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Vol.40 , No.2(1992)102森 喜子「ネパール国立古文書館所蔵『デーヴィーマーハートミヤ絵図』にみられる女神の図像的特徴」

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Academic year: 2021

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(1)

印度學佛教學研 究第40巻第2號

李成4年3月

ネ パ ー ル 国 立 古 文 書 館 所 蔵 『デ 』 ヴ ィー マ ー

ハ ー ト ミヤ 絵 図 』 に み られ る女 神 の 図像 的 特 徴

1.『 デ ー ヴ ィ ーマ ー ハ ー トミヤ(女 神の偉大 さ)』iprasadvivedi,

(DM)は,

ヒ ン ドゥー教 の女 神 信 仰 に お い て最 も重 要 な聖 典 の1つ で, そ こ にあ らわ れ る女

神 の姿 は古 くか ら多 くの彫 像 や 絵 画 に表 され て きた。 カ トマ ン ドゥに あ る ネ パ ー

ル の 国立 古 文 書館(National Archives)所 蔵 の 『デ ー ヴ ィ ー マ ーハ ー ト ミヤ絵 図』

(iprasad Dvivedi, Hindi sahity

Ms. No. Ca. 2422, Sub. No. 30)1)は125枚 の彩 色画

で構 成 され, 「ka.1」 と記 され た1枚

を除 く124枚 の画 面 に デ ー ヴ ァナ ー ガ リー

で1か

ら124の 番 号 が 付 され て い る。No.124は

この絵 図 と関 係 が あゐ た と考 え

られ る 一 家 の 肖像 で, Nos. 11-117, 119-123にDMの

女 神 神 話 が 描 か れ る。

Nos. 1-10, No. 118に は 女神 が1枚 に1人 ず つ 描 か れ る が, 名 称 な どの 記 述 も

な くDMの

神 話 の 中 に は対 応 箇 所 が 見 られ な い。 こ こで は この絵 図 中 の 女 神 の 図

像 的 特 徴 を整 理 し, 文 献 資料 にみ られ る女 神 の 記 述 との 比較 を試 み る。

豆.絵 図 に み られ る 女 神 の 図 像 的 特 徴

(1)

DMの

神 話 は3つ の エ ビ ソー ドか ら構 成 され る。 絵 図 中 の第1エ

ピ ソ ー ドを

示 す部 分 で は, 剣, 楯, 杯, 施 無 畏 印 を 示 した 女 神 が ヴ ィ シ ュ ヌの 体 か ら生'じた

場 面 がNo.

18に 描 かれ る。 第2エ

ピ ソ ー ドの 水 牛 の魔 神 を 殺す 女 神 は16瞥 で 数

珠, 水瓶, 剣, 蓮 華, 杖, 弓, 羅 索, 鉤, 円 盤, ほ ら貝, 槍, 矢, 金 剛杵, 金 剛

鈴, ど くろ 杖 な どを 持 ち, 身 色 は 赤 であ る。

第3エ

ピ ソ ー ドに は 数 多 くの 女 神 が 出 現 す る。 シ ュ ンバ と ニ シ ュ ンバ を 殺 す 女

神 は, 8腎 で, 弓, ほ ら貝, 鉤, 蓮 華, 矢, 円 盤, 杵, 羅 索 を 持 つ が, 場 面 に よ

って い ず れ か が 三 叉 戟 や 施 無 畏 印 に変 わ った りす る。 身 色 は 白 であ る。 この 女 神

を 助 け るKali女

神 は 身 色 は 青 で, 剣, 絹 索, 楯, が い 骨 を も つ。 ま た 七 母 神

Saptamatrk巨

は い ず れ も4曹 で, そ れ ぞ れ が夫 で あ る神 々 と同様 の持 物 や 乗 り

物 を もつ。 シ ュ ンバ とニ シ ュ ンバ を殺 す女 神 の 力saktiの 具 現 で あ

るCapdikasa-ktiは16壁

で, 鉤, 蓮華, ほ ら貝, 杖, 絹 索, 三 叉 戟, 金 剛 杵, ど くろ杖, 槍,

矢, 弓 を 持 ち, ジ ャ ッカル の 群 れ を した が え る。 第3エ

ピ ソー ドの最 後 に は, 王

(2)

-1019-ネパ ール国立古 文書館所蔵 『デーヴ ィーマーハ ー トミヤ絵 図』(森)

(69)

