タイトル
Title
異性との交際が不活発な男性・女性はどのような人々か : 未婚者調査
を用いたロジスティック回帰分析の結果から(Who are People Who
Cannot Become Intimate With the Opposite Sex? : Findings From
Survey Data of the Unmarried People Through Logistic Regression)
著者
Author(s)
桶川, 泰
掲載誌・巻号・ページ
Citation
国際文化学=Intercultural Studies Review,26:49-65
刊行日
Issue date
2013-03-25
資源タイプ
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
版区分
Resource Version
publisher
権利
Rights
DOI
JaLCDOI
10.24546/81004803
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004803
PDF issue: 2018-12-11
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異性との交際が不活発な男性・女性はどのような人々か
―未婚者調査を用いたロジスティック回帰分析の結果から
Who are People Who Cannot Become Intimate With the
Opposite Sex?―Findings From Survey Data of the
Unmarried People Through Logistic Regression
桶川 泰 OKEGAWA Yasushi
概要
未婚化・晩婚化をめぐる議論の中で、現代社会は「異性との交際が活発化している」と いう指摘がなされている一方で「異性との交際が不活発になっている」という指摘もされ ている。 本稿では、こうした「現代日本社会では異性との交際が、活発しているのか、不活発な 状態になっているのか」よりも、異性との交際が不活発な男性・女性はどのような人々な のか。もしくは異性との交際に対する意欲(結婚意欲、恋愛意欲)が強い(弱い)男性・ 女性はどのような人々なのかを、統計的データを用いて明らかにしていくことを試みた。 まず、異性との交際が不活発な男性・女性として、交際している相手がおらず、かつよ く話をする独身の異性もいない人々を従属変数としロジスティック回帰分析を行った。一 方、異性との交際に対する意欲のあり方に関しては、「結婚を伴う異性との交際に対する意 欲(結婚意欲)を持つ人々」「結婚を伴わない異性との交際に対する意欲(恋愛意欲)を持 つ人々」「異性との交際そのものに対して意欲のない人々」に分類し、「結婚を伴わない異 性との交際に対する意欲を持つ人々」を基準カテゴリーとし、多項ロジスティック回帰分 析を行った。キーワード
未婚化、晩婚化、異性との交際、ロジスティック回帰分析I はじめに
50 本稿の研究の目的は、異性との交際が不活発な男性・女性はどのような人々なのか。も しくは異性との交際に対する意欲(結婚意欲、恋愛意欲)が強い(弱い)男性・女性はど のような人々なのかを、統計的データを用いて明らかにしていくことにある。 今日、少子化の進行に相俟って未婚化・晩婚化をめぐる議論が活発になり、如何なる人々 が如何なる結婚条件・結婚意欲を持っているのかが考察されている1)。 また、未婚化・晩婚化現象が進行する原因究明も試みられている。ゲーリー・ベッカー は、女性の経済的自立が結婚による性役割分業のメリットを低下させた、という説明を提 起している(Becker 1973, 1981)。その影響を受けて、日本社会でも大橋照枝(大橋 1993) を中心にして、「女性が結婚に囚われない生き方をするようになった」という「女性の自立 説」が主張されている。 しかし、近年では「経済の低成長によって結婚しても生活水準の向上を見込めなくなっ た」点が主に議論されるようになっている。例えば山田昌弘は、経済の低成長にも拘らず、 女性の「上昇婚志向」「専業主婦志向」(「自分は育児専念、夫は仕事+育児」志向)が現代 においても強い(結婚相手の男性がいなくなっている)点を未婚化・晩婚化の原因として いる(山田 1996 1999)。また加藤彰彦は、マクロ統計データと経済成長の関連から未婚化 の主因は経済成長率の持続的な低下にある(経済的に容易に結婚可能な男性の人口規模が 漸進的に縮小する)ことを明らかにしている(加藤 2011)。 こうした未婚化・晩婚化と経済変動の関連性は日本のみならず、欧米でも同様の指摘が されている。リチャード・イースターリンの「相対所得仮説」では、若い男性の経済力が 親元の生活水準よりも高いならば結婚し、低いならば結婚を遅らせる事が想定されている (Richard 1980)。またヴァレリー・オッペンハイマーも職探し理論を配偶者選択過程の分 析に応用し、結婚相手の選択と経済的地位の関連性を指摘している(Oppenheimer 1988)。 未婚化・晩婚化現象の原因が経済の低成長と関連性のある事は、「女性の自立説」よりも 多くの論者に共有されるようになっている2)。 もっとも、未婚化・晩婚化の原因は何も経済的要因だけではない。親密性(異性との交 際)のあり方が変容した点にも理由は求められている。それでは親密性の変容については 如何なる見解が提示されているだろうか。 阿藤誠や金子隆一は、見合い結婚が減少したにも拘らず、現代日本社会において西欧型 の自由恋愛市場を支えるデート文化が十分に発達していないがために、未婚化・晩婚化が 生じるという論を(未婚者の半数が、「恋人だけでなく異性の友人もいない」という出生動 向基本調査を根拠にして)展開している(阿藤 1989, 金子 1994)。前述した加藤も、阿藤や 金子と同様に出生動向基本調査から、日本の未婚者たちの多くが個人主義的にパートナー をみつけ出して結婚するという性向を欠いていることを指摘している。また30 歳代未婚者 の約90%が「いずれ結婚するつもり」と回答している結果から、独身のまま恋愛やパート ナー関係をエンジョイしている「非婚派」はごくわずかであることも論じている(加藤 2011)。 逆に山田は、現代において異性との交際が活発化しており、「結婚前の親密性の水準が高 くなっている(結婚しなくてもセックスできる、自由に男女が付き合える)」点と「結婚す ることによって結婚前よりも親密性の満足水準が高くなる自明性が喪失した」点を原因と して挙げている (山田 2000) 3)。また異性との交際の自由化は、「魅力」のある人と「魅力」
