サツマイモの作物栽培を通した幼児期における自然 体験活動に関する研究
著者 藤井 道彦, 柳川 裕理
雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇
巻 47
ページ 105‑119
発行年 2016‑03
出版者 静岡大学教育学部
URL http://doi.org/10.14945/00009542
静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)第47号
(20163)105〜
119 105サツマイモの作物栽培を通した幼児期における自然体験活動に関する研究
乱udy Kln Namal ExpeHence Based Act● ity ln lnfancy by Cultlvaton Of Sweet Potato
藤 井 道 彦・ 柳 川 裕 理・ ・
Michihiko FUJII and Yuri YANAGAWA
(平
成
27年 10月 1日受理
)As one of the natural expenence based acti宙
ty,progra of culuvation and coong Of
sヽveet potato of four cultivars that is familiar to children and easy to cultivate 、′as hvestlgated and cultivar diferences、 vere clariled And questlonn五 re surveys of awareness on teachers in kindergarden about the state of crop cultivaion, contact with nature and awareness of teachers lt seems that Jving opportuniies of crop cdivaton and∞ ntact wlth nature to hfmtt lead to study∝ food and nutrimn educttion,correction of unbalanced dttt, experね nce of c∞ peratlon
Ⅲth iemds,share of happhess,recogni」
m ofimpOrtance of lfe, season and nature Experience of crop cultlvauon from planthg to harvest was fbund to be very important also as oppOrtunites to promote interest to nature and comparmg cultlvardl■
erences in growth and cooking lead tO the basls for recOgnitlon of biodiversityKey
、vordsiCrop cultivation,Sweet potato, Natural experience based activity, Food andnum檄
m educaion,Mancy,Quetticlnnalre surveys,Khdergarden
l はじめに
幼児期 は、五感 を十分 に活用 し感性 を育て、周囲の人たちとの信頼関係 を基盤 として環境 に 働 きかけた り、刺激 を受けた りして、人間 として生活す るための様 々な力 を身に付 け、成長 し てい く。 自己を形成 してい く幼児期に、 自然 との触れ合いは、環境 に対する興味 関心 を高め、
環境 に対 して積極的に関わろうとす る態度の育成の基礎 として重要な体験であると考 えられる。
近年、全国的に都市化が進んだことによって、子 どもの生活環境 に大 きな変化が起 こった。
公園や空 き地などの遊び場が大幅に失われ、 自然環境 との関わる機会が大幅に減少 している。
幼稚 園教育要領
(文部科学省 2008)に おいて定め られている
5領域の一つに「環境」がある。
そのね らいには、 「
(1)身近 な環境 に親 しみ、 自然 と触れ合 う中で様 々な事象 に興味や関心 を もつ」 とあ り、また、内容の中にも、 「 (1)自 然 に触れて生活 し、その大 きさ、美 しさ、不思 議 さな どに気付 く」「
(3)季節 により自然や人間の生活 に変化のあることに気付 く。」「 (4)自 然な どの身近な事象 に関心 をもち、取 り入れて遊ぶ。」 「
(5)身近な動植物 に親 しみをもって接
