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原価企画の導入に関する予備的考察 : ある電気機器 メーカーの事例研究

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経営 と経済 第 8 4 巻 第 2 号 2 0 0 4 年 9 月

原価企画の導入に関する予備的考察 : ある電気機器 メーカーの事例研究

81

近 藤 隆 史

Abst ract

Thi ss t udya i mst oc l e a rupt hepr o c e s so ft a r ge tc o s tma na ge me nt c ha nge.Ba s e do ni ns t i t ut i o na lpe r s pe c t i ve[ Bur nsa ndSc a pe ns , 2 0 0 0 ], t hi spa pe rr e po r t so nl o ngi t udi na le mpi r i c a ls t udyo ft hei mpl e me nt a t i o n o fat a r ge tc o s tma na ge me nti na ne l e c t r i ce q ul pme ntC O mpa ny.Fi r s t , t hei ni t i a li ns t i t ut i o na lr e a l m i sde f i ne da ndt hepr o c e s so fi ns t i t ut i o na l i ‑ z a t i o n ( e nc o di ng,e na c t i ng,r 占 pr o duc t i o n,i ns t i t ut i o na l‑ i z a t i o n)o nt a r ‑ ge tc os tma na ge me nti sde s c r i be d.Se c o nd, t hee xt e nta ndna t ur eo ft a r 一 ge tc o s tma na ge me ntc ha ngei se va l ua t e dbydr a wl ngO nt hedi c ho t o‑

mi e so f ( 1 ) f o r ma lve r s usi nf o r ma lc ha nge,( 2 )r e vo l ut i o na r yve r s us e vo l ut i o na r yc ha nge,a nd ( 3 )r e gr e s s i veve r s uspr o gr e s s i vec ha nge.

Thi r d,t heo r ga ni z a t i o na lpe r f o r ma nc e sf r o m t hei mpl e me nt a t i o no ft a r 一 ge tc os tma na ge me nta r eo bs e r ve d.Fi na l l y,Wedr o w t hei mpl i c a t i o ns a bo utl o ngi t udi na le mpi r i c a ls t udyo ft hei mpl e me nt a t i o no ft a r ge tc o s t ma na ge me nt .

Key words:Ta r ge tc os tmana ge me nt;Manage me ntac c ount i ng c ha nge;I ns t i t ut i o na lpe r s pe c t i ve.

1 .はじめに

原価企画 に関する既存のケース研究は,その多 くが原価企画が既に導入さ

れ比較的長期の運用実績のある企業を対象 としている一方で,原価企画の導

(2)

人を扱 ったケース研究は少ない。原価企画の導入に至 った経緯や 目的 とは伺 か,原価企画の導入開始か ら実施 までのプロセス とは どの ような ものか,導 入により何が どの ように変化するのか,さらに導入による成果 とは どの よう な ものかな ど,原価企画の導入について具体的に明 らかにされていない点は 多い。

本稿の 目的は,以上の点を明 らかにするため,原価企画の導入のケースに ついて,管理会計チ ェンジ研究の制度論的パースペ クティブの観点か ら考察 を試みることである。吉 田 [ 2 0 0 4 ] は,原価企画の導入 と変更のプロセスの 解明には制度論的パースペ クテ ィブにもとづ く経時的なケース研究が有効で ある と主張 したが, もちろん,国内外 ともにこの種 の研究蓄積 には乏 しい。

ここで,管理会計チ ェンジ研究 とは,吉 田 [ 2 0 0 3 ] による と,管理会計シ ステム ・実務が,なぜ,どの ようにチ ェンジするかを明 らかにす る研究 と定 義 されている。制度論的パースペ クティブ とは ,Bur n sa n dSc a pe n s[ 2 0 0 0 ]

によって開発 された管理会計システム ・実務のチ ェンジの現象を制度化プロ セス として捉 えるための概念的フレームワー クであ る。

本稿で記述す るケースは,電気機器 メーカ ーK 社 ( 以下, K 社)での原

価企画の導入プロジ ェク トである。筆者 は,K社 での導入プロジ ェク トに その開始後の比較的早い段階か ら加わることがで き,原価企画の導入の変遷 を経時的 に観察 して きた。K社 お よび K社の原価企画導入について,次節 以降で示 される内容は,導入プロジ ェク トへの継続的な参加,関係者への聞 き取 り,議事録や内部資料な どの定性データの他に関連部署への質問票調査 の結果に もとづいている。

以下,本稿は,( 1 ) K社 および K社の原価企画の導入プロジェク トの概要 の説 明, ( 2) 調査概要の説 明 , ( 3) 分析枠組の設定, ( 4) 原価企画導入前の K 社の製品開発実務の把握 , ( 5)K 社の原価企画導入の制度化プロセスの記述,

( 6) 理論的考察,そ して,おわ りにかえて ' , ( 7) 本研究の意義 と限界,今後の

課題の提示へ と進む。

(3)

原価企画の導入に関する予備的考察 :あ る電気機器 メーカーの事例研究 83

2.K 社および K 社の原価企画の導入プロジェク トの概要

2. 1 組織 ・製品 ・財務

K社 は,電源装置 と画像処理用光学関連製品の開発,製造,販売 を行 う 電気機器 メーカーである。会社規模 は,従業員約 1 8 0 名,売上高約4 0 億 円, 経常利益約 1億円である。

組織形態は,機能別部門組織であ り,社長の直轄下に管理部,営業本部, 生産本部,光学機器部が設置 されている。生産本部は,品質保証部,技術開 発部,生産管理部に細分化 されている。営業本部は,関西,東京,名古屋, 福岡の 4つの営業地区か ら編成 されている。スタッフ部門は,品質管理委員 会,商品企画委員会,開発委員会,標準化委員会, TQC 推進委員会な ど, 社長の直轄下の常務委員会 として設置されている。

K社の主力製品は,業務用電源装置であ り,売上高の約8 0 %を占める。K 社の電源装置は,受注生産 を基本 とし,一品生産 か ら年間3, 0 0 0 台以上の量 産 までをカバー した多品種少量生産である。

製品の納入先は,家電 ,I T ,半導体 メーカーの他 に,大学 を含む工学系 実験施設,ガス会社,船舶や鉄道な ど輸送機器 メーカーなど多岐 にわた り, 用途に応 じて求め られる機能やスペ ックは異なる。電源装置の需要は,最終 製品の需要 と基本的には連動 している。プラズマディスプレイをは じめデジ タル家電市場の拡大や半導体 メーカーによる設備投資の拡大により,電源装 置の需要拡大が今後期待 される一方,家電や半導体 メーカーか らの厳 しい価 格引 き下げ要求 とよ り柔軟な受注対応に直面 している。

画像処理光学システム関連の製品 ( 以下,光学関連製品)は, LED 光源

技術の応用品である。光学関連製品は,年間1 0 0 台以上 ( 製品に よっては1 0

台以上)の見込み生産品である 。LED 光源を応用 した光学関連製品に関す

る K社の技術力は,関連市場 において比較的高い水準を維持 している一方

で,他社 との競争には,大幅なコス ト低減 と開発 リー ドタイムの大幅な短縮

(4)

が急務 となっている。

K社の製品を取 り巻 く経営環境 の変化 は,K社 の財務諸表 か らも確認で きる。平成 9 年 か ら平成1 4 年 までの財務諸表 による と,売上高に占める製品 原価の割合は,平成 1 0 年以降上昇傾 向にあ り,平成 1 3 年 か ら平成 1 4 年 にかけ てその傾 向は顕著になっている。また,原価率上昇の原因は,製品原価の上 昇ではな く,製品単価の下落が主な原因であることが分かる。

2. 2 導入プロジ ェク トの発足

K社 におけ る導入プ ロジ ェク トは,中期経営計画の一環 として社長直轄 の下で2 003 年 7 月に発足 した。 プロジ ェク トの 目的は,( 1 )K社 で実施可能 な原価企画の具体的な運用枠組 みを提示す るこ と ,( 2 ) 原価企画 を実際に運 用す ること , ( 3) 原価企画の実施 によ りコス ト低減や開発 リー ドタイムの短 縮な どの開発成果をあげ ることである。

