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ヘイトクライム・ヘイトスピーチをめぐる法律実務の国際比較および日本の課題

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ヘイトクライム・ヘイトスピーチをめぐる法律実務の国際比較お よび日本の課題

大阪弁護士会 具良鈺

第1 はじめに

本稿は,いわゆるヘイトスピーチ1・ヘイトクライム2をめぐる法律実務の国際比較を 通じて,日本の課題を明らかにし,解決に向けた提言等を行うものである。

日本においてヘイトスピーチが社会問題として注目を集めるきっかけとなったのは,

2009年から2010年にかけて起こった,「ヘイトクライム京都事件」3(第一次)

であった。著者は,同事件4の弁護団員として刑事告訴,民事仮処分及び民事損害賠償 請求訴訟の提起・追行に関わる中で,人権課題をめぐる日本の法律実務の致命的欠陥を 経験することとなった。

以下,アメリカや欧州において,ヘイトクライム・ヘイトスピーチおよびその背景に ある差別に対してどのような法制度を構築し運用しているのかを紹介する。ヘイトス ピーチをめぐる議論状況についてはすでに日本において刊行されたものが多いため最 低限にとどめ,本稿はそれをめぐる運用や実務的側面に焦点をあてることとする。

1 “ヘイトスピーチ”(hate speech)について確立された定義はない。

本稿において“ヘイトスピーチ”とは,人種,肌の色,家系,国籍的・民族的出自,年齢,障害,言語,

宗教または信仰,性別,ジェンダー,性自認,性的指向およびその他個人の特徴または地位に基づいて なされる個人またはグループに対する誹謗・差別・憎悪・中傷の唱道,促進または扇動およびそれらの 正当化をさしている(市民的および政治的権利に関する国際規約(以下,「自由権規約」)第20条第 2項,米州人権条約第13条,ECRI「ヘイトスピーチ克服のための一般的政策勧告15」参照)。

ヘイトスピーチの定義それ自体よりも,具体的な差別的言動の行為類型ごとに規制の是非やあり方を 議論することが有益である。

2 人種,宗教,肌の色,民族的出自,性的指向,または法に規定された他の範疇に基づいた偏見を動機 とする犯罪をいう(Richard Delgado & Jean Stefancic, ”Critical Race Theory : An Introduction”, New York University Press, 2012 (2nd Ed.) p.163.)。

3 この事件は一般には,「ヘイトスピーチ」京都事件と呼ばれている。しかし,差別的動機に基づく犯 罪行為がおこなわれたのであるから,「ヘイトクライム」京都事件と呼称を改めるべきである。

4 この事件は,2009年12月4日,2010年1月16日および同年3月24日の3度にわたり,

在日特権を許さない市民の会(以下,「在特会」)会員ら10数名が,京都朝鮮第一初級学校校門前に おいて,拡声器を使って「スパイの学校」「朝鮮学校を叩き出せ」「スパイの子ども」「ゴキブリ,蛆 虫,朝鮮人」「(在日朝鮮人より)犬の方が賢い」「保健所で処分しろ」といった怒号をあげ,これら を撮影した動画をインターネット上にアップロードした事件。

同学校を運営する学校法人京都朝鮮学園が原告となって在特会らを被告として提起した民事損害賠 償請求訴訟において,京都地裁は,1226 万円を超える損害賠償と半径200メートル以内での街宣禁 止を命じ(2013年10月7日),大阪高裁はさらに朝鮮学校が「民族教育を行う利益」を認め(20 14年7月8日),最高裁もこれらを維持し,2014年12月10日,最高裁で勝訴が確定した。

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第2 アメリカにおけるヘイトスピーチ・ヘイトクライムをめぐる法律実務 1 ヘイトクライム関連法

アメリカには,差別的動機に基づく犯罪(bias crime)を重く処罰するなどのヘイ トクライム法が存在する。ヨーロッパ諸国と比較すると,アメリカはヘイトスピーチ 規制には慎重な立場をとっており「特殊な国」5であるといわれている。しかし,こ とヘイトクライムに関してアメリカは,ヨーロッパ諸国と比較してもより早く,積極 的に規制にのりだした国でもある。6

(1) 連邦法および州法

1865年7の奴隷制廃止後もアメリカにおいては,人種隔離政策が1960年 代まで公的に維持された。公民権運動により公的差別が廃止されたあとも,アフリ カ系アメリカ人に対する暴力,リンチ,暴言事件が頻発していた。1980年代に は,運動団体による活発な取り組みにより,これらの事象を「ヘイトクライム」と 呼称しその規制を求める運動が展開され,1990 年「ヘイトクライム統計法」

(Hate Crime Statistics Act)が成立した。これは,司法長官に,人種,宗教,性 的指向,民族に基づく偏見を動機とする犯罪に関する統計を収集することを義務 づけるものであった。8

さらに,1994年にはヘイトクライム量刑加重法(Hate Crimes Sentencing Enhancement Act)が制定され,ヘイトクライムの場合,少なくとも量刑を三段階 引き上げるよう,合衆国の量刑ガイドラインの改定を命じた。9

2009年には,それまでの連邦法よりもジェンダー,性的指向,障害の有無と いうカテゴリーにも射程を広げる内容の「マシュー・シェパード,ジェームズ・バ ード・ジュニアヘイトクライム防止法」10が成立した。同法は,連邦が技術的・資 金的援助等を提供することにより,州がヘイト・クライムを訴追することを容易に するなど,ヘイトクライム法の効果的運用のための様々なアプローチを定める。11

5 Frederick Schauer, “The Exceptional First Amendment”, in American Exceptionalism and

Human Rights (Michel Ignatieff Ed. Princeton University Press) 2005, p.29.など

6 前掲, p.107.以降参照

7 1863年の奴隷解放宣言が1865年アメリカ合衆国憲法第13条として連邦議会で可決され,

同年発効した。

8 28 U.S. Code § 534.Acquisition, preservation, and exchange of identification records and information; appointment of officials

9 28 U.S. Code § 994.Duties of the Commission

10 ヘイトクライム被害者2名の名前から名付けられた。

11 Daniel Aisaka & Rachel Clune, “Hate Crime Regulation and Challenges”, 14 Georgetown Journal of Gender and the Law, p.469., pp.472-473.

