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日本政府 世界銀行 日本開発政策 人材育成基金年次報告 2012 年度 日本開発政策 人材育成基金 (PHRD) は 日本政府の寛大な資金拠出を受け 世界銀行が運営 管理する信託基金です 本基金は 専門的知見 助言 研究 教育 及び援助に対するグラントの提供を通じて 途上国における貧困削減 生活向上

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日本開発政策・人材育成基金 Japan Policy and Human Resources Development Fund(PHRD)

PHRD年次報告

2012年度

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日本開発政策・人材育成基金

年次報告

2012年度

日本開発政策・人材育成基金(PHRD)は、 日本政府の寛大な資金拠出を受け、世界銀行が運営・管理する信託基金です。 本基金は、専門的知見、助言、研究、教育、及び援助に対するグラントの提供を通じて、 途上国における貧困削減、生活向上、経済成長促進を目指す 世界銀行の多面的な取組みを支援しています。

日本政府

世界銀行

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日 本 開 発 政 策 ・ 人 材 育 成 基 金 年 次 報 告 2 0 1 2

世界銀行グローバル・パートナーシップ

信託基金業務局長からのメッセージ

その他のPHRDプログラムも、 目に見える成果をもたらしま した。例えば、引き続き実施さ れている日本/世界銀行共同 大学院奨学金制度では、途上 国の政府機関職員や開発分野 の人材を対象に、世界中の優 れた学術機関で大学院修士課 程教育を受けるための奨学金 を提供しています。これまでに5,000人以上の専門家を輩 出し、世界的なネットワークが構築されています。奨学生の 80%以上は祖国に戻り、主要な開発課題に取り組んでいま す。2012年度には230件の奨学金が提供されました。 日本/世界銀行パートナーシップ・プログラムは、主要な開 発問題に関する日本のステークホルダーと世界銀行のパー トナーシップの構築、国際的開発問題に対する日本国民の関 心向上、援助協調イニシアティブの強化につながる活動を支 援します。同イニシアティブの例としては、知識の交流と共 有を図るプロジェクト「大規模災害からの教訓」及び「世界 銀行・日本政策対話強化支援基金(第6期)」があります。 2012年度、PHRDはスタッフ・長期コンサルタント(ETC) プログラムへのグラント総額を増やし、同プログラムによる 日本人の世界銀行への採用に貢献しました。 グローバル・パートナーシップ信託基金業務局(CFPTO) はこれからも、日本政府と世界銀行が進める開発の取組みを 支援すべく、PHRDの価値と効果を高めるために力を注い でいく所存です。 2012年度には、日本開発政策・人材育成基金(PHRD)に とって重要な動きがありました。旧技術協力(TA)プログラ ムの段階的廃止が進み、新技術協力プログラムの導入、拡大、 実施が本格的に始動するなど、変化の年となりました。2012 年度、旧PHRD技術協力プログラムの下でのグラントの多く が終了し、資金支援活動が縮小された一方で、再編後の PHRD技術協力プログラムの支援を受けた有望な新規プロ ジェクトが実施段階へと進みました。 新PHRD技術協力プログラムでは、2012年度にグラント 資金として5,000万ドルが割り当てられました。同基金は 複数の柱から成る戦略を通じて、アフリカにおける食糧安全 保障の向上、東アジア・大洋州地域における災害脆弱性の改 善、及び障害者の障壁克服など、世界の喫緊、かつ極めて複 雑な課題に的をしぼった取組みを行いました。例えば、タン ザニアの稲作農家の市場アクセス確保、農業生産性の向上支 援を通じた、割高な輸入品への依存の軽減及び経済的機会の 拡大のために1,500万ドル近くが割り当てられました。ま た、9カ国における災害リスク対策のために2,200万ドル、 5カ国における障害者の生活の質向上のために1,300万ド ル以上が提供されました。 2012年度に終了したグラントは、ミレニアム開発目標 (MDGs)の達成に寄与する重要な開発プロジェクトを後押 ししました。例えば、イエメンにおけるPHRDプロジェクト 準備グラントにより、世界銀行は、貧しい女性が母子保健 サービスにアクセスし利用を拡大するための取組みを支援 し、MDGのひとつである妊産婦死亡率の削減を進めました。

マイケル・F・コッホ

世界銀行 グローバル・パートナーシップ 信託基金業務 局長

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目次

略語 iii 第1章 序論及び概要 1 1.1 PHRDの起源と目的 ��������������� 1 1.2 PHRDの主力プログラム ������������� 2 1.3 2012年度のプログラムの実行 ����������� 3 1.4 2012年度のプログラム要旨 ������������ 4 第2章 PHRD技術協力プログラム 7 2.1 プログラムの傾向 ����������������� 7 2.2 2012年度に終了した PHRD技術協力グラントの主な実績 �������� 9 2.3 新たなPHRD技術協力プログラム �������� 14 第3章 キャパシティ・ビルディング、 及びパートナーシップ・プログラムを通じた人材育成 19 3.1 はじめに �������������������� 19 3.2 日本/世界銀行共同大学院奨学金制度 ������� 19 3.3 日本/インドネシア大統領奨学金プログラム ���� 20 3.4 日本/世界銀行パートナーシップ・プログラム ��� 20 第4章 PHRDが支援するその他のプログラム 23 4.1 はじめに �������������������� 23 4.2 日本PHRDスタッフ・ETCプログラム ������ 23 4.3 ドナー資金による職員採用プログラム(DFSP/JPO) � 24 4.4 PHRDの支援により世界銀行が管理する その他のプログラム ��������������� 24 4.5 グローバル・ディベロップメント・ネットワーク �� 24 第5章 PHRD活動のモニタリングと評価 27 5.1 PHRD活動の進捗状況と成果のモニタリング ��� 27 第6章 今後の展望 29 第7章 PHRD技術協力プログラム、 及びその他のPHRDプログラムについての情報 31 7.1 PHRDについての情報 ������������� 31 7.2 PHRDの資金によるプログラム ��������� 31 囲み一覧 囲み1 2件のPHRD技術協力グラントの成果 ������� 8 囲み2 終了した3件のプロジェクト準備グラントの成果 � 10 囲み3 終了した3件の協調支援グラントの成果 ����� 11 囲み4 終了した3件の 気候変動イニシアティブ・グラントの成果 ���� 13 囲み5 タンザニアのコメ生産力を引き出す ������� 15 囲み6 JJ/WBGSPのハイライト ����������� 19 囲み7 パートナーシップ・グラント ���������� 20 囲み8 2012年度の他のプログラムへの資金移転 ���� 24 図一覧 図1 PHRDへの年間拠出額の推移 ����������� 1 図2 PHRDプログラム別実行額 (2012年度と2011年度) ������������ 3 図3 PHRD技術協力グラントの配分額と実行額 (1988-2012年度) ��������������� 7 図4 PHRDスタッフ・ETCグラントの承認件数 (2001-2012年度) �������������� 23 図5 「地図で見る成果」PHRD技術協力Pillar II ���� 31 表一覧 表1 新TAプログラムの承認件数と金額 (2011~12年度) ��������������� 14 表2 PHRDスタッフ・ETCグラント承認件数 (2010~12年度) ��������������� 23

