中岡尚美*・曽田庄一**・川部 健*
A Follow−up Study Qf Students Grades Naomi NAKAOKA , S hoichi SOTA , Takeshi KAWABE
One of the problems in education has been the decline in the students academic ability. ln addition to the high number of students droping out and repeating their year, this academic decline has become a concern at our college.
This study follows up and analyses junior high school transcripts, entrance examination results and students grades in order to ascertain whether there are any possible features that may lead to academic improvement.
Key words: dropout, deciine of academic ability, entrance examination
1.はじめに
最近、生徒の学力低下に関連して教育問題が大き くクローズアップされているが、工業高等専門学校 においても学力低下や退学、留年の問題は、依然と
して解決の見いだせない深刻な問題である。津山高 専もJABEE審査に向けて歩み始めたが、教育の質 を問われる状況は、授業についていけない学生や高 専の教育に興味をなくした学生を如何にケアするか という学力の底辺の問題と相反する対応が迫られて いる。教育現場にたつ者として、同じ授業時間にエ
リート授業とドロヅプアウトしそうな学生の授業を するというような離れ業もときに求められる状況に
ある。
このような厳しい教育の状況の中にあって、今一 度現在の教育環境、学生の学力動向を冷静に分析す ることが問題を解決する第一歩であると考え、入学 以前の成績(中学校の内申)、入学試験、本校にお ける成績推移を追跡調査して、どのような特徴、或 いは問題点があるのか、調査検討を行った。今回の 報告はその中間報告である。
入試成績と入学後の学校での成績にはほとんど相 関がないと一般的に言われている。本校においても 実態調査が行われており、一般的な傾向に修正を加 えるような特徴は見出されていない。我々はこの調 査において、最初に指摘したような状況、学力低下、
留年、退学という現象がどのような経過で起こって いるのか、或いは何処に起因しているのか解明する
原稿受付 平成14年8月30日
*一般科目
**電気工学科
ことが目的である。勿論、物質過剰、情報氾濫の錯 綜した社会現象、人間関係もまた大いに関係してい ることは事実であろうが、ここでは我々の手の届く 範囲の問題に限って言及していきたい。
津山高専では入学試験制度として、推薦入試と学 力入試を行ってきている。4学科160名の入学定員 に対して、現在は各学科定員40名の30%を目安に 推薦入試で選抜を行い、残り枠を学力入試で選抜し てきた。平成8年度以前は20%が目安であった。
推薦入試の出願資格は、中学3年の2学期における 9科目の内申点総計が36点以上(その後、多少の 変更が追加された)ということが基本的に大きな条 件として付加されている。推薦入試の後に実施され る学力入試は、中学の内申が考慮されているとはい え、全国一斉に実施される学力試験の成績が選抜の 大きなウェイトを占める。この2つの入学試験制度 の違いは、入学後の学生の学力差に影響することが 予測されるが、(1)退学・留年にどのような違いを 与えているのか調査結果を報告する。また、(2)退 学を余儀なくされた学生はどのような経過を経てそ のような状況になったのか追跡してみる。(3)留年 という処置は、学生にとって退学ほどではないにし ても過酷な規則かも知れないが、よく言えば学力に 着いていけない学生に時間とゆとりを与えていると も解釈できる。その留年生の動向について追跡例を 示す。(4)推薦入試入学者の入学後の成績推移を示 す。最後に、学生の成績追跡調査から少しずれるが、
(5)学力試験における試験成績と内申点総計の相関 を示す。2つの入試制度にはそれぞれ一長一短があ るが、この調査の主題から外れるのでここでは触れ ないことにする。
2.退学と留年
2.2 入試制度による退学者数比較 2.1 退学者・留年寸寸の推移
入学してから5年間の課程を終えて無事卒業を迎 える学生がどの程度いるのだろうか。
津山高専における平成5年度から平成11年度ま での7年間の退学者、留年生の状況を表1および図 1に示した。但し、平成10年度の入学生は現在5 年生,平成11年度入学生は4年生在学中で、平成14 年4月1日時点での集計による途中経過である。表 1における「留年生」の中には退学者も含まれてお り、ストレート(5年)で卒業できない学生数と考 えればよい。従って、例えば平成5年度については 留年生49名中10名が卒業を果たしたことになる。
