支 払 能 力 分 析 の理 論 と実 証 的 分 析
田 中 良 三
目
1.序 論
皿.支 払 能 力 分 析 の2つ の 方 法 1.
2.収 支 計算 皿.リ ッ カー の 支 払能 力 分析
1.リ ッカ ーの 粉 飾 決 算 の 実 態 2.財 務 比 率 に よ る支 払 能 力 分 析 3.収 支 計 算 書 に よ る 支払 能 力 分 析 IV.リ ッ カー の 粉 飾決 算 分 析
V.結 語
次
変動 係数 による支払能力分析指標 の選択
L序 論
支払 能力 の定 義 につ い て は,種 々 の ものが あ るが,こ こで は 「支 払能 力 とは, 会 社 が 資金 を必 要 と した と き に,そ の 資 金 を調 達 す る こ との で き る能 力 で あ
る」nと 定 義 す る。
さて 支 払能 力 は,長 期 的 な 観 点 と短期 的 な観 点 に分 けて 検 討 す る必 要 が あ る。
長期 的 な 支払 能 力 は収 益 力 に依 存 して い る。 つ ま り社 債 や 長 期借 入金 の よ う な 固 定 負 債 は,増 資 を しな け れ ば会 社 が 獲 得 した利 益 か ら返 済 しな け れ ば な らな いの で,原 則 と して利 益獲 得 能 力が 小 さ けれ ば小 さ くな る。 しか し,利 益 の あ が って い な い会 社 で も,資 金 調 達額 が 必 要 な現 金 支 出額 を引 き継 ぎ 超 過 して い
1)L.C.Heath,FinancialReportingontheEvaluationofSolvency
(AICPA.1978)鎌 田 信 夫 ・ 藤 田 幸 男 共 訳 「財 務 報 告 と 支 払 能 力 の 評 価 」(国 元 書 房,1982年),p.2。
〔27〕
れ ば,そ の 期 間 内 で 支払 能 力 を維 持 す る こ とが で き る。 短 期 的 な 支 払能 力 は, 一 般 的 に は 財 務 流 動性 と密 接 な関 係 に あ る 。 と こ ろで 財 務 流 動 性概 念 は,貸 借 対 照 表概 念 で あ って,こ こで検 討 す る支 払 能 力 概 念 か らみ る と狭 す ぎ る き ら い が あ る6こ こで の 支払 能 力 と は,「 資 金 調 達 能 力 」 の こ とで あ り,「 必 要 な 資 金」 が 買 掛金 ま た は 支払 手 形 の 決 済 の よ うな短 期 的 な もの で あ れ ば 短 期 的 な 資 金 調 達能 力 を意 味 し,ま た設 備 投 資 や研 究 開 発 費 の よ うな もの で あ れ ば 長 期 的 な 資金 調 達 能 力 を 意 味 す るか らで あ る 。
従 来 の 考 え 方 に よ れ ば,資 金 調 達 能 力 は現 金 支 払 能 力 と一 致 しな けれ ば な ら な い とい う仮 定が あ っ た ので,資 金調 達 能 力=現 金 支払 能 ヵ とい う こ とに な る 。
この 場 合 の 資 金 調 達 能 力 とは,担 保 能 力 お よ び利 益 が ゼ ロに な る ま での 借 入 金 限度 額 で あ る。 しか し,こ こで の資 金 調 達 能 力 とは,か か る 現 在 の 支 払 能 力 だ けで な.く,将 来の支払能 力,つ ま り将来 の収益力 および企業集団や系列化 に よ る資 金 調 達 能 力 を も含 ん だ概 念 で あ る こ とを,こ こで 改 めて 付 記 して お き た いの で あ る。 この よ うに,こ こで の 支払 能 力 概 念 は,従 来 の 支 払 能 力 概 念 よ り も広 いの で あ るが,本 稿 で は か か る支払 能 力 概 念 を念 頭 に お き つつ,つ ぎの3.
点 につ いて 検 討 す る もの で あ る。 つ ま り,ま ず第1は,支 払 能 力 分 析 に お いて 一 般 に 用 い られ て い る財務 比率 の有 用性 と限界 を変 動 係 数 を用 いて 明 らか にす る ことで あ る。 第2は,財 務 比 率 分 析 で は 支払 能 力の 低 下 を間 接 的 に しか と ら え るこ とが で きな いので,そ れ を よ り直 接 的 に,金 額 的 に 明確 にす る ため に は, 収 支 計 算 書(現 金 預 金 型 財 政状 態 変 動 表)を 用 い る こ とが 必 要 で あ ろ う。 そ し て 第3は,変 動 係 数 によ り選択 され た 支 払能 力 分析 指 標 お よ び収 支 計 算 書 を用
い て,昭 和59年7月 に会 社 更 生 法 の 適 用 申 請 を した リッカ ー の 支払 能 力 分 析 を してみ る こ とに しよ う。
皿 支 払 能 力 分 析 の2つ の 方法
1.変 動 係 数 に よ る 支 払 分 析 指 標 の 選 択
蒙 動 係 数 に 串 る 分 析 は,先 に 発 表 し た 拙 稿2}の と お り で あ る が,デ ー タ の 一
2)拙 稿,「 財 務 比 率 にお け る支 払 能 力 分 析 指 標 の 選 択 と そ の 解 釈 」(商 学 討 究,1985
支払能力分析の理論 と実証的分析 ガ
(1)業況
喰 い 」一 「悪 い」山
(%)60 40 20 0
△20
△40
△60
谷
へ 山
、 へ
谷
「 不 星 」一 「 過 大
」(2 (%)4Q
20' 0 20 40 60 (%)12
10 8 6 4 0 (干 億 円)
ノ
)過剰感
冒 、
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竃一隔馬,' '' ' '' ''
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③ 利益率 と借入金 利子率
寒工型(造 勢 汐
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Q
使用総 資本 利払 前利益率(実 績べ 一ス)
86420864Q1111
(4}設備 投 資 と内部 資金
も る
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'来期 の予 測
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借入金利子率
ノ;ニ ン1
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使 用総 資本利払 前利益 率(償 却費時価 ベー ス)
、
、、、
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内部資金
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設備投資
14710147101471014710147101471014710147101471014710147 口lllll日lllllll日lllll口llll口1臼1日llllll(月) 369】2369ユ2369】2369】2369123691236912369ユ2369ユ236912369
い45‑r}46一 ノ ー47‑一48一 ノ ー49一 ノ'一50‑一51‑‑52‑一53一 ノ ー54‑}55一 ノ㈹
(注 〉(1)大 蔵 省 「法 人企 業 統計 季 報 」,日 本 銀 行 「主 要 企 業 短 期 経 済観 別 」 に よ り作 成 。
② 使 用 総 資 本 利 払 前 利益 率(償 却 費 時 価 べ 一 ス)は,製 造 業 の平 均 償 却 年数 を14年 と し て,過 去 の 新 設 投 資 額 を 民 間 設 備 投 資 デ フ レー ター に ょ り時価 所 得べ 一 ス に 置 き換 え, 定 額 法 に よ り減 価 償 却 費 を求 め て 算 出 。
㈲ 使 用 総 資 本 利 払 前 利益 率 は 季 節 調 整 値,借 入金 利子 率 は3期 移 動 平 均 値 。
(4)設 備 投 資 は実 質べ 一 ス の 季 節 調 整 値 。 デ フ レー タ ー は 経 済 企 画 庁 内 国 調 査 第 一 課 推 計 。 内部 資 金 は 民 間 設 備 投 資 デ フ レー ター を 用 い て 設備 投 資 の 再調 達 ベ ー ス と した 。 季 節 調 整値 。
図1設 備 投 資 環 境(製 造 業)
部 が 不 十 分で あ っ たの で,こ こで 改 め て 取 上 げ る こ とに した いの で あ る 。 図1依 設 備 投 資 の 環 境(製 造 業)を 示 した もの で あ る3)。 昭和48年10月20 日の 中東 戦 争 に よ る第1次 石 油 シ ョッ クの ため に,日 本経 済 は 従来 の高 度 成 長 か ら安定 成 長 に方 向転 換 を しな けれ ば な らな くな った 。 か か る経 営環 境 の変 化 に と もな い,会 社 の 設 備 投 資 行 動 お よ び収 益 構 造 の 変 化 を 示 した ものが 図1で あ る。 この図 に よ れ ば,50年 を境 と して 設 備 投 資 も収 益性 も異 な った パ ター ン を 示 して い る。業 種 に お け るバ ラツ キが あ る もの の,50年 以 後 生 産 設 備 は過 剰 ぎ み で あ る た め,設 備 投 資 は不 活 発 で内 部 留 保 が 多 くな って い る。一 また 設備 投 資 が 行 な わ れ た場 合 で も,そ の 資金 の多 くを 内部 資 金 で まか な い従 来 の よ うに 借 入 金 に 依存 す る割 合 が小 さ くな っ て きた の で あ る。
以 上 の よ うに,経 営 環 境 は50年 を境 と して それ 以 前 と以 後 で は大 き く異 な っ て い るの で 財 務 諸 表 を 分析 す る場 合 で も この点 を十 分 に考 慮 す る必 要 が あ る。
しか し,こ こで 注 意 す べ き こ とは,経 営 環 境 の変 化 が 財 務 諸 表 にす ぐ表 わ れ る と は限 らな い。、 た とえ ば,会 計 期 間 が 昭和50年4月1日 か ら昭 和51年3月31日 まで の 場 合 に は,50年 度 の 経 営 環 境 変 化 は51年 決算1こ表 示 され る こと に な るの で,財 務 諸 表 分 析 で は51年 を 区 分基 準 に した い の で あ る。
さて変 動係 数 に よる支 払 能 力 分 析 指 標 の 選 択 にっ いて考 え て み よ う。一 般 に, 会 社 の 支払 能 力 お よ び収 益 性 は,経 営 環 境 の 変化 に大 き く影 響 され る もので あ る。 例 え ば,好 況 期 で 売 上 高 が 増 加 して い る と きに は,設 備 投 資が 盛 んで 収 益 力 も高 く支 払 能 力 も大 き い。 と こ ろが不 況期 で 売 上高 が あ ま り増 加 しな い とき に は,収 益 性 も悪 く支 払 能 力 も低 下 して い る。 この よ うに,支 払 能 力 は経 営 環 境 に よ っ て大 き く変 化 す るの で,支 払 能 力 分 析 指 標 もそ れ に と もな っ て変 化 す る と考 え る こ とが で きるで あ ろ う。 したが って,財 務 比 率 を 用 いて 支払 能 力 を 分析 す る場 合,経 営 環 境 の 変 化 に と もな って 変 化 す る もの は 支払 能 力分 析 指 標 と して有 用 な比 率 で あ り,ま た経 営 環 境 が 変 化 して もそ れ ほ ど 変化 しな い比 率 は あ ま り有 用 な 分析 指 標 とは な らな い もの とす る仮 定 は,一 般 に 認 め られ る妥
年3月)
3)経 済 企 画 庁 編 「経 済 白 書(昭 和55年 度 版)」p.25.
