全国小児科外来初診の呼吸器感染症患児より分離されたStreptococcus pneumoniae,Haemophilus influenzae の検討(2002〜2003 年)
―抗菌薬前投与のない児の鼻咽頭培養についての検討―
1)
北里大学医学部感染症学,
2)新潟県立新発田病院小児科,
3)上越総合病院小児科
大 石 智 洋
1)2)3)砂 川 慶 介
1)(平成 19 年 5 月 8 日受付)
(平成 19 年 6 月 19 日受理)
Key words : child, respiratory tract infection(RTI),epidemiology, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae
要 旨
以前,2002 年 11 月〜2003 年 6 月に,日本全国 20 施設の小児科外来における初診小児呼吸器感染症児よ り 分 離 さ れ た Streptococcus pneumoniae(468 株)お よ び Haemophilus influenzae(557 株)の う ち,PRSP
(penicillin-resistant S. pneumoniae)が 27%,BLNAR(β-lactamase-nonproducing ampicillin resistant H. in- fluenzae)が 35% と報告した.
そこで,今回,同じ調査において,肺炎,気管支炎,中耳炎に罹患した,抗菌薬前投与のない鼻咽頭培養 施行症例 558 例につき検討を加えた.
S. pneumoniaeおよび H. influenzaeの検出率は,経鼻的採取と経口的採取との比較,肺炎と気管支炎と中
耳炎との比較のいずれにおいても有意差を認めなかったが,4 歳以下の症例では 5 歳以上に比べて S. pneu-
moniaeのみ有意に検出率が高い結果となった.また,集団保育のある児では,ない児に比べて H. influenzae
の検出率が有意に高い結果となった.分離された S. pneumoniae,H. influenzaeに占める PRSP,BLNAR の 割合では,いずれの項目でも有意差を認めなかった.
以上の結果より,呼吸器感染症罹患児の鼻咽頭において,低年齢ほど S. pneumoniaeが検出されやすく,集 団保育がある場合に,H. influenzaeが検出されやすくなると考えられるが,耐性菌の検出は,抗菌薬など今 回検討しなかった別の要因が関係していると思われた.
〔感染症誌 81:449〜455,2007〕
序 文
Streptococcus pneumoniaeお よ び Haemophilus influ- enzaeは,小児の呼吸器感染症,特に肺炎,気管支炎,
中耳炎の主要な原因菌であるが
1),近年その耐性化が 問題とされている.以前,2002 年 11 月から 2003 年 6 月の期間,日本全国 20 施設の小児科外来の初診小児 呼吸器感染症児に対する調査では, S. pneumoniae (468 株)お よ び H. influenzae(557 株)の う ち,PRSP
( penicillin-resistant S. pneumoniae) や BLNAR ( β- lactamase-nonproducing ampicillin resistant H. influ- enzae)の割合が,それぞれ 27% および 35% であっ
たと報告した
2).
この調査において,年齢のほか,検体採取方法,疾 患名,集団保育の有無等の背景調査が同時に行われた.
今 回,S. pneumoniaeや H. influenzaeの 検 出 と,関 係すると思われる背景につき解析したので報告する.