51 のない人の階層差を生じさせ、「選ばれない」人が生じてくる点も未婚化・晩婚化が進行す る理由として挙げている(山田 1996)。 このように現代では「異性との交際が活発化している」「異性との交際が不活発になって いる」ために未婚化・晩婚化が生じているという議論が展開されている。それでは、こう した対立するかにみえる見解を如何に捉えていけばよいのだろうか。 工藤豪は、どちらの説明も間違っているわけではなく、異性との交際の活発化に関わっ ているのは「モテる層」であり、異性との交際に質的変化がないのは「モテない層」であ るという指摘をしている(工藤 2003)。 そうした点では、現代社会において「異性との交際が活発化している」「異性との交際が 不活発になっている」かよりも、異性との交際の不活発さがどのような社会的要因によっ て低くなるのか(高まるのか)を明らかにしていく必要がある。もしくは、「現代人が結婚 しないのは結婚せずに恋愛を楽しんでいる」かよりも、恋愛意欲(結婚を伴わない交際)、 結婚意欲(結婚を伴う交際)、さらには交際に対する意欲のなさは、どのような社会的要 因と関わっているのかも明らかにしていく必要性があるだろう。 本稿では、SSJDA(東京大学社会科学研究所付属社会調査・データアーカイブ研究セン ター)に所蔵されている「結婚相談・結婚情報サービスに関する調査」4)の未婚者を対象と して行われた調査結果を用いて、多変量解析を行い、それらの問題を解き明かしていくこ とを試みる。
II データと分析の内容
2.1 従属変数とダミー変数化 まず3.1 では、未婚者(離別・死別を含まない)3694 人(男性 1909 人、女性 1785 人) を対象とし、異性との交際が不活発な状態とその要因をロジスティック回帰分析によって 明らかにすることを試みた。阿藤や金子、加藤は、異性との交際が不活発な人々として、 恋人としても友人としても交際している異性がいない男性・女性を想定しているが、「結婚 相談・結婚情報サービスに関する調査」では、「友人として交際している異性がいるかどう か」について尋ねた質問項目はない。その代わりに、「特定の交際相手ではないが、よく話 をする独身の異性(Q1.8)」について尋ねた質問項目は存在している。 そのため本稿では、異性との交際が不活発な男性・女性として、交際している相手がお らず、かつよく話をする独身の異性もいない(「1. 大勢いる」「2.多少いる」「3.あまりいな い」「4.ほとんどいない」の内、3 と 4 を選択している)人々を従属変数にしている。また 分析の際には、20 歳代と 30 歳以上に分けて行った。 一方3.2では、「新たな交際の意向」(Q1.7)に関する質問項目に対して、「1.結婚したいの で交際相手が欲しい」「2.結婚したい人とであれば交際したい」に回答した人を「結婚を伴 う交際に対する意欲(結婚意欲)を持っている人々」、「3.特定の交際相手はほしいが、結婚 は考えていない」に回答した人を、「結婚を伴わない交際に対する意欲(恋愛意欲)を持っ ている人々」、「4.今は、交際相手は欲しくない」「5. 交際相手は欲しくない」に回答した人 を「交際そのものを欲していない人々」として分類した。そして恋人がいない未婚者244752 人(男性1372人、女性1075人)を対象として、「結婚を伴わない交際に対する意欲」「結 婚を伴う交際に対する意欲」「交際そのものに対する意欲のなさ」がどのような社会的要 因によって強まるのか、弱まるのかを多項ロジスティック回帰分析によって明らかにする ことを試みた。 2.2 独立変数に用いる変数・尺度 本稿では、異性との交際が不活発な男性・女性はどのような人々なのかを明らかにして いくが、同様の研究は中村真由美・佐藤博樹の研究(2010)でも行われている。中村・佐 藤の研究では、20 歳代の未婚者を対象にして【経済的資源】【独身異性への距離的なアクセ ス機会】【独身異性の時間的なアクセス機会】【対人関係能力】といった社会的要因(社会 的属性・環境・能力)と「現在恋人がいるかどうか」の関連性を、ロジスティック回帰分 析によって考察している。それぞれの具体的な項目として、【経済的資源】では学歴、収入、 職業、就業状態、企業規模、【独身異性への距離的なアクセス機会】では職場内での独身異 性の人数、職場以外で仕事上独身の異性と出会う機会の多さ、【独身異性の時間的なアクセ ス機会】では午後 8 時以降の残業の頻度、勤務日でない日の出勤の頻度、【対人関係能力】 では友人との付き合いの頻度(月1~2 回程度以上友人との付き合いがあるか)が選択され ている5)。 中村・佐藤の研究が、「恋人がいる」状態を従属変数に取っているのに対して、本稿の研 究では、「交際している相手がおらず、かつよく話をする独身の異性もいない」状態を従属 変数に取っている。中村・佐藤の研究よりも「異性との交際がより不活発な状態」(より恋 愛から遠ざかっている状態)が従属変数に据えられていると言っていいだろう。 独立変数の取り方に関しては、中村・佐藤の研究を参照している。まず、「交際している 相手がおらず、かつよく話をする独身の異性もいない」状態かどうかについては、経済的 資源(収入、就業状態、学歴)、独身異性への距離的なアクセス機会(「職場内での独身異 性の人数」「職場以外で仕事上、独身の異性と出会う機会」「習い事・趣味・娯楽での活動 先の異性の人数」)、対人関係能力(「気軽に相談できる相手の有無」)を取っている6)。 