し、生命の尊 さに気付 き、いたわった り、大切 に した りする。」 と、定め られていることか らも、
幼児期 に自然環境 と触れ合 うことが大切で重要視 されていることが よくわかる。全国的に都市
・技術教育系列
'・
静岡市立大谷 こども園106 藤 井 道 彦 ・ 柳 川 裕 理
化が進み、子どもの生活環境に大きな変化が起こり、遊び場が大幅に失われ、子供が自然環境 と触れ合 う機会は減少 した。
平成
17年には食育基本法
(内閣府 21105)が 制定され、平成
18年には食育推進基本計画
(内閣府
2008)が、さらに平成 234に は第
2次食育推進基本計画
(内閣府 2011)力 ゞ 決定され、
食育の推進が求められているが、幼児期における作物栽培体験は、食育として重要なものであ ると考えられる。第 2次 食育推進基本計画
(内閣府
2011)における基本的な取組方針の中に、
「食に関する感謝の念 と理解」として、 「様々な体験活動等 を通 じ、自然に感謝の合や理解が深 まってい くよう配慮」することが求められているち
これまでにも、食育における「農」の重要性は指摘 されているが
(藤井
21105、朝岡ら
2010、
森
2014)、幼児期における食育の実践の実態ならびに幼稚園教員の意識については、
十分 明 らかにされていない。
本研究では、 自然体験活動の一つ として、身近で、子 どもたちの好 き嫌い も少な く、比較的 栽培 しやすい と考えられるサツマイモの栽培や調理 を通 した自然体験活動の計画について検討 した。サツマイモは栄養価 も高 く、加工用途 も幅広いため、子 どもにとって も身近な作物だ と 考 えられる。サツマイモを用いた食育の実践 については、中川・林 (2011)や 多々納 ら
(2011)、藤井 。大橋 (2015)な どで報告 されているが、いずれ も小学生 を対象 とした ものであ り、 また、
品種の比較は行われていない。本研究では、幼児 を対象 としたサ ツマイモの栽培・調理体験 を 通 した食育 について、複数の品種 を用いて検討 を行 った。
杉浦 (2007)は 、幼稚 園・保育所 における栽培活動の現状 について、河内 ら (2011)は 、幼 雅 園お よび保育園における五感 を通 じた自然体験の現状 について報告 しているが、本研究にお いて も幼稚園における作物栽培や 自然 との触れ合いに関する現状 ならびに幼稚園教員の意識・
意見 を明 らかにするために、静岡市内の幼稚園の教員 を対象 としてアンケー ト調査 を行 つた。
2.サ ツマイモの栽培
1)材
料と方法
サ ツマイモ として、ベニアズマ、鳴門金時、パープルスイー トロー ド、 タマユ タカの
4品種 を蔓か ら栽培 し、生育の様子 を比較 した。静岡大学教育学部 自然観察実習地において、
2009年6月 17日
に、イモ用肥料
5‑1010を1だ当 り100g施 肥 し、施肥 レベルは
N5g/ば,P20510g/ポ
,K2010g/ぷ
とした。 また、雑草防除のために畝 に黒マルチ もかけた。その後、
6月24日に定植 を行 った。定植 は、条間
lm、株 間∞
clnで行 った。そ して、収穫 までほぼ
1週間お きに茎の長 さを計波
jした。
11月 12日に収穫を行い、収穫 したイモの数 とイモの生体重 を計測 した。
2週間 風乾 させた後、イモ・茎 葉の部位別の風乾重 と葉数 を計測 した。
2)結 果
サツマイモの茎の長 さは、
9月 2日か ら
11月 10日の約
2ヶ月間で平均 して約
49cm伸びていたが、
収穫時の茎の長 さには品種 による差 も見 られ、パープルスイー トロー ドでは
235cm、タマユ タ カでは
226cmであつたのに対 し、鳴門金時では
205cm、ベニ アズマでは196cmと 、約 40cmの 差が見 られた
(図1)。 また、収穫期近 くでは、葉が茶色 に枯れてい く様子 を観察することがで
きた。
サツマイモの作物栽培 を通 した幼児期 における自然体験活動 に関する研究
9/9 9/16 9/23 9/30 10/7 10/1410/2110/28 11/4 11/11
図1 サツマイモの茎の長さの推移 収穫 した イモ の写真 を図
2に
示す。各品種の個体当 りの イモの収穫数は、パープルスイー トロー ドが約
10個と最 も多 く、鳴門金 時 とタマユ タカは約
7個で、ベニアズマは
5個と最 も少なかった
(図3)。
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図2 収穫 した各品種のイモ
図3 サツマイモの個体当 りの収穫数
108 藤 井 道 彦 ・ 柳 川 裕 理