対象と方法
1.調査対象
2002 年 11 月から 2003 年 6 月の定められた期間(第 1 回 2002 年 11 月 24〜30 日,第 2 回 2003 年 1 月 19〜
26 日,第 3 回 2003 年 3 月 9〜15 日,第 4 回 2003 年 6 月 15〜21 日)に,全 国 20 施 設(病 院 10 施 設,開 業医 10 施設)の小児科外来を受診(初診)し,肺炎,
気管支炎,中耳炎と診断され,親または本人より本研
原 著別刷請求先:(〒957―8588)新潟県新発田市本町 1―2―8
新潟県立新発田病院小児科 大石 智洋
Fi g. 1 Age di s t r i but i on of pedi at r i c pat i ent s wi t h r es pi r at or y i nf ec t i ons
Patient
Total: 558
Age
Average age: 2.32 years 0
160 140 120 100 80 60 40 20
0 1 2 3 4 5 6 7≦
究への参加に対する同意の得られた児(16 歳未満)の うち,受診時に抗菌薬の前投与がなく,かつ鼻咽頭培 養が施行された 558 例を対象とした.検体の採取方法 は,小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2004
3)で示さ れている鼻咽頭培養の経口的採取と経鼻的採取に準じ た.耐性の判定基準は CLSI(旧 NCCLS)の M100-S 13
4)に準じた.すなわち, S. pneumoniaeは,benzylpeni- cillin(PCG)の MIC が 0.06 µg! mL以 下 を penicillin- susceptible S. pneumoniae(PSSP),0.12〜1.0 µg! mL を penicillin-intermediate resistant S. pneumoniae
(PISP),2.0 µ g ! mL以上を penicillin-resistant S. pneu- moniae(PRSP)と し た.ま た,H. influenzaeは,β―
ラクタマーゼの産生をニトロセフィン法により確認 し,非産生株のうち,ampicillin(ABPC)に 対 す る MIC が 1.0 µ g ! mL以 下 を BLNAS( β -lactamase- negative ampicillin-susceptible H. influenzae),2.0 µ g
! mL以上を BLNAR(β-lactamase-negative ampicillin- resistant H. influenzae)と し た.な お,CLSI(旧 NCCLS)の M100-S13
4)では H. influenzaeのうち ABPC に対する MIC が 2.0 µ g ! mLの株は intermediate とし ているが,今回は BLNAR に含めた.
2.解析方法
上記対象に対し,年齢,疾患,集団保育の有無を考 慮し,S. pneumoniaeおよび H. influenzaeの検出率と,
検出された S. pneumoniaeおよび H. influenzaeのうち 耐性菌の占める割合を比較検討した.
統計学的解析は χ
2検定を用い,p<0.05 を有意差あ りとした.
成 績
1.鼻咽頭採取例の年齢分布(Fig. 1)
対象となった児の年齢は,平均 2.32 歳で,1 歳代つ いで 2 歳代が多く,1 歳代と 2 歳代で全体の 54.1% を 占めていた.
2.年齢別の S. pneumoniaeおよび H. influenzaeの検 出率(Fig. 2,Table 1)
S. pneumoniaeの検出率を 4 歳以下と 5 歳以上で比 較した場 合,4 歳 以 下 28.4%,5 歳 以 上 13.3% と,4 歳以下の群で有意に検出率が高かった.
一方,H. influenzaeの検出率は,同様に 5 歳以上の 群でやや低い傾向はみられるが,4 歳以下と 5 歳以上 で検出率の有意差はみられなかった.
3.経鼻的採取と経口的採取の比較(Table 2)
経鼻的採取 331 例と経口的採取 227 例との比較では S. pneumoniaeおよび H. influenzaeの検出率における 有意差は認められず,検出された S. pneumoniaeのう ち PRSP の占める割合,検出された H. influenzaeのう ち BLNAR の占める割合についても有意差は認めら れなかった.なお,比較した項目間での年齢による有
意差も認められなかった.
4.疾患別(肺炎,気管支炎,中耳炎)の比較(Ta- ble 3)
肺炎(81 例),気管支炎(361 例),中耳炎(116 例)
の間での比較では, S. pneumoniaeの検出率, H. influen- zaeの検出率,検出された S. pneumoniaeのうち PRSP の 占 め る 割 合,検 出 さ れ た H. influenzaeの う ち BLNAR の占める割合,いずれの項目においても有意 差を認めなかった.なお,比較した項目間での年齢に よる有意差は認めなかった.
5.集団保育の有無別の比較(Table 4,5)
本人および兄弟いずれも集団保育を受けていない 149 例と,本人か兄弟のいずれが集団保育を受けてい る 409 例との比較では,S. pneumoniaeの検出率に有 意差を認めなかったが,H. influenzaeの検出率では集 団保育のない例で 14.8%,集団保育のある例で 25.7%
と,集団保育のある例で有意に H. influenzaeの検出率 が高い結果となった.
検出された S. pneumoniaeのうち PRSP の占める割 合,検出された H. influenzaeのうち BLNAR の占める 割合については,いずれも有意差を認めなかった.