導入プ ロジ ェク トには, コンサル タン ト1名 ( 以下 ,N 氏) が加 わ り, プロジ ェク ト進行の中心的な役割 を果た している。N氏は, 日本のある自 動車 メーカーで設計エンジニア として新車開発に1 5 年携わって きた経歴 をも ち,退社後, 日本企業 を中心 に原価企画の導入 と実施の指導 を主なコンサル テ ィング業務 としている。

原価企画の導入は トップダウン に よる社長の決定 であ る。K社 と取引関 係のある会社で開催 されたN 氏 に よる原価企画の講習会 に社長 が参加 した のが きっかけで,社長 が直接 N氏 に相談 を もちかけ, 自社 への原価企画の 導入に踏 み切 った。N氏 とは 2 年間の コンサルテ ィング契約を結 んでいる。

導入プロジ ェク トの発足 に際 して,社長 と各部門の部長 クラスで構成 され

る 「原価企画推進委員会 ( 計 1 3 名)」 と原価企画システムの立案,試行,定

着を担当する 「 原価企画構築チーム ( 営業 2 名,開発 6 名,調達 1名,生産

3名の計 1 2 名 )」 が編成 された。原価企画構築チームによる立案 内容につい

て,節 目節 目で評価,承認するのが推進委員会の役割である。その他にも,

(5)

原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 8 5

導入プロジ ェク トへの情報提供な どサポー ト役を担 う 「 原価企画システム実 行委員会 ( 計 1 5 名 )」 も編成 されているが,実質的な活動のほ とん どは原価 企画構築チームで実施 されている。 いずれのグループ も営業,開発,調達, 生産な ど部 門横断的に編成 されている。

経理部門か らは社内の制約か ら今回のプロジ ェク トに適 した人材が確保 で きなかった こともあ り,経理担当者 は含 まれていないが,代役 として,社 内 の経理 システムを含む情報システムの設計者である情報管理部の 1名が,経 理実務 にも熟知 しているとい うことか ら原価企画構築チームのメンバ に加わ

っている。

導入プロジ ェク トの進め方は,会議形式で隔週月 2回のペースで開催 され る ( 以下,プロジ ェク ト会議)。プ ロジ ェク ト会議の開催時間は,朝 1 0 時の 開始か ら夕方 5時までを基本 としている。プロジ ェク トの期間は 2年 が予定 されている。

会議の参加者は,開催 日によっては急な仕事や出張な どで若干の変動はあ るものの,基本的に原価企画構築チームが中心である。その他,主な参加者 としては,社長 と社内取締役構成員の一人で もあ り技術管理部長 を兼任 して い る 0氏の 2 名であ る。0氏は推進委員会の メンバで もあ る。社長 が全て の会議 に参加することはないが,0氏は毎回の会議 に参加 している。社長, 0氏, N 氏 お よび筆者 による会議終 了の懇談 で,その 日の会議 の内容 につ いて, 1 時間か ら 2 時間程度 かけ N氏か ら説 明がお こなわれ る。社長 がプ ロジ ェク トの会議 に参加で きない ときで も,社長 を交 えた終了後 の懇談は必 ずおこなわれている。

3 .調 査 概 要

先 に示 した導入プロジ ェク トの 目的を達成す るため,プロジ ェク トで対象

にしている原価企画の範囲は, ( 1 )目標原価の設定やその割 り付 けを含んだ

(6)

管理会計システム ・実務だけでな く ,( 2) サプライヤ との取引関係を含んだ 組織 内外の問題,さらに,( 3) VEや コス トテーブルな どその他製品開発 に 関わる情報システムの整備に及んでいる。そ して,導入プロジェク トのメン バには,原価企画の運用枠組の設定 にはじま り原価企画活動を組織内に定着 させるとい う役割が課せ られている。 したがって,原価企画導入の結果だけ でな く,そのプロセスを網羅的かつ具体的に考察するためには,原価企画導 入に関す る主な情報源 として K 社でのプロジ ェク ト会議の進行 に着 目し調 査することが必要 となる。

筆者 は, N 氏か らの紹介で 2 003 年 7 月か ら開始 した K 社での導入プロジ ェク トに同年 1 0 月か ら参加 している 。2 0 0 3 年 9 月以降,これまで 2 4 回のプロ ジ ェク ト会議が開催 されている。その内 ,2 0 0 3 年 1 0 月 と 2 0 0 4 年 2 月に推進委 員会の開催である。筆者がこれまで参加 したのは ,2 0 0 3 年 1 0 月 4 日, 1 1 月 8

日, 1 1 月 2 9 日 ,1 2 月 1 3 日 ,1 2 月 2 4 日 ,2 0 0 4 年 1 月 1 7 日 ,1 月 31 日, 2 月 1 4 日, 2 月 2 8 日 ( 推進委員会会議), 4 月 3 日, 4 月 1 6 日, 5 月 8 日, 5 月 21 日, 6 月 4 日, 6 月 1 2 日 ( 中期経営計画報告)の計 1 5 回である。

筆者がプロジェク ト会議に出席 した場合は,その会議の開始か ら終了まで 同席 し,会議の内容を出席者の発言や配布 された内部資料に基づいてメモ書 きではあるができる限 り詳細に記録 している。後 日,筆者が会議の経過報告 書を作成 し N 氏に提 出 して,内容に誤 りや誤解がないかを確認 して もらっ ている。

会議中の議論で不 明な点があれば,会議の休憩時間や昼食の時などを利用 して 0氏 に確認す るか,会議後の社長 との懇談のなかで質疑応答形式で確 認するようにしている。毎回の懇談に要する時間は 1 時間か ら2 時間程度で ある。

議事録 については,プロジェク トの参加 メンバによってローテンシ ョンで

作成 され,その他の内部資料 とともに,筆者がプロジ ェク ト会議 に参加でき

なかった場合で も,後 日受け取 ることにしている。その他,製品開発の現場

(7)

原価企画の導入に関す る予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 8 7

や工場の見学 もおこな っている。

定性 デー タの収集 の他 に, K 社の関係各部署 を対象 に製 品開発実務 の現 状把握 のため質問票調査 を実施 してい る。調査 の対象は,K社 の開発部 門 ( 2 8 名),生産部門 ( 1 7 名),営業部 門 ( 1 7 名)であ り,部門毎の正社員の全 数調査であ る。ただ し,生産部門に関 してはライン作業者ではな く管理者の みを対象 としている。

K 社 での これまでの製品開発の現状 を把握 す るこ とを 目的 に,過去 2 年 間の新製品開発 に限定 して ,2 0 0 3 年 1 2 月に 3 つの部門で実施 した。

回収後の聞 き取 り調査がで きるように,質問票 には所属部署,氏名の欄 を 設けることにした。回収 した質問票 は筆者が保有することに し,社長 および 0氏には開示 していない。 この ことは,配布時において被験者 に説 明 してい る。ただ し,集計結果 については, K 社 の製品開発実務 に関す る現状報告 とい う趣 旨の もとで,社長 ,0氏,N氏 に懇談の場 で筆者 か ら報告 してい る。

4. 制度論的パースペクテ ィブ :分析枠組の設定

本稿 における原価企画導入のケースに適用する分析枠組は,管理会計チ ェ ンジ研究の制度論的パースペ クティブである 。Bur nsa ndSc a pe ns[ 2 0 0 0 ] によって開発 された管理会計システム ・実務の制度化プロセスの概念モデル が図 1 に示 されている。以下, Bur nsa ndSc a pe ns[ 2 0 0 0 ] の概念モデル に ついて概説 する。

制度 とは, Bur nsa ndSc a pe ns[ 2 0 0 0 ] による と,古典派制度経済学 にお

ける一般的な制度の定義 に基づ き,不変的な思考や慣習 ( 習慣)な ど人間の

行動 に慣行 と一貫性を課す もの と説 明 している。ルール とルーテ ィンについ

ては, ルールが手続 きを形式化 したステー トメン トであるのにたい して, ルー

テ ィンは実務の遂行 において実際に使われている手続 きである と区別 してい

(8)