サ ツマイモの個体当 りの収穫量 は、パープルスイー トロー ドが
1096gと最 も重 く、次いで鳴 門金時の
1017g、タヤユ タヵ928gで 、ベニアズマは
854gと最 も軽かつた
(図4)。
m m 輌 中 輌 獅
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ず♂〆
図 4 個体当りのサツマイモの収穫量
イモ
1個当 りの重 さでは、ベニアズマが
171gと最 も重 く、次いで鳴門金時が
150g、タマユ タ カが143gで 、パ ープルスイー トロー ドは
112gと最 も軽 く、約15倍 の差が見 られた
(図5)。 イ モ
1個当 りの重 さが最 も重からたベニアズマでは収穫 数が最 も少 な く、最 も軽かつたパープル スイー トロー ドでは収穫数が最 も多かったことか ら、品種 によるイモの大 きさの違いは収穫数
と関係があることが分 かつた。
図 5 イモ
1個当りの重さ
収穫時の個体当 りの葉数はタマユ タカが
235枚と最 も多 く、次いで鳴門金時が
178枚、ベニア ズマが
1604で、パープルスイー トロー ドは
110枚と最 も少 な く、品種 によ り約2倍 の差が見 ら れた
(図6)。¨ m m m
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サツマ イモの作物栽培 を通 した幼児期 における自然体験活動 に関する研究 109
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図
6
収穫時の個体当り葉数〆
部位別風乾重では、業 と茎の重 さはベニアズマが最 も重かったが、個体 当 りの イモ の風乾重 では、パ ー プルス イー トロー ドが最 も重 く、品種 に よ り違 いがみ られた (図 7)。 タマユ タカ 以外 で は風乾重 は生体重の72〜
82%で
あったの に対 し、 タマユ タカで はイモの風乾重 は生体重 の43%と大 き く減少 し、干 し芋用 品種 の特徴 を示 してい る もの と考 え られ る。ノ
髯
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〆
図
7
個体当りの部位別風乾重サツマイモの栽培 を通 して、子 どもと定期的に観察や水や り、雑草取 りを行 うことで、サ ツ マイモの茎が 日々伸 びていることや、大 きな葉や小 さな葉があること、また、複数の品種 を用 いることにより、品種 によって葉の形や色、茎の色な どが異なることなど、体験 を通 して作物 の多様性 について も気付 くことがで きると考えられる。環境教育 において生物多様性の考え方 は重要であるが、幼児期か ら多様性について気付 くことは、将来、生物多様性の重要性 につい ての理解 につなが る基礎 として有意義な体験 となる もの と考 えられる。
また、 カマキリやカエル、カタツムリ、テン トウムシなどの生 き物 と触れ合 うことや、収 穫 す る際には、土の感触や、 とれたてのイモの大 きさや重 さを感 じた り、上の中にどの ように埋 まっているのかを学んだ り、 自分たちで育てた とい う実感や達成感、友達 と協力 して上の中の
■イモ ロ葉 □菫
︵J 刺燿直戻●輸F¶軍
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110 藤 井 道 彦 柳 り‖ 裕 理
サツマイモを探 して発見する喜びを分かちあうという体験ができるだろう。そして、作物に愛 着がわき、大切にしようという心を育てることにもつながると考えられる。
これらのことから、子 どもが栽培を体験 し、生育を観察 し、収穫し、自分で収穫したものを 調理 し、食べることは貴重な体験であると考えられる◇
3 サツマイモの調理
1)方
法
サツマイモの調理においては、本研究では、教材化 としての課題である「幼児期の子どもが 調理 し、食す」ことを想定 し、 「スイー トポテ ト」、 「蒸 しバ ン」
(「大学芋」の調理を行った。
また、サツマイモ本来の味や、各品種の味の違いを感 じやす くするため、 「蒸か し芋」 と「カ で芋」の調理も行つた。
「蒸か し芋」の調理は、今回は蒸 し器を用いず、電子 レンジを用いた簡易な方法により以下 の手順で行つた。①サツマイモをキッチンペーパーで包み、水で濡らす。②水気を軽 く切 り、
ラップで包む。③電子レンジで加熱する。④食べやすい大きさに包丁で切る。
「茄で芋」の調理は以下の手順で行った。①鋼 にサツマイモがかぶるくらいの水 をいれる。
②サツマイモを入れる。③火にかけて、やわらか くなるまで茄でる。