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略語

ICM Implementation Completion Memorandum 実施完了メモランダム

ICR Implementation Completion Report 実施完了報告書

IDA International Development Association 国際開発協会

IEG Independent Evaluation Group 独立評価グループ

IRRI International Rice Research Institute 国際稲研究所

ISR Implementation Status Report 実施状況報告書

JICA Japan International Cooperation Agency 国際協力機構

JIPS Japan Indonesia Presidential Scholarship Program 日本/インドネシア大統領奨学金プログラム

JJ/WBGSP Joint Japan/World Bank Graduate Scholarship Program

日本/世界銀行共同大学院奨学金制度 JPO Junior Professional Officer

ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー JSDF Japan Social Development Fund

日本社会開発基金

MCH Maternal and Child Health 母子保健

MIDP Most Innovative Development Project 最も革新的な開発プロジェクトに対する日本賞 MOF Ministry of Finance

財務省

ORD Outstanding Research on Development リサーチ部門国際開発賞

PI Project Implementation プロジェクト実施

PHRD Policy and Human Resources Development Fund 日本開発政策・人材育成基金

PP Project Preparation プロジェクト準備

RVP Regional Vice President 地域担当副総裁

TA Technical Assistance 技術協力

TDLC Tokyo Development Learning Center 東京開発ラーニングセンター

WBI World Bank Institute 世界銀行研究所 ARC Africa Rice Research Center

アフリカ稲センター

ASCEND Alumni and Scholars Capacity Enhancement Network for Development

奨学生・同窓生の開発分野能力向上ネットワーク

CAADP Comprehensive African Agricultural Development Program

包括的アフリカ農業開発プログラム

CARD Coalition for African Rice Development アフリカ稲作振興のための共同体

CC Climate Change Initiative 気候変動イニシアティブ

CEPF Critical Ecosystem Partnership Fund クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金 CFP Concessional Finance and Global Partnership

譲許性資金・グローバル・パートナーシップ

CFPTO Global Partnership and Trust Fund Operations グローバル・パートナーシップ信託基金業務局 CGAP Consultative Group to Assist the Poorest

貧困層支援協議グループ

CGIAR Consultative Group on International Agriculture Research

国際農業研究協議グループ CoF Project Co-financing

プロジェクト協調支援

D&D Disability and Development 障害と開発

DFSP Donor Funded Staffing Program ドナー資金による職員採用プログラム DRR Disaster Reduction and Recovery

災害の削減と復旧

GFDRR Global Facility for Disaster Reduction and Recovery 防災グローバル・ファシリティ

GDN Global Development Network

グローバル・ディベロップメント・ネットワーク GoJ Government of Japan

日本政府

ETC Extended Term Consultant 長期コンサルタント

FCPF Readiness Fund for the Forest Carbon Partnership Facility

森林炭素パートナーシップ基金準備ファンド FY Fiscal Year

会計年度

GPEF Global Partnership for Education Fund 教育のためのグローバル・パートナーシップ基金 GRM Grant Monitoring Report

グラントモニタリング報告

IAVI International AIDS Vaccine Initiative 国際エイズ・ワクチン推進機構

IBRD International Bank for Reconstruction and Development

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1.1 PHRDの起源と目的

日本開発政策・人材育成基金(PHRD)は、日本政府と世界銀行 のパートナーシップの下、人材育成と組織・制度面の能力強化を 支援する他、健全な開発政策の策定や危機管理にも取り組むた め、25年近く前に設立されました。PHRDは、加盟国に対し、世 界銀行やその他の機関からの数十億ドルに上る開発資金へのア クセスを提供するなど、貧困削減と繁栄の共有促進の闘いにおい て中心的な役割を担っています。 PHRDは、経済・金融危機に直面している国々に対する譲許性資 金の提供を他に先駆けて開始し、世界銀行が管理する信託基金の 中でも有数の規模を誇り、様々な開発分野における前進を後押し してきました。同基金は、世界銀行借入国が重要なニーズへの取 組みを目的とした大型プロジェクトや施 策の準備ができるよう、キャパシティ・ ビルディングや能力強化に主眼を置いて います。日本は貧困削減の幅広い取組み に長年貢献を続けており、PHRD設立以 来、途上国における世界銀行の融資案件 の30%を占めています。さらに重要な点 として、PHRDグラントは世界銀行プロ ジェクトの開始時や実施中の強化を図り、 気候変動の取組みや危機に瀕する生態系 の保全を支援してきました。また、同基金 は先進的な研究への資金支援、多くの開 発専門家の研修への貢献、世界的な知識 普及の後押し、強固で継続的なパートナー シップの構築に携わってきました。 設立から2012年度までに、日本政府は国際開発協会(IDA)へ の拠出に加え、PHRDを通じて26億7,000万ドルを拠出し、世 界銀行による開発の取組みを支援しています。内、22億6,000 万ドル以上が実行済みです。 2007年における日本との年次協議の結果、従来のPHRD技術協 力(TA)プログラムの廃止が決まりました。日本側による同決定 の背景には、限られた資源でより高い開発インパクトを実現する という戦略的ニーズがありました。これをきっかけとして、日本 の同プログラムへの年間拠出額は2002年度の1億3,000万ド ルから2007年度には3,000万ドルまで減少しましたが、直近3 年間の年間拠出額は、7,000万ドルから9,000万ドルの間で安 定しています(図1)。

第1章

序論及び概要

図1

PHRDへの年間拠出額の推移

単位:1 0 0 万ドル 1988年度 1989年度 1990年度 1991年度 1992年度 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 250 200 150 100 50 0

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1.2 PHRDの主力プログラム

PHRDは、様々な主力プログラムを通じて、技術協力、人材育成 及びキャパシティ・ビルディング、日本人スタッフやコンサルタン ト、日本/世界銀行パートナーシップ・イニシアティブを支援し ています。 技術協力 PHRD技術協力プログラムは、以前は、国際復興開発銀行(IBRD) の貸出及びIDAの融資・贈与を受けたプロジェクトの準備、協調 融資、実施のためのグラントを提供していました。また、気候変 動関連の幅広い取組みへの支援も提供していました。2008年ま で、技術協力プログラムは、プロジェクト準備(PP)グラント、プ ロジェクト実施(PI)グラント、プロジェクト協調支援(CoF)グ ラント、気候変動イニシアティブ(CC)グラントで構成されてい ました。2009年にこれらは廃止され、以降こうした取組みに新 規のグラントは提供されていません。2012年6月末現在で、55 件ほどのグラントが引き続き実行中です。 現行の新PHRD技術協力プログラムは、アフリカ諸国の農業と稲 作の生産性拡大支援、東アジア及び南アジアの防災支援、及び障 害と開発問題の主流化促進に重点を置いています。再編後の同プ ログラムには、日本政府と世界銀行が共同で行う他の活動への支 援も含まれています。新しい技術協力プログラムの年次政策文書 は付録I(英語版)の通りです。 2010-11年度、各国政府の構造変革や優先項目の見直し、実施 体制、能力面など、様々な理由により、新PHRD技術協力の進捗 は緩やかなものでした。2012年度には実施状況が改善され、承 認されたグラントの86%が既に実施段階に入っています。当初 の問題のほとんどが解決され、各国政府はこうした主要施策の実 施支援に本格的に取り組んでいます。グラントによる活動が軌道 に乗るに従い実行レベルも改善され、対象となる人々にもたらさ れる恩恵が広がりつつあります。 人材育成及びキャパシティ・ビルディング 日本/世界銀行共同大学院奨学金制度(JJ/WBGSP)は、1987 年に設立され、加盟国の国籍を有する人材を対象に大学院修士課 程教育を受けるための奨学金を提供しています。日本は他にも国 際開発金融機関の管理する同様の奨学金プログラムを支援してい ますが、JJ/WBGSPはその中でも最も歴史が古く、規模も最大 です。JJ/WBGSPの設立以来、日本政府は総額2億6,123万ド ルを本プログラムのために承認し、その95%が2012年度末ま でに実行されました。 日本/インドネシア大統領奨学金プログラム(JIPS)は、経済、 経営、教育、保健、農業、インフラ、環境など、開発関連分野での 研究を支援するため、2008年に設置されました。このプログラ ムに対する日本の拠出総額は504万ドルに上り、内69%が実行 済みです。 日本人スタッフ及びコンサルタント 日本PHRDスタッフ・長期コンサルタント(ETC)プログラムは、 世界銀行グループのスタッフ又は長期コンサルタントとしての日 本人を採用する目的で2004年に設置されました。2013年度末 現在、このプログラムに対する日本政府の累積拠出額は3,718 万ドルで、内73%が実行されています。