・ ‑・ ・ ‑‑‑ト

・ ・ ・ ・ ‑ ・ ・ ・ ・ ・ ‑・ ト

・ ‑・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‑・ ト

‑‑‑‑・ ‑ト

‑・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‑ト

アクションの領域

a= コー ド化 b= 規定 C= 再生産 d= 制度化

出典 : Bu msa n dSc a p e n 昏 【 2 0 0 0, p. 9 】 図 1 制度化プロセスの概念モデル

る。例 えば,管理会計実務 に関する社 内で明確 に規定 された公式マニ ュアル ( 社内規定)な どがルールであ り,ルーテ ィンはルール とは異な り社内で実 際に使われている管理会計実務の手続 きや慣習である。

制度化 プロセスについて ,Bur nsandSc a pe ns[ 2 0 0 0 ] によって次の よう に説明されている。 まず,制度 とアクシ ョンの領域の間でルール とルーティ ンが, ( 1 )制度の領域か らのルール とルーテ ィンの コー ド化 ( 矢 印 a),( 2) 新 しい ( あ るいは これまで とは異 な る)アクシ ョンの規定 ( 矢 印 b), ( 3) アクシ ョンの領域 か らの反応 に基づいたルール とルーティンの再生産 ( 矢印 C) ,そ して, ( 4) ルール とルーテ ィンの制度化 ( 矢 印 d) とい う一連のプロ セスを繰 り返 しなが ら時間の経過 とともにチ ェンジする。そ して,制度 とア クシ ョンの領域 もルール とルーテ ィンの一連のチ ェンジ ・プロセスの進行 と

ともに累積的にチ ェンジする。

K 社の原価企画導入のケースに制度論的パースペ クテ ィブを適用す る と,

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原価企画の導 入に関する予備的考察 :あ る電気機器 メーカーの事例研究 8 9

まず,原価企画導入前の K社 における製品開発 を特徴づけるルール とルー テ ィンの識別 といった制度の領域 の分析 が必要 になる。K社の導入プロジ ェク トにおける様 々な活動 を通 じて,制度の領域 か ら導入前のルール とルー テ ィンがチ ェンジの対象 としてコー ド化 ( 矢印 a) される と同時に,原価企 画の運用指針や枠組の具体化が進め られている ( 矢印 b) 。

また,原価企画の試験運用が段階的に実施 されている。試験運用 によって, 原価企画導入にたいする社内での反応がフ ィー ドバ ックされ,導入に伴 う管 理会計 シス テム ・実務 を含めた製 品開発のチ ェンジが評価 され る。 これは ルール とルーテ ィンの再生産 ( 矢印 C) のプロセスである。

時間の経過 に伴い,原価企画が何 らかの形で次第 に組織全体 に制度 として 定着す る ( 矢 印 d) 。 もちろん原価企画が制度の領域 に組み込 まれない可能 性 もある。原価企画の構成要素の どの部分が組み込 まれ,あるいは組み込 ま れないのかの識別は もちろん,原価企画の成果を測定することも制度化プロ セス全体の評価 をす る上では必要である。

5 .制度の領域の定義 :K 社における製品開発の現状

5. 1原価計算 ・管理会計システム

K 社 は個別計算 を採用 している。 これは, K 社 が創業以来,単品受注生 産 に長 く従事 して きた ことに起因す る。 しかし,受注品である電源装置であ って も,近年の取引状況か らする と,多数の類似品,量産品が急激な増加傾 向にあ る。後発である光学機器製品にして も,電源装置に比べ売上構成な ど が少ないことか ら,見込み ・量産品ではあるが,電源装置 と同様 に個別原価 計算である。

電源装置の製造原価 には,材料費 と外注委託費,設計費 ( 設計技術者の労

務費),組立費,開発費,製造間接費 ( 間接労務費,経費 を含む)が含 まれ

ている。 この内,直接原価 に分類 されるのは,材料費,組立費,設計費であ

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り,残 りは間接費に分摸 される。一方,光学関連製品の製造原価 には,電源 装置 とは異なって設計費は間接費扱いである。

直接材料費は,伝票記載の価格 と数量に基づいて実際原価が算定される。

外注委託費は,外注業先 との問で設定 された作業工数 と工数 レー トによって 算定されるのが通常である。 これ らの原価は価格部分についてのみ標準原価 管理が行われている。

設計費 と組立費は,それぞれ担当者の個人 レー トと作業 日報 に基づいて計 算 される。個人レー トは,担当者の経験年数な どに応 じて決定される。電源 装置の開発費 ( 金型費,検査設備などを含む)は,顧客 との価格交渉時に予 算額が設定 されるのみで,年度予算で一括管理 されている。製造間接費の配 賦は,間接費の合計額に配賦率を乗 じて計算する一括配賦法である。

社内組立に関する工程間の原価の振替には,振替原価 に外注委託費が利用 されている。営業は,最終の振替原価 に ( 営業部の)利益を加えて最終の売 価 を設定 している。 K 社では内部利益 を含む形で各工程の管理が行われて いる。

5. 2 製品開発プロセス ・開発ツール

開発に携わる人数は派遣社員 も含め 35 名ほど,生産は 45 名,営業 2 0 名であ る。新製品開発には通常,製品当た り営業,開発,調達,生産か ら合計 5 名 か ら6 名程度の担当者がそれぞれの業務に携わる。

製品開発プロセスは,見積 ( 光学関連製品の場合は商品企画),基本設計, 詳細設計,調達,生産 といった順に進行する。開発プロセスは リレー方式で, フロン トローディング開発のために調達,生産が見積 ( 商品企画)や設計の 段階か ら加わることは組織的に行われていない。

購買については,人数の制約 もあ り,一部購買業務を開発が請け負ってい

る。 このため,設計段階で新規部材の購入が必要になった ときで も,設計担

当者か ら発注できることか ら, 部材の発注権限が開発組織内に分散 している。

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原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 91

また,購買は指図書単位で部品の発注をおこな うため製品横断的に仕入れ先 との価格交渉が行えないことや,外注加工 ・組立の場合は,委託先 にもよる が,組立や加工 に必要な部材を K社側で予め手配 してお く必要 があ るな ど, 本来的な購買業務を実施することが困難 になっている。

VE手法 に基づ く設計は,一部の設計エンジニアが採用 されているな どエ ンジニアの裁量 による。部材のコス ト情報は指図書別 に社 内のホス トコンピ ュータで管理 されている。ただ し,過去の製品に関 しては部材の コス ト情報 が更新 されてお らず,類似品の コス ト比較 が事実上困難 になっている。また, 指図書の管理が設計 を担当 したエンジニア個人 に任 されていることか ら,コ

ス ト情報や設計 ノウハ ウの共有が希薄になってい る。

5. 3思考 ・慣習 ・ルーテ ィン

制度の領域は,公式のシステムやマニ ュアルな どの顕在化 した ものだけで はない。組織 に広 く浸透 ( または定着) している思考や慣習 ・ルーティン も 制度の領域 を構成す る。制度の本質的な理解 には,組織 メンバが どの ような 思考や行動原理 に基づ き業務を遂行 しているのか,ルール とは区別 されてい

る慣習 ・ルーテ ィン とは どの ような ものかを識別する必要がある。

本稿 では, K 社の製品開発の現状 を把握 す るため 2 003 年 1 2 月 に質問票調 査 を実施 した。調査概要は先 に示 した通 りである。

以下 では,質問票調査 に よる単純集計の結果 に も依拠 しなが らK社 の製 品開発実務 の慣習 ・ルーテ ィンを記述する。サンプル数の制約 か ら集計結果 の統計的解釈は本稿では避けるが,全数調査 とい うこともあ り,単純集計か らで も K社 の管理会計や製品開発 に関わ る実務上の思考や慣習 ・ルーテ ィ ンを把握す ることは可能である。

