• 検索結果がありません。

熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学講座 

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学講座 "

Copied!
55
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学講座 

片渕秀隆 

2021年3月11日            熊本大学大学院生命科学研究部 令和2年度退職記念講演会 

阿蘇根子岳とHale-Bopp彗星 

( 故 兼城鎮雄博士撮影) 

(2)

秋元隆次郎教授  

(東京帝國大学卒業) 

明治29年4月〜明治34年4月  大正4年7月〜大正11年11月 

谷口彌三郎教授 

(熊本醫学校卒業) 

大正13年4月〜昭和19年3月 

池上五郎教授  

(京都帝國大学福岡醫科大学卒業) 

明治34年11月〜大正5年1月 

山崎正董教授 

(東京帝國大学卒業) 

長谷川敏雄教授  

(東京帝国大学卒業) 

昭和19年9月〜昭和22年3月  昭和22年6月〜昭和44年3月 

加来道隆教授  

(東京帝国大学卒業) 

昭和45年4月〜昭和60年9月 

前山昌男教授  

(大阪帝国大学卒業) 

昭和61年4月〜平成18年3月 

岡村 均教授  

(京都大学卒業) 

1896年(明治29年)創設 

平成16年9月〜令和3年3月 

片渕秀隆  

(熊本大学卒業) 

(3)

1982年  1984年  1993年  2004年  2021年 

研修医 

(前山昌男教授)(岡村 均教授) 

医員  助手  講師  助教授   准教授 

教授 

熊本大学  現在 

 日本婦人科腫瘍学会 理事長   日本臨床分子形態学会 理事長   日本癌治療学会 副理事長 

 日本婦人科がん検診学会 副理事長    JSAWI 

日本女性疾患画像・病理診断学会

 代表  1984年〜1988年 

大学院 

熊本大学病理学教室 

(高橋 潔教授) 

1993年〜1995年 

Post-doctoral Research Fellow  Johns Hopkins University  Department of Pathology  (Robert J. Kurman教授) 

2015年〜2018年 

日本学術振興会システムセンター  専門研究員 

卵胞発育・排卵   メカニズム 

子宮内膜症  化生説  腹腔マクロファージ        チョコレート嚢胞 発癌  卵巣癌  ヒト卵巣表層上皮       がん幹細胞        ケミカル物質 

子宮内膜癌 DNAミスマッチ修復遺伝子 エストロゲン  プロラクチン 

生殖生理とマクロファージ 卵巣 卵管 子宮頸部 脱落膜 

(4)

   

新 し い 症 状  

  最 新 の 設 備 を 誇 る 病 院 が あ っ た 。 ど こ が 最 新   な の か と い う と 、 大 き く 精 巧 な コ ン ピ ュ ー タ ー   が 導 入 さ れ 、 そ れ が 活 躍 し て い る の だ   。  

そ れ が 患 者 を 診 察 し 、

た く わ え ら れ て い る 各   種 の デ ー タ と の 照 合 を 自 動 的 に や り 、 た ち ま ち   の う ち に 診 断 が 下 さ れ る 。

そ れ は 正 確 で 、 人 間 の   医 者 の 場 合 に 起 こ り う る 、 不 注 意 や 先 入 観 に よ   る 診 断 ち が い な ど 、 ま っ た く な く な っ た   。  

患 者 は 大 ぜ い 押 し か け る が 、 ス ピ ー デ ィ ー に   処 理 さ れ る の で 、 待 た さ れ る と い う 不 満 は な い   。 そ し

て 、 適 切 な 治 療 を 受 け 、 薬 の 処 方 を も ら い   、 時

に は 入 院 し 、 健 康 に も ど る 。 申 し ぶ ん な い 成 果   を あ げ て い る   。  

き ょ う も 、 ひ と り の 女 が 、 男 の 手 を 引 っ ぱ っ て   病 院 の 受 付 に や っ て き た 。

・  

(1926~1997) 

星新一, 『未来イソップ「新しい症状」』, 新潮文庫, 1982, p.102-108.

(5)

1953 � James D. Watson と Francis H.C. Crick がDNAの2重らせん構造を提唱 �

1977 � DNAシーケンス技術(サンガー法)の開発 � 1982 � ヒトがん原遺伝子RASの発見 �

1994 � 遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子BRCA1の同定 � 2003 � ヒトゲノム計画の完了(1991年開始) �

2005 � 世界初の次世代シーケンサー(NGS)「454」の発売 � 2006 � がんゲノムプロジェクトThe Cancer Genome Atlas 

(TCGA)の開始 

2010 � 日本人の全ゲノムが初めて解読 �

2015 � Barack H. Obama II 米国大統領が 

「Precision Medicine Initiative」を発表 �

2017 � 米国「Genome Aggregation Database」 

14万人のゲノムデータベース公開 �

(6)

日本癌治療学会 

日本病理学会編 

(7)

ガイドラインはひとつのがんを規約に基づく進行期

や病勢などで大凡一括りにしたものです。個々の病

態をその患者さんの生活に照らしあわせて個別にみ

るという視点は、現場の臨床医に与えられた義務で

あり特権です。 そして、ベッドサイドには患者さん

を取り巻く現実とともに真実があり、ベンチでは思

いもつかない発想に時に辿り着きます。 �

(8)

子  宮  内 膜  癌 

高エストロゲン環境  前癌病変  癌 

単純型異型増殖症 

増殖症  増殖症  異型増殖症  類内膜癌 

EIN 

子宮内膜  母細胞 

子  宮  頸  癌 

扁平上皮癌 

HPV感染  前癌病変  癌 

母細胞  SCJ 

CIN 3  CIN 2 

CIN 1 

排卵?環境物質?  前癌病変?  癌 

卵  巣 

癌  卵管 

漿液性卵管上皮内癌  (STIC)  

母細胞 

転移  

子宮内膜症  卵巣表層上皮 

(OSE)   母細胞 

de novo 発生  

子宮内膜症  母細胞 

腺腫-境界悪性  

  高異型度漿液性癌  明細胞癌 

類内膜癌  粘液性癌 

 低異型度漿液性癌 

漿液粘液性癌 

(9)

月経血の腹腔内逆流 

(10)

   We then must assume that proliferations of the mesothelium can  result from foreign material.  This conclusion has been demonstrated  in the studies of Henderson and co-workers, who found talc granules  in 10 of 13 papillary ovarian tumors.  The process by which these  proliferations are converted into aggressive and lethal tumors 

remains to be elucidated.  Asbestos has been at least circumstantially  involved in the development of the common mesothelioma of the 

pleural space, a tumor which is routinely fatal over a period of time.     