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これらの法制定を経て現在,FBIによるヘイトクライムの定義12は,「人種・

宗教・障害の有無・性的指向・民族・性もしくは性自認に対する行為者の偏見が全 体的または部分的に動機となって行われる,人または財産に対する犯罪」となって おり,アメリカにおいてはこれらカテゴリーに基づく偏見による犯罪(bias crime)

について加重処罰を行なっている。

加えて,州レベルでも,ほとんどすべての州でヘイトクライムに関する何らかの 州法が制定されている。13 各州法におけるヘイトクライム規制の種類や内容はさ まざまであり,差別的動機に基づく犯罪を加重処罰する規定の他にも,特定の行為 (ユダヤ人地域や公共施設でのカギ十字の設置など) を禁止する条項,加害者に対 して迅速に損害賠償を求めることが可能な民事訴訟を保障する規定,警察におけ るヘイトクライムに関する研修を定めた法律などがある。14 広義には,これらの 法律を総称して,ヘイトクライム法(Hate Crime Law) という。

(2) ヘイトクライム法と表現の自由

アメリカ合衆国において,ヘイトクライム法について大きな論争となったのが,

思想・言論の自由を保障したアメリカ合衆国憲法 (修正第1条)15に違反するので はないかという点である。この点について,有名な2つの判例を挙げる。

R.A.V. v. City of St.Paul (1992)事件16;セントポール市は条例において,

燃えた十字架やカギ十字を含む,人の怒りや不安をかき立てるような象徴物の設 置や落書きなどを禁じていた。本件において,加害少年が設置した「カギ十字」が 連邦憲法で守られる表現であるかどうか,および,この市の規制条例の合憲性が争 われた。州地方裁判所では違憲,州最高裁判所で合憲と判断が分かれたが,最終的 に,連邦最高裁判所において,違憲と判断された。連邦最高裁は,たとえ表現した ものが,差別の象徴であったとしても,それは表現の自由の観点から守られなけれ ばならず,人の怒りを掻き立てる象徴物の設置の禁止条例は,あまりにも規制の範 囲が広すぎて,漠然としていると判示した。

12 FBI has defined a hate crime as a “criminal offense against a person or property motivated in whole or in part by an offender’s bias against a race, religion, disability, sexual orientation, ethnicity, gender, or gender identity.”

https://www.fbi.gov/investigate/civil-rights/hate-crimes

13 Anti-Defamation League(ADL) State Hate Crime Statutory Provisions, https://www.adl.org/adl-hate-crime-map(最終アクセス2020年1月13日)

14 前掲ADLホームページ参照

15 アメリカ合衆国憲法修正第1条 連邦議会は国教を定め,またはその自由な宗教活動を禁止する法 律,若くは言論及び出版の自由を制限する法律,ならびに人民が平穏に集会する権利,および請願をす る権利を侵害する法律を制定してはならない。

16 1992 WL133564 U.S

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Wisconsin v. Mitchel (1993)17 ; 黒人による白人に対するヘイトクライム の傷害事件において,ウィスコンシン州のヘイトクライム法により,通常の傷害罪 の2倍の刑期を求刑された被告人が,州のヘイトクライム法の合憲性を争った事 案である。州最高裁判所は,「攻撃的思想」に厳罰を用意するのが連邦憲法に違反 すると判示したが,連邦最高裁判所は,合憲判決 (全員一致) を下した。先述のセ ントポール市のように,特定の表現を規制した条文ではなく,犯罪行為を厳罰に処 す条文であったので,連邦憲法修正第1条には違反しないというのが理由であっ た。また,「ヘイトクライムの被害者は,通常の犯罪被害者より,より精神的損害 が大きいので,厳罰を適用することが可能であろう」とも判示している。

この判決はその後,各州で,ヘイトクライム法を立法,適用していく根拠となっ ている。またこの2つの違憲・合憲判決により,アメリカ合衆国は,表現を規制す る立法はできないが, 犯罪(「クライム」) については,厳罰を用意し,規制し ていこうとする方向性となり,(1)において述べたように連邦および州におけるヘ イトクライム法が制定されるに至った。

2 ヘイトクライムをめぐる法律実務 (1) ヘイトクライム年次レポート

アメリカにおいては,先述のヘイトクライム統計法に基づき,毎年FBIが年次 レポートを作成し,ヘイトクライムの傾向等の分析結果を公表している。18

各州においてもヘイトクライム年次レポートを公表しており,ニューヨーク州 の年次レポート(2017年9月発行)によると,ニューヨーク州で2016年中 に起こったヘイトクライム(偏見に基づく犯罪)のうち,53.2%が対物(内訳は器 物損壊が 48.2%,不法侵入19が 2%,窃盗20が 1.8%,放火が 1.2%),残りの 46.8%

が対人犯罪(内訳は暴行が 34.6%,傷害が 9.9%,強盗が 2.2%,強姦が 0.2%)

であった。注目すべきは,ニューヨーク州でこの年に起こったヘイトクライムのう ち 48.2%が,日本の刑法典上は最も軽い犯罪とされる器物損壊であったという事 実である。

ヘイトクライム京都事件(第一次)において,被害者が最も苦労したのは,甚大 な被害21が発生しているにも関わらず,日本の刑法典においては最も軽い犯罪類型 である「侮辱」や「器物損壊」にしか該当しないという,被害実態と罪名との乖離

17 1993 124 L Ed 2d 436

18 FBIによる年次レポート,統計データはここから参照できる。

https://ucr.fbi.gov/hate-crime

19 Burglary; 犯罪を犯す目的で建物へ不法侵入すること。通常,その犯罪は窃盗であることが多い。

20 Larceny;他人の財物を窃取すること。ただし,被害者がその場に居合わせない場合の犯罪。

21 ある精神科医は,この事件が被害児童に与える心理的ダメージについて,「池田小児童殺傷事件に 匹敵する」と述べている。

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であった。警察・検察にとっては罪名からして「軽微な事件」にすぎないため,告 訴状の受理はもちろん,受理後の捜査もなかなか行われず,このような対応の遅れ

22が結果として学校前における3度のヘイト街宣を可能にした。このような対応は 今も続いているところ,これがアメリカにおいて起こったとすれば,ヘイトクライ ムとして捜査・訴追がなされ加重処罰がされたであろうと推測される。

