「ウィー ン売買条約 」 ( C I SG)
における契約違反 の構造
渡 辺 達 徳
目 次
Ⅰ は じめに〜本稿 の 目的〜
Ⅱ 契約 の法的保障機構
〜 コモ ン ・ロー と BGB. ‑
1 基本的視座
2 給付障害 の内部構造
3 小 括 〜CISG 考察‑の視点〜
Ⅲ CISG における契約違反
1 売主及 び買主 の義務
2 契約違反 に対す る法的救済 の概要
3 個 々の制度 の検討 (1)履行請求
(2) 契約解除 (3) 損害賠償
・ (4) 堀庇担保責任 の位置付 け 4 小 括
Ⅳ むす びに代えて
〔 1 0 9 〕
Ⅰ は じめに〜本稿の 目的〜
( 1) 本稿 は,国際動産売買 に関す る 「ウィー ン売 買条 約 」 ( Uni t e dNat i ons Co nve nt i ononCont r ac t sf ort hel nt e r nat i onalSal eofGoods: 以下 「C IS
G 」 と称す る) における契約違反の構造を,主 と して コモ ン ・ロー及 び ドイツ 民法典 ( 以下 「BGB」 と称 す る) と対比 しつつ検討 し, その特色 を把握す る
よ う試 み るものである。
( 2) CISG は, 同条約99 条 に所定 の1 0 か国の締結 を経 て ,1 98 8 年 1 月 1 日 に発効 したが, その後 の締約国 は飛躍的に増加 し, すで に日本 の主要 な貿易相 手国の多 くは, C ISG の締結 を完了 した と伝 え られている1 ) 。 そ して 日本 の 法務省民事局 も,国連事務総長か らの照会 に応 じ,「ウィー ン売買条約 の締結
を最優先 に考 えている」 との回答を行 い, その結果,「わが国 は, ウ ィ丁 ン売 買条約 の締結 に関 しては, いわばル ビコン川を渡 った」 とも指摘 され るに至 っ
た 2 ) , 0
このよ うに,近 い将来, わが国で も C ISG の締結が見込 まれ ることに照 ら す と,理論上及 び実務上 の側面か ら同条約 を考察 し, その内容 を理解す るよう 努 めることが,有益かつ急がれ ると考 え られよ う
。そ こで本稿で は, CI SG の中にあ って, その実体法規 の中心 を占め る契約違反規定,すなわち,売主及 び買主 の権利 ・義務 と,義務違反 に対す る法的救済 を定 めた部分 を,検討 の対 象 と して取 り上 げた ものである
。( 3) もっとも, C I SG の契約違反規定 を考察す るに際 して も, そのための 視点 は多様であ り得 る。 そ して,同条約及 びその前身 ともいえ る‑‑グ売買条 約 ( Conve nt i onr e l at i ngt oaUni f or m Lay O nt heI nt e r nat i o nalSal eof Goods: 以下 「UL IS」 と称す る) につ いて は,すで に 日本 で も, その内容
に関す る研究 が少 なか らず見 られ るため3 ) ,本稿がその重複 に終始 す る ことは
1 )原 優 「ウィー ン売買条約の検討 」NBL4 4 0 号 ( 1 9 9 0 )1 4 頁以下 2 ) 原 ・前掲 ( 注 1)1 5 頁
3) 動産売買法 の統一 に向けた動 きと, ULIS 及 び CISG 両条約 に関す る研 究 と し
「ウィーン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 1 1 避 け られ な ければな らない。
そ こで本稿 で は,次 の よ うな一 つ の視 角 を設定 して CISG の契 約違反 規定 の構造 を概観 す る とと もに, この小塙 の 目的 を, さ しあた りそ こに限定 す る こ
とと した。 .
す なわ ち,本稿 の考察対象 とされ る 「契約 違 反」 の構造 につ いて は,英 米 コ モ ン ・ロー と大 陸法 との間 に対 照 的 な差異 が見 られ る 。 それを端的に示すのは, 次 の よ うな指摘 で あ る. す なわ ち, 「大 陸法 にお いて は契 約 の法 的保 障 が第 一 次 的 に履行義務 , その変形 と して の第 二次 的損害賠償 義務 とい う構 造 を もつ の に対 し, 英米 法 にお いて は原則 と して 『契 約 侵 害 』 ( b r e ac ho fc o nt r ac t ) に よ る損害賠償義務 によ ってサ ンクシ ョンを うけ,契約 はま さに 『担 保契約 』 と して の法 的性格 を持 って い る 」 とい うことで あ る4 ) 。 しか も 「この点 か ら出発 して」, この両法体 系 は,原 始 的 に不能 な債務 の取 扱,債 務 不 履 行 と担 保 責 任 との関係 ,積極 的債権侵 害 ・契 約締結 上 の過 失 の位 置付 け等 にお いて,相 異 な る制度 を形成 して い る と も指摘 され るので あ る5 ) 0
翻 って, CISG を は じめ と して法 の国際 的統 一 が図 られ る際 に は, それが 異 な る法 圏 で受 容 され るための妥協 な い しは調和 が試 み られ る ことが予 測 され る
。しか し,契約違反 を規律 す るにあた り, 英米 法 と大 陸法 との間 に, こ こで 指摘 され た よ うな構 造上 の差異 が存在 す るな らば, CISG は どの よ うに して
て,高桑 昭 「 国際的統一売買法」『 現代契約法大系 第 8 巻 』( 昭 5 8 )6 5 頁, 五十 嵐 清 『 民法 と比較法』( 昭 5 9 ) とくに 1 5 0 貢以下。なお, ULIS に関 して は,北 川善太郎 「へ‑グ国際動産統一売買法 と日本民商法」比較法研究 3 0 号 ( 昭 4 4 )3 9 貢,
山田恒夫 『 国際動産売買法に関する研究』( 昭 5 7 ) , また, CISG について は,斎 藤 彰 「 国際動産売買における売主の義務 ( ‑)( 二 ・完 ) 」民商法雑誌 9 1 巻 6 号 5 2 頁 ,9 2 巻 1 号 2 8 頁 ( いずれも昭 6 0 ) ,同 「 国際動産売買 における売主 の義務違反 に 対する救済( 1 ) ( 2 ) 完」六甲台論集 3 2 巻 2 号 1 4 5 頁, 3 号 1 5 4 貢 (いずれ も昭 6 0 ) ,南 敏文 「 国際的動産売買契約に関する国連条約の概要 」 NBL2 1 5 号 ( 1 9 8 0 )1 6 頁, 山田恒夫 『 国際取引法概論 』 ( 平 1 )がある。 さらに,判例 タイムズ 7 3 9 号 ( 1 9 9 0 )
4 貢以下に, CISG を中心 とした国願統一売買法 に関する特集が組まれている0 4 ) 磯村 哲 「 債務 と責任」谷口/加藤編 『 民法例題解説 I I( 債権 ) 』( 昭 3 4 ) ̲1 頁
(5 貢)
5 ) 磯村 ・前掲 ( 注 4) 5 頁以下
これを克服 して い るので あ ろ うか。 同条約 の契約違反規定 を考察 す るにあた っ て は, この問題 を避 けて通 れない反面, こう した視角 か らの分析 が CISG の
特質 を浮彫 りにす るとも考 え られ よ う 。
( 4 ) 本稿 で は, こうした問題意識 に基 づ き, まず,英米 コモ ン ・ロー及 び大 陸法 にお け る契約 の法 的保 障機構 のそれぞれが, いわば一対 のモデル と して示 され る ( 第 Ⅱ章)。 こう した角度 か らの分析 と して は, すで に, 英 米 法 と BG B とを対比 しつつ考察 した ライ ンシュタイ ン ( Rhe i ns t e i n, M . ) に よ る研 究 が 兄 い出 され る
6)。本稿 もこの研究 に多 くを負 いなが ら,契約 の法 的保 障 に関 す る英米 コモ ン ・ロー と大陸法〜 ライ ンシュ タイ ンに従 い BGB を素材 とす るこ とにな る〜 の特徴 を明 らか にす るよ う試 み る . 一 そ して, それを踏 まえて, CI
SG にお ける売主及 び買主 の義務,並 びに,契約違反 に対 す る法 的救済 の構造 が, このモデル との対比 において考察 され る ( 第 Ⅱ章)。 こ う した考 察 を通 じ て, CISG の契約違反規定 が どの よ うな特徴 を持 ち, どのよ うな妥協 ない し は調和 が図 られて い るのか につ いて,一定 の理解 が可能 とな るとともに, その 適用 にあた っての指針 が得 られ る ことも期待 され よ う7 ) 。