   Possibly some agent enters the peritoneal cavity through the 

fallopian tube, irritates the pelvic peritoneum, produces proliferation  and with an added unknown ingredient results in the development of  malignancy. 

Woodruff JD. The Johns Hopkins Med J 144: 117-120, 1979  藤井信吾 日・婦人科病理・コルポ誌 7: 16-32, 1989 

James D. Woodruff 

(1912~1996) 

The Portrait Collection of  Johns Hopkins Medicine, 1993 

1962 

 米国 Johns Hopkins 大学で遺伝学を学んだ  Rachel L. Carsonは、内務省魚類野生生物局で生  物学者として活躍した。 彼女は、当時農薬に使用 されていた DDTをはじめとした合成化学物質の蓄 積が環境悪化を招く危険性を、 鳥たちが鳴かなく なった春という出来事を通して訴えた。これが今 日の環境保護運動の始まりとなった。 

 没後、1980年に大領領自由勲章を授与された。 

Rachel L. Carson 

(1907~1964) 

https://www.flickr.com/photos/

25053835@N03/3359709268/ 

1962年 

(11)

July 12, 2018

ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、22人の卵巣癌の女性より同社製のベ ビーパウダーが発癌に関わったとする告訴を受け敗訴した。その後も複数の告 訴を受け、多額の賠償が求められている。

ベビーパウダーは元々乳児のオムツかぶれに対するパウダーとして発 売されたが、1970年代より“Best for the Baby ‒ Best for You”,

“Baby products are milder than others”  を宣伝文句として世代を 問わぬ様々な効用を謳いシェアを拡大した。特に女性においては、肌 触りを良くすることや消臭を目的として外陰部への直接使用が多く認 められていた。ベビーパウダーの主成分はタルクで、タルクの生成時 に除去すべきアスベストの混入が否定されていない。アスベストなら びにタルクは、珪酸塩を主成分とした繊維状鉱物である。

アスベスト タルク

(12)

Toyokuni S.  Arch Biochem Biophys  595; 46-49: 2016 

京都大学医学部病理学教室岡田研で、鉄ニトリロ三酢酸鉄(Fe-NTA)による腎細胞癌の発がん研 究に携わり、Fe-NTAはフェントン反応による酸化ストレスを惹起し発がんをきたすことをin vivo  で形態学的に捉える方法を確立した。その後、アスベスト、カーボンナノチューブでも同様の機序 で悪性中皮腫をきたすことを明らかとした。酸化ストレスは、発がんを氷山に例えると海面下の部 分を担っているとの仮説のもとで発がん研究を進めている。 

豊國伸哉教授(名古屋大学大学院医学研究科病理病態学講座生体反応病理学) 

Langseth H,  et al. J Epidemiol Com Health  62: 358-360, 2008   Reid A,  et al .  Cancer Epi Biomark Prev  20: 1287‒95, 2011 

アスベスト曝露歴と卵巣癌のリスク  タルク使用と卵巣癌のリスク 

(13)

ヒト卵巣表層上皮細胞へのアスベスト・タルクの曝露は、発癌に関わる活性酸素の発生源である鉄代謝に変化を与え、細胞内の触媒性 2価鉄の増加をもたらす。 

phase-contrast   microscope 

Fe

2+

 (siRhoNox-1) 

20µm 

20µm 

Fe

2+

 (siRhoNox-1) 

20µm 

20µm 

phase-contrast   microscope 

Control  Crocidolite

 

phase-contrast   microscope 

Fe

2+

 (siRhoNox-1) 

20µm 

20µm 

Talc

 

触媒性2価鉄(Fe 2+ )の増加→フェントン反応(活性酸素を介した細胞傷害性や発癌性)の亢進 �

豊国伸哉.令和元年度CREST「細胞外微粒子への生体応答と発がん・動脈硬化症との関連の解析」 

15 25

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

talc A

A

Legend 15 25

(µg/cm

2

Talc 

Fluorescent intensity of Fe

2+

   in viable cells( siRhoNox-1) (fold)

 

***  *** 

***: p<0.001 

Ctrl  15  25 

cont

5 15 25

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

siRhoNox-1 sum of 3 procedures

***

***

ns

cro

Fluorescent intensity of Fe

2+

   in viable cells( siRhoNox-1) (fold)

 

Ctrl  5  15  25 

(µg/cm

2

Crocidolite 

***  *** 

***: p<0.001 

Control 

γH2AX / hoechst33342 

Talc 

γH2AX / hoechst33342 

5µm 

γH2AX positive cell (%)  

5µm 

γH2AX 

Control 

Crocidolite 

Crocidolite 

γH2AX /  hoechst33342 

5µm 

Talc  Control 

Lamin b1  γH2AX  Lamin b1 

****: p<0.01 

ヒト卵巣表層上皮細胞へのアスベスト・タルクの曝露は、用量依存性の酸化ストレスレベルの上昇、そしてDNA二本鎖切断を惹起する。 

n h a e

0 10 20 30 40

Data 2

n h a e

** 

** 

アスベスト/タルクの曝露→γH2AX(DNA二本鎖切断マーカー)の亢進→ DNA損傷 

Sasaki R, et al. Carcinogenesis 30: 423-431, 2009 

(14)

卵巣  卵巣嚢 

卵巣への曝露モデルラット 

解剖  6週齢 

卵巣嚢内注入   (n=7) 

卵巣嚢内注入 

1.0mg/200µl saline 

卵巣嚢  卵巣 

子宮 

6週 ウイスターラット 

アスベストならびにタルクの曝露によって、早期より卵巣表層上皮細胞に異型が認められる。

(曝露は1年以上で、その後も継続中) 

上皮性腫瘍 

 CK7 (+), CK20 (+),    ERα (+) 

   Ki67 60% (+)      p53 (-) 

左側卵管 

上皮・間葉系混合腫瘍 

   Ki67 上皮:5% (+)         間質:50% (+) 

