不当表示に対する広告代理店の責任
−一連邦取引委員会による規制をてがかりとして−−
内 田 耕 作
Ⅰはじめに
現代の分業化された社会にあって−は,広告主自身が広告を作成する場合のみ ならず広告代理店が広告の作成に.関与する場合がかなりの割合を占めるものと
(1)
思われる。
広告代理店が関与したこの広告を公正取引委員会が不当表示であると問題匹 する場合,々の不当表示をおこなった広告主を被番人とし,それ紅対して排除 命令を発することができるということは何ら疑いのないところである。それに 対し,公正取引委員会がその不当表示の作成紅関与した広告代理店を被番人と し,それに・対して排除命令を発することができるかどうかは問題である。
不当表示を有効紅排除するため紅は,広告主のみならず,広告の作成紅関与 した広告代理店の行為をも規制することができなければならないであろう。し かしながら,景表法のもとでは公正取引委員会ほ広告代理店の行為を問題とす
(2) る余地はない。というのは,景表法第4粂によれば,「事業者軋 自己の供給す
る商品又は役務の取引について」不当な表示をしてはならないと規定されて1、
るからである(なお傍点は引用者)。
そこ.で公正取引委員会は,広告代理店に要望書を送り,その注意を促し,協
(1)不動産広告のほとんどは広普代理店等の大幅な関与紅よって作成されているのが現 状であるといわれる。松田弘・新しい不動産広告規制の基礎知識(1972年)125−26
下−・ジ参照。
(2)川井蒐倭・表示と景品の話(1972年)63ぺ」−汐,富田文剛(編)・景品表示汝の実務
(1970年)192ぺ一−・ジ,利部備ニ「不当表示規制私闘する諸問題」企業法研究199輯14,
18ぺJ⊥ジ(1971年)参照。
第52巻 第5弓
ー 2 一 406
(3)(4)
カを求めること紅よって不当表示を排除することに凄めている。
それに対してアメリカ合衆国にあっては.,連邦取引委員会ほ,不当な広告を おこなった広告主のみならず・その広告に関与した広告代理店をも被番人とし,
(5) (6) それに.対して:排除措置/を命じている。というのは.,連邦取引委員会法貨5条に
よれほだれが不当な広告をおこなったかほ問題とならないからである。
そこで本稿で,連邦取引委員会に.よる規制をてがかりとして不当表示に対す る広告代理店の責任について考えてみること紅したい。まずはじめに審決・判 決の動向紅ついて述べよう。続いて広告主と広告代理店との関係を検討するこ と紅よって不当表示に対する広告代理店の責任を類型的に・検討してみたい。 しい
ⅠⅠ審決・判決の動向
不当な広告に対する広告代理店の安住が問題となった主要な事件としては,
次の4つの事件,すなわち,ブリストル・マイヤ−ズ事件,コルゲート・パー モリ−プ事件,カ−・タ〜・プロダクツ事件,クイントン事件がある。そしてここ れらの事件を通じ・て,不当な広告に対する広告代理店の責任が展開されてきた
よう紅思われる。そこで以下,それぞれの事件を紹介し,その審決・判決がも
(3)中村雄一イ不当表示についての最近の動き」公正取引231号4,5ぺ−ジ(1970年)
参照。
(4)なお,宅地建物取引の表示に′関する公正戯争規約算11条は「事業者から広告の作成 を依頬された広告代理店等は,本規約の趣旨に従って−広告等を作成しなければならな
い」と規定している。そして,公正取引協議会の賛助会員として入会している広告代 理店等紅向けて公正取引協議会は,公正競争規約,運用基準,通達または関係法律,
広告方法等の研修会を年数回開催し,指導をおこなっている。のみならず,公正取引 協議会は,芥当表示事件に.関する事情聴取の醸その都度代理店の出席を求め,その間
の経緯の説明を受けて事後の是正を促がしている。江戸英雄「業界からネた公正歳争 規約」公正取引322号5,8ぺニジ(1977年)参照。
(5)なお,広告代理店が欺瞞的広告に・おいてどういう役割を果たしているのかというこ とに.ついての実証的研究として次のものがある。Schoepflin,TheRole of Advertis−
ing AgenciesinDeceptive Advertising,in′ConsumerProtectionfrom Deceptive Advertising122(F.Stuart ed.1974).
(6)15tJいS.C..A.§45(1975Pamphlet No・1).
(7)なお,以下の叙述ほ,McLaugh1in,Jr.,&White,Jr・,Advertising Agencies:
Their LegalLiability under the FederalTrade Commission Act,17Kan.L.
Rev.587(1969)に.よるところが大きい。
不当表示に対する広告代理店の受任 −− 3 −−−
407
つ意味を明らかに.しよう。
(1)ブリストル・マイヤーズ要件
(a)事案は,練り歯みがきに.関する広告が欺瞞的であると問題紅なったも
(8)
のである。本稿に関係があるのほ広告主のみならずその広告代理店も被審人と された点である。広告代理店が被審人とされた理由ほ.,それが問題となった広
(9) 告物の作成・拡布に.関与したとされたからである。
広普代理店が問題となった広告物の作成・拡布に関与したことに・ついて委員
(10〉
会は次のような事実認定をおこなった。当該広告代理店ほ広告主が望む広告の 一・般的な性質やその広告が用いられるメディアに.関して広告主から教示を受け 七いた。この教示を受けた後に広告代理店は広告物やラジオ・コマ・−レヤルを 作っていた。それから広告主の検討・審査・承認・変更を求めてそれを広告主 に.提出していた。そしてその承認を得た後にほじめて広告代理店はその広告物 をあらかじめ決められていたスケ汐エール紅従って発行したり放送したりし た。このように.広告代理店ほ問題となっている広告物の作成・拡布に関与した けれども,最終的な権限の主たるものは広告主に留保されていた。
(11)
こういった事実認定に基づき委員会は最終的に・次のような判断を下し,かつ
(12〉(13)
命じた。広告代理店は虚偽あるいはミスリ・−ディングと認定された広告の拡布 に.関与したけれども,それは.終始,当該■広告に対して最終的な権限と責任をも つ広告主の指示と統制のもとに.行為した。また,公益に反すると認定される慣 行は広告主に対する差止命令に・よって中止されることが期待できる。それゆ え,審判開始決定は広告代理店に関してほ喪却されなければならない。
(b)本審決は,広告代理店が欺瞞的な広告の作成・拡布に・関与したという
(8)Bristol・MyersCo.,46F.T.C.162(1949).
(9)Id.at165.
(10)Id‖at171.
(11)Id.at176.