6 )Rhe i ns t e i n,Di eSt r ukt urde sve r t r agl i c he nSc hul dv e r hal t ni s s e si m angl o‑
ame r i kani s c he nRe c ht ,1 9 3 2
7 )なお,用語の問題 として,英米法及びCISG〜ULISも同 じ〜において, 当事 者による契約上の義務違反は,通常 , 「 契約違反 」( br e ac hofc ont rac t ; c ont r av e n‑
t i onauc ont r at ) と称される ( 時として , 「 不履行 」( non‑ pe r f or manc e; i ne xe ' c u‑
t i on)が用いられることもある) 0
これに対 し,BGB 及び日本法の用語 として 「 債務不履行」 ( Ni c ht e r f nl l ung) というとき,そこに噸庇担保責任や無茸の履行不能を含めてよいかについては疑義 が生ずる。そこで本稿では,堀痕担保責任や無責の履行不能等を含めて, 当事者の 帰責性の有無を問わず客観的に見て債務の履行がなされていない状悲, いわば 「債 務関係の目的が実現されるに際 し発生す る諸々の妨害及 び障害」 を 「給付障害」
( Le i s t ungs s t 6r unge n) と称す ることがある ( He i nr i c hSt o l ュ ,Di eLe hr eYon Ide nLe i s t ungs s t ar unge n,1 9 3 6,S. 1 3; Emme r i c h,DasRe c htde rLe i s t ungs ‑
s t 6r unge n,2.Auf 1 . ,1 9 8 6, S. 2 などを参照) 。なお,奥田昌道編集 『 注釈民法( 1 0 ) 』 ( 昭 6 2 )3 2 5 頁以下 [ 北川善太郎執筆]でも,同様 の趣 旨で" Le i s t ungs s t 6r unge n"
なる表現が用いられ, ここでは 「 履行障害」の訳が充て られている。
' 「ウィー ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反 の構造 1 1 3
Ⅱ 契約の法的保障機構〜 コモン ・ローと BGB‑
1 基本的視座
( 1) ライ ンシュタイ ンは,英米法 における契約債務 の内部構造 を分析す る中 で, コモ ン ・ロー及 び BGB に見 られ る契約違反 [ 不履行] の基本的な構造上 の特色 を,次 のよ うに整理 して示 した。
( 2) コモ ン ・ローにおける考察 の出発点 は債務でな く,債務侵害すなわち契 約違反 ( Ve r t r ags br uc h) である。すなわ ち,契約か ら生ず る請 求権 を根拠付 けるための要件 は,被告 が約束 ( Ve r s pr e c he n) に違反 した ことによ り原告 が 損害を被 った ことである。 その意味において, 用語 法 と して は, 「契約違反」
( Br e ac hofCont r ac t ) とい うよ り,む しろ 「 約束違反 」( Br e ac hofPr omi s e ) とい うほうが, よ り正確 な表現 といえ る8 ) 0
したが って,契約違反 に対す る通常 の法的救済 は損害賠償である。その結果, 契約違反がいかなる種類 なのか,すなわち,履行がなされないのか,遅延 した 履行 なのか,又 は不相 当な方法 による履行 なのか といった差異 は重要でな く,
また,違反のなされた約束がいかな る種類か とい う区別 も問われない9 ) 0 なお,約束 は,給付 が もた らされ ることそれ 自体,及 び,給付 目的の性質保 証〜それが,現在,すなわち契約締結時点で現存す る性質であれ, また,将来
の時点 において存在す る性質であれ〜のいずれに対 して もなされ る 1 0 ) 0
( 3 ) 一方, BGB によれば,「 債務関係 の効力 により,債 権者 は, 債務者 に 対 して給付 を請求す る権利を有す る 」 (§ 2 41IBGB) 。 す なわ ち, 給付 を命 ず る 「 債務」の背後 には,債務者 の意思 に反 してす ら貢徹 され るべ き 「 強制装 置 」( z wi nge nde rAppar at ) が予定 されている 1 1 ) 。
この強制装置 は,給付 され るべ く義務付 け られた意思表示 の結果 ( Er f ol g)
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:を取得 させ るべ きものであ って,単 なる賠償 を与 え ることに尽 きな い1 2 ) 。 さ ら に,債務関係 の目的 は,債務者 の労力 としての行為 ( Handl ung) で はな く, 結果の実現 ( H6 r be i f 払 r unge i ne sEr f ol gs )であ る1 3 ㌔ そ して,給付結果 の不 実現 により債権者 に損害が発生すれば,第二 の段階 と して,賠償義務 という制 裁が発生す る1 4 ) 0
こうして給付義務 の結果実現を出発点 とす る故 に,給付請求権 と給付 目的の 性質 を保証す る請求権 とは峻別 され る。 なぜな ら,給付請求権 の対象 は,結果 実現 に向 け られた債務者 の作為又 は不作為であるのに対 し,性質 を保証す る請 求権の対象 は,約定時点 で保証 された性質 を欠 く場合 における損害賠償 だか ら である1 5 ) 0
( 4) この ライ ンシュタイ ンの考察 によれば,契約上の債務関係 における 「 給 付」( Le i s t ung) とは,契約 の締結 によ り給付 の 「 約束」 ( Ve r s pr e c he n) が な され,債務者 の 「 行為」( Handl ung)を通 じて, その 「 結 果」 ( Er f ol g) が実 現 され る過程 として分析 され る。すなわち,契約債務 とは,「 給付約束
( Le i s t ungs ve r s pr e c he n) 」 ‑ 「 給付行為 ( Le i s t l l ngS handl ung) 」 ‑ 「給 付結 果 ( Le i s t ungs e r f ol g) 」 とい う段階 として観念 され ることが示唆 されている。
そ して, コモ ン ・ローは 「 給付約束」 の不実現 を契約違反 と捉 え, これに対 す る救済 と して損害賠償を予定 していることが明 らか とな る 。 確 かに,英米法 において も, エクイテ ィが特定履行 ( s pe c i f i cpe r f or manc e ) を認 めてお り, そ こで は 「 契約 によ り引 き受 け られた義務 の内容 とは,約束 された給付 の実現 ( Er br i ngungde rve r s pr oc he ne nLe i s t ung) である」 との認識 が 出発点 とされ る1 6 ) 。 しか し, エクイテ ィ上 の特定履行 とは,契約違反 に対す る救済 と して損 害賠償 のみを許容 していた コモ ン ・ローを補完す るため, エクイティ裁判所 に おいて扱われ るに至 った ものであ り, コモ ン ・ロー上 の救済が十分でない場合 1 2 )Rhe i ns t e i n,op.° i t . ( 注 6),S. 1 2 3
1 3 )Rhe i ns t e i n,op.° i t . 〜( 注 6),S. 1 2 3,Fn. 5 1 4 )Rhe i ns t e i n,op. ° i t .( 注 6),S. 1 2 4
1 5 )Rhe i ns t e i n,op.° i t ,( 注 6),S. 1 5 4
1 6 )Rhe i ns t e i n,op.° i t . ( 注 6),S. 1 3 9
・ 「ウィー ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 1 5 に限 り認め られるという補充的な地位を与 え られていたにす ぎない1 ㌔ す なわ ち,特定履行が コモ ン ・ロー上の損害賠償 と同一次元 に位置付 け られることを 許 されているわけではない。
それに対 して, BGB は,「 給付結果」 の実現保障を第一次 的救済 と し, 揺 害賠償を二次的救済 と位置付 けるという, コモ ン ・ローとはまさに対政的な段 階構造 を採 っていることになる。