AE1/AE3 

100µm 

右側卵巣 

100µm 

タルク暴露15か月後 

右側卵巣 

左側卵巣 

左側子宮  アスベスト曝露14か月  右側卵巣 

左側卵巣 

右側子宮  左側子宮 

左側卵巣 

豊国伸哉.令和元年度CREST「細胞外微粒子への生体応答と発がん・動脈硬化症との関連の解析」 

(15)

卵巣癌予防のために、NCCNガイドラインはBRCA変異のある女性への予防的 卵巣・卵管切除を推奨している。 

NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, 2019 

そして、昨春、本邦においても、遺伝性乳癌卵巣癌 (HBOC)に対して予防的乳  房切除、予防的卵巣・卵管切除が保険適応となった。 

Mikami M, et al. J Gynecol Oncol 28: e52, 2017 

日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会は、全国施設調査によって、良性婦人科 疾患における両側卵管切除の追加が卵巣癌を予防する可能性を報告している。

 HBOCにおける卵管切除の考えは、卵巣癌のSTIC 

(漿液性卵管上皮内癌)説によるところが大きい。 

 一方、卵巣癌の発癌には女性の解剖学的構造から外的  因子の経卵管性の関与が考えられる。私たちの解析結果  から、アスベストあるいはタルクが、これまで母細胞と  されていた卵巣表層上皮の鉄代謝を変化させ活性酸素の  産生を惹起することで卵巣癌に至る可能性が示された。 

 難治性の卵巣癌の予防という視点に立てば、外的環境  因子が骨盤腔内に到達する経路を遮断するといった意味  からも、卵管切除術が有意義である可能性がある。 

田代浩徳,片渕秀隆.卵巣癌.一冊で わかる婦人科腫瘍・疾患 片渕秀隆,

森谷卓也編 文光堂 24~25, 2017  

(16)

Omentum cake 

(17)

両側付属器摘出術+子宮全摘出術+大網切除術+腹腔細胞診+腹腔内各所の生検に 加え,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)を実施することを推奨する。 

推奨の強さ 1(↑↑) エビデンスレベル B (合意率 100%) 

推奨 

【解説】早期卵巣癌が予想される場合には、患側付属器摘出術のみではなく、転移や浸潤の有無      を確認するために対側付属器摘出術および子宮全摘出術(基本的には単純子宮全摘出      術)を施行、また腹腔内播種検索のために腹腔細胞診(腹水または洗浄腹水)にあわせ      て大網切除術、腹腔内各所の腹膜生検が推奨される。 

      大網(だいもう)の切除により炎症防御機構や殺腫         瘍性の喪失、大網の豊富な栄養血管の消失による腹部 

       手術後再構築の遅延も報告されている。しかしながら、早期卵         早期卵巣癌と術中診断された症例の2〜7%に大網転 

       移があることから、早期卵巣癌に対しても大網切除術         は必須である。 

日本産科婦人科学会編 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版(編集委員長:片渕秀隆)  235, 2018 

 Ⅰ期からⅡA期と考えられる患者に対して,どのような進行期決定開腹手術が奨め 

     られるか? 

(18)

Log-lank P =0.002 

全生存率  

0.0 0.2 0.4 0.6 1.0 0.8 

日  大網転移 

無  有 

治療効果  総数 (%) 

(n=25) 

大網転移 

P value  無 (n=6)  有 (n=19) 

Complete response (CR)  7 (28.0%)  4 (66.7%)  3 (15.8%)  0.016  Partial response (PR)  4 (16.0%)   1 (16.7%)  3 (15.8%)   0.959  Stable disease (SD)  4 (16.0%)   0 (0%)  4 (21.1%)   0.220  Progressive disease (PD)  10 (40.0%)   1 (16.7%)   9 (47.4%)   0.181  Overall response rate  

(ORR: CR+PR)  11 (44.0%)  5 (83.3%)   6 (31.6%)  0.026 

大網転移の有無は進行卵巣癌の予後に関与している。特に、大網転移が有る症例は、 

無い症例と比較して、抗癌剤抵抗性を示す。  Iwagoi Y, et al., Int J Clin Oncol 2021 (in press)  Log-lank P =0.036 

無 有 

無増悪生存率 

0.0 0.2 0.4 0.6 1.0 0.8 

0  500  1,000  1,500  日 

大網転移  無  有 

(19)

Guest   mouse  Host  

mouse 

Host mouse  with tumors 

Guest mouse  with tumors 

Host mouse  Guest mouse 

大網転移  播種 

Paradeep S, et al. Cancer Cell 26: 77-91, 2017 

大網転移は、非血行性の腹腔内播種に加え、血行性転移も起こり、脂肪細胞 を中心とした腫瘍微小  環境がその後の腹腔内全体の播種病巣の形成に深く関与している。 

切 

り 

離 

す 

(20)

SIK2はAMPKファミリーに属する蛋白リン酸化酵素であり、脂肪細胞に高発現し、その代謝応答を制  御している。近年では、がん細胞の増殖や細胞周期の制御に密接に関わっていることが指摘されている。 

大網を構成する脂肪細胞は、卵巣癌細胞との細胞間相互作用を通じてSIK2を活性化させる。活性化したSIK2 は、

PI3K/AKTシグナル伝達経路の制御、ならびにβ-酸化を亢進させることで、卵巣癌の腹腔内播種を促進している。 

OVCA432 

SKOV3 

Extracellular oxygen consumption  Fluorescence arbitrary units  

Time in hours 

Control  SIK2  

inhibitor 

Miranda F , et al. Cancer Cell 30: 273-289, 2016 

(21)

脂肪細胞を中心とするニッチ形成 

Cancer-associated   adipocyteへの  リプログラミング 

IL-6  IL-8 

アディポネクチン 

MCP-1  TIMP-1 

脂肪細胞 

卵巣癌細胞  大網転移 

 脂肪酸代謝   細胞増殖 

抗癌剤抵抗性  浸潤 

細胞接着 

カルシウム依存性     SIK2の活性化 

SIK2 

IL-6  IL-8 

脂肪酸  

癌細胞への脂肪酸の移行 

 β-酸化 

FABP4     遊離 

  脂肪酸  

Motohara T, et al. Oncogene 38: 2885-2898, 2018 

大網転移の一部は血行性転移によって惹起され、腫瘍細胞は大網で脂肪細胞と

の細胞間相互作用を介して腫瘍微小環境を形成し、やがて腹腔内播種へと進展

する。これらの現象は臨床的にも予後不良や抗癌剤治療抵抗性に密接に関わっ

ていることから、卵巣癌の腫瘍減量手術における大網切除は必須である。。 

(22)

