繰返衝撃による疲労挙動の研究
(繰返衝撃の初期における疲労現象)
後藤美千男,宮野泰治
FEtiguetestofinthePlasticRange.
by
MichioGotoandTaijiMiyano
(AkitaTechnicalCallege)
Inthefatiguefailureofmaterialsintheplasticrangerepeatedimpactenergyislarge, and duetoeachonecyclespecimenisconsideredtohavebeengreatlytransformed.
Thereforeweconstructedasimpleimpacttensiontestmgmachine, andhavestudied,asshown mthispaper. plastiCdeformationaboutcUpperundertherangeoftheimpactenergyfromA/E=
0.306Kg‑cm/mm2 toA/E=0.073Kg‑cm/mm2eachonecycle.
Resultsabtainedareasfollows.
(1) SlipboundscameoutatonlyN=1,whicharefoundmlargegrainsatthebeginmg andafterafewnumberofrepetitionsinsmallgrains.
(2) Hardness increasesrapidlywhereishighimpactenergy, andthetimewhenhardness curvescometoliehorizontallyisearlyaccordingtothestrengthofimpactenergy.
(3) Elongatianpercentage increases rapidlyat thebeginingof therpetitionsofimpact, especiallyinthisregard, itisremarekablyfoundtillN=20.
破面の現われ始める点前後のエネルギー(表1に示す)
を加えた場合について,すべりの観察,かたさ,伸び率 等の変化につき測定を行い, 2, 3のことを明らかにし たので報告する。
1. 緒 言
塑性疲労は, 1サイクル中に試験片に加えられる繰返 応力が非常に大きく,破壊までの繰返数が少ない場合の 疲労に関する問題である。したがって繰返応力が大きく
なるにつれてそれに伴う材料の示す挙動も急激な変化が あるものと考えられる。焼なましした銅を供試材として 繰返衝撃引張試験による疲労試験を行い,単一衝撃値か ら始まる衝撃エネルギー破断曲線を求め,疲労破面の現 われる点を境として,巨視的塑性疲労破壊の曲線と,疲 労破面を生じて破断する真の疲労曲線とが現われること を明らかにしている(1)。
本実験はこの疲労破面の現れ始める点付近のエネルギ ーを受けた場合の繰返数の少ないごく初期の挙動を明ら かにするために行ったものである。
一般に塑性領域における疲労は大きな塑性変形を伴っ て破壊しており, したがって各サイクルごとに受ける変 形量はかなり大きい。ことに衝撃繰返数の少ない初期の 段階では,大きな変形をするということが考えられるの で簡単な手動式の繰返衝撃引張試験装置を製作し,疲労
Table.1 1mpactfatiguestrengthatNcycles Impactenergy
(Kg‑cm/mmZ) Ncycles │ range。ffatigdE
I
0.306 0.206 0.151 0.116 0.073
103 104 104 105 105
Plasticfatigue
Truefatigue
2. 供試材料
供試材料は市販の13 銅棒を使用しFig.1に示す 形状に機械加工した後,エメリーペーパ−06番まで研 摩してから,真空炉中で, 650。C. 1時間保持後,炉中 徐冷の条件で焼なましを行った。後さらに試料表面の仕 上げと,加工変質層の除去の目的で電解研摩を行った。
36
くず
電解研摩にはステンレス鋼製の円筒を陰極に用いて,そ の中心に試料を置き,正燐酸50%液を電解液として陽 極電流密度を6A/dm2.10mm.の条件で行った。ついで 電解腐蝕を行い,結晶組織を現わして供試材料とした。
なお供試材料の化学的成分及び機械的性質は表2に示す 通りである。
Fig.1FormanddimensionsoftestSpecimens
■
ChemicalcompositionandMechanicalproperties Table2
一画
Chemicalcompositon
(%) Mechanicalproperties
Singletensilempact valUe(Kg‑cm/mm2) Elongation
(%)
Yieldstrength (Kg/mm2)
Tensile
strength(Kg/mm2)
卜"鶏Ⅲ
Pb Tr Fe Cu
61.4 48.0
Tr 5.6 21.9
99.82
測定位置から特定の結晶粒を選び出し,結晶粒のかたさ を測定した。さらに測定精度を上げるため粒度の同じ結 晶粒で,同方向にすべりを発生しているものについて測
定した。
3. 実験装置及び実験方法
繰返衝撃一回ごとの観察を行うため,Fig.2に示すよ うな繰返衝撃引張試験装置を製作した。図に示すよ うに 、ンマーA の振りおろしに よって衝撃エネ ルギーを加える ようにし,衝撃 エネルギーの変 換にはハンマー の持ち上げ角を 変える方法を とり, 目盛りに よって持ち上げ
/ 易へ洲. 4. 実験結果および考察
4−1 すくりの観察
疲労破面が現われ始める点以上の衝撃エネルギー。す なわち巨視的塑性破壊を示す領域にある(以下塑性疲 労領域と呼ぶ)衝撃エネルギーE/A=0.306kg‑cm/mm2.