( 5) こうした分析か ら, コモ ン ・ローと BGB における契約の法的保障機構 に見 られる根源的な差異が,次のように抽 出され る 。 すなわち, コモ ン ・ロー 上,債務者 は給付 自体を約束す るのでな く〜債権者 には履行請求権が生 じない
〜,給付が実現 されなか った場合 にも相手方 に損害を被 らせないという 「 損害 担保 」 ( Gar ant i e ) を引 き受 けるにとどまるl S ) .一方, BGB は,「 給付結果 」
の実現保障に向けた債務関係 を構築 し,「 債務者 に義務付 け られた給付 が完全 に実現 され ることによ り ( dur c hvol l s t 註ndi geBe wi r ku n gde rde m Sc hul dne r obl i e ge nde nLe i s t ung) ,債務関係 は法律上当然 に ( i ps oj ur e) 消滅 す る
」 19)と理解 され るのである。
いわば, コモ ン ・ローの契約違反 は 「 給付約束」 に対す る担保 の体系である 一方, BGB の債務不履行 は 「 給付結果」 の強制実現保障 に向けた法的機構で
あるともいえよう 2 0 ) 0
1 7 )Rhe i ns t e i n,op.° i t . ( 注 6),S. 1 3 9 f ∴ コモ ン ・ロー とエ クイテ ィとの管轄 の分 離 は,今 日ではむろん解消 している 。 しか し,特定履行 という救済が, 今 もなお公 平的 ( e qui t abl e ) 見地,例えば不公正 ( unf ai r ne s s ) 又は不当 ( hards hi p) といっ た理由か ら拒絶 される可能性を持っ とい う意味で, エクイティの機能 を認識 してお く必要 が あ る と指 摘 され て い る ( Tr e i t e l ,i n: I nt e r nat i onalEnc yc l ope di aof Compar at i veLaw,v o l . Ⅶ ,Chapt e r1 6 , §§ 3 0,9 ) 0
1 8 )Rhe i ns t e i n,op.° i t . ( 注 6),S. 1 5 8
1 9 )Mot i v ez um Bi i r ge r l i c he nGe s e t z buc h,Bd. Ⅱ ,1 8 9 6,S. 81 : なお, § 3 6 2IB GB 及 びHube r,ZurDogmat i kde rVe r t r ags v e r l e t z unge nmac he i nhe i t l i c he m
K auf r e c htundde ut s c he m Sc hul dr e c ht , F e s t s c hr i f tf arEr ns tvonCae mme r e r z um 7 0.Ge bur t s t ag,1 9 7 8,S. 8 3 7( S. 8 45 ) を も参照0
2 0 ) このことは,すでに磯村 ・前掲 ( 注 4) 5 貢以下が,英米法及 び大陸法 にお ける契 約の法的保障の構造的差異の出発点 と位 置付 けて いた点 で あ る 。 なお, 川村 泰啓
『 増補商品交換法 の体系 Ⅰ 』 ( 昭 5 7 )3 4 8 頁以下が,契約損 害賠償 にお け る帰責 原理
2 給 付 障害 の内部 構造
( 1) さ らに注 目され るべ きは, こ う した基本的な構造上 の相違 か ら, コモ ン ・ ロー と BGB は,契約違反 [ 債務不履 行] の態様 の把握,債 務者 の帰真性 の判 断基準, 損害賠 償 の範 囲, そ して職症 担保責 任 の位 置付 け等 々の場面 にお いて ち,次 の よ うな対照 的 な差異 を派生 させ て い る と思 われ る ことで あ る 。 す で に 文献上指 摘 されて い る と ころ に従 い, その骨 格 のみ を示 す と,次 の とお りで あ
る 。
( 2 ) まず,契約違反 [ 不履 行] の態様 につ いて, コモ ン ・ローで は これが一 切 問題 とな らな い。 す なわ ち, 契約違 反 に対 す る救 済 は損害 賠償 で あ るか ら, 給付 が不能 にな ったのか, 時期 に遅 れ たのか,又 は不完全 になされたのか とい っ
た区別 は意 味 を持 たず, いか な る態様 にせ よ 「 約束 違反 」 が あ り, そのた め相 手方 が 「 損 害 を被 った」 ことのみが重 要 で あ る
21)。それ に対 し, BGB にお いて は,給付 の実現保 障 ( 履行請 求) が債務不 履行 に対 す る第一次 的救済 で あ る ことか ら, そ こで は, 給付 がで きな くな ったのか [ 不能], で き るの に しな いのか [ 遅 滞] の区別 が意 味 を持 つ 。 ま た, 「実 現 す べ き給付 を もた ら した ものの それが不 完全 で あ った」 ( ‑di eLe i s t ung,di ee r z ube wi r ke nhat, z warbe wi r kt,abe rf e hl e r haf t ‑) とい った場面 〜 シ ュ タ ウ
プ ( St aub,H. ) に よ る 「積極 的契約侵 害 」 ( pos i t i veVe r t r ags ve r l e t z ung) 概 念 〜
ぱ 2), 「 給 付結果 が実現 され な い」 とい う範 噂 内 に位 置 付 け を与 え られ な
として,英米の契約損害賠償ルールの中核を成す 「 約束」帰責プ リンシプル と, B GB が採る 「 不履行」帰責 プ リンシプルという類型構成を提示されることをも参照。
2 1)Rhe i ns t e i n,op.c i t . (注 6),S. 1 4 9; Zwe i ge r t/K6t z,Ei nf uhr ungi ndi e Re c ht s v e r gl e i c hung,Bd. 2,2.Auf 1 . ,1 9 8 4,S. 2 2 2
2 2 )St aub,Di epos i t i v e nVe r t r ags v e r l e t z unge nundi hr eRe c ht s f ol ge n,Fe s t s c h‑
r i f tf urde n2 6.De ut s c he nJur i s t e nt ag,1 9 0 2,S. 2 9( S. 3 1 ):こうした シュタウ
プによる問題提起を承けて, ドイツでは , 「 給付行為」 段階を も視野 に加えた考察
が自覚的に行われるようになる.例えば, ジーバ ー ( Si be r,H. )は ,「BGB は,
給付の対象を常 に結果の作出 ( He r s t e l l unge i ne sEr f ol gs ) とみな している」 と
解 しつつ,同時に , 「 給付 とは,債務者の給付行為 ( Le i s t ungs v e r hal t e n) , すな
わち,債務者側か らの自由意思により給付結果をもた らすために必要 とされる諸 々
の行為及び不作為の総体を も意味す る」 と説 いていた ( Si be r,ZurThe or i eY on
「ウィー ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 17 い恐 れを生ず る
。( 3) 次 に,契約違反 [ 不履行] を犯 した債務者 の帰真性 の有無及 びその範囲 の判断 に差異 を生ず る
。コモ ン ・ローにおける契約違反 は,「 給付約束 」 時 にいかな る 「損 害担 保 」
がなされていたかを基準 と して判断 され る2 3 ) 。 したが って,債務者 の帰責 性 の 有無 は,契約締結時,すなわち 「 給付約束」時 における 「 損害担保」 の内容 に よ り決せ られ, また,契約違反 に基づ く損害賠償 の範囲 も, この時点 における 当事者 の予見可能性 によ り画 され ると解す ることで,一貫性が保 たれ る。
一方, BGB の解釈上,債務不履行 における債務者 の帰真性 は,「 給付結果」
の実現段階 において判断 され る。すなわち,「 故意」 とは, そ こで生 じるべ き 結果 ( Er f ol g) が遵法であ ることを認識 しつつ これを意欲す ることで あ り
24),
