Title
体色変化に基づくイモゾウムシの蛹の齢の識別法
Author(s)
杉山, 巳次; 小濱, 継雄; 下地, 幸夫
Citation
沖縄農業, 34(1): 34-37
Issue Date
1999-12
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1432
Rights
沖縄農業研究会
体色変化に基づくイモゾウムシの蝿の齢の識別法
杉山已次・小濱継雄・下地幸夫
(沖縄県ミバエ対策事業所)
MituguSugiyama,TsuguoKohamaandYUkioShimOji:
AmethodfOrseparatingpupaeoftheWestlndiansweetpotatoweevil,Euscepes
pos歯scjatusintotheagegroupsusingtheircolouration
イモゾウムシの蛸は,成長に伴いその体色が変化す ることが報告されている(rucker,1937;Sharmanand Tamashiro,1954).この体色の変化が齢を正確に反映 するものであれば,すでに蝿になってしまった個体か らもその齢を知ることが可能となる.そこで,私たち は,まず蝿の体色変化を実体顕微鏡下と肉眼で経時的 に観察し,齢を区別するための指標を決めた.次に, この指標に基づき蝿を分け,実際に齢を区別できるか どうか調べた. はじめに イモゾウムシEuscepespos晩scjatus(Fairmaire)は, サツマイモmomoeabatatas(L)の重要な害虫の1種 で,世界の熱帯及び亜熱帯地域に広く分布している qRamanandA11eyne,1991).日本では,南西諸島に分 布し,サツマイモに大きな被害を与えている(安田・ 小濱,1990).そのため,沖縄県では,不妊虫放飼法 (SIT)を用いてイモゾウムシを根絶することを目的 とした実証事業が行われている(Moriya,1995). Knipling(1964)は,SITを用いるために必要な9つ の基本的な条件を提示している.これらの条件を満た し根絶を達成するため,様々な昆虫で研究が行われて きている(MyersetaL,1998).そして,その内の数種 において,実験に供試する虫の性や齢の違いにより放 射線による影響が異なるという結果が得られている. (例えば,雌雄間で完全不妊化線量が異なる:Dawes etaL,1987;Sharp,1995;Temya,1982;照射日齢により 羽化率が異なる:BoUeretal,1981,照屋,1997).よっ て,SITを用いて根絶を達成するための研究を進める 上で,正確で簡単な性や齢の識別法は不可欠である. 本種の性別判定は,蛸(Sugiyamaeta1.,1996),若齢成 虫(YasudaandNaito,1991)及び成熟成虫(Hiroyoshiet aL,1996)の各ステージで行うことができる.また,齢 は,蛸においては蝿化後の,成虫においては羽化後の 経過時間から知ることができる.しかし,この方法で は既に蛎化あるいは羽化してしまっている個体の齢を 知ることはできない. 材料と方法 実験には,1988年から沖縄県ミバエ対策事業所で累 代飼育しているイモゾウムシ(KohamaandShimoji, 1998)を用いた. 実験1.累代飼育に使用しているサツマイモ塊根を 分解し,前蛎を取り出した35頭(オス:15,メス:20) を個別に25.0±0.1℃,RH70-80%,L:D=14:10の条件 下でインキュベーターに保管した.これらを毎日, 08:30-10:00の間に実体顕微鏡下と肉眼で観察し,蛎 化日,羽化日及び蝿の体色変化を記録したそして, 記録した体色変化から特徴的なものを選び,齢を区別 する指標とした.成虫まで発育しなかった個体のデー タは除外した 実験2.累代飼育に使用しているサツマイモ塊根か ら蝿を取り出し,実験1で定めた指標に従って10グル ープに分けた.そして,各グループごと飼育容器(直 径95×高さ44cm)に入れ,実験室(25±1℃,杉山・小濱・下地:体色変化に基づくイモゾウムシの蝿の齢の識別法 35 RH70-85%,L:D=14:10)で飼育した.飼育容器内の 蝿は毎日観察し,羽化した虫の数と羽化までに要した 日数を記録した. 伴いまず複眼に変化が現れ,段々と黒化していった. 次に口吻の先端が赤茶色になり,続いて各脚関節部も 赤茶色になったその後,体全体が茶褐色になり,羽 化直前になると上翅の部分に黒いすじ模様が現れた. この一連の変化をその特徴から10段階に分け,その特 徴が観察されてから羽化までに要した時間を計算した (表1).その結果,蝿の体色と羽化までに要した時間 とには個体により2日程度の違いが見られるものの, その体色は齢を反映することが確認できた 実験2では,表1に示した体色の特徴に従って蛸を 各段階に分け,その羽化までに要する時間を調べた (表2).今回,段階1に相当する蛸は見られなかった 段階2及び3と見なされた蝿は,羽化までに5日から 7日を,段階4とされた蝿は4日から6日を要し,個 体により3日間の違いが見られたまた,段階5,6, 結果と考察 実験1で用いた全ての前蛎は,蝿化後8日あるいは 9日で羽化し,雌雄間で差は見られなかった(オス:平 均±SD=8.5±05日,、=15;メス:平均±SD=8.3±0.5日, n=19;MannWhimeyのU検定,p>0.05).また,体色の 経時的変化にも雌雄間で有意な差が見られなかったの で(繰り返しのある2元配置の分散分析,F=1.57, 少0.2187),雌雄のデータは込みにして分析した. 鋪の体色変化は,Tucker(1937)及びSharmanand Tamashiro(1954)の報告と一致し,以下のようであっ た.蝿化直後の鋪は体全体が乳白色だが,齢の進行に 表1.イモゾウムシの蝿の体色変化の特徴と、その特徴が 観察されてから羽化までに要した日数.