また,S. pneumoniaeの検出率が有意に高かった 4 歳以下の群において,同様に集団保育の有無による比 較を行ったところ,H. influenzaeの検出率が集団保育 のある児の群で有意に高く,その他 S. pneumoniaeの 検出率,PRSP の占める割合,BLNAR の占める割合 についてはいずれも集団保育の有無による有意差を認 めなかった.
考 察
今回対象とした鼻咽頭培養は,成人と異なり喀痰の 採取が困難な小児では,呼吸器感染症の診断に広く用 いられている.
したがって,小児の鼻咽頭培養に関する論文は過去
Fi g. 2 St r e pt o c o c c us pne umo ni a e and Ha e mo phi l us i nf l ue nz a e det ec t i on by age
Streptococcus pneumoniae
(%)Haemophilus influenzae
(%)35 30 25 20 15 10 5 0
Age (years)
Age (years)
0 1 2 3 4 5 6 7≦
0 1 2 3 4 5 6 7≦
35 30 25 20 15 10 5 0
Tabl e 1 Compar i s on of St r e pt o c o c c us pne umo ni a e and Ha e mo phi l us i nf l ue nz a e det ec t i on i n pedi at r i c pat i ent s< 4
_year s ol d and> 5
_year s ol d
χ2test
>_
5 yearsold
<_
4 yearsold Nasopharyngealspecimens
(558 cases)
p< 0.01 13.3%
(10/75) 28.4%
(137/483) StreptococcuspneumoniaeDetection
N.S.
16.0%
(12/75) 24.2%
(117/483) HaemophilusinfluenzaeDetection
にも存在するが,全国規模で,かつ抗菌薬前投与のな い症例のみを集めて解析を行った研究は,我々が調べ た限り,過去には例を見ない.
S. pneumoniaeおよび H. influenzaeの検出率 に 関 し て,年齢の要因では,過去に,気道炎症状により入院 した患児の鼻咽頭培養を施行した夏目らの報告
5)では,
4 歳未満では,4 歳以上に比べ,S. pneumoniaeの検出 率が高いが,H. influenzaeの検出率は 4 歳未満と 4 歳 以上で差がない結果であり,年齢区分に若干の違いは あるが,我々の報告と同様である.
S. pneumoniaeの検出率が低年齢群に高い理由のひ とつとして,肺炎球菌に対する特異 IgG2 抗体価産生 能力が,低年齢では不十分であることがあげられる
5).
一方,H. influenzaeに関しては,夾膜型菌である H.
influenzae type b(Hib)によって引き起こされる髄 膜炎は,4 カ月〜5 歳に多く分布し,特に 2 歳未満に 多いとの報告があるが
7),気道感染については,Hib の頻度は 7〜8% 程度と報告されている
2).気道感染の
多くを占めると思われる無夾膜型菌による抗体産生に 関しては未知の部分が多く,今回の結果に対する理由 は不明である.しかし,先に述べた夏目らの報告
5)で は,10 歳以上では H. influenzaeの検出率が急激に減 少しており,他に,榎谷らの健康小児を対象にした報 告では,小学 5 年生の児では小学 3 年生以下の児に比 べ,H. influenzaeの検出率が明らかに減少していると されている
9).我々の調査では学童の対象数が僅少で あったため検討できなかったが,小学校高学年以上で
の H. influenzaeの検出率が低くなる可能性はあると考
えている.
鼻咽頭培養の経鼻的採取と経口的採取との比較に関 しては,我々のように大規模な調査により比較した報 告は,われわれが調査した限りでは見当たらなかった.
多少なりとも口腔内常在菌の混入が予想され,菌の検
出に際し,より多くの労力を要する可能性のある経口
的採取よりも,鼻道に沿って挿入していくため検体採
取のスワブが確実に鼻咽頭に到達する経鼻的採取が適
Tabl e 2 Compar i s on of St r e pt o c o c c us pne umo ni a e and Ha e mo phi l us i nf l ue nz a e det ec - t i on bet ween nas al and or al s pec i mens
χ2
t es t N. S.