そして交際意欲に関しては、友人との付き合いの頻度、職場の同僚・上司との(仕事以外 での)付き合いの頻度(対人関係能力)、年齢(20 歳代前半、20 歳代後半、30 歳代前半、30 歳代後半、40 歳代前半)、過去における特定の交際相手の有無を付け加えている。友人との 付き合いの頻度、職場の同僚・上司との(仕事以外での)付き合いの頻度を「異性との交際の 不活発な状態」に対する独立変数に用いなかったのは、そもそも付き合いの相手に独身異 性が含まれている可能性があるからである。 a) 経済的資源 収入、学歴に関しては、中村・佐藤の研究と同様の操作化を行った。すなわち、収入で は「1. 100 万円未満」「2. 100~300 万円未満」「3.300~400 万円未満」「4. 400~600 万円 未満」「5. 600~800 万円未満」「6. 800~1,000 万円未満」「7. 1,000 万円以上」のそれぞれ の階級値を対数化した。学歴に関しては「短大・高専・専門」「中学・高校」「大学・大学 院」の3 段階に分け、あてはまる場合は 1、あてはまらない場合は 0 を与えるダミー変数化
53 を行っている。本稿では「短大・高専・専門」をリファレンスカテゴリーとしている。 就業状態については、質問項目に載せられている「1.正規の社員・職員」「2.パート・ア ルバイト(フリーター)・嘱託」(リファレンスカテゴリー)「3.派遣」「4.自営業主・家族従業 者・内職」「5. 無職・家事」「6.学生」「7.その他」をそのままダミー変数化した7)。 b)独身異性へのアクセス機会 中村・佐藤の研究と同様に、「職場内での独身異性の人数」「職場(社内)以外で仕事上、独 身の異性と出会う機会」に関しては、「1.多い」「2.やや多い」「3.少ない」「4.ほとんどいな い」を再コード化し、ほとんどいないに1、少ないに 2、やや多いに 3、多いに 4 の点数を 与えた。さらに本稿では、独身異性へのアクセス機会として「習い事・趣味・娯楽での活 動先の異性の人数」も変数として付け加えている。まず「活動をほとんどしない」、してい ても「活動先に独身の異性があまりいない」「全くいない」場合には1。活動先に独身の異 性が「多くいる」「ある程度いる」場合で、月に1~2 回活動している状況には 2、月に 3~ 4 回活動している状況に 3、月に 5 回以上活動している状況には 4 の点数を与えている。 c) 対人関係能力 中村・佐藤の研究では、友人との付き合いの頻度を、対人関係能力を測るための尺度と しているが、本稿でもその尺度を用い、職場の同僚・上司との(仕事以外での)付き合いの頻 度と気軽に相談できる相手の有無も付け加えている。人と人との付き合いの経験や気軽に 相談できる相手の存在は対人関係を学ぶ上で役に立つ側面が存在すると考えられる8)。 変数化作業としてはまず、「友人との付き合いの頻度」「職場の同僚・上司との付き合い の頻度」(Q13.1.2)では、「1.月に 5 回以上」「2.月に 3~4 回」「3.月に 1~2 回」「Ⅳ.ほと んどしない」に対して、ほとんどしないに1、月に 1~2 回に 2、月に 3~4 回に 3、月に 5 回以上に 4 の点数を与えた。気軽に相談できる相手の有無(Q8.1)に関しては、気軽な相 談相手がいる(「1.多くいる」「2.少しいる」)場合には 1、いない場合には 0 を与え、ダミ ー変数としている。 d) 年齢・交際経験の有無 年齢では 20 歳代前半(20 歳~24 歳)、20 歳代後半(25 歳~29 歳)、30 歳代前半(30 歳~34 歳)、30 歳代後半(35 歳~39 歳)、40 歳代前半(40 歳~44 歳)に分類し、20 歳代 前半をリファレンスカテゴリーとしてダミー変数化を行った。交際経験の有無も、過去に 交際経験がある場合には1、ない場合には 0 を与えるダミー変数化を行っている。 なお使用するデータの分布の特徴をまとめたのが表1 である。まず収入では、男性が「100 万円未満」から「400~600 万円未満」までに集中しているのに対して、女性では「100 万 円未満」から「300~400 万円未満」にほぼ集中している。女性は、男性よりも経済的に不 平等な地位に置かれていると言っていいだろう。次いで、独身異性への距離的なアクセス 機会(「職場内での独身異性の人数」「職場以外で仕事上、独身の異性と出会う機会」「習い 事・趣味・娯楽での活動先の異性の人数」)では、「ほとんどいない」「少ない」が男女とも
54 に過半数を占めている。 他には友人との付き合いの頻度を見てみると、男女とも「月に1~2 回」以上するのが大 半なのに対して、職場の同僚・上司との(仕事以外での)付き合いの頻度では男女とも「ほと んどしない」が半数以上を占めている。そして気軽な相談相手の有無は、男性では60%が いるのに対して、女性では80%がいるというジェンダー差が見られる結果になっている。 