まず,開発事項 ( 製品 コンセプ ト,機能,原価 ,納期)の中での優先順位

第一位 か ら第三位 を設計 エンジニアに尋 ねた ( N‑28) 。集計の結果,優先

順位第 一位 として選択 された項 目は 「機能 ( 35. 7%) 」 , 「製品 コンセプ ト

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( 32. 1 %) 」 , 「 納期 ( 28. 6%) 」で大半 を占め,原価 を第一位 に選択 した人は 3. 6% と少なかった。反対 に第三位 に最 も多 く選択 されたりが 「原価 ( 57. 1

%)」 であった。設計エンジニアの この ような優先順位 がいわば設計 にたい する思考や判断基準 とな り製品開発行動 に少なか らず影響を及ぼ していると 考 え られ る。

次に,何 らかの対応 に迫 られる 「コス ト高」 , 「 納期の遅れ」 , 「 設計変更」

といった業務上の問題 にこれまで開発部門は どの ように対応 して きたのかに ついて尋ねた。まず,設計エンジニアによるこれ らの問題の経験の有無につ いては,コス ト高が 6 8% ,納期の遅れが 93 % ,設計変更が 86 % というように 高い割合での経験あ りとの回答であった ( N‑28) 。

では,実際の具体的な対応 について,開発 目標 ( 機能,原価,納期)の緩 和を複数回答の形式 で尋ねた。設計変更への対応 ( N‑24) には,機能,原 価,納期の 目標緩和 がそれぞれ 2 0. 8 %,1 6. 7 %,37. 5 % であ り 「 納期 目標の 緩和」が最 も多かった。 同様 に,コス ト高への対応 ( N‑1 9) は,それぞれ 26. 3%,42. 1 %,26. 3% であ り 「原価 目標の緩和」が,納期遅 れへの対応 ( N‑26) は,それぞれ 7. 7%, l l. 5%,57. 7% であ り 「 納期遅 れの緩和」

が最 も多かった。

開発 目標の緩和は,開発 目標達成に関わる トレー ドオフの問題であ り,製 品毎 に何 らかの判断基準が存在 していることが想定 され る。「 機能 と原価」,

「 納期 と原価」 , 「 機能 と納期」の トレー ドオフの基準が明確であ ったかどう かを開発部門に尋ねた ( N‑28) 。 どの基準 について も 「どち らともいえな い」の回答が 40% 前後 を占めていた。

開発 目標のプライオ リテ ィは開発指針 を決定する上で重要であ るが,上で

確認 した ように K 社の場合は,マニ ュアルや社 内規定 な ど,形式化 された

ステー トメン トが予め用意 されているのではな く,製品によっては必要 に応

じて トレー ドオフの基準が明示 された り,あるいは開発を担当す る設計エン

ジニアの経験や裁量が大 き く影響 していると考 え られる。

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原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 9 3

製品開発 プロセスの状況に関 しては,開発部門に営業 ・生産部 門 との連携 と部品共通化 を促す指針の明確 さについて尋 ねた ( N‑2 8 ) 。結果の詳細は 省略す るが, どの指針 について も , 「どち らともいえない」や 「( ほ とん ど) 明確ではない」の回答が多数を占めてお り,開発 においてそれ らの指針 は明 確 にされていない。

製品原価 の見積や コス ト低減 目標の設定は,先 に示 した振替原価 との関係 が深い。振替原価制度の導入は会社設立当初か らであ り,その当時の工場は 組立工程別 に分散 して立地 していた。内部利益 を含んだ原価振替制度の導入 は,会社設立当初 における経営環境が厳 しかった ことや,工程 ( 工場)が別 々に分‑ かれていた こともあ り,各工程の管理者 に利益意識をもたせ るため各 工程 を利益責任単位 と位置づけ,各工程の利益管理 を徹底するこ とが 目的で あった。しか し,製品の性質上,市場価格の把握 が困難であった こと,また, 事業の拡大 とともに受注量 と単価 もそれぞれ安定 し景気が好転 した ことによ

り,設定 された振替原価の中で営業 と生産 ともに必要な利益を確保 しやすい 経営環境下 での運用が長期間続いた。

原価振替制度の導入 とその定着に伴い,開発部 門による製品の原価見積の 際にも振替原価が使われるようになった。開発部門は振替原価 をベースにし た積み上げ原価 を達成することで会社全体 に利益貢献で きた。 しか し,近年 の顧客からの価格引 き下げ要求によ り,営業,生産,さらに開発の間で これ までの ように利益をそれぞれ確保す ることが困難 になった。製品単価の引 き 下げに伴 う原価率の上昇が K社の経常利益 を圧迫 しているこ とは先 に も述

べた通 りである。

原価企画 では開発上流段階で 目標原価が計算 され,コス ト低減の 目標値 が 明示 される。 K 社 の開発部 門に課せ られ るコス ト低減 の設定の状況は どう だろうか。 K社の開発部門 にコス ト低減の 目標 の 明確 さを開発 の構想段階

( N‑1 5 ) と設計段階 ( N‑2 6 ) に分けて尋 ねた。 どち らの段階 において も

「明確 ではない」の回答が3 0 % を超 え , 「どち らともいえない」の回答 と合

(14)

わせ る とそれぞれ 70% 前後 を占めている。開発 目標 の設定時 に振替原価 を ベースに算定 された見積原価が開発部門の達成すべ き原価の 目標値 とな り, 特 にコス ト低減 としての 目標値が明確 に設定 されていない。

原価企画では適切 な 目標原価の設定のため見積原価 には一定の精度の高 さ が要求 され,またその算定基準 も明確 になっていることが一般的である。K 社の開発部門に構想段階 ( N‑1 5) と設計段階 ( N‑26) それぞれにおける 見積原価 の算定基準の明確 さについて尋ねた。「明確 にされていた」の回答 は構想段階で 0. 0% ,設計段階で 7. 1 % と低 く,「明確 でなかった」の回答は 構想段階 で 66. 6% ,設計段階で 35. 7% とい う結果 か らす る と, K 社 には明 確な見積原価の算定基準は存在 していない と言える。

これは もちろん全ての原価項 目について とい うことではない。 この ような 結果 にはい くつかの原因が考 えられ る。例 えば,開発費の償却期間 ( あるい は償却台数)の設定 は,見積原価 を大 き く左右 させ るが, これは K 社の電 源装置の場合,営業 を通 じた顧客 との交渉に大 き く依存する。 さ らにその交 渉の結果 を受けて具体的な償却期間や償却方法の最終的な判断を下すのは径 営 トップ層であるため,特 に開発部門に とっては見積原価の算定基準の一部 がブラックボ ックス化 されているとい うのが大 きな要因の一つであろう。

見積原価の精度 については,K社の開発部門に構想段階 ( N ‑1 5 ) と設計

段階 ( N ‑26) それぞれにおける見積原価 の変更の頻度で尋 ねた。「全 く変

更はなか った」の回答は構想段階で 6. 6% ,設計段階で 1 4. 3% であった。見

積原価の変更理 由については複数回答で尋ねてい る ( N‑28) 。最 も多かっ

た理 由が 「 設計仕様 の変更のため ( 60%)」 で,次いで 「顧客か らのコス ト

ダウン要請のため ( 28. 6 %) 」 , 見積原価での開発が困難 になったため ( 25. 0

形)」 であ った。見積原価での開発が困難 になったため とい う理 由は,見積

原価 の精度 に関係 している。 また, K 社 において見積原価 の達成 が開発 目

標 として機能 してい るとすれば,見積原価の変更を通 じて事実上の原価 目標

の緩和につながっていることも考 えられる。

(15)

原価企画の導入に関す る予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 9 5

6 .原価企画導入における制度化プロセス

6. 1導入プロジ ェク トの活動

K 社 での導入プロジェク トの大 まかな流れ としては, ( 1 )コンサル タン ト N氏に よるプロジ ェク ト参加 メンバへの原価企画の レクチ ャーか ら始 ま り,

( 2) 原価企画 と比較 しなが ら, K 社 の製品開発の現状把握 と問題点の抽 出, そ して,( 3) K社で運用可能 な原価企画の枠組 み作 りとその実践活動へ と進 んで きた。

