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東日本大震災被災地域住民のこころの健康に関する研究

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Academic year: 2021

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東日本大震災被災地域住民のこころの健康に関する研究

― 佂石市民の精神的健康の実態把握とその支援(2 年目) ―

中谷敬明・山田幸恵1)・桐田隆博

Ⅰ.研究目的

 東日本大震災では岩手・宮城・福島の三県における 津波被害が甚大であった。多くの人命が失われ、多く の家屋が流出し、地域自体が流されて、人々は見慣れ た故郷を失った。これらの被害は目に見える損失だけ ではなく、人々のこころに大きな影響を及ぼした。そ の影響としては posttraumatic stress disorder (PTSD)

があげられるが、トラウマ被害後の影響は必ずしも PTSD に代表される精神障害だけでない。近親者との 死別による悲嘆や仮設住宅への居住によるストレス、

地域社会の変化によるストレス、仕事が見つからない ことによるストレスなど、被災の有無を問わず被災地 域に居住するすべての住民に多岐にわって影響する。

 本研究では東日本大震災が人々のメンタルヘルスに 及ぼした影響を、岩手県佂石市に居住する市民を対象 として、トラウマティック・ストレス、近親者との死 別による悲嘆、抑うつ、行動の変化といった観点から 明らかにする健康調査を継続的に実施し、その経過か ら適切な支援について提案することを目的とした。

Ⅱ.研究方法

 2013 年 9 月 1 日現在佂石市に住民票のある市民か ら、年齢・地域をマッチングした 20 歳から 65 歳まで の男性 2000 名・女性 2000 名の計 4000 名を対象とし た。調査は郵送法にて 2013 年 9 月から 10 月に実施し た。

 調査票は①性別、年齢、居住形態等の基礎統計資料、

②東日本大震災による被災状況、③震災時前後の就業 状況および経済状況、④心身の健康状態、睡眠、食欲 の状況、および飲酒の状況、⑤震災による死別の状況、

⑥ BGQ(複雑性悲嘆のスクリーニングに利用される ものである。)、⑦ K6(気分障害と不安障害のスクリー ニングに使われるもので、厚生労働省のメンタルヘル ス調査等でも使用される。12/13 点をカットオフポイ ントとした(川上、2006))、⑧地域での人間関係に関 する質問項目から構成された。本調査は、岩手県立大 学研究倫理審査委員会にて審査を受け承認された。

Ⅲ.結果

 有効回答は 1,222 名(男性 517 名、女性 703 名、無

回答 2 名)であった(回答率 30.6%)。回答が多かっ た年代は 50 代と 60 代で 57.7% であった。

 現在の暮らし向きは、全体の 39.8% が経済的に「苦 しい」と感じていた(昨年度  37.5%)。自分が健康だ と「 思 わ な い 」23.46%、「 ど ち ら と も い え な い 」 31.6% であり(昨年度は項目が異なり、現在の健康状 態は「あまりよくない」23.0%、「よくない」5.2%)、

普段の睡眠で十分な休養がとれていない者が 23.8%

(昨年度は項目が異なり、何らかの睡眠に関する問題 を抱えているものが 45.8%)であった。週に 5 回以上 飲酒をするものが 24.5%(昨年度  21.8%)おり、毎日 の飲酒量が 4 合以上のものが 4.6%(昨年度  2.0%)い た。今回の震災で身近な人を亡くした人は 34.7%(昨 年度  52.8%)、そのうちの 7.2%(昨年度  8.6%)が強 い悲嘆を感じていた。また、7.8%(昨年度  5.2%)に 気分障害や不安障害に相当する心理的苦痛を感じてい ることが疑われた。

 年代群別では、50 代〜60 代に「現在の暮らし向き」

を苦しく感じている割合が、30 代と 40 代に睡眠で十 分な休養がとれない割合が、40 代〜60 代に多量飲酒 者(週 4 日以上、1 日 2 合以上摂取する人)の割合が 高く示されていた。昨年度調査結果と比較すると、強 い悲嘆を感じている人の割合が減ったものの、飲酒回 数や毎日の飲酒量、気分障害や不安障害に相当する心 理的苦痛を感じているものの割合が増加していた。ま た、各年代別で示された傾向が異なるが、30 代から 40 代に睡眠で十分に休養がとれない者や多量飲酒の 割合が高かった。

Ⅳ.研究の成果

 諸事情により昨年度の調査項目のいくつかを変更し て実施したが、被災後 30 ヶ月時点でも心身の健康状 態が思わしくない市民も多く、特に、40 代の働き盛 りの年代に、依然として、多量飲酒や精神的健康被害 が疑われる人々の多いことが判明した。引き続き、行 政による住民への定期的な心身の健康調査実施とその 後のフォローと産業領域など職域による支援を展開し ていくことが必要と考えられた。本研究成果は佂石市 に報告し、市保健師による地域精神保健活動の基礎資 料として活用された。

1)東海大学文学部

県立大社会福祉学部.indb 123 16/03/18 8:56

参照

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