表1 使用するデータとその分布 男性(全 員) 交際相 手がい ない男 性 女性(全 員) 交際相 手がい ない女 性 年齢 20~24 歳 25~29 歳 30~34 歳 35~39 歳 40~44 歳 16.10% 23.40% 22.70% 22.40% 15.40% 13.5% 20.3% 23.3% 25.4% 17.5% 18.6% 25.6% 23.3% 20.4% 12.0% 17.8% 21.7% 22.5% 23.3% 14.7% 収入 100 万円未満 100~300 万円未満 300~400 万円未満 400~600 万円未満 600~800 万円未満 800~1000 万円未満 1000 万円以上 20.90% 27.10% 19.60% 22.70% 6.80% 1.70% 1.20% 21.8% 27.3% 18.7% 22.5% 6.9% 1.8% 1.0% 27.3% 42.7% 17.0% 9.7% 2.4% .7% .2% 28.9% 42.6% 15.7% .7% .4% 5% 2% 学歴 中学・高校 短大・高専・専門 大学・大学院 28.30% 15.80% 55.90% 28.6% 15.7% 55.8% 24.0% 34.0% 42.0% 23.7% 36.8% 39.4% 就業状態 正規の社員・職員 パート・アルバイト 派遣 自営業・家族従業者 無職・家事 学生 その他 54.00% 9.20% 3.10% 12.20% 6.40% 13.30% 1.80% 51.8% 9.8% 3.3% 13.8% 7.7% 12.0% 1.7% 42.0% 18.0% 10.7% 6.9% 8.3% 11.9% 2.2% 39.9% 18.8% 11.7% 6.6% 9.3% 11.0% 2.7% 職場内での独身異性の人 数 ほとんどいない 少ない やや多い 多い 37.6% 38.3% 16.4% 7.8% 42.9% 37.6% 13.7% 5.8% 38.0% 34.3% 15.7% 11.9% 41.5% 35.3% 13.5% 9.7%
55 職場(社内)以外で仕事上、 独身の異性と出会う機会 ほとんどない 少ない やや多い 多い 45.4% 31.8% 19.1% 3.7% 50.6% 31.7% 15.2% 2.6% 47.5% 27.0% 20.8% 4.8% 52.2% 26.8% 17.4% 3.6% 習い事・趣味・娯楽先の 異性の人数 1 点 2 点 3 点 4 点 79.9% 4.5% 6.4% 9.2% 82.8% 3.5% 5.9% 7.8% 77.5% 4.8% 6.9% 10.8% 80.6% 3.8% 6.4% 9.2% 友人との付き合いの頻度 ほとんどしない 月に1~2 回 月に3~4 回 月に5 回以上 18.7% 41.3% 25.6% 14.4% 22.0% 41.4% 23.6% 13.0% 11.1% 46.4% 27.7% 14.8% 12.5% 45.7% 27.5% 14.3% 職場の同僚・上司との(仕 事以外での)付き合いの頻 度 ほとんどしない 月に1~2 回 月に3~4 回 月に5 回以上 53.5% 34.2% 9.1% 3.2% 57.7% 32.1% 7.5% 2.7% 52.9% 37.9% 6.8% 2.4% 57.3% 34.5% 5.9% 2.3% 気軽な相談相手の有無 いない いる 40.0% 60.0% 45.7% 54.3% 19.8% 80.2% 23.8% 76.2%
III 分析結果
3.1 異性との交際の不活発性とロジスティック回帰分析 表 2・表 3 は、異性との交際が不活発な状態(恋人もよく話をする独身の異性もいない状 態)をロジスティック回帰分析した結果をまとめたものである。 ロジスティック回帰分析は、従属変数がダミー変数(0/1 の二項カテゴリー)の時に用い る統計的手法である。ここでは「交際している相手がおらず、かつよく話をする独身の異 性もいない」状態を1 とし、そうでない(「恋人がいる」か「よく話をする独身異性がいる」) 状態を0 としている。B は回帰係数であり、その独立変数に対する従属変数の効果を表す。 また、統計的に有意かは有意確率 5%未満で判断している。有意確率は、「データの偏り が偶然生じる確率(従属変数と独立変数との間に本当は関連性がないのに、今回の分析結 果が得られた確率)であり、一般的には 5%未満でその独立変数と従属変数には関連性があ るとされている。 欠損ケースを除き、実際に分析に使用したサンプル(N)は、20 歳代の男性 747 人、30 歳以上の男性1141 人、20 歳代の女性 783 人、30 歳以上の女性 992 人である。 分析結果を見ると経済的資源では、20 歳代男性において「正規の社員・職員」であるこ とが異性との交際を不活発な(恋人もよく話をする独身の異性もいない)状態になる確率 を低め、30 歳以上では収入の高さが確率を低めている。30 歳以上の女性でも、収入の高さ56 との関連性を見出せる。 表2 異性との交際の不活発性とロジスティック回帰分析の結果:男性 20 歳代 30 歳以上 B 標準誤差 B 標準誤差 収入 -.300 .190 -.574 .128✽✽✽ 短大・高専・専門 中学・高校 大学・大学院 ―――――― -.041 .321 -.078 .273 ―――――― .110 .200 .222 .191 パート・アルバイト 正規の社員・職員 派遣 自営業主・家族従業者 無職・家事 学生 その他 ―――――― -.745 .347 ✽ .120 .585 -.386 .521 .797 .504 -.498 .345 -.556 .814 ―――――― .041 .276 .290 .442 -.104 .297 .030 .392 -.9301.127 -.099 .562 職場内での独身異性の人数 職場以外で仕事上、異性と出会う機会 習い事・趣味・娯楽先の異性の人数 -.200 .104 -.843 .128✽✽✽ -.230 .107✽ -.399 .096✽✽✽ -.446 .092✽✽✽ -.357 .083✽✽✽ 気軽な相談相手の有無 -1.277 .186✽✽✽ -1.162 .138✽✽✽ 定数 4.404 .987✽✽✽ 5.718 .746✽✽✽ N 747 1141 -2 対数尤度 746.010 1290.036 自由度 13 13 カイ2 乗 216.933 291.262 Nagelkerke R2 乗 .348 .30 ✽✽✽p<0.001 ✽✽p<0.01 ✽p<0.05 表3 異性との交際の活発性とロジスティック回帰分析の結果:女性 20 歳代 30 歳以上 B 標準誤差 B 標準誤差 収入 -.138 .189 -.348 .144✽ 短大・高専・専門 中学・高校 大学・大学院 ―――――― .242 .258 -.271 .229 ―――――― -.016 .190 -.137 .191