(12)Id.at177−78
(13)なお,委員会の命令は控訴裁判所によって認容された。SeeBristol−MyersCo V.
FTC,185Fり2d58(4th Cir一1950).
第52巻 算5号
−・4 − 408
ことを理由にその行為を連邦取引委員会法上問題にしうるということを確立し
(14)(15)
たという点で評価紅価するものである。しかし同時に.本審決は,最終的な権限・
統制・指示が広告主にあれば広告代理店は連邦取引委員会法のもとで責任を問 われないということをも確立した。これほ,連邦取引委員会が連邦取引委員会 法のもとでの広告代理店の責任を決定するため紅事実上代理に関する民法の原 則を適用したということを意味している。
(2)コルグ−ト・パー・モリ−プ事件
(a)事案ほ,シェ−ビング・クリ−ムについてのコマ−レヤルが虚偽でミ
(18) スリ嶋ディングで欺瞞的であると問題紅されたものである。本稿に関係がある
のほ,広告主甲みならず問題となった広告を作成・公表した広告代理店も被審
(17)
人とされたという点である。
被審人とされたことに.対して広告代理店は自己に.のみ直接関係のあるいくつ
(18)
かの抗弁をおこなった。すなわち,①自己ほ.制定法が意味する「商業」をおこ なってはいないので委員会は自己に.対して命令を発する権限を有しない,㊥自 己はコマ・−・レヤルの作成・公表にあたり単に広告主の代理人として行為したに すぎないのでコマ」−レヤルの違法性に.対して責任があると判示されるぺきでは ない,⑨自己ほそのコマ−ジャルが虚偽でミスリーディングであると判示され るということを知らなかったし,またそれゆえ,意図的に.連邦取引委員会法達
(14)以下,See McLaugh1in,Jr.&White,Jr.,SupranOte(7),at588.
(15)ブリストル・マイヤ−ズ事件以前は広告代理店は,欺瞞的な広告物の作成紅積極 的に.関与してもその行為紅対する茸任を問われることはなかった。SeeCharlton&
Fawcett,The FTC and False Advertising,17Kan.L.Rev.599,619(1969).
なお,主要な事件に.おいて広告代理店阻対する審判開始決定がなされるようになった のは1960年に.なってからである。SeeDevelopmentsin the Law−−Deceptive Ad・
Vertising,80Harv.L.Rev.1005,1070(1967).
(16)本件に.ついては,今村成和・私的独占禁止瀧の研究(三)(1969年)罰6ぺ・−ジ,今 村成和「最近の判例−pFederalTrade Commission v.Colgate・Palmolive Co・,
380U.S.374(1965)」アメリカ法1966−2 346ぺ−ジ(1966年),拙稿「連邦取引 委眉会による欺瞞的広告の規制(2・完)」法学雑誌24巻1号141,151−54ぺ−ジ(1977 年)参照。
(17)Colgate−PalmoliveCo.,59F.T.C.1452,1453(1961).
(18)Id.at1470−72,
不当表示に.対する広告代理店の安住 一−・5 −
409
反をおこなったのでほない,という抗弁である。
(19)
しかし,委員会は次のような理由でこれらの抗弁せすべて認めなかった。ま ず①の抗弁紅関して。その広告代理店が州際商業において分配される製品のた
めのコマー・レヤルを全国ネットのテレビで見せるために作成し公表したことほ 争いがない。それゆえ広告代理店と州際商業における商品の移動との関係は希
(20) 薄なものではなく,また間接的なものでもない。続いて⑧の抗弁紅関して。我
々ほこの抗弁は奇妙な主張だと考える。広告代理店はこれらのコマ−レヤルを テレビのネットワークに持ち込んだだけでほない。それが最初紅「サンド・ぺ
(21)
−・パーを使ってテストをする」というアイデアを思いついたのである。自分だ けの利益のために.行為したか他の者の利益のために.も行為したかに.かかわら ず,このように直接的に責任がある行為紅対する責任を回避するのを許す理論 を我々は知らない。広告代理店の議論ほ,責任を他の者に.転嫁することによっ て−制定法違反に対する安住を回避しようとするたびたび繰り返される試みの変 形に.すぎない。最後に⑧の抗弁に関して。連邦取引委員会法違反を確証するに あたり騙す意思を立証することは必要ではないということほ.解決ずみのことで あるので,この思いつきほ取るに足らないものと考えてよい。
そして委員会は,広告代理店が当該シェービング・クリームを対象とするテ
(22)
レビ・コマ−シヤルを広告主のために.考案し作成し放送したと事実認定し,広
(23)
告主のみならず広告代理店紅も同一・の差止命令を発した。
(19)Ibid
(20)なお,Ⅲ、l際商業」の概念の展開紅ついてはさしあたり,拙稿「連邦取引委員会紅よ る広告規制の歴史的展開一要件を中心として¶」法学雑誌23巻2号268,公0−82 ぺ−ジ(1976年)参照。
(21)事案をより具体的にいうと次のようである。すなわち,シェ・−ビング・クリ−ムを 塗っです ぐに1回で粗粒.のサンド・ぺ−ソぐ−が剃れることを実証することに.よってそ のyェ−ビング・クリームの湿潤カが強いことを示そうとするコマ・−・ジャルがおこな われたが,そのサンド・ぺ−パ・−は実物ではなくプラスティック・ガラスに砂を付着 させたモツク・アップ(模擬物)であったので,コマ−シヤルは虚偽でミスリ−ゲイ ングで欺瞞的であると問題にされたというものである。
(22)Colgate−PalmoliveCo・・,SupranOte(17),at1475.