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日 本 開 発 政 策 ・ 人 材 育 成 基 金 年 次 報 告 2 0 1 2 パートナーシップ・イニシアティブ 日本/世界銀行パートナーシップ・プログラムは、主要な開発問 題に関して日本のステークホルダーと世界銀行のパートナーシッ プを構築するものです。その中で、国際的な開発問題に対する日 本国民の関心を高めることや、援助協調イニシアティブの強化が 図られます。2012年度末現在、このプログラムに対する日本の 拠出額は6,385万ドルで、内80%が実行されています。 PHRDはこうした主力プログラムの他にも、世界銀行が大きな役 割を担う取組みも支援しています。多くの場合、PHRDから、個 別の開発課題に取り組む次のような他の世界銀行プログラムへの 資金の移転を通じて行われます。 森林カーボン・パートナーシップ基金(FCPF) クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金(CEPF) 貧困層支援協議グループ(CGAP) 国際エイズ・ワクチン推進機構(IAVI) 防災グローバル・ファシリティ(GFDRR) 教育のためのグローバル・パートナーシップ基金(GPEF) 国際農業研究協議グループ(CGIAR) ドナー資金による職員採用プログラム(DFSP)

1.3 2012年度のプログラムの実行

2012年度、PHRD技術協力プログラムの実行額は、新規プログ ラムの立ち上げが強化される一方で、2008年度のプログラム再 編の影響を受けて過去のプログラムが順次終了したことから引 き続き減少し、過去最低レベルとなりました(図2)。実行総額に 占める技術協力プログラムの割合は、2011年度の50%から 2012年度には、JJ/WBGSPの割合(39%)をわずかに下回る 38%にまで低下しました。その主な原因は、旧プログラムが随時 終了したことにより、グラントも終了する必要に迫られたためで す。しかし前述の通り、2013年度は、2011-12年度に承認さ れた新規グラントの実施に伴い実行額が増加する見込みです。他 方、スタッフETCプログラムの2012年度の実行額は、2010-12年度の間の承認が150%増加したため、前年度から25%増 加しました。 図2

PHRDプログラム別実行額(2012年度と2011年度)

(単位:100万ドル)

10% $5.57 スタッフETC 33% $19.28 JJ/WBGSP JIPS $1.0 2% PHRD TA $29.28 50% パートナーシップ $3.24 5%

2011年度

39% $17.85 JJ/WBGSP 15% $6.97 スタッフETC JIPS $1.63 4% PHRD TA $17.42 38% パートナーシップ $1.75 4%

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1.4 2012年度のプログラム要旨

再編後の新技術協力プログラムが本格的に始動しました。 2009-13年度技術協力政策文書の下で2012年度以前に承認 されたグラントの内1件を除き全てが実施に移され、実行の準 備が整いました。2012年度における新規グラントの承認総額 は5,070万ドルとなりました。 PHRDは、新PHRD技術協力プログラムの下、4件の新規プロ ポーザル(総額940万ドル)を受理しました。 日本/世界銀行パートナーシップ・プログラムの下で、日本政 府は8件のグラント(総額860万ドル)を承認しました。承認 されたグラントは、途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カ バレッジ(UHC)、及び「防災に関する知識・経験の共有」とい う代表的な取組みを含む様々なイニシアティブを支援します。 世界銀行が管理するその他のプログラム(FCPF、CGIAR、 DFSP、GPEF、IAVI、CGAP、日本/世界銀行開発ラーニン グ・パートナーシップ(TDLC)、太平洋自然災害リスク・マル チドナー・イニシアティブ)に対し、PHRDから1,950万ドル が移転されました。また、日本社会開発基金(JSDF)緊急対応 枠に5,000万ドルが移転されました。 PHRDのプログラムにとって、広報活動は極めて重要です。そ の一環として、PHRDのウェブサイトがより利用しやすく刷新 された他、新PHRD技術協力プログラムのジオコーディング化 により各グラントの地理的位置の全体図や受益者数を示す事に より、援助効果を一目で評価できるようにしました。さらに、 2012年10月に東京で開催されたIMF・世界銀行年次総会に おいて、PHRDの長年の活動や貢献の概要を説明した冊子「開 発の促進役として(仮題):Catalyst for Progress」を発表 しました。

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日 本 開 発 政 策 ・ 人 材 育 成 基 金 年 次 報 告 2 0 1 2 2012年6月末現在、実施されているプロジェクト準備グラント は5件です。特に、その一つであるエジプト都市交通インフラ開 発プロジェクトは、推定3億400万ドルのIBRD貸出につながる 案件です。 技術協力プログラムの開始から2009年度のプログラム再編ま での20年間に、130カ国以上の受益国が合計1,900件以上のグ ラントを受けました。2012年6月末現在、旧プログラムの下で の累積実行額は17億ドルでした。また、旧プログラムの下で実 施中の43件のグラントは2016年に終了の予定です。これらの グラントの未実行残高は約3,000万ドルです。

2.1 プログラムの傾向

PHRD技術協力プログラムの種々のコンポーネントに対する累 積配分額は、23億4,000万ドルに上ります。2008年度のプロ グラム再編後、2009年度と2010年度は新規グラントの承認が なかったため、実行額は大幅に減少しました。その後、2011年 度末より新プログラムの下で新規グラントが承認され、2012年 度より実行に入った事から実行額は再び増加傾向となっていま す。配分額も旧プログラムが順次終了した期間は減少を示し、 2012年度には過去最低の1740万ドルまで落ち込みました(図 3)。旧TAプログラムは、その大半をプロジェクト準備グラント が占めていました。同グラントは、低所 得国や低位中所得国にとって、IBRDに よる貸出やIDAの融資を受ける準備のた めの重要な財源です。プロジェクト準備 グラントは、分析調査の実施に必要な専 門知識を借入国に提供し、将来的な世界 銀行プロジェクトの質向上につなげる事 を主な狙いとしています。平均すると、 2000-05年度に世界銀行が承認した融 資案件全体の内3分の1以上が、プロジェ クト準備グラントの支援を受けました。 その後、この割合は低下傾向にあります。 これは受益国政府による優先分野/政策 の転換、国内の政治危機、又は世界銀行 が定める改革措置を満たしていないグ ラントが承認されなかったためです。