E/A=0.206kg‑cm/mm2. E/A=0.151kg‑cm/mm2. と,疲労 破面が現れ始める点以下(以下真の疲労領域と呼ぶ)の 衝撃エネルギーE/A=0.11kg‑cm/mm2.及びE/A=0.075 kg‑cm/mm2. との4種の衝撃エネルギーのもとで, 1回 衝撃を加えるごとに顕微鏡観察を行った結果, 4種のエ ネルギー範囲では,いずれも最初の 鑿により,すべり が発生しているのが観察された。Fig.3にその状態を示
す。
最初の 撃で発生するすべりは大体結晶粒度の大きい ものに限られており,粒度の小さい結晶粒にはかなりお くれて発生している。またすべり発生時期は試験片上の 位置によっても異にしており, フィリット部分に近い位 置に早く発生している。また繰返数'00回までの観察で はすべり増加は特に見られなかった。
以上の結果は衝撃1回ごとに停止して観察した結果で あるので,繰返速度を上げた場合の影響を観察するた め,藤井式繰返衝撃引張試験機を用いて,繰返速度600回 /minのもとで観察を行った結果をFig.4に示す。 1鑿 ごとに停止して観察したものに比し,すべりは明瞭に現 れているが,写真処理の相違によるところもあり手動式 による場合と大差は認められなかった。しかし繰返数の 増加につれて試験片表面の荒れが目立ち,繰返数N=
103ではFig.5に示すように起伏が激しくなっている。
I
A
、
、
8 ノ
画一二一画一ご"〆
Fig.2. Skeletondiagramofthe J、つL1寺ワーEvノ impact tention testing 角度をセッ ト
machine し, ストッパー
cの開放によって振りおろすようにした。従来衝撃引張 試験はシャルピー式衝撃試験機のハンマーに直接試験片 を取付けて振りおろす方法によって行われているが,振 りおろす際,試験片に遠心力の作用によって曲げが付加 されるので,本装置では試験片をベッ トに固定する構造 とした。この試験装置によって,繰返数N=1からN=
100までの試験を行い,各段階ごとにすべり線の観察と かたさの測定,および伸び率の測定を行った。すべり線 の観察には光学顕微鏡を用い,試験片に観察用の平面な どを特に作らず,供試材料のままの円柱状の表面を,平 行部の中央と,平行部がフィリッ ト部分に移行する部分 の2カ所から特定の結晶粒を選んで観察を行った。
またかたさ測定にはマイクロ.ピッカースかたさ試験機 を使用し,試料表面の疲労硬化層を測定する目的で,で きる限り浸入深さを浅くするため測定荷重を501とし た。しかしこれでは圧痕が結晶粒より小さくなるので組 織の平均的かたさを測定することができない。そのため
Oイ
E/A0.151轌一cm/1,,m2 E/A0.076kg‑cm/mm2
誰蕊
x480 N=1 蕊
箪笥
瀞 f":
蕊鰯
鰹憩.、識騨
蕊
N=1
筆 解
議蕊蕊;…』蕊
鑓
麹簿 、鴬
蕊『鍔
擁麹︾一●歩
錘
蕊
蕊
N=100 N=100
Fig.3Microstructureofspecimen
(a)E/̲10.073kgcm/mm2 (b)E/.10. 116kg‑cm/rnm2
醗熟皇蕊
、坪。
難 蕊
霧
蕪 篭
鷺溌農蕊 騨
舞 識 鍾
N=100 ×48() N=100 ×720
38
N=200 N=200
N=500 ×720
N=500 ×480
Fig.4 N'Iicrostructureofspecimen
応力方向く →
N=103 ×150
Fig.5
E/A=0.306kg‑{、m/mm2.による場合は最も硬化が急激 で,N=30で最高値に達し,以後硬化曲線は水平になる 傾向を示しており, 30回の繰返で硬化が飽和に達したも のと考えられる。またE/A=0.206kg‑cm/mm2, の場合も 急激な硬化を示しN=50付近で硬化曲線は水平に移行 する傾向を示しており, この近くで硬化が飽和に達した
ものと考えられる。
一方真の疲労破壊領域にあるE/A=0.116kg‑cm/mm2.