図1には退学者と留年生数を競争倍率(推薦と学力 入試を併せた)と対比させ示している。平成8年度 の退学者・留年生の増加は、競争倍率の低下に関連 した学力不振がこうした状況を増幅させたように思
われる。
表1 退学者と留年生の推移
入学年度 H5 H6 H7 H8 H9 HlO H樋
入学看数 165 169 168 172 174 169 166
内訳(推薦) 45 43 41 42 46 5フ 48
内訳(学力) 120 126 127 130 128 112 118
ストレートで卒 △
70.3 76.9 71.4 65.1 78.7 (7乳5) 81.9,
退学者数 39 33 36 54 27 21 17
留年世数 49 39 48 60 37 38 30
競争倍率 2.0 2.0 t6 1.4 1.9 1.4 1.9
η605D403020100
図1退学者と留年生の推移(競争倍率)
H5 H6 H7 H8 Hg H10 H11入学年度
推薦入試と学力入試の違いによって、退学者数が 具体的にどれだけの差を生じているか見てみよう。
表2は平成5年度から11年度までの7年間の退学 者の割合を推薦入試と学力入試に分けて示してい る。図2はそれぞれの入試の入学者に対する割合と して棒グラフに示した。その図の下にはそれぞれの 競争倍率を参考までに対比させている。平成11年 度(現在5年在学中)を除いて、推薦入試の入学者 が退学する割合は学力入試入学者よりかなり低い。
平成11年度の結果はデータ数が少ないための例外 的な現象(統計的な誤差の範囲内)とみることがで
きる。
表2 推薦入試と学力入試入学者の退学比率
入学年度 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11
退学者(推〉 6 5 6 9 5 1 7
(学力) お 28 30 菊 22 20 10
退学割合(推) 13.3 11.6 14.6 21.4 1α9 1.8 14.6
(学力) 27.5 222 23.6 34.6 17.2 17.9 a5
競争倍率(推) 22 2.0 2.0 t3 t4 1.4 1.4
(学力) 20 20 1.5 t4 22 1.7 21
H5 度 40 35 R0 Q5 Q0 P5 P0
T 如﹁緬ゆ極被旦聰糾く 0年 学 入
2.5
2
1 .5
図2推薦入試と学力入試の退学比率
0864208642021111100000
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ロ退学割合(推薦)
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H6 H7 H8 Hg HIO 卜看雪1
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一◆一一競争倍率(推)
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2.3 入試制度による留年生数比較
退学までに至らないにせよ、校則として定められ た進級基準に到達しない場合には留年(原級留置)
を止むなくされる。これもまた学力低下を危惧する 担当教員の問題だけでなく、クラスの雰囲気など、
他の学生への影響も少なくない。退学者も含め5年
で卒業できない学生を留年生として、その数が2つ の入試方法でどのような違いがあるのか、表3及び 図3に示した。この図からも、推薦入試入学者は学 力入試入学者に比べて留年する割合が少ないことが 分かる。学力入試入学者のほとんどの学生について、
中学校の内申は推薦入試入学者に比べ悪い。こうし た中学時代からの学力の差が図2や図3の結果とし て現れていると考えられる。
表3推薦入試と学力入試の留年比率
入学年度 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11
留年生(推) 6 5 8 10 6 3 8
(学力) 43 34 40 50 31 35 22
留年割合(推) 唾3.3 重1.6 19.5 23.8 13 5.3 16.7
(学力) 35.8 27 31.5 38.5 24.2 31.3 18.7
45 S0 R5 R0 Q5 Q0
?050
如確⑫ト夜昆布朴く
度 年 三学
図3推薦入試と学力入試の留年比率
H5 H6 H7 H8 H9 HIO HII
2.4 退学・留年の学年次比較
一方、このような学力低下に伴う退学・留年がど のような時点(学年)で生じているのか、平成5年 から13年までの結果を退学について図4に、留年
(2.3の場合と違って退学を含まない)について は図5に示している。図4において、3年次に退学 者が多いのは、高校卒業の資格を得て専門学校や大 学受験など進路変更を行っているためである。留年 についても3年中が他の学年より際だって多い。こ れは専門学科に進む一つのハードルとして、特に具 体的な試験などのチェック体制を用意しているわけ ではないが、専門科目の授業についていけなくなっ たことや、その他これに付随した要因が重なったた めと考えられる。前述の退学者もこのハードルを越 えられる自信がないため進路変更を余儀なくされて いる者が多い。
35 R0 Q5 QD P5 P0