支払 能力分析の理論 と実証的分析
31当 な もの とい う こ とが で き るで あ ろ う。 そ こで,経 営 環 境 の変 化 に と もな う支 払 能 力 の 変 化 を と らえ る ため の一 つ の 尺度 と して,変 動 係 数(標 準 偏 差 を平 均 値 で 除 した もの)を 用 い る こ とに した い の で あ る。
表1は,大 企 業 の 財 務 比 率 の 変 動 係 数 お よ びそ の順 位(製 造 業)を 示 した も ので あ る。 この表 は44‑59年 の16年 間 を51年 で2つ に 区 分 して い る。 この表 の 変 動 係 数 の順 位 で上 位3つ を み る と,44‑50年 の 高 度 成 長 期 で は1位 は 当座 比 率,層2位 は売 上 債 権 回 転 期 間 そ して3位 は負債 比率 で あ り,ま た51‑59年 の安 定 成 長 期 で は1位 は負 債 比 率,2年 は固 定 比 率 そ して3位 は売 上 債 権 回 転 期 間 で あ る。 この 両 期 間 と も含 ま れ て い る もの は,負 債 比 率 と売 上 債 権 回 転 期 間 で あ り,他 の もの を44‑59年 で み る と,当 座 比率 は3位,固 定 比率 は2位 とな って い る。 そ こで,こ れ らの こ とを 総 合 す る と,負 債 比 率,売 上 債 権 回転 期 間,当 座 比 率 お よ び 固 定 比 率 は,支 払 能 力 分析 指標 と して適 切 な もの とい う ことが で
き る。
他 方,表1で 下 位3つ の 順 位 をみ る と,44‑50年 で は5位 は流 動 比 率,6位 は 固 定 比率 そ して7位 は買 入 債 務 回 転 期 間 で あ り,ま た51‑59年 で は5位 は当 座 比 率,6位 は固 定 長 期 適 合率 そ して7位 は流 動 比 率 で あ る。 この 両 期 間 と も 含 ま れ て い る もの は,流 動 比 率 だ けで,他 の も の を44‑59年 で み る と,当 座 比 率 は3位,固 定 比 率 は2位,買 入債 務 回転 期 間 は4位 そ して固 定 長 期 適 合 率 は 7位 で あ る。 そ こで,こ れ らの こ とを総 合 す る と,流 動 比 率 と固 定 長 期 適 合 率
表1大 企業 の財務比率 の変動係数 およびその順位(製 造業) 44‑50年
変 動 係 数 順位 51‑59年
変 動 係 数 順位 44‑59年 変 動 係 数 1順位
流 動 比 率 5.8% 5' 2.6% 7 5.8% 6
当 座 比 率
9.91 3.6 5 9.0 3
固 定 比 率
5.56 17.3 2
13.12
固 定 長 期 適 合 率 5.9
4 3.56
5.2 7負 債 比 率
7.73 18.2 1
14.31
売 上 債 権 回 転 期 間 8.5 2 6.7 3 6.3 4
買 入 債 務 回 転 期 間
4.17
5.04
6.34
〔 注 〕資 料 「わが 国企 業 の経 営 分 析 」
は,支 払 能 力 分 析 指 標 と して 適 切 な もの で あ る と い う こ とが で き な い で あ ろ う。
つ ぎ に 中小 企 業 の 場 合 も大 企 業 の とき と同 じよ う に分 析 して み る と,買 入債 務 回 転 期 間,売 上 債 権 回 転 期 間 お よ び固 定 比 率 は,支 払 能 力 分 析 指 標 と して 適 切 な もの とみ る こ とが で き るが,し か し,流 動 比 率 と固 定 長 期 適 合 率 は適 切 な
もの と い う こ とが で きな いで あ ろ う。
以上 の よ うに,変 動 係 数 の順 位 で支 払 能 力 分析 指標 と して 適 切 な比 率 を選 択 す れ ば,大 企業 で は 負債 比率,売 上 債 権 回転 期 間,当 座 比 率 お よ び固 定 比 率 で あ るの に対 して,中 小 企 業 で ぽ 買 入債 務 回 転 期 間,売 上 債 権 回 転 期 間 お よ び固 定 比率 で あ る。 こ こで 両者 に共 通 の もの は,売 上 債 権 回 転 期 間 と固 定 比 率,異 な っ て い る もの は大 企業 で は 当座 比率,中 小 企業 で は買 入 債 務 回 転 期 間 とな っ て い るが,こ れ は 両 者 の特 徴 が で て いて興 味深 い と ころ で あ る。 つ ま り,不 況 期 に な って 売 上債 権 の 回 収が 円滑 に いか な くな った場 合,中 小 企 業 で は外 部 資 金 の調 達が そ れ ほ ど容 易 で な い か ら,買 入債 務 の支 払 い を延 長 しよ うとす る 。 それ に 対 して,大 企 業 で は ま ず最 初 に 手持 の 現 金預 金 を 買 入 債務 の支 払 い に あ て るが,そ れ で も不 足 の と きに は外 部 資 金 を 調 達 し,買 入債 務 回 転期 間 を で き るだ け延 長 しな い よ うな 財務 政 策 を と って い る もの と推 定 され る。
2.収 支 計 算 書
先 に述 べ た よ うな 財 務 比 率 で 支 払 能 力 を 分析 した と ころ,会 社 の 支払 能 力 が
低 下 して い る ことが 明 らか とな っ た。 しか し,財 務 比 率 分 析 で は,会 社 の経 営
活 動 か らど れ だ け の資 金 を生 み 出 し,ま た必 要 資 金 が 不 足 した と き には どの よ
うに調 達 して い るか を明 らか に す る こ とが で きな い。 そ こで,会 社 の 資金 状 況
を明 確 にす る もの と して 登 場 したの が,資 金 計 算 書 で あ る。 と ころが 「資金 」
とは何 か にっ いて の種 々の 見 解 が あ る。 例 え ば,現 金 預 金 を資 金 とす る収 支 計
算 書,運 転 資 金 を資 金 とす る運 転 資 金 運 用 表(資 金 運 用 表)そ して 資 金 を も っ
と広 く と らえ る財 政 状 態 変 動 表 が あ る。 これ らの 資 金 計 算 書 の な か で,会 社 の
支 払 能 力 分 析 に お いて は,経 営 活 動 を継 続 的 に遂 行 して い くた め に必 要 な 現金
預 金 の収支 状況 を 明 らか に す る収 支 計 算 書が 最 も適 切 で あ る と考 え られ るの で,
支払能力分析 の理論 と実証的分析 33 ここで は収 支 計 算 書 を 取上 げ る こ とに した い ので あ る 。
現 金 預 金 とは,現 金 の ほか に支 払 手 段 と して位 置 づ け られ て い る預 金 や 余 裕 資 金 の 運 用 形 態 と して の有 価 証 券 を含 む もめ で あ る。 したが って,預 金 で あ っ て も拘 束 性 預 金 お よび 市場 性 の な い有価 証券 は,現 金 預 金 とは み な さな いの で あ る。 ま た現 金 預 金 の 収 支 状 況 を会 計 期 間 を 単位 と して 報 告 す る もの を収 支 計 算,会 計 期 間 よ り短 い単位 で 報 告 す る もの を 資金 繰 表 と呼 ぶ こ とに した い。 な お佐 藤 教 授 は,資 金 繰 表 の 目的 をつ ぎの5つ に要 約 して い るが,こ れ は注 目す' べ き見 解 で あ ろ う4)。
(1}現 金 預 金 の 収 支 の タ イ ミン グ(流 動性)を 合 せ るた め 。