(23)Id.at1477−78.差止命令の内容は次のようである。シ′ェーーゼソグ・クリームま たはその他の製品の広告に.おいて被審人が次のことをやめるよう命じる。①いかなる
第52巻 弟5号
−6 − 410
控訴審においてその広告代理店ほ,単なる広普代理店であるのでともかく自
(24) 己に対しては命令は発せられるべきでほないと主張した。しかし裁判所ほその
点について次のような判断を下した。一度委毘会は代理店が第二次的な行為者
しこ−ト\ にすぎないという根拠からそのような区別をした。しかしながらこの裁定は「有
効な裁鼠」の問題であると明言された。本件と同様広告代理店が主たるもので はないにしても積極的な発案者であると.いう委員会の認定が是認されるところ
(2¢)
では,委員会が権限あるいは裁屠のどちらかをもっていると我々ほいった。
もっとも裁判所は,委員会の命令が広すぎるとして当該事件を委員会に.差し
(27) (2さ)
戻したが,その際広告代理店紅のみかかわる点に・ついて次のように示唆する。
命令の許容範閉に関して広告主と広告代理店との間に.区別があるのほ当然と考 え.る。広告主がその危険に.おいて広告をしていると判断されるのはある程度当 然である。しかし,広告が虚偽であるということを少なくとも広告代理店がい
っこ.うに疑わないとき紅広告代理店に.関してどこまで拡張するのが適切である かに関しては留保する。
(29)
この点に.関して差戻を受けた委員会ほ次のようにいう。広告物が虚偽である ということを代理店の側で全く知らなかったか全く疑わなかったとイ反定した場
製品であれその品質・長所を立証しようとする紅あたり,実際紅は実演がその製品の 品質・長所紅ついての本当のまたは正確な実演ではなかったりそれを立証していない ときにその実演が当該製品の品質・長所にンついての本当のまたほ正確な実演であると かそれを立証していると表示すること,(彰当該のレェ−ビング・タグー・ムをほじめそ
の他いかなるシェーゼソグ・クリ−・ムであれそれについて広告するに.あたり,その製 品の品質・長所を不実表示すること。
なおこの命令の排除捨置はかなり広いものであるが,こういった命令を委員会が発 したのは,欺瞞的なテレビ広告が急激に.増加しかつ重大な問題となってきたこ.とや,
両披審人とも違反の前歴があったことに.よる。Id.at1473−74.排除措定の範囲につ いての一般的な説明としては,さしあたり,拙稿「連邦取引委員会消費者保護命令の 新展開(1)」法学雑誌21巻3号416,425−30ぺ一汐(1975年)参照。
(24)以下,Colgate・PalmoliveCo.v.FTC,310F。2d89,92(1st Cir.1962).
(25)前述(ⅠⅠ(1))のブリストル・マイヤ−ズ事件審決を指す。
(26)Cf..C.Howard Hunt Pen Co.v.FTC,197F.2d273(3dCir.1952);Chas.
A.BreweI・&Sons v.FTC,158F.2d74(6th Cir.1946).
(27)詳しくは,拙稿・前掲(注16)152ぺ−ジ参照。
(28)Colgate・PalmoliveCo.v.FTC,Supra nOte(24),at95.
(29)Colgate−PalmoliveCo・,62F.T.C1269,1277−78(1963).
不当表示に対する広告代理店の資任
411 …・7−
合のルールがどのようであれ,本件がその場合紅あて−はまらないということほ 明らかである。当該■のシェ−ビング・クリ−・ムを塗ればサンド。ぺ一−パ−∴を剃 ることができるという主張をし,それを「サンド・ぺ−パ−・テスト;という 実演でもって「実証jするというテレビ・コマ」−・レヤルのアイデアを考えたの はその広告代理店であった。また,テレビの全国ネットワ−・クで放送するため
/に問題となったコマーレヤルを作成しかつ放送したのはその広告代理店であっ た。その広告代理店の役員は,そのシ云−・ビング・クリ−ムを塗ってもコマー シャルで描写され「実証_lされた方法ではサンド・ぺ−パ−を剃るこ.とができ ないということを知っていた,というこ・とが記録紅よって確証されている。ま た,視覚にうったえる t ̄実演」において真のサンド・ぺ−パ−のかわりにモッ ク・アップ(模擬物)を被番人に用いさやたのほそのシェ−ビング・クリ−ム を塗ってもサンド・ぺ−パ」−を剃ることができなかったからであるということ も記録に.よって確証されている。広告主が自己のために放送される広告物に対 して問題なく貴任があるのに対し,コマーレヤルを考案し作成し放送するに.あ たっての主唱者であり,その主張が虚偽であるのみならずそれを支えるために 公衆に提供された「実証」がに・せ物であることを充分に知っている広告代理店 が責任を免除されるならば実際のところ,それは.奇妙であろう。それゆえ記録 の諸事実に.照らせば本件ほ,広告代理店は主張の虚偽性について全く知らずま たt ̄全く疑わない」という場合でその広告主によって考案された虚偽主張を広 告したために広告代理店に・責任があると判示する事件でほない。
(3J)
そして命令に関しては委員会は次のよう紅いう。広告代理店がテレビ・コマ
−シヤルにおいて匹せの【 ̄実演_iを流すのを我々の命令が奈じる限り,代理店 はそれ自身が作成するコマ」−ジャル払おけるモック・アップの使用について必 然的に知・つているであろう。そして,そのシェ−ビング・クリ−ムあるいは他 のシュ岬ビング・クリ−・ムの品質を代理店が不実表示するのを我々の命令が禁 じる限り,我々は,そのような表示の虚偽性についでそれが知らなかったとか
(30)Id.at1278.
館52巻 第5号
・− β・− 412
その真実性を疑問に.思ういかなる理由ももたなかったということを被審人が立 証する場合に.ほ抗弁を許す特定の規定を含まなければならない。
(飢) この考えに従って委員会は広告代理店に対して次のような命令を提案した。
すなわち,広告代理店が次の競争方法または行為もしくは慣行をおこなうこと を差し止める。①実演で用いられていると表示される真の物質のかわりにモッ ク・アップが用いられているためその実演が現実の実証とならない場合に・,い かなる製品であれその製品のため紅なされる主張の現実の実証であると表示さ れる視覚にうったえる実演を提供するこ.とに.よってその製品を広告すること, l
㊥被審人が表示の虚偽性について知らなかったかその真実性に・ついて−疑ういか
(32)
なる理由ももたなかったということを立証する場合を除いて,当該シェービン グ・クリー・ムまたほ.その他のシェービング・クリームが実際紅はもたない品質
・長所を主張することに.よって当該製品を広告すること。
その後被番人はこの命令案紅対して異議を述べ,かつ命令の代替案を提出し
(88)
たが,委員会ほこれを受け入れなかった。もっとも委員会ほ異議を考慮して広
(34) 普代理店に.対する最終命令の内容を若干訂正した。それは次のようである。①
いかなる製品であれその売買の申込等に関連して.,④製品の売買を誘引するの 紅重要な,製品のためになされる主張の実際の立証であるとして大衆に.表示さ れるが,⑨実物の製品ではなくモック・アップの不開示紅よる使用のため紅現 実にほ本物の実演ではなくなりまたその主張の実際の立証とはならない実演を おこなうことによって,広告代理店が不公正または欺瞞的に.当該製品を広告す ることを差し止める。ただし,実演で用いられるその製品がモツク・アップで あるということを被番人が知らなかったか知るべき理由をもたなかったという
(35)
ことは抗弁となる。⑧当該のシェ・−ビング・クリ・−ムまたはその他のシェ−ピ
(31)Id.at1279−80.