プロジェク ト開始当初は,原価企画構築チームが管理会計,開発業務プロ セス,サプライヤー管理,開発ツール ・情報システムの検討 といった原価企 画の個 々の課題毎 に担 当者 を数名割当てていたのにたい し,現在 では,原価 企画試行担 当グループ,業務改善担当グループ,システム設計 ・構築担当グ ループへ と組. み替 え られるな ど,プロジ ェク トの進捗 にあわせてチーム編成 が変化 している。

また,後述するが,原価企画の実施 と目標原価達成 に責任を負 うコス トマ ネジメン ト課の新設 が決定 した。 コス トマネジメン ト課の リーダーに営業部 長の就任が決定 した ことを受け,原価企画構築チームに推進委員会に属する 営業部長が加 えられた。 この ように,原価企画構築チームのメンバ も編成当 初 と比べ変化 してい る。

プロジ ェク ト全体 の直接的な指揮 を とるのは N氏であ る。 もちろん, コ ス トマネジ メン ト課 の新設な どプロジ ェク トか らの提案や製品の利益率な ど 会社 の経営指針 に関 わる重要 な事項 に関 しては,懇談 の場 で N 氏か ら説 明 が行われ,社長の承認を とる手順を常 に踏んでいる。 また,実際 に毎回会議 に参加 し議題の流 れを把握 してい る 0氏は,導 入プロジ ェク トと社長 をは

じめ とした経営 上ソプ層 との仲介役 を果た している。

プロジ ェク ト会議の他 に,原価企画を導入する上で重要 にな るのが推進委

員会会議である。推進委員会は各部門の部長 レベルで構成 されていることは

(16)

先 にも述べた通 りである。プロジ ェク ト会議 に彼 らが実際に参加することは ない。 しか し,原価企画の導入後は,開発に関わる仕事の流れやシステムが 大 きく異なって くることか ら,推進委員会会議は,プロジ ェク トの進捗状況 の単なる説 明会ではな く,推進委員会の理解や承認,協力を得 る場で もあ る。

社長の直轄のプロジ ェク トであるが,推進委員会会議は,原価企画の組織全 体への浸透を促進す るための重要な機会である。 この ように推進委員会会議 は,プロジ ェク トと推進委員 メンバ との公式の接点であるが, この他に 日常 の業務の様 々な機会の中でプロジ ェク ト活動の詳細 を推進委員の個 々の メン バ に伝 えた り,原価企画の実施に協 力を要請 す る とい った働 きかけ も 0氏 によって行われている。

6. 2 原価企画 と現状 とのギ ャップ認識

K社 におけ る原価企画の導入プロジ ェク トは,製 品開発 に関わる既存の ルール とルーテ ィンを明確 にし, ( 規範的な原価企画 と比較 し)導入プロジ ェク ト内で現状が抱 える問題 を共有す ることか ら始 まった。 まず実施された のは,電源装置 と光学関連製品それぞれの製品開発 プロセスをい くつかの段 階 に分け,それぞれの段階での営業,開発,調達,生産の業務の現状 と問題 を具体的に列挙す ることであった。

この作業はプロジ ェク ト開始当初 に実施 されたため筆者は参加 していない が,メンバの作成 した報告書 には, ( 1 )マーケ ッ ト情報 を含む経営計画 と製 品開発の連携 , ( 2) 見積原価の算定基準 , ( 3) 組織的な進捗管理 , ( 4) 部門間 の連携, ( 5) 部品の共有化 , ( 6) 設計 ノウハ ウの共有 , ( 7) 部品調達およびサ プライヤー管理,以上の 7 つの項 目について K社の現状が記載 されていた。

まだ この時点では コス トテーブルや部品 リス トな ど情報システムの部分は

触れ られていないが,原価企画の一般的な構成要素が網羅 された現状認識の

作業であ った。 さ らにそれぞれの項 目に改善策 も加 え られていた。現在のプ

ロジ ェク ト会議で取 り上げ られている議題や検討課題 と比較 して も原価企画

(17)

原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 9 7

実施にあた って改善すべ き点や方向性の大枠はプロジ ェク ト開始 か ら比較的 早い段階で決定 していた といえる。

6. 3 原価企画実施のための枠組み作 り 1.原価企画書の立案

原価企画実施の枠組み作 りに向けて,導入プロジ ェク トがまず最初 に取 り 組んだのが 「 原価企画書」 と呼ばれ る目標原価 と原価見積のための具体的な 計算プロセスの規定である。

表 1 は, K 社 の原価企画書の概略であ る。表 1の列 には販売価格 , 目標 利益, 目標原価,その下 に 目標原価の内訳が,行 には製品開発の段階が示 さ れている。 目標設定の段階で 目標原価が設定 された後,製品単位当た りの原 価項 目の見積が行われ, 原価項 目に 目標値が割 り付 け られる。基本設計段階以 降は原価の試算 と目標値 との差異のチ ェックが繰 り返されるデザ インレビュー

( 以下,DR)のプロセスである。

表 1 原価企画書

目標設定 基本設計 詳細設計 生産見積 実績評価

見積 .差異 試算 .差異 試算 .差異 試算 .差異 試算 .差異

直接製造原価 開発費 材料費 外 注委 託費 組立費 設計費 製造 間接費 販管費

本社費 ( 原価合計)

(18)

原価企画におけるコス ト低減の対象は直接材料費であることが一般的であ る。しか し,表 1には,目標原価の内訳 として,材料費,外注委託費の他に, 組立費,設計費,開発費,製造間接費,さらに販管費,本社費が計上 されて

いる。 これは,製品開発 と営業利益 との リンクを強調するためであ り,導入 プロジ ェク ト開始時 に社長の意 向を N 氏が反映 した形 であ る。 また,粗利 や貢献利益な どと併用 しなかったのは,現場での利益概念の混乱を避けるた めである。

2.原価企画書 における費 目の検討

K社の原価企画書で まず注 目されたのが組立費 と設計費の精度 であ る。

これまで K社 での労務費の把握 には 「作業 日報」 が用 い られて きた。作業 者は,作業分類の一覧か ら該当する項 目とその作業時間を自ら記入する。

ところが, この作業 日報 に基づいた労務費の計算の精度が低いのではない か とメンバ か ら指摘 があ った。 K 社 の 日報 では作業 を細 か く分類 している ため,計算上 6, 0 0 0 以上の作業分類 になっている。記入者 も自らの作業が ど の分類 に属す るのかの判断が困難な状況である とい う

また,作業分類の判 断には個人差が影響 し,同 じ作業で も作業者が異なれば異なる費 目に計上 さ れて しま う可能性がある。工数は 3 0 分単位 に設定 され ,3 0 分の間に複数の製 品に従事 した場合には製品毎の作業分類 に限界があ る。 これ らが原因で現状 の作業 日報 に基づいた労務費の計算精度は極めて低 い とい うのがプロジ ェク ト内での大半の見解 であ った。K 社 の作業 日報 は, もともと業務改善のた めにそれまでのタイムカー ドを廃止 して利用 されるようになったが, 日報へ の記入の煩雑 さか ら現在では業務改善 とい うよりも労働基準時間を前提 にし た作業 内容や工数の記録にしか利用 されていない。

目標原価 を設定す るため,原価企画書に記載 される各費 目の見積原価は妥

当な計算手順 を経た上での正確 さが求め られている。正確 さが疑問視 されて

いる組立費 と設計費 にたいして ,0 氏か らは現状の作業 日報 を廃止すること

(19)

原価企画の導入に関す る予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 9 9

も全社的に可能であることがメンバ に告げ られ,作業 日報の選択項 目な どを 見直 した改訂版を作成することやタイムカー ドを復活 させ簡略化 した作業 日 報 との二本立 てで運用 す るこ とな どが検討 された。 その際,社長 お よび 0 氏か ら出された条件は,設計は製品別の基本設計 と詳細設計 にかかる工数が 識別で き,組立は製品別の組立工数 を識別できることであった。

