• 検索結果がありません。

副 査    准 教 授    川 口 俊 一 副 査    教 授    芥 川 智 行 ( 東 北 大 学      多 元 物 質 科 学 研 究 所 )

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "副 査    准 教 授    川 口 俊 一 副 査    教 授    芥 川 智 行 ( 東 北 大 学      多 元 物 質 科 学 研 究 所 )"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(環境科学)野田祐樹 学位論文題名

  7T 共役分子で物理吸着保護した 金ナノ粒子集積体の構築と量子伝導      学位論文内容の要旨

    機 能 性 有 機 分 子 と ナ ノ 粒 子 か ら な る複 合 構 造は 、 粒子 の 構 成元 素 、粒 径 、 粒子 間のカ ップリン グ強度、 分子の機能性に依存し、これまでになしゝ電気、光、磁気特性の 発現の 場として 優れてい る。特に 金ナノ粒 子からなる 集積体は ナノヌー トルオー ダーで 有機物 と金属が 複合化し た系であり、その電気伝導特性はサンフンレサイズがマイク口メ ートル オーダー でありな がら量子 伝導に支 配される興 味深いも のである 。これま で有機 分子と 金ナノ粒 子間の複 合化は、 粒子径の 単分散性や 粒子の安 定性を考 慮して金 −硫黄 間の共 有結合を 利用した 系が主流 であった 。これに対 し静電相 互作用や ファン・ デル・

ワール ス相互作 用などに 基づく物 理吸着に よる複合化 は、複合 化後の安 定性が懸 念され ている ためほと んど検討 されてこ なかった 。しかし、 物理吸着 で安定化 された金 ナノ粒 子集積 体は化学 吸着と比 較して、 分子と金 ナノ粒子の 電子構造 を互いに 孤立させ ること が可能 である。 っまり、 トンネル 電子と分 子の電子、 磁気構造 を反映し た特異な 特性を 観 察 す る こ と 可 能 で 、 こ れ ま で に な い 電 子 輸 送 が 発 現 す る と 考 え ら れ る 。     物 理吸 着 に よる 金 ナノ 粒 子 安定 化 が可 能 な 分子 を 検討 した結 果、剛直 な共役兀 平 面 をも つ 分 子が 有 効で あ る こと を見出し た。具体的 には、'環 状平面が 金ナノ粒 子表面 に対し て平行に 吸着した 複合構造 をとると 考えられる ポルフィ リン誘導 体に注目 し、ポ ルフィリンのmeso位をthieny基で誘導体化した5,10,15,20一t哘施s‐に―恤enyl)po吶泗n(2D で保護 した金ナ ノ粒子複 合構造(2T‐A州P)を合成した。分光測定により、2Tは金ナノ粒 子表面 に対しそ の兀環状 平面が傾レゝた状態で物理吸着していることが明らかとぬった。

ま た、2T‐AuNPは 溶 液中 で 安 定で あ り、 ま た 粒径 は 単 分散 であった 。さらに 、2Tの電 子構造 は金ナノ 粒子の作 製前後で 変化して おらず、目 的とする 分子と金 ナノ粒子 の電子 構造が 互いに孤 立した新 規金ナノ 粒子を作 製すること に成功し た。次に2T一AuNPを電極 上に集 積化し、 電子輸送 特性の検討を行った。2T‐A1]NP集積体の電子輸送特性は温度に 依 存し 主 に2つ の挙 動 が現 わ れ た。 室 温か ら50Kは隣 接 粒子 間を熱 励起した 電子がホ ッ ピ ング す る アレ ニ ウス 型 の 挙動 を示した 。50K以下の温 度領域で はアレニ ウス型か らの 逸 脱が 観 測 され た 。こ の 挙 動は 、 ホッ ピ ン グ伝 導 電 子と ホッ ピングサ イ卜(金 ナノ粒 子 )間 に ク ー口 ン 相互 作 用 の存 在 を考 慮 し たES−Wm型 伝導 で説明 すること ができた 。

(2)