57 パート・アルバイト 正規の社員・職員 派遣 自営業主・家族従業者 無職・家事 学生 その他 ―――――― -.409 .274 -.255 .364 -.860 .691 .073 .382 -.180 .354 -1.592 1.082 ―――――― .106 .261 .364 .292 -.176 .317 -.057 .316 .105 .843 .155 .479 職場内での独身異性の人数 職場以外で仕事上、異性と出会う機会 習い事・趣味・娯楽先の異性の人数 -.419 .108✽✽✽ -.376 .124✽✽ -.359 .124✽✽ -.506 .107✽✽✽ -.807 .119✽✽✽ -.322 .103✽✽ 気軽な相談相手の有無 -.975 .229✽✽✽ -1.121 .174✽✽✽ 定数 2.620 .968✽✽ 4.489 .746✽✽✽ N 783 992 -2 対数尤度 730.335 994.727 自由度 13 13 カイ2 乗 125.864 255.760 Nagelkerke R2 乗 .223 .317 ✽✽✽p<0.001 ✽✽p<0.01 ✽p<0.05 収入と年齢の関係を見てみるためにクロス表(表4、表 5)を作成すると、20 歳代前半の 未婚男性では100 万円未満が過半数以上を占めているのに対して、20 歳代後半から 300~ 400 万円未満の収入を得るものが 29.8%現れるようになる。30 歳代から 600~800 万円未 満の収入を得る者が一定数(7.6%)現れており、年齢層の上昇とともに収入の格差もまた 顕著になっている点を見出すことができる。また、こうした傾向は未婚女性にも見出すこ とができる。 一方独身異性へのアクセス機会では、女性では全年齢層において「職場内での独身異性 の人数」「職場(社内)以外で仕事上、独身の異性と出会う機会」「習い事・趣味・娯楽先の異 性の人数」が異性との交際の不活発性と統計的に有意になっている。男性でも、「職場内で の独身異性の人数」の有意確率が、20 歳代男性において 5%未満になっていないのみであ る。が、20 歳代男性における「職場内での独身異性の人数」(表には記載していないが)の 有意確率自体は5.5%となっている。 「気軽な相談相手の有無」の項目では、全ての年齢層の男性・女性において有意確率が5% 未満になっている。回帰係数自体も、全年齢層の男性・女性において(もちろん気軽な相 談相手の有無が量的変数ではなく、ダミー変数ということもあるが)高い値を示している。 気軽な相談相手がいる事は、対人関係能力を学ぶ上で役に立つばかりではなく、そもそ も相談相手がいる点で対人志向性を備えた(逆にいない点で対人志向性に欠落がある)人 と言えるかもしれない。
58 表4 年齢と収入のクロス表:男性 100 万円 未満 100~ 300 万 300~ 400 万 400~ 600 万 600~ 800 万 800~ 1000 万 1000 万 円以上 合計 20~24 歳 66.8% 24.8% 6.2% 2.3% .0% .0% .0% 100.0% 25~29 歳 20.6% 32.3% 29.8% 15.5% .7% .9% .2% 100.0% 30~34 歳 9.4% 27.2% 20.7% 32.7% 7.6% .7% 1.6% 100.0% 35~39 歳 7.9% 25.7% 17.3% 32.2% 11.9% 2.8% 2.1% 100.0% 40~44 歳 9.2% 23.9% 19.8% 25.9% 14.7% 4.4% 2.0% 100.0% 合計 20.9% 27.1% 19.6% 22.6% 6.8% 1.7% 1.2% 100.0% カイ2 乗値 681.390 有意確率.000 表5 年齢と収入のクロス表:女性 100 万円 未満 100 ~ 300 万 300~400 万円 400 ~ 600 万 600 ~ 800 万 800 ~ 1000 万 1000 万 円以上 合計 20~24 歳 62.0% 31.6% 5.4% .6% .0% .0% .3% 100.0% 25~29 歳 21.4% 56.7% 17.1% 4.8% .0% .0% .0% 100.0% 30~34 歳 18.0% 44.7% 24.0% 10.3% 1.7% 1.2% .0% 100.0% 35~39 歳 20.8% 36.7% 18.6% 16.7% 6.0% .5% .5% 100.0% 40~44 歳 15.3% 36.3% 18.6% 21.4% 6.0% 2.3% .0% 100.0% 合計 27.3% 42.7% 17.0% 9.7% 2.4% .7% .2% 100.0% カイ2 乗値 419.459 有意確率.000 分析の結果、独身異性と接する機会の多さ(「職場内での独身異性の人数」「職場以外で 仕事上、独身の異性と出会う機会」「習い事・趣味・娯楽での活動先の異性の人数」)、気軽 に相談できる相手の存在(対人関係力)、さらに20歳代男性では正規の社員・職員であるこ と、30歳以上の男性・女性では収入の多さ、が異性との交際を行う(恋人もしくはよく話 をする独身の異性ができる)機会を増大させることが明らかになった。 逆に言えば、独身異性と接する機会にも、気軽に相談できる相手(対人関係能力を磨く 機会)にも、経済的資源にも恵まれなければ、男女交際がより不活発な(恋人もよく話を する独身の異性もいない)状態になる確率を高めていくと言うことができる。 それでは本稿の研究と中村・佐藤の研究では分析結果は如何に異なっているだろうか。 本稿の研究では、20 歳代の男性・女性ともに(中村・佐藤の研究では有意性を見いだせな かった)「職場以外で仕事上、独身の異性と出会う機会」が統計的有意になっている(逆に 20 歳代男性において「職場内での独身異性の人数」の有意確率が、5%未満から若干外れて いる)。多分に中村・佐藤の研究よりも「異性との交際がより不活発な状態」を従属変数に 据えているために、独身異性へのアクセス機会が影響力を持ったと考えることができる9)。