Or al ( 227 c as es ) 2. 38±1. 92 Nas al
( 331 c as es ) 2. 34±2. 01 Nas ophar yngeal s pec i mens
( 558 c as es ) Age ( mean±S. E. )
N. S.
N. S.
24. 7%
( 56/227) 1. 98±1. 43 27. 5%
( 91/331) 1. 98±1. 64
StreptococcuspneumoniaeDet ec t i on
Age
N. S.
N. S.
23. 8%
( 5, 354/227) 2. 25±1. 75 23. 0%
( 76/331) 2. 22±1. 73
HaemophilusinfluenzaeDet ec t i on
Age
N. S.
N. S.
28. 6%
( 16/56) 2. 38±1. 82 31. 9%
( 29/91) 2. 10±1. 57 Per c ent age of
PRSP
*1Age
N. S N. S.
46. 3%
( 25/54) 2. 08±1. 41 35. 5%
( 27/76) 2. 48±1. 97 Per c ent age of
BLNAR
*2Age
*1
Peni c i l l i n- r es i s t ant
Streptococcuspneumoniae*2β
- l ac t amas e- nonpr oduc i ng ampi c i l l i n r es i s t ant
HaemophilusinfluenzaeTabl e 3 St r e pt o c o c c us pne umo ni a e and Ha e mo phi l us i nf l ue nz a e det ec t i on and per c ent age of PRSP
*1, and BLNAR
*2by di s eas e
χ2
t es t ( 2×3) p< 0. 01 Ot i t i s medi a
( 116 c as es ) 1. 79±1. 50 Br onc hi t i s
( 361 c as es ) 2. 46±2. 04 Pneumoni a
( 81 c as es ) 2. 72±2. 16 Nas ophar yngeal s pec i mens
( 558 c as es ) Age ( mean±S. E. )
N. S.
N. S.
32. 8%
( 3, 831/116) 1. 84±1. 46 25. 2%
( 91/361) 2. 08±1. 62 22. 2%
( 18/81) 1. 78±1. 48
StreptococcuspneumoniaeDet ec t i on
Age
N. S p< 0. 1 23. 3%
( 27/116) 1. 56±1. 15 22. 4%
( 81/361) 2. 36±1. 78 25. 9%
( 21/81) 2. 62±1. 99
HaemophilusinfluenzaeDet ec t i on
Age
N. S.
N. S.
31. 6%
( 12/38) 1. 92±1. 68 28. 6%
( 26/91) 2. 15±1. 71 38. 9%
( 7/18) 2. 86±1. 35 Per c ent age of
PRSP
*1Age
N. S.
N. S.
37. 0%
( 10/27) 1. 90±1. 20 42. 0%
( 34/81) 2. 41±1. 88 38. 1%
( 8/21) 2. 25±1. 67 Per c ent age of
BLNAR
*2Age
*1
Peni c i l l i n- r es i s t ant
Streptococcuspneumoniae*2β
- l ac t amas e- nonpr oduc i ng ampi c i l l i n r es i s t ant
Haemophilusinfluenzaeしていると思われるが,経鼻的採取は経口的採取に比 べ,対象となる患児に与える苦痛が大きいと思われる.
今回の調査では双方の検出率に有意な差を認めず,
状況に応じた使い分けが可能であると考えられた.
疾患別の比較に関しては,遠藤らは,3 歳未満の急 性気道感染罹患児を,上気道炎,肺炎および気管支炎,
中耳炎合併の 3 群に分け比較しており,中耳炎合併例 では,肺炎および気管支炎例に比べ S. pneumoniaeの 検出率が高かったと報告している
10).我々の検討では,
上気道炎の対象数が僅少であったため,上気道炎との 比較を行えなかったが,肺炎および気管支炎例と中耳 炎合併例とを比較した我々の結果と,遠藤らの結果と の違いについては,遠藤らは,抗菌薬の前投与があっ た群より検出された PSSP もすべてマクロライド耐性 菌であったと記されていることから,我々の検討とは 異なり,抗菌薬の前投与のある症例も対象に含めてい
た点の関与が考えられる.