加えて,日本では器物損壊としてそのほとんどが不問に付されることも多かっ た差別的落書きについても,ヘイトクライム法により対処が可能となるであろう。

(2) 差別的動機の認定方法

アメリカにおいて,ヘイトクライムと一般の犯罪を区別するのは,偏見ないしは 差別的動機の有無である。それでは,そのような内心をアメリカではどのように認 定しているのであろうか。

この点について著者は,ニューヨーク州連邦裁判所裁判官 Pamela K. Chen への インタビューを行った(2018年4月5日,United States District Court Eastern District of New York における面談)。Pamela K. Chen はアジアにルー ツを持つ裁判官で,多数のヘイトクライム事案を扱ってきた。

彼女によると,差別的動機(偏見)の有無の認定においては,問題となっている 発言や行為そのもののみならず,文脈的要素(contextual elements)を考慮する という。その発言(ないし行為)がされた日,時間,文脈,その人の所属団体や前 後に誰とどのようなコミュニケーションをしていたか,その時に使っていた発言 の反復性,例えばフェイスブックなどのソーシャルメディアで同様の発言をして いたかどうか,チャットの内容はどうかなどの具体的背景に基づき,過去の行動と のバランシングの中で動機を認定する。

このような分析は,言語行為論の見地からも行われ,言語学者や専門家を尋問す ることも多いという。「正当な表現行為」を装った差別扇動事例が数多く見られる 中,その「表現」のもつ意味を具体的背景・文脈から検証し動機をあぶり出してい くことが,裁判所に求められると彼女はいう。

このような文脈的アプローチは,人種差別撤廃委員会・一般的勧告35 (201 3)「人種主義的ヘイトスピーチと闘う」23の中で,法律により処罰されうる流布や 扇動の判断において,当該発言がなされる背景,相手,場所,方法といった「文脈 的要素」を考慮するものとした(同勧告15パラグラフ)趣旨に合致するものであ る。

22 中村一成氏は,その著書『ルポ・京都朝鮮学校襲撃事件―<ヘイトクライム>に抗して』(岩波書店・

2014)において,このような捜査機関の対応を「共犯的寛容さ」と表現する。

23 “General recommendation No. 35 : Combating racist hate speech”(CERD/C/GC/35,2013 年9月26日)

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- 6 - (3) 日本の状況への示唆

この動機の認定手法は,ヘイトクライム京都事件(第二次)について非常に参考 となる。これは,2017年4月,元在特会幹部が,2009年ないし2010年 のヘイトクライム京都事件(第一次)をきっかけに廃校となった京都朝鮮第一初級 学校跡地において,「ここに日本人を拉致した朝鮮学校があった」など拡声器を使 って憎悪を扇動する街宣活動を行った事件である。被告人は,ヘイトクライム京都 事件(第一次)において主犯格として関与し,侮辱罪・威力業務妨害罪等で有罪判 決を受けたにもかかわらず,その執行猶予中に別件ヘイト事件を行ったことによ り服役し,最終刑の執行が終了して1年とたたないうちに,前回と同じ場所で同種 の犯行に及んだ(第二次ヘイトクライム京都事件)。

この事件はヘイト事案としてははじめて(侮辱罪ではなく)名誉毀損24として起 訴されたものの,裁判所は,「拉致事件の解明のため」「(この行動が)日本の国 益に資すると信じて」いたという被告人の発言を鵜呑みにして文脈的分析を怠っ た結果,差別を扇動する街宣活動に「公益」目的(刑法第230条の2)を認める という判決をくだした(京都地方裁判所第3刑事部2019年11月29日判決)

25。さらに,「公益」目的が認定されたことが被告人に有利な情状として作用し,

罰金50万円という不当な量刑となった。本件は,差別を扇動する街宣活動につい て初めて侮辱罪ではなく名誉毀損罪として起訴されたリーディングケースとなる 事案であるところ,侮辱罪であれ,より重い名誉毀損罪であれ,法適用において差 別的動機の認定を誤れば結果として不当な結果をもたらしうることを示している。

本件において,被告人は,第一次ヘイトクライム京都事件,それに引き続き起こ った徳島県教組事件,ロート製薬事件等の一連の差別街宣事件を主導した団体の 元幹部として中心的役割を担ったのであり,判決においても,最終刑の執行が完了 してから1年と経たないうちに,同じ場所で本件犯行に及んでいること,「朝鮮学 校関係者というだけで犯罪者と印象づける目的」があったとの認定がされている のであるから,,アメリカや欧州における文脈的分析の手法がとられたならば,公 益目的は否定されるであろう。差別的動機についての文脈的アプローチの考え方 は,国際人権基準として,たとえば,人種差別撤廃委員会・一般的勧告35「人種 主義的ヘイトスピーチと闘う」26(CERD/C/GC/35,2013年9月26日)におい ても,法律により処罰されうる流布や扇動の条件として,スピーチの内容と形態;

24 ヘイトクライム京都事件(第一次)は,被告人の発言について名誉毀損ではなく,侮辱罪として起 訴されたに過ぎない。

25 結論としては,真実性の証明がないとして被告人は罰金50万円に処せられた。しかし,被害の甚 大さに比すると量刑は軽きに失するといえる。

26 See supra note 23

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経済的,社会的および政治的風潮;発言者の立場または地位;スピーチの範囲;ス ピーチの目的といった「文脈的要素」を考慮するものとされている(同勧告15パ ラグラフ)。

日本政府は,1988年国連の人種差別撤廃委員会において,日本の刑事法廷が

「人種的動機」(racial motivation)を考慮しないのかとの質問に対し,「レイ シズムの事件においては,裁判官がしばしばその悪意の観点から参照し,それが量 刑の重さに反映される」と答弁しているものの,実際の刑事法廷においては,差別 的動機の認定方法が確立されていないのが現状であるといえる。ヘイトクライム 事案における動機の認定手法について,日本の刑事裁判実務27は,早急かつ抜本的 な改善が求められる。

3 包括的差別禁止法

(1) ヘイトスピーチと表現の自由

アメリカにおいて,言論の自由の優越的価値は,対国家との関係における個人に 属するものとして,米国憲法修正第1条28に具体化されている。ヘイトスピーチと 言論の自由をめぐり,アメリカにおいては非常に複雑な法理論が蓄積されている が,その理論と実践は極めて複雑であり,必ずしも一貫していない。29