59 3.2 交際意欲に関する多項ロジスティック分析 本項では、「結婚を伴わない交際」を基準カテゴリーにして、多項ロジスティック回帰分 析を行っていく。その結果をまとめたのが表6・表 7 である。欠損ケースを除き、実際に分 析に使用したサンプル N は男性1358 人、女性 1066 人となっている。 まず「結婚を前提にした交際」と「結婚を伴わない交際」との比較では、「結婚を前提に した交際」の意欲を高める要因としては、男性では正規の社員・職員、自営業主・家族従 業者であること、女性においても、正規の社員・職員であることとなっている。さらに男 性では「職場以外で仕事上、独身の異性と出会う機会」「気軽に相談できる相手の有無」が 「結婚を前提にした交際」よりも「結婚を伴わない交際」に対する意欲を高める要因とな っている。 表6 交際意欲に関する多項ロジスティック分析の結果:男性 結婚を前提にした交 際相手が欲しい 交際相手は欲しくない B 標準誤差 B 標準誤差 切片 -1.211 .687 .714 .804 収入 .153 .123 -.010 .147 短大・高専・専門 中学・高校 大学・大学院 ――――――― .030 .209 -.055 .187 ――――――― .205 .253 -.068 .237 パート・アルバイト 正規の社員・職員 派遣 自営業主・家族従業者 無職・家事 学生 その他 ―――――― .899 .257✽✽✽ -.326 .412 .854 .292✽✽ -.191 .355 .666 .344 .320 .543 ――――――― .048 .294 -.461 .476 .347 .331 .401 .342 -.187 .393 -.166 .677 職場内での独身異性の人数 職場以外で仕事上、異性と出会う機会 習い事・趣味・娯楽先の異性の人数 .052 .085 -.188 .092✽ .080 .075 -.098 .109 .222 .114 .033 .099 友人との付き合いの頻度 職場の同僚・上司との付き合いの頻度 気軽な相談相手の有無 -.093 .082 .086 .096 -.347 .146✽ -.192 .100 -.107 .131 -.624 .179✽✽✽ 過去に特定の交際相手がいた -.149 .152 -.792 .177✽✽✽
60 20 歳代前半 20 歳代後半 30 歳代前半 30 歳代後半 40 歳代前半 ―――――― .572 .286✽ .505 .306 .756 .314✽ 1.082 .333✽✽ ―――――― -.421 .333 -.190 .345 .079 .352 .166 .376 N 1358 -2 対数尤度 2539.318 自由度 40 カイ2 乗 221.942 Nagelkerke R2 乗 .172 ✽✽✽p<0.001 ✽✽p<0.01 ✽p<0.05 表7 交際意欲に関する多項ロジスティック分析の結果:女性 結婚を前提にした交 際相手が欲しい 交際相手は欲しくない B 標準誤差 B 標準誤差 切片 1.532 .729✽ .988 .891 収入 -.228 .143 -.276 .175 短大・高専・専門 中学・高校 大学・大学院 ――― -.013 .199 .096 .176 ――― -.006.237 -.303 .224 パート・アルバイト 正規の社員・職員 派遣 自営業主・家族従業者・内職 無職・家事 学生 その他 ―――― .459 .230✽ .318 .275 .431 .341 .336 .359 -.265 .364 -.052 .437 ―――― .248 .294 .547 .337 .221 .425 1.299 .386✽✽ .479 .422 -.551 .692 職場内での独身異性の人数 職場の同僚・上司との付き合いの頻度 習い事・趣味・娯楽先の異性の人数 -.041 .088 -.133 .094 -.097 .078 .072 .108 .011 .117 .038 .092 友人との付き合いの頻度 職場の同僚・上司との付き合いの頻度 気軽な相談相手の有無 -.160 .095 .126 .114 .140 .193 .034 .116 .032 .145 -.334 .225 過去に特定の交際相手がいた -.148 .189 -1.254 .209✽✽✽
61 20 歳代前半 20 歳代後半 30 歳代前半 30 歳代後半 40 歳代前半 ―――― .325 .265 .481 .270 .539 .281 .557 .310 ―――― .627 .329 .330 .349 .982 .345✽✽ 1.095 .383✽✽ N 1066 -2 対数尤度 2084.764 自由度 40 カイ2 乗 141.694 Nagelkerke R2 乗 0.141 ✽✽✽p<0.001 ✽✽p<0.01 ✽p<0.05 「結婚を伴わない交際に対する意欲」と「交際意欲のなさ」に対する比較では、男性で は気軽に相談できる相手の存在、過去における特定の異性との交際経験が「結婚を伴わな い交際」に対する意欲を高める。逆に言えば、気軽に相談できる相手もなく、過去に交際 経験がなければ、交際する意欲そのものが喪失する確率が上昇すると言える。女性でも過 去の交際経験が有意水準5%未満(他には無職・家事も 5%未満)になっている。 男性・女性とも交際経験がない人ほど交際に対する意欲を喪失する傾向が強くなる点で、 山田が主張しているように「モテる」「モテない」ことの階層化が現代に生じていると言っ ていいだろう。 年齢の効果としては、男性では30 歳代後半、40 歳代前半で特に高い回帰係数で結婚を前 提にした交際相手が欲しい確率を高め(20 歳代後半でも高めるが)、女性では 30 歳代後半、 40 歳代前半で交際する意欲そのものを低める。 岩間暁子は、男性が30 歳代においても 20 歳代よりも高い結婚意欲を維持しているのに 対して、女性の結婚意欲の水準は30 代前半までは男性より高いものの、35 歳以降に急激に 低下していくことを指摘している(岩間 1999)。本稿の研究では、30 歳代後半以降の(恋 人のいない)未婚女性は、結婚意欲だけでなく交際意欲そのものが低下する点を見出すこ とができた。