(32)このフレーズが加わっている点で,広告代理店阻対する命令其の内容は広告主に.対 する命令轟の内容と異なっている。
(33)SeeColgateTPalmoliveCo.,Supr云note(29),at1280−81.
(34)Id.at1283.
(35)ただし香が加わっている点で広告代理店に対する差止命令は広告主に対する差止命 令と異なっている。
不当表示に対する広告代理店の費任 − 9 一
413
ング・クリ−ムの売買の申込等に.関連して,広告代理店が当該■製品の売買の誘 引に重要な点で湿潤特性その他の品質または長所を虚偽に表示することを差し 止める。ただし,被審人がその表示の虚偽陰について知らなかったか知るべき
(35\
理由をもたなかったということは抗弁となる。
控訴審に.おいて裁判所ほ命令が広すぜるとして再び事件を委員会に.差し戻し
(36) (a7) たが,広告代理店に対する命令紅関連して裁判所は次のように∴述べた。酌盈す
べき事情を立証する「負担」のいわゆる「威課」に対して被審人によって述べ られた激しい反対に.関して,我々は被審人が原則を誤解したということをつけ 加える。委員会は負担を課すというよりも被審人阻免責を許した。今や大企業
である広告代理店が,それが関与する行為に.対す・るとれこ.かく−・応にすぎない資 任さえ逃れることができるべきであるという理由を我々はみいだせない。
しかしその後,事件は最高裁判所紅移送された。そして最高裁判所は最終的 に,控訴裁判所の判決を破棄し,委員会の命令を執行する判決を下すよう求め
(38)
て事件を差し戻した。
(b)前述のブリストル・マイヤ−ズ事件審決に.おいて明らかに.されたこと は,最終的な権限・統制・指示が広告主にあれば広告代理店は連邦取引委員会 法のもとで責任を問われないということであった。こ.の考えほ,本件紅.おいて は,第一・次控訴審判決において,広告主が第一 次的な行為着であるの紅対して 広告代理店が第二次的な行為者にすぎないときに.は広一告代理店は欺瞞的な広告 に対する貴任を免れることができるというふうに解釈されている。この解釈 は;ブリストル・マイヤーズ事件審決の考えを全面的紅否定するものではない が,その実質的な先例的価値を奪うものであるように思われる。ブリストル・
マイヤ−ズ事件審決の考えを極端匿おしつめれば,広告代理店がどのように広 告を欺瞞的なものとしようとも最終的紅広告主が承認すれば広普代理店は何ら 責任を負わなくてもよいということ紅なるはずである。しかし本件における解
(鎚)拙稿・前掲(注16)153ぺ・−ジ参照。
(37)Colgate・PalmoliveCo.v.FTC,326F.2d517,523−24(1stCir.1963).
(38)FTC v・Colgate−PalmoliveCo・,380U.S.374,395(1965).
寛52巻 第5号
・−ヱ0− 414
釈のもとで埠,広告代理店が第一・次的な行為者すなわち主たるものではない紅 しても積極的に広告を発案した者である場合に.ほ広告代理店は欺瞞的な広告に 対して責任を負わなければならなくなるように思われるからである。
このように.本件は,ブリストル ・マイヤーズ事件審決の考えが適用される範 囲を広告代理店が第二次的な行為者に.すぎない場合のみ紅t唄定したという点で 評価に価するものであると思われる。より童極的な見方をすれば本件は,広告 代理店が積極的な発案者である場合にはその広告代理店に.も責任を負わせると いうことを明らか紅することに.よって広告代理店が責任を負う範囲を広げたと いうことができよう。したがって,本件で採用された基準すなわち,広告代理 店が第二次的な行為着であるか積極的な発案者であるかに.よって広告代理店紅 茸任を負わせるかどうかを決めるという基準は,ブリストル・マイヤーズ事件 審決の基準と比べれば広告代理店の責任を追及する上で†歩進んだものであっ たといえよう。
(3)カータ−・プロダクツ事件
(a)事衰は,エアゾ−ル・シェ−ビング・クリ−ム紅つナ、て甲比較広告が 虚偽であると問題紅されたものである。本件に.おいて広告代理店は,当該製品 の販売を促進するため紀聞題となった広告物を作成し公表したかどで広告主と
(β9) ならんで被番人とされた。
委員会は最終的に広告主のみならず広告代理店に対↓ても次のような命令を
(40〉
発した。シ′エーピング・クリ」−ムその他すべての製品の広告紅関連して被番人 が,①虚偽の実演を用いて競争製品の品質またほ特性をけなすこと,⑧いかな る製品であれそれと競争製品との本当の(genuine)または正確な比較が描写 されていないときにその製品が競争製品よりもすぐれているということが実演 によって正確紅描写されていると表示すること,を差し止める。また,当該の
シェービング・クリーームまたはその他のシェ−ビング・クリ・−ムの広告におい
(39)CarterProducts,Inc・,60F.T。C.782,783−84(1962)・
(40)Id.at797−98.
