跳躍力についての一考察
里 見 弘★
A S t u d y o f J u m p i n g S t r e n g t h Hiroshi Satomi
1.調 査 日 的
現在,スポーツテス トにおいてほ,瞬発力の示標 として垂直跳が取 りいれられているが, これは場合によっては測定場所など測定方法に難点があるため,これに代わるものとして, より測定の容易な立巾跳を用いることの可否,並びに これらの跳躍力の発現に関与する要素 をボディプロポーシ 三 ソおよび各種筋力の面から検討すると共に,跳躍力養成のための トレ ーニソグの方法を見出す ことを目的 とした。
2. 調 査 方 法
被験者には長野高専男子学生を選び, 1
, 2年生
36名についてボディプロポーシ ョンとの 相関を, 3年生5 0名について筋力 との相関を検討 した。
それぞれの測定項 目お よび測定方法は次の通 りである。
身長,体重‑ 健康診断時の方法による
垂直跳,背筋力,握力‑ 体力診断テス トの実施方法に よる 立 巾 跳‑ 足先から超までの跳躍距離の実測
下 肢 長一 与 ( 上前腸骨麻+恥骨結合下端) 大 腿 骨 長‑ ( 下肢長一大腿骨内側下端) 腰 骨 長‑ ( 脛骨内側上端‑歴骨内側下端) 大 腿 囲‑ 直立 して最大因を床面に平行に測定
下 腿 図‑ 直立 して最大囲,最小国を床面に平行に測定
脚挙上筋力‑ 台上に足首がでるように仰臥 し,足首に索条つきバン ドをかけて伸膝の まま脚を挙上 し,索条の張力を
KYS万能力量計を用いて測定
腕挙上筋力‑ 直立腕前方水平支持の姿勢から,肩を引き上げるように垂直に索条を引 き上げ,その張力を測定
足 押 カ‑ 押引力計を床面に垂直におき,坐位で両足の栂指の間にはさみ,両足の 栂指の屈曲力を測定
肩 引 力‑ 押引力計を用い,立位で両腕の水平方向に引っ張る力を測定
3.
結果および考察
3‑1
ボデ ィプロポー シ ョンとの相関
各測定値 とそれから算出 した各指数は表
1‑ 1,または垂直跳および立巾跳 と各測定値お よび各指数との相関係数は表
1‑ 2の通 りである。
*体 育学科
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長野工業高等専門学校紀要 ・第 3 号
〔 表 1 ‑ 1〕測定値と各指数
〔
嘉 I‑ 2〕跳躍と測定値,各指数との相関係数
表中
柵 1%, 甘 5%で有意まず,垂直跳についてみ ると立巾跳が
1%で有意
,5%の有意水準で相関を示す ものは,
体重 と比大腿因で他のものは殆ん ど相関を示 さない。次に立巾跳についてみ ると,身長,体
重,体重比下肢長比が 1%,比体重が
5%で有意 となっている。両者 ともに体重 との相関が
み られるが,これは被験者集団にいわゆる肥満体の者がいなか ったとい うことと共に年令的
跳躍力についての一考察
259に発育途上の集団であ り,体重 の小 さい者は身体的にまだ未熟の者が多 く, したが って機能 的にも全般的に低いのではないか と考えられる。 これは比体重をは じめ体重 の関係 した指数 が殆ん どすべてプラスの相関を示 していることか らも,この集団では体重が何かの形で記録 の面でプラスに作用 しているものと思われる。
次に比大腿因 との相関が垂直跳で
5%,立 巾跳で
10%の有意水準を示 しているが, これは 大腿因が大腿骨長に対 して大 きいとき跳躍力がす ぐれていることを示 している。大腿因が大 きい とい うことは脂肪の沈着 も考えられ るが, この場合の被験者集団についてみ るとむ しろ 大腿筋群の発達が よい結果 と考えられ,桟能的にす ぐれているものと思われ る。 これに対 し て比下腿因は殆ん ど相関を示 さないが, これは跳躍時の筋電図で もみ られるように,跳躍力 を発現す る因子 としては,下腿筋群 より大腿筋群の方が より大 きい作用をもっているため と 思われる。