IV おわりに
山田昌弘は、現代において異性との交際が活発化することで、結婚前の親密性の水準が 高くなること、加えてモテる人とモテない人の階層化が生じていることを未婚化・晩婚化 の原因とした。一方阿藤誠や金子隆一、加藤彰彦は、現代日本社会の未婚者において、異 性との交際が著しく低調な点を指摘していた。 本稿では現代社会において「異性との交際が活発化している」「異性との交際が不活発に なっている」かよりも、異性との交際における不活発性と関わりがある社会的要因は何か。 もしくはどのような社会的要因が男女交際に対する意欲(結婚意欲、恋愛意欲)を弱め、 逆に強めるのかを、統計的データを用いて明らかにしていくことを試みた。特に、【対人62 関係能力】【独身異性への距離的なアクセス機会】【経済的資源】という点から分析して いる。 分析の結果として、まず【対人関係能力】では、気軽に相談できる相手の有無と異性と の交際の不活発性との関連が統計的に有意であった。対人関係能力を向上させやすい環境 にある(もしくはある程度の対人志向性を備えている)人の方が異性との交際を行う機会 に恵まれやすいと言えるかもしれない。だとすれば、工藤が指摘するように、異性との交 際の活発化に関わっているのは「モテる層」(対人志向性を備えている人)であり、異性と の交際に質的変化がないのは「モテない層」(対人志向性が欠落している人)であるという 解釈が妥当であると言える10)。 【独身異性への距離的なアクセス機会】(「職場内での独身異性の人数」「職場以外で仕事 上、独身の異性と出会う機会」「習い事・趣味・娯楽での活動先の異性の人数」)では、異 性との交際の活発性と多くの点で統計的に有意であった。 前述したように阿藤や金子は、現代日本社会において西欧型の自由恋愛市場を支えるデ ート文化が十分に発達していないことを指摘していた。日本社会において、本当に「西欧 よりもデート文化が発達していない(出会いの場がない)かどうか」は分からない。が、 対人関係能力が欠落していても、独身異性と接する機会が恵まれていれば異性との交際が 活発になる確率が上がる。出会いの場をより設ける政策提言という点では妥当なのかもし れない。 【経済的資源】では、20 歳代男性において「正規雇用」、30 歳以上の男性・女性では収 入の高さが異性との交際を活発にする要因となっていた。また、正規雇用(男性ではさら に自営業主・家族従業者)は、「結婚を前提にした交際相手」に対する意欲を高める要因に もなっていた。 そうした点で、「女性が経済的に自立することで、結婚に囚われない生き方が可能になっ た」という「女性の自立説」は、本稿の調査結果からも(正規雇用という経済的に自立し ている職に就いている女性の方が、「結婚を前提にした交際」に対する意欲が高い点で)支 持することはできない。もっともだからと言って、女性の経済的自立が性役割意識・結婚 に対する意識に何の変化も及ぼしていないと考えることはできない。 というのも、男性と女性では経済的資源に偏りがあり、現代でもなお、女性は男性より も経済的に不利なポジションに立たされている。女性の性役割意識や結婚に対する意識が 変化しているのか、変化していないのかに関しては、未婚化・晩婚化とは別にさらなる実 証的研究を重ねる必要がある。 (神戸大学メディア文化センター協力研究員)
注
1) 統計的調査を用いた研究では、「身近な人の結婚・夫婦関係のとらえ方」「日常での結婚・ 子育てとの接触状況」と結婚意欲との関連を順序回帰分析によって分析した釜野さおり の研究(釜野 2008)、クラスター分析によって未婚者のライフスタイルを 4・5 パターン に分類し、それぞれのライフスタイルと結婚意欲の関連性を重回帰分析によって分析し63 た岩間暁子の研究(岩間 1999)、等がある。 2)もっとも、如何なる社会的要因が生活水準の期待レベルを上昇させるのかについては一 致した見解が存在するとは言い難い。山田の議論では、親元で豊かな生活を送るシング ルの増大が生活水準の期待レベルを上昇させる事を想定しているが、加藤の研究では、 「出身階層が高いと結婚が遅れる」という因果関係は見られないことが明らかにされて いる。 3)山田の議論では(異性との交際が活発化しているという)統計的データが提示されてい ない。70 年代以降における婚前性交の自由化という社会学的常識が根拠になっているの みである。もっとも、戦後まもなく行われた異性との交際をめぐる調査を参考にすると、 現代ほど異性との交際が活発に行われていたとは言い難い様相が見えてくる。例えば、 安田一郎は、1965 年に 20 歳代~50 歳代にわたる既婚女性 1557 人(配布数 2500 人、回 収した数1569、年齢・結婚年数などの無記載 12)を対象に性の調査を行っている。その 調査結果によれば、結婚前に夫以外の男性と交際したことがあると答えた人は 881 名で あり、内訳は「お茶を飲んだり映画へ行っただけ」の人 63.4%、「接吻」17.3%、「ぺッ ティング」4.3%、「性交渉」11.4%であることを紹介している。結婚前に夫以外の男性と 性交渉をもった人の全体的な割合は、1557 名中 101 名で 6.4%(20‐24 歳の女性では 8.0%)になっている(安田 1966)。「現代において異性との交際が不活発になっている」 という説を実証するには、「異性と付き合っていない未婚者が現代においてどの程度いる のか」を示すだけでなく、交際経験数(付き合ってきた異性の人数)が、未婚化・晩婚 化が進展する時代よりも減少していることも示す必要がある。 