第2章

PHRD技術協力プログラム

図3

PHRD技術協力グラントの配分額と実行額(1988-2012年度)

単位:100万ドル 1988年度 1989年度 1990年度 1991年度 1992年度 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 250 200 150 100 50 0 配分額 実行額

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PHRD技術協力プログラム

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2件のPHRD技術協力グラントの成果

アルメニア:より良い保健医療をより多くの人に 現在、アルメニアでは、国民の85%以上に家庭医制度が普及するなど、250万人近くが、質が高く安価な保健医療や近代化された 医療施設を利用しやすくなっています。しかし、わずか10年前には、資格を持った医療従事者によるケアを受けていた国民の割 合は、17%に留まっていました。保健医療の自己負担は軽減され、外来医療の利用も増加しました。また、入院の場合の平均入院 日数は2003年の11.8日から2010年には7.6日まで短縮されました。 こうした進歩は、アルメニア政府が取り組んできた包括的な保健医療近代化プログラムの成果であり、同プログラムの内125万ド ルはPHRD協調融資グラントにより拠出されました(全額実行済み)。 同プログラムでは、質の高い保健医療の普及拡大と対象病院ネットワークの質・有効性の向上に加え、政府の保健機関による政策 立案能力やモニタリング能力の構築も重視されました。 このキャパシティ・ビルディングの取組みを通じて、保健医療制度の機能をモニタリングする専門家による分析報告チームが設置 され、保健医療事業者への報酬支払いについて迅速かつ適正に報告する保健情報財源システムが確立されました。アルメニア政府 は、とりまとめた報告書を発表し、一般に開示しています。こうした活動は国民の信頼向上や、透明性及び説明責任の改善につな がっています。 ベトナム:金融アクセス拡大 ハノイに住むグエン・グオク・クオンさんにとって、ビジネス環境は大きく改善されました。これはベトナム金融システムの大規 模な近代化のおかげです。「今では、取引先への送金を1日で完了したり、15~30分で送金を受けたりと、とても便利になりました」 (グエンさん) 最近、完了したばかりのこの1億1,200万ドルの世界銀行プロジェクトは、複雑な技術近代化や国内金融システムの構造改革を伴 うもので、PHRDの資金を受けて実現されました。130万ドルに上るPHRDプロジェクト準備グラント及びプロジェクト実施グ ラントを通じて、技術主導型の取組みを進める能力が乏しいベトナムにおいて、このIT集約型プロジェクトを策定するために必要 な技術協力がもたらされました。 同プロジェクトの成果として、現在では個人も企業もインターネット・バンキングやワンストップ型顧客サービス、年中無休・24 時間対応のコールセンターによるサポートをはじめとする便利なサービスを受ける事ができています。 近代化の取組みにより、金融アクセスの拡大や銀行業務の効率向上も進みました。貧困率が1993年の58%から2008年には 15%未満にまで低下したベトナムにおいて、経済発展や開発を継続的に推進するには、こうした取組みは不可欠です。 プロジェクト責任者は同プロジェクトの成功の鍵の一つとして、迅速かつしっかりとしたプロジェクト準備を挙げ、これはPHRD の支援なしには実現し得なかったと述べています。

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PHRD技術協力プログラム

2012年度に日本政府が承認したグラントは15件で、総額は 5,070万ドルです。内3,580万ドルが配分されました。2011 年度に承認された3,675万ドルのマノ川地域プログラムの内、 2,880万ドルが2012年度に配分されました。2011-12年度に おける新PHRD技術協力プログラム下のプロジェクトへの合計 配分額は6,464万ドルに上りました。2012年度は配分額がこ こ数年に比べ増加した他、新規グラントの多くが始動、実施に移 された事もあり、今後数年間は実行額が再び増加する事が見込ま れます。

2.2 2012年度に終了した

PHRD技術協力グラントの主な実績

2012年度には、旧技術協力プログラムの23件のグラントが法 的に終了しました。これらの総額は4,390万ドルに上り、その主 な成果は以下の通りです。 プロジェクト準備グラント 2012年度に終了した23件のグラントの内、4件がプロジェク ト準備グラントで、実行総額の56%を占めました。これらのグ ラントは、受益国における水・衛生、保健、灌漑システム、及び法・ 司法プロジェクトの準備を支援しました。終了したプロジェクト 準備グラントの支援による成果として、以下が挙げられます。 イエメン、カンボジア、及びインドにおける開発プロジェクト に1億5,700万ドルの資金動員 カンボジア及びインドにおけるベスト・プラクティスの例示と 知識の移転 インドにおけるドナー間の協調と市民の参画の実現 プロジェクト協調支援グラント 2012年度は10件のプロジェクト協調支援グラント(総額3,650 万ドル)が終了し、承認額の86%が実行されました。これらのグ ラントは、受益国におけるキャパシティ・ビルディング及び組 織・制度面での機能強化活動の支援に役立てられました。終了し た協調支援グラントは、鳥インフルエンザ対策プロジェクト(ラ オス、ベトナム)、教育プロジェクト(グルジア、セネガル、ベト ナム)、保健プロジェクト(アルバニア、ベトナム)、農業プロジェ クト(アゼルバイジャン)、自然災害軽減(ベトナム)、及び司法近 代化(アゼルバイジャン)に役立てられました。 終了したプロジェクト協調支援グラントの主な実績としては、以 下が挙げられます。 教育管理運営システムの質及び効率改善(セネガル、グルジア): 中央・地方レベルでの初等、中等、高等学校の管理運営システ ムを改善。 質の高い保健医療へのアクセス拡大(アルバニア、ベトナム): 両国政府による保健システムのサービス改善を後押し。 農業従事者と中小企業の マイクロファイナンスへのアクセス向上(アゼルバイジャン): この第2次農業開発・農業信用グラントは1,723万ドルに。 洪水・暴風雨に対する脆弱性軽減(ベトナム): 包括的な自然災害リスク管理の枠組みの設置を通じた取組み。 司法制度強化(アゼルバイジャン): 司法当局の意思決定の効率、機能、及び質を向上。 鳥インフルエンザ発生への対策・対応改善 (ベトナム、ラオス人民民主共和国): 大流行の脅威を抑制するための訓練、インフラ拡充、及び組織・ 制度の機能強化を支援。