「スイー トポテ ト」はサツマイモのおやつとして一般的であ り、実際にい くつかの幼稚園で も実践 されているため、調理することとした。 「スイー トポテ ト」の調理は以下の手順で行つた。
下準備 として、バター大さじ
2杯分をレンジで温め溶かし、卵黄
1個分をといてお く。①サツマ イモ400gを 柔 らか くなるまで蒸かす。②皮をむき、適当な大 きさに切る。③ ビニールの中に 入れる。④手で もみ、サツマイモを潰す。⑤サツマイ■がだいたぃ潰れてきたら、牛乳80ml の半量、砂糖大さじ琳 、溶かしバター大さじ
2杯を加え、さらにもみ混ぜる。⑥少 しずつ牛孝
Lを加えていき、硬 さを調節する。⑦適量を手にとり、好 きな形を作る。③アルミホイルにのせ、
刷毛や、スプーンの背を使つて表面に卵黄
1個分を塗る。◎オープントースターで焦げ目がつ くまで焼 く。
「蒸 しパ ン」は、調理の単純化を図るため、ホットケーキミックスを利用 して行つた。また、
幼稚園での調理を想定 して、紙コップとカップケーキの型の
2種類の容器を用いて比較 した。
調理は以下の手順で行つた。①サツマイモ中
1本を、柔 らか くなるまで蒸かす。②サツマイモ
の皮をむき、サイコロ状に切る。③ポウルに、ホットケーキミックス21111g、 牛乳120ml、 卵1 個を入れt泡 だて器で混ぜる。④②のサツマイモを少し残し、③に加えて軽く混ぜる。⑤カッ
プの7〜
8分
目まで入れ、残りのサツマイモをのせる。③ラップをふんわりとかけ、電子レンジ で3分
前後加熱する。「大学芋」の調理は以下の手順で行つた。①サツマイモ
1本を乱切 りにして、水に
10分程度さ らしてお く。②水気を軽 く取 り、しわにしたアルミホイルに並べ、オープントースタ■で
10〜15分
、火が通るまで焼 く。③ フライバ ンにサツマイモを並べ、水
(大さじ笏不 )、 砂糖
(大さじ
″め、塩
(少々
)を加えて煮絡める。④水あめ状になり、サツマイモに絡みついたら、火を上
め、完成 となる◇
サ ツマ イモ の作 物 栽培 を通 した幼 児期 にお ける 自然体験 活動 に関す る研 究 111
2)結 果
「蒸か し芋
Jの調理 は、濡 らしたキ ッチ ンペーパー とラップで くるみ、電子 レンジで加熱す る方法 をとったが、完全に火が通 るまでには
20分以上 と、時間がかかつた。
「茄で芋
Jの調理は
10分程度 とあ ま り時間はかか らなか ったが、力であが つた後す ぐに鍋か ら出さない と、水分 を吸収 して食感に影響がでた り、形が くずれやす くなった りした。品種 に よる芋の色や味等の違いは比較 しやす く、サ ツマイモ本来の味や匂いなど、五感 を使 つて味わ うことがで き、教材化 として有効な ものだ と考 えられる
(図8)。
図
8
各品種の繭で芋「ス イー トポテ ト」の調理 は比較的容易 にで きたが、最初 に しっか りと芋 を柔 らか くす ること、
途 中で加 えるキ乳 の量 の調節 な どの注意点が必要であつた。牛
=し
の量 は、茄でた際 に芋が水 を 含 む ことも関係す ると考 え られ、少 し多い ように感 じられた。教材化 としては、 ほ とん どの作 業 を子 ども主体で行 えることや、 ビニールに入れて、 自分 たちの手で芋 をつぶ した り、 自由に 形作 りを行 えた りな ど、「 スイー トポテ トJが最 も適 してい るように思 われた。鳴 門金時 とパ ー プルスイー トロー ドを用いて2色 のスイー トポテ トを作 つたが、 日で楽 しむ ことがで きる と考 え られた (図
9)。
パープルス イー トロー ドは甘 みが少 し強かった。図 9 鳴門金時とパープルスイー トロー ドのスイー トポテ ト
「蒸 しパ ン」の調理には、ホッ トケーキ ミックスを用い、加熱にはレンジを利用 した
(図10)。なお、芋の量 を多 くし、芋 と生地が ほぼ同量 となるようにした。加熱時間は
5分程度 と短 く、
しつか りと膨 らんだが、食感 は少 し硬 かった。加熱時間は、 カップケーキのカップの方が紙
コップよりも多少短かったが、あまり違いはなかった。ベニアズマやパープルスイー トロー ド
は芋 の甘みが引 き立つが、 タマユ タカと鳴門金時は甘みが少ない ように感 じた。
つ
ん 藤 井 道 彦 4Jl
川 裕 理
図
10
書品種の蒸 しバン「大学芋」の調理では、通常は、水や砂糖 を絡める前に油で揚げるが、今回は、幼稚園で、
かつ、幼児が調理することを想定 し、油で揚げると油がはねる等の危険性があることから、
トースターで芋を加熱 し、砂糖等を煮絡める方法をとった。
1回目は、水 と砂糖に対 してサツ マイモの割合が多 く、上手 く煮絡めることができなかったが、