4)「結婚相談・結婚情報サービスに関する調査」は、2005 年に経済産業省に設置された「少 子化時代の結婚産業の在り方に関する研究会」(座長:佐藤博樹)が行った調査であり、 サンプルはインターネットモニターを通じて集められている。 5) 20 歳代未婚者に調査対象を限定した中村・佐藤の研究において、有意確率が 5%未満に なっている項目は、男性において年収、独身異性の人数、友人との付き合いの頻度であ り、女性においてはパートのみとなっている。 6)中村・佐藤は「なお、因果関係を証明するには、説明変数が被説明変数に時間的に先行 している必要があるが、本章の分析ではデータの制約上、同時点に得られた両者の情報 を使用した」(中村・佐藤 2010: 71)と研究の限界を述べているが、こうした限界は当然 の如く本稿にも当てはまる。 7) 中村・佐藤の研究では、「無職・家事」「学生」「その他」を除外し、「パート・派遣」「自 営」「正規雇用」の3 分類にまとめ、「正規雇用」をリファレンスカテゴリーにしている。 8)もちろん本稿の研究に対して、「付き合いの頻度」が多い人(もしくは気軽に相談でき る相手がいる人)は、本当に対人関係能力が高い人なのかという批判は存在するだろう。 そうした批判は妥当な部分を含んでいる。だが、コミュニケーション能力や対人関係能 力を測る尺度を完全な形で作るのは不可能に近い、という問題も存在する。例えば、対 人関係能力の規定要因を分析した有名な研究として本田(2005)が存在するが、本田の 研究でも、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」「自分には人を引っぱっ ていく力がある」「友だちから悩み事を打ち明けられることが多い」「友だちが間違った
64 ことをしたら指摘すべきだと思う」「嫌いな人、苦手な人とも、うまく付き合う努力をし ている」という回答者の主観的意識を、対人関係能力を測るための尺度としているに止 まっている。社会科学で近年クローズアップされている対人関係能力・コミュニケーシ ョン能力を統計的研究の俎上に乗せようとする試みは、重要な意義を持つ一方で、限界 もまた存在する。 9)経済的資源において、本稿の研究では、20 歳代男性で正規の社員・職員が統計的有意に なっているのに対して、中村・佐藤の研究では、20 歳代男性では年収、女性ではパート が統計的有意になっている。結果が異なった理由としては、本稿と中村・佐藤の研究で は就業状態に対する分類の仕方が異なっている点を挙げることができる。 10)ただし本稿の研究では、異性との交際に対する不活発性と対人関係能力の関連性を分 析するための尺度が「気軽に相談できる相手の有無」のみになっている点で限界もまた 存在する。
参照文献
阿藤誠 1989 「未婚・晩婚時代の到来」『家族研究年報』15 号。Becker, Gary 1973 “A Theory of Marriage Part I” Journal of Political Economy 81. ――― 1981 A Treatise on the Family, Cambridge, Massachusetts: Harvard University
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Easterlin, Richard 1980 Birth and Fortune: The Impact of Numbers on Personal Welfare, New York: Basic Books.
江原由美子 2004 「ジェンダー意識の変容と結婚回避」,目黒依子,西岡八郎編『少子化の ジェンダー分析』勁草書房。 本田由紀 2005 『多元化する「能力」と日本社会』NTT 出版株式会社。 岩間暁子 1999 「晩婚化と未婚者のライフスタイル」『人口問題研究』55 巻 2 号。 岩澤美帆・三田房 2005 「職縁結婚の盛衰と未婚化の進展」『日本労働研究雑誌』535 号。 岩澤美帆 2010 「職縁結婚の盛衰からみる良縁追及の隘路」佐藤博樹・永井暁子・三輪哲 編著『結婚の壁:非婚・晩婚の構造』勁草書房。 釜野さおり 2008 「身近な人の結婚のとらえ方と結婚・子育てとの接触状況――結婚観と 結婚意欲に関する分析」『人口問題研究』64 巻 2 号。 金子隆一 1994 「未婚人口における結婚の需給要因の動向――第 10 回出生動向基本調査 (独身者調査)の結果から」『人口問題研究』50 巻 2 号。 加藤彰彦 2011 「未婚化を推し進めてきた 2 つの力――経済成長の低下と個人主義のイデ オロギー」『人口問題研究』67 巻 2 号。 工藤豪 2003 「結婚研究の動向――未婚化・晩婚化の要因解釈を中心にして」『社会学論叢』 147 号。 中村真由美・佐藤博樹 2010 「なぜ恋人にめぐりあえないのか?――経済的要因・出会いの 経路・対人関係能力の側面から」、佐藤博樹・永井暁子・三輪哲編『結婚の壁――非婚・ 晩婚の構造』勁草書房。 大橋照枝 1993 『未婚化の社会学』日本放送出版協会。
65 Oppenheimer Valerie 1988 “A Theory of Marriage Timing” American Journal of
Sociology 94(3). 山田昌弘 1996 『結婚の社会学』丸善ライブラリー。 ――― 1999 『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書。 ――― 2000 「結婚の現在的意味」、善積京子編『結婚とパートナー関係――問い直される 夫婦』ミネルヴァ書房。 安田一郎 1966 「日本人の性行動――男性と女性の性科学白書」講談社。 ※本稿の作成にあたっては東京大学社会科学研究所付属日本社会研究情報センターSSJ デ ータ・アーカイブから「結婚相談・結婚情報サービスに関する調査、2005」(経済産業省) の個票データの提供を受けました。ここに記して謝辞を述べたい。