ヘイトスピーチをはじめとする言論内容に着目した規制について,連邦最高裁 は,当該言論が「差し迫った違法行為を扇動しまたはうみだすことに向けられてお り」(主観的意図),「そのような違法行為を扇動し生み出す可能性が高い場合」

30に限り認められるとする。

仮にこの連邦最高裁基準によったとしても,表現行為が暴力の扇動や「真の脅威」

(true threat)に至る場合には,具体的状況によっては規制可能であると考えら れる。実際,Black v. Virginia(2003) 事件において O’Connor 裁判官(多数 意見)は,「連邦最高裁は,特定の個人あるいは個人の属するグループに対する,

身体的害悪あるいは死の恐怖におくような違法な暴力行為を犯す意図を伝達する 脅威,すなわち「真の脅威」は規制しうる」と論じている。31 O’Connor 裁判官

(多数意見)は,アメリカの歴史に鑑みれば,十字架を燃やす行為は脅威を与える

27なお,本判決について,検察官は控訴せず,被告人のみが控訴し,現在大阪高裁に係属中である(2 020年4月24日現在)。

28 米国合衆国憲法修正第1条連邦議会は,国教を定め,または自由な宗教活動を禁止する法律;言論 または出版の自由を制限する法律;ならびに人民が平穏に集会をする権利,および苦痛の救済を求め て政府に対し請願をする権利を侵害する法律を制定してはならない。

29 Michel Rosenfeld “Hate Speech in Constitutional Jurisprudence : A Comparative Analysis”

24 Cardozo Law Review, 1523 (2003) at1530

30 Brandenburg v. Ohio, 395 U.S 444 (1969)

(日本においては,いわゆる「明白かつ現在の危険」の基準といわれている。)

31 詳細は,Black v. Virginia, 538 U.S 352-363 参照

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行為の中でもとりわけ有害な形態であり,この行為が長く「差し迫った暴力の特徴」

であり続けてきた有害な歴史にてらして,すべての脅迫的なメッセージを禁止す る代わりに「十字架を燃やす行為」を修正第1条の元でも禁止することは可能であ るとする。32

アメリカには現在,ヘイトスピーチ規制法はないが,この連邦最高裁 O’Connor 裁判官の意見(多数意見)に照らせば,暴力の扇動や,歴史的文脈に照らして特に 有害な言動(象徴的行為を含む)については,規制が可能であろうと思われる。

(2) 連邦法における実践

アメリカにおいては,公民権法をはじめとする包括的差別禁止法が人種主義的 思想に基づく差別行為を禁止するとともに,違反の場合には被害者の効果的な救 済制度を設けている。

たとえば,連邦法たる公民権法は第7編(Title VII of the Civil Rights Act of 1964)において,人種,皮膚の色,性別,宗教または出身国を理由とする差別 を雇用の全局面において禁止する。加えて,雇用における年齢差別禁止法(Age Discrimination in Employment Act of 1967)によって年齢差別が,また,障害を もつアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990)によって障害者差 別が,それぞれ禁止されている。

さらに,アメリカにおける雇用差別禁止法制の発展には,連邦最高裁判所が大き な役割を担ってきた。差別的意図を示す直接的な証拠が存在しない際に,証明責任 を労働者と使用者双方に分配する立証責任ルール(McDonnell/Burdine ルール)が 1970年代に形成され1,同時期には,それ自体としては差別を含まない中立的 な制度や基準であっても,人種や性別によって不均衡な効果をもたらすならば,違 法な差別となりうるとする「間接差別法理」も確立されている。公民権法第7編違 反の場合には,米国平等雇用機会均等委員(EEOC)に申し立てが可能である。

(3) 州法における実践

アメリカにおいては,州法が連邦法たる公民権法の精神を引き継ぎつつ独自の 人権基準を定めるなどしており,各州における取り組みが重要な役割を果たして いる。

たとえば,ニューヨーク市人権法(New York City Human Rights Law)33は,雇 用,住宅,公共施設(レストラン,ホテル,医師のオフィス,店舗,劇場,競技場,

タクシーなども含む)における,人種,皮膚の色,民族,国籍,国籍的出自,年齢,

32 Ibid.

33 ニューヨーク市人権法および救済制度について同ホームページ参照

https://www1.nyc.gov/site/cchr/media/source-of-income.page(最終アクセス2020年1月1 3日)

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市民権ステータス,障がいの有無,性別,性自認(gender identity), 性的指向 (sexual orientation),婚姻の有無,出身国,人種,妊娠の有無による差別を禁止 している。加えて,雇用における追加的差別禁止事由として,逮捕や有罪判決の有 無,在宅看護・介護の有無(Caregiver),信用履歴,失業状態,過去の給与,家 庭内暴力・ストーカー行為および性犯罪被害者としての地位に基づいて雇用にお いて差別することを禁止している。住居(housing)における追加的差別禁止事由 として,(合法的な)職業,(合法的な)収入源,子どもの有無,家庭内暴力,ス トーカー行為,および性的犯罪の被害者としての地位に基づく差別を追加的に禁 止している。これら差別を受けたと主張する者は,ニューヨーク市人権条約に基づ き,ニューヨーク市人権委員会に救済申立が可能である。

4 人種差別に対する公権力の態度

法制度のみならず,アメリカにおける人種差別に対する公権力の態度は,日本にお けるそれと比べると際立って対照的である。

(1) 日系アメリカ人収容をめぐって

1942年,ルーズベルト大統領は,「国家の安全保障上の脅威」という名目で 日系アメリカ人を強制移住させる権限を軍に与える大統領令第9066号に署名 した。これに基づき,12万人以上にのぼる日系アメリカ人が強制収容所に送られ た。1982年「戦時市民転住収容に関する委員会」は,「大統領行政命令第90 66号は・・・人種差別であり,戦時ヒステリーであり,政治指導者の失政であっ た」と結論づけた。

1988年8月10日,レーガン大統領は「1988年市民の自由法(通称,日 系アメリカ人補償法)」に署名し,公式に日系アメリカ人に謝罪(謝罪の手紙の送 付)し,署名日に生存している被強制収容者全員に対してそれぞれ2万ドルの補償 金を支払った。同時に,二度と同じ過ちを繰り返さないよう,日系アメリカ人の強 制収容所体験を全米の学校で教えるため,12 億 5,000 万ドルの教育基金が設立さ れた。日系人団体である日系アメリカ人市民同盟(Japanese American Citizens League)がカリキュラムガイドを発行し,これに基づき全米の子どもたちが義務教 育課程において日系人強制収容の歴史を学んでいる。34