また, 「 過失」 とは,生 じるべ き結果が回避 され得 るにふ さわ しい注意 を怠 る ことと定義 され る2 5 ) 。 また,損害賠償 の範囲を定 め るにあた って は, 「賠 償義 務 を生 じさせた事情 がなか ったな らば」,すなわち,給付結 果 が実現 され て い たな らば存在 したであろ う状態へ の回復が, その原理上導かれ る基準 と して, 直哉 に実定法化 され る (§ 2 4 9 BGB) 0
( 4 ) 最後 に, コモ ン ・ローと BGB とで は,原始的に不能 な債務‑の対応が 異 な り, その結果,堀痕担保責任 の位置付 桝 こ次 のような差異が現れ る
。Sc h1 1 1 dundHaf t ungmac hRe i c hs r e c ht ,Jhe rJb. 5 0 ( 1 9 0 6),5 5 ( 1 7 3 f . )) 。 た だし,ここに見 られるとおり,論者の視点は,なお 「 給付結果」に傾いている。 こ うした観念は,日本の民法解釈論にも,少なからず影響を与えたと思われる。「 債 権は,債務者の給付を目的とするも,債務者が行為を為すといふ過程に重 きを置か ず,給付が為されるといふ結果に重きを置 くものである 」 ( 我妻 栄 『 債権総論』
( 昭 1 5 )6 5 頁)といった理解には,こうした影響を見てとることができよう。
2 3 )Zwe i ge r t /Kそ う t z,op.° i t . ( 注 2 1 ) ,S. 2 2 7
2 4 )Wi nds c he i d,Le hr buc hde sPande kt e nr e c ht s,Bd.1,8.Auf 1 . ,1 9 0 0 , § 1 01 ( S . 4 4 7 f . ); なお, Mot i v e呈 um Bi i r ge r l i c he nGe s e t z buc h,Bd.Ⅰ ,1 8 9 6,S. 2 8 0:
Lar e nz,Le hr buc hde sSc hul dr e c ht s,Bd.1,1 4.Auf l リ 1 9 8 7,S. 2 7 9 なども参 照。
2 5)Wi nds c he i d,op.° i t . ( 注 2 4) , § 1 0 1 ( S . 4 4 8); なお,Oe r t mann,DasRe c ht
de rSc hul dv e r hal t ni s s e,2.Auf 1 . ,1 9 0 6,S. 8 8; Lar e nz,op.c i t . ( 注 2 4),S. 2 8 3
なども参照。
まず, コモ ン ・ロー上 は,原始的に不能な給付を 「 約束」す ることも可能で ある。 なぜな ら,債務関係 により基礎付 け られるのは履行請求権でな く, そ こ か ら損害担保約束が発生す るにす ぎないためである。 その結果,原始的一部不 能の一場面たる堀症担保責任 の事例 も,損害担保約束違反,すなわち契約違反 一般 として処理 され ることで足 りる2 6 ) 0
しか し, BGB における債務関係 は 「 給付結果十 の実現 に向け られてお り, また, それが強制履行 という手段 により担保 されているという構造か ら,原始 的に不能 な債務 は論理的に成立 し得 ない (§ 3 0 6BGB) 。 す なわち, ここで は まさに ' ' I mpos s i bi 血 m nul l aobl i gat i oe s t ' ' の原則 が妥 当す る 。 その結果, 堀庇担保責任 は 「 不履行」一般か ら切 り離 された性質保証 として位置付 け られ
ることになる。
* ( a) コモ ア ・ロー上 の契約遵反 と BGB が定める債務不履行 との構造的差異 を, 鶴 的に示 した ライ ンシュタイ ンは,豊富な資料を駆使 して英米法 における契約債務 の内 部構造 を分析 してい′ た。すなわち, その研究 においては,英米法上の契約観念 と して 並立す るところの,危険引受 に基づ くコモ ン ・ロー上の損害賠償,金銭債務訴訟 及 び エクイティに基づ く給付請求 とい う三者の歴史的発展過程が跡付 け られた うえ,損害 賠償を認 めるコモ ン ・ローが原則的地位を占め, この点が大陸法諸国 との大 きな差異 を形成 したことが指摘 される。確かに, コモ ン ・ロー圏において も ,1 9 世紀の一時期, ローマ法理論やパ ンデクチン法学 の影響下 に 「 履行」を契約上の第一次的義務 と見 る 大陸法的契約観が流布 し 契約の本質 を危険の引受 ( t aki ngar i s k) と解 す るホー ムズ ( Hol me s,0. W. ) のよ うな伝統的立場 は少数派 とな ってゆ く 。 しか し, コモ ン ・ローを中核 とす る判例法の体系 は,そ もそ も履行請求を受容す る受 け皿を持 ち得 ず, また,判例法主義の伝統が大陸法的学説の浸透 を阻んだ というのが, ライ ンシュ タイ ンの見方である. そ して,英国 コモ ン ・ローの判例法理 は,地域的にも歴史的 に も断絶 されたことがなか っただけに, こうして保持 されてきた特質を考証す るうえで
2 6 )Rhe i ns t e i n,op.° i t . ( 注 6),S. 1 5 4 f .
「ウィーン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反 の構造 1 1 9 好個の素材 と説かれ るのである ( Rhe i ns t e i n,op. ° i t . ( 注 6),S. 2 3 2 f f .に要約 が示
されている) 0
もっとも, こうした ライ ンシュタイ ンの研究 については,一部 に誤解 もあるので は ないか と指摘 されてお り ( 北 川善太郎 『 契約責任 の研究』 ( 昭 3 8 )4 9 頁 ,5 1 頁参照), さらに検証の余地を残 していると思われる。その意味において,本稿のような考 察 の 視角を設定す るのであれば,その前提 として,英米 コモ ン ・ローが採 る 「 給付約束」
違反 に対する損害担保 の契約構造 と, BGB が予定す る 「 給付結果」実現保障の債務 観の形成過程の各 々が, まず,跡付 け られなければな らないであろう。 しか し, その 詳細 な検討 は筆者の今後 の課題 とし, ここでは次のような端緒的な指摘 にとどめざ る
を得なか ったこと,宥恕 を願 う次第である。
( b) まず, コモ ン ・ローの契約違反概念の形成過程 については,次のような点が指 摘 されて きた。すなわち, コモ シ ・ローにおいては, その令状主義 の故 に,不要式 か つ捺印証書 によらない合意を執行す るための訴訟 は存在 しなか ったが ,1 4 世紀以降, 不法行為訴訟の範噂において,権利侵害を受 けた被害者 に金銭賠償 を認 めるための法 的技術 として侵害訴訟 ( t r e s pas s ) の形態 が発達 を見 た ( Cooke/Ought on,The Common Law ofObl i gat i ons , 1 9 8 9,pp. 3‑4: Si mps on, A Hi s t or y oft he CommonLaw ofCont r ac t ,1 9 7 5,pp. 1 9 9‑2 0 0 ) 。当初, ここでの侵害行為 は暴力 を用いて ( v ie tar mi s ) なされた ものに限 られていたが, 徐 々に " v ie tar mi s" 秦 項が要件か ら脱落 し,被告の不行跡を理由として提起 される金銭賠償訴訟 は,広 く, 場合訴訟 ( ac t i onont hec as e ) として知 られ るようになる ( Cooke /Ought on,op.
° i t . ,p . 4)。 さ らに, この場合訴訟 の中か ら,原告 と被告 との間に不要式 の取 引 ( i n‑
f or malt r ans ac t i on) が存在す ることを根拠 に被告の責任 を認 める類型が抽出され, 1 5 ‑1 6 世紀 にはその適用領域が 口頭契約違反 ( br e ac hofpar ol ec ont r ac t s) 一般 にまで拡大 されてゆ く ( Si mps on,op. ° i t . ,pp. 2 0 3‑2 0 6 ) 。 ここにお いて, あ る者 が履行すべ く 「引 き受 けた」義務を果 たすにあた り他人 に損害を生 じさせたな らば賠 償義務が生ず るとの準則が確立 した ことにな り, こうした特定の訴訟類型 が , 「引受
訴訟 」( ac t i onofas s umps i t ) 〜その効果 は損害賠償〜 と して定着 を見 るに至 った
( Si mps on,op. c i t . ,pp. 2 1 0‑21 5 ) .