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PHRD技術協力プログラム

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終了した3件のプロジェクト準備グラントの成果

メコン総合水資源管理プロジェクト(カンボジア) 2012年に終了した同グラントの実行率は90%に達し、メコン河水資源管理プロジェクトの準備を支援するための資金を提供し ました。同プロジェクトは、メコン地域における持続可能な総合水資源管理の向上を図るもので、同グラントにより、以下の通り、 この大型プロジェクトでいくつもの改善が実現しました。 水産業と水産資源管理活動との準備及び交渉が成功し、メコンデルタ東部の水資源管理コンポーネントの準備が進展。 プロジェクト実現可能性調査と水産業向け実施マニュアル、セーフガード文書、その他水資源管理に関する技術文書を含む重要 文書を作成。 メコンデルタ東部における灌漑開発の詳細、及びフォローアップすべき主要な社会・環境問題の特定を含む基礎的なエンジニア リング調査を完了。 共同漁業管理、孵化場の設計・運営、コミュニティ主導型水資源管理、及び周辺国のベスト・プラクティスに関するクライアン ト国の知識を向上。 人口プロジェクト(イエメン) 同グラントは、2011年3月に開始された広範な保健・人口プロジェクトの準備に役立てられました。同プロジェクトは、貧しい 女性に対する母子保健サービスへのアクセスと利用拡大を図っており、特に遠隔地や農村部の住民に恩恵をもたらすだけでなく、 ミレニアム開発目標である妊産婦死亡率の減少にもつながるものです。同グラントが支援した主な活動は以下の通りです。 環境・社会影響調査や戦略的な助産師養成計画など、プロジェクトにとって重要な助言を提供するコンサルタントを雇用 プロジェクト設計に関する情報共有のためのワークショップ開催(内1回はステークホルダー対象) 会計ソフトなどの重要品目の購入、及び調達、財務管理、計画・実施マニュアルの作成のための資金提供 プロジェクト準備と実施を支援するプロジェクト管理部門の設置 ビハール州パンチャーヤット体制強化プロジェクト(インド) このグラントは、世界銀行理事会による同プロジェクトの準備と承認に役立てられました。8,400万ドルの同プロジェクトは、 パンチャーヤティ・ラージの自治、機能、及び説明責任の改善を目指しています。同グラントは、プロジェクト準備に際して以下 の重要な活動に資金支援を行いました。 重要な評価文書を作成(環境・社会セーフガード指針、業務マニュアル、及びパンチャヤット事務所建物の設計図) パイロット活動及びキャパシティ・ビルディングのためのワークショップを開催 地方分権プロジェクトの準備に関する援助受入国の知識を構築

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囲み3

終了した3件の協調支援グラントの成果

万人のための質の高い教育 第2フェーズ(セネガル) このグラントは100%実行されており、教育従事者のための研修、政府関係者向けの効果的な公立教育管理の指導から、教育予算 管理の近代化まで、幅広い内部キャパシティ・ビルディング活動に役立てられました。これらの取組みは、教育の質改善、女子の ための平等な教育アクセス確保、同国の教育制度の全体的な管理強化など、プロジェクトの総合目標に寄与しています。 プロジェクトの成果は既に出始めています。州、県、及び自治体が、研修や質向上が必要とされる分野を特定し、問題への対応方法 の詳細を示した教育管理計画を策定しました。さらに、資源管理の分権化による自治体教育当局のエンパワメントにより、自治体 の教育制度に対する権限が拡大され、教育サービスの向上につながっています。同グラントが資金を提供した主な活動は以下の通 りです。 州及び県当局への権限委譲を視野に入れた教育機関の機能評価のための調査・研究 管理ツールの開発 中央・地方レベルの管理職向け研修 あらゆるレベルで成果型管理を導入することによる説明責任の拡大 教育省の予算管理システムの近代化 内部連絡、予算管理、データ収集・分析を改善するためのソフトウェア開発 鳥インフルエンザとヒトインフルエンザの発生抑制・対策(ベトナム) このプロジェクトは、鳥インフルエンザの感染源での抑制を強化し、ヒトへの健康リスクを低減するという大きな目標の下、早期 発見、疾病管理・対応、及びヒト感染の流行への対処といった分野で大きな前進をもたらしました。世界銀行はこれをさらに進展 させるべく、2011年に同プロジェクト第2フェーズへの追加支援を承認しました。 このグラントは、同プロジェクトの様々なコンポーネントに対する技術協力に資金を提供しました。同プロジェクトの主な成果は、 以下の通りです。 高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生の予防、発見、対応のため、保健セクターや獣医ネットワークのあらゆるレベルにお ける能力を強化。 疾病抑制を強化:バイオセキュリティ措置の向上、カモ類の若鳥へのワクチン試験成功、国境での検疫・防御強化、疾病調査及 び疫学研究の向上、及び迅速な対応による緊急発生抑制の向上。 監視・対応システムの技術的質・機能の強化を通じたインフルエンザ予防と感染流行対策の改善。 行動変容を促すための啓発・情報発信等の強化:省、県、市町村の医療従事者の研修計画の達成、社会の意識向上、情報普及、教 育、広報キャンペーンの実施。 地方における予防衛生システムの強化:人材、政策、及び体制の能力・機能向上、県レベルの予防衛生センターの新モデルのパ イロット実施の成功。 動物及びヒトの健康の両セクターにおける中央・地方レベルでの協調向上。 12ページに続く

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気候変動イニシアティブ・グラント 2012年度は総額460万ドル、6件の気候変動イニシアティブ・ グラントが終了しました。承認額に占める実行率は27%でした。 これらのグラントは、援助受入国の開発アジェンダに気候変動の 問題を盛り込むことを目的にしており、具体的には以下の取組み を支援しました。 温室効果ガス隔離プロジェクトの準備、実施、モニタリング 森林再生を通じた砂漠化の悪影響への対処 気候変動の緩和・適応政策への働きかけ 風力や太陽エネルギーなど代替エネルギー源の利用 農業セクターにおける気候変動のモデル化アプローチの主流化 水管理、生物多様性の保全、及び生計戦略のための森林生態系 の管理 気候変動グラントの実施ペースは、その実行率にも表れている通 り低調ですが、キルギス、マリ、及びイエメンにおけるグラント など前進が見られるものもあります。これらのグラントの詳細に ついては、囲み4で紹介しています。 囲み3

終了した3件の協調支援グラントの成果(続き)

司法近代化プロジェクト(アゼルバイジャン) このグラントは、制度の効率改善と国民への情報開示のた めのキャパシティ・ビルディング活動を通じたアゼルバイ ジャンの司法制度の近代化を図りました。同グラントの支 援による活動は、同国の司法セクターの強化に寄与した他、 政府による追加財源の確保や世界銀行への追加資金要請と いった決定にもつながりました。同グラントが支援した主 な活動は、以下の通りです。 革新的な裁判所の設計及び広範な分析作業の完了 同国の司法教育機関における能力及び専門性向上のため の研修ニーズ評価の完了(司法省に提言を報告) 司法省職員約700名を対象とした基礎的IT研修の実施 バクー及びグバの法律情報センター設立(既に600人 以上の市民に無料法律支援を実施済み) 司法省の管理職を対象としたキャパシティ・ビルディング (現在、全ての管理職ポストに新たに専門家を配置)