集団保育の有無による比較に関しては,先に述べた 遠藤らの報告では,3 歳未満の急性気道感染症罹患児 における S. pneumoniae と H. influenzaeの検出率は,本 人および兄弟が集団保育をうけている児の方が,非保 育園児に比べいずれも高率であったとされており
10), 伊藤らは,1 歳 6 カ月児健診児において, S. pneumoniae の検出率は本人および兄弟が集団保育をうけている児 の方が非保育園児に比べ高率で
11),H. influenzaeの検 出率は,0〜3 歳の集団保育児の方が,1 歳 6 カ月児健 診児よりも高率であった
12)と報告している.いずれの 報告も,我々の検討では 有 意 差 を 認 め な か っ た S.
pneumoniae の検出率においても有意差を認めている.
秋田らは,都内の複数の保育園について S. pneumo-
niae および H. influenzaeの蔓延状況を調べ,保育園に
より耐性菌の割合が異なっていること,同じ保育園で
Tabl e 4 St r e pt o c o c c us pne umo ni a e and Ha e mo phi l us i nf l ue nz a e det ec t i onand per c ent age of PRSP
*1, and BLNAR
*2by pr es enc e/abs enc e of gr oup c hi l dc ar e hi s t or y
χ2
t es t p< 0. 001 No hi s t or y
( 409 c as es ) 2. 59±1. 88 Hi s t or y
( 149 c as es ) 1. 71±2. 09 Nas ophar yngeal s pec i mens
( 558 c as es ) Age ( mean±S. E. )
N. S.
p< 0. 01 25. 2%
( 103/409) 2. 23±1. 62 29. 5%
( 44/149) 1. 39±1. 24
StreptococcuspneumoniaeDet ec t i on
Age
p< 0. 01 N. S.
25. 7%
( 107/409) 2. 31±1. 56 14. 8%
( 22/149) 1. 86±2. 42
HaemophilusinfluenzaeDet ec t i on
Age
N. S.
p< 0. 001 33. 0%
( 34/103) 2. 53±1. 74 25. 0%
( 11/44) 1. 18±0. 60 Per c ent age of
PRSP
*1Age
N. S.
p< 0. 1 41. 0%
( 43/105) 2. 49±1. 75 40. 9%
( 9/22) 1. 33±1. 22 Per c ent age of
BLNAR
*2Age
* 1 Peni c i l l i n- r es i s t ant
Streptococcuspneumoniae* 2
β- l ac t amas e- nonpr oduc i ng ampi c i l l i n r es i s t ant
HaemophilusinfluenzaeTabl e 5 St r e pt o c o c c us pne umo ni a e and Ha e mo phi l us i nf l ue nz a e det ec t i on and per c ent age of PRSP
*1, and BLNAR
*2by pr es enc e/abs enc e of gr oup c hi l dc ar e hi s t or y i n pat i ent s < 4
_year s ol d
χ2
t es t Wi t hout exper i enc e
( 255 c as es ) Exper i enc e
( 116 c as es ) Nas ophar yngeal
s pec i mens ( 558 c as es )
N. S.
36. 5%
( 93/255) 37. 9%
( 44/116)
StreptococcuspneumoniaeDet ec t i on
p< 0. 001 39. 2%
( 100/255) 17. 2%
( 20/116)
HaemophilusinfluenzaeDet ec t i on
N. S.
32. 3%
( 30/93) 25. 0%
( 11/44) Per c ent age of
PRSP
*1N. S.
27. 0%
( 27/100) 45. 0%
( 9/20) Per c ent age of
BLNAR
*2*1
Peni c i l l i n- r es i s t ant
Streptococcuspneumoniae*2β
- l ac t amas e- nonpr oduc i ng ampi c i l l i n r es i s t ant
Haemophilusinfluenzaeもクラス毎に流行していたタイプが違うため,菌の伝 播はかなり狭い範囲で生じていると述べており
13),保 育園における菌の検出状況は,抗菌薬の投与の有無や その施設特有の保育状況などが関係していると考えら れる.したがって,我々の報告が他の報告と結果が異 なった理由としては,我々の調査が抗菌薬前投与の有 無や施設ごとの特有な保育状況に影響されない調査で あったことがあげられる.