と商 人 の 前 に 女 神 が 出 現 し, 願 い をか な え る。 そ の女 神 はNo. 120に 身 色 が赤 で

4 讐 に 羅 索, 矢, 鉤, 弓 を 持 つ 姿 で 描 か れ る。

(2)

Nos. 1-10, 118に み られ る 女 神 の 図 像 的 特 徴 は 次 の とお りで あ る。

No. 1の 女 神 は 身 色 は青 で10壁, 右 手 に剣, 杖, 弓, 三 叉 戟, 人 頭 を 持 ち, 左

手 に 円 盤, 矢, 杖, ヅ ー メ ラ ン(?), ほ ら貝 を 持 つ。 左 兄 の部 分 は破 損 して い る

が右 に5本 の兄 が あ り, 左 上部 以外 に 九面 が確 認 で き, 十 面十 兄 を もつ と考 え ら

れ る。No. 2の 女 神 は 身 色 は赤 で18腎,

右 手 に羅 索, 杯, ほ ら貝, 剣, ど く ろ

杖, 弓, 金 剛 杵, 杖, 数珠 を 持 ち, 左 手 に 円 盤, 三 叉戟, 金 剛 鈴, 楯, 短 剣, 三

叉 棒, 蓮 華, 矢, 斧 を持 つ。No. 3の 女 神 は 白 で8壁, 右 手 に 弓, 杵, 鉤, 鈴 を

も ち, 左 手 に矢, 円 盤, ほ ら貝, 三 叉戟 を 持 つ。No. 4は 赤 で4管, 数 珠, 与 願

印を 右 手 で示 し, 左 手 で 経 画 と施 無 畏 印 を 示 す。No. 5は 黒 で4壁, 右 手 で楯 と

ほ ら貝 を も ち, 左 手 で剣 と円 盤 を持 つ。No. 6は 灰 色 で4壁, 両 手 で ヴ ィー ナを

持 ち, 右 手 で ほ ら貝, 左 手 で杯 を持 つ。No. 7は 赤 で4壁, 右 手 で羅 索 と蓮 華 を

持 ち, 左 手 で鉤 と弓 を持 つ。No.8は

赤 で4壁, 右 手 で与 願 印 と羅 索 を 示 し, 左

手 で 弓 と鉤 を持 つ。No. 9は 赤 で4轄, 右 手 で羅 索, 弓を 持 ち, 左 手 で鉤 と矢 を

持 つ。No. 10は 赤 で4管, 右 手 で 弓, ほ ら貝 を 持 ち, 左 手 で矢, 円盤 を持 つ。

No. 118は 赤 で6管, 右 手 に 円盤, 剣, 棒 を持 ち, 左 手 で 杖, ブ ー メ ラ ン(?),

弓を 持 ち, 剣 と楯 を 持 つ4人

の 女性 を 従 え る。

III. 文 献 にみ られ る女 神 の 図像 的 特 徴 と絵 図 の女 神

(1)DMの

第1エ

ピ ソー ドで は, 女 神 を ヴ ィ シ ュ ヌの体 か ら出現 させ るた め, ブ

ラ フ マ ーが 女 神 へ の讃 歌 を 唱 え る。DMの

第1章 第61偶(DM

I.61)で

は女 神

は 「

剣, 三 叉 戟, 杖, 円盤, ほ ら貝, 矢, 弓, 鉄 棒, ブ シ ュ ンデ ィーを もつ 」 と

され, 絵 図 中 の第1エ

ピ ソー ドの女 神 とは一 致 しな い。

第2エ

ピ ソー ドで は神 々 の発 した 光 線 か ら女 神 が 出現 す る 場 面 で(DM II.

19

-31), 神 々が 贈 った 品 々 として, 三 叉 戟, 円盤, ほ ら貝, シ ャ クテ ィ, 矢, 弓,

金 剛 杵, 鈴, カ ー ラ ダ ンダ, 絹 索, 数 珠, 水 瓶, 斧, 杯, 蓮 華 な どが 述 べ られ,

絵 図 中 の 第2エ

ピ ソー ドの女 神 の持 物 は これ ら とほ ぼ一 致 す る。

第3エ

ピ ソー ドの 中 心 とな る女 神 に関 して は文 献 にそ の姿 の ま とま った 記 述 は

な い が, 戦 い の 中 で 「

剣, 弓, 矢 」 「

戟, 金 剛 杵, 剣, 楯 」 「

ほ ら貝, 鈴 」 を 用 い

た とされ る(DM VIII. 30,

60, IX. 17etc.)。これ らは 絵 図 中 の 女 神 の 持 物 に 含 まれ る

が, 絵 図 の 女 神 が 持 つ 杵, 覇 索, 鉤 な どの 記 述 は 文 献 には な い。 カ ー リー, 七 母

神 の 文 献 中 の記 述 と絵 図 はほ ぼ 一 致 す る2)Qチ ャ ンデ ィカ ー シ ャ クテ ィの姿 の具

(3)