2回日以降は、水 と砂糖の量を 増や して行ったところ、うまく絡めることができた
(図11)。しか し、水あめの部分が歯につ いてしまうことや、冷めると硬 くなって しまうことで、食べづ らかった。パープルスイー ト ロー ドを調理することで
2種類の色の違いを楽 しめるが、紫色が濃 く、おいしそうには見えな かった。
図
11
各品種の大学芋調理法を比較 した結果、幼稚園で子 どもが主体 となって調理 を行 うことがで きることか ら考 えると、ビニールに入れて もみつぶ し、混ぜ るだけなので、一番調理 に適 しているのはスイー トポテ トではないか と考 えられる。 ビニールに入れてヽガヽ 分 けに して しまえば、一度 に全員の 子 どもが行 うこともで きる。
ただ し、芋の品種 によっての調節が必要で、芋の品種 によって甘みの強い ものや弱い ものが あ り、特にパープルスイー トロー ドでは砂糖 を少 なめに して調理する必要性 を感 じた。甘みの 強いイモの方が、芋本来の味 を感 じることがで きるように考 えられる。 '
3 幼稚園教員へのアンケー ト調査
1)方
法
静岡市内の幼稚 園における作物栽培や自然 との触れ合いに関す る実践例や現状 を調査 し、ま た、現役の先生方のご意見 をお伺いす るためのアンケー トを作成 し、静岡市葵 区 駿河区内の
公立・私立幼稚園
10園の幼稚園の教員
30名にご協力いただ き、
2009年にアンケー ト調査 を実施
した。なお、 ここでは、幼児が播種や定植 などの作物の栽培管理 に、なんらかの関わ りをもっ
サ ツマイモの作物栽培 を通 した幼児期 における自然体験活 動に関す る研究 113
て行った ものを対象 とした。
アンケー ト調査の内容は以下の通 りである。
①作物栽培や自然 との触れ合いの大切さ
(とても大切、少 し大切、あまり大切ではない、大 切ではない
)及びその理由、②幼稚園で栽培 したことのある作物、③収穫物の利用方法
(子ど
もが持ち帰る、子ども・保護者・保育者で調理する、子 どもと保育者で調理する、園で保育者 が調理する、園で保護者が調理する )、 ④収穫 した作物 と調理 したもの、その際に子どもが行っ た作業、⑤今後栽培 したい作物や行いたい調理、⑥幼児 との作物栽培の感想や、作物栽培を行 う上での注意点、⑦子 どもと自然 との触れ合いの大切さ
(とても大切さ、少 し大切、あまり大 切ではない、大切ではない )と その理由、③外で遊ぶ子どもの割合
(全員好んで外で遊ぶ、ほ
とんどの子どもが外で遊ぶ、半分 くらいの子 どもが外で遊ぶ、あまり外で遊ぶ子 どもはいない、
外で遊ぶ子 どもは全 くいない )、 ◎子 どもたちが自然 とふれあう頻度
(毎日触れ合つている、
ほぼ毎日触れ合つている、あまり触れ合つていない、全 く触れ合っていない )と 内容、⑩ 自然
(草
や花、本の実等
)を使つた遊びについての教員の知識の程度
(たくさん知つている、少 し知つ ている、あまり知 らない、全 く知らない )と 内容、⑪幼稚園での自然を使つた遊びの実践頻度
(よ
く実践 している、時々実践 している、あまり実践 していない、実践 していない
)と実践 し てよかった活動、⑫今後、子 どもと一緒に実践 したい、自然 と触れ合う活動、⑬アンケー トに 関する意見や感想、についてである。
2)結 果
①で作物栽培の大切さを質問した結果、 「 とても大切」
97%、「少 し大切」
3%と、アンケー トに回答いただいた全ての教員が大切だと感 じていることがわかった。なお、 「少 し大切」 と 答えた先生 も、理由は、大切だとは思う力も歳児では難 しいからということであ り、大切 さは 感 じておられた。
また、①の作物栽培が大切な理由には、 「食」が慇 %と 最 も多 く、次いで「作物の生長」
37%、
「幼児の成長」 と「幼児の経験
J各27%、「命
J23%などで、 「植物に対する関心、理解 を促すことにとどまらず、季節を感 じたり、食べる楽 しさ、体への関心までの育ちを促 したり することができる」 「水 をあげないと死んで しまう存在、命の大切 さや育てることの大切 さを 教えることができる」 「子 どもの感性や心を育ててい くため」などの食育に関するものや、作 物の生長、命、子どもの経験や成長など、様々なものが挙げられた
(図12)。(
Ю 40
ヽ30
く
120
轟 10
0 型
C ψ 饉製 C R蒻 暉怪 C 駅墨
↑ 暉経 CS 輩 ぐ
図
12
作物栽培が大切な理由114 藤 井 道 彦 柳 川 裕 理
②の質問で、園で栽培 したことのある作物をお伺いしたところ、ナスとの回答力ゝ