② 収 入 と支 出が 各 種 資 金 区 分 ご と に,あ る い は全 体 と して 均 衡 が と られ て い るか 否 か を判 断 す る ため 。
③ 最 適 現 金 預 金 有 高 を見 い だ し,現 金 の 在庫 管 理 に役 立 て るた め 。 (4)短 期 的 ・中期 的 な支 払 能 力(安 全 性)を 判 別 す るた め 。
㈲ 短 期 的 ・中期 的 な財 務 構 造 判 定(借 入 余 力,貸 出 能 力,返 済能 力が あ る か ど うか,遊 体 資金 や 投 資 資金 が あ るか ど う かな ど),部 門 別 ・プ ロ ジ ェ ク ト別 キ ャ ッ シュ ・フ ロ ー の見 積 り な ど に役 立 た せ る。
っ ぎに,収 支 計算 書 の作 成 方 法 で あ るが,こ れ に は直 接 法 と間 接 法 の2っ が あ る。 直接 法 で は,現 金 預 金 出納 帳 を も とに現 金 預金 の 相 手 勘 定 科 目別 に集 計 す るの で,収 支 計算 書 に は売 上 収 入,借 入 金 収 入,仕 入 支 出,賃 金 給 料 支 出,
経 費 支 出,配 当金 ・税 金 支 出 や 借 入金 支 出 な ど を表 示 す る ことが で き る。 それ に対 して,間 接 法 で は,2期 間 の貸 借 対 照 表,損 益 計 算 書,利 益 金 処 分 計 算 書 お よ び附 属 明 細 表 を も とに す るが,現 金 預 金 に影 響 を与 え な い損 益 項 目で これ を修 正 して,収 支 計算 書 を作 成 す る。 そ して 間接 法 で の収 支 計 算 書 の作 成 手 続 を式 で 示 す とつ ぎの よ うに な る。
現 金 預 金 収 入 額 一現 金 預 金 支 出額=現 金 預 金 増 減額5期 末 現金 預 金 有 高 一期
首現金預金有高 (1)
貸 借 対 照 表 等 式 か ら② 式 が 成 り立 っ 。
4)佐 藤 宗弥著 「資 金 フ ロ ー と金 計 フ ロー 」(日 本 経 済評 論 社,昭 和55年11月),p.185。
現 金 預 金 増 減 額+非 現 金 預 金 資 産 増 減 額=負 債増 減額+資 本増 減額 … … …② (1)と② か ら⑧ 式 が 成 り立 つ 。
硯 金 預 金 収 入額 一現金 預 金 支 出額=一 非 現 金 預 金 資産 増 減 額+負 債 増 減 額+
現 金 預金 収 入 額 資本増 減額
=(非 現金預金資産減少額+負 債増加額+資 本増加額) 現金預金支出額
コド
(非 現
(3) 金 資 産 増 加 額+負 債 減 少 額+資 本 減 少 額)
上 記 の 式 の デ ー タに っ い て は,② 式 で は,2期 間 の 貸 借 対 照 表 か ら増 減 表 を 作 成 し,こ れ を現 金預 金 に 影響 しな い項 目で修 正 して精 算 表 を作 成 す る。 ま た (3)式の 資 金 増 減額 を 理解 しやす くす るた め に,損 益 計 算 書 と利 益 金 処 分 計 算 書 で 売 上 高,売 上 原価,販 売 費 及 び一 般 管 理 費 や利 益 剰 余 金 な どで 資 本 増 減 額 を 置 き換 え る こ と もで き る。 そ して こ う して で きた 式が(4)であ る。
現 金 預 金 収 入 額 一現 金 預 金 支 出 額=(売 上 高+営 業 外収 入+非 現 金 預 金 資 産 減 少 額+負 債 増 加 額+利 益 剰 余 金)一(売 上原 価+販 売 費 及 び一 般 管 理費+
営 業 外 支 出+非 現 金 預 金 資産 増 加 額+負 債 減 少 額)(4)
⑧ お よ び(4)式は,収 支 計 算 書 等 式 とい う こ とが で き るが5},そ こに お け る両 者 の 差 異 は,前 者 が 当期 純 利 益 を 出発 点 とす るの に対 して,後 者 は 売上 高 を 出 発点 と して い ると ころ で あ る。 そ こ で,収 支 計 算 書 の 作 成 例 を 直 接 法,間 接 法 で は 当期 純 利 益 を 出発 点 とす る もの と,売 上 高 を出 発 点 とす る もの を示 す と表 2の よ うに な る6)。
収 支 計 算 書 の作 成 方 法 と して の直 接 法 と間 接 法 につ いて もう少 し説 明 して み よ うg直 接法 は,現 金 預 金 出納 帳 に も とつ い て作 成 す るの で,現 金 の 源 泉 と使 途 を項 目別 の総 額 で表 示 す る こ とが で き る こ とか ら,会 社 の 現 在 の 収 支 状 況 を 明 らか にす るだ けで な く将来 の収 支 につ い て も予 測 す る ことが で き る。 したが っ て,直 接 法 に よ る収 支 計算 書 は,支 払 能 力 を評 価 す る た め の き わ めて 重 要 な報
5)「 前 掲 書 」,p.188参 照 。
6)久 保 幸 年 稿 「流 動 性 開 示 に っ い て の 米 国 の 動 向 と わ が 国 の 実 態(4)」(経 理 情 報, 1984.11.10),p.33。 一 部 修 正 。
支払能力分析 の理論 と実証 的分析
表2収 支 計 算 書
価入費 欝 益
繰目噸u原 註 脚 利 棚 上 酬轟 払 期
売 貸 減 ㊥支 当
間接法に よる収支計算書D
買 掛 金
短 期 借 入 金
資 本 金
当期未処分利益 金
100 200 400 100
収 入の部:
当 期 純 利 益 貸倒 引当金繰入 減 価 償 却 費 支 払 手 形 増 加 買 掛 金 増 加
[050004﹄τ﹃0﹁◎
(注)貸 倒引 当金,減 価償却 費の 計上 は当 期か ら行 う。 税金 等は ない もの と する。
金 品 金 金 物 引 当 却 掛 引 償 倒 価 金 現 商 売 貸 建 減 当 形 金 金 金 益
手 入 頒 , 掛 借 本 処 払 期 厭
支 買 短 資 当 金
蜘㎜ 鵬 謝 彌
50
1器1 劉 9451
支出の部=
売 掛 金 増 加100 建 物 増 加200 当 期 超 過 支 出 期 首 現 金 残高 期 末 現 金 残 高
190
300
001014
290
間接 法 に よ る収 支 計 算 書2}
直接法によ る収支計算書
収 入 の 部:
売 上 収 入
売 上 高1,200 売 上 債 権 増 加 △1001,100 借 入 金 収 入1001,200
収 支 の 部:
売 上 収 入1,100 借 入 金 収 入1001,200
出 ー 毅 息 済 得
= 支 簾 轟 取 螂 入 灘 払 入 物
出 仕 ( 販 支 借 建 支
700
300 10 100 200
1,310 当 期 超 過 支 出
期 首 現 金 残 高 期 末 現 金 残 高
001(U14
290
支 出 の 部:
仕 入 支 出
売 上 原 価800 仕 入 債 務 増 加 △100 販売費及び一般管理費支出345
支出を伴わない費用 △45
支 払 利 息
借 入 金 返 済
建 物 取 得
当 期 超 過 支 出 期 首 現 金 残 高 期 末 現 金 残 高
700
300 10 100 2001,310
110 400 290
※ 売 上 債権,仕 入債 務,支 出 を 伴 わ な い
費 用 の 明細 表 は省 略 す る 。
、
告 書 とな るの で あ る。 しか し,会 社 外部 の者 は,内 部 情 報 と して の現 金 出納 帳 を入 手 す る こ とが 不 可 能 で あ るの で,ど う して も公表 会 計 情 報 に依 存 しな け れ ば な らな いの で あ る。 公 表 会 計情 報 と して,上 場 会 社 の場 合 に は有 価 証 券 報 告, 書 が あ り,そ の 中 に監 査 済 の貸 借対 照 表,損 益 計算 書,利 益金 処 分計 算 書 お よ