H. influenzaeに対する検討結果は,我々の報告と,
遠藤および伊藤らの報告いずれも集団保育のある児に おいて検出率が有意に高率であった.さらに伊藤は,
H. influenzaeは保育園職員からも 47% と高率に検出 されていると報告しており
12),同様に,著者が,以前 ある保育園にて行った調査でも,S. pneumoniaeと異 なり,H. influenzaeでは,保育園職員や園児の母親か らも検出を認めている結果を得ており
14), H. influenzae
は S. pneumoniaeに比べ,成人からも容易に伝播され
ることが集団保育の児で検出率が高い理由と考えられ る.また,この結果より,呼吸器感染症における頻度
は少ないものの,髄膜炎の原因となる Hib も,同様 に保育園内で高率に伝播しうることが危惧され,今後 Hib ワクチンがなるべく早く普及されることを期待す る.
次に,検出された菌の耐性に関与する要因としては,
先に述べた遠藤らの報告では,BLNAR の検出率が下 気道炎(肺炎,気管支炎)よりも中耳炎合併例に有意 に多いとしているが,集団保育の有無では菌の耐性率 に差を認めていない
10).
一方,松本らの,気道感染症罹患児の後鼻腔培養を 検討では,集団保育のある児の方がない児に比べ,
PRSP の割合が有意に多い結果となっていた
15).
しかしながら,抗菌薬の前投与の有無では,遠藤ら
において,抗菌薬前投与のあった例で PSSP の割合が
有意に少なく,松本ら
15)では PRSP および BLNAR の
割合は,抗菌薬前投与のあった例においていずれも有
意に高い結果となっており
10),我々の調査では抗菌薬
の前投与のない例のみを対象としたことが,これらの
報告における結果と異なった理由と考えられる.
以上,肺炎,気管支炎,中耳炎に罹患した,抗菌薬 前投与のない鼻咽頭培養施行症例について調査したと ころ,4 歳以下で S. pneumoniaeの検出率が,集団保 育がある群で H. influenzaeの検出率が,それぞれ有意 に高かったという結果を得た.この結果が,小児科外 来における日常診療や,S. pneumoniaeに対する免疫 および感染のメカニズムの解明,そして Hib ワクチ ンの普及に際し少しでも役立てば,今回の我々の調査 が実りあるものになると考える.今後,我々の調査に おいて特に有意差を認めなかった項目に関して,抗菌 薬前投与の有無による比較や,鼻咽頭よりもさらに起 炎菌の同定に有用であるとされる
16)洗浄喀痰培養によ る検討がなされ,さらなる知見が得られることを期待 してやまない.
謝辞:今回の調査にご協力賜りました以下の方々に厚く 御礼申し上げます.
同時に今回薬剤感受性測定にご協力を賜りました三 菱化学メディエンス株式会社小林寅喆氏に深謝いたし ます.
坂田宏(JA 北海道厚生連旭川厚生病院小児科),梯 仁志(カケハシ小児科医院),佐藤吉壮(富士重工業 健保組合総合太田病院小児科),益田豊(益田小児医 院),岩田敏(国立病院機構東京医療センター小児科),
横田隆夫(よこた小児科クリニック),大石智洋(新 潟県厚生連上越総合病院小児科,現:新潟県立新発田 病院小児科),高島俊夫(高島小児科医院),岩井直一
(名鉄病院小児科),多代正彦(医療法人多代小児科),
森川嘉郎(森川こどもクリニック),大倉完悦(大倉 クリニック),尾内一信(川崎医科大学附属病院小児 科学 2 講座),瀧正史(医療法人創和会重井医学研究 所附属病院小児科),森茂(三宅医院ももたろうクリ ニック),岡田隆滋(おかだ小児クリニック),島田康
(医療法人松丸会しまだ小児科),高柳玲子(労働福祉 事団東北労災病院小児科),遠藤廣子(労働福祉事業 団東北労災病院小児科)(敬省略)
文 献
1
)抗菌薬選択と使用の原則 I-4-3(宿主条件と感 染症)小児,新生児,日本感染症学会,日本化 学療法学会編集,抗菌薬使用のガイドライン,協 和企画,東京,2005;p.15―8.