-1018-(70) ネパ ー1ル国 立 古 文 書 館 所 蔵 『デ ー ヴ ィ マ ーハ ー トミヤ絵 図』(森) 体 的 な 記 述 はDMに は み ら れ な い3)。

(2) DMに 付 随 し た 瞑 想 法 と の 比 較

DMは 『マ ー ル カ ン デ ー ヤ プ ラ ー ナ 』George Grierson, Thelayaの 晶 部 で は あ る が, 『サ プ タ シ ャ テ ィ ー 』George Grierson, 『チ ャ ン デ ィ ー 』Candiな ど の 表 題 で 独 立 し た 書 物 と し 扱 わ れ る こ と も 多 い。 そ の 場 合 プ ラ ご ナ に 含 ま れ る 神 話(全13章)の 部 分 に 加 え て, 女 神 へ の 讃 歌, 瞑 想 法(dhyana), 儀 礼 の 手 順 な ど が 付 加 さ れ る6, 瞑 想 法 はDMの 三 つ の エ ピ ソ ー ドの 前(第1章, 第2章, 第5章 の前)に お か れ る 場 合 や, DMの13章 の 各 々 の 前 に お か れ る 場 合 が あ る4)。 三 つ の エ ピ ソ ー ド の 前 の 瞑 想 法 に 描 か れ る 女 神 の 姿 は 次 の と お り で あ る。 1 Mahakalika女 神。 身 色 は青 で 十面 十兄, 剣, 円盤, 杖, 弓, 鉄 棒, 三 叉 戟, ブ シ ュ ソデ ィ, 人 頭, ほ ら貝 を 手 に 持 つ。 2 Mahalaksmi女 神。 数 珠, 斧, 杖, 矢, 金 剛杵, 蓮 華, 弓, 水 瓶, シ ャ クテ ィ, 剣, 楯, ほ ら貝, 鈴, 酒 器, 三 叉戟, 円 盤 を 持 ち, 身 色 は さん ご色。 3.Sarasvati女 神。 鈴, 戟, 鍬, ほ ら貝, 杵, 円 盤, 弓, 剣 を 持 つ。 これ ら の 記 述 と 絵 図 のNos. 1-3の 女 神 の 姿 を 比 較 す る と, 持 物, 讐 数 な ど 多 く の 点 で 一 致 す る。 こ れ ら の 瞑 想 法 はBhaskararayaのDMに 対 す る 注 釈 に も 見 られ る5)。 ま たDMに 付 属 し た ア ソ ガ(ahga, 部 分)と 呼 ば れ る 文 献 の1つ にV認 kGeorge Grierson, が あ る が, そ こ に もMahakah, Mahalaksmi, Sarasvatiの 姿 の 記 述 が あ る6)。 そ の 記 述 と 三 つ の 瞑 想 法 を 比 べ る と, 表 現 は 異 な る が, 持 物 等 ぽ 一 致 す る。 さ ら に 『デ ー ヴ ィ ー バ ー ガ ヴ ァ タ プ ラ ー ナ 』George Grierson,

第9巻50章65-72偶 に あ る 女 神 の 瞑 想 法 と の 間 に も多 く の 一 致 が み られ る。 瞑 想 法 が13あ る 各 章 の 前 に お か れ る 場 合, 多 くの 版 で は 先 述 し た 三 つ の 瞑 想 法 が 第1章, 第2章, 第5章 の 前 に あ る。 第3章 にJagadamba, 第4章 にJaya, 第6章 Padmavati, 第7章 にMatahgi, 第8章 にBhavani, 第9章 にAmbi-kesa, 第10章 にKamesvari, 第11章 にBhuvanesi, 第12章 にDurga, 第13章 に Sivaの 瞑 想 法 が あ る。 一 方, Bharanyに よ っ て18世 紀 の パ ハ リー 画 に お け る DMの 瞑 想 法 と 図 版 が 発 表 さ れ て い る7)。 そ こ で は 第5章 にDurga, 第6章 に Sarasvati, 第8章 にPadmavatiが お か れ, 他 に み られ るBhavaniが な い。 第