(2) シャーロッツビルにおけるヘイトクライム事件

2017年8月12日,バージニア州シャーロッツビルにおいて白人至上主義 者団体と人種差別に反対するグループが衝突し32歳の女性が死亡したヘイトク

34 2017年(大統領令第9066号から75年を追悼し)スミソニアン博物館では特別展 Righting a Wrong: Japanese Americans and World War II を1年間開催(全米日系人博物館においても201 7年2月から8月まで特別展“Instruction to All Persons: Reflections on Executive Order 9066”

を開催していた。)するなどし,現在も被害者の追悼・記憶する作業が行われている。

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ライム事件をめぐり,バージニア州のテリー・マコーリフ知事は,「今日シャーロ ッツビルに入ってきた白人至上主義者やナチスに伝えたい。我々のメッセージは 単純で簡単だ。『帰れ』。この偉大な州はお前たちを歓迎しない。恥を知れ。君た ちは愛国者のふりをするが,君たちは愛国者とは程遠い」35と報道陣に向けてコメ ントし,公的に非難した。36

また,マイケル・シグナー市長は,極右行進を「憎悪と偏見と人種差別と非寛容 の行進」と非難し,バージニアに,白人至上主義団体クークラックスクラン(KK K)を連想させる燃えるたいまつを持ち込む者たちは「歴史のごみためがふさわし い」と強い言葉で非難した。37 この時のトランプ大統領は,「色々な側(many sides)」 の憎悪と暴力を批判するにとどまり,白人至上主義者による暴力と特定しなかっ たため,一部の共和党議員からも問題視された。38

(3) 以上の通り,アメリカにおいては,過去の人種主義に基づく差別という過ちを政 府が公式に認めて謝罪し教育に反映しているのみならず,現在も起こる人種主義 的・差別的言動について,政治的党派を超えて,人種差別を許さないという明確な メッセージを公権力側が発している。

一方,日本において,これまで連続・多発的に発生した朝鮮学校女子児童に対す るチマチョゴリ切り裂き事件,ヘイトクライム京都事件(第一次,第二次),神奈 川県相模原市の障害者福祉施設における殺傷事件(2017年),ブラジル人少年 リンチ殺人事件(1997年),直近では在日コリアン「虐殺」を扇動する年賀状 による威力業務妨害事件(2020年),その他数多くのヘイトクライム事件につ いて,公人がこれら憎悪犯罪を非難するメッセージを明確に示した例は容易には 見つけることができない。このような状況は,かかる行為が非難されるべき差別で あって日本社会全体が取り組むべき課題であるとの社会一般の認識の共有を妨げ,

偏見や差別行為を助長するものであるといえる。

5 差別禁止法の日米比較

以上を,ヘイトのピラミッドを用いて整理する。このピラミッドは,上のレベルは 下位のレベルの行為に支えられていることをしめす。下位レベルの行為を受け入れ る時,さらに上位のレベルの行為を受け入れることにつながり,最後はジェノサイド

(大量殺戮・虐殺)にいたるというメカニズムを明らかにしている。39

35 “I have a message to the white supremacists and the nazis who came into Charlottesville today, ‘Go home.’ You are not wanted in this great commonwealth. You pretend that you are patriots, but you are anything but patriots.”

36 2017年8月13日付け BBC

37 2017年8月13日付けニューヨークタイムズ,BBC

38 2017年8月13日付けニューヨークタイムズ

39 たとえば,ADL“Pyramid of Hate”参照。

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アメリカにおいては,ジェノサイド(V)およびこれに至るまえの暴力行為(IV)

についてはヘイトクライム法により対処しているといえる。さらに,それに至らない 差別行為(III)については,連邦法たる公民権法およびその精神を受けた各州法にお いて重畳的に包括的差別禁止法40を整備し対処している。加えて,人々の偏見による 行為(II)や先入観(I)については,先に述べたような人種差別をめぐる過ちにつ いての歴史教育,人種差別事件が起こった際の公権力側の意見表明により,不十分な がらも対処しているとみることができる。

【ヘイトのピラミッドにみる差別禁止法の日米比較】

一方,日本においては,2016年に施行された「本邦外出身者に対する不当な差別 的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」)

が存在するものの,なんらの罰則をもたない理念法にすぎないばかりでなく,ここでカ バーされる「不当な差別的言動」が外国にルーツを持つものおよびその子孫であって,

https://www.adl.org/sites/default/files/documents/pyramid-of-hate.pdf

40 なお,ヘイトクライム法もまた,包括的差別禁止法の一部をなすと考えられる。

V. ジェノ サイド

IV.暴⼒⾏

III. 差別⾏為

就職差別・結婚差別・⼊居 差別等

II. 偏⾒による⾏為

差別的なジョーク,からかい等

I. 先⼊観

先⼊観の受け⼊れ,侮蔑的ジョークの放置

ヘイトクライム法,ヘイトクライム年次 レポート,警察・検察のトレーニング

連邦法;公民権法 州法;ニューヨーク市人権法等

教育,啓蒙活動,公権力に よる意見表明等

例)国立アフリカンアメリカン博物館,スミソ ニアン博物館等における展示等

ヘ イ ト ス ピ ー チ対策法?

