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溶着加工によるスパンコール素材の衣服製作 Clothing Production of Sequins Materials with

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Academic year: 2021

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研究論文

溶着加工によるスパンコール素材の衣服製作 Clothing Production of Sequins Materials with

Application of Welding Processing

Bunka Fashion Graduate University 文化ファッション大学院大学 Rie Yuki 助教 結城 里依

要旨:スパンコールが全面に刺繍されたスパンコール素材(シークイン)は高級素材 として知られ、時間をかけ熟練の技術者が縫製するものであったが、昨今では安価な 一般衣料や舞台衣装としても使用されるようになり、時間をかけずに簡易に縫製する 必要性が高まっている。

本研究では、スパンコール素材を溶着加工をもちいて衣服製作する方法を検討し、

作品の試作を通して、その縫製方法の有用性、仕様について考察した。

1.はじめに

1

全面にスパンコールが刺繍された、スパンコー ル素材は一般に高級素材として知られており、オ ートクチュールのドレスなどの高級衣料で使用さ れるものであったが、近年では安価な一般衣料や 舞台などの衣装製作素材としても使用され始めて いる。しかし、要求される期間や工賃から高級素 材と同様の方法で製作することは難しく、簡易な 方法で仕立てられているが、その仕上がりには多 くの課題をかかえている。

これまで溶着・接着加工はアウトドアウェアや スポーツウェア、下着などの製作方法として、商 品に防水や防風、軽量化などの付加価値を与える 加工として活用されてきたが、高級素材を溶着加 工した商品や研究がなされてきた前例はみられな い。

今回の研究は、溶着技術が熱可塑性のある素材 に対して有効であることと、現在製造されている

提出年月日:2019 年 1 月 15 日 受理年月日:2019 年 2 月 28 日

スパンコールの材質が熱可塑性素材であることを 合わせて考えたとき、溶着衣料で使用されている 素材同様、スパンコール素材も溶着加工が可能で はないかとの仮説によるものである。

まず、現状のスパンコール衣料の縫製について まとめ、次に溶着加工したスパンコール素材の強 度試験を行った。試験結果をもとに、新たな縫製 方法の提案として溶着加工をもちいて衣服製作す る方法を検討し、作品の試作を通してその製作方 法の有用性、仕様についての考察を行った。

2.スパンコール衣料について 2-1.スパンコール素材

スパンコールはスパングルがなまった名称で、

海外ではシークインと呼ばれている。金属やプラ

スチックでできた薄いボタン状の装飾品で、古く

は金属で作られていたが、現在市場に出回るスパ

ンコールの殆どはポリエステル、ポリ塩化ビニル

のフィルムに着色したものとなっている。スパン

コールの自動取り付け機能を持った刺繍機が

(2)

1986 年に開発され、その名称が「シークイン刺繍 機」であるため、日本においても業者間ではシー クインと呼ばれている

1-2

スパンコール素材は、スパンコールの形状、と めつけ方、刺繍量、基布素材、刺繍糸の組合せに より様々な種類のものがつくられている。

2-2.スパンコール衣料の製作方法

現在市場に見られる、全面にスパンコール刺繍 がほどこされた衣料の製作方法を、その技法が主 に使用される商品の価格帯により 3 つに分類した。

(1)オートクチュール技法

スパンコールを手刺繍し、生地の段階から製作 する技法で、オートクチュールドレスなどで使用 される。

製作方法は、刺繍の土台となる基布を刺繍木枠 に張り、パターンと図案を写しとる。縫い合わせ 分を残してスパンコールを手刺繍し、パターン形 状にカットする。ミシンもしくは手縫いで縫い合 わせたあと、縫い目にスパンコールを手刺繍で縫 い足すことにより、縫い目が分からない仕上がり となる。

製作に長い時間と、熟練の刺繍技術が要求され る技法で、刺繍専門のアトリエなどで製作されて いる。

(2)プレタポルテ技法

既成の機械刺繍されたスパンコール素材を使用 し、ミシン縫製前に縫い目のスパンコールを外し てから製作する技法で、プレタポルテのドレスな どで使用される。

製作方法は、既成のスパンコール素材をパター ン形状にカットし、縫い目と縫い代にかぶるスパ ンコールを外す。ミシンで縫い合わせたあと、縫 い目にスパンコールを手刺繍で縫い足すことによ り、縫い目がわからない仕上がりとなる。