この挙動が出現したことで金ナノ粒子の帯電効果の存在が示唆された。これを裏付ける 様 に10K以下 の温度でES‑VRH型 からの逸脱が観測された。4.2KのI‑V特性より、単一 電子トンネリングの存在が確認できた。しかし、量子伝導が発現した温度領域が10K以 下と狭く、かつES‑VRH型伝導と共存していた。従って粒子間の量子伝導電子と分子の 電子構造との相関を検討するには不完全な系であった。その原因として粒子間距離の不 均一性が考えられる。量子伝導を効率良く発現させるにはトンネル距離を可能な限り短 くし均一に揃える必要がある。また、分子の電子構造と粒子間の量子伝導電子との相関 を明確にするには同じ幾何構造でながら、異なる電子構造を有する分子を探索する必要 があった。

    こ れらの条件 を満たす機 能性分子として、希土類フタロシアこンダブルデッカ ー錯体に着目し、この錯体と金ナノ粒子が非共有結合的に連結された集積体を作製した。

錯体はフ夕口シアニンの兀環状平面と金ナノ粒子表面とが平行になる配置で安定化して いた。また2T‑AuNPと同様、錯体は物理吸着し粒子と互いの電子構造が孤立した状態で あることを確認した。次に集積体の電子輸送特性を測定し、粒子間のトンネル電子と分 子の電子構造の相関を検討した。具体的には希土類イオンとして4f軌道が閉殻のLu3+、

1次の磁気異方性をもつn3゛フタロシアニンダプルデッカーを用い、その量子伝導特性 を抵抗の温度依存性、ム購性から比較検討した。結果、11コPc2‐AuNP集積体におしゝて量 子伝導電子と希土類イオンの磁性が相関した特異な量子伝導挙動が発現することを見出 した。分子の電子構造の差異が明確に反映されたのは15〜20K以下の低温領域であった。

4f軌道が閉殻の電子構造を有するI朏c2‐AuNP集積体においては、I亅やc2はトンネル障壁 として機能し、粒子問を伝導する電子は単一電子トンネリングであることが明らかとな った。また、ES・W岨、単一電子トンネリングが発現する温度領域とその意味を帯電工 ネルギーEcから厳密に説明することができた。一方、開殻の電子構造を有する11コPc2一 AuNP集積体においては、帯電エネルギーの計算から電子輸送挙動を予測する事はでき なかった。さらに単一電子トンネリングが発現するべき30K以下の温度領域において、

nPc2はトンネル障壁を通過する電子を強く非弾性的に散乱することで単一電子トンネ リングを抑制した。このように両者の電子輸送特性の差異は錯体の4f電子と粒子間の量 子伝導電子の観点から説明することが可能であった。

    以 上本研究に おいては、 電子活性かつ物理吸着で安定化した金ナノ粒子を作製 し、その集積体の電子輸送特陸を検討することで量子伝導電子(トンネル電子)と分子 の電子・磁気構造を反映した特異な特性を観察した。物理吸着による金ナノ粒子安定化 は7c環状平面をもっポルフィリン誘導体、フタロシアニン錯体で可能であることを発見 し た。量子伝 導電子と希 土類イオンの磁性が相関した特異な量子伝導挙動はnPC2一 A.uいm集積体において観察することができた。本研究で作製した試料、観測した電子輸 送特性は、極めて新規性の高いものである。従ってこの研究を根幹とした、さらなる発 展が期待できる。

(3)

学位論文審査の要旨

主 査    教 授    中 村 貴 義 副 査    教 授    小 西 克 明

副 査    准 教 授    川 口 俊 一 副 査    教 授    芥 川 智 行 ( 東 北 大 学      多 元 物 質 科 学 研 究 所 )