び附 属 明 細 表 が あ る。 間 接 法 で は,こ れ らの 会 計情 報 を用 いて 間接 的 に収 支 計 算 書 を作 成 す るの で あ る。 間 接 法 で も当 期 純 利 益 を出 発 点 とす る もの と,売 上 高 を 出発 点 とす る もの の2つ が あ る。 前 者 は,利 益 と収 支 残 高 との 間 の 相違 に 焦 点 を あ て る もの で あ るか ら,利 益 の 質 を評 価 して将 来 収 支 の 予測 に お け る中
の
間 ス テ ップ と して 利 益 を評 価 す る者 に とって は重 要 で あ る。 それ に対 して,後 者 は,会 社 の経 営 活 動 にそ く した収 支 の 区 分 表 示 をす るの で,支 払 能 力 分析 に
と って は 適切 な もの とい え るで あ ろ う。
と ころ で,収 支計 算 書 は,会 社 の 収 支 状 況 を表 示 す る と い っ たが,そ れ で は どの よ うな 収 支 を 表 示 す れ ば よ い の で あ ろ うか。FASBの 「討 議 メ モ」 に よ れ ば,現 金 預 金 の源 泉 と使 塗 を営 業 活動 収 支,投 資 活 動 収 支 お よ び財 務 活 動 収 支 の3つ に区 分 して 表 示 す る様 式 を 議 論 の対 象 と して 取 上 げて お り,ま た実 務 界 で も この 様 式 を 採用 す る会 社 が増 え て い る7㌔ しか し,会 社 の収 支 項 目の す べ て が,こ の3つ に 適 切 に 区 分 で き るか ど うかが 問題 で あ るの で,こ の 点 を少 し検 討 して み た い。 収 支 計 算書 は収 入 。支 出 の項 目,損 益 計 算 書 は収 益 ・費 用 の 項 目を 区 分 表 示 す るの で,両 者 の 区 分 表 示 は必 ず し も一 致 しな い。 しか し, 収 支 計 算 書 は各 種 利 益 の評 価 と い う重要 な 目的 を も って い るの で,損 益 計 算 書9 の 区 分 方 法 を十 分 考 慮 す る必要 が あ ろ う。 収 支 計 算書 の 営 業 収 支 に は ど の よ う な項 目が 含 まれ るの で あ ろ うか。 仕 入 や 販売 な どの通 常 の 営業 活動 は問 題 に な らな いが,毎 期 継 続 的 に発 生 す る営 業 外 収 支,固 定 資 産 や 投 資 有価 証券 の売 却 の よ うな 臨 時 的 に発 生 す る特別 収 入 な ど は ど う した らよ い の だ ろ うか。 これ ら の項 目 の処 理 は,収 支 計 算 書 の 作 成 目的 に よ って も異 な って くるが,こ こで は
7)「 前 掲 論 文 」,p.34。FASBDISCUSSIONMEMORANDUM.
ananalysisofissuesrelatedtoReportingFundsFlows,Liguidity, andFinancialFlexbility(Decomber,15,1980.)
支払能力分析の理論 と実証的分析
37支払 能力 分析 に と って 有 用 か 否 か と い う点 か ら区 分 す る こ とに した い。 そ こで, 通常 の 営 業 活 動 か ら生 じ る もの を営業 収 支,毎 期 継 続 して 発 生 す るが 通 常 の 営 業 活 働 と は い いが た い もの は 営 業 収 支 に含 め な い で営 業 外 収 支 とい う独 立 の 項 目を つ くる。 投 資 活動 とは,一 般 的 に固 定 資産 や有 価 証券 の取 得 と売 却,貸 付 金 の 発生 と回 収 な ど の た め に,そ の活 動 が 多 岐 に わ た って い る。 支 払 能 力 分 析 の 観 点 か らみ れ ば,有 価証 券 の 取得 や貸 付金 の発 生 は,余 裕 資 産 の運 用,固 定 資産 や 有 価 証 券 の売 却,貸 付 金 の 回収 は会 社 の必 要 資 金 の調 達 とみ るの が 適 切 で あ ろ う。 そ こで,固 定 資産 の 取得 を 投 資収 支 に含 め な い で,新 し く固 定 資 産 支 出 とい う項 目を 設 け る こ とが 望 ま しい ので あ る。 ま た財 務 収 支 の なか に は, 貸 付 金 や 借 入 金 を 含 め る こ とが 多 いが,貸 付 金 は余 裕 資 金 の運 用 で あ り,ま た 借 入 金 は 必 要 資金 の調 達 とい う よ うに,そ の性 質 が 全 く異 な って い るので,財
表3収 支 計 算 書 の様 式(単 位:100万 円)
1営 業 収 支
L営 業 収 入 46,472
2.営 業 支 出
51,235△4,763
皿 営 業 外 収 支
L営 業 外 収 入 1,722
2.営 業 外 支 出 3,729 △2,007
経 常 収 支 △6,770
皿 固 定 資 産 支 出
△859固 定 資 産 支 出 後 収 支 △7,629
W配 当 金 ・法 人 税 等 支 出
△757配当金 ・法人税等支出後収支 ,△8,386
V投 資 収 支
1.投 資 収 入
3,1602.投 資 支 出 4,126
△966総 収 支
△9,352VI財 務 収 支
L財 務 収 入 30,237
2.財 務 支 出 19,904 10,333
純 収 支 981
前 期 繰 越 高 8,175
次 期 繰 越 高
9,156務 収 支 を会 社 外 財 務 に 限 定 し,貸 付 金 を 投資 収 支 に含 め るべ きで あ ろ う。 した が って,投 資 収 支 と財 務 収 支 を 比 較 す れ ば,前 者 は会 社 内 の余 裕 資 金 の 運 用 と 必要 資金 の 調 達 で あ るの に対 して,後 者 は会 社 外 か らの必 要 資 金 の調 達 と返 済 と い う こ と にな る。 さ らに,配 当金,役 員 賞 与 や税 金 な ど の支 払 いで あ る。 こ れ らは,上 記 の項 目の な か に含 め る こ とが事 実上 困難 で あ るか ら,配 当金 ・法 人 税 等 支 出 と い う独立 の項 目で 示す のが 望 ま しい。 税 金 の な か に は,固 定 資 産 税,印 紙 税,法 人 税 な どが あ るが,法 人税 以 外 は,そ の税 金 の性 質 に応 じて 適 切 に区 分 した ほ うが よ いで あ ろ う。 受取 配 当金,受 取 利 息 お よ び支 払 利 息 な ど は,損 益 計 算 書 との 関 係 か らみ て も営 業 外収 支 とす るのが 適 切 で あ ろ う。
以 上 の よ うに,私 見 と して 現 在 の と こ ろ収 支 計算 書 は,営 業 収 支,営 業 外 収 支,固 定 資 産 支 出,配 当 金 ・法 人 税 等 支 出,投 資 収 支 お よ び 財 務 収 支 の6区 分 に した ほ うが 支 払 能 力 分 析 に と って 最 も適 切 で あ ろ う と考 え て お り,こ れ を 示 す と表3の よ う に な る。
1皿 リ ッカー の 支 払 能 力分 析
1.リ ッ カ ー の 粉 飾 決 算 の 実 態