このように,引受訴訟 は徐 々に契約法上の救済手段へ と進化を遂 げてい くが,年代 を追 ってこれを見れば,引受違反 に対する救済が,履行方法の不相当 ( mi s f e as anc e s ) を理由とす るものか ら履行傑怠 ( nonf e as anc e s ) の事例へ と拡大 され, さ らに未履 行契約一般への適用を経て,最終的に黙示の契約違反 に対す る救済 にまで及ぼされて
い く過程であると説明される ( Hol ds wor t h,A Hi s t or yofEngl i s hLaw,γ o l . Ⅱ,
5 t he d. ,1 9 4 2,p. 4 2 9; Cooke /Oug h t on,op. c i t . ,pp . 4‑5 ) . こうした指摘 か ら, 引受訴訟 は , 「原告が被告の約束を信頼 して財産処分 を行 ったことにより被 った損害」
の賠償を目的 とし,後の判例法 を通 じて,引受違反 た基づ き損害賠償を請求す る手段 として広 く活用 され るた至 った経緯 が推知 され るで あろ う ( Rhe i ns t e i n,op. c i t . ( 注 6),S. 3 3: なお, この間の経緯 は,木下 毅 『 英米契約法 の理論 [ 第 2 版 ] 』 ( 昭
6 0 )1 0 5 頁以下 にも詳 しい) 。 こうした推移 には , 「 引受」すなわち 「約束」 違反 が帰 責 の中心 に据え られ る一方,不法行為の訴訟形式を借用 したために,その救済 と して
「 損害賠償」のみを認 めるというコモ ン ・ロー特有の契約違反構造 の端緒 が示 されて いると思われ る。
( C )一方, BGB の採 る 「 給付結果」実現体系の形成 は, その理論的基盤を成 した パ ンデクテ ン法学説が,債務関係の射程を 「 給付結果」実現段階へ と縮減 させて い っ た ことに, その一因を兄い出せ るのではないか と推察 され る。
例 えばモムゼ ン ( Momms e n,F. ) は, そのいわゆる 「 三部作 」 〜 『給付不能論』
( Di eUnmGgl i c hke i tde rLe i s t u n g, 1 8 5 3 ) ,『 利益論 』( ZurLe hr ey onde m 王 nt e r ‑ e s s e,1 8 5 5 ) 及 び 『 遅滞論 』( Di eLe hr eYonde rMor 且 ,1 8 5 5) 〜 の冒頭 にあた る
『 給付不能論』の序 において,そ こで自らによ り扱われる法源の制約 を,すで に次 め と
お り認めていた。すなわち,自らが主 として利用 し得 た法源 は , 「 物 的給付 をその 目的
とす る債務,とりわけ売買契約,及 び,与え ること ( dar e ) に向けられた約定 に関す る
ものにとどまる」とい うので あ る ( Momms e n,Di eUnm6gl i c hke i tde rLe i s t ung ,
Vor wor t ,S. Ⅵ) 。 そ して , 「 主 に行為 ( Thun) を目的 とす る債務 に関 して われわれ
が用 いることので きる素材 はきわめて不十分である」故 に , 「ここで肝要 なの は, 級
者 [ 引用者注 :行為債務を指す] のために適用 され るべ き法 を,他の債務 について認
識 されたことか ら導かれる帰結 を通 じて突 き止 め る こと」 だ とい う ( Momms e n ,
「ウィー ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 2 l op. ° i t . ,Vor wor t ,S. Ⅵ) 。 こうして示 されたところか ら, モムゼ ンによる検討 の主 たる対象 は,物の給付 という明確 な結果実現 に向け られた債務 にどどまり,行為 を目 的 とす る債務 に対 しては,前者の転用 ない しは類推が意図 され七いるにとどまるとい う制約が見て取れるであろう。すなわち, こうした方法か ら, まず , 「給付約束」 の
段階が視野か ら欠落 していることは明 らかである。 さらに , 「 給付行為‑給付結果」
段階において も , 「 給付行為」 には固有の検討 の場が与え られず,考察 の射程 は もっ ぱ ら 「 給付結果」実現段階に傾斜 してい くとい う特異性が看取 され るのではないか。
さらにモムゼ ンが, その師で あ るサ ヴ ィニ ー ( Sav i gny,Fr i e dr i c hC. Ⅴ. ) か ら 多 くの示唆を得ていることは彼 も自認す るところで あ るが ( Momms e n,op. ° i t . , Vor wor t ,S. Ⅷ),そのサヴィニーが , 「 給付請求権 の実現保 障 を契約 的債権 の法 的 保障の第一義 とす る政策的立場決定」 を確立 したとの指摘 は重要 といえよう ( 川村泰 啓 「 比較法制度史的パースペクティブのなかでの, 日民 の担保責任制度 ( ≡)」 法曹 時報 3 3 巻 4 号 ( 昭 5 6 ) 1 頁 (3 貢)) .すなわちサヴィニーは , 「 他人 の個 々の行為 に 対 す る支配 関係」 を 「債務 関係」 と定義 す る ( Sav i gny,Sys t e m de she ut i ge n r Gmi s c he nRe c ht s,Bd. 1,1 8 4 0,S. 3 3 9: なお ,de r s. ,DasObl i gat i one nr e c ht , Bd. 1,1 8 5 1,S. 4 f .を も参照)。 ここで は , 「 他人の行為 の うえへの支配」 とい う権利 性が前面 に押 し出されてお り ( 川村 ・前掲論文 4 責), このよ うに自然法 的意思理論 に立脚 して, 自らの意思 に基づ き自己の自由の一部を他者 に譲渡す る結果 として,す なわち,債権者が債務者の行為の一部を支配す る帰結 として,履行強制が導かれ, こ れが契約の第一次的保障を形成す るに至 ったと分析 される。そ して, こうした 「 給付 請求権の実現保障原則 に立脚す る債務関係法の構築」への気負 いは, その際に 「 依拠 することを余儀な くされた法素材 (ローマ法源)の側 にあった歴史的制約」を伴 いっ つ, ドイツ後期普通法学の集大成者たるヴィン トシャイ ト ( Wi nds c he i d,B. ) を経 て BGB へ と結実 したとの理解が示 され るのである ( 川村 ・前掲論文 3 2 頁以下)0
( d) こうした考察を も踏 まえて,川村 ・前掲書 ( 注 2 0 )3 4 8 頁以下 は, BGB の契
約損害賠償 における帰責原理 を , 「 債務の不履行 にさい しての債務者 の行為主体性 の
介在 モーメ ン トの うちに帰責根拠をみて とる立場 」( 「 不履行」帰責 プ リンシプル) と
捉え, これを英米 コモ ン ・ローの 「 約束」帰責 プ リンシプルと対置きれる。一方,近
時,主として 「 給付行為‑給付結果」段階を視野に据えて,履行過程において発生す る契約義務群の分析をはじめ,契約規範の構造解明に取 り組 まれるのが,潮見佳男
「 債務履行構造に関する一考察 ( ‑)′ ( 二 ・完 ) 」民商法雑誌9 0 巻 3 号 2 6 頁, 4 号 3 3 頁 ( いずれも 1 9 8 4 ) ,同 「 債務履行過程における完全性利益の保護構造 ( ‑ ⊥)〜 ( 三 ・ 完 ) 」民商法雑誌 1 0 0 巻 4 号 6 1 貢, 5 号 5 7 頁 ,1 0 1 巻 1 号 5 7 頁 ( いずれも 1 9 8 9 ) 等の論 稿であると思われる。
本稿は,これらの業績に負いっつ,また,ラインシュタインの分析からも示唆を得 て,コモン・ローが 「 給付約束」射程の契約違反体系を持つのに対 し, BGB は 「 給 付行為‑給付結果」 ,なかんづく法典編纂段階においては 「 給付結果」射程の債務不 履行構造に傾斜 していたのではないかとの視角を設定 し,これを尺度として CISG
の分析を試みるものである。その詳細な検証と,日本の民法典に即 した解釈論の展開 は,筆者にとって今後の課題である 。