2
)砂川慶介:全国小児科外来初診の呼吸器感染症 患児より分離された Streptococcus pneumoniae,
Haemophilus influenzaeの検討(2002〜2003 年)―
耐性株の割合および経口抗菌薬に対する薬剤感 受性について―.感染症誌 2005;79:887―94.
3
)小児呼吸器感染症の原因微生物とその検出法,小 児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会編,
小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2004,協和 企画,東京,2004;p.12.
4
)National Committee for Clinical Laboratory Standards : MIC testing supplemental tables;
M100-S13 (M7), 2003.
5
)夏目博宗,大澤純子,山本剛史,坂倉雄二,石 川貴充,福家辰樹,他:気道炎症状を呈して入 院した患者における上気道細菌叢の検討.小児 科臨床 2005;58:891―6.
6
)Hotomi M, Yamanaka N, Saito T, Shimada J, Suzumoto M, Suetake M, et al.:Antibody re- sponses to the outer membrane protein P6 of non-typeable Haemophilus influenzae and pneu- mococcal capsular polysaccharides in otitis- prone children. Acta Oyolaryngol 1999;119:
703―7.
7
)砂川慶介,野々山勝人,大石智洋,岩田 敏,秋 田博伸,佐藤吉壮,他:本邦における小児化膿 性髄膜炎の動向(2000〜2002).感染症誌 2004;
79:879―90.
8
)成相昭吉,小林慈典:小児下気道感染症例の上 咽頭由来インフルエンザ菌株における b 型の頻 度.日小児会誌 2005;109:726―9.
9
)榎谷直子:健常小児の咽頭および鼻咽頭におけ る Haemophilus influenzae,Haemophilus parain- fluenzae の 疫 学 的 研 究.感 染 症 誌 1989;63:
692―700.
10
)遠藤廣子,高柳玲子,加藤 卓,嘉山益子,川 村和久,佐藤紀子,他:気道感染症に罹患した 乳 幼 児 の 上 咽 頭 か ら の 分 離 菌.日 小 児 会 誌 2002;106:472―81.
11
)伊藤真人,白井明子,窄中香織,塚谷才明,渋 谷和郎,吉崎智一,他:1 歳 6 ヶ月児における鼻 咽腔ペニシリン耐性肺炎球菌の検出率.耳鼻咽 喉科展望 2000;43:540―6.
12
)伊藤真人,古川 仭:市井におけるインフルエ ンザ菌の検出率調査.日本耳鼻咽喉科感染症研 究会会誌 2002;20:94―7.
13
)秋 田 博 伸:保 育 園 児 の PRSP,BLNAR 検 出 状 況.Japanese Journal of Antibiotics 2001;54 Suppl. B : 111.
14
)大石智洋,土橋仁保子,岩田 敏,佐藤吉壮,秋 田博伸,高山陽子,他:保育園児における肺炎 球菌及びインフルエンザ菌の鼻咽腔への定着に 関する検討.感染症誌 2001;75:730.
15
)松本歩美,細谷光亮,片寄雅彦,村井弘通,川 崎幸彦,佐藤 敬,他:小児の上咽頭から分離 さ れ た Streptococcus pneumoniae及 び Haemophi- lus influenzaeの薬剤耐性化の現況.感染症誌 2004;78:482―9.
16
)武田紳江,黒木春郎,石川信泰,村田 敦,杉
本和夫,上原すゞ子,他:小児下気道感染症の
起炎菌診断における洗浄喀痰培養の有用性.日
小児会誌 1998;102:975―80.
Investigation of Streptococcus pneumoniae and Haemophilus influenzae Isolated from Pediatric Outpatients Nationwide with a Respiratory Tract Infection at the First Consultation(2002-2003)
―With Special Reference to the Results of Nasopharyngeal Culture in Pediatric Patients with no Previous History of Antibacterial Drug Administration―
Tomohiro OISHI
1)2)3)& Keisuke SUNAKAWA
1)1)
Department of Infection, School of Medicine, Kitasato University,
2)
Department of Pediatrics, Niigata Prefectural Shibata Hospital,
3)