日数b観察数
特徴a
段階 1複眼に細長く薄茶色の色素. 7.3±0.5 7-8 5.9±0.3 5-6 5.1±0.2 5-6 4.4±0.5 4-5 3.6±0.5 3-4 2.9±0.4 2-4 2.0±00 2 1.8±04 1-2 1.1±0.3 1-2 1.0±0.0 34 複眼全体に薄茶色の色素. 薄茶色の複眼. 複眼中央部が茶褐色に 茶褐色の複眼. 複眼全体が茶褐色. 茶褐色の複眼. 複眼が暗褐色. 暗褐色の複眼. 口吻先端に赤茶色のハ模様なし 複眼が黒化. 口吻先端に赤茶色のハ模様. 黒色の複眼. ロ吻先端の赤茶色が牙状に. 口吻先端が赤茶色. 32 2 32 3 31 34 5 31 6 27 7 27 8 31 9 口吻先端及び各脚関節部が赤茶色. 32 10 頭部、脚、上翅が茶褐色あるいは上翅にすじ模様a上段:顕微鏡下、下段:肉眼.
b上段:平均±標準偏差、下段:範囲.
36 沖縄農業第34巻第1号(1999) 表2.体色により各段階に分けたイモゾウムシ の蝿が羽化までに要した時間. 供試 個体数 体色 段階 詞【 123456789Ⅶ 766193094 233234426 5.6±0.6 5.1±0.4 4.3±0.6 3.5±0.5 2.6±0.5 2.0±0.2 2.0±0.0 1.3±0.5 1.0±0.0 7764332 一一一一一一2’1 5543221 7,9とされた蛸も個体により羽化までに要した時間 に2日間の違いが見られた.しかし,段階8と10に分 けられた鋪は全て同日羽化した.よって,羽化時期が 近づき体色段階が進んだ蛸ほど,その体色から羽化日 をより正確に推定できると思われる. 蛸の観察からその体色変化を10段階に分けたが(表 1),これに従って蝿を各段階に分けた結果,段階2 及び3に分けられた蛸が羽化までに要した時間はどち らも5-7日であり,段階6と7はどちらも2-3日 であった(表2).よって,これらは,体色の特徴とし ては違いが見られるものの,実用的にはその特徴を基 に蝿の齢を区別することはできない.したがって,段 階2と3及び6と7をそれぞれ1つの段階にまとめ, 体色段階を少なくした方がよいと考えられる. 体色変化は,成長に伴う連続した変化である.よっ て,この変化を正確に区切ることは難しい.しかし, 今回の結果は,2日程度の幅はあるものの,その連続 的変化を区切った体色の特徴から蝿の齢が推定できる ことを示した特に,羽化1日前の鋪は正確に識別で きるので,このような蝿を大量に必要とする実験では とても有効な齢の識別方法となると考えられる. の齢が推定できないか調べた.その結果,蝿の体色と 羽化までに要する期間とには2日程度の個体差がある ものの,その体色が齢を反映することが確認できた. 特に,羽化1日前の蝿は,その体色の特徴から正確に 識別できた. 謝辞 統計処理に関するご助言を戴いた沖縄県農業試験場 の宮竹貴久博士に深く感謝する. Summary lthasbeenreportedthatcertampartsofthepupae ofEuscepespos歯sciatuschangeincolourasthepupal stageprogresses.'、us,weexaminedwhethertheage ofpupaewasestimatedusingtheircolourationBody colourchangingofpupaewasobservedwithbotha stereonmcroscopeandnakedeyes,andasequenceof thecolourchangingwasdividedintolOcolourgrades、 Pupaehomastockculturewereseparatedaccordmgto thegrades・Thepupaeseparatedwererearedand recordedthedatewhenadultsemergedItwasclear thatthecolourchangingofpupaewascorrelatedwith theirage,andthepupaeattheageofonedaybefOre adulteclosionweredistinguishedaccordingtothe colourgradeswithoutfail. 摘要 イモゾウムシの蝿は,その成長に伴い体色が変化す ることが知られている.そこで,この体色変化から蝿