リ ッ カ ー は,329億 円 の 巨 額 な 粉 飾 決 算 が 明 ら か と な り,昭 和59年7月 約 1,000億 円 の 負 債 を か か え て 和 議 申 請,1カ 月 後 に 会 社 更 生 法 の 適 用 を 出 し て 事 実 上 の 倒 産 と な っ た 。 こ の 粉 飾 額 は,不 ニ サ ッ シ工 業 の430億 円 に つ ぐ史 上 2番 目 の もの で あ る 。 こ の よ う な 巨 額 な 粉 飾 決 算 を行 な っ た リ ッ カ ー と は,ど う い う 会 社 で,ど う して ま た 如 何 な る 方 法 で 粉 飾 決 算 を 行 な っ て い た の で あ ろ
うか 。 こ の こ と に つ い て,読 売 新 聞 社 の 調 査,関 係 者 の 証 言 お よ び 昭 和60年4 月16日 の 法 律 管 財 人 の 報 告 書8}に よ れ ば,つ ぎ の よ う に 要 約 す る こ と が で き る 。
リ ッ カ ー は,昭 和14年 に 設 立,24年 に わ が 国 最 初 の 直 営 方 式 に よ る ミ シ ン の 月 掛 け 予 約,月 賦 販 売 を 開 始 し,44年 に は 市 場 占 有 率40%を 占 め る 家 庭 用 ミ シ ン の ト ッ プ ・メ ー カ ー と な っ た 。 そ の 後 に お い て,ミ シ ンの 普 及 に よ る 需 要 の
8)読 売 新 聞,昭 和60年4月17日,5月25日,10月31日 付 。
支払能力分析の理 論と実証的分析
39低迷,外 国 メ ー カ ー の進 出 な ど で業 界 全体 の地 盤 が 低 下 して い た なか で,40年 後 半 か ら家 庭 用 ミシ ンの需 要 が 急 激 に低 下 して しま った 。 か か る経 営 環 境 の な
か で,同 業 他 社 はOA機 器 な どの新 分 野 へ 進 出 して い っ たが,リ ッカ ーは まだ ミシ ン を作 って いれ ば安 泰で あ る とい う思 考 か ら脱 しき れず,ミ シ ン中 心 の 経 営 政 策 を と って いた。 しか し,リ ッカ ー も ミシ ンの 売 上 不 振 か ら遅 れ ば せ な が ら多 角 化 戦 略 の 方 針 を打 ち 出 し,ホ テ ル経 営 やOA機 器 の 開 発 な ど を行 っ たの で あ るが,そ れ らは いず れ も失 敗 し,ま た その 失 敗 を打 開 す る適 切 な 対 策 を 講 ず る こ とな くい たず らに 粉飾 を行 な っ て表 面 を糊 塗 して い たの で あ る。
つ ぎ に,リ ッカ ー の 粉飾 決 算 の理 由 につ いて は,っ ぎの3っ が 考 え られ る。
まず 第1は,黒 字 会 社 か ら赤 字 会 社 に転 落 す る こと に よ る会 社 の 信 用 力 低 下 を お それ た こ とで あ る。第2は,ミ シ ン販売 の主 力 で あ る積 み 立 て 方 式 の 前 払 い 割 賦 制 度 は通 産 省 の 認 可が 必 要 で あ り,赤 字 決 算 で は認 可 取 消 しの 心 配 が あ っ た 。 そ して 第3は,54‑55年 に ス イ ス ・フ ラ ン建 て の転 換 社 債(75億 円)を 発 行 したが,転 換 社 債 を 発行 す る条件 と して は,年 間 配 当率 が10%を 超 え る優 良 会 社 に限 られ て い た こ とで あ る。 リッカ ー の粉 飾 決算 は,こ う した経 営 上 の 必 要 か らもエ ス カ レー ト して い った の で あ る。
ま た リッカ ーの粉 飾決算 は,ど の ような方 法 で術 な われ て い た の で あ ろ うか 。
粉 飾 決 算 は,51年 か らは じま りそ れが 明 るみ にで た59年 まで の10年 間 もつ づ い
て い た。 粉 飾 決 算 の 方 法 と して は,ミ シ ンの架 空 売 上 に よ る売 掛 金 の架 空 計 上
で あ り,56年9月8日 に は 「マ ル ゴ作 戦 」 とよ ばれ る文 書 ま で も配 付 され て い
た ので あ る。 架 空 売 上 の 計 上 は,ほ とん ど本 社 で行 な わ れ て いた。 まず 決 算 期
の直 前 に,販 売 台 数 や 販 売 価 格 を大 幅 に水 増 し し,こ れ に見 合 うよ うに在 庫 数
量 や月 賦 金 な ど を ご まか して 電 算 処 理 を して いた。 一 方,支 社,支 店 で も本 社
か ら過 大 な販 売 ノル マ を課 され る ため に,セ ー ル ス マ ンが架 空契 約 書 を作 成 し
上 司が 黙 認 の うえで 本 社 に売 上 高 を報 告 して いた ケ ー ス もか な りあ っ た。 関 係
者 の 証 言 に よ れ ば,架 空 契 約 は,ミ シ ンを 購 入 す る ため に 積 み立 て を して い る
前 払 い 式割 賦 契 約 を利 用 して い た。 つ ま り,途 中 で積 み 立 て を や め た 客の 「休
眠 口座 」 の 名義 を新 た な ロー ン契 約 を作 り上 げ て 売上 高 の 架 空 計上 を はか る方
表4リ ッカ ーの 粉 飾 額(単 位:億 円) 年 仮空利益 仮空売上副 ⑩}÷(⑳ 売 上 高2)
‑占 9 θ
Qり
5
「0
ρ0 }・6
、54
55
2756 48 178(30。3%) 588
57 67
301(56.8%) 530
58 68 405(68.8%)
58959
一63'計329 耳
法 で あ る。 社 内 で は この 方 法 を マ ル ゴ作戦 とよ んで い たが,こ れ は伝 票 区 分 に
⑤ の 記 号 を書 い た こと によ る もの と いわ れ て い る。
管 財 人 の 報 告 書 に も とづ き,粉 飾 額 を 示 した のが 表4で あ る。 この 表 で も明 らか な よ うに,粉 飾 額 は56年 か ら急 激 に増 加 し,仮 空 売 上 高 は178億 円(売 上 高 の30.3%),仮 空 利益 は48億 円 と な り,ま た58年 に は 前 者 は405億 円(68.8
%)で 後 者 は68億 とな って 粉 飾 額 は増 加 して い る。 仮 空 利 益 を み る と,51‑59
、 、 年 の9年 間 で329億 円 と 巨額 に な っ て お り,ま た59年 の 売 掛 金 残 高591億 円 の 82.3%が 仮 空 売 上 に よ る もので あ る 。 さ らに,報 告 書 たよ れ ば,リ ッカ ー は55 年 か ら赤 字 会 社 に転 落 して15億 円の 赤 字 を計 上,そ の 後 も赤 字 は ふ え続 け て59 年 に は71億 円 とな り,こ の5年 間 の 累 計 赤 字 は253億 円 に も な って い た の で あ る。 しか し,有 価 証券 報 告 書 の な か の損 益 計 算 書 で は,59年 に わ ず か8億 円 の 赤字 を計 上 した だ け で,あ とはす べ て黒 字 の 健 全 会 社 にな って いた の で あ る。
以 上 の よ う に,リ ッ カー の粉 飾 決 算 は51年 か らは じま り56年 か ら その 額 が急
激 に 増 加 し,58年 に は売 上 高 の68.8%が 仮 空 売 上 高,ま た59年 には売 掛金 残 高
の82.3%が 仮 空売 掛金 によ る もの で あ った。 と ころが 有 価 証 券 報 告 書 の 損 益 計
算 書 で み る と,59年 だ けが 赤 字 で あ る こ とに な っ て い たが,実 際 に は55年 か ら
赤 字 で あ っ たの で あ る。 しか し,会 社 外 部 の 者 に とって は,リ ッカ ーの 経 営 状
態 を 知 る唯一 の もの は会 社 が 毎 期 公 表 す る財 務 諸 表 で あ るか ら,か か る粉 飾 実
支払能力分析の理論 と実証的分析 π
髭/
ρ!