卵巣漿液性癌の砂粒小体の電子顕微鏡写真 

(1990年:片渕秀隆撮影) 

(23)

砂粒小体が多い症例は予後良好で、砂粒小体の形成にはアポトーシスとマクロファージが密接に関与している。 �

CD68  �

ssDNA �

PB0  � PB1 �

PB2  � PB3 �

Motohara T, et al. Cancer Sci 101: 1550-1556, 2010  

無増悪生存率 

月 

症例: 30歳 3妊2産 卵巣癌 Ⅳ期 (pT3cN1M1, liver),  高異型度漿液性癌 

第2次腫瘍縮小手術  

回腸部分切除術+回盲部切除術+傍 大動脈リンパ節郭清術+CDDP 腹腔 内投与(optimal) 

初回手術 

準広汎性子宮全摘出術+両側付属器摘出術+

S字状結腸・直腸部分切除術+骨盤リンパ節 郭清術+大網切除術+CDDP 腹腔内投与

(suboptimal) 

1990年  2003年 

CAP 3コース  CAP 3コース 

死亡 

2007年  初回治療から 

17年5か月 

人工肛門造設術 (直腸腟瘻)  放射線照射 

 50Gy 

2004年  2006年  初回治療から13年 

CDDP+PTX   動注2コース 

Weekly TC   9コース 

CPT-11+CDDP  3コース 

GEM   14コース 

東矢俊光,他 日産婦誌 43: 1717-1720, 1991 

(24)

症例: 42歳 4妊3産 卵巣癌 ⅢC期  (ypT3cN0M0),  高異型度漿液性癌 

第2次腫瘍縮小手術  

準広汎子宮全摘出術+骨盤・傍大動脈 リンパ節郭清術+CDDP 腹腔内投与

(complete) 

初回手術 

両側付属器摘出術+大網切除術 

+CDDP 腹腔内投与(suboptimal) 

1999年  2004年 

CAP 3コース  TC 3コース 

生存  初回治療 から22年 

人工肛門造設術 

2015年  初回治療

から5年 

Weekly TC 

3コース  TC 3コース  DP 3コース 

直腸低位前方切除術+下 行結腸部分切除術+上行 結腸腸間膜内腫瘤切除術 

再発治療から11年 

(初回治療から16年) 

再発腫瘤摘出術+右半結腸切除術・ 

横行結腸端端吻合術+回腸部分切除術 

・端端吻合術 

2016年  2021年 

人工肛門閉鎖術 

がん幹細胞ならびにがん幹細  胞ニッチを標的とした治療 

腫瘍根絶 

Motohara T, Katabuchi H. In; Cell Biology of the Ovary. eds., H. Katabuchi, et al., Springer, pp.73-88, 2018 

がん幹細胞の残存  がん幹細胞の生存 

化学療法は分裂・増殖が活発な  がん前駆細胞や分化したがん細  胞を標的とした治療 

がん細胞 

がん幹細胞  がん前駆細胞 

ニッチ環境 

腫瘍増生(再発) 

原発  再発 

(25)

EpCAMは細胞接着に関与するⅠ型膜蛋白であり、正常の上皮細胞あるいは上皮由来の腫瘍細胞に発  現が認められる。 また、組織幹細胞およびがん幹細胞との関連性が指摘されている。  

マウス卵巣のEpCAM陽性細胞に対して、p53 の発現を抑制した後にc-Myc およびK-Ras の両遺伝子を導入し た結果、ヒト卵巣未分化癌に類似した卵巣癌マウスモデルの樹立に成功した。 �

EpCAM      DAPI  

Mouse ovarian tumor   

EpCAM

POS

 cells 

In vivoで形成された卵巣腫瘍において、EpCAM陽性の腫瘍細胞は極めて高い腫瘍形成能を有しており、がん 幹細胞としての特性を示すことが証明された。 

Motohara T, et al. Carcinogenesis 32: 1597-1608, 2011 

(26)

orthotopic transplantation

0 102 103 104 105 APC-A

0 20 40 60 80 100

% of Max

EpCAM-APC 

 % of  Max  

20  40  60  80  100 

10 10 10 10 control  carboplatin  cisplatin 

EpCAM positive cells  17.1% 

52.2% 

64.4% 

抗癌剤で死滅せずに残存した腫瘍細胞の多くが、EpCAM陽性の性格を有している。 �

EpCAM陽性細胞は、抗アポトーシス作用を示すことで、抗癌剤治療抵抗性に関与している。 

 Tayama S,  et al. Oncotarget  8: 44312-44325, 2017 

(27)

術前化学療法 (NAC)による治療では、抗癌剤による一時的な効果によって、肉眼的には腹 膜播種病巣の消失が確認されるものの、 顕微鏡レベルで抗癌剤に抵抗性を示すがん幹細胞 が残存していることになり、完全治癒を目指した治療にはならない。 

Overall survival (%)  PDS 

NAC 

Events  Total  188   188  174  174 

HR 1.40, 95% CI 1.11-1.77 

IIIC期 

Follow-up time (Months)  No. of events 

PDS  NAC 

20  64  45 

96  174 

10  49  30 

69  174 

122  106 

29  17  154 

152 

Meyer L, et al. J Clin Oncol 34: 3854-63, 2016  Onda T, et al. Eur J Cancer 130: 114-125, 2020 

Pts. at risk 

PDS  NAC 

24  11 

28  149 

19  11 

23  152 

44  48 

Overall survival (%) 

Months after randomization (Months) 

III・IV期 

PDS  NAC 

Total  152  149 

HR 1.052, 90.8% CI 0.835-1.326; P = 0.24 

Optimal surgeryが困難あるいは不可能と予測される進行卵巣癌に対して,NAC +  IDSを推奨する。 

推奨の強さ 1(↑↑) エビデンスレベル B (合意率 100%) 

推奨 

 進行例に対して,腫瘍減量手術 (PDS)の代わりに術前化学療法 (NAC) + インター   

     バル腫瘍減量手術 (IDS)を行うことは奨められるか? 