不当表示に対する広告代理店の薯任 一㌧L仁一
415
て.,被審人が,競争関係に.あるシューービング・クリームの湿潤保持特性を不実 表示したり,競争製品の品質または長所を虚偽に・けなすことを差し止める。
控訴審紅おいて被番人は,広告代理店に対しては命令が発せられるべきでほ
(41) ないと主張した。そ・の理由ほ,代理店は単なる代理人として広告主の注文に・そ
のまま応じたのであるからそれに.対して貴任があると判断されるべきではない ということに.ある。
(42)
それに.対して:裁判所ほ次のようにいう。他の者の意思を遂行する者がそ・の行 為の結果に対して責任があると判断されるぺきか。この質問に各え.るための適 切な基準となるのほ,広告代理店がその欺瞞に・実際紅関与した範囲であると我 々ほ考える。それは基本的に,委員会が認定すべき事実の問題である。広告代 理店がここで深くかかわりをもっていたということは記録から明らかである。
この代理店は何年にもわたり広告主のために.仕事をし,当該製品に・名前がつく 前に.その製品をどのように記述するかということを手がけた。広告代理店の代 表取締役ほ,その製品の広告に.おいて湿潤性を前面に・押し出したアブロ−チを するというアイデアを考案したのはその広告代理店であると証言した。代理店 はプログラムのモデイ−フに関して広告主と同意し,台本を書き,フイルム製 作者にその仕事を割り当てた。これらの事情のもとでほ,委員会がその裁鼻権 限を濫用したと我々ほいうことほできない。しかしながら,広告代理店に・対す る命令は当該の広告主の製品に・限って効力が及ばされるべきではないかと我々
(43)(44)
は考える。
(41)CarterProducts,Inc.v.FTC,323F.2d523,533(5thCir・1963)・
(42)Id.at534・
(43)また,裁判所は,委員会の命令ほ本当の物品に対する模擬物の代替に焦点をあわせ るのではなく,特性の不実表示に偲点をあわせるべきであるといい,その点も理由と
して命令を委員会紅差し戻した。具体的に.は,裁判所は,次のよう紅いう。第1に・,
委員会は,その命令から「本当の」(genuine)というこ.とばを削除しなければならな い。寛2に.,委員会は,テレビの技術的制約を公正に償い,まねられる物体の実際の 品質および特徴を視聴者に公正に.伝達する実演の正当性を認めなければならない。滞
3に.,まねられる物体の実際の品質またほ特徴をゆがめるモック・アップを禁止しな
ければならない。SeeId、at532.なお,こ・の点は本稿のテ・−マに・とっては重要では ない。詳しくは,ⅠⅠ(2)注(16)の諸文献を参照されたい。
(44)差戻を受けて委員会は,当該の広告主によって儲造され販売される製品の広告紅関
欝52巻 第5号 416
ーヱヱ−
(b)コルゲート・パー・モリ−プ事件における第一次控訴審判決は,広告代 理店の責任を問題とするに際して,それが広告主紅対して第二次的な行為着で あるかどうかを基準とした。その基準のもとでは,広告代理店が第二次的な行 為替であればその責任は問題とはならず,それが積極的な発案者であればその
責任が問題となるということになる。それに対して本件の控訴審判決ほ,広告代理店の青任を問題に・するに・際し て,それが欺瞞に実際紅関与した範囲を基準とした。この基準のもとでは,一広 告代理店が広告を欺瞞的とすることに実際に.関与した限りでその昔任が問われ るということに.なろう。そ・こでは,広告代理店が欺瞞的な広告を積極的軋発案
したか第二次的な行為者としてそれに関与したかほ本来的に・問題とほならな
い。その意慄で本件の基準は「欺瞞への実際の関与」という客観的側面に着目 した基準を採用して・おり,「第二次的な行為着か積極的な発案者か」という.主催 に着目したコルゲート・パ−モ.リープ事件の基準と比べて極立った特徴をもっ
ている。のみならず本件の基準による方が,コルゲート・パーモリL−プ事件の
基準によるよりも広告代理店が責任を負わなければならなくなる範囲が拡大さ れるという羊とに注意しなければならない。
(4)クイントン事件
(a)事案は,調剤であるのどあめの広告が虚偽であると問題に・さ′れたもの
(45) である。ここでも,広告代理店が当該調剤の販売促進のため紅広告物を作成し
公表したこと紅関心は向けられる。
審判開始決定は,広告主による広告の最終的承認があったにもかかわらず広
(46)
告主もその広告代理店もとちに眉任があるとの考えを前提としている。コンプ レイント・カウンセルは次のように小う。不実表示が起こることとなった広告 聖Lくみはもともと広告代一理店によって定式化されたので,たとえ広告主によ
達して広告代理店が不当表示をおこなうのを差し止めるように命令を修正した。See CaIter Products,Inc.,63F.T.C.1651(1963)小
(45)QuintonCo・,69F.T・C・526,526−30(1966)・
(46)以下,Id.at531・
不当表示に対する広告代理店の安住 −ヱβ−
417
って承認され牢としても広告主とならんで広告代理店に・対しても適切な措置が とられるぺきである。それに.対し広告代理店は次のせ .うに.断昔する。自己は,
自己が広告主といっしょに考案した広告を承認した広告主の代理人粧すぎない ので,ともかく自己に.対しては命令ほ発せられるべきではない。さらに広告代 理店は次のように主張する。広告主の要請で広告主のため紅広告代理店に・よっ て作成された広告ほ広告主に.よって広告代理店に.与えられた事実を前提として いた。
(47)
それに.対して聴聞宮は審決案に.おいて次のような事実認定をおこ.なった。当 該の広告代理店は,広告代理店の義務を定める広告主との協定紅従って広告代 理店としての通常のサ−ビスを提供することに.なっていた。その義務というの は,①広告主によって指定された製品およびその製品市場を研究すること,⑧ 新製品を販売する機会を検討すること。⑨新製品の開発・販売促進についての 助言をおこなうこと,④新製品やすでに.市場に.出ている製品に対する販売に.つ いての・一・般的な助言をおこなうこと,⑤広告主によって利用可能な予算の範囲 内で広告プランを作成すること,⑥広告物の割り付けをしコ−・ピ−せ作成する こと,⑦広告主によって要請されかつ承諾されたとき販売計画を作成するこ と,⑧広告主のための広告に関して広告主を代表して広告媒体と契約をするこ と(コマ−レヤル紅対する賓任が広告代理店に付与されているとき代理店はそ めようなコマ」−シヤルを作成することができる),である。そして広告代理店は 終始,これらの条件に.従って行為して.し、た。また,広告代理店は,広告主に.よ る事前の承認がなければ広告主を拘束するような行為をすることはできなかっ た。しかし,広告のアイデアを作り出すことほ広告代理店の機能であった。そ うでなければ広告主が広告代理店と関係をもつことの意味ほ.なぐなってしま う。それゆえ問題となっている広告は広告主と広告代理店とがいっしょ紅なっ て作ったものである。換言すれば次のように.いうことができる。広告主ほ終始,
広告代理店に.よって提出された計画を修正する権利やそのような計画に.関連す
(47)Id.at533一部.