/
/
夢!/
/
/
,/
./
/べ 製造業
\ こ ン ン 業
\ リ ッ カ̲
44454647484950515253545556575859 (注)資 料 「わが国企 業の経営分析」(年)
図2売 上 高 の 推 稜(必 年=100)
態 を 念 頭 に お き つ つ,リ ッ カ ー の 支 払 能 力 分 析 を 行 な っ て い くが,こ の 分 析 で 用 い る 財 務 諸 表 は す べ て 粉 飾 が な か っ た もの と仮 定 して い る こ と を 付 記 し て お き た い の で あ る 。
2.財 務 比 率 に よ る 支 払 能 力 分 析
リ ッ カ ー の 支 払 能 力 を 分 析 す る た め に は,ま ず 売 上 高 が ど の よ う に 推 移 して い る か を み る 必 要 が あ る 。 図2は,44年 の 売 上 高=100と し た と き の 製 造 業,
ミ シ ン業 お よ び リ ッ カ ー の 売 上 高 推 移 を 示 した も の で あ る。 こ の 図 か ら も明 ら か な よ う に,製 造 業 で は44‑54年 は 増 加,55‑59年 は 急 激 な 増 加 を して お り, ま た ミ シ ン業 で は44‑59年 ま で 一 貫 して ゆ る や か な 増 加 を し て い る。 そ れ に 対
し て,リ ッ カ ー は,44‑47年 は 横 ば い,48‑54年 は ゆ る や か な 増 加 そ して55‑
59年 は横 ば い か ら 少 し減 少 ぎ み の 傾 向 を 示 して い る 。 ま た リ ッ カ ー が 粉 飾 決 算 を は じめ た51年,粉 飾 が 巨 額 に な っ た56年 そ して 倒 産 し た59年 を 比 較 し て み る と,51年 で は,製 造 業 は247.3,ミ シ ン 業 は192.0そ し て リ ッ カ ー は185.8で あ り,56年 で は 製 造 業 は418.5,ミ 詞 シ ン は275.0そ して リ ッ カ ー は233.5で あ
り,ま た59年 で は 製 造 業 は540.0ミ シ ン業 は354.1そ して リ ッ カ ー は228.0で
あ る 。 この よ う に,売 上 高 の 推 移 を 数 値 で み て も44‑59年 の16年 間 で 製 造 業 は
5.4倍,ミ シ ン業 は3.5倍 で あ るの に リッ カー はわ ず か2.3倍 に しか 増 加 しな か った の で あ る。 ヒ の点 は,リ ッ カ ーの 経 営 政 策 に大 きな 問題 が あ り,ま た支 払 能 力 分 析 に お いて も注 意 す べ き と こ ろで あ ろ う。
さて,',リ ッカ ー の財 務 比 率 に よ る支 払 能 力 分析 に つ いて 考 え て み よ う。 先 に 述べ た よ うに,変 動 係 数 を用 いて 支 払 能 力 分 析 指 標 を 選択 した と ころ,大 企 業 の 場 合 に は 負債 比 率,売 上 債 権 回 転 期 間,当 座 比 率 お よび 固 定 比率 に な った の で あ る。 そ こで リッ カ ー につ いて も財 務 比 率 の 変 動係 数 お よ び そ の順 位 を示 し、
て み る と表5の よ .うに な る。 この 表 で 上 位4つ をみ る と,44‑50年 で は,1位 は 負債 比 率,2位 は固 定 比 率,3位 は固 定 長 期 適 合率 そ して4位 は売 上 債 権 回 転期 間で あ る。 ま た51‑59年 で は1位 は固 定 長 期 適 合 率,2位 は売 上 債 権 回 転 期 間,3位 は固 定 比 率 そ して4位 は 買 入 債務 回転 期間 で あ る。 この両 期 間 に含 まれ てい る もの は,固 定 比率,固 定 長期 適 合 率 お よ び売 上 債 権 回 転 期 間 で あ る。
支払 能 力 分析 に お いて 重 要 な指 標 で あ る負 債 比 率 は,44‑50年 で は1位 で あ っ たが51‑59年 で は6位 にな って い る し,ま た 当 座 比率 は,44‑5Q年 で は6位, 51‑59年 で は5位 と な って い る。 この よ うな こ とか ら,リ ッカ ー の支 払 能 力 は・
健 全 な状 態 に あ る と い う結 論 に な るか も しれ な い が,果 して そ れで よ いの で あ ろ うか。 この点 を検 討 す る に は,売 上 債 権 回 転期 間,当 座 比 率 お よ び負 債 比 率 の 内容 を詳 し くみ る必 要 が あ ろ う。
図3は,売 上 債 権 回 転 期 間 と買 入 債 務 回転 期 間 の推 移 を示 した もので あ る。
表5リ ッカ ーの 財 務 比 率 の 変 動 係 数 お よび そ の 順 位 44‑50年
変 動 係 数 順位 51‑59年
変 動 係 数 順位 44‑59年
変 動 係 数 順位
流 動 比 率
4.60 7 7.466
7.47 7当 産 比 率
4.756
11.64 511.56 6
固 定 比 率
11.572
13.853
13.225
固 定 長 期 適 合 率
11.563
21.71 1 20.89 1負 債 比 率 14.73 1 7.46 6 15.07
4売上債権回 転期間 1G.96 4 17.93 2
16.393
買入債務回転期 間 5.22
513.61 4
17.50 2資料 「 わが国企業の経営分析」
) 月 15 (
13
11
9
7
5
3
支払能力分析の理論 と実証的分析
\売上債権 回転 期間 43
1 44454647484950515253545556575859 (注)資 料 「わが国企業の経営分析」(年)
図3売 上 債 権 四 転 期 間 と買 入 債 務 回 転 期 間
こ の 図 で 両 回 転 期 間 を 比 較 して み る と,売 上 債 権 回 転 期 間 は44年 の8.6月 か ら 50年 の6.4月 ま で 減 少 して い た が,そ の 後,51年 の7.2月 か ら56年 の8。2月 ま で 増 加 し,57年 の9.1月,58年 の11.3月 そ し て59年 の11.6月 と急 激 に 増 加 し て い る。 つ ま り,最 低 水 準 で あ っ た50年 の6.4月 か ら最 高 水 準 に な っ た59年 の 11.6月 ま で の10年 間 に な ん と5.2月 も 売 上 債 権 回 転 期 間 が 延 び て い る の で あ る。 ま た59年 の 売 上 債 権 回 転 期 間11.6月 と い う の は,1年 間 の 売 上 高 の ほ と ん ど が 売 上 債 権 と な っ て し ま い 現 金 が ほ と ん ど 入 っ て こ な い と い う 異 常 な 状 態 を 示 し て い る。 こ の 異 常 状 態 の た め に,支 払 能 力 が 低 下 して 買 入 債 務 の 支 払 い が 延 長 さ れ る の が 普 通 で あ る。 と こ ろ が リ ッ カ ー の 場 合,買 入 債 務 回 転 期 間 は44年 の2.3月 か ら59年 の1.9月 ま で 一 貫 して 低 下 傾 向 に あ り,仕 入 先 へ の 支 払 能 力 は健 全 に 維 持 さ れ て い た と み る こ とが で き る 。
つ ぎ に 当 座 比 率 を 考 え て み よ う。 会 社 の 支 払 能 力 分 析 指 標 と し て,一 般 に 流 動 比 率 と当 座 比 率 が 用 い ら れ る。 図4は,流 動 比 率 と 当 座 比 率 の 推 移 を 示 し た もの で あ る 。 リ ッ カ ー の 経 営 状 態 が 最 も良 か っ た の は44年 で あ る こ と を 付 記 し て お き た い 。 こ の 図 で 流 動 比 率 を み る と,44年 の101。9%か ら47年 の94.8%
に わ ず か に 減 少 して い る が,そ の 後 は 多 少 の 変 動 は あ る に し て も増 加 傾 向 に あ
(%) 150
130
110
90
'70
4445464748・4950515253545556575859 (注)資料 「 わが国企業の経営分析」(年)
図4流 動比率 と当産比率 の推移
り,56年 に は最 高 の121.2%に な っ て い る。 流 動 比 率 の この よ う な傾 向 は,経 営状 態 の最 も安 定 して い た44年 の数 値 を大 幅 に上 回 って い る もの で 支 払 能 力 は 健 全 で あ っ た とみ る こ とが で き る。 ま た 支払 能 力 を厳 し く評 価 す る比 率 で あ る 当座 比率 を みて み よう。図4で 当座 比率 をみ る と,44年 の84.0%か ら48年 の72.4
%に 低 下 して いるが,そ の後 は増 加 傾向 に あ り,57年 に は最 高 の103.8%に な っ て い る。 この 数 値 を44年 と比 較 す れ ば,お よ そ20%の 増 加 とな っ て お り,支 払 能 力 は 非 常 に改 善 され た とみ る こ とが で き るで あ ろ う。