(28)

骨盤腹膜広範切除術後   開腹時 

熊本大学における卵巣癌Ⅲ期 (2004年-2014年)の5年生存率は62.2%、10年生存率は 41.5%である。 

Motohara T. Acta Obstet Gynaec Jpn 66: 2761-2770,  2014  

1.0 

0.8 

0.4  0.6 

0.2 

0.0 

WRPP群 

Log-lank P=0.011  SS群 

イベント数  総数  37  40  19 

10  追跡期間中央値:  

60.0か月 (6‒60) 

40 

0  20  60 

1.0 

0.8 

0.4  0.6 

0.2 

0.0 

WRPP群 

Log-lank P=0.040  SS群 

イベント数  総数 

37  40  27  22  追跡期間中央値:  

60.0か月 (1‒60) 

40 

0  20  60 

P<0.05  P<0.05 

全生存率  III・IV期  無再発生存率  III・IV期 

子宮を基軸とするパノラマ状に広がる腹膜を一括して切除するマンシ  ェット式骨盤腹膜広汎切除術は、遠隔転移のない腹膜播種の進行例の  予後改善に寄与する。骨盤腹膜を広汎に切除することは、骨盤腹膜に  高い割合で存在する卵巣癌幹細胞の根絶、そして卵巣癌幹細胞ニッチ  である骨盤腹膜を標的とした新たな治療概念である。 

片渕秀隆 産婦人科手術 19: 87-93, 2008 

WRPP:骨盤腹膜広汎切除術  SS:標準手術 

2002年に熊大方式を開発 

(29)

蛙腹 

(30)

マクロファージの命名 細網内皮系

reticuloendothelial system (RES)

T.W. Daems E. Methnikoff

(1845〜1916)

L. Aschoff

(1866〜1942)

清野謙治

(1885〜1955)

R. van Furth

単核食細胞系

mononuclear phagocyte system (MPS) 滲出型と在住型に分類

1882年 1924年 1969年 1972年 2003年

M1マクロファージとM2マクロファージの分類

・脱落膜細胞との物質交換

・受精と胚発育の環境形成

・月経期平滑筋細胞の処理

・扁平上皮化生の促進

・子宮内膜症の発生と進展

・卵巣癌の播種とニッチ形成

・卵胞の発育促進

・閉鎖卵胞の処理

・退縮黄体の処理

・母児間のhCG調節

・トロフォブラストの増殖と合胞化

Okamura H, Katabuchi H, Kanzaki H. In; The Macrophages. eds., B. Burkes, C.L. Lewis, Oxford Press, pp.548-576, 2002

(31)

腹腔マクロファージの中でも活性化状態にある滲出マクロファージが、子宮内膜症で有意に増加している。さらに、 

卵巣癌および卵管癌における癌性腹膜炎症例において腹腔マクロファージが最も多く認められる。 

Fukumatsu Y, et al. Acta Obst Gynaec Jpn 44: 529-536, 1992 

2μm 

在住マクロファージ 

2μm 

滲出マクロファージ 

2μm 

     滲出在住マクロファージ 

2μm 

PO陰性マクロファージ 

日本産科婦人科学会平成4年度学術奨励賞 

(32)

卵巣癌腹水中の腹腔マクロファージは M2マクロファージへ分化し、さらに、このM2マクロファー ジによる特異なサイトカインの産生が確認される。 

Takaishi K, et al. Cancer Sci 101: 2128-2136, 2010 

卵巣癌腹水中に認められるM2マクロファージ  

CD163 (M2マクロファージ) 

卵巣癌腹水中M2マクロファージによる  サイトカインの産生  

CD68 (汎マクロファージ) 

IL6 (茶)/CD163 (青)  IL10 (茶)/CD163 (青) 

M2マクロファファージ  M1マクロファージ 

単球 

掃除作用 

マトリクス構築  組織修復 

血管新生 

腫瘍増殖の促進� 腫瘍増殖の抑制�

バクテリア活性  炎症性サイトカイン 免疫刺激 

M1: 炎症性サイトカインにより誘導されるマクロファージ  M2: 抗炎症性サイトカインにより誘導されるマクロファージ 

M-CSF, IL-4, IL-13, IL-10 コルチコステロイド  プロスタグランディンE  ビタミンD3 

GM-CSF, IFNγ  リポポリサッカライド   細菌の産生物質 

IL-1ra 

decoy IL-1RⅡ  IL-10 

CCL17  CCL18  CCL22  Polyamine  Scavenger R  Mannose R 

IL-1  TNF  IL-12  CXCL9  CXCL10  CXCL11  RNI  ROI 

Sica A, et al. Eur J Cancer 42: 717-727, 2006 

(33)

Senju S, et al. Gene Ther 18; 874-883: 2011 

レンチウイルスベクターを用いて、ヒトiPS細胞にcMYC、BMI1、 MDM2を導入し、

フィブロネクチンコーティングディッシュ内で無血清培地で培養する。細胞形態の 変化を確認した後に、培地の条件を徐々に変更し、浮遊細胞のみを採取し、GM- CSF、M-CSFを添加し、iPS cell-derived myelomonocytic cells (iPS-ML)を作 成した。 

故 千住 覚准教授(熊本大学大学院生命科学研究部免疫識別学講座) 

貪食能  細胞表面

マーカー 

サイトカイン 産生能 

iPS-MLは、貪食能を示し、CD11bならびにCD68を含めた細胞表面マーカーの発現がみられ、産生するサイ トカインから、マクロファージの性格を有する。 

Miyashita A, et al. Cancer Immunol Res 4; 248-258: 2016 

◀ ︎ CD68: 汎マクロファージ(ヒト、マウスを認識) 

    CD11b: 汎マクロファージ(ヒトを認識)▶ ︎  

ヒト卵巣漿液性癌細胞 

(SCOV3細胞株)とヒ  トiPS-MLの共存環境 

マウス腹腔内播種腫瘍 (in vivo) 

ヒトiPS-ML  CD11b  マウス腹腔内 (in vitro) 