T0 8642086420
図4退学者の学年別推移 巳H5
。H6 チH7
冾g8。H9
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。H11 H12 スH13
1年 2年 3年
図5学年別留年数
4年 5年
1年 2年 3年
3.退学者・留年生の成績推移 3.1 退学者の成績推移
4年 5年
2において述べた、退学という道をとった学生が、
高専入学後退学に至るまで、学習成績においてどの ような経過をたどったのか、内申点、そして各学年 末成績の順位の入学後4年間の推移を追ってみた。
そのグラフが図6(a)(平成X年度入学)(b)(平成Y 年度入学)である。
まず、推薦・学力入試を一緒にして中学校からの 内申点の順位を出した。推薦入試と学力入試ではそ れぞれ内申点の満点は異なるが、それを100点満点 に換算し、各学科ごとの順位を出した。縦軸は学年 成績として、「順位/クラス人数」を示す。クラス 人数は学年で変化している。入学(時点)では上に 述べた「内申順位/クラス人数」を示す。従って、
数値が小さいほど成績順位は上で、1に近づくに従 い順位が下がるということである。
また、横軸は本校での在籍年数である。留年した 者もいるので、例えば3年目というのが必ずしも3 年生終了時とは限らない。留年して入学年度以外の クラスに入った場合には、その在籍者数を分母にし て縦軸の数値を出している。
退学という現象であるため、もちろん凡例数は年 数を経るにつれて減少している。
(a)平成X年度
入学 1年目 2年目 3年目
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(b)平成Y年度
入学 1年目 2年目 3年目
1.0
O,8
O,6
O.4
O.2
o,0 4年目
図6 退学者成績(順位/クラス人数)推移 図6の2つのグラフから、退学に至った学生の多
くは、入学時より下位3分の1以下に位置しており
(Y年はかなり上位もいたが)、すでにスタートの 時点から授業について行くことが難しかったのでは ないかと想像できる。その意味で低い内申点で入学 した学生は退学につながるかもしれないという危惧 が考えられ、彼らに対しては、細かい指導が必要で あると言える。
その上に例えば寮生活などの環境の変化、速い授 業進度、そしてよく言われる目的意識の欠如・喪失 のため、2年目を過ぎると、グラフの幅が3分の1 になってしまい、そのまま1に近づいている。つま り、学力不足から退学へとつながっているようであ
る。
入学時の成績(内申点の順位)の位置からグラフ が下向きになる、即ち順位が上がっている者はほと んどいない。もちろん退学の理由は成績だけではな いのだが、学力をつけた上での「前向きの退学」つ まり「自分を活かす新しい道を見つけての退学」が 少ないのが残念である。
また、この退学者の中には、留年をして2年目に 成績が伸びないまま退学した者、あるいは新しいク ラスの雰囲気になじめず、欠席が続き、やむなく退 学した者も多くいる。彼らにとって、留年という再 度のチャンスが意味がなかったということである。
留年を退学につなげない指導が我々の課題である。』
3.2 留年生の成績推移
3.1で示したのと同様規格化した形で、図7(a)
(平成X年度)、(b)(平成Y年度)に留年生の成績 順位の推移を示す。ここで云う留年生とは、2で述 べた定義とは異なり、留年してその後も在学し続け た学生である。
入学 1年目 2年目 3年目
1.0
O.8
O.6
O.4
O.2
o.0 4年目
(b)平成Y年度
入学
図7
1.0
O.8
O.6
O.4
O.2
o.0
1年目 2年目 3年目 4年目
留年生成績(順位/クラス人数)推移 データとして絶対数が少ないが、留年生の場合も
退学者と同様、内申の成績には幅はあるが、下位が 多い。そして、留年になったということは、ある学 年で成績不振だったということであり、その時には グラフが上向き(成績低下)になっている。しかし、
退学者のグラフが1にほとんど収束したのに対し、
留年生の場合にはどこかでグラフが下向き(成績上 昇)になっている例が多い。
本来力はあるのだが、留年した学年でつい遊んで しまったとか、悩みがあって勉強にじっくり取り組 めなかった場合には、スタートの位置に近いところ
までは戻すことが出来ている。
また、留年という措置は過酷なものではあるが、
それをもう一度じっくり勉学に取り組むゆとりの期 間だと捉えてプラスに考えた学生は、乗り越えて行 くことが出来て、成績を上向きにしている。その意 味では学力の低い学生にとって、留年という措置が あながち悪いものだとは言えない。学生自身の心の
持ち方と教官のケアの仕方によるだろう。
4.推薦入試による入学者成績推移
推薦入試合格者の入学後の成績について検討す る必要性はよく議論されているが、データとして細 かく検討されたケースはない。 今回、平成X年 度と平成Y年度推薦入試入学者全員の内申成績と 入学後の成績推移を調査した。 図8,9はそれぞ れ平成X年度と平成Y年度の4学科(A,B, C, D)
入学者について、内申成績と入学後の各学年成績 順位の散布図を示している。縦軸は3.と同様、学 年成績として順位/クラス人数を示し,横軸は3.