以 上 の こ とか ら明 らか な よ う に,売 上 債 権 期 間 が 延 長 され,支 払 手 段 と して の 現 金 収 入 が 減 少 して い るが,買 入 債 務 の 支 払 いが 良好 で あ りま た流 動 比 率 お よ び当 座 比 率 をみτ も経 営 状 態 の 最 も安 定 して いた44年 と比 較 して も著 しい増 加 を示 して い る。 したが って,財 務 比 率 に よ る支 払 能 力 分 析 で は,リ ッカ ー は 支 払 能 力 が き わ めて 健 全 な状 態 に あ ると い う結 論 にな るが,果 して そ うで あ ろ うか 。 この 点 を さ らに検 討 す るた め に,当 座 比 率 の 内 容 を み る こ とに しよ う。
当座 比 率 とは,当 座 資 産 を流 動 負 債 で 除 した もの で あ るが,こ れ は 当座 資産
で 流動 負 債 を返 すべ きで あ る と い う考 え方 に もとつ いて で きた 比 率 で あ る。 そ
こで,リ ッカーの 当座資 産の すべ てが 流動 負 債 を支 払 う こ との で き る能 力 を もっ
支払能力分析の理論 と実証的分析
て い るか ど うか を調べ て み よ う。 当座 資 産 の 主 な もの は,現 金 預 金,受 取 手 形, 有価 証 券 およ び売 掛 金で あ る。現 金 預 金 と売掛 金 の 内訳 明細 表 を 有価 証券 報 告 書 に も とつ いて 示す と表6の よ うにな る。 この 表 の 現金 預 金 で 注意 すべ き こ とは, 定 期 預 金 が含 まれ て い る こ とで あ る。 企 業 会 計 原 則 で は,1年 基準 で 流動 資産 と固 定 資 産 に 区 分 して記 載 す る こ とに な って い るが,リ ッ カー の 場 合 に は すべ て 流 動 資 産 と して記 載 して い る。 しか も こ の 定 期 預 金 は,現 金 預 金 の お よ そ 67.6%と い う きわ め て 大 きな割 合 を 占め て お り,こ れ が 流 動 負 債 を支 払 う能 力 を もっ て い る か ど うか 疑 わ しいの で あ る。 ま た 表6で は製 品別 の売 掛 金 の発 生 額 と回 収 状 況 を示 して い るが,ミ シ ン部 門 と電 子 レ ン ジ部 門 の回 収 率 お よび 滞
表6現 金預金 と売掛金の 内訳 明細表 (1)現 金 預 金
現 金 当 座 預 金 普 通 預 金 通 知 預 金 定 期 預 金 計
千 円 94,009
千 円 2,067,070
千 円 9,462
千 円 794,000
千 円 6,192,270
千 円 9,156,812
{2)売 描 金
(A)製 品 別 明 細 表
区 分 ミシ ン部 門 電 子 レ ンジ部 門 家庭電器部門他 計
口 .数 口
386,112
口 36,009
口 601595
口 482,716
金L額
52,920,332千 円 3,370,633千 円 2,822,321千 円 59,113,287千 円{B}期 間 発 生 並 び に 回収 状況
区 分 前期末残高 当期発生額 当期回収額 差 引 期
末 残 高 回収 率 滞留期間 ミ シ ン 部 門
電 子 レ ン ジ部 門 家庭 電 器部 門他
千 円 43,935,448
3,538,805 2,647,492
千 円 55,943,562
3,470,845 7,052,824
千 円 46,958,679
3,639,016 6,877,995
千 円 52,920,332
3,370,633 2,822,321
% 47.02 51.91 70.90
月 11.4 11.7 4.8
計
50,121,74666,467,232
57,475,69159,113,287
49.30 10.7注1回 収 率,滞 留 期 間 の算 出 方 法 は 次 の とお りで あ る。
回収 率=当 期 回 収 額 ÷(前 期末 残 高+当 期 発 生 額)
滞留期間・期繍 ・墾 辮
留 期 間が 特 に 悪 くな っ て い る。 会 社 外 部 者 に とって は,か か る数 値 が ど う して 悪 くな った の か を 明確 に して も ら う必 要 が あ るが,そ の 理 由説 明 が 全 く記 載 さ れ て い な い 。60年4月16日 の管 財 人 の報 告 書 にす れ ば,59年 の 売 掛 金 残 高591 '
億 円 の うち の お よ そ82.3%が 仮 空 売 掛 金 で あ っ た ことが 明 らか と な っ たの で あ る。
この よ うに み て くる と,当 座 比 率 が100%に 近 づ い た か らと い って 支 払 能 力 が 改 善 され た と結 論 づ け るの は早 計 で あ り,当 座 資 産 の 内容 を吟 味 す る ことが ど う して も必 要 に な って くるの で あ る。 リッカ ー の場 合 の よ うに,粉 飾 決 算 に よ る売 掛 金 の仮 空 計 上 と い うこ とが あ っ た し,ま た 定期 預金 の す べ て を流 動 資 産 と して い る会 社 は他 に も沢 山 み う け られ る。 当座 比 率 の本 来 の意 味 を維 持 す るた め に は,ま ず 第1に す べ て の 債 権 債 務 を1年 基 準 で 流動 ・固 定 に 区 分 す る 原 則 を守 る こ とで あ る。 第2に,売 掛 金 の 内訳 明 細 を製 品 別 にす るだ けで な く, 発 生 年 令 別,例 え ば2年 以 上 前,2‑1年 前 お よび1年 前 に区 分 して 表 示 すべ
きで あ ろ う。 そ して第3に,売 掛 金 以 外 の債 権 債 務 に つ いて も発 生 年 令 別 に 区 分す る と同時 に,将 来 の受 取 日や 支 払 日 につ いて も1‑6カ 月 は1カ 月 毎,そ れ以 降 は6‑12ヵ 月,1‑2年,2年 以 上 と い うよ う に区 分 して 表 示 す べ きで あ ろ う。 そ して第4に,財 務 比 率 は,相 対 的 な もので あ るか らそれ を数 期 間 み な け れ ば 比率 の意 味 を解 明 す る こ とが で きな いの で,財 務 比 率 を少 くと も5年 間 は表 示 す るよ うにす べ きで あ ろ う。 財務 諸 表 の 開 示 にお いて,こ の よ うな 点 が 改善 され た な らば,粉 飾 決 算 に よ る仮 定 売 掛 金 の計 上 や 不 良 債 権 を 防 ぐこ と が で き る し,ま た過 去 の支 払 能 力 だ けで な く将 来 の 支 払 能 力 も適 切 に評 価 す る
こ とが で き るよ うに な るで あ ろ う。
最 後 に,負 債比 率 に つ い て検 討 して み よ う。 負 債 比 率 と は,負 債 を 自 己資 本 で 除 した もの で あ るが,こ れ は会 社 の すべ て の負 債 を 自 己資 本 で どれ だ け支 払
う こ とが で き るか を意 味 して い る。 負債 比率 が 支払 能 力 分 析 の ため の 重 要 な比 唱
率 で あ る と い うの は,自 己 資本 の な か に 過去 の経 営 状 態 を表 わ す 任 意 積 立 金 や
当 期 未 処 分 利 益 金 の 項 目を 含 ん で い るた め で あ る。 つ ま り,会 社 の経 営 状 態 が
悪 化 して い け ば,当 期 未 処 分 利 益 金 が 小 さ くな る し,ま た欠 損 が 続 くと任 意 積
支払能力分析の理論 と実証的分析
『7ア'立 金 や そ の 他 の 資本 剰余 金 を取 崩 す こ とに な る。 そ こで,自 己資 本 の うち の ぞ あ他の剰余金の大 きさは過 去 の緯 状態 を羅 的 に示 す もの とみ ることがで き る。 他 方,経 営 状 態が 悪化 して 赤字 が計 上 され て い く と運 転 資 本 が 不 足 し, 外 部 か らの 短 期 長 期 の 借 入 金 が 増 加 して い くので あ る。 したが って,会 社 の 経 営 状 態 が 安 定 して 毎 期一 定 額 の 利益 を 計上 して い る とき に は この比 率 も安 定 して い るが,経 営 状 態 が 悪化 して いけ ば 自己 資 本が 小 さ くな る と同時 に借 入 金 とい う負債 が 大 き くな るの で,負 債 比 率 は加 速 度 的 に大 き くな るの で あ る。 こ の よ うな理 由 か ら負 債 比 率 は支 払 能 力 分 析 にお いて重 要 な 比 率で あ る と考 え ら れ るが,こ の比 率 を重 要 視 して い る者 は少 な く,ま た通 産 省産 業 政 策 局 編 「わ が 国 企 業 の 経 営 分析 」 で も58年 か ら負 債 比 率 を削 除 して い るの は ま こ とに残 念 な こ とで あ る。
図5は,負 債 比 率 の 推 移 を 示 した もので あ る。 この 図 に よれ ば,ミ シ ン業 は 負 債 比 率 が この よ う に低 く,し か も一 貫 して低 下 傾 向 を示 して い るの は,ブ ラ デ ー 工 業 と ジ ャ ノメ が 無 借金 経 営 を維 持 して い る と とに よ る と こ ろが 大 き い こ と を付 記 して お き た い。 製 造 業 で は,44年 の330.4%か ら51年 の445.7%ま で 増加 して いるが,そ の 後 は低 下 傾 向 を示 して い る。 そ れ に対 して,リ ッカ ー は,
繍
、/ノ \\一一一/\
360
260
〆製造業