アメリカ 日本

(12)

- 12 -

「適法に居住するもの」に限っている41点,他のマイノリティについての言及がない点 で市民社会に分断を生じさせる恐れすらある点で不当であり,包括的差別禁止法とは 程遠い内容となっている。

この法律の実効性の乏しさは,施行後も路上やインターネット上のいわゆる差別的 言動,憎悪扇動は続いており,ヘイトクライム京都事件(第二次),弁護士に対する一 斉大量懲戒請求事件といった前代未聞のヘイトクライム事件が起こっていることから しても明らかである。

さらに,ヘイトクライム京都事件(第一次,第二次)に象徴されるように,ヘイト事 案におけるこれまでの警察・検察の対応は,刑法違反であるにも関わらず「表現の自由」

の誤解のもと思考停止・放置してきた経過があり,日本の差別的言動をめぐる状況は歯 止めが効かない危機的状況にある。実際に,2018年に起こった大阪地震においては,

「不逞鮮人」という関東大震災における朝鮮人大虐殺において用いられた扇動用語を 用いて,在日コリアンへの差別を扇動するインターネット上の書き込みが多発するな どしており42,このままでは大地震等の自然災害を機にジェノサイドにつながる危険さ えあるといっても過言ではない。

地方自治体の動きをみると,2019年12月12日,「川崎市差別のない人権尊重 のまちづくり条例」が川崎市議会において可決された。これは,いわゆるヘイトスピー チを繰り返した場合に最高で50万円の罰金が課されるというものであり,はじめて 罰則規定が設けられたという点においては前進であると言える。しかし,そもそも罰則 が課されるのは日本以外の国・地域の出身者やその子孫に対する差別的言動の場合(同 条例第12条)に限られ,しかも市長による勧告(同第13条第1項)や命令(同第1 4条)を合計3回無視した場合(同第23条)にようやく適用されるものである。その 場合であっても課されるのが罰金刑50万円というのでは,日本の特徴でもある資金 力あるレイシストに対する予防的効果はほとんど期待できない。現行刑法さえ適切に 運用されていない現状において,警察や検察,裁判官へのトレーニングなしに新規定が いかほど適切に運用されるか疑問である。そもそもヘイトスピーチは差別の問題,すな わち社会全体の問題であるにもかかわらず,国レベルではなく,地方自治体に規定の制 定や運用を任せるとすれば,国の責務放棄である。

先に見た米国では,法によってヘイトスピーチを規制することはしないものの,差別 的言動が犯罪に至った場合にはヘイトクライム法や警察・検察へのトレーニングを通

41 同法第2条。なお,第190回国会参法第6号付帯決議においては,第2条の定義規定にあてはま るもの「以外のものであれば,いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであるとの基 本的認識の下,適切に対処すること」とされているが,法律の条文自体が限定して規定されていること による問題は極めて大きい。

42 たとえば,

https://www.huffingtonpost.jp/entry/osaka-20180622_jp_5c5d730ee4b0974f75b2b0ea 参照

(13)

- 13 -

じて対処しているし,包括的差別禁止法としての公民権法や州法が機能している。また,

差別はゆるされないという政府言論によって対処しているともいえる。一方,欧州では,

ヘイトクライムのみならずヘイトスピーチに対しても一定の規制を課することで,こ の問題に対処する例が多い。

そこで以下,憎悪や差別の扇動への規制に動いた欧州の実践を紹介する。

第3 欧州人権条約および欧州人権裁判所

ヨーロッパ諸国においては,差別や憎悪の扇動についてその行為類型に応じて禁止 するいわゆるヘイトスピーチ規制(刑事法含む)をもつ国が多い。この国内法により,

表現の自由が侵害されたと主張する個人またはNGOは,以下に述べる欧州人権裁判 所に救済の申立てが可能である。以下,欧州人権裁判所や欧州評議会が人種主義に基づ く差別についてどのような立場を取っているかを紹介する。

1 欧州人権裁判所

1953年に発効した欧州人権条約(European Convention on Human Rights)は,

1948年世界人権宣言にうたわれた権利に法的効力をあたえ,同宣言を法的拘束 力のあるものに昇華させた初めての法律文書である。同条約は,第二次世界大戦およ びその前の時期における大量殺人,残虐行為,非人道的行為に対する反応であった。

43

条約は,ヨーロッパ評議会加盟国が,自国民だけでなく,その管轄にいる全ての 人々の基本的な市民的,政治的権利を保障することを約束する国際条約として,欧州 加盟国の国内法の中に組み入れられてきた。国内裁判所は,欧州人権条約を適用する 必要がある。

この欧州人権条約に基づき,欧州人権条約の違反を理由とする訴えに応じる欧州 評議会の司法機関として欧州人権裁判所(European Court on Human Rights)があ る。欧州人権裁判所は,欧州人権条約の実効性を担保するため,ヨーロッパの国内最 高裁において敗訴確定し,最終審においても救済されなかった人権侵害事案を取り 扱う。44 当事者である締約国は,欧州人権裁判所の最終判決に従う義務をおう。最 終判決は欧州評議会の閣僚委員会(Committee of Ministers)に送付され,その執行

43 Jacobs, White, and Ovey, The European Convention on Human Rights, (7th Ed.), Oxford

University Press, 2014, at4-7.

44 Ibid., at8-16. 欧州人権裁判所はフランス・ストラスブールにあり,その裁判官は欧州加盟国か ら一人ずつ選任され,加盟国数と同じ47名である。裁判官は,出身国の裁判に関わることはできな い。

(14)

- 14 -

について閣僚委員会が監視する。欧州人権条約およびこれに基づく欧州人権裁判所 は世界的にもっとも実効性が高いと評価されている地域人権保障システムである。45 2欧州人権裁判所の判例法理

欧州人権裁判所はヘイトスピーチと表現の自由に関して2つのアプローチをとっ ている46: (1)権利の濫用を禁止する条約第17条を適用することによって,問題と なっている表現行為がヘイトスピーチに至り同条約の根本的価値を否定するような 場合,同条約の保護対象から除外するアプローチ。;(2)同条約第10条第2項47によ って制限を課するアプローチ。48これは,問題となっている表現行為がヘイトスピー チに該当するものの条約の根本的な価値を毀損するに至らない場合に採用される。49

権利の濫用の禁止を定める欧州人権条約第17条は,「この条約のいかなる規定も,

国,集団または個人がこの条約において認められる権利および自由を破壊しもしく はこの条約に定める制限の範囲を越えて制限することを目的とする活動に従事しま たはそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解 することはできない。」と定める。この目的は,欧州人権条約に保障された原理の破 壊を目指す申立者によって自己に有利に濫用されることを防ぐための規定である。50 第17条と第10条について,欧州人権裁判所は,「条約の根底にある価値の否定に 向けられたいかなる発言も,第17条によって,第10条の保護から除外されること に疑いはない。」51と述べ,第17条の適用が肯定される場合には第10条(表現の 自由)の保護の埒外となるとしている。52以下,(1)および(2)の各事例をみる。