5章 のDurgaの 瞑 想 法 は 他 に み られ な い。1

こ の13の 瞑 想 法 と 絵 図 を 比 較 す る と, No. 3の 女 神 は 第3章 のJagadamba, No.5は 第7章 のMatahgi, No. 9は 第8章 のBhavani又 はBharany版 の 第 13章 のSiva, No. 10はBharany版 の 第5章 のDurgaに 一 致 す る。No. 5と

(4)

-1017-ネ パ ール 国 立古 文 書 館 所 蔵 デ ー ヴ ィ ー マ ーハ ー トミ ヤ絵 図 』(森) (71) 第4章 のJaya, No.118と 第12章 のDurgaも 一 致 す る 点 が 多 い。

IV.こ の 絵 図 で 神 話 を 表 し お 部 分 以 外 の 図 版 に 描 か れ た 女 神 はDMに 付 け られ た 瞑 想 法 と 関 連 が あ り, Nos. 1-3はMahakalika, MahalakSmi, Sarasvatiを 示 す と 考 え ら れ る。 こ れ ら の 瞑 想 法 の 起 源 は 明 ら か は な い が, Mahakaliは 本 稿IIIの(1)で 述 べ たDM I. 61の 女 神 の 記 述 に 近 く, Mahalaksmiは 第2エ ピ ソ

ー ドで 神 々 が 女 神 に 贈 っ た 武 器 等 を 持 物 と し て 持 つ。

絵 図 中 の 神 話 部 分 と そ れ 以 外 の 女 神 を 比 較 す る と, 第2エ ピ ソ ー ドの 水 牛 の 魔 神 を 殺 す 女 神 とNo. 2の 女 神, ま た 第3エ ピ ソ ー ドの シ ュ ン バ と ニ シ ュ シ バ を 殺 す 女 神 とNo. 3の 女 神 に は 一 致 す る 点 が 多 い。 これ はNo. 2とNo. 3の 女 神 が 第2, 第3の エ ピ ソ ニ ドの 前 の 瞑 想 法 の 女 神 を 示 す こ と と関 連 が あ る と考 え ら れ る。 ま た 神 話 部 分 の 第13章 に あ ら わ れ る 女 神 ぽNo.9の 女 神 に 一 致 し, No.9の 女 神 はBharany版 の 第13章 の 瞑 想 法 の 女 神 の 姿 と 一 致 す る。 こ の よ うに こ の 絵 図 の 女 神 の 図 像 的 特 徴 はDMの 神 話 の み で は な く, 瞑 想 法 な ど の 文 献 と も 関 連 が あ り, DMの 神 話 や 女 神 を 造 形 作 品 に 表 す 際 にDMに 付 け ら れ た 神 話 以 外 の 文 献 も 重 要 な 役 割 を 持 っ て い た こ とを 示 す と考 え ら れ る。 1) こ の絵 図 の概 要 にっ い て は拙 稿 「ネパ ー ル 国立 古 文 書 館 所 蔵 『デ ー ヴ ィー マ ー ハ ー ト ミヤ絵 図』」『東 海 仏 教 』.第36輯, 1991, pp.99-89参 照。 2) カ ー リー につ い て はDM W.5-7。 文 献 にkhavahga(ど くろ杖)と あ るが, 絵 図 で は が い骨 を持 つ。 七 母 神 に つ い て はVIII. 11-20。 3)絵 図 に ジ ャ ッ カル が 描 かれ るの はDM VIII. 20.「 百 匹 の ジ ャ ッ カル の よ うに吠 え る」 VIII. 26.「(魔神の)肉で 私 の ジ ャ ッ カル を満 兄 させ る 」等 を表 現 した と考 え られ る。 4)前 者 にNirnayasagara Press版 やRamakrsna Math版 な どが あ り, 後 者 にGita

Press版, Jaya Nepal Prakasam版 な どが あ る。 5) Datvata Samhita with Commentary of Aiasinga Bhatta

6) atvata Samhita with Cntary of Ai 11-16. 他 にahgaと してatvata Samhita with Commentary, Patvata Samhita with Commentary of Aiasinga な どが あ げ られ る。

7) C.Bharany, atvata Samhita with Commentary of Aiasinga Bhatta Delhi, 1984. <キ ー ワー ド>Devimahatmya, 瞑 想 法, 女 神 信 仰

(名古 屋 大 学 大 学 院)

参照

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