〆 ミン ン 業 160
444546474849505152535455565758 ̲̲5g
(注)資 料 「わが 国企 業 の 経営 分 析J(年)
図5負 債 比 率 の 推 移
ミ シツ 業 よ り は るか に 高 い 値 を と り ま た44年 頃 は 製 造 業 と 同 じ位 の 数 値 で あ っ た が,そ の 後 は 急 激 に 増 加 して51年 に は562.1%の 最 高 値 と な っ た 。52年 に は 476.3%と 減 少 し た が,そ の 後 は 破 行 的 な 動 き を み せ て58年 に は 低 下 傾 向 を 示
して い る。59年 の 負 債 比 率 を み る と,製 造 業 は268.7%,ミ シ ン 業 は167.6%
で あ る の に 対 して,リ ッ カ ー は451.6%と き わ め て 高 く経 営 状 態 の 悪 い こ と を 如 実 に 示 し て い る 。
経 営 状 態 が 悪 化 す る と必 要 資 金 が 不 足 す る の で,借 入 金 が 増 加 して く る の ム ニ 般 的 で あ る 。 そ こ で 借 入 金 依 存 度 の 推 移 を 示 した の が 図6で あ る 。 こ の 図 に よ れ ば,製 造 業 で は5(ト52年 は や や 増 加 した が,そ の 後 は 低 下 して59年 に は37.3
%に な っ た 。 ミシ ン業 は50年 の12.3%か ら横 ば い か ら少 し増 加 し,59年 に は20.2
%で あ っ た 。 そ れ に 対 して,リ ッ カ ー は50年 の20.7%か ら54年 の24.2%ま で は わ ず か の 増 加 で あ っ た が,そ の 後 は 急 激 に 増 加 して57年 に は 製 造 業 よ り も大 き くな り,59年 に は47.0%と な っ た 。 つ ま り,製 造 業 で は50‑59年 の10年 間 で5.7
%の 減 少 で あ っ た の に 対 し て,リ ヅ カ ー は,26.3%も 増 加 し た の で あ る 。 ま た リ ッ カ ー の59年 は49.0%,製 造 業 の 最 高 値 が46.3%で あ り,両 者 の 差 は わ ず か の0.7%で あ る。 こ れ ら の 数 値 か ら み て も 明 ら か な よ う に,リ ッ カ ー は 経 営 状
(%) 50
41
31
21
,一 響〜 ・ 〜9! .ノ
,/
/ /
/
11
50515253545556
(注)資 料 「わ が 国 企 業 の 経 営 分 析 」
図6借 入 金 依 存 度 の 推 移
./ ./
//\ リッカー
57
5859
(年)
支払能力分析 の理論 と実証的分析 49 態 が 悪 化 して 借 入 金 に 依 存 して い た こと は明 らか とな った が,こ れ か ら直 ち に 倒 産 を予 測 す る こ とは不 可 能 で あ ろ う。
以 上 の よ う に,当 座 比 率,売 上 債 権 回 転 期 間,負 債 比 率 お よび 借 入 金 依存 度 の す べ て が,リ ッ カ ー の支 払 能 力 は きわ め て 悪 化 して い る こ とを 明 らか に して い る。 しか し,比 率 分 析 で は その 悪 化 の 程 度 は どの くら いで あ るか,ま た借 入 金 の返 済能 力 は どの程 度 で あ るか を評 価 す る こ とが で き な い の で あ る。 そ こで, つ ぎ に この点 を解 決 す る と考 え られ る収 支 計 算 書 を取 上 げ る こ とに しよ う。
3.'収 支計 算書 に よ る支 払能 力 分析
先 に も述 たよ うに,収 支 計算 書 の 作成 方 法 に は 直接 法 と間接 法 の2つ が あ る。
現在 の 財務 報 告 制 度 の も とで は,収 支計 算 書 の 作 成 方 法 は間 接 法 で しか も売 上 高 を 出発 点 とす る のが 望 ま しい と考 えて い る。 しか し,有 価 証 券 総 覧 の な か の 第5経 理 の状 況,3資 金 繰 状 況 に お いて(1)資金 繰 実 績 表 が 記 載 され て い る。 そ こで,こ こで は売 上 高 を 出発 点 とす る間 接 法 に よ らず,・直 接 法 の一 つ で あ る資 金 繰 実 績 表 に も とつ い て収 支計 算 書 を作 成 す るこ とに しよ う。
表7‑1は,リ ッカ ー の 資金 繰 実績 表(S58.4.1‑59.3.31)で あ る 。 この 表
は,収 入 の部 と支 出 の 部 に 区 分 して い るだ け で あ るの で,支 払 能 力 分析 の た め
に は きわ め て不 十 分 な もの で あ る。 会社 の支 払 能 力分 析 の た め に は,現 金 預 金
の 源 泉 と使途 を経 営活 動 別 に 区 分表 示 して い る収 支計 算 書,す なわ ち先 に表3
と して 提 示 した6区 分 式 収 支 計 算 書 が 望 ま しいで あ ろ う。 と ころが,資 金 繰 実
績 表 か ら収 支 計 算 書 を作 成 す る場 合 に は,つ ぎの 点 に 注 意 す る必 要 が あ る。 ま
ず 第1に,資 金繰 実 績 表 は,実 際 の 収 入 と支 出 に も とつ い て作 成 され た もので
あ る か ら,利 益 処 分 計 算 書 で 修 正 され て いな い こ とで あ る。 第2に,資 金 繰 実
績 表 の収 入 お よ び支 出 を経 営 活 動 別 に区 分 しよ う と して も,そ の収 支 の 内訳 明
細 が な い ので,そ れ を正 し く区 分す る こ とが で きな い。 例 えば,営 業 外 収 入 に
どの よ うな項 目が 含 まれ て い る のか 明 らか で な い し,ま た 税 金 の な か に も固定
資産 税 の よ うに営 業 支 出 とな る もの と,法 人 税 の よ う に配 当 金 ・法 人 税 等 支 出
とが 含 ま れ て い る。 この よ うに 資金 繰 実 績 表 か ら収 支 計 算 書 を作 成 す る に は,
収 支 の 詳 細 な 内訳 明細 表 が 必 要 で あ り,ま た その 信 頼 性 を高 め る ため に は,公
認 会 計士 の監 査 が 必 要 で あ ろ う。
表7‑2は,表7‑1を もと に して 作 成 した収 支 計 算 書,表7‑3は 表7‑
2を 要 約 表 示 した要 約収 支 計 算 書(44‑59年)で あ る。 表7‑2に つ いて 少 し 説 明 を加 え る こ とに す る。 営 業 収 支 とは,通 常 の 営 業 活 動 か ら生 じる収 支 で あ
る。営 業外 収 支 とは,通 常 毎期 発 生 す るが 営業 活動 とは い え な い もの,例 え ば, 受 取 利 息 や受 取 配 当金 の営 業 外 収 支 か ら支 払 利 息 や 社 債 利 息 の 営 業 外 支 出 を差 引 い た もの で あ る。 配 当金 ・税 金 等 支 出 に お い て,本 来 は税 金 で はな くて 法人 税 とす べ きで あ るが,営 業 支 出 の税 金 と利 益 に か か る税 金 とが 区別 され て いな
裏7‑1資 金繰実績表(S58 .4.1‑59.3.31) 3.資 金 繰 状 況
(1)資 金 繰 実 績 表(単 位:100万 円)
区 分 昭 和58年
4月 〜6月
昭 和58年 7月 〜9月
昭 和58年 10月 〜12月
昭 和59年
1月 〜3月 計
前 月 繰 越 金
8,175百 万 円 12,075百 万 円 首 万 円6,094
百 万 円 7,533
百 万 円 8,175
収 営 業 収 入 g,877
14,7359,765
12,09546,472
営 業 外 収 入
240898
136 4481,722
借 入 金 10,364 2,660 1Q,422
6,79130,237
そ の 他 1,383 842 308
627 3,160入 計 21,864 19,135 ・20 ,631 19,961 81,591
資 材 費 6,490 4,671 6,910
4,204 22,275支 人 件 費 2,306 3,186 2,895
2,436 10,823経 費
4,978 4,571 4,2984,290 18,137
設 備 費 240 202
224 193859
借 入 金 L972 1ヱ,183
1,560 5,189 19,904支 払 利 息 854 997 857
1,0213,729
配 当 金 115 28
一 一143
税 金 197 36 331
50 614出 そ の 他
812242 2,117 955
4,126計 17,964
25,116 19,192 18,338 80,610差 引 翌 月 繰 越 金 12,075 6,094
7,5339,156
9,156㈱ 1.そ
←の他 の収 入 に は資 産 売却 ,貸 付 金,立 替 金 の 回収 などの収 入を含んで いる。
2そ の 他 の 支 出 に は投 資, 貸 付 金,立 替 金 な どの 支 出 を 含 んで い る。
支 払 能 力 分 析 の 理 論 と実 証 的 分 析51
表7‑2収 支 計 算 書(単 位=100万 円)
〔1〕 営 業 収 入
L営 業 収 入 46,472
2.営 業 支 出
① 資 材 費
22,275 r② 人 件 費
「 10,823