Imamura Y, et al. Cancer Sci 109: 3363-3365, 2018 

CD68ならびにCD11bに陽性像を示すiPS-MLは腹腔内で卵巣癌細胞と近接し、さらに腹膜播種病巣内へ浸潤する。 

CD68 

ヒトiPS-ML 

(34)

human IFN-β gene 

Koba C, et al.  PLoS One 8; e67567: 2013 

iPS-ML/IFN-β  ヒト iPS-ML 

レンチウイルスベクターを用いて、iPS-MLにEF1プロモータ 

で駆動するIFN-β遺伝子を導入し、IFN-β産生株を作成する。  SKOV3細胞株は、IFN-βでin vitroの抗腫瘍効果が顕著であった  ことから、iPS-ML/IFN-βとルシフェラーゼ遺伝子を導入株を共  培養した結果、細胞数に依存して増殖抑制効果が認められた。 

Imamura Y, et al. Cancer Sci 109: 3363-3365, 2018 (Journal cover) 

未注入群(対照)  iPS-ML/IFN-β注入群 

4日目  10日目  17日目  24日目  4日目  10日目  17日目  24日目 

SCIDマウスにルシフェラーゼを発現させたヒト卵巣癌細胞を腹腔内投与し、iPS-ML/IFN-βを週2回、3週間治療

細胞を腹腔内投与するin vitro解析で、著明な抗腫瘍効果が示された。 

(35)

HE  CD44v6  CD68(汎)  CD163(M2) 

500μm 

卵巣癌が骨盤腹膜に播種病巣を形成する過程では、CD44 variant 6陽性細胞がサイトカインの産生と STAT3 の活性化によって、

M2の性格を示す腫瘍随伴マクロファージ(TAM)を周囲に集積させ、腫瘍細胞自身に最適な微小環境ニッチを形成している。 

p-STAT3 

β-actin  STAT3 

0 2 4 6 8 10

CD44v positive

CD44v negative 0

0.5 1 1.5 2 2.5 3

CD44v positive

CD44v negative 0

0.04 0.08 0.12 0.16

CD44v positive

CD44v negative 0

0.2 0.4 0.6

CD44v positive

CD44v negative

G-CSF  GM-CSF  IL-6  IL-10 

P<0.05 

P<0.05 

P<0.05 

P<0.05 

CD44v  陽性細胞 

CD44v  陰性細胞 

mRNA 相対量 

CD44v  陽性細胞 

CD44v  陰性細胞 

CD44v  陽性細胞 

CD44v  陰性細胞 

CD44v  陽性細胞 

CD44v 

陰性細胞   Tjhay F, et al. Cancer Sci 106: 1421-1428, 2015 

(36)

活性化因子

M1 マクロファージ

M2 マクロファージ

STAT3

G-CSF GM-CSF

IL-6 IL-10

微小環境 ニッチ

卵巣癌幹細胞 M2マクロファージ

難治性卵巣癌の克服のためには、“種子”としての卵巣癌幹細胞とともに、それ に対応する“土壌”としての癌幹細胞ニッチである腹腔マクロファージならびに 腫瘍随伴マクロファージの二つを標的とした  『Dual-targeted therapy』 の 発想が新たな治療のブレークスルーになるかもしれない。

H. Katabuchi, ed. Frontiers in Ovarian Cancer Science. Springer 2017

(37)

オランダ人医師  セゲ・ファン・マンスフェルト 

(1832-1912) 

古城医学校の教員と生徒たち 

マ ン ス フ ェ ル ト  

﹁ 君 は 本 当 に 医 師 に な る つ も り で    

勉 し て い る の か

﹂   柴

三 郎  

﹁ 両 親 や 親 戚 の 手 前 、 医 師 に な る    

こ と を 装 っ て い る に 過 ぎ な い   。  

本 当 は こ の 学 校 で 語 学 を 学 ぶ の    

が 目 的 で 、

将 来 は 軍 人 か 政 治 家    

に な る ん だ

﹂   マ ン

ス フ ェ ル ト  

﹁ 人 の 志 望 を 曲 げ る わ け に は い か    

な い が 、

一 日 一 日 を 無 駄 に 過 ご す    

べ き で は な い 。

医 学 と い う の も 決    

し て 無 用 な 学 問 で は な い

 

三 郎    

あ る 日 の 組 織 学 の 実 習 で 顕 微 鏡    

下 の 組 織 を 見 入 る う ち に 、 む ら    

む ら と 気 持 ち が 高 ぶ っ て き た   。

﹁ 医 学 ま た 学 ぶ に 足 る

﹂ と   。

(1853~1931)

https://www.kitasato-u.ac.jp/med/about/history.html 

https://www.kitasato.ac.jp/kinen-shitsu/birth150/birth150̲4f.html 

(38)
(39)

(産科・婦人科,病理部,他施設の病理医・放射線科医) 

(産科・婦人科,病理部,放射線科,消化器外科,泌尿器科,化学療法部,関連科) 

(40)

自分で検鏡して、組織診断が臨床所見と一致して 

いるかを確認して下さい。最初にあって最後に至 

るまで治療方針の根幹となるのは、間違いなく病 

理組織診断であり、これこそが病理医がʻDoctors  

of Doctorsʼと呼ばれる由縁です。 

(41)

神奈川  大阪 

東京 

高知  福岡 

栃木 

千葉  長崎 

鹿児島  1 

大分 

宮崎 

広島 

1  1  1 

1  1 

沖縄  1 

佐賀        1 

山口  1 

国外  1 

熊本 

22 

婦人科腫瘍に関する症例のみ(64例:2012年1月〜2019年12月) 

セカンドオピニオン症例の 38 %が病理組織診断に関わったもの、 

あるいはその結果によって治療方針が変わったものであった。 

山口、他 熊本産婦会誌 64: 21-27, 2020 

(42)
(43)

 われわれの施設を受診する13か月前に前総合病院で卵巣癌の診断で単純子宮全摘出術+両側付属器切 除術+大網切除術が施行された。病理組織学的に子宮平滑筋肉腫と診断された。術後1か月で再発との 診断、予後不良との判断からBSCの方針となり緩和ケア病院へ紹介された。しかし、術後約12か月を経 過し、腹部膨満感と下肢浮腫はあるものの、今まで通りの生活が出来ていた。腹部膨満感が改善できれ ば、QOLを保った時間が延長できるのではないかと考え、セカンド・オピニオン外来を受診した。 

片渕「現在の楽しみは何ですか?」 

患者「J1のサガン鳥栖の試合を観戦に行くことです。会社にも普通に通っているし、サッカー観戦       に車であちこち行っています。本当に「緩和」って言われるような状態でしょうか? 