で定義した内申点による順位をクラス人数で規格化 している。留年した場合は新しいクラスの順位で示
している。』 e学年の規格化された順位は、図8,9
の(a)に示された記号で識別し、他の図にも共通に 用いている。
各学生の成績は、縦軸に平行な直線上の記号の推 移でその変化を見ることができる。この直線と破線
との交点が内申成績を示し、その学生の成績の出発 点と考えればよい。便宜的な成績のスタートライン を示す破線より上に記号がくれば、成績(順位)が 下降したことを、横軸に近づけば上位になったこと を示す。途中で記号が消えている場合は退学したこ とを意味する。各学生の横座標における位置は内申 成績で決めているが、同順位の場合は表示を分かり 易くするため順位を1番ずらして示している。
横軸がすべての図で最大0.5であることは、推薦 入試入学者の全員が内申順位がトップから1/2以内 であることを意味する。図8(b),(c)のような場合 は全員がクラスのトヅプから大体1/4(10番)以内 で、トヅプ10は推薦入試入学生で占められている。
2年間だけのデータだけで明確に結論づけることは できないが、平成X年度C工学科(図8(c))を除 いてすべて、記号のほとんどが波線より上に分布し ている。即ち、スタートラインから順位を落として いる。しかし、全体的にみると大半が上から約2/3 以内の成績の位置にあることは、退学者、留年生の 割合が少ない原因にもつながっている。推薦入試の メリヅトと云えよう。個々の図を詳細に見れば、興 味深い情報も見ることができる。例えば、図8(c)
の左上すみ、右下すみの成績分布は内申成績に関し て対称的に大きくずれている。
全体として推薦入試入学者が入学時の成績を維 持することが難しいことを今回のデータは示してい る。その要因として、高専における教育の内容や制 度、教員そして学生本人のあり方など様々な問題が 考えられる。
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内申成績
図9 平成Y年度推薦入学者成績(順位/クラス人数)推移
5、学力試験と内申点
津山高専では入学者の約70%を全国一斉の高専 学力試験によって選抜している。合格者は学力試験 成績だけでなく中学校の内申点を加味して決定され る。試験成績や内申点については、現在、数学や理 科を重視した方法で評価されている。このような入 試方法の現状を試験合計点と内申合計点の相関をと ることによって、平成11年度から平成14年度まで 4年間について調べてみた。それぞれ両方の合計の 上位120名について相関を示した結果が図10であ
る。それぞれの相関係数は、r=0.059(H11),一〇。063
(H12),一〇.113(H13),0.036(H14)で両者には強い
相関はなく、内申点と入試成績には比較的大きなば らつきをもっていると云えよう。この結果は「学校 の成績がよい子は試験の成績もよく、成績の悪い子 は試験の成績も悪い」という常識に矛盾しているよ うに思われるが、それ以上に生徒によって試験成績 と内申点に大きなばらつきがあると云うことであ る。相関係数がr=1に近いような相関をもってい るのならば、試験などする意味がないが、ここで得 られた結果は試験だけでは計れないものがある一 方、内申だけでは不十分な要因もあって、両者は結 果的に相心的に機能していると考えられる。来年度 から中学校の成績の内申点が絶対評価で行われるこ とになって、このような相関関係は今までと異なっ たものとなることが予測される。ここで行った学力 試験成績と内申点の相関関係は、統計的にみて特に 異常を感じさせるものは出なかった。しかし、絶対 評価に関して結果は全く未知数なものと云ってよい から、今まで以上にこのような相関関係の調査と内 容の詳細な点検が求められる。
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6.おわりに
50 100 150
図10学力入試の相関
200内申点
中学校に続く5年間の課程をもつ工業高等専門学 校は、社会に役立つ技術者の育成を目標に設立され たが、約40年を経過して社会における工業高等専 門学校の位置づけやその目標、そして入学してくる 学生が高専に求めているところは多様な広がりをも つものに変遷してきている。卒業後、就職、大学へ の編入学、或いは専攻科を目指すものなど学生の目 的意識は多様であり、学校もまたこのような社会の 変化に相応した対応が求められている。
我々がここに示した学生の成績追跡調査が、単に 実態調査に終始するものであってはならないと考え ている。それは、学校の理念が社会や学生のニーズ に反映されているかどうかの指標の一つになるから である。中学校の内申が入学後の成績といつまでも 強い相関を示すような結果では、学校の存在意義が 疑われる。物理法則に「運動量の変化=力積」とい う、関係があるが、学生がもっている運動量は学校が 提供する教育、研究の有り様(組織、制度や教官の 質などでこれが学生に与える力積)によって多様な 変化が期待される。学生に与える力積がなければ運 動量は保存、つまり何の変化もない状態で終わって しまう。学生が示す運動量変化の総量こそ学校の文 化であり、学校の存在意義を示していると云ってよ いであろう。
学力不振のため、留年、退学を余儀なくされる学 生について追跡調査を含む実状調査を行った。それ は、単に学力低下が社会問題になっているからでは なく、本校の学力低下の徴候をつかむためには、こ
のような学生の実体を調査することが最も相応しい と判断したからで、更にそのことによって本校の教 育改革に生かせるものを見いだすことができればと いうことが念頭にあった。
1.で見たように、推薦入試の入学者には退学者、
留年生の割合が学力入試入学者より少ないことが明 白である。推薦入試の入学者は中学時代の成績が優 れていることや多少とも入学の目的意識の違いがそ の差に現れていると思われる。そして、退学者は3.