第52巻 第5号
一 丁■ノ ー 418
る作業を中止するよう広告代理店に.指示する権利を留保していた。広告主ほま た,すべての広薯やそれを作成する過程でのすべての段階を承認する最終的な 権限や権利をもっぱらもっていた。それに対し広告代理店は終始,広告主の指 示とコントロールのもとに行為しており,広告主のため紅広告代理店に.よって 提出されるすべてのサ−ビスは終始,広告主の指示等に.従ったものであった。
しかし本件で問題となっているコマ−ジャルの作成の過程を通じて広告代理店 と広告主とはアイデアや観念の選択と開発において協同し,広告代理店は広告 主に.よって承認されたこれらのアイデアと観念の開発に従事した。本件で問題
となっているコマーシャルを含む広告主のための広告に.関する契約ほ.特紅広告 主の代理人として広告代理店に.よって結ばれたけれども,本人と代理人の関係 ほ,虚偽であることが明らかな広告の作成・拡布に関与した代理人の責任を減 じほしない。公益は,意図するかどうかにかかわらず欺瞞的なしくみに・特に寄 与するすべての関与者艦命ずることによって最もよく保護される。広告代理店 は本件で問題となっているコマ′−・ジャルを開発し最終的な形に.仕上げた。広告 の虚偽が起こると考えられるのは,コマ−ジャルの最終的な形からである。
(48)
そして聴聞官ほ次のような結論を下した。広告代理店ほ仁広告主の単なる代 理人であり,その承認なしに.ほ行為することができなかったと主張し,また,
当該製品に.関して広告主に.よって提出された事実についての広告代理店の理解 を反映している広告で広告主に.よって結果的に.審査され承認されたものを開始 したと主張した。しかしながら,広告代理店によって作成された広告は明らか にその製品の利点を大衆に提示するのみならず大衆の想像をかきたてるようも くろまれていた。病気の暑が期待をもっで良薬を求めるということはあたりま えのことである。このことは,病気の者が注意深く分析することなく,読むも のを楽観的に信じるように.その想像を刺激する。それゆえ,注意の欠如から欺 瞞が生じないよ了う確実にするために医薬品の効能を叙述するにあたり極度の配 慮がおこなわれるこ.とが重要であり公益紅合致する。暗示による不実表示が直 接の不実表示と同じく大衆の福利や健康に.とっで有害となりうる。本件におい
(48)Id.at544−45・・
不当表示に対する広望代理店の茸任 −ヱ5−
419
てほ公益は明らかに侵害されて小る。他こ.の点において被審人に不注意が ) あったとしても,それは,当該広告主のような極めて倫理的な製薬会社や医療 調査紅おける指導者に.対する大衆の確信をいかなる点でもそこ.なうものではな い。広告代理店によって広告主のために.作成された広告の審査紅あたり,広告 主が,広告の正確な文字的意味ほ別としてその暗示するところを充分に・考慮す ることなく広告の構成を不注意に承認したということは聴聞官に.ほ明らかであ る。すべての製造業者は,想像をひきおこすような広告が広告代理店に・よって 作られたとこ.ろでは客観的な分析を困難とする主観的な感覚を自己の製品に.対
してもっている。もちろん本件に.おいては,とれを惑める証拠はないけれども,
広告代理店が広告主のため紅また広告主の承認を得て拡布する広告に.虚偽を暗 示するところがないということを広告代理店自身が信じていたかもしれない。
それ紅もかかわらず,広告代理店ほ広告の作成における関与者であり,広告主 に.要求されるのと同一の注意が広告代理店に.も課せられなければならない。そ れゆえ,公益は,広告主とならんで広告代理店に.対しても命令が発せられるこ とを明らかに.要求している。
かくして聴聞宮は,広告主のみならず広告代理店に.対しても同一の差止命令
(50)
を発した。つまり,被番人が当該ののどあめその他類似の化学構造または特性 をもつ調剤の売買等に関して,①当該調剤が,④のどの組織湛.付着したのどの 汚染を起こす細菌を殺したり活動できないよう紅する,⑥激しいのどの痛みを 永続的紅または長時間軽減する,と表示する広告物を拡布すること,⑧当該調 剤の購入を誘引する目的のために①で禁止された表示を含む広告物を拡布する
ことを差し止めるというものである。
(51) 審決案に対して広告代理店ほ主として次のような主張をした。広告を作るに
あたり広告代理店は広告主紅よって提供された情報紅依拠して誠実紅.行為した
ので,広告払おける主張の作成への単なる関与は広告代理店に.責任を課すため
(49)「他方」以下の6又は委員会の最終命令に.おいては削除されている。SeeId.at562.
(50)Id.at546−47.
(51)Id..at558
第52巻 第5号 420 ーーヱ6−
の充分な根拠とはならない。
(52)
それに.対して委員会は次のように.いう。我々は代理店に・対して命令が発せら れるぺきであるとの聴聞官の結論紅同意するが,それは,代理店がただ「広告 の作成への関与者」であるという理由からだけではない。我々は,本件に‥おけ る記録から代理店が欺瞞に対して広告主と少なくとも同様私署任があるという ことが確証されていると信じる。さらぬ我々は,代理店が当該広告の欺瞞的な カについて知るべきであったと信じる。代理店ほ広告主に・よって提供された情 報に依拠したと主張するけれども,欺瞞ほ.この情報の虚偽から生じるのではな くて代理店によるその使用から生じる。また,広告が広告主軋よって承認され たということほ代理店に.とって抗弁とはならない。広告物が大衆をミスリード したり騙したりするカをもつかどうかを広告主に.もまして代理店は知るべきで あった。これは,代理店が専門性をもつ領域である。欺瞞的広告を作ったこと 紅対する代理店の責任は広告主に転嫁できるものではない。
最終的紅委員会ほ広告代理店に対して,それがのどあめその他類似の調剤の
(58) 売買に関して次のことをおこなうことを差し止める命令を発した。すなわら,
第1ほ.,その調剤その他類似の化学構造または特性をもつ調剤が,①のどの汚染 を起こす細菌に到達し,それを殺し,効果を上げるとか,のどの汚染の処琴に 効果がある,㊥軽い痛みの一時的な除去を超えて炎症を起こしたのどの痛みを 除去する,と表示する広告物を拡布することである。第2ほ,のどあめその他 類似の調剤の効能を不実表示する広告物を拡布することである。ただしここで は,当該広告物の虚偽性あるいは欺瞞的な力紅ついて広告代理店が知らなかっ
(54)
たか知るべき理由をもたなかったということは抗弁となる。第3は,当該調剤 の購入を誘引する目的で算1および第2で禁止された表示を含む広告物を拡布 することである。
(52)Id.at558−59・
(53)Id・at563・
(54)なお,この1文を除けば,広告代理店に対する差止命令と広告主に・対する差止命令 の実質的な内容は同じである。SeeId・at562−63・
不当表示に対する広告代理店の受任 − エアー
421
(5さ)
それに対して広告代理店は控訴審に.おいて次のように主張する。自己は広告 主が提供する情報に.誠実に.依拠することによって広告主の代理店として行為し た紅すぎない。しかも利用可能なあらゆる資料を用いて広告主の主張の正確性 を確証したので,その他に自己がなすことができたごとはない。それゆえ本質 的に,広告主の主張が虚偽であるとか欺瞞的であるということを自己が知って いたか知るべきであったと委員会が認定することができた実質的証拠はない。
したがって,自己た対してほ,委員会の命令は破棄され,審判開始決定は棄却 されるぺきである。
(56) 控訴裁判所は次のように小う。この種の事件軋おいて差止命令が広告氏理店
に対して発せられるべきであるかどうかに関して決定を下すに・あたっての適切 な基準は,広告代理店が実際に.欺瞞に関与した範囲である。これほ本質的に・委 員会に.とっての事実の問題である。そのような欺瞞への関与者であると判示さ れるためには代理店は広告の虚偽性に.ついて知らなければならずあるいは知る べき理由をもたなければならない。ところで,本件の記録に・よれば広告代理店 が積極的軋欺瞞紅関与したことほ明らかであり,その点に関する委員会の事実 認定は実質的証拠によって一文持されている。しかも広告代理店が広告紅おける 主張の虚偽性を知っていたか知るべきであったという委員会の結論を支持する 実質的証鞄が記録紅ある。したがって委員会の命令は認容され執行される。
(b)本件では,カ一夕ー・プロダクツ事件における控訴審判決の考え,す なわち,広告代理店の責任を問題にするに・際してはそれが欺瞞に実際に関与し た範囲を基準とするという考.えを控訴審判決が再確認している。しかも委員会 審決は,「欺瞞への実際の関与」の中味を豊富化し,「広告代理店の専門領域」
という概念を導入している。ここに・本件の大きな意義をみいだすことができよ う。
(55)Doherty,Clifford,Steers&Shenfield,Inc・V・FTC,392F・2d921,928
(6tb CiI.1968)
(56)Id.at928−29.