 理学的に、直腸診で直腸〜S状結腸は腫瘍による圧排はなく同定でき、毎日の排便は良好である。  

T2WI横断像  T2WI矢状断  造影T2WI矢状断 

 骨盤部造影MRI検査では、長径28cmの腫瘤が膀胱や腸管など周囲臓器と広範囲に接しているが、 

境界は比較的明瞭である。  

(44)

悪性度不明の平滑筋腫瘍 

Smooth muscle tumor of uncertain   malignant potential 

STUMP 

 主に富細胞性平滑筋腫の形態を示し、多くの 部分で液状変性を伴っている。一部に中等度の 細胞異型が認められるが、核分裂数は最高で対 物レンズ 40倍(視野径 0.55 mm)10 視野あ たり5〜6 個程度に過ぎない。 

200 

前院の摘出組織の再検鏡 

再発腫瘍摘出術+小腸・回盲部・S状結腸切除術お よび端々吻合術+人工肛門造設術(6か月後に閉鎖 術)+膀胱修復術+右側尿管ステント留置術 

 手術時間:13時間47分 術中出血:10,930 g     摘出腫瘍:重量 7,400 g、13x15x20 cm 

 腫瘍の表面は平滑で、怒張した血管が認められた。腫 瘍に巻き込まれていた回盲部と直腸の一部が合併切除さ れた。割面は黄色でやや脆弱な組織が一様に認められた。 

恥骨側 

頭側 

腫瘍に流入出する  下腸管動静脈 

〜通院中であった緩和病院からの返書(一部抜粋)〜 

 術後53日目(自宅退院後4日目)に受診されました。晴れやかな表情で、大変驚きました。紹

介して本当によかったです。術後は症状も特にないようですので、現時点では私の出番はほとん

どなさそうです。 

(45)
(46)

初診時の患者の最初の言葉「私はあとどのくらい生きられるのでしょうか?」 

 われわれの施設を受診する2年7か月前、前総合病院で子宮頸癌ⅡB期、粘液性癌(cT2bN0M0)と 診断され、同時化学放射線療法(全骨盤照射50Gy+RALS 24Gy、CDDP 7コース)を施行された。

腫瘍の残存が認められDC療法2コースが施行され、初回治療終了とされた。その1年後の子宮頸部の生 検で腺癌が認められ、再燃の判断で同院腫瘍内科でDC療法6コース施行されたが腫瘍の縮小は得られ ず、一旦は経過観察となった。しかし、6か月間の経過観察中に腫瘍は増大傾向にあり、レジメンを変 更した化学療法が予定されたが、セカンドオピニオン外来を受診した。 

 理学的に腹壁は軟らかく、予想外に放射線の影響を受けていなかった。子宮腟部と考えられる部位は  癌腫様で、病巣の腟壁への浸潤が円蓋部から2cmに及んでいた。子宮頸部は2cmで、腫大していなかっ  たが、右側子宮傍組織の抵抗が骨盤壁まで連続していた。 

 骨盤部造影MRI検査では、子宮頸部粘膜面〜腟壁に淡いT2WI高信号域が認められ、緩徐に造影され  た。腟後壁の病巣は直腸と近接していた。  

T2WI矢状断  造影T2WI矢状断  T2WI横断像 

(47)

 主に粘液産生性の円柱上皮より構成される  腺癌で、通常型内頸部腺癌の形態を示す領域  がみられる。免疫組織化学染色では、p16陽  性、p53陰性、HNF1βが一部に弱陽性で、 

HIK1083が陰性であった。CDX2は6〜7割  の腫瘍細胞で陽性であった。 

p16 

x100 

子宮頸部生検組織の検鏡 

HPV関連腺癌 

特定不能 (NOS) 

粘液性癌+通常型内頸部腺癌 

全骨盤除臓術+人工肛門造設術+回腸導管造設術 

手術時間:10時間18分 術中出血:2,345 g 

摘出組織の外面に腫瘍性病巣は認められない。膀胱、直 腸はやや硬く触知され、放射線治療の影響が考えられた。 

膀胱のやや左側から腟および子宮に割を入れると、子宮 頸部から腟壁は2 cmにわたり全周性に粗造な腫瘍性病巣 が認められた。膀胱と直腸の内腔は平滑であった。 

膀胱  子宮 

腟  直腸 

外陰 

S状結腸 

 術後は骨盤死腔炎や腸管吻合不全の発症などの大きな合併症を起こすことなく、術

後29日目に退院した。現在、3人の子供さんと平穏な生活を送っている。 

(48)

最終後期研修医指導 

(2012年2月16日) 

担 当 1,361日  新 患 3,829人 

執 刀 854症例  卵巣癌 307症例 

642回 

(最終 2021年3月29日) 

最終執刀:卵巣癌 

(2021年2月25日) 

初期研修医  臨床実習学生 

後期研修医 

相棒 

(49)

Kʼs セミナー 

at Kumamoto, for Keitaigaku, by Katabuchi, et al 

塾生(76名) 

一般視聴(524名) 

(50)

久留米大学附設高校(2018年・2019年) 

・医師 

・医学部生 

・番組制作 

・報道 

・健康づくり推進課 

・子宮頸がん検診は20   から (SKK20 Act) 

・看護学生 

・健康づくり推進課 

・子ども未来課 

医学部 

産婦人科 

医学部  保険学科 

政策創造  研究教育  センター 

KKT  熊本県民 

テレビ 

熊本市  熊本県 

HIGO  プログラム  薬学部 

・医学教育部大学院生 

・薬学教育部大学院生 

・薬学部教員 

・薬学部生 

平成29年度熊本大学医療活動表彰 

平成30年度熊本県健康づくり県民会議表彰 

令和2年度熊本大学社会貢献活動表彰 

(51)

熊本県がん診療連携幹事会相談支援・      

情報連携部会が主導し、県下の国・県     指定の 20 のがん診療連携拠点病院と          地域の診療所を繋ぐツールとして、が       ん患者さん自身が携帯するカルテで、      

現在 7,329名が使用している。 

熊本県地域連携再生計画事業(平成21年度〜令和3年度)   