3%と最 も 多 く、次いでサツマイモ 70%、 ジャガイモ・キュウリ
67%、エダマメ
57%と続き、サツ マイモは2番 目に多 く栽培されていた
(図13)。他にも、 トマ ト 50%ミ ニ トマ ト・ピーマン ニンジン・プロッコリー
33%などの、子 どもが苦手としそうな野菜を回答 した先生 も少なく なかった。幼児期 という自己を形成 している段階だからこそ、それらの作物を栽培 し、調理す ることも大切なことだと感 じた。河内ら (2011)の 調査では、幼稚園及び保育園で味覚などの 五感体験に栽培されている作物 として、多い順に トマ ト、キュウリ、サツマイモ・ナス、ジヤ ガイモであったと報告 している。本研究の結果と比較すると、本研究ではナス、サツマイモの 割合が高 く、トマ トの割合が低かった。杉浦 ⑫Ю7)は 幼稚園で栽培 した植物の利用 として
t̀やきいも
'が最 も多かったとしてお り、サツマイモの利用割合が高いことが分かる。
図
13
園で栽培したことのある作物 (上位10種のみ表示)
③で収穫物の利用方法 を質問 した ところ、収穫 した ものは全て、子 ども、保育者 または保護 者の手 により、園で調理 されていることがわかった
(図14)。「子 どもと保育者で調理する」が
70%と最 も多 く、次いで「園で保育者が調理する」
53%、「子 どもが持 ち帰 る」 50%な どであっ た。「子 どもが持ち帰 る」 と答 えた方 も「園で調理する」 とも答 えていることか ら、栽培 した
ものは、園で調理 されるなどして子 どもの口に入 っていることが分かつた。
80
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霊 20 0 9 ︒ 8 ︒ 7 ︒ 6 ︒ 5 ︒ 4 0 3 ︒ m l ︒
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︱ 一 日
︑ 日 ヽ ハ ヽ ヽ
︱︱ ヽ
●
〜 炒 工
︐ 4 11
″ エ レ ヽ
● ヽ H ヽ 小
︑ オ ψ ヽ ヽ
■ ヽ ψ ヽ
︐ ヽ ト ヽ ヽ
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雪霊姜椰稲︶回
ヽL︶国
驀櫃匈つ匈絆
や掃雄 撫肛 つ匈絆
゛妻゛t策つ匈ト
図
14
作物の収穫後の利用方法サツマイモの作物栽培 を通 した幼児期 における自然体験活動 に関する研究 115
④の今までに園で収穫した作物 と調理 したもの、その際の子 どもの作業についての回答では、
焼 き芋
(サツマイモ )、 スイー トポテ ト
(サツマイモ )、 蒸か し芋
(サツマイモ )、 芋ケーキ、
蒸 しパン
(サツマイモ )、 茶巾絞 り
(サツマイモ )、 シチユー
(サツマイモ
)ヾカレー
(サツマ イモ、ジャガイモ、ナス、ピーマン )、 ゆで じやが、煮物
(ジヤガイモ )、 肉じゃが
(ジヤガイ モ )、 ポテ トサラダ
(ジヤガイモ )、 味噌汁
(ジヤガイモ、キヨウナ、チングンサイ、タケノコ )、
サンドウイッチ
(サニーレタス、キユウリ、 トマ ト
)、サラダ
(サニーレタス、キュウリ、ヽト マ ト )、 塩 もみ
(キユウリ、ナス )、 漬物
(キュウリ )、 炒め物
(ナス )、 野菜炒め
(ナス、ピー マン、ジャガイモ )、 豚汁
(大根、人参、白菜 )、 ご飯
(タケノコ、ソラマメ )、 茄でて食べる
(ブロッコリー、ホウレンソウ )、 バター炒め
(ホウレンソウ )、 トマ トスープ
(トマ ト)(梅 干 し
(ウメ )、 そば
(ソバの実
)が挙げられ、野菜を洗う、皮を剥 く、切るという基本的な作業を子 ど もが行つていることが分かつた。
⑤の今後栽培 したい作物や行いたい調理では、プロッコリー、ミニ トマ ト
(サラダ )、 ジヤ ガイモ
(カレー、塩ゆで )、 ダイズ
(味噌 )、 サツマイモ
(サツマ汁、カレー )、 ナス、ピーマン、
トウモロゴシ
(サラダ、スープ、焼 トウモロコシ )、 ニンジン
(野菜ケニキ、ホツトケーキ )、
ホウレンソウ
(野菜ケーキ、ホツトケーキ )、 果物
(ゼリー、アイス )、 米
(田植えから )、 夏 野菜収穫後に育てられるもの、身近にある野菜、子どもと一緒に作つて食べることのできる作 物、地域にあつた中山間地の気候で育つもの、子 どもが飽 きずに育てられ、確実に収穫できる ものなどが挙げられた。また、サラダなどできるだけ野菜そのものの味を味わうことのできる 料理をしたい、その年のこだわりで大切にするものを決めていきたい、との回答 も寄せ られた。
⑥幼児 と作物栽培を行 う上で気 を付けていることとしては、食育にむけての声かけなどの