スパンコールを外すために時間がかかり、スパ ンコールを手刺繍する刺繍技術が要求される。

(3)一般衣料技法

既成の機械刺繍されたスパンコール生地を使用 し、縫い目のスパンコールを外さずにミシン縫製 して製作する技法で、安価に流通する一般衣料に スパンコール素材が使用されるようになったこと から、簡易に縫製できるこの方法がとられるよう になった。

製作方法は、既成のスパンコール素材をパター ン形状にカットし、縫い合わせ、縫い目に折りア イロンをかけて仕上げる。

縫い目と被っているスパンコールがミシンで縫 いとめられるため、縫い目にアイロンをかける際 に生地と一緒にスパンコールを折る必要があるが、

スパンコールは材質が硬く十分に曲げきることが できないため、縫い目にかぶったスパンコールが 着心地を悪くする原因となり、見た目の仕上がり へも悪影響を与えている。

3.溶着・接着加工技術について

現在、繊維製品において使用されている溶着加 工技術は超音波の振動エネルギーを利用したもの が主流である。超音波振動が対象素材との境界面 に伝わり発生する強力な摩擦熱と加圧によって、

瞬時に溶解することで対象素材同士を溶着する技 術である。熱による溶解が必要なため、対象素材 は熱可塑性のある素材に限られる。

この研究では、溶着加工にクインライト電子精 工 株 式 会 社 製 ア ー ム 可 変 型 超 音 波 ミ シ ン LWU-3015-4BT(超音波発振周波数 30kHz 固定)

を使用した。

(3)

図 1 超音波溶着機

この機械では超音波を伝える共鳴体である上 側のホーンから対象素材に超音波エネルギーを加 え、下側で回転するアンビルとの接触面が溶着さ れていく仕組みとなっている。ホーンの圧力調整 機能による圧力、アンビルの種類による接触面の 幅、速度設定、出力設定値により、溶着具合が変 化する。アンビルと対象素材の接触面に圧力が加 わることにより溶着と同時に対象素材が切断され るため、衣料製作においては縫い代のない仕上が りとなる

3

溶着加工を使用した衣料は、接着加工を併用し て製作されるものが多い。 市場にある溶着衣料は、

超音波加工した溶着面の補強として裏側からシー ムテープ

1

を接着しているものがほとんどであ る。また、ホットメルト

2

で素材同士を接着し て製作された衣料も市場に流通している

4

4.研究方法

スパンコール素材に適した溶着条件を見つけ、

その加工状態が衣料として着用するのに耐えられ るか測定する方法として、縫い目強度の試験を行 った。

4-1.試料選定

研究で扱う試料について次のように選定した。

4-1-1.スパンコール素材

今回の研究では縫い目に被るスパンコールの処 理の提案を目的の一つとしているため、縫い目の トラブルがおきやすい、基布に対しスパンコール が全面に密に刺繍された種類のスパンコール素材 を選定し、研究を進めていくこととする。これら の条件により選定した試料は次の 2 種類である。

表 1 スパンコール試料

試料 A 試料 B

ポリエステル 100%の オーガンジーを基布 として、直径 7mm の 円形、平型のスパンコ ールが透明のナイロ ン糸で均等に 3 箇所と めつけられ、たて糸方 向・よこ糸方向それぞ れ 100mm 間に約 19~

20 個ずつ配置されて いる

ポリエステル 100%の ジ ョーゼッ トを基布 として、直径 7mm の 円形、平型のスパンコ ー ルが透明 のナイロ ン糸で均等に 3 箇所と めつけられ、たて糸方 向・よこ糸方向それぞ れ 100mm 間に約 13~

14 個ずつ配置されて いる

4-1-2.副資材

一般に流通する溶着加工によって製作された衣

料同様、この研究でも溶着面の補強に副資材とし

てシームテープを使用することとした。使用する

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シームテープは、サン化成株式会社の MELCO テ

ープ RF-6200 の 13mm 幅を強度試験の基準とな

るものとして選定した。

溶着衣料の量産現場では、副資材であるシーム テープは連続テープ貼り機を使用し接着されるが、

スパンコール素材は硬い材質のため連続テープ貼 り機の使用には不向きであることから、アイロン を使用し接着する。アイロンの設定温度は、シー ムテープの接着剤の溶解温度、スパンコールの材 質を考慮し 130°とした。