3 小 括 〜CISG 考察への視点〜
( 1) ここに概観 された とお り, コモ ン ・ロー原理が 「 給付約束」 に向け られ た債務観 を構築す る一方, BGB における債務関係 の射程 は,一貫 して 「 給付 結果」 の実現段階へ とズ レ込んでお り, しか もこうした差異 は,契約違反 [ 債 務不履行] の態様把握,帰責性 の判断基準,損害賠償 の範囲,原始的不能概念 の捉 え方 とい った,給付障害 の内部 における諸 々の場面 を決定付 けて いる可能 性 がある 。
( 2 ) す なわち, コモ ン ・ローは 「 給付約束」不実現 を 「 契約違反」 と捉 え,
これに対す る法的救済 と して 「 損害賠償」 を認 めるとい う基本構造か ら,契約
違反 の構造 内部 における二つの特徴 を派生 させていると考え られ る。 その一つ
は,契約違反 の態様 に差異を設 けず, さ らに堀庇担保責任を もここに取 り込 ん
で,完全 に一元的な契約違反 の要件 ・効果 を構築 していることである。そ して,
他 の一つ は,契約締結時,すなわち 「 給付約束」時の損害担保 の内容 によ り契
約違反 の帰責性 を判断 し,かつ,損害賠償 の範囲を画す るにあた って も, この
時点 における当事者 の予見可能性 を基準 としていることである。
「ウィーン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 2 3
‑万, この コモ ン ・ローとの対比 において BGB の給付障害規定 を一瞥す る な らば,後者 は 「 給付結果」不実現 を 「 債務不履行」 と位置付 け, これに対す る法的救済 と して,第一次的 に 「 履行請求」 を,そ して二次 的に 「 損害賠償」
を許容す る。 その結果,債務 の履行が 「 不能」 に帰 したのか, 「遅 滞」 して い るにす ぎないか ば,「 履行請求」が機能す るか否 かを決定付 け るため重要 な メ ルクマール とされ, また,原始的 に不能 な債務,すなわち契約成立時 において
「 履行請求」 を観念 し得 ない債務 は,成立 の基盤 を失 う ( 不能 ・遅 滞 の二分構 成, " i mpo s s i bi l i umn u l l ao bl i ga t i oe s t " 原 則 の受容, 及 び, 債務 不履行 と 堀症担保責任 との分離) 。 また,債務不履行 にお ける帰責性 とは, 債務不履 行
とい う 「 給付結果」不実現 に向け られた故意 ・過失 であ り, 「給付結 果 が実現 されていたな らば相手方が置かれていたであろう状態への回復 」 が損害賠償 の 基本理念 とされ ることになる。
( 3) 次章では, こうした視角,すなわち給付障害 を規律す る上 での債務関係 が 「 給付約束‑給付行為‑ →給付結果」 のいずれの段階 に向 け られているか, そ してその基本的な差異が給付障害の各場面 にいかな る影響 を及 ぼ しているか と い う側面 か ら, CISG の契約違反規定が概観 され るものである。 こうした問 題意識か ら考察 され るべ き事項 を改めて確認す るな らば, それは次 の諸点であ
る 。 まず,
① 契約違反 の基本的な構造 が どのよ うに把握 され るか。すなわち,何が契 約違反 に該 当 し, それにどのよ うな法的効果が結 び付 け られているか。 ま
た,契約違反 の態様 が分類 されているのであれば,法的効果 において もそ れ に対応す る差異 が設 け られているか ( Ⅱ 2) 0
こうして契約違反 の基本的な枠組 みが確認 された後, さ らに次 のような個別 問題が検討 され るべ きであろ う 。 すなわち,
② 契約違反を被 った相手方 に与え られる主要 な法的救済, とりわけ履行請 求及 び契約解除の内容が どのように規定 されているか。 また, これ らと損 害賠償 との関係 はどうか ‑ (Ⅱ 3 (1) (2) ) ,
③ 契約違反 における帰真性 はどのように判断 され, また,損害賠償 の範囲
が どのよ うに画 され るか ( Ⅱ 3 (3) ) ,
④ 領症担保責任 と契約違反一般 との関係 はどうか ( Ⅱ 3 (4) ) , といった諸点である 。
( 4) CISG 〜及 びその前身 ともいえる ULIS 〜ば,異 なる法系の諸国で 適用 されることを前提 とす る故の妥協を余儀な くされていると評 されることが ある。 そ こで次章で は,上で確認 されたコモ ン ・ローと BGB の給付障害規定 の対政的構造 を分析視角 とし, これを CISG の契約違反規定 と対 比す るとい う方法を通 じて,そ こに見 られる構造上 の特色を把握す るよう試み られるもの である。
‖ C ISG にお ける契約違反
1 売主及 び買主 の義務
( 1) CISG における契約違反,一 及 び, それに対す る法的救済の構造を検討 す る前提 として,同条約が当事者 にいかなる義務 を課 しているかを, ひととお
り確認 してお く必要があろう 。
( 2) まず,売主 は目的物引渡及 び所有権移転の義務を負 う ( 30 条)。その際, 基本的な義務内容 を表示 し, かつ,売主が履行を果た した〜 したが って,履行 請求権が生 じない〜 と認 め られ るか,又 は損害賠償義務を負 うのかを決定付 け
るために,供給の場所,時期及び方法が重要な意味を持
っ 27)0供給場所 は契約 により定 め られ ることを本則 とす る (6 条)。 したが って, 法 は,契約又 は慣行 によって も供給場所が定 ま らない場合 について, これを送 付売買 とそれ以外 に分か って規定す るにとどまる ( 31 条)。 まず, 送付売買 の
2 7 )L弘de r i t z,Pf l i c ht e nde rPar t e i e nnac hUNI Kauf r e c hti m Ve r gl e i c hz uERG
undBGB,i n: Sc hl e c ht r i e m ( hr s g . ), Ei nhe i t l i c he sKauf r e c htundnat i onal e s
Obl i gat i one nr e c ht , Re f e rat eundDi s kus s i one n de rFac ht agung Ei nhe i t ‑
1 i c he sKauf r e c htam 1 6. /1 7.2.1 9 8 7,1 9 8 7,S. 1 7 9( 1 8 0 f . ) : なお, 同書 は, 統
一売買法 ( ULIS , C ISG) と国内債務法 との比較を目的 と して開催 され た専
門家会議 における報告 と質疑 を収録 した ものであ り,参膿 され るべ き多 くの論 稿 を
含んでい る ( 以下, " Fac ht agung ' 'と して引用す る) 0
「ウィー ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 2 5 場合,売主 は,買主 に運送す るための第‑運送人 に目的物 を交付 す る ( ha nd‑
i ngove r; r e me t t r e ) ことを要 す る ( 31 条 ( a) ) 。一方,送付売買以 外 の場合, 特 定物,特定在庫品の中か ら取 り出され る不特定物,又 は,製造 ( 生産) され る べ き不特定物 のいずれかに関す る契約 であ って,かつ,契約締結時 に当事者 の 双方が, 目的物 は特定場所 に存在 し,又 は,特定場所 で製造 ( 生産) され るこ とを知 っていた とき,売主 は, その場所で 目的物 を 「 買主 の処分可能 な状態 に 置 く 」 ( i npl ac i ngt hegoodsatt hebuye r' sdi s pos al ; ame t t r el e sma r c han‑
di s e sal adi s pos i t i ondel ' ac he t e ur ) ことを必要 とす る ( 31 条 ( b)) . そ して, これ以外 の場合 には,契約締結時 に売主が営業所 を持 っていた場所 において, 売主 は目的物を買主 の処分可能 な状態 に置かなければな らない ( 31 条 ( C )) 0
