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向医大誌 52(2):193〜195,1994
先天性大動脈二尖弁の臨床的検討
Clinical Study of Congenital Bicuspid Aortic Valve
東京医科大学八王子医療センター心臓血管外科 *東京医科大学外科学第二講座
福島洋行 張 益商 首藤 裕
小長井直樹 工藤龍彦 古川欽一・*
はじめに (1981年4月〜1993年9月)表1大動脈弁手術症例 先天性大動脈二尖弁は,欧米では頻度の高い疾患
であるが,本邦では,近年まであまり注目されてい なかった.しかし最近になって,先天性大動脈二二 弁の報告も増え,臨床的検討も加えられるようにな った1)〜4).そこで,当施設における先天性大動脈二二 弁の症例を対象とし,その臨床的所見について検討
したので報告する.
対象と症例
症例数 男女比 平均年齢 三尖弁 77
i84.6%)
53124 51.0
二尖弁 14
i15.4%)
13:1 44.9
合 計 91 66:25 50.1
表2大動脈弁狭窄・閉鎖不全の割合
1981年4月から1993年9月までに,当施設で行 った大動脈弁手術症例91例(弁置換術90例,弁形 成術1例)について検討した.
この中で,術中観察で先天性大動脈二尖弁と考え られた症例は14例あり,発生率は15.4%であった.
男女比は,大動脈三尖弁症例が53対24であるのに 対し,二尖弁症例は13対1と圧倒的に男性に多かっ た.年齢は,三尖弁症例が平均51(15〜74)歳であ るのに対し二尖弁症例は平均45(17〜67)歳とやや 若年傾向にあった(表1).
大動脈弁膜症の病型別でみると,三尖弁症例は閉 鎖不全症のほうが多いが,二胡弁症例は狭窄症7例,
閉鎖不全症7例と三尖弁症例に比べ狭窄症例が多い 傾向にあった(表2).また二尖弁症例は石灰化の著 明なものが多く(図1),狭窄例の7例中6例は,高
AR
AS ASR三尖弁症例 弁症例
45 V
12 V
20 O
AR :大動脈弁閉鎖不全 AS :大動脈弁狭窄
ASR:大動脈弁狭窄兼閉鎖不全
度な石灰化のため手術の際に弁尖を切除するのに難 渋した.さらに閉鎖不全例のなかにも石灰化が高度 なものが1例あった.
二尖弁はその解剖学的位置関係から,左右冠尖型 と前後尖型にわけられるが4)5),左右冠尖型が8例,
前後尖型が6例であった.また弁尖の一方に弁尖を 二分するようにしばしば見られるRapheの有無を みると,Rapheが確認できたものは3例のみであ
り,いずれも閉鎖不全症例であった(表3,図2).
(1993年!2月20日受付,1993年12月22日受理)
Key words;先天性大動脈二尖弁(congenital bicuspid aortic valve),大動脈弁膜症(aortic valve disease),石 灰化(calcification)
(1)
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東京医科大学雑誌 第52巻第2号
難
磯
図2 大動脈二才弁閉鎖不全症例
(注:弁尖自由縁は写真では外側,矢印はRaphe)
表3二尖弁の位置関係とRapheの有無
図1大動脈二尖弁狭窄症例
考 察
先天性大動脈二尖弁は欧米では頻度の高い心奇形 であり,全人口の約2%に存在するとされる5).本邦 では全人口に占める割合は明らかではないが,最近 になって,二尖弁の報告も増え,大動脈弁手術例の 約11〜19%に存在したとされ1)2)3),我々の検討でも 約15%に認めており,本邦でも比較的多く存在する
と考えられる.
また,男女比では男性に多いとされているが5)6),
我々の症例でも13:1と圧倒的に男性に多かった.
先天性大動脈二三弁は無症状に経過するものも多 いが6),その形態的異常から,加齢とともに弁尖の肥 厚や石灰化による狭窄,または弁尖の変形や逸脱に よる閉鎖不全が発生してくる可能性は高いと考えら れる.特1と暉暉の石灰化による狭窄病変は進行が早 いとされ5>6),我々の症例でも,狭窄例のほとんどが
左右昏惑型 前後尖型 Raphe(+)
AR例
̀S例
44 33 3/7
O/7
計 8/14 6/14 3/14
高度の石灰化を呈していることなどから,無症状で あっても大動脈二尖弁症例は,定期的にfollow up する必要があり,弁尖の病変が進行した場合には,
早期に手術を考慮する必要があると考えられる.
二尖弁の位置関係による分類やRapheの有無に
ついての検討も行われ}ご吟るが2)4)5),今回の検討で は,左右冠尖型と前後尖型とに大きな差はなかった.
またRapheを確認できたものは14例中3例のみ で,いずれも石灰化の少ない閉鎖不全症例であった ことから,石灰化の強い狭窄症例ではRapheの確認 自体が困難であることも考えられ,その臨床的意義 について検討することは難しいと考えられた.
大動脈二尖弁の手術に関しては,高度な石灰化の ため国国切除に難渋したり,弁輪狭小化のため弁輪 拡大を必要としたり,小サイズの人工弁の挿入を余 儀無くされる場合が多い2) )と考えられる.
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1994年3月 福島他5名:先天性大動脈二尖弁の臨床的検討 一 195 一 リュウマチ性弁膜症が減少しつつあるのに対し,
先天性大動脈二尖弁による弁膜症の頻度は今後増加 する傾向にあると思われる.大動脈弁膜症を管理す る上では,とくに大動脈二尖弁の存在とその臨床的 特徴を十分考慮して術前評価や手術を行うことが重 要であると考える.
結 語
大動脈弁手術症例中の先天性大動脈二尖弁症例に ついて検討した.発生率は,約15%であり,男性に 圧倒的に多かった.閉鎖不全症例と狭窄症例は同数 であったが狭窄症例は石灰化の著明なものが多かっ た.二尖弁の位置関係は,左右冠尖型が8例,前後 尖型が6例であった.Rapheが確認できたものは 14例中3例のみであり,いずれも閉鎖不全症例であ
った.
文 献
1)藤原 魏他:先天性大動脈二尖弁を伴う大動脈弁膜
症.日胸外会誌33(1):104〜108,1985.
2)山田崇之他;先天性大動脈二尖弁の臨床一とくにと Rapheの臨床的意義について一.胸部外科43(4):
258一一264, 1990.
3)浜田良宏他:先天性大動脈二尖弁及び四尖弁による 弁膜症手術症例の検討.日胸外会誌38(3):396〜400,
1990.
4)徳永裕之他:先天性大動脈二尖弁の分類と臨床的意 義一SJM弁を置換した85例の検討一.日胸外会誌
40(4) :467 一471, 1992.
5) Roberts W.C.:The congenitally bicuspid aortic valve. A study of 85 autopsy cases. Am J Cardiol 26:72一一83, 1970.
6) Mills P. et al:The natural history of a non−
stenotic bicuspid aortic valve. Br Heart J 40:951 一957, 1978・
(別刷請求先:〒160新宿区西新宿6−7−1 東京医科大学外科学教室福島洋行)
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