学 位 論 文 題 名

7T 共役分子で物理吸着保護した 金ナノ粒子集積体の構築と量子伝導

  機 能 性 有 機 分 子 と ナ ノ 粒 子 か ら な る 複 合 構 造 は 、 粒 子 の 構 成 元 素 、 粒 径 、 粒 子 間 の カ ッ プ ル ン グ 強 度 、 分 子 の 機 能 性 に 依 存 し 、 こ れ ま で に な い 電 気 、 光 、 磁 気 特 性 の 発 現 の 場 と し て 優 れ て い る 。 特 に 金 ナ ノ 粒 子 か ら な る 集 積 体 は ナ ノ メ ー ト ル オ ー ダ ー で 有 機 物 と 金 属 が 複 合 化 し た 系 で あ り 、 そ の 電 気 伝 導 特 性 は サ ン プ ル サ イ ズ が マ イ ク 口 メ ー ト ル オ ー ダ ー で あ り な が ら 量 子 伝 導 に 支 配 さ れ る 興 味 深 い も の で あ る 。 こ れ ま で 有 機 分 子 と 金 ナ ノ 粒 子 間 の 複 合 化 は 、 粒 子 径 の 単 分 散ltや 粒 子 の 安 定 性 を 考 慮 し て 金 ・ 硫 黄 間 の 共 有 結 合 を 利 用 し た 系 が 主流 で あ っ た。 こ れ に 対 し 静 電 相 互 作 用 や フ ァ ン ・ デ ル ・ ワ ー ル ス 相 互 作 用 な ど に 基 づ く 物理 吸 着 に よる 複 合 化 は、

複 合 化 後 の 安 定 性 が 懸 念 さ れ て い る た め ほ と ん ど 検 討 さ れ て こ な か っ た 。 し か し 、 物 理 吸 着 で 安 定 化 さ れ た 金 ナ ノ 粒 子 集 積 体 は 化 学 吸 着 と 比 較 し て 、 分 子 と 金 ナ ノ粒 子 の 電 子構 造 を 互 いに 孤 立 さ せ る こ と が 可 能 で あ る 。 っ ま り 、 ト ン ネ ル 電 子 と 分 子 の 電 子 、 磁 気 構 造 を 反 映 し た 特 異 な 特 性 を 観 察 す る こ と 可 能 で 、 こ れ ま で に な い 電 子 輸 送 が 発 現 す る と 考 え ら れ る 。   物 理 吸 着 に よ る 金 ナ ノ 粒 子 安 定 化 が 可 能 な 分 子 を 検 討 し た 結 果 、 剛 直 な 共 役兀 平 面 を もつ 分 子 が 有 効 で あ る こ と を 見 出 し た 。 具 体 的 に は 、 鰍 平 面 が 金 ナ ノ 粒 子 表 面 に 対 し て 平 行 に 吸 着 し た 複 合 構 造 を と る と 考 え ら れ る ポ ル フ ィ リ ン 誘 導 体 に 注 目 し 、 ポ ル フ ィ リ ン のmeso位 をthieny 基で誘導体化した5,10,15,20‐te曲bs.く2ー缸enyl)poq)hy血¢T)で保護した金ナノ粒子複合構造(2T AuNP) を 合 成 し た 。 分 光 測 定 に よ り 、2Tは 金 ナ ノ 粒 子 表 面 に 対 し そ の 縹 状 平 面 が 傾 い た 状 態 で 物 理 吸 着 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、2TAuNPは 溶 液 中 で 安 定 で あ り 、 ま た 粒 径 は 単 分 散 で あ っ た 。 さ ら に 、2Tの 電 子 構 造 は 金 ナ ノ 粒 子 の 作 製 前 後 で 変 化 し て お ら ず 、 目 的 と す る 分 子 と 金 ナ ノ 粒 子 の 電 子 構 造 が 互 い に 孤 立 し た 新 規 金 ナ ノ 粒 子 を 作 製 す る こ と に 成 功 し た 。 次 に2TAuNPを 電 極 上 に 集 積 化 し 、 電 子 輸 送 特 性 の 検 討 を 行 っ た 。2TlAuNP集 積 体 の 電 子 輸 送 特 性 は 温 度 に 依 存 し 主 に2つ の 挙 動 が 現 わ れ た 。 室 温 か ら50Kは 隣 接 粒 子 間 を 熱 励 起 し た 電 子 が

(4)