なお,供給時期 も, さ しあた り契約 に基づ いて確定 され るべ きであるが ( 3 3 条 ( a)( b) ) , それ以外 の場合 には,契約締結後,相当の期間内〜 白紙 条項 で あ
り,取引慣行 に照 らして補完 され る必要がある〜に供給 され るべ きである ( 3 3 秦 ( C ) ) 2 8 ) 0
・次 に,供給 の方法 に関す る売主 の主 た る義務 は,契約 に適合 した商品を引 き 渡す ことである 。 すなわち,売主 は,契約 によ り定 め られた数量,品質及 び種 類 の商品であ って,契約 によ り定 め られた とお り収納又 は包装 された ものを引 き渡 さなければな らない ( 3 5 条 1 項)。 こうした商品の契約適合性 は, 交付 又 は危険の移転後 であ って も等 しく要求 され る ( 3 6 条)。すなわち, CISG は, 契約不適合 の生 じた時期が契約締結 の前か後かを区別 していない。 なお, この
こととの関連で, ULIS で は供給 それ 自体 が商品 の契約適合性 を前提 と して いたのに対 し, CISG で は契約 に適合 しない商品 の引渡 も 「 供給」 とされ る ため,「 異種物 」( al i ud) と 「 堀症 ある供給 」( mange l haf t e rLi e f e r ung) との 差異如何 とい う問題が再 び生 じている2 9 ) 。すなわち実務 上 は, 「異種物」 の供 給 を受 けた買主 も, 自己の諸権 利 を保全す るために責問す る ( r 屯ge n) す る こ
2 8 )L hde r i t z,o p.c i t .( 注 2 7 ),S. 1 8 4
2 9 )L ude r i t z,o p.° i t . ( 注 2 7 ),S. 1 8 5
とを要す るか という問題 となる ( 39 条参照)3 の 。
さ らに, 目的物の契約適合性 について見 ると ,35 条 2 項〜同条項 は, 目的物 の契約適合性 に関す る解釈規定である〜によれば,次 のよ うな目的物 は契約 に 適合 しないとみなされる。すなわち, ( a) 同種 の動産 の通常 の使用 目的 にふ さ わ しくないとき, ( b) 契約締結時 に明示又 は黙示で売主 に知 らされて いた特別 な目的にふ さわ しくないとき, ただ し,諸般 の事情か ら判断 して,買主が,売 主の技量若 しくは識見を信頼 してお らず,又 は, これを信頼す ることが買主 に とって相当でないときを除 く, ( C ) 売主が見本又 はひな型 と して買主 に示 した 動産 と同 じ品質を備えていないとき,及 び, ( d) その動産 につ いて通常 な され るべ き収納若 しく● は包装, また, こうした方法がない場合 には, その動産を保 存 し,かつ,保護す るにふ さわ しい収納又 は包装が行われていないとき,であ る 。 もっとも,買主が 目的物 の契約不適合を知 り,又 は,気付 き得たであろう 場合,売主 は ( a) か ら てd) までの責任を負 わず, その判 断 の基準 は契約締結 時に置かれている ( 35 条 3 項) 0
最後 に,所有権移転義務 ( 3 0 条)● との関連 において,売主が,権利の堀痕を 帯 びていない商品,すなわち第三者 の権利や請求権 の付着 していない商品を引
き渡 さなければな らないことは当然である ( 41 条)0
( 3) 一方,買主の主 たる義務 は,代金の支払及 び商品の受領である ( 53 条)0 これは,売主 の基本的義務を定める 30 条 とともに自明の規定であるが, その中 に売買契約概念が兄 い出され るところである3 1 ) 。支払 の方式 に関す る規定 は簡 潔であ り,支払 の場所及 び時期を明示 しているだけで,通貨 については言及が
3 0 )Lade r i t z,op.c i t . ( 注 2 7 ),S. 1 8 5 は,売主 に故意があるとい った場合 は別論 と し て,責問の必要性を肯定す る。なお ,St umpい n:Ⅴ. Cae mme r e r/Sc hl e c ht r i e m ( hr s g . ) ,Komme nt ar呈 um Ei nhe i t l i c he nUN‑ Kauf r e c ht ‑ CI SG‑ ,1 9 9 0,Ar t . 3 5, ,Rn. 1 3 は,・ 後 に見 られ るとお り,すべての契約違反事例 を統一 的 に扱 うとい う CISG の趣・ 旨に軽み, たとえ追認 に適 さない異種物 で あ って も, 検収及 び責 間 に関す る規定 な維持 され ると説 く (なお, 同 コ ンメ ンタール は, 以下, "CI SG‑
Komme nt ar" とし七引用ず ろ).
3 1 )Li i de r i t z,op.° i t . ( 注 2 7 ),S. 1 8 8
「ウィー ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 27 ない。 また, 引換給付 の原則 は支払義務 の中に読 み込 まれている と解 され る3 2 ) ( 「 代金 を支払 い,かつ, 目的物 を受領す る ‑ 」( 5 3 条))0
前述 された ところの供給場所 に対応 して,支払場所 も, まず,契約 によ り定 め られ るべ きである 。 この定 めを欠 く場合 は条約 によるが, その規定 はやや複 雑であ り, しか も概 ね買主 にとって不利 とな るため, とりわけ買主 にとって は 約定のなされ ることが望 ま しい郷。すなわち, CISG によれば, 支払場 所 に 関す る契約上 の定 めがない ときは, ( a) 売主 の営業所 , 又 は, ( b) 目的物 若 し くは書類 と引換 に支払 いがなされ るべ きときは, その引渡 の場所が,支払場所 とされている ( 5 7 条 1 項)。 また,支払時期 について も, まず契約 が基準 とさ れ,約定がなければ供給 と同時 になされ ることになる ( 5 8 条 ・ 1 項) 0
買主 の受領 は事実行為である。すなわち,買主 は,売主 に供給 を可能 とさせ るため合理的 に期待 され るすべての行為 を行 い, 目的物 を受領す る義務 を負 う ( 6 0 条)。 これに対応 して,売主か ら買主 に対す る履行請求権〜すなわち受領請 求権〜 も,明文で認 め られている ( 6 2 条)0
( 4) CISG は 〜ULIS も同様であ ったが〜,信義則 に基づ く義務の履行, 当事者双方 の協調,及 びいわゆる 「 付随義務」 とい った ものを明示す る規定を 持 たない。 もっとも, 7 条 1 項が,「この条約 を解釈す るにあた って は, その 国際的性格, この条約 の適用 において統一 を促進す る必要性,及 び,国際取引 における信義誠実 ( goo d f a i t h; bo nn e f o 主 )の維持 につ いて考慮 され な ければ な らない」 と定めてお り, この規定 が手がか りになるとも患われ る。 しか し, ここで信義誠実が顧慮 され るべ きもの と しているのは 「 条約 の解釈」 につ いて であ って, ここに当事者 の行動準則 が示 されているわけではない3 4 ) .
それ に もか かわ らず,学説上 は,様 々な条項を拠 り所 と して信義則 に言及す る傾向が見 られ, その法意 は次 のよ うなところにあると指摘 されて い る3 5 ) . す
3 2 )Lade r i t z,op.c i t . ( 注 2 7 ),S. 1 8 9
3 3 )L i i de r i t z,op.c i t . ( 注 2 7 ),S. 1 8 9
3 4 )L誼de r i t z,op.c i t . ( 注 2 7 ),S. 1 9 3
3 5 )L追de r i t z,op.c i t .( 注 2 7 ),S.1 9 3 f f .