開発費 も原価企画書では製品個別 に管理することになった。電源装置の開 発費は これまで指図書の外で管理 されていた。また,開発費の決定が開発 に とってブラ ックボ ックス化 していることは先にも述べたが,開発費に関 して 営業 と開発 とで情報共有が十分 にで きていない ことはプロジ ェク トで も問題 視 されていた。また,社長は製品個 々の開発費を含めた収益性を明確 にした い意向を示 した。原価企画書で開発費が製品個 々に割 り付けるこ とにしたの はこれ らの問題 を解決することが狙 いである。

3 .コス トマネジメン ト課の設置

K 社 で提案 されてい る原価企画書 には,営業 と密接 に関係す る開発費や 調達や生産 の段階で発生す る原価が原価企画活動 の対象 として含 まれてい る。それぞれの原価 に 目標原価が設定 されまた達成するためには,社 内での 原価企画の活動全体を指揮する部隊の必要性がでて きた。そ こで導入プロジ ェク トのメンバは 「コス トマネジメン ト課」を社 内に新設するこ とを提案 し た 。 0氏は この案を社長 に説 明 し設置の承諾を得 ている。ただ し,コス トマ ネジメン ト課の メンバ構成は社長お よび 0氏に委ね られた。

コス トマネジメン ト課のメンバ構成は,営業か らは営業部長を リーダー と して 1名,開発か ら2 名,生産か ら 1名の計 4 人体制で,社長直轄下の位置 づけが想定 されている。営業部長が リーダーに選ばれたのは,売価や納期の 情報がいち早 く集 ま り,開発プロセス全体を見渡せ る立場 にあ る とい うこと

だけではない。 その他 に も,営業部長 は,以前 ,K社の顧客で もあ る電機

機器 メーカー に長期在籍 ていた こ ともあ り, K 社 での勤務年数 は数年 と短

(20)

い。営業部長の他社での営業 ノウハ ウ と K 社での勤務年数の短 かさがコス トマネジメン ト課の リーダーに選ばれた理由で もある。

4. 部品 リス トの構築

K社の製品は,十数個の コンポーネン トか ら構成 されている。 しかし, 設計エンジニアは,これまで部品の親子関係を反映させて設計部品 リス トを 作成 して こなかった。N氏は,まず,新製品開発の際 には,設計エンジニ アは必ず部品の親子関係を反映 した設計部品 リス トの作成するように指導 し た。 K 社の製品の部品は,主な機能単位でコンポーネン ト化 されているこ とから,設計部品 リス トに部品の親子関係を反映で きれば,機能体系図 とし ても利用できる。

設計部品 リス トをベースに生産部品 リス トの作成 も N 氏から指導 された。

調達や生産は,これまで設計か ら渡 された設計部品 リス トに基づいて,製品 の部品構成や組立の作業手順を考慮せず,同 じ部材仕入先や外注加工 ・組立 先を一括 りにして発注するしかなかった。そこで,生産に必要な情報を追加 した上で,コンポーネン ト単位にするか発注先単位 にするかなど, どのよう な単位で生産部品 リス トを作成するかが検討 された。各 コンポーネン トの組 立の際の仕掛在庫 を回避するため,組立単位の生産部品 リス トがプロジェク

トでは有望視 されている。

設計お よび生産部品 リス トは もちろん社 内の情報 システム と連携 してい

る。最終的な構想は,設計および生産部品 リス トと原価企画書がシステム上

で リンクすることによる単位原価計算システムの構築である。製品の部品構

成 とコス ト情報の統合で簡易的であるが K社 に適 した部品 リス トの構築を

N 氏は社長 に提案 している

さらに, これ らのシ ステムの他に も作業 日報

の代替システムも含めた原価企画運用のためのシステム構築の大 日程計画衷

が情報管理部 から提示 された。既に予算執行の段階に進んでいる。

(21)

原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 1 01

5.協力会社 ・サプライヤーの評価方法 と格付け

K社 では, これまで加工や組立 の外注委託先 との価格交渉 に必要 な情報 が蓄積 されてこなかった。導入プロジ ェク トでは,外注加工 ・組立の工程, 各工程 にかかる適正な工数や工数 レー トを調査するための方法が検討 され た。実際には,購買課長であ りプロジ ェク トのメンバの一人が中心 とな り, 取引額の比較的大 きいサプライヤー数社を限定 して,プロジェク トで作成 し た協力会社 ・サプライヤーの実態調査のための 「 単価計算シー ト」に工程, 工数,工数 レー トな どに関する正確なデータを記入するよう協力を要請 して 情報収集に取 り組んでいる。

彼は,以前,大手光学機器 メーカーに長期在籍 していた経験 があ り,退社 後の K 社でのキ ャリアは数年 と短 い。ただ し,他社での購買 ・調達活動の ノウハウが重要視 されたことか ら,導入プロジェク トの原価企画構築チーム のメンバに選ばれた。また,彼は推進委員会のメンバにも属 している。社長 をは じめプロジ ェク トで彼に期待されるのは,協力会社 ・サプライヤー との 価格交渉力の強化 とコス トカのある外注業者の新規開拓である。

協力会社 ・サプライヤーの格付けのための 「 協力会社総合評価表」 も作成 された。評価表では,協力会社 ・サプライヤーの財務力,技術力,品質力, コス トカ,納期力のそれぞれが評価 され,各評価項 目の合計が総合力 として 評価 される。協力会社総合評価表は,協力会社 ・サプライヤーの選定基準 と

しての利用や協力会社 ・サプライヤーにたいする教育 ・指導のための客観的 な資料 としての利用が期待 されている。

6. 4導入プロジ ェク ト周辺か らのアプローチ

K社の原価企画のあ り方 を左右す るのは,必ず しも導入プ ロジ ェク ト内

の活動 だけ とは限 らない。た とえば,K社では原価企画の導入プロジ ェク

ト開始後に組織が一部変更されている。 もちろん,原価企画導入 と関連 した

組織変更である。

(22)

まず,技術開発統括の もとで 3 つに分かれていた技術開発部 を 1 つに統合 した。 これは,技術お よび部品の共有化 を意図 した変更である。 さらに,坐 産管理部 における調達課 か ら購買機能 を購買課 として独立 させた。購買課は, 主 に外注業者の選定,価格や納期の交渉に関する業務を担当させ,調達課は, 資材の発注,受け入れ,外注委託先への資材提供な どの業務を担当させ,そ れぞれの業務 に専念 させ るように した。

組織変更の他にも,導入プロジ ェク トのメンバ以外か らの影響 もある。筆 者 が参加 した K 社の 2 004 年度 中期経営計画の報告会では,開発系の部門長 数人が品質の徹底 した作 り込みを示唆する基本方針が発表 された。 これは, 基板回路の設計品質に問題があ り,それによる不具合が設計以降の段階で発 覚す るこ とが K 社 では これまで少 な くなかった こ とに よる開発部 におけ る 設計品質向上の意思表 明である。

これを報告 した部門長数人には,導入プロジ ェク トの推進委員 に属する人 もいれば,それ らに全 く属 していない人 もいた。 したがって,品質向上の意 思表 明は, K 社の開発全体 での意 向を表 した ものであ り,導入プロジ ェク ト内に限定 され るものではない。 また,方針発表の場で,単 に品質向上だけ でな く,同時並行 したコス トと品質の作 り込みの必要性 について も言及 され た。

設計品質 向上 に関す る報告 内容 は,基本的 には もちろん, K 社社長の中 期経営計画の基本方針 を反映 した ものである。社長は,以前か ら開発系の部 門長 クラスに基本方針 を文書で配布す るな どして事前に部門長 との情報共有 に努めていた。

導入プロジ ェク トで も,中期経営計画め報告を受け,設計品質の作 り込み

の具体策 について,例えば,後述する原価企画会議 ( 表 2)にどの ように組

み込むかなどの議論 が開始 された。

(23)