4-2 溶着・接着加工条件

超音波溶着機でスパンコール素材を溶着し、良 好な溶着面

3

が得られた加工条件を次に示す。

強度測定はこの設定を基準として行うこととする。

表 2 基準となる溶着加工の機器設定条件

出力 65%

アンビル 0

圧力 90Mpa

4-3.強度測定

JIS 及び ISO

46

を参考に、次の条件で布の 引張強度および縫い目強度をグラブ法によって測 定した。

4-3-1.試験条件

布の引張強度は 3 回、 縫い目強度は 5 回測定し、

試験布のタテ・ヨコそれぞれの方向についてニュ ートンの単位で最大強さの算術平均値を計算し、

小数点 3 桁で丸めた。

布 の 引 張 強 度 試 験 の 試 験 布 は 180mm ×

100mm の試験片 3 つ以上を一組とした。縫い目

強度試験の試験布は 200mm×700mm 以上の生 地試料を採取し、長い辺の平行に折り曲げて重ね あわせ、この方向に溶着機で縫い目を作成し、シ ームテープを接着、100mm 幅に試験片を切り取 り、5 つ以上の試験片を一組とした。

ゲージ長は 100mm とし、 伸長速度 50mm/min、

試験片が自重でつり下がるようにし、初荷重は加 えない。つかみ口の面積は 40mm×50mm である。

図 2 試験布・つかみ口の配置

5.結果および考察

試料 A・試料 B の布の引張強度、縫い目強度の 結果について表 3・表 4 に示す。

表 3 試料 A 試験結果

試験名 強度(N)

布の引張強度試験(タテ) 238.7

布の引張強度試験(ヨコ) 239.9

溶着加工(アンビル 0) (タテ) 89.48

溶着加工(アンビル 0) (ヨコ) 99.02

溶着加工(アンビル 4) (タテ) 115

溶着加工(アンビル 4) (ヨコ) 103.6

ミシン縫製(タテ) 203.54

ミシン縫製(ヨコ) 208.98

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表 4 試料 B 試験結果

試験名 強度(N)

布の引張強度試験(タテ) 484.13 布の引張強度試験(ヨコ) 445.2 溶着加工(アンビル 0) (タテ) 242.6 溶着加工(アンビル 0) (ヨコ) 448.4 ミシン縫製(タテ) 測定不能 ミシン縫製(ヨコ) 測定不能 日本衣料管理協会によると「一般に衣料の縫目 強度は、グラブ法で 10~15kgf 以上、ミューレン

形法で 4~5kgf/㎠以上要求されるといわれる」

5

とされており、今回はグラブ法に準拠した実験を 行っているため、N(ニュートン)で換算すると

約 98~147N となる。一般衣料の本縫いミシン縫

製による縫合効率

7

は「80~85%程度が採用さ れる」

6

とされており、試料 A においてはタテ・

ヨコ約 190N、試料 B においてはタテ約 360N、

ヨコ約 390N となる。

試料 A の強度をみると、ミシン縫製では縫合効

率 80%を満たしているのに対し、溶着加工では約

40%となっている。溶着面を広くすると強度は上 がる傾向にあるため、アンビル 4 を使用した縫い 目でも強度を測定したところ、多少の強度の上昇 はあったものの縫合効率を満たすまでには至らず、

アンビルの変更は縫い目強度にそれほど大きな影 響を与えないことがわかった。縫合効率では基準 を満たさないものの、アンビル 4 を使用した実験 では衣料に要求される縫目強度を満たした数値が 出ており、アンビルとシームテープの組み合わせ 方により着用可能な強度のある衣料を製作するこ とが可能であることが推測される。

試料 B の強度をみると、溶着加工ではタテ約

50%、ヨコ約 110%とタテとヨコで数値に大きな

差がみられた。ミシン縫製の縫目強度は強く、使 用した検査機器の計測可能な最大数値を超えたた

め、計測不能となっている。試料 B の基布はジョ ーゼットで、ヨコの伸縮率が良く縫い目に力がか かりづらいこと、試料 A の基布であるオーガンジ ーに比べて試料 B の基布のジョーゼットはシーム テープと相性が良く、シームテープが基布にしっ かりと接着されていたことで高い縫い目強度を得 られたと考えられる。

スパンコール素材の溶着加工の強度には、シー ムテープと基布の相性が大きくかかわっているこ とが分かった

78

6.作品製作 6-1.作品 1

試験結果より、溶着加工でも強度を得られるこ とが分かった試料 B を用いて、 作品製作を行った。

製作したのはワンピースで、 後ろファスナーあき、

衿ぐり、袖ぐり、裾は見返し布で縫い返し、総裏 のふらし仕立てとした。見返しは表地のスパンコ ール素材の基布に合わせてポリエステル 100%の ジョーゼット、裏地はポリエステル 100%の布帛 を使用した。