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終了した3件の気候変動イニシアティブ・グラントの成果

天山生態系開発プロジェクト - 森林再生・植林(キルギス) このプロジェクトは、森林分野における温室効果ガス(GHG)プロジェクトの準備・実施・モニタリング、ならびに国としてグロー バル炭素市場に参入するためのキャパシティ・ビルディングを図るものです。同グラントは、プロジェクト設計文書、モニタリン グ・評価システム、現地の能力強化の準備に役立てられました。同グラントが支援した主な活動は、以下の通りです。 クリーン開発メカニズムへの登録を目標としたプロジェクト設計文書、及び放棄農地の植林方法の策定 植林地の選定と社会的動員 指定当局が承認した手法に基づくベースライン調査とモニタリング計画の実施 村落自治体当局と森林地区事務所への訓練 自作農による樹木作物栽培プロジェクト(マリ) このプロジェクトは、マリにおける気候変動影響への対応と森林破壊の抑制を目的として、大規模な植林プログラムの実施を中心 に農業従事者及び農村コミュニティに安定した収入源を提供するものです。同グラントは、環境配慮型農林業の手法に関する知識 共有、植林や播種、間作のより良い技術やテクノロジーの移転を重視しながら、これらの取組みに寄与しました。主な成果は、以下 の通りです。 1,716ヘクタールに商業栽培用のアカシア・セネガレンシスを植林。 村落において苗床専門家22名、普及員8名、村落委員多数を対象に訓練を実施し、キャパシティ・ビルディングを実施。37名 の常勤雇用と350名の季節雇用を創出。受益者の45%が女性。 パイロット活動を通じたコミュニティにおける知識向上。 ドナー間の調整・協調の向上。 天水高地の農業生物多様性資源を利用した気候変動への適応(イエメン) このグラントの目的は、天水農地の気候変動に対する強靭性を高め、農業セクターにおいて気候変動モデル化アプローチを主流化 する事でした。同グラントは、以下の重要な活動への支援を通じて、大きな役割を果たしてきました。 気候情報システムに関するベースライン評価の設計 国レベルでの組織構造構築を通じた官庁(民間航空庁、気象庁、農業研究・普及機関、水資源庁、及び農業省灌漑局)のキャパシ ティ・ビルディング

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2.3 新たなPHRD技術協力プログラム

2012年度は各種テーマで合計4件、総額 940万ドルのグラント・プロポーザルの 承認申請が日本に提出されました。2012 年6月現在、5,070万ドル相当のグラント が承認されています。新PHRD技術協力の 設置以来2012年6月までに、世界銀行が 定義する6地域全体で総額1億1,000万 ドルの開発資金が動員されました。2011 ~12年度に承認されたグラントの詳細は 表1に示しています。 承認済みグラントの実施ペースは先述の 様々な理由により低調でした。実行額は 210万ドルから380万ドルへと小幅の増 加を示したものの、再編後の新プログラム を本格的に軌道に乗せるには、さらなる注 力が必要とされています。様々なプログラムにおいて計画された 活動を概観すると、資金の大半が土木関連の活動に関係していま す。これらの活動は今後数年間に実施されるため、実行レベルは 大幅な増加を示すでしょう。 Pillar I:アフリカにおける稲作の研究・生産性プログラム コメはアフリカの重要な主食と考えられています。過去20年間 にサブサハラ・アフリカではコメの消費量が急増しましたが、生 産量はそうした需要に追いついていません。その結果、輸入米へ の依存が高まっています。 世界中で食糧価格が上昇する中で輸入米の価格も上がっており、 それでなくても貧しいアフリカの数百万の人々の、食糧安全保障 上のリスクに対する脆弱性が高まりつつあります。一方、アフリ カ大陸は気候及び地理的条件からみてもコメの生産量拡大の潜在 性が高く、生産増は食糧価格の抑制につながります。 こうしたコメの潜在性を認識して、アフリカにおけるコメ生産拡 大への取組みを主導する「アフリカ稲作振興のための共同体 (CARD)」が創設されました。CARDは、国際協力機構(JICA)、 「アフリカ緑の革命のための同盟」、「アフリカ開発のための新パー トナーシップ」による協調的取組みとして、2008年の第4回ア フリカ開発会議(TICAD)開催に合わせて立ち上げられました。 CARDによる取組みは、コストの高い輸入米への依存を軽減し食 糧安全保障を向上する一方で、より広範な経済発展に寄与する力 強い農産業の構築を目指しています。 ペルー: 「障害者に配慮した都市部公共交通プロジェクト」のリマでの調印式典には、 各国から多くの報道関係者が取材に訪れました。 表1

新TAプログラムの承認件数と金額(2011~12年度)

Pillar 2011年度 2012年度 農業 2件 5,160万ドル 1件 1,496万ドル モザンビーク及び タンザニア マノ川流域諸国 (コートジボワール、ギニア、 リベリア、シエラレオネ) 災害 9件 2,240万ドル パキスタン、スリランカ、 バヌアツ、ラオス人民民主共和国、 モンゴル、ソロモン諸島、ネパール、 パプアニューギニア、キリバス 障害 5件 1,330万ドル ルーマニア、モロッコ、インド、 ギニア、ペルー

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PHRDによるこの支援は、日本の援助戦 略、重点対象である食糧安全保障、及び 食糧危機と食糧不足への世界銀行の取組 み拡大という方針に沿ったものです。 具体的にPHRD技術協力プログラムは、 「サブサハラ・アフリカ及び東南アジア 諸国での次世代コメ品種」開発のため、 本取組みのパートナーであるCGIARの プロジェクトに2,000万ドル、またア フリカにおける稲作の研究・生産性プロ グラムの支援に8,000万ドルを提供し ました。日本政府は2012年度、同プロ グラムの下でマノ川地域プログラム (コートジボワール、ギニア、リベリア、 シエラレオネ)、モザンビーク、及びタン ザニアを対象とした3件、総額6,670 万ドルのグラントを承認しました。 囲み5

タンザニアのコメ生産力を引き出す

農業専門家によると、アフリカ東部のタンザニアは、コメの生産に適した理想的な 気候と地形に恵まれています。事実、この国は近いうちにマダガスカルを抜いてア フリカ大陸最大のコメ生産国となる可能性があります。タンザニア・デイリー・ ニュースの最近の記事によると、タンザニアのコメ生産高は年間100万トン以上 で、年間430万トンのマダガスカル(1位)に次ぐ生産規模となっています。 専門家はまた、タンザニアがコメ輸出国としても高い潜在性を備えていると指摘して います。コメ輸出により、タンザニアの民間セクターを拡大し、経済開発を支え、公 共サービスやインフラ拡充の財源となる税収増加にも貢献する事が可能となります。 タンザニア南部農業成長回廊のコーディネーター、メアリー・シェット博士は、ダ ルエスサラームで開催された農業会議において「コメは、世界的に需要の高い穀物 です。タンザニアのコメ生産量が国内消費需要を上回り、重要な輸出国となるよう 望んでいます」と述べました。 1,425万ドルのPHRD技術協力グラントを通じて、タン ザニアを一大コメ生産国とするための支援が行われて います。同グラントは2012年1月に資金提供が承認 され、1万5,400ヘクタールの農地に広がる20の灌 漑システムで稲作を行う3万3,000人の生産者への訓 練を支援しています。重点対象地域は、モロゴロ州、キ リマンジャロ州、ムベヤ州、タボラ州、セントラル州、 ムトワラ州の6つの灌漑地域で、主な重点項目は以下 の通りです。 より多くの農業従事者を対象に、改良技術や投入財 (干ばつや病害に耐性のある品種や肥料、近代的な農 法、収穫後手順など)へのアクセス拡大 農業従事者による市場アクセス確保とアグリビジネスの効率向上(品質管理の強 化、倉庫証券システムの拡大、注文処理) 灌漑農業の拡大(地区の灌漑技術者、村落普及員、及び農業従事者への教育・訓 練を通じた知識・技能強化) 同プロジェクトはまだ実施の初期段階ではあるものの、目覚ましい進捗ぶりを上げ ています。日本と世界銀行による最近の現地視察では、現地の農業従事者や農業普 及員、担当職員が、同プロジェクトによる生産性向上及び生産量拡大の実現に向け て並々ならぬ意欲を示しました。 写真提供:Scott Wallace タンザニアで水田を耕す人