原価企画の導入 に関す る予備的考察 :あ る電気機器 メーカーの事例研究 1 0 3

6. 5 原価企画のシ ミュレーシ ョン ・実践 1 .製品別収益性の確認

既 に開発 ・生産が終了 している過去の製品デー タを利用 して,原価企画書 の中で,それ ら製品別の収益性が繰 り返 し確認 されている。 しか し先 にも述 べた作業 日報の問題 もあ り,計算精度の高い収益性の把握 がそ もそ もの狙い ではな く,プロジ ェク トのメンバに原価企画書で規定 されている具体的な計 算プロセスに即 して製品原価を計算 させ ること,またその原価企画書の中で 製品個 々のおお よその収益性の確認や得 られた結果の妥当性を評価 させ るこ

とであ った。

この ような原価企画書のシ ミュレーシ ョン結果 について,N氏が原価企 画書の原案 を提示 して以降,毎回のプロジ ェク ト会議での中心的な議題であ る。 また,原価企画推進委員会の会議で も,シミュレーシ ョン結果 にたいす る関心は高かった ことか ら,プロジ ェク ト会議全体を通 じて最 も時間をかけ て議論 された内容であ る。

シ ミュレーシ ョンの結果か ら,製品個 々の営業利益ベースの収益性は予想 以上 に低い とい うことが明 らかになった。特 に電源装置では開発費が製品個 別 に管理 されるようになった ことや電源装置 も含 めその他の製品については 販売費 ・本社費の負担 か ら,利益が十分確保で きていると思われていた製品

も赤字 にな るケースが多 く確認 された。

原価企画書のシ ミュレーシ ョンは,K社 での今後 の新製品開発 において 達成可能な 目標原価水準を算出するための試行錯誤の過程で もある。シ ミュ レーシ ョンを繰 り返 し行い,計算プロセスの一つ一つを検証す ることで原価 計算モデルの精度を徐 々に高め,それを社 内の情報システムに組み込む こと がプロジ ェク トの最終的な 目的であ る。 この ようなシ ミュレーシ ョンの 目的 がプロジ ェク ト内で明確 になるに伴 い,現在社内で運用 されている作業 日報 の限界が よ り強調 されるようになった。

作業 日報 の限界の克服の案 としては,先 にも述べた作業 日報 の全社的な完

(24)

全廃止の他 に,電源装置の場合には,組立費 と設計費を直接費ではな く間接 費 として原価企画書で処理することが検討 された。ただ この他にも,組立費 や特 に設計費 には実質的 に変動費的 な要素は少ない とい うこ とも作業工数 ベースの原価を間接費 としての処理が検討 された理 由である。

この ような現状 を考慮 し,N氏は工数ベースの原価 を設計や生産の作業 実態 に即 した形で直接費 と間接費 に適当な比率で分 け,その直接費の部分の みを製品に直課することを提案 した。 これは直接費の部分を残す ことで現場 の業務改善 に利用 したい との社長 ( お よび 0氏が)の意図に起因 している。

ただ し作業 日報の廃止の案は特 に変更はな く代替案が検討 されている0

2. 原価企画会議 に期待 される機能

原価企画書で記載 されている DR については どの ように して組織的に実施 す るかが議論 された。 K 社 では, これまで DR を組織的 に行 って こなかっ た ことか ら,まず,導入プロジ ェク トにおける開発部の メンバが中心 とな り,

( 1 )各 DR の 目的, ( 2) インプ ッ ト情報 とアウ トプ ッ ト情報 , ( 3) 構成 メンバ についての試案が提示 された。

しか しなが ら, 目標原価の設定を誰が どの ように行 うのかや利益責任の所 在な ど原価企画の実施上 ク リティカルな問題 に関 しては不明瞭な回答であっ た。各 DR における原価企画書の位置づけ と原価企画書の結果に誰が責任 を 有す るのかを明確 にす るようN氏か ら指導 を受けた。 また,開発が示 した 構成 メンバ には調達,生産のメンバが含まれていないことも指摘 された。

また,基本設計 と詳細設計の DR におけるコス トマネジメン ト課 と技術課 長の役割の定義 について も暖味であ った。N氏は, これ らの段階 には,技 術的な要素が多 く含 まれ具体的な設計 に関わる意思決定は技術課長がイニシ アチブを発揮 して もらう一方で,コス トマネジメン ト課は 目標原価達成のた め DR での部門間の調整役 に専念させ ることを提案 した。

以上の ような調整 を経 た後 ,最終 的 には,原則 として開発の節 目節 目で

(25)

原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 1 0 5

「 原価企画会議」 といった会議体の開催 を決定 し,原価企画会議での決済事 項や参加 メンバの役割な どに関するマニ ュアルが定め られた。表 2に,原価 企画会議マニ ュアルの一部省略 した ものを示 してお く。

表 2に示 されてる 目標原価の設定は,原価企画書のシ ミュレーシ ョン結果 に依拠 している。 目標原価の計算方式は,原則 として K社が確保 すべ き経 常利益 をもとに計算 された許容原価 と見積原価 との折衷方式 を原則 としてい る。受注品 と見込み品で 目標原価の計算方式 自体 には違 いはないが,経常利 益 ( 率)がそれぞれ異なって設定 されている。目標原価が決定す ると,次に, 各費 目別 に 目標原価が設定 され,材料費や外注委託費に関 しては,設計部品

リス トに沿 った形で 目標原価の細分割 り付けが行われる。

3. 原価企画の実践

原価企画書のシミュレーシ ョンや原価企画会議のマニ ュアルの設定作業 と 並行 して,実際の製品開発 を対象に原価企画活動の実践 も試み られている。

実践の開始当初は,導入プロジ ェク トのメンバが中心に開発業務 に直接携わ ることにしていた。 しか し,実際には,迫 る納期 が理 由で原価企画会議その ものが開催で きなかった り,開催で きて もフロン トローデ ィング開発やコス トの源流管理 にはつなが らないケースが多かった。 この ような結果 には,原 価企画書や部品 リス トの作成がまだ完全にシステム化 されてお らず,まだ手 作業の部分が多いことも影響 している。

ノ N 氏 はまず,原価企画会議の開催 を義務づけるためにい くつかの対策 を

実施 した。実践対象 としている全ての製品開発の原価企画会議の 日程表 をコ

ス トマネジメン ト課の リーダーである営業部長 に提 出するように求めた。 さ

らに,開催 された原価企画会議 を評価するために 「 原価企画評価 シー ト」を

現場 に配布 した。評価 シー トでは, ( 1 ) 管理会計,( 2 ) VE,( 3 ) 組織 ・開発プ

ロセス , ( 4) サプライヤー管理 , ( 5) 製造管理 に関 して計 20 程チ ェック項 目が

設定 され 開発段階 とのマ トリックス表 になっている。評価のグ レーデ ィソ

(26)

原価見積 1.売価設定 見積依頼書 :営業が記入 売価設定ガ イ ドライン 見積 回答書 :開発部 が決済 技術課長

CM

CM

2.3.

製品仕様の決定 精度の高い原価見積 客先仕様書 客先打合議事録 原価企画書

:CM

課 が記入 原価見積基準 原価企画書

:CM

課 が決済 技術課長 営業担 当者 目標原価 1 . 目標原価 の設定 見積書 :営業 か ら客先へ提 出 製品 タイプ別の 目標原 原価企画書

:CM

課が決済

CM

CM

CM

原価企画書

:CM

課 が記入

工程蓑 :設計担 当者 が記入 価設定基準 設計変更書 工程表 :差異 を設計担 当者が記入 技術課長 営業担当者 基本設計 1.基本設計の妥 当性 の 原価企画書 :設計担 当者 が記 入 VE 原価企画書

:CM

課 が決済 技術課長

CM

CM

確認 納入仕様書 :客先へ提 出す る外形 納入仕様書 :技術担当課長 が記入 技術課長

2.

原価の試算 工程表 :設計担当者 が記入 図 .回路 図 工程表 :差異 を設計担 当者が記入 設計変更書 技術担 当者 生産課 購買課 詳細設計 1 .詳細設計の妥 当性の 原価企画書 :設計担当者が記 入 VE 原価企画書

:CM

課 が決済 技術課長

CM

CM

確認 詳細図面 :技術部 が作成 出図図面 :技術担 当課長 が決済 技術課長

2.