杉山・小濱・下地:体色変化に基づくイモゾウムシの鋪の齢の識別法 37 引用文献 1.Boller,E,F、,B,LKatsoyannos,U,RemundandD. L・Chambersl98LMeasuring,monitoringand improvingthequalityofmass-reared Medite】TaneanhPuitflies,C巴、〃tiScapiataWied・Z angEnL92:67-83. 2.Dawes,M、A,RSSaini,M、H・Mullen,J、H BrowerandRA・Loretanl987、Sensitivityof sweetpotatoweevil(Coleoptera:Curculionidae)to ganⅢnaradiation・JEcon・Entomo1.80:142-146. 3.Hiroyoshi,S、,S・MoriyaandY、Shimojil996・A methodfOrsexingagedindividualsoftheWest Indiansweetpotatoweevil,EuscepespostfDscjams (Fairmaire)(Coleoptera:Curcurionidae).AppL EntomolZool31:311-313. 4.KniPHng,EF、1964.Thepotentialroleofthestelility methodfOrinsectpopulationcontrolwithspecial referencetocombiningthismethodwith convenUonalmethodsUnitedStatesDepartmentof Agliculture,AgriculturalResearChService33-98:1- 54. 5.Kohama,T・andSShimojil998、Reproductive maturityofthefemaleWestlndiansweetpotato weevil,Euscepespostfasciatus(Fairmaire) (Coleoptera:CurcuUonidae).AppLEntomoLZoo1. 33:1-4. 6.Moriya,S、1995.T11epossibiHtyoferadicatingtwo sweetpotatopests,q'ZasibrmjCaniusandEuscepes pos歯scjatus,inJapanFFT℃ExtBuU・No.403:1-7. 7.Myers,J、H,ASavoieandE・vanRandenl998 Eradicationandpestmanagement・AnnuRev・ EntomoL43:471-491. 8.Rama、,KV・andEH・Alleynel991、Biologyand managementoftheWestIndiansweetpotato weevil,Euscepespos歯sciatuslnSweetPotato PestManagement,AGlobalperspective(RK JanssonandK・VRamaneds.).WestviewPress, Boulder,pp、263-281. 9.Sharp,J1995.Mortalityofsweetpotatoweevil (Coleoptera:Apionidae)stagesexposedtogamna i汀adiationJEcon・EntomoL88:688692. 10.Sherman,M・andM・Tamashirol954・The sweetpotatoweevilsinHawaii,theirbiologyand controLHawaiiAgricExp・Stn・BullTech23:1‐ 36. 11.Sugiyama,M、,T・KohamaandY、ShimOjil996A methodfOrsexdiscriminationintheWestIndian sweetpotatoweevil,Euscepespos肋sciatus (Fairmaire)(Coleoptera:Curculionidae)atthe pupalstage・AppLEntomolZooL31:166-167. 12.Teruya,T1982.Sterilizationofthemelonfly, DacuscucurbitaeCoquillett(Diptera: Tephritidae),withgammaPradiation:Recoveryof fertilityoffliesirradiatedasmaturepupae・AppL EntomoLZoo1.17:586-589. 13.照屋匡1997.ガンマ線照射によるウリミパエの不 妊化法に関する研究.沖縄県特殊病害虫特別防除 事業.特別研究報告第2号. 14.Tucker,RWE,1937.Thecontrolofscarabee (EuscepesbatataeWaterh)inBarbadosBarbados DeptSci・Agric・J6:133-154. 15.安田慶次・小濱継雄1990.沖縄県におけるイモゾ ウムシとアリモドキゾウムシの分布.九病虫研 会報.36:123-125. 16.Yasuda,K・andnNaitol991・Externalcharacters fordiscriminatingsexintheWestlndiansweet potatoweevil,EuscepespostfasciatusFairmaire (Coleoptera:CurcuHonidae).AppLEntomoLZooL 26:422-424.