算52巻 寛5号 422
− ムS−一
ⅠⅠⅠ責任についての類型的考察
以上,不当な広告紅対する広告代理店の責任を展開したと思われる主要な事 件を4つ詳しく紹介してきた。そこ.から,一・番最初に述べたブリストル・マイ ヤ一−ズ事件における原則,すなわち,最終的な権限・統制・指示が広告主にあ
れは広告代理店は連邦取引委員会法のもとで資任を問われないという鳳則はも
ほ.や広告代理店の責任という争点軋関する支配的な権威ではないと結論づける (57) l
ことができる。そして現在ではそれに.かわり,か一夕」−・プロダクツ事件やク イン1ン事件で展開された原則,すなわち,広告代理店が広告を欺瞞的とする ことに実際に.関与した限りでその責任が問われるという原則が広告代理店の晋
任を考える上で支配的な権威となっているよ.うに思われる。もっとも,広告代理店が広告の作成に関与する態様は種々であり,またその 程度も多様である。したがって広告代理店の者任はそれが果たす役割や広告メ
(58)
ッセーージの型によって異なってくる。しかし本稿でほ広告主と広告代理店との 関係を基幹的なものに.限って検討することに・よって,不当表示に対する広告代
理店の責任を類型的に明らかにしたい。(59) それに.際してはまず,広告主の支配領域と広告代理店の支配領域とを明らか
に.しよう。続いて,広告主が広告代理店把捉供する情報に問題がある場合と広 告代理店が選択する伝達方法紅問題がある場合に・分けて,広告代理店の責任を 考えてみたい。そして最後紅,広告代理店に対する排除措置の内容を明らかに
したい。
(1)広告主の支配領域と広告代理店の支配領域
広告が欺瞞的であるということを知っていたかどうかにかかわらず広告主は
(57)SeeMcLaughlin,Jr。&White,Jr・,SuPranOte(7),at591
(58)以上,Id.at592 SeealsoSchoepflin,SupranOte(5),at123−24・
(59)本稿でほ広告主と広告代理店との基幹的な関係に対象を限定しているのでこの表現 をとっているが,第三者の提供する情報などをも含む広告代理店の支配領域以外の領
域というふうに考えてもよい。
不当表示に.対する広債代理店の茸任 ーーJ.9−
423
それに.対して責任を負わなければならないということはすでに確立された原則
(60)
である。その広告を広告主自らが作成した場合であっても,広告代理店に作成 させた場合であって.も同じである。後者の場合,広告主が広告代理店に提供し た情報に問題ほなく,広告代理店が速んだ伝達方法に問題があった場合におい
てもそうである。つまり,広告主ほその危険に‥おいて広告をしていると判断さ れるのである。
それに対し,広告代理店の方からみた場合の評価は異なって.くる。そもそも 広告代理店が用いられるのは,広告主の製品に.ついての情報を適確にかつ効果 的に消費者に伝達する方法に関して−それが専門家であるからである。それほ,
広告主の提供する情報の轟実性を確証するためではない。したがって,広告主 が提供する情報といったようなものは本来的紅広告主の支配領域に.あるという ことができ,広告代理店の支配儀域にあるということはできないであろう。そ れに.対し,広告代理店が広告主から受けた情報を消費者に.伝達するために.選ぶ 伝達方法といったものほ広告代理店の支配領域にあるということができる。
(2)広告主が広告代理店虹技供する情報に問題がある場合
広告代理店ほ普通,広告主が提供した,製品に.関する情報に.基づいて広告キ
(似)
ヤンぺ−・ンを作成しでいる。その際広告代理店は広告主が提供した情報をその まま受け入れていいのであろうか。それともそれが作成する広告紅入れる前に その情報について溜虫自に瀾査をおこな・つでその正確性を確かめなければならな いのであろうか。この点,広告代理店は広告主に.由来する情報の正確性を認証 する茸任を負っていないということができる 。その理由は次の通りである。ま ず大衆は,広告代理店が広告の正確性を認証した結果として広告に応じて行為 するのではない。つま▲り,広告代理店ほ広普上はその名前を出さない伝達者に すぎない。しかも,たとえ広告主が提供する情報の正確性を独自紅認証しよう
(60)さしあたり,拙稿「連邦取引委員会による欺瞞的広告の規制(1)」法学雑誌23巻4 号588,589ぺ−汐(1977年)参照。
(61)以下,McLaugh1in,Jr、&White,Jr.,Supra nOte(7),at592−93
第52巻 滞5号
ー20・− 424
としても,広告代理店は広告の対象である製品すべて−紅ついて充分な技術的知 識をもっていないのが普通である。また,広告主はそれが提供する情報の正確 性を広告代理店が独自に.認証したこ.とに.対してト支払をしようとしないというこ
とは確実である。
したがって∴以上のことから,広告代理店ほ広告主が提供する情報の正確性を
(62)
独自紅認証する必要ほないということが1できる。しかしこのことから,広告主 が提供する情報の方に虚偽がある場合にほすべて,広薯代理店の責任は問題と ならないという結論を導くことはできない。広告代理店がテストをするまでも なく広告主の提供する情報に㌧虚偽があるということを現実に.知卜っていたか知る
(63) べきであった場合には,やはり広告代理店ほ責任を負わなければならない。広
告代理店が広告主の提供する情報紅・虚偽があるということを知らなかったか知 るべき理由をもたなかった場合にのみ,広告代理店の責任は免除される。
(3)広告代理店が選択する伝達方法紅問題がある場合
広告主の製品を説明するために広告代琴店が選ぷ方法から欺瞞が生じる場
(61)
合,広告代理店はその欺瞞に.対して二責任を負うべきであろうか。この点,たと えばミスリ」−ディングな実演がおこなわれたとすると,それが広告主に.よって
(62)この点,・連邦取引委員会ほ,広告主張を作成するにあたり依拠する情報を独自にチ
ェックする義務が広告代理店把属せられでいなければ法は知らないことを重んじるで あろうという。ITTContinentalBakingCo・,Inc・,3Trade Reg.Rep.§20464,
at20385(1973).