ホッピングするアレニウス型の挙動を示した。50K以下の温度領域ではアレニウス型からの逸 脱が観測された。この挙動は、ホッピング伝導電子とホッピングサイト(金ナノ粒子)間にク ー□ン相互作用の存在を考慮したES‑VRH型伝導で説明することができた。この挙動が出現し たことで金ナノ粒子の帯電効果の存在が示唆された。これを裏付ける様に10K以下の温度でES‑

VRH型からの逸脱が観測された。4.2KのI‑V特性より、単一電子トンネリングの存在が確認で きた 。しかし、量子伝導が発現した温度領域が10K以下と狭く、かつES‑VRH型伝導と共存し ていた。従って粒子間の量子伝導電子と分子の電子構造との相関を検討するには不完全な系で あった。その原因として粒子間距離の不均一性が考えられる。量子伝導を効率良く発現させる にはトンネル距離を可能な限り短くし均一に揃える必要がある。また、分子の電子構造と粒子 間の量子伝導電子との相関を明確にするには同じ幾何構造でながら、異なる電子構造を有する 分子を探索する必要があった。

  これらの条件を満たす機能性分子として、希土類フ夕口シアニンダブルデッカー錯体に着目 し、この錯体と金ナノ粒子が非共有結合的に連結された集積体を作製した。錯体はフタロシア ニンの兀環状平面と金ナノ粒子表面とが平行になる配置で安定化していた。また2T‑AuNPと同様、

錯体は物理吸着し粒子と互しゝの電子構造が孤立した状態であることを確認した。次に集積体の 電子輸送特性を測定し、粒子間のトンネル電子と分子の電子構造の相関を検討した。具体的に は希土類イオンとして4勒道が閉殻のLu3+、1次の磁気異方性をもつn3゛フ夕口シアニンダブル デッカーを用しゝ、その量子伝導特性を抵抗の温度依存性、ム膳性から比較検討した。結果、

冊Pc2−A1岬集積体において量子伝導電子と希土類イオンの磁性が相関した特異な量子伝導挙動 が発現することを見出した。分子の電子構造の差異が明確に反映されたのは15〜20K以下の低 温領域であった。4蹴道が閉殻の電子構造を有するI亅やc2・AuNP集積体においては、LuPc2はト ンネル障壁として機能し、粒子間を伝導する電子は単一電子トンネリングであることが明らか となった。また、Esふ侭H、単一電子トンネリングが発現する温度領域とその意味を帯電工ネ ルギーkから厳密に説明することができた。一方、開殻の電子構造を有するTbPc2‐AuNP集積体 においては、帯電エネルギーの計算から電子輸送挙動を予測する事ばできなかった。さらに単 一電子トンネリングが発現するべき30K以下の温度領域において、TbPc2はトンネル障壁を通 過する電子を強く非弾性的に散乱することで単一電子トンネリングを抑制した。このように両 者の電子輸送特性の差異は錯体の4f電子と粒子間の量子伝導電子の観点から説明することが可 能であった。

  以上本研究においては、電子活性かつ物理吸着で安定化した金ナノ粒子を作製し、その集積 体の電子輸送特性を検討することで量子伝導電子(トンネル電子)と分子の電子・磁気構造を 反映した特異な特性を観察した。物理吸着による金ナノ粒子安定化は兀環状平面をもっポルフイ リン誘導体、フ夕口シアニン錯体で可能であることを発見した。量子伝導電子と希土類イオン の磁性が相関した特異な量子伝導挙動はIbPc2一A卿集積体において観察することができた。本 研究で作製した試料、観測した電子輸送特性は、極めて新規性の高いものである。従ってこの 研究を根幹とした、さらなる発展が期待できる。

  審査委員一同は,これらの成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ熱心であり,大学

(5)

院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ,申請者が博士(環境科学)の学位を受ける のに充分な資格を有するものと判定した。

参照

関連したドキュメント

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

学識経験者 品川 明 (しながわ あきら) 学習院女子大学 環境教育センター 教授 学識経験者 柳井 重人 (やない しげと) 千葉大学大学院

その産生はアルドステロン合成酵素(酵素遺伝 子CYP11B2)により調節されている.CYP11B2

を軌道にのせることができた。最後の2年間 では,本学が他大学に比して遅々としていた