身頃の切り替え線の縫い合わせはすべて溶着加 工とシームテープ接着で仕立てた。

図 3 前身頃・裏側

衿ぐり、袖ぐり、ファスナーあきは見返し布と

スパンコール素材を超音波溶着し、縫い目補強の

ためにホットメルトを縫い目に接着し、表に返し

(6)

た。この仕立て方では、スパンコール素材の端が 見返し布で 1mm ほどくるまれるため、スパンコ ールの切れ端が直接肌に触れることによって生じ る肌トラブルを防ぐことができる。見返し布が表 からトリミングのように見えるため、デザイン的 に許容できる場合に、有効な仕立て方法である。

図 4 見返し工程・1 図 5 見返し工程・2

図 6 見返し工程・3 図 7 見返し工程・4

図 8 見返し工程・5 図 9 見返し・完成

ファスナーは、溶着加工で作成したあき口にホ ットメルトシートで接着した。あき口を作るため の縫い代幅が不要であったため、背中心に接ぎ目 を入れることなく、ファスナーを付けることがで きた。今回は接着によるファスナー付けを行った が、要求される衣料の強度により、ミシンステッ チや手縫いでの星止めなども、仕立て方の選択肢 としてあげられる。

図 10 ファスナー付け 図 11 ファスナー部分

完成

図 12 作品 1・前 図 13 作品 1・後ろ

図 14 作品 1 ・右 図 15 作品 1 ・左

(7)

溶着加工を用いてスパンコール素材で衣料を製 作をした結果、次の事項が明らかになった。

①スパンコールを基布から外す必要がないため、

製作時間は一般衣料技法と同程度であった。

②縫い目でスパンコールが切断され縫い代がなく なるため、縫い目がフラットに仕上がり、鋭角の 切り替えがしっかりと表現される。

③スパンコールを刺繍している糸も溶着によって 切れてしまうため、繰り返しの洗濯を想定した場 合、刺繍の補強を検討する必要がある。

④スパンコール素材同士の溶着だけでなく、熱可 塑性のある異種素材とも溶着可能である。

⑤作品 1 では見返しの展開をせずパターン製作し た結果、表地に少量の余りが出てしまった。袖ぐ りや衿ぐりを溶着で縫い返す場合には、スパンコ ール素材の端がくるまれる分量分のパターン展開 が必要であった。

6-2.作品 2

研究過程で得られた知見をもとに学生へスパン コールの溶着加工方法を指導し、学生が作品製作 を行った。製作したのはヘッドドレスで、使用し た素材は、ポリエステル 100%のサテンの基布に、

円形、平型のスパンコールが黒いナイロン糸で 1 箇所とめつけられ、手で撫でるとスパンコールの 表裏がひっくり返り、表面の色が変わる特殊なス パンコール素材である。

図 16 作品 2 で使用したスパンコール素材

頭の形に添うように成型するため、自由に形を 変形できるボーンを両サイドから頭頂部と、裾周 りにシームテープで接着した。

図 17 ヘッドドレス・内側

内側にもスパンコール素材を見返しとして使用 したが、スパンコール素材同士で縫い返すことは 困難だったため、縫い代分となる見返しを別布で 表のスパンコール素材に溶着してから、溶着した 別布にスパンコール素材をホットメルトで接着す る方法を試みた。

図 18 見返しと端処理

頭頂部は縫い代が重なり、本来であれば縫い代

の処理が難しい部分だが、溶着では縫い代がない

ためフラットに仕上がった。

(8)

図 19 頭頂部

完成

図 20 作品 2・前 図 21 作品 2・後ろ

図 22 作品 2・右 図 23 作品 2・左

作品 2 を製作した結果、次の事項が明らかにな った。

①特殊なスパンコール素材でも溶着加工が可能で あるが、溶着面でスパンコールが固定されるため 色が変化しなくなることが難点となる。縫い目で も色が変化するように仕立てるには、プレタポル テ技法を用いる必要があるが、製作期間や価格、

製作者の技術によっては難しい場合もある。その ような場面での選択肢として、溶着加工を用いた 製作は有効である。

②縫い代がなく、 フラットに仕上がる溶着加工は、

まるい頭の形にも綺麗にフィットさせることがで き、シームテープを溶着面の裏に接着しているた め肌あたりがよく、裏地をつけなくても髪の毛が スパンコールに引っかからないことが利点となる。

③スパンコール素材をはさみで裁断すると切れ端 からスパンコールがはずれるため、端処理方法が 重要となるが、溶着加工で裁断するとスパンコー ルと刺繍糸、基布が溶着され、切りっぱなしでも スパンコールがはずれない状態となり、スパンコ ール素材の端処理方法として有効である。