原価の試算 工程表 :設計担当者が記入 設計変更書 工程表 :差異を設計担 当者 が記入 技術担 当者 購買課 生産課 購買見積 1 .材料費 .外部委託費 原価企画書 :購 買課が記入 協力会社総合評価表 原価企画書

:CM

課 が決済 購買課長

CM

CM

の妥当性の確認 見積回答書 :外注業者 か ら提 出 設計変更依頼書 技術課長

2.

組立工数 の妥当性の 出数図面 :技術部 か らの引 き渡 し 改善提案依頼書 技術担 当者

確認 工程表 :購買課が記 入 工程表 :差異を購買課が記 入 生産課 購買課

実績原価 1. 目標原価 と実績原価 原価企画書 :購買課 .生産課 が記 原価企画書

:CM

課 が決済

CM

CM

CM

の差異分析 入 設計変更依頼書 技術課長

2.

次回開発へのフ ィー ドバ ック 工程表 :購買課 .生産課 が記入 改善提案依頼書 工程表 二最終実績 との差異を騎男 課 .生産課が記入 技術担 当者 生産課 購買課 ( 荏)

CM

課 ‑コス トマネジメソ ト課

筒 璃

閣 繋

(27)

原価企画の導入に関する予備的考察 :ある電気機器 メーカーの事例研究 1 0 7

グは現場での作業負担 を考慮 し 3 点尺度 ( 「 ○ ‑で きた 」 「 △ ‑普通 」「 ×‑

で きなかった」) を採用 した。その他,プロジ ェク ト以外の メンバ も原価企 画会議 にで きる限 り参加 させ るように指示 した。毎回のプロジ ェク ト会議で, 原価企画の進捗を示す原価企画書,会議 日程表,原価企画評価 シー ト,さら に設計 ・生産部品 リス トの提 出が課せ られた。

結果,まず第一 に原価企画会議の実施回数が増 えた ことがあげ られる。開 発段階 を途中で省略す ることな く原価見積段階か ら最終段階まで連続 して会 議が開催 されるケース も多 くなって きた。原価企画会議 にはプロジ ェク ト以 外か らのメンバ も少 しずつ参画 させ原価企画活動の浸透が進め られている。

しか しなが ら,回収 された原価企画の評価シー トには 「 O」 の評価が少な く,最 も多いのが 「 △」で , 「 ×」 も少なか らず見 られた。適切 な原価見積 ができたか否かに関す る項 目では 「 △」が多 く,原価企画書で規定 されてい る計算 プロセスに沿 った形での見積 は行 えていた。 しか し,適切な 目標原価 が設定できたか否かの項 目では 「 ×」 が多かった。

コソカレン ト開発やフロン トローデ ィング開発 に関する項 目も 「 △」が最 も多 く,原価企画会議の場で実施 されているが,評価シー ト全体の評価 か ら すると実際に納期短縮や コス ト低減 といった成果 には至 っていない。

設計部品 リス トの作成は,対象製品の多 くで実施され,データベース化が 徐 々に進め られている。 しか しなが ら,設計部品 リス トの機能体系図 として の利用は認め られるものの, 大幅な コス ト低減な どの報告はなされていない。

サプライヤー管理 に関わる評価 について も厳 しい状況であった。例 えば, 工数やチ ャージが不 明確であった り測定不能 との回答が寄せ られ るな ど,協 力会社 ・サプライヤーに作成を依頼 した単価計算 シー トか らは必ず しも十分 なデー タが得 られていない。

以上の評価シー トの結果の中で,原価企画活動 か らの成果 も現れている。

設計 と調達 および外注業者 との協力による設計段階での コス トの作 り込みに

成功 したケースであ る。 これまで K 社では,基板実装点数 を減 らす ように

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基板設計を行い,外注加工費を低減するのが一般的な方法であった。 ところ が,導入プロジェク トのメンバで もある購買課長が新規開拓 してきたある塞 板実装業者では状況が異なっていた。具体的には,実装の加工費を発生させ る要因は, 実装点数ではな く基板当た りの実装のスループ ット時間であった。

担当の設計エンジニアがその実装業者へ実際に訪問 し,実装機械の作業工程 や実装手順の特徴を細か く調査することで,実装機械が最 も効率 よく実装で きる基板設計を行 った。その結果,部品点数削減だけでは達成で きなかった 外注委託費の大幅なコス ト低減を実現で きた。 このケースについて, K 社 でのコス ト低減の代表例 として社長 自らがプロジェク ト会議の場で報告 して いる。

7 .理論的考察

Bur nsa ndSc a pe ns[ 2 0 0 0]の概念モデル ( 図 1 )では,管理会計システ ム ・実務の制度化プロセスを識別するための 4っの視点 ( コー ド化 ・規定 ・ 再生産 ・制度化)の他に,その制度化プロセスにおけるチ ェンジの 3 つの分 類軸が示 されている。

具体的には,ある管理会計システム ・実務のチ ェンジが公式であるか非公 式であるか,革新的であるか発展的であるか,または儀礼的であるか実践的 であるかである。 この ような分類の違 いを明確にしてお くことが制度化プロ セスの進行や成果を説明する上で重要である。

7. 1 公式 一非公式のチ ェンジ

公式のチ ェンジは, 新 しいルールやシステムの導入,または組織 内でパワー

を もった個人や集団の意図的な行為 を通 じて引 き起 こされる。K社の事例

では, K 社社長が原価企画の導入プロセスの随所 で 自らの 目的や考 えをプ

ロジェク トに直接的 ・間接的に反映させてきた。具体的には,原価企画書の

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立案, コス トマネジメン ト課の編成,作業 日報の全社的廃止の決定,各種情 報システムの再構築な どが公式のチ ェンジであ り, これ らのチ ェンジを通 じ て原価企画のルールが形成 される。

意図せざる公式のチ ェンジ も存在 している。先 に述べた基板実装のスルー プ ッ ト時間の短縮 に伴 うコス ト低減の成功 によって,原価企画 における内製 化の重要性が注 目され るようになった。内製化は原価企画の導入プロジ ェク トの当初の範噂ではなかったが,源流管理 によるより大 きな成果 を得 るため 内製化の範囲を拡大する具体的なプログラムが既 にい くつか立ち上がってい る。それに応 じて,原価企画構築チームに生産技術部長 を含む生産 か ら2名, 調達か ら 1 名が新たに加 えられた。 内製化のプログラムは,導入プロジ ェク

ト発足 当初 は意図 していなかったが, K 社 の原価企画のあ り方 を左右す る 公式のチ ェンジである。

意図せざる公式のチ ェンジは, 原価企画の 目標 との関連で も存在 している。

導入プロジ ェク ト開始当初,原価企画の 目標で掲げ られたのはコス ト低減 と 開発 リー ドタイムの短縮であ った。 しかし,先に も述べた中期経営計画にお ける開発系の部門長の方針発表 を受け,原価企画の 目標 に品質向上が加 え ら れた。 また,それに応 じて,原価企画会議 ( 表 2 )における個 々のルールが 大幅に書 き換 え られることになる。公式のチ ェンジではあるが, これ もプロ ジ ェク ト開始当初は意図 していなかったチ ェンジ といえる。

非公式のチ ェンジは,公式のチ ェンジ と比べて より暗黙的な レベルで起 こ

る。設計部品 リス トの作成の他 に,設計か ら調達 ・生産 に図面が引 き渡 され

る際に生産部品 リス トの作成が新たに義務化 された ことは先 に述べた通 りで

ある。部品 リス ト作成 に伴い, VE への応用は もちろん,設計 と調達 ・生産

との情報共有のあ り方,特 に生産部品 リス ト作成 に関 しては調達業務の効率

化な ど,単なる部品 リス トの作成ではな く,作成後の 「 使 い方」 についてメ

ンバ個人が 自発的に他のメンバ に示唆するや り取 りが原価企画の実践の開始

後,頻繁に見 られるようになった。

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