「子 どもに対 しての働 きかけ
(その他)J40%、 環境設定などの「教師自身の活動」
33%、子 ど もと
,緒に水や りや草取 りを行 うなどの「子 どもに対 しての働 きかけ
(水や り。草取 り等
)J 30%、施肥などの「作物への注意
J20%であった。
Ю 4︒ 30 20 1︒
︒
︵S
︶ 0 轟
弧潤Ю卜k!ヽ半
図
15
幼児と作物栽培を行 う上で気をつけていること⑦の自然との触れ合いの大切さについては、 「とても大切」が
lKXl%で、大変重要視 されてい ることが分かつた。
自然 との触れあいが大切な理由では、 「今の年齢にしかない感受性を、身体いつぱいに思いっ
116 藤 井 道 彦 lll 川 裕 理
きり自然と触れ合うことで育てられる」「自然は保育者が与えられるものではないので、そこか│ ら得るもの、学ぶものは大きい」「私達人間も自然と共存 していることを理解させていきたいの で、その手段 として、自然と触れ合う遊びを心がけたい」など、子どもの感受性に関するもの が
0%と
最 も多 く、次いで、命23%、
季節感17%、
共存 10%、 自然の大切さや美しさ7%
などの理由が挙げられ、①の作物栽培の大切な理由と共通する回答も多くみられた (図16)。
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図16 自然との触れあいが大切だと感じる理由
③外で遊ぶ子どもの割合では、 「全員好んで外で遊ぶ」力も
7%、「ほとんどの子 どもが外で遊 ぶ」力科
3%で、 「半分 くらいの子 どもが外で遊ぶ」 「あまり外で遊ぶ子どもはいない」 「外で遊 ぶ子 どもは全 くいない」 との回答はみられなかった。
③子 どもたちが自然 とふれあう頻度と内容では、 「毎 日触れ合っている」が
55%、「ほぼ毎日 触れ合つている」力S38%と 、
9割以上はほぼ毎 日、自然に触れあっていることが分かつた。 「あ まり触れ合つていない」力▼
%で、 「全 く触れ合っていない」の回答はなかった。触れ合つてい る内容は、 「草花や木の実」力ゞ
511%、「水や上、泥」と「作物栽培や飼育」がそれぞれ
40%、「 自 然の生 き物」力お
0%、「その他」 17%で あつた
(図17)。図
lフ自然と触れ合つている内容
⑩ 自然
(草や花、本の実等)を 使つた遊びについての教員の知識では、 「たくさん知つている」
6︒ m 4︒ 3︒ 2︒ 1︒
︒
︵S
︶ 0 証
サツマイモの作物栽培 を通 した幼児期 における自然体験活動 に関する研究 117
18%、
「少 し知 つている」
67%、「あま り知 らない」
15%、「全 く知 らない」
0%で、少 しは知っ
ているがた くさんは知 らない割合が約
2/3であつた。遊 びの内容 は、草花遊び、草花 を利用 し た創作、木の実、 自然の中での遊びなどであった。 :
⑪幼稚 園での 自然 を使 った遊 びの実践 と実践 して よかつた活動 では、 「 よ く実践 している」
15%、
「時々実践 している」
54%、「あま り実践 していない」
27%、「実践 していない」
4%であっ た。実践 して よかつた活動では、色水遊び、染め物、 どん ぐり遊び、ひっつ き虫、草花での造 形遊び、葉や花 びら、木の実で料理 ごっこ、葉相撲、色あわせゲーム、ネイチ ャーダーム、ア クセサ リー作 りなどが挙 げられていた。 また、あるものや見つけた ものを使 つて遊んでいる、
草花で遊べ ることを知 り、主体的に遊ぶ様子があつたなどの回答 もみ られた。
⑫今後、子 どもと一緒 に実践 したい、 自然 と触れ合 う活動では、山登 り、川遊び、魚 とり、
川 くだ り、焼 きい も大会、 どんど焼 き、茶摘み、茶作 り、栗拾い、 タケノコ掘 り、芝生の坂道 を使 ったダンポールソリ、氷 を使 つた遊び、雪遊び、押 し花の しお り作 り、草木染でハ ンカチ 作 り、落ち葉のプール、 自然の大 きさやその ものに触れる感動体験、年齢 にあった作物作 り、
年齢 にあわせた栽培 ・収穫・皆で味わい と、家庭 とは違 う関わ り、園外保育、近 くの公園で季 節の 自然 を感 じる、ネイチ ャーダーム、い ままでやって きた遊びの継続 などが挙げ られた。
4)サ ツマイモ栽培の意義
本研究で扱 つたサツマイモ栽培 において も、観察や水や り、雑草取 りを通 して、蔓の伸 びが 伸 びていること、同 じ個体の葉にも、 まだ小 さなもの と大 きな ものがあること、 また、複数の 品種 を比較す ることにより、種類 によって葉の形や色、茎の色が異なっていることな ど、た く
さんの気付 きを導 くことがで きるだろう。 また、サ ツマイモが生長 してい く様子 を全身で感 じ、