④作品を製作した学生にスパンコール素材の溶着 加工の難易度を確認したところ、急なカーブは縫 いずれに気を付ける必要があるが、ミシン縫製と 変わらない感覚で製作できたとのコメントがあっ た。刺繍技術が必要なく、短時間で製作できる点 は溶着加工の利点と言える。

7.おわりに

溶着加工によるスパンコール素材の衣服製作は、

舞台衣装製作を行っている友人との会話をきっか けに、高級素材を早く簡単に縫える方法があれば 製作現場が助かるのではないかと考え、研究し始 めたものである。

日本における労働人口の減少が聞かれる近年、

縫製業では労働力が集まらず、日本での衣料生産 は難しさを増し、高品質なモノづくりを支えてき た熟練の縫製工の育成も難しくなってきているよ うに思う。難しい素材を縫い上げられる熟練の技 術を持つ国内の職人はこれから減っていくことが 予想される。高度な職人技術の継承も課題の一つ であるが、職人技術を用いずに高品質なモノを作 り上げる仕組みづくりも今後取り組んでいく必要 がある課題の一つと考える。

今回の研究では、作品製作を通して見つかった

難点を解決するまでには至れなかった。効率と見

(9)

た目を両立したスパンコール素材の衣服製作方法 を考えることは今後の課題としていきたい。

溶着加工を利用した製品が市場に出回り、目に する機会も増えてきたが、その用途はまだ限られ たものとなっている。今回の研究が溶着技術活用 の幅を広げる一助となることを期待している。

注釈

1)シームテープは超音波溶着の補強に接着され るテープで、プレス機などによる加熱により接着 する。縫い目の補強の役割の他、防水・防風機能 を持たせる役割もある。

2)ホットメルトはポリウレタン製のフィルム状 両面接着材でプレス機などによる加熱と冷却によ り接着する。

3)良好な溶着面とは、超音波ミシンで加工した 際に溶着・裁断された断面が平滑で、テープ補強 前のアイロン作業時に分離しない程度の強度のあ る状態をいう。

4)JIS 1096

5)JIS L 1093:2011 6)ISO 13935-2

7)縫合効率(%)=

縫い目強度原布強さ

×100

8)アンビルは数値が小さいと鋭角に、数値が大 きいと鈍角になり、溶着面積と素材にかかる圧力 が変化する

参考文献

1)ジョージナ・オハラ(1988) 『ファッション辞

典』 (深井晃子訳)平凡社 p78 2)株式会社タナベ刺繍

http://www.e-tanabe.net/blog/index.php?e=147

(参照日 2019-1-15)

3)日本アレックス株式会社

http://www.nalex.co.jp/technology/tech-welder/p

rinciple/(参照日 2018-12-21)

4)加藤登志子(2015) 「溶着・接着技法による衣

服製作の可能性」 『文化ファッション大学院大学紀 要論文集』学校法人文化学園 文化ファッション 大学院大学 vol.4 p52-61

5)日本衣料管理協会刊行委員会編(1999) 『繊維

製品試験』 (第 3 版)日本衣料管理協会 p149 6)同上 p148

7)繊維製品試験マニュアル編集委員会編(1981)

『 繊 維 製 品 試 験 マ ニ ュ ア ル 』 日 本 規 格 協 会 p31-p42

8)日本衣料管理協会刊行委員会編(1983) 『繊維

製品試験法』 (第 2 版)日本衣料管理協会 p108-111

図 1  超音波溶着機    この機械では超音波を伝える共鳴体である上 側のホーンから対象素材に超音波エネルギーを加 え、下側で回転するアンビルとの接触面が溶着さ れていく仕組みとなっている。ホーンの圧力調整 機能による圧力、アンビルの種類による接触面の 幅、速度設定、出力設定値により、溶着具合が変 化する。アンビルと対象素材の接触面に圧力が加 わることにより溶着と同時に対象素材が切断され るため、衣料製作においては縫い代のない仕上が りとなる 3 ) 。    溶着加工を使用した衣料は、接着加工を併用し
図 19  頭頂部  完成  図 20  作品 2・前        図 21  作品 2・後ろ  図 22  作品 2・右        図 23  作品 2・左    作品 2 を製作した結果、次の事項が明らかにな った。  ①特殊なスパンコール素材でも溶着加工が可能で あるが、溶着面でスパンコールが固定されるため 色が変化しなくなることが難点となる。縫い目で も色が変化するように仕立てるには、プレタポル テ技法を用いる必要があるが、製作期間や価格、 製作者の技術によっては難しい場合もある。その ような

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