で見るように、一部進路変更のためもあるが、大半 が入学時の学力不足が影響して、入学後の学校の授 業についていけない状況を示している。しかし、高 専の授業が入学直後からそれ程までにハイレベルの 内容のものだろうか。学力不振の学生を主眼におい た授業に終始すれば、多数の学生に魅力ある授業を 提供することは難しいし、場合によってはそのため にできる学生の学力低下を招きかねないことにな る。退学者の多くは、むしろ、やる気の無さにある。
特定の科目ができないのではなく、多数、或いはほ とんどの科目について成績不振の場合が多い。学校 としてはこうした学生に目的意識をはっきりさせる よう入学直後の対策が必要である。
一方、留年生の中には経過年数と共に成績が上向 いている者が見受けられる。「留年(原級留置)」と いう言葉には学力不振というネガティブなイメージ が学生側にも教官側にもあるが、時間をかけて「ゆ とり」をもって学習していくというポジティブなイ メージをもつことはできないものだろうか。そのよ うなスタンスと「ゆとり」(留年)を支える明確な 体制づくりをするならば、図7の折れ線が下向く(レ ベルアップする)学生がさらに増えるのではないだ ろうか。 そして、これが退学者の減少につながる ことになるだろう。
入学時点でのクラス全員の成績順位を設定する目 安として便宜的に中学校の内申点を採用した。これ が現状では、推薦入試と学力入試の入学者を一緒に して評価する恐らく唯一の基準にできると考えたか らである。2つの入試における評点は共通でないが、
100に規格化した。この点については多少の曖昧さ が残る。 推薦入試入学者の成績推移をみると、図 8(c)以外のいずれも入学時点(図8,9の破線)
より平均的に上の方(成績低下)へ推移している。
推薦入試入学者に特に成績を下げる要因が見あたら ないからには、これらの学生に平均的に過大評価の 評点がつけられている可能性も考えられる。過大評 価があるとすれば、図8,9の成績順位を示す記号 は平均的にいずれも右へずれる(或いは破線で示し た直線の勾配を大きくすると考えてもよい)から成 績順位が低下したという傾向は出てこない。内申点 の過大評価のなかには、内申点が極めて良い(数学
5、理科5)が、1年次、2年次においてこれらの 科目がどれもボーダーラインか、それ以下という極 端な場合もある。
推薦入試制度は,内申点の優れた者に対して面接 によって選抜している。学力入試において試験成績 と内申点の相関から、これらが補完的な意味を持つ ことを述べたが、推薦入試における内申点と面接点 はどのような意味をもつのであろうか。面接点につ いては今回言及していないが、内申点の評価の問題 と同時に面接のあり方についても検討の余地があ
る。
今回の追跡調査は、校長、教務委員会の要請によ るものであるが、この種の調査が定期的に行われる べきものであることを強調しておきたい。その内容 が入試制度に関わる問題であるだけでなく、学校の 中身・質を自己点検することに関わっているから
だ。調査を定期的に行うことによって比較検討が可 能になる。従って、制度が変わればこの調査の意味 がないというようなものではない。中学校の内申点 が相対評価から絶対評価に変更された。特に、内申 点に関わる項目の変化をみるために、引き続き調査
をしていく必要があるだろう。
我々の今回の調査は、主として学力低下に関連し て、退学・留年という学生の追跡を中心に、推薦入 試と学力入試の制度を比較しながら検討を行った。
今後、学力の優れた学生の追跡調査と共に、入学試 験成績と入学後の様々な科目との相関など残された 問題について調査、検討していきたい。
最後に、資料作成にあたっては、教務係の竹中正 巳氏には大変お世話になり、心からの感謝の意を表
したい。