なわも,一定 の成果 に対す る債務 を負担す る者 は, その成果 を実現す るために 必要 な ことを行 う義務 を負 い, また, その成果 を妨 げる可能性 のある何事 を も 行わない義務 を負 う,換言すれば,正当 と認 め られた相手方 の契約 目的を挫折
させ ることを禁 じられ るとい うことである。売主が発送通知書 を交付す る義務 ( 32 条 1 項), 目的物 の運送 を手配す る義務 ( 3 2 条 2 項) ,保 険 を付 す るため に 必要 な情報 を買主 に与 える義務 ( 32 条 3 項), また,支払 を可能 にす るた めの 措置を買主が講ず る義務 ( 5 4 条)等 々は, こうした契約 目的に向けた協力義務, 又 は信義則上 の義務 として理解 され よ う 。 これ らを 「 付随義務」等 と称す るか 否かは用語 の問題であ る。 しか し, CISG において は,「 付 随義務 」 違反 に す ぎないか らとい って, それが 「 重大 な契約違反」 ( 25 条参照) で な い とはい えない ことに注意す る必要があろう3 6 ) 0
2 契約違反 に対す る法的救済 の概要
( 1) 当事者が 自己に課 された義務 を履行 しないとき, それ はすべて 「 契約違 反」 ( br e ac hofc ont r a' c t; c ont r ave nt i onauc ont r at; Ve r t r ags ve r l e t z ung) で ある 。 CI SG はこの概念 を コモ ン ・ローから受 け継 ぎ, したが って, 「契 約 違反」 の態様 に差異 を設 けていな、 い3 ㌔ すなわち,売主 による契約違反 につ い ていえば,買主 のための法的救済を定 め る 45 条3 8 )と, そ こで言及 された46 条 以下〜履行請求権 ( 46 条) と契約解除権 ( 49 条) の二者が最 も重要 で あ る3 . 9 ) 〜
3 6 )Lade r i t z,op.c i t . ( 注 2 7 ),S. 1 9 0
3 7 )Hube r, i n: CI SG‑ Komme nt ar, Ar t . 4 5,Rn.9; Wi l l ,i n: Bi anc a /Bone l l( e d . ), Comme nt ar yont heI nt e r nat i onalSal e sLaw,1 9 8 7,p. 3 31 (同書 は, 以下,
"Bi anc a/Bone l l ,Comme nt ar y" と して引用す る) 3 8 )CISG4 5 条 は次 の とお り定 める 。
( 1 ) 売主が,契約又 はこの条約 に定 め られた義務 を履行 しない とき,買主 は, a) 4 6 条か ら 5 2 条 までに定 め られた権利 を行使す ること,
も ) 7 4 条か ら 77 秦 まで に基づ き損害賠償 を求 めること,がで きる。
( 2 ) 買主 は,・軽かの救済手段 を行使す ることによ り,損害賠償 を請求 す る権 利 を失 わない。
3 9 )Hube r,i n: CI SG‑ Komme nt ar,Ar t .4 5,Rn. 1
「ウィーン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 2 9 及 び 7 4 条以下 ( 損害賠償請求権) の規定 の本質 は,「 売主 が その義務 を履行 し ない事例すべてのために,法的救済 の統一的な体系 を構築す る」 ことであり4 0 ) , か くして,不能,遅滞,積極的契約侵害,権利 や物 の瑠痕 に対する責任等々は, すべて 「 契約違反」概念 に包摂 され ることとなる。
( 2 ) ただ し, C ISG は,「 契約違反」 に対す る効果を規律 す るにあた り, 次 の 4 つの要素か ら成 る独 自の構想 を展開 している。すなわち,①履行請求権 ( 4 6 条) 0 CISG は, これを ヨーロッパ大陸法圏か ら受 け継 いだ。 ただ し,堤 訴 を受 けた裁判所 の自国法が, 同 じ事例 において この種 の履行請求権 を認 め る
こと, とい う留保 が付 されてい る ( 2 8 条) 0②買主 は原則 と して契約 違反 が重 大 な場合 に限 り契約解除の権限を有す るとい う, CISG 独 自に展 開 され た 原理 ( 25 条, 4 9 条 1 項),( 卦ドイツ法 に修 正 を加 えて受 容 され た 「付加 期 間」
( Nac hf r i s t; addi t i onalpe r i od; d6 1 ais uppl z e me nt a i r e ) の制度 ( 4 7 条, 4 9 条 1 項 ( ち) ) , そ して④買主 は,履行請求権 と契約解 除 の いず れ と共 に行 使 す るに せ よ,すべての契約違反 において,売主が 7 9 条 に定 め る免責事由を証 明で きな い限 り,売主 の過失 を要件 とせず損害賠償請求権を有するという, コモン ・ロー をひな型 として構想 された原理である 4 1 ) 0
なお, 4 5 条 1 項 ( a) に基づ く法的救済 と, 1 項 ( ち) に定 める損 害賠償請求 権 は,選択的 ・択一的 にでな く併存的 ・重畳的 に買主が行使す ることを認 め られ た権利である4 2 ) 。 とりわけ,契約解除 と損害賠償請求 とを排他 的な関係 と捉 え ないことは, フランス民法典 1 1 8 4 条及 びアメ ) )カ統一 商事法典 2‑7 2 0 条 と軌 を一 にす る一方, BGB (§325 ) との顕著 な相違 を形成す る4 3 ) 0
( 3 ) こうして構成 された CISG の契約違反 に対す る法的救済 の枠組み は,
4 0 )Hl l be r ,i n: CI SG‑ Ko mme nt ar ,Ar t .4 5 ,Rn . 4: なお,買主が契約違反を犯 した 際;売主のために同じ機能を果たすのが 6 1 条である。
4 1 )Hube r , i n: CI SG‑ Komme nt a r , Ar t . 4 5 ,Rn. 9 ; Wi l l , i n: Bi anc a/Bone l l ,Com‑
me n t a r y,p. 3 3 1
4 2 )Hube r ,i n: CI SG‑ Ko mme nt ar , Ar t . 4 5 ,Rn. 2 ; Wi l l , i n: Bi anc a/Bo ne l l ,Com‑
me n t a r y,pp. 3 3 0‑3 3 1
4 3 )Wi l l ,i n: Bi anc a /Bo ne l l ,Co mme nt a r y,p. 3 3 1
次のよ うに整理 され る4 4 ) 0
債権者 は契約違反 の場合 において,履行請求権,「 及 び」, さ しあた り生 じて いる遅延損害その他 の損害 の賠償請求権 を有す る
。ただ し損害賠償請求権 は, 債務者が契約遵反 の責 を負 わない ときは認 め られず,帰責事由なき不履行 にお いて は,履行請求権 が最終的な救済手段 となる。債権者 は原則 として付加期間 を設定 した後 に契約違反 を理 由 として損害賠償 を請求で き, しか もそれには次 の二つの段階があ る。すなわち,第‑ に,債権者 は契約解除を宣言 し, それに よって双務的な給付義務 を解消 して,当事者双方が行 った給付 を清算す ること がで きる
。この清算 は, いわば 「 小 さな」損害賠償であ る。第二の段階 として, 債権者 は, これを超 えて生 じた損害 の賠償,すなわち 「 大 きな」損害賠償を求 め ることもで きる。 ここで債務者が,契約違反 は自己の責 によ らない ことを証 明で きるとき,損害賠償請求権 は消滅す る。 ただ し,契約解除権 は,債務者 の 帰責事 由の有無 に影響 されない。
( 4) このように, CISG は, コモ ン ・ローに由来す る統一的な 「 契約違反」
の要件 を採用 しつつ, その法的効果 においてはコモ ン ・ローと大陸法〜 とりわ け BGB 〜 とを折衷 し,又 は両者 を混清す るかの観を呈 している
。そ こで,吹 節で は, こうして規定 された各制度 の中身 に立 ち入 り, とりわ け履行請求,契 約解除,損害賠償及 び畷症担保責任 の位置付 けを中心 と して, それぞれの内容 をやや詳 しく考察す る
。3 個 々の制度 の検討 (1 )履行請求
( 1 ) 英米法 と大陸法が履行請求 に対 して示す立場 の相違 は, C∫SG に一定 の困難を もた らした。 す なわ ち, 大 陸法諸 国 において, 履行請求 は " pac t a s unts e r vanda" か ら当然 に導 かれ る第一次的救済であ り, 二次 的救済 で あ る
4 4) Hube r , I ) i e Re c ht s be he l f e de r Par t e i e n,i ns be s onde r e de r Er f t i l l ungs ‑
ans pr uc h,di eVe r t r ags auf he bungundi hr eFol ge nmac hUN‑ Kauf r e c hti m
Ve r gl e i c hz uERG undBGB,i n: Fac ht agung,S. 1 9 9( 21 9 f . )
「ウィ‑ ン売買条約 」 ( CI SG) における契約違反の構造 1 3 1 損害賠償 との間に段階的な関係を形成す るのに対 し4 5 ) ,英米法 にお け る給 付約 束 とは,給付がなされなか った場合 にも債権者 に損害を被 らせない趣 旨の損害 担保約束であ ると解 され るため;損害賠償が契約違反 に対す る第一次的救済で あ り,特定履行 ( s pe c i f i cpe rf or manc e ) は債権者が特別 な利益 を持 っ際 に例 外 として認 め られ るにす ぎない 4 6 ) 0
CISG は,結局,条約 それ 自体 として強制履行 の取扱 を決定す ることを断 念 し, その提訴 を受 けた裁判所 の判断 に委 ね るとい う妥協 に甘ん じた ( 28 条)
47)