3 ヘイトスピーチをめぐる欧州人権裁判所の裁判例 (1) 権利の濫用とされた例

45 Ibid.

46 European Court of Human Rights, Fact Sheet on hate speech (March 2019).

47 第10条(表現の自由)第1項「1 すべての者は,表現の自由についての権利を有する。この権 利には,公の機関による介入を受けることなく,かつ,国境とのかかわりなく,意見を持つ自由ならび に情報および考えを受けおよび伝える自由を含む。」

第2項「1の自由の行使については,義務及び責任を伴い,法律によって定められた手続き,条件,

制限又は刑罰であって,国の安全,領土保全若しくは公共の安全のため,無秩序若しくは道徳の保護の ため,他の者の信用若しくは権利の保護のため,秘密に受けた情報の暴露を防止するため,又は,司法 機関の権威及び公平さを維持するため,民主的社会において必要なものを課することができる。」(傍 線筆者)

48 See, Supra note 175, Fact Sheet p.5.

49 Ibid., Fact sheet on hate speech, p.1.

50 Weber.A, “Manual on hate speech”, Strasbourg, Council of Europe Publishing, 2009, p.28., p.22.

51 Gündüz v. Turkey, Y, No. 35071/97, CEDH 2003-XI, para.41.

52 ほかにも,Lawless v. Ireland ,App. No. 332/57, 1 July 1961, para.7.参照

(15)

- 15 -

M’Bala M’Mala v. France

53

申立人である

M’Bala

は政治的活動を行うコメディアンであったところ,ユ ダヤ民族に出自をもつまたはユダヤ信仰をもつ人々に向けられた公衆における 侮辱を理由にフランス国内における裁判所において刑事有罪判決をうけたこと について,これが表現の自由の侵害であるとして欧州人権裁判所に救済を求め た。欧州人権裁判所は,第17条(権利の濫用)を適用し,

M’Bala

に10条(表 現の自由)による保護の資格はないとしてその申立を退けた。問題となっている パフォーマンスは攻撃的なものであって,そのパフォーマンスはエンターテイ メントとみることはできずむしろコメディの名の下に否定主義を促進し,ユダ ヤ人退去強制被害者に対する品位を損なう描写に至っていると判断した。54

Garaudy v France

55

歴史学者であった申立人(

Garaudy

)が,その著書において,ホロコーストに ついてのさまざまな側面を否定する本を書いたことについて,フランス国内に おいて有罪判決を受けたことが不当であるとして欧州人権裁判所に申し立てた ケースにおいて欧州人権裁判所は,「ホロコーストのような明確に確立された歴 史的事実の存在を否定することは,・・・真実追求のための歴史研究を構成する ものではないことに疑いを挟む余地はない。そのようなアプローチの目的と結 果は全く異なったものであり,真の目的は(ヒトラーの統率した)国家社会主義 体制を復帰させ,その結果として,偽造の歴史によって被害者自身を攻撃するも のであるというべきである。人道に対する罪を否定することはしたがって,ユダ ヤ人に対する人種的名誉毀損であり,彼らに対する憎悪の扇動のうち最も深刻 な形態の一つであるといえる。….(このような行為は)民主主義および人権概 念と相容れないのである。その主唱者の表現は,条約第17条の禁止する目的の カテゴリーに該当する計画をもったものであることについて議論の余地はな い。」とした。56

このように,ホロコーストのように「明確に確立された歴史的事実」57の存在 を否定することは,欧州人権裁判所によって第17条(権利の濫用)が適用され,

第10条(表現の自由)の保護の範囲外であると宣言されている。

53 App. No. 25239/13, Admissibility Decision of 20 October 2015.

54 Dominic Mcgoldrick, “Thought, Expression, Association, and Assembly” in Daniel Moeckli and others, eds., International Human Rights Law, third edition (OUP), 2018, pp.208-231. and p.223.

55 App. No. 65831/01, Admissibility Decision of 24 June 2003.

56 Ibid., p.23.

57 Garaudy v France, App. No. 65831/01, Admissibility Decision of 24 June 2003, para41.

(16)

- 16 -

条約第17条の適用により表現の自由の保護の範囲外にあるとされた言動に ついては次のようにカテゴリー分けすることができる:民族的憎悪58, 暴力の扇 動およびテロリスト活動の支援,59 否定主義および歴史修正主義,60 人種的憎 悪,61 宗教的憎悪62の場合である。 総じて欧州人権裁判所はこのようなケースに おいては,申立が全体主義的教義に触発され,民主主義的価値に対する脅威を表 現するもので条約の価値と相容れず,表現の自由の埒外にあるとして申立を排 斥している。63

(2) 表現の自由の不当な制限として条約第10条違反を認めた例

一方,欧州人権裁判所は,「明確に確立された歴史的事実」というカテゴリーを,

ホロコーストの外にまで広げることについては否定的である。64

たとえば,

Percinek v. Switzerland

,65 のケースでは,トルコ人政治家である

Percinek

が,スイスにおいて,オスマントルコ帝国下の1915年および翌年の

アルメニア人の大量国外追放・大量虐殺は,帝国主義者による「国際的な嘘」であ ってジェノサイドではないという見解を公的な場で述べたことについて,トルコ 国内の刑事裁判所において有罪判決を受け,これが不当だとして欧州人権裁判所 に救済を求めた。この事件において,欧州人権裁判所の多数意見は,申立人の発言 はアルメニア人というよりは反帝国主義を非難したものであり,条約第8条66のい うアルメニア人の尊厳を侵害したものではないとして,申立人の発言はヘイトス ピーチでも扇動でもなく,条約第10条違反(表現の自由の侵害)が認められると した。67 その際,「それらの発言がなされた文脈は,スイスにおける緊張の高まり

58 Pavel Ivanov v. Russia, App. No.35222/04, Admissibility Decision of 20 February 2007.

59 ROJ TV A/S v. Denmark, App. No.24683/13, Admissibility Decision of 17 April 2018.

60 Garaudy v. France, App. No. Admissibility Decision of 24 June 2003, M’Bala M’Mala v.France, App. No. 25239/13, Admissibility Decision of 20 October 2015, Williamson v. Germany, App. No. 64496/17, Admissibility Decision of 8 January 2019.

61 Glimmerveen and Haqenbeek v. the Netherlands, App. No. 8348/78, 8406/78, Admissibility Decision of 11 October 1979.

62 Norwood v. the United Kingdom, App. No App no 23131/03, Admissibility Decision of 11 October 2004, Belkacem v. Belgium, App. No34367/14, Admissibility Decision of 27 June 2017.

