXil〉however〉WaSinhibitedat250Candwaspromotedatratherlowtemperatur・eS:theop− timumtemper・aturefor・flowerdevelopmentwasaboutlOOC,althoughflowerdevelopmentwas

observedintherangeof.temperaturesfi・Om15to20OC

6い Theflowerbudsdeveloped tothepo11enfbrmlngStageatlO or150C could notflower

ata11,unlesstheyhadbeenexposedtolowtemperatures(−20C,6−8weeks)・

参照

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