(63)なお,不適切な素材が広告主に.由来し,かつ,広告代理店が不適切である旨の助言 をした紅もかかわらずその使用を広告主が命じたときにも広告代翠店は賓任を負わな ければならないのかという問題がある。それに対してごは,その事実を広告代理店が立 証するこ辛ができるならその資任は問われないであろうという一応の解答をすること ができる。しかしその立証ほ必ずしも容易とはいえない。$ee McLaugh1in,Jr.&
Wユ1ite,れ,Sup工・a nOte(7),at594−95小 あるいは,広告主が提供した情報が不適 切である旨の助言を広告代理店がした場合,広告主は他の広告代理店と契約しはしな いかという問題がある。広告主と広告代理店との協力がなけれは広告代理店の箕任の みを追及しても不当表示規制ほ不充分であるということができる。See Schoepflin,
Sup工anOte(5),at171−72.
(64)以下,McLaughlin,Jr..&White,Jr.,S11pra nOte(7),at594.
ー・2ユー 不当表示に対する広告代理店の茸任
425
(65) 工夫されたものであるということが立証されない限り,貴任は広告代理店に・あ
ると推定されることになる。というのほ,広告主のメッセ・−ジを最も効果的な 方法で伝達するための手段を工夫するのは広告代理店の伝統的な機能の1つで あるからである。そこで,広告代理店が選択する伝達方法に周題がある場合,
それに射する賓任を広告代理店が免れることができるのは稀であるということ ができよう。
(4)排除措置の内容
広告主紅対する排除措置と広普代理店に対する排除措置の内容は,1点を除
(68.1
けば基本的に.同じである。その1点というのは,広告が欺瞞的であるというこ とを広告代理店が知らなかったか知るべき理由をもたなかったときに・は広告代 理店に.対して.は差止命令が及ばないということである。この条項が含まれてい
る点で広告代理店に対する命令ほ広告主に・対する命令と比べて極立った特徴を もっている。
もっとも,この免除条項が通用するのは広告主の支配債域で生じたことに・対 しでであり,広告代理店の支配債域で生じたことに対しては原則として通用し ない。というのは,広告代理店の支配儀域で生じた欺瞞に・ついてほ広告代痙店 は知っていたか知るべき理由をもっていたと考えられるからである。したがっ て,広告代理店に対する排除措置では通常,広告主の支配領域紅あることがら
(65)この点,コルグ−トパ−モリープ事件に・おける第二次審決においては,実演で用 いられるその製品がモツク・アップであるということを広告代理店が知らなかったか
知るべき理由を卑たなかったというと・とは抗弁に・なるというこ・とが認められている0
前述ⅠⅠ(2)注(35)ならび庭木叉参照。
(66)なお,広普代理店に対する命令は,広告主のみ阻対す■る命令よりも,総体としての 全国広告のほるかに大きな部分をコントロ・−ルナることができる。というのは,広告 主のみに対する命令が広告主の製品に関してのみその慣行を禁じるの紅対し,広告代 理店に.対する命令は.,どのような製造業者であれその製品の販売促進にあたり広告代 理店が問産となった技術を用いるのを禁止することができるからである。もっとも,
広告代理店にそういった命令が発せられる結果,広告代理店が小心となり進取的な広 告を作成しなくなるというおそれから,その命令に・従う広告代理店との取引を広告 主がやめるように.なるというおそれもある。See Developmentsinthe Law,Supra note(15),atlO70−71∴注(63)をも参照。
−22− 滞52巻 第5号 426
について欺瞞があったということを広告代理店が知らなかったか知るべき理由 をもたなかった場合には差止命令が及ばない旨の条項がおかれることになる。
ⅠⅤ むすび
以上,連邦取引委員会に.よる規制をてがかりとして不当表示に対する広告代 理店の責任について考えてきた。結論的に.いえばアメリカ合衆国にあっては次 の場合,広告代理店の行為は問題となるよう紅思われる。すなわち,第1ほ,広 告主が広告代理店に提供する情報等紅虚偽がある場合で,広告代理店がそのこ
とに.ついて知っていたか知るべきであったにもかかわらずそのままその膚報を 用いて∴欺瞞的な広告を作成した場合である。策2は,広告主の提供する情報等 に二.は虚偽はないにもかかわらず,広告代理店が選択する伝達方法から欺瞞が生 じる場合である。これらの場合,広告代理店は責任を負わなければならない。
そして,そういった欺瞞的な広告を作成し公表した広告代理店紅対して−ほ差止 命令が発せられることに.なる。もっとも,その差止命令ほ,広告主に・対する差 止命令とは違って,広告が欺瞞的であるということを広告代理店が知らなかっ たか知るべき理由をもたなかったときには広告代理店紅対してほ効力が及ばな い旨の免責条項をおいてt、る。
それに対し,日本の景表法上は,こういった広告代理店の行為さえ.も問題に
(67)
するととは.できない。しかし,今日広告代理店が果たしてl、る役割を考えてみ れば,立法的解決をほかることに・よって,こういった広告代理店の行為を規制 することが是非とも必要であるように・思われる。あるいは自主規制に.よって広 告代理店の行為の是正を模索すべきではないかと思われる。いずれにせよその 瞭,アメリカ合衆国におけるこれら本稿で紹介した考え方が参考となろう。
(1979・9・30)
(67)前述Ⅰ注(2)ならび庭本文参照。
〔注(4)の補注〕公正取引委員会は,1979年9月20日,宅地建物取引の表示に.関する公正 競争規約を全部変更し,新たに.不動産の表示紅関する公正競争規約を認定した。その第
3条に広告会社等の貴務紅ついての同趣旨の規定がある。