とE/A=0.073kg‑cm/mm2. の場合は,前者とはかなり違 った傾向を示しており,ゆるい上昇を行いN=100に至 るも硬化は飽和を示していない。真の疲労破壊領域にあ 4−2,かたさの変化
すべりの観察ヤこ平行して繰返衝撃の各段階こおける微 小かたさの変化を測定した。その結果をFig.6, Fig.7, Fig.8に示す。
かたさの測定は実験方法の項で述べたように試験片表 面の疲j・硬化層を測定するため測定荷亜501で行った ので圧痕が小さくて組織の平均的かたさを測定できない ため特定の結晶粒について測定を行ったものである。
測定精度を上げるため,結晶粒度,結晶方位の影群な どを考慮して │直垂に行ったが多少のばらつきはまぬがれ なかった。しかし次のような傾向は知ることができた。
るものの100回以降の推移を見るために, E/A=0.076 kg‑cm/mm2.について繰返数3×103までのかたさ変化を 測定した結果をFig.8に示す。図中白丸は試験片の中 央部分。黒丸はフイリッ ト部分を測定したものである。
図からわかるように,かたさ上昇は試験片上の位置によ り異った傾向を示しており, フイレッ ト部付近は700回 で硬化が最高に達し以降飽和状態を示しているのに対
11
砥
760ざ
シ国日切3口で鬮国
60
'0 70“ ノ 7麺 Z型 巳…
Numcerofrepetitions
Fig、8Changeofhardnesswithnumberof repetitionsunderE/A=0.073kg‑cm/mm2.
シ出自の$ロで鬮困 11
し,試験片中央部では300〜400回付近で飽和状態らし い傾向を示しながら, 700回付近からわずかに上昇する 傾向を示しており,中央部とフイリッ ト部が交互に硬化 していくようである。試験片上の位置によって違った硬 化の挙動を示すという現象が,真の疲労領域には現れる が,早い時期に硬化が完了する塑性疲労領域では測定の ばらつきなどにより明確に現れない・ものと考えられる。
以上の結果から,硬化は加えるエネルギーが大きけれ ば大きい程急激である。また硬化が飽和に達する時期も 加えるエネルギーの大きさに従って早い。A,siede(2)等 は焼鈍した銅の疲労試験で疲労硬化は加えた応力に関係 なく,初じめの4,000サイクルで硬化してしまうと述べ ているが,真の疲労破壊の現われはじめる附近で我々の 実験では,エネルギーの大きさに従って硬化しているこ とが確められた。またD.S.Kemsley(3)は焼鈍した銅と 冷間加工した銅とについて,片持回転曲げ疲労試験を行 い疲労によって到達した最高かたさは,両者ともほぼ Hv75であったと述べているが,我之の行った実験結果 でも,処女材のかたさの高かったものでも,硬化が飽和 に達し硬化曲線が水平になるかたさは加えたエネルギ ー,および処女材のかたさに関係なく,Hv75付近であ
った。
4−3,伸び率について .
繰返衝撃の各段階における伸び率を測定した結果を Fig.9に示す。繰返衝撃のごく初期において急激な伸び を示しており,材料は著しい材質的変化を受けているよ
うに思われる。
真の疲労破壊領域のエネルギーを受ける場合は繰返数 20回付近から,伸びの増加は急減しているが,塑性疲労 領域にあるものはほぼ直線的に伸びており,真の疲労領 域と塑性疲労領域では顕著な違いを示している。
65
11
1
1
1
” 20 ” 40 如 術 /
Numberofrepetitions
Fig、6Changeofhardnesswithnumberof repetitionsatstraightpart
︐11I
恋
シ出目駒$目で鬮国
弓
』
60
10 2C JC ・ダ0 /'0
Numberofrepetitions Fig7Changeofhardnesswithnumber
ofrepetitionsatfilletpart
● 1 、 − ● 1
●
●〆
え..●●
●
し 1
0J
D ●
少
ン/"b
11
ダ
ノ
P ●
し
し…
) 0
I d 岡 一
《 一
ー
夕一
0
三 ﹄︐ 一‑.‑‑.1
#二
羨泳
OノoO少
》
I
一一β"−●‑81m噌加陣r、『!1
J し
(
タ
) 1
〆呵
)
ーー .ー.. .一、−..1
,
q
{
●
) ? (
ロロ■ローーロロロ■■qp−1
《
①
一一一 /〃
1/
}
〆 ノ
1) )
〕
御″争陶︲卿
恥
P
II 《
ー
罰
》
}
や
一口
)一
︑ 一
1−1
ー '
一
一 ︲一︲
l ムム
隣 Z
一︲ 一︐ rー
−亮=0.3 M1鐸
6105210●00
一一一一
一一 一一 一 OOQOI01763
一
① 一 一
一 一
/
■ 。
1
》 (
(
11 ノ
/《
I
) I
b 」
I 。
、
4く 11
{
多
/ 11
グ
レ/
l d
/ 〆
〆
》
①"
蓬,ロゴ グ
一
》
(
11﹃/
} l
トク言=
一
DI
11m四
ザ
︒◎
8
←
》◎
△
蕊
L jj 嫁︲
〆
︲ 2−
》 身
︲〆
L
一J 一
1
l d
一︐
イ
.