また, 1%の有意水準で相関が考えられる立巾跳 と体重比下肢長比であるが, これは比下 肢長の標準偏差が極めて小 さく, したが って, この指数を とって も体重の因子が大 き く作用
して,体重 自体相関が考えられ るためこのような結果になったものと思われ る。
3‑2
箭 力 と の 相 関
測定値 とそれか ら算出 した指数は表
2‑ 1の通 りで,跳躍力 と測定値および各指数 との相 関係数は表
2‑ 2の通 りである。
〔
義 2‑ 1〕測定値 と各指数
まず,垂直跳についてみ ると
,5%の有意水準を示す ものは,身長,背筋力,肩引力の
3項 目,その他の項 目は殆んど無相関の状態である。肩引力 との相関は上昇力を強めるために
上体の力が関与 していることの証左 とも考えられ,背筋力についても同様に考えてよい と思
う。 しか し, ここで,よ り相関があると考えられ る背筋力 と相対する脚挙上筋力,体を引き
上げるのに作用す ると思われ る腕挙上筋力,キ ックカ と関係があ り,踏切時 の力に作用す る
と思われ る足押力,これ らのいずれ もが相関を示 さないのは,初めての測定方法を用 いたた
め,的確にそれぞれの筋力を指示 していないため と思われる。
260
長野工業高等専門学校紀要 ・第 3 号
〔 表
2‑ 2〕跳躍力と測定値,各指数との相関係数
表中
榊 1%, ★ 5%で有意
次に,立巾跳についてみると,垂直跳 とは非常に高い相関を示 しているが,筋力 との相関 をみ るとや ゝ異なる。すなわち,背筋力,撞力が 1% の有意水準で相関を示 し,体重当 りの 指数をみても,上体の諸筋力が
5%の有意水準で殆ん どが相関を示 している。 これは上肢の 振 りが立巾跳の記録に大 き く関与す るもの とみてよいであろ う。 これが垂直跳においては立 巾跳ほどの相関を示 さないのは,跳躍方法に垂直方向 と水平方向の差はあるが,垂直跳では 上肢 にその測定方法で跳躍時の最高点で印をつけるとい う仕事が課せられているため,上体 の力をすべて跳躍力の向上に集中す ることが困難なため と考えられ る。 また,背筋力だけ取 り出 してみても両者の問に大 きな差が見 られるが,前述の ような跳躍内容の差がそのまま相 関度の差 となって現われたもの と考えてよいと思 う。なお,立巾跳で も脚挙上筋力は相関を 示 さないが,もし腹筋力を正確に測定で きる方法があれば,背筋力 と同様,相当に高い相関 を示す ものと思われ る。
4.
結
論1 . 垂直跳 と立巾跳は高い相関を示すので瞬発力のテス トとして立巾跳を用い ることも,場 合によっては差支えない と思われ る。
2.
瞬発力のテス トに垂直跳を用いるのは,形態的なものに支配 され る要素が少ないので妥 当であるが,測定方法で上肢に仕事が課せられているため,立巾跳は ど十分に上体の力を 跳躍力の発現に利用できない面 もみられる。 したが って,全身の力が十分に発揮できるよ
うな測定方法の改善が必要である。
3.
形態的要素および静的筋力 ともに個 々には跳躍力の発現に決定的要素 となっているもの はない。跳力は技術的な ものの加味された動的筋力の集積 されたもの として発現 され るも の と思われる。
4.
筋力の中で跳躍力 と関係が深い と考えられる筋力の的確な測定方法の研究が必要である が,それ以上に静的筋力 よりも筋収縮時のス ピー ドも加味 した動的筋力の測定法の解決 も 必要である。
5.
跳躍力の養成には個 々の筋力の強化 も必要であるが,それ以上に技術的な ものおよび筋 収縮のスピー ドを高めるような総合的な トレーニングが必要である0
(44.9.20