学ぶ ことがで きると考 えられる。定期 的に水や りや、雑草取 りを行 うことで、「 自分 で育てて いる」 とい う実感や、栽培 している作物への愛着がわき、大切 に しようとい う気持ちを育てる ことがで きると考えられる。収穫時には、上の感触や、 とれたてのイモの大 きさや硬 さ、重 さ を目で見て、手で触 るなどして感 じることがで きる。上の中に、 どの ようにイモが埋 まってい るか を学ぶことや、友達 と競 った り、協力 して探 し、発見 した りして、その喜 びを分かち合 う とい う体験 もで きると思われる。 また、イモが どこに埋 まっているのかわか らないことか ら、
イモ掘 りには宝探 し的な要素 も含 まれてお り、楽 しみなが ら収穫す ることがで きることが予想 される。
また、作物の生育の観察 とあわせて、生 き物 との触れ合い も体験することがで きる。本研究 において も、カマキ リやバ ッタ、カエル、カタツム リ、テ ン トウムシなどの生 き物が、サツマ イモの周辺 に集 まっている様子 を観察することがで きた。雨の翌 日には、畑 に水 たま りもあ り、
カエルの鳴 き声 を聞 くこともで きた。他 にも、緑色の葉の中には緑色のバ ッタ、茶色の葉の中 には茶色のカマキ リが隠れている様子や、土の中では ミミズ等の生 き物 も観察することがで き たことか ら、生 き物が外敵か ら身を守るための方法や、季節や天気 によって も観察で きる生 き 物が変わることなど、多 くの気付 きや生 き物 を大切 にする気持ちを促す ことがで きるのではな いか と考える。
4.ま とめ
環境教育において幼児期 における体験活動の重要性はすでに指摘 されているが
(文部科学省
藤 井 道 彦 ・ 柳 川 裕 理
211118、
国立教育政策研究所
211117・2014、森
2014、グレイグ ら
1998)、本研究では、サツ も マイモの栽培 を通 した食育につながる自然体験活動についての検討を行つた。また、幼稚園教 員 にアンケー ト調査 を実施す ることにより、作物栽培や自然 との触れ合いの現状や認識につい て調査 し、幼児教育における作物栽培や 自然 との触れ合いの重要性 を明 らかにすることがで き た。 また、サッマイモの栽培か ら調理 までの体験的な環境教育 についての検討 を行った。複数 品種 の栽培や調理 を体験 して比較す ることにより、生物多様性 について理解す るための基礎 と なると考えられる。幼児期 に作物栽培や 自然 と触れ合 う機会 をもつ ことで、命の大切 さや 自然 との共存、植物の育ち方について学ぶ ことがで きる。 また、この ような機会 をもつ ことは食育 につなが り、嫌いなもので も自分で育てて収穫 した ものには愛着がわ き、食べてみることで偏 食がな くなることにつながると考 えられる。また、友達 と協力す ることや喜 びを分かち合 うこ とがで きる。 さらに、命の大切 さや、見て触 つて聞いてと五感 を刺激す ることにより、季節や 自然の大切 さを感 じることなどがで き、学ぶことは非常に多い と考 えられる。 自然環境への興 味 関心 を促すための機会 として も、定植→観察→水や り→収穫 とい う作物栽培 の体験 は、 と て も重要な ものであると考 えられる
:謝辞
アンケー ト調査 にご協力いただ きました静岡市内
10園の幼稚 園
(現こども園
)教員 の皆様 に、厚 く御ネ
L申し上げます。
引用文献
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pp l‐164藤井道彦 (2005)52生 物生産教 育の実践 技術科教育総論 日本 産業技術教育学会発行
pp 151‐155
藤井道彦・大橋由梨 (2015)作 物栽培 を通 した小学校 における食育 に関す る研究 静岡大学教 育学部附属教育実践総合セ ンター紀要
23 pp3541グレイグ
,スー
,グラハム パ イク
,デイヴィッ ド・セルビー
(1998)環境教 育入 門 明石
書店
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(21107)環境教育指導資料
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htp:〃
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内閣府 (2011)第
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