)
L b
一i一一局
一︲
一一鼠=o、306踊瀦&鉦酎婚恥
●●も00︒O
一一一一一一一一
一一一↓一一
40
a5
鯉伽
︵鈍臣旨屋一pgi印型︶湯切糟の口の︾○画ロ︻属目
2119︵訳︶①留曽8消呂員呈勵目○国 0
』
]
、
L
$ Q§ 10 臆 20 2E
Elongationpercentage(%) Fig.11Relationbetweenimpactenergyand
elongationpercentage.
10 20 30 7s ・000
Numberofrepetitions
Fig、9Changeofelongationpercentagewith
numberofrepetitions 5. 結 言
焼なましした銅を供試材料として,疲労破壊が現れ始 める点前後の衝撃エネルギーを加えた場合の初期挙動に つき実験した結果を要約すれば,
(,)すべりは,いずれの衝撃エネルギーのもとでも最初 の,回の繰返により発生していることが認められた。
その場合主として粒度の大きい結晶粒内に発生してお り,粒度の小さい結晶粒には,わずかに時期が遅れて 発生しているということから,すべりの発生には粒度 依存性があるものと考えられる。
②繰返衝撃によって起こる硬化はごく初期において急 激に上昇しているが,加えたエネルギーの大きさに対 して一定ではなく,塑性疲労領域と真の疲労領域では 飽和時期に著しい差が見られる。
叉硬化が飽和状能になるかたさは処女材のかたさに 関係なく,大体Hv75付近である。
(3)伸び率は初期において急激な上昇を示しているが,
繰返数の増加に従い塑性疲労領域と真の疲労領域では 伸び率に大きな差が現れている。
最後に本研究を終始御指導賜った秋田大学鉱山学部,
斎藤葆助教授に深かく謝意を表します。
321000
︵鈍日E一日︒l切望︶湯即淵の口の︾○面︒冒昌
彬
0.1 Q2 Q3 0.4 QS Q6 Elongationpercentage
Numberofrepetions×Impactenergy Fig.10Relationbetweenimpactenergyand ratioofelongationpercentagetototal impactenergy
Fig・10は各段階に測定した伸び率を,加えた総衝撃エネ ルギーで除した値を横軸に。 1回の衝撃エネルギーの大 きさを従軸に示したものである。またFig.11は各繰返数 段階の伸び率を示したものである。図で明らかな様に真 の疲労破壊の現れ始める衝撃エネルギーの前後では全く 違った傾向を示している。すなわち塑性疲労領域では1 回に加えるエネルギーがすぐなくなるにつれて,伸び率 一総衝撃エネルギー比が高くなっており,一方真の疲労 領域では1回に加えるエネルギーの大きさが小さくなる につれて伸び率一総衝撃エネルギー比が低下している。
参考文献
(1)藤村・斎藤,材料試験12巻第119号P.594 (2) A,SiedeandA.G・Metcalfe,ASMETrans215
6947/949 (1959)
(3) D.S・Kemsley. InstMetalsJ.871.'0/,5 (1958 59)
⑤ 圃 j 6 dd ,
・き﹄ /
「
/
I I誰 .§異①▲▲!
"郷 鰯#瀦萎,
L紗
■■■ ︑の0口△ 頭 一一一一一一一一一一 αQQQQ 犯如岬妬噸66 ③↓蜀冨塁
0
●
①斡嵯
借
−
−4
』
列
〃 〆
/ジ) /
46J 〃〃》 〆
三一
#
夢
〃/
I
〆
I
〆
〆 ー
→
声 ■
三一
−
去黙 塞圦073
毛一 =00116
一.一 =0.151
ヤ%㎡
660023QQ
■軍令寺
‘u u H u U E u l
○
○ 一
︐ 1 男
吻叫己
ミ
Ab.
錫期
灘
入︾札 、
言翠
●
、 蚤
八…
# 。
貢
C O
。 東=0,306一一一一 QQ z10s67
①○ K辮