平成24年度熊本大学医療活動表彰  県民公開講座での蒲島郁夫知事のご挨拶 

→ 熊本県「私のカルテ」がん連携センター (2010年設置) 

→ 熊本県がん相談員サポートセンター (2005年設置)     

熊本大学病院生殖医療・がん連携センター(2016年設置) 

年間約600名の熊本県のAYA世代のがん患  者さんの妊孕性を維持するために院内措置  で設置した。 現在 86名の患者さんに対応  し、精子 (34例)、未受精卵 (12例)、胚( 

7例)の治療前の凍結保存を行い、 既に3  例が妊娠に至っている。令和2年度から「 

熊本県がん患者妊よう性温存治療費助成事  業」が成立し、治療費の助成が決定した。 

→ 熊本県がん患者妊よう性温存治療費助成事業(令和2年度〜)

体外受精・胚移植技術 (IVF-ET)  顕微授精 

生殖補助医療 (ART) 

(52)

     Robert J Kurman, M.D. 

Emeritus Richard W. TeLinde Distinguished   Professor, Johns Hopkins University, USA  

 自分の年齢が、少しだけかもしれませんが、産婦人  科の臨床医として患者さんのことを考えて働けるとこ  ろまで追いついてきたように思います。 

   With the exciting advances that are now going   on in molecular biology and immunology it  

becomes increasingly difficult and time consuming  to remain abreast of the field and to design  

studies in fields that I do not have sufficient 

experiences.   So I have seen my horizon and feel   it is now important to pass the torch to the next   generation. 

Young RH.  

An interview of Robert J. Kurman, MD: Learning, teaching,   passing the torch.  

Int J Gynecol Pathol 37: 1-16, 2017 

 教授の職にあって最高だったことは、矜恃と覚悟を 

もって譲歩することなく、ひとりひとりの患者さんに 

ベストと考えられる治療を提供してきたことです。 

(53)

片渕秀雄 

(1896~1963) 

[鳥栖市ホームページ] 筑後川中下流域の風土病であった日本住 血吸虫症に対し、佐賀県では、大正10年頃から全国に先駆け、薬 剤散布、 沼地の埋め立て、検便の徹底など、様々な対応が継続さ れました。途中太平洋戦争による中断を経て、 戦後再開されまし たが、昭和50年代から筑後大堰建設や河川改修、側溝整備と併せ て徹底的なミヤイリガイの駆除が行われ、 平成2年に安全宣言、 

平成12年に終息宣言が行われるまで、百年以上の時間を要するこ ととなりました。 

 この間、大正町出身の片渕秀雄さんは、 

昭和15年に神埼保健所長に就任以来(昭和  25年には 鳥栖保健所長) 昭和38年に亡く  なられるまで、 この病の研究と撲滅に大変  なご尽力をいただきました。 

総合研究大学院大学 長谷川眞理子学長 

 社会が変わればリーダーに求められるものも変わる、ま  た「ぶれない」は「頑固」でもあり得るように、性質には  必ず良い面と悪い面があるものだ。・・・リーダーとは何  か、リーダーシップを発揮するにはどうしたらよいのか、 

ずっと模索し続けていくしかないのだ。   

時代の風(毎日新聞 2020年12月13日朝刊) 

(54)

熊本大学大学院生命科学研究部 令和2年度退職記念講演会 

利益相反状態の開示 

演者氏名: 片渕 秀隆 

所属:熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学講座 

私の今回の講演に関連して、開示すべき利益相反状態はありません。 

(55)

熊本大学大学院生命科学研究部産科婦人科学講座 

 すべての教室員 

前山昌男

(名誉教授)

 岡村 均

(名誉教授) 

熊本大学大学院生命科学研究部細胞病理学講座 

 藤原章雄 大西紘二 菰原義広 竹屋元裕

(名誉教授) 

 内藤 眞

(新潟大学名誉教授)

高橋 潔

(名誉教授) 

熊本大学大学院生命化科学研究部免疫識別学講座   

千住 覚 西村泰治

(名誉教授) 

熊本大学大学院生命科学研究部公衆衛生学講座   加藤貴彦 

熊本大学大学院生命科学研究部分子遺伝学講座   尾池雄一 遠藤元誉

(現産業医科大学分子生物学) 

熊本大学大学院生命科学研究部分子病理学講座    今村隆寿 

熊本大学大学院生命科学研究部細胞情報薬理学講座   菊池浩二 中西宏之 

熊本大学病院病理部   三上芳喜 

熊本大学発生医学研究所器官構築部門腎臓発生分野   西中村隆一 

熊本大学発生医学研究所発生制御部門染色体制御分野   石黒啓一郎 

熊本大学発生医学研究センター組織制御分野   

山泉 克 

東北大学加齢医学研究所病態臓器構築研究分野   福本 学

(名誉教授) 

慶応義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部   佐谷秀行 

名古屋大学大学院医学研究科生体反応病理学講座生体反応病理学   豊國伸哉 

神戸大学大学院医学研究科生化学・分子生物学講座分子細胞生物学   鈴木 聡 

佐賀大学医学部分子生命科学講座分子遺伝学・エピジェネティクス分野   副島英伸 

国立がんセンター研究所ウイルス部   清野 透 

和歌山県立医科大学先端医学研究所遺伝子制御学研究部   山田 源  

兵庫県立がんセンター研究部   西村隆一郎 

Ovarian Cancer Cell Laboratory, Weatherall Institute of Molecular Medicine,    University of Oxford, UK 

    Ahmed A Ahmed 

Department of Pathology, School of Medicine, Johns Hopkins University, USA    

(1993~1995) 

    Kathy R Cho Lora H Ellensen Robert J Kurman (Emeritus Professor) 

熊本市民病院(2019年10月再開院) 

参照

関連したドキュメント

健学科の基礎を築いた。医療短大部の4年制 大学への昇格は文部省の方針により,医学部

専攻の枠を越えて自由な教育と研究を行える よう,教官は自然科学研究科棟に居住して学

金沢大学大学院 自然科学研 究科 Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University, Kakuma, Kanazawa 920-1192, Japan 金沢大学理学部地球学科 Department

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

 昭和大学病院(東京都品川区籏の台一丁目)の入院棟17

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :

本研究科は、本学の基本理念のもとに高度な言語コミュニケーション能力を備え、建学