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Pillar II:災害の削減と復旧 世界的に災害リスクの削減と復旧への取組み強化に軸足が移りつ つありますが、日本はこうした動きを大きく支援しています。 日本の技術専門家、実務家、及び研究者は、高まる災害の脅威に対 して今後の方向性を世界に示し、最新の取組みを主導しています。 PHRDの第2のPillarである「災害の削減と復旧」は、こうした 世界中の優良事例や「兵庫行動枠組 2005-2015」などで定めら れた国際的な防災の基準や枠組みを指針としています。 このテーマにおけるPHRDの活動では、援助受入国の災害強靭性 強化という複雑な課題に効果的に取り組む上で、防災グローバ ル・ファシリティ(GFDRR)を活用しています。GFDRRの支援 は、政府やその他の関係者からの需要を受けて、世界銀行が技術 協力や助言を提供するもので、PHRDの重点支援対象である政府 によるパイロット・プロジェクトの実行や能力開発を補完しま す。GFDRRとPHRDのいずれにおいても援助受入国政府のオー ナーシップとリーダーシップが中心となっています。このパート ナーシップを通じて、短期的な知識不足に対する迅速な対応と、 災害に強い国づくりという長期的な取組みの支援が行われてい ます。 同プログラムが本格的に始動して2年目を迎えた2012年度は、 3件のプロジェクト・プロポーザル(総額640万ドル)の承認申 請が日本政府に提出されました。以下の通り、いずれも日本と世 界銀行の優先プログラム項目に沿ったものです。 バングラデシュ: 地震に対する強靱性向上による安全な都市づくり(300万ドル) このプロジェクトは、ダッカをはじめとする地震に脆弱な大都市 に対し、技術指導を行う事を目的としています。同プロジェクト の活動としては、技師、石工、及び鉄筋工を対象とした、災害に強 い建築のための研修と認証や建築基準法の遵守徹底を通じた強靱 性向上が挙げられます。 キリバス: 防災適応プロジェクト(198万4,000ドル) このプロジェクトは、淡水供給や沿岸インフラへ の重点的取組みを通じて、キリバスにおける自然 災害や気候変動の影響に対する強靭性の強化を目 的としています。PHRDのグラントは護岸延長を 支援し、過去25年以上にわたる海面上昇や波の影 響、極端な天候や天候変動から影響を受けやすい 官民両セクターの資産を保護します。 ブータン: 地震リスクに対する強靱性の強化(140万ドル) このプロジェクトは、ブータンにおける地震の危 険性に対する理解を深め、重要な建造物やインフラの脆弱性評価 を実施するための能力強化を行い、重要建造物を建設、修復、改 修する能力を強化する事を目的としています。全般的目標は、地 震リスクに対するこの国の強靱性を強化する事です。 キリバスのタラワにおける 堤防の設置 写真提供:Lauren Day

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PHRD技術協力プログラム

PHRDの「災害の削減と復旧」プログラムが2010年12月に始 動してから2012年度末までの間に、日本政府は東アジア、南ア ジア、及び太平洋諸島の9カ国を対象に、合計9件のグラント・ プロポーザル(総額2,237万ドル)を承認しました(付録II:英 語版)。 Pillar III:障害と開発 ミレニアム開発目標(MDGs)は、世界の貧困に対する協調的取 組みです。しかし、MDGの指標は、世界全体で10億人に上ると される障害者については何らコミットしていません。専門家や開 発実務家は、障害者には教育、雇用、 保健医療、及び社会・法的 支援制度への平等なアクセスが確保されていないとの見解で一致 しています。その結果、障害者の貧困率は、社会全体の平均と比べ、 高くなっています。世界銀行の報告書1によると、世界人口に占 める障害者の割合は1割である一方、最貧困層に占める障害者の 割合はそれを大幅に上回ると見られます。 MDGsから抜け落ちているこの点に取り組む方法を見いだす事 は、日本政府がPHRD技術協力プログラムの再編を決断した主な 理由の一つでした。 PHRD技術協力「障害と開発」プログラムの目的は以下の通りです。 グラント受領国における障害に関連する問題への理解深化に寄 与する。 この問題に対する適切な政策と開発施策を策定する。 障害者に直接恩恵をもたらすプログラムに資金を提供する。 「障害と開発」プログラム を通じてPHRDチームは、 世界銀行人間開発ネット ワーク内に置かれた「障害 と開発」チームと連携しま した。この強力で効果的な パートナーシップにより、 世 界 銀 行 の 専 門 知 識 と PHRDの資金提供アプロー チが結集されました。 PHRDの「障害と開発」プログラムが2年目を迎えた2012年度 には、1件のプロポーザルの承認申請が提出されました。このプ ロポーザルは、299万8,000ドルの障害者の社会・経済的包摂 プロジェクト(ジャマイカ)で、以下の2つを目的としています。 18~36歳の貧しく若い成年障害者を対象に、作業スキルの向 上を図り、雇用可能性を改善 0~6歳の障害児童を対象とした特別支援教育の充実 PHRDの「障害と開発」プログラムが2011年1月に始まってか ら2012年6月末までの間に、日本政府は東アジア・大洋州地域 以外の全地域の5カ国を対象に、5件のグラント・プロポーザル (総額1,334万ドル)を承認しました(付録III:英語版)。 Pillar IV:その他の活動 Pillar IVは、日本政府と世界銀行の間で合意された新たな課題に 柔軟に対処するプログラムです。PHRD技術協力プログラムの再 編以降、本Pillarで承認されたのは、太平洋諸国大災害リスク評 価融資イニシアティブの1件です。同グラントは2010年度に開 始し、2012年度に終了しました。同グラントの成果と実績は 2011年度のPHRD年次報告で説明されています。 1 「障害に関する世界報告書 2011年」(世界銀行と世界保健機関 (WHO)による共同報告書) 障害者向け学校の入口にて (ルーマニア) 写真提供:Flore de Préneuf

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第3章

キャパシティ・ビルディング、

及びパートナーシップ・プログラムを通じた人材育成

3.1 はじめに

日本政府は、PHRD資金を通じて、日本/世界銀行共同大学院奨 学金制度(JJ/WBGSP)及び日本/インドネシア大統領奨学金 プログラム(JIPS)という2件の人材育成プログラムを支援して います。

3.2 日本/世界銀行共同大学院奨学金制度

JJ/WBGSPの目的は、途上国の経済・社会開発の分野で優秀な 専門家集団を育成する事にあります。この目的のために、世界銀 行借入国のミッドキャリア層を対象に大学院教育を受ける機会を 提供しています。 JJ/WBGSPプログラムには、修士号取得に向けた、通常プログ ラムとパートナーシップ・プログラムの2つがあります。 通常プログラムの下、途上国出身の対象者は、希望する修士課程 を受講することができます。同プログラムでは提携大学リストを 設置していますが、入学先の大学や国は厳密に規定されてはいま せん。 また、JJ/WBGSPは、世界各国の指定大学との間で設けている 15件のパートナーシップ・プログラムを通じ、経済政策管理、 インフラ管理、税制といった開発の主要分野における専門教育を 提供しています。 2012年度は、本プログラムのアウトリーチ活動の一環である奨 学生・同窓生の開発分野能力向上ネットワーク(ASCEND)・プ ログラムにより、JJ/WBGSP奨学生と同窓生の間の知識共有と ネットワーキングの促進が図られました。具体的には、日本への 研究旅行が実施された他、東京、オランダ、及びワシントンDC でイベントが開催されました。 また、同年度には、同プログラムのオンライン・コミュニティの 参加者数が1,300人を上回りました。同コミュニティは、JJ/ WBGSP奨学生、元奨学生、研究者、そして日本政府及び世界銀 行のステークホルダーを結び付けるプラットフォームです。今後 も、元奨学生の積極的関与や同奨学金プログラムの成果全般を強 化する手段として活用される予定です。 囲み6

JJ/WBGSPのハイライト

1987年の設立以来、世界銀行加盟国にある有数の大学 で、開発分野を専攻する学生を対象に5,066件の奨学 金を提供してきました。この内1,448件の奨学金は、 パートナーシップ・プログラムの下で、様々なパート ナー機関の研究のために活用されました。 2012 年 度、日 本 政 府 は JJ/WBGSP プ ロ グ ラ ム に 2,031万ドルを提供しました。これにより、通常プログ ラムの下で147名、パートナーシップ・プログラムの 下で新たに83名が奨学金を受領しました。

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キャパシティ・ビルディング、及びパートナーシップ・プログラムを通じた人材育成

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3.3 日本/インドネシア大統領

奨学金プログラム

2008年に導入されたJIPSは、インドネシア国家教育省の大統 領奨学金プログラムを支援しています。日本政府から1,000万 ドルのグラントを受け、設立以来43人の奨学生を支援してきた JIPSは、大学職員の資質と経験の向上、高等教育の場で職に就く 新たな人材の発掘、国内外の学術パートナーシップの構築を支援 しています。2013年度にはJIPSの卒業生12人が論文提出後に 口頭試問に合格し、インドネシアで高等教育機関の教員職に就き ました。

3.4 日本/世界銀行

パートナーシップ・プログラム

日本・世界銀行パートナーシップ・プログラムは、以下の活動を 支援します。 主要な開発問題に関して、日本のステークホルダーと世界銀行 とのパートナーシップを構築 国際的開発問題に対する日本国民の関心を喚起 援助協調イニシアティブの強化 囲み7に示した通り、2012年度には日本政府は同プログラム下 で8件のグラント(総額860万ドル)を承認しました。この内 610万ドルは、国際保健の課題と大規模災害に関連する3件の新 規プログラムに割り当てられました。 大規模災害からの教訓 世界的な知識の共有と交流を図る同プログラムに対して、2012 年度の日本/世界銀行パートナーシップ・プログラムを通じて 100万ドルのグラントが供与されました。同プログラムの目的は 以下の通りです。 多重災害及び防災・災害対応策に関する最新知識の特定 (2011年の東日本大震災及び津波から得られた教訓の文書化 など) 特に日本、東アジア、及び太平洋諸島を中心とした、イベント やオンライン型実践コミュニティの設置を通じた政府とコミュ ニティ間における知識の共有と交流の促進(脆弱性評価、現行 のリスク低減対策に対する評価、強靭性強化のための健全な政 策立案の指導など) ワークショップや出版を通じた、知見や成果のより広範な発信 囲み7

パートナーシップ・グラント

2012年度は以下の8件のグラントが承認されました。 大規模災害からの教訓: 知識共有・交流プログラム(100万ドル) 途上国における ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成の課題と機会 (407万5,000ドル) 母子保健の評価に基づく教訓(100万ドル) 国際開発賞(3年で126万ドル) 世界銀行/日本パートナーシップ採用支援基金 (第3期、733万円) 世界銀行/日本パートナーシップ採用支援基金 (第4期、940万円) 世界銀行/日本政策対話強化支援基金 (第6期、3,460万円) 2012年東京総会: 世界銀行東京事務所アウトリーチ支援基金(5,000万円)

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キャパシティ・ビルディング、及びパートナーシップ・プログラムを通じた人材育成

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成の課題と機会 この新規プログラムは、途上国の人々の健康状態改善を目的とし た保健システム強化に主眼を置き、国際保健課題を支援するもの です。同プログラムは日本/世界銀行パートナーシップ・プログ ラムの下、2012年度に408万ドルのPHRDグラントの承認を 受けました。具体的取組みは、以下の通りです。 効果的な医療財政政策を通じた保健サービス提供範囲の包摂的 かつ持続可能な拡大 途上国での深刻な医療従事者不足に特に注目し、世界的な人手 不足に対処する保健人材政策及びプログラムの強化 政策やプログラムに関する体系的分析の支援 協議や知識交流の促進 途上国における保健政策やプログラムの効果改善に向けた、教 訓の特定と共有 母子保健の評価による教訓 このプログラムは、独立評価グループ(IEG)の母子保健(MCH) 分野におけるインパクト評価の作業を支援しており、母子保健の 成果改善に向けた世界銀行の貢献について理解を深める事がその 目的です。同プログラムは、日本/世界銀行パートナーシップ・ プログラムの下、2012年度に100万ドルのグラントの承認を 受けました。主な取組みの内容は、以下の通りです。 MCH関連分野のインパクト評価のエビデンスの体系的レビュー 及び総括 厳密な事後インパクト評価 各国事例研究 世界銀行の取組み一覧のレビュー 最新のインパクト評価技術・手法に関する内部研修

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4.1 はじめに

日本政府は、PHRDを通じて、日本/世界銀行スタッフ・ 長期コンサルタント(ETC)プログラムなどの世界銀行 が運営管理する複数のプログラムを支援しています。ま た、PHRDは世界銀行が管理するその他の信託基金にも 貢献しています。

4.2 日本PHRDスタッフ・ETCプログラム

日本PHRDスタッフ・ETCグラント・プログラムは、日本人の、 職員あるいは長期コンサルタント(ETC)としての世界銀行への 採用を支援するものです。本プログラムは以下の3つのカテゴ リーでの採用を対象としています。 ETC 2005年度に導入された本カテゴリー は、任期後に世界銀行の業務予算から給 与を受ける有期雇用、又は無期雇用職員 の候補者となる優秀な人材が対象。ETC の任期は1年間で、2年目の延長が可能。 有期雇用職員 最初の2年間を当初の任期とし、一定の 条件を満たせば、3年目の延長が可能。 無期雇用職員 支援期間は、世界銀行の標準的な試用期 間と同じく原則最長2年間。 2012年度、日本政府はPHRDを通じて有 期雇用職員及びETCについての申請46件 (950万ドル)を承認しました(前年度の 承認件数は48件)(表2)。 2012年度のグラント総額は前年度比12%増となりました。図4 は、2001-12年度におけるカテゴリー別のグラント承認件数です。

第4章

PHRDが支援するその他のプログラム

表2

PHRDスタッフ・ETCグラント承認件数(2010~12年度)

(単位:100万ドル)

2010年度 2011年度 2012年度 カテゴリー 件数 金額 件数 金額 件数 金額 スタッフ 13 $ 5.2 17 $ 5.5 19 $ 6.7 ETC 18 1.6 31 3.0 27 2.8 合計 31 $ 6.8 48 $ 8.5 46 $ 9.5 図4

PHRDスタッフ・ETCグラントの承認件数(2001-2012年度)

無期雇用 有期雇用 ETC 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 グ ラ ント 件 数 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 年度

参照

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