63 Ibid., Fact Sheet on hate speech, p.5.

64 Lehideux and Isorni v France, (App. No. 24662/94), 23 September 1998, (2000)30; Chauvy and others v France, (App. No. 64915/01), 29 June 2004 (2005) 41.

65 App. No. 25239/13, Admissibility Decision of 20 October 2015.

66 第8条 (私生活および家族生活の尊重を受ける権利) 1 すべての者は,その私的および家族生 活,住居ならびに通信の尊重を受ける権利を有する。 2 この権利の行使に対しては,法律に基づき,

かつ,国の安全,公共の安全もしくは国の経済的福利のため,また,無秩序もしくは犯罪の防止のため,

健康もしくは道徳の保護のため, または他の者の権利および自由の保護のため,民主的社会において 必要なもの以外のいかなる公の機関による介入もあってはならない。

67 Ibid.

(17)

- 17 -

や特別な歴史的な含意によって強調されたわけではなく,・・・本件においては,

アルメニア人コミュニティが,危機に瀕していてその権利を保護するために申立 人を刑罰による制裁の対象とする必要があるとまでは必ずしもいえない」とした。

68 一方,少数意見は,次のように述べる。「地理的範囲を制限することによって申 立者の発言の重要性を矮小化することは,強行法規たる

erga omnes

69による普遍的 な人権の範囲を深刻に損なうこととなる」。仮に多数意見に従うならば,「ルワン ダにおけるジェノサイドやカンボジアにおけるクメールルージュ政権におけるジ ェノサイドは,表現の自由の名の下に制限なしに許され,または被害者はほとんど 保護されなくなってしまう。そのような視点はこの条約において保障された普遍 的な価値を反映しているものではない」と判示した。70 著者は,この少数意見に 賛同する。先述の

Garaudy

のケースで判示されているように,人道に対する罪を 否定することは,「標的となった特定のグループに向けられた最も深刻な形態の人 種的名誉毀損であり,彼らに対する憎悪の扇動」である。71 したがって,そのよう な行為(人道に対する罪の否定)は,国際法上の

erga omnes

の考えに従って世界 中どの場所においてどのような文脈においてなされようとも許されないというべ きである。

(3) 以上見てきた通り,欧州人権裁判所は,ホロコーストの否定など人道に対する罪 の否定は表現の自由の保護の範囲外にあり,それ以外の表現についての規制は,条 約第10条に照らして,①法律によって明記された,②正当な立法目的(混乱や犯 罪の防止,公共秩序の保護等)のために,③民主社会において必要な制限であれば 制限が許されるとしているといえる。

4 欧州評議会の条約および規律

(1) 欧州社会憲章・マイノリティ枠組条約

欧州評議会によって採択された条約や文書のうち,主に自由権や市民的権利に ついて定めた欧州人権条約のほかにも,日本のヘイトスピーチ規制について参考 となりうるものとしては,経済的・社会的権利について定める「欧州社会憲章」72 および「国籍的マイノリティ保護のための枠組条約」73(以下,「マイノリティ枠

68 Ibid., para.280.

69 侵略,ジェノサイド,奴隷制度,人種差別の禁止など,国際法における対世的義務。

70 Joint Dissenting Opinion of Judges Spielmann, Casadevall, Berro, De Gaetano, Sicilianos, Silvis, and Kuris, paragraphs 6-7.

71 See, Supra note.188, p.23.

72 欧州社会憲章は,1961年10月18日に,人権と基本的自由の保護のための条約(「欧州人権 条約」)には直接的には定めのない社会権の保障を補充,明記するため採択され,1965年2月26 日に発効した。

73 1995年2月1日採択,1998年2月1日発効。

(18)

- 18 -

組条約」)がある。これらはともに,マイノリティをあらゆる形態の差別から保護 するための手段を含んでいる。74 マイノリティ枠組条約は,少数国籍の保持いか んによるいかなる差別をも禁止し75,さらに,その属する民族,文化,言語または 宗教的アイデンティティのゆえに差別,敵意または暴力の脅威やそのような行為 の対象となりうる人々を保護するために適切な措置をとるべきことを締約国に求 めている。76

改正欧州社会憲章77は,同憲章の定める権利(主に社会権)の享受において,人 種,皮膚の色,性別,言語,宗教,政治その他の意見,国籍的血統または社会的出 身,健康,国籍的マイノリティとの関わり,出生または他の地位に基づくいかなる 差別をも禁止している。78

(2) ECRIによる勧告および意見

「人種主義および不寛容に対する欧州委員会(略称「ECRI」)による人種主 義および人種差別克服に向けた国内法のありかたに関する一般的政策意見7」(2 002年12月13日)は,欧州評議会加盟国に対し,さまざまな人種主義的表現 を克服するために,刑法規定を適切に適用することを求めている。この意見は,人 種主義的なイデオロギーに基づくジェノサイド・人道に対する罪・戦争犯罪の公の 否定という人種主義的な目的をもった公の表現は,法律によって罰せられなけれ ばならないとする。また,人種主義的表現を含む資料(電磁的資料を含む)を,人 種主義的目的のもと公に普及させることもまた,刑事制裁の対象とされなければ ならないとする。79

2015年12月8日に採択されたECRI「ヘイトスピーチ克服のための一 般的政策勧告15」は,あらゆるヘイトスピーチを克服するための政府の努力を支 えるために設計された10のガイドラインを定めている。例えば,ヘイトスピーチ に取り組むための適切な民事,刑事,行政法の条項からなる効果的な法的枠組みの 設定である。この勧告はほかにも,様々な手段の中でとりわけ,コミュニティサー ビスの命令(社会奉仕活動命令)をありうる刑事制裁の範囲に追加したり,ヘイト スピーチ被害者が権利を行使する上で十分な額を損害賠償(填補賠償)として認め

74 たとえば,欧州社会憲章前文,第4条,および,マイノリティ枠組条約第9条第1項および2項参 照。

75 Article 6 Paragraph 1 of the Framework Convention. Also, see the Council of Europe,

“Explanatory Report” on the Convention, (February 1995), Strasbourg, para.48.

76 Article 6 Paragraph 2 of the Framework Convention. Also, see the Council of Europe,

“Explanatory Report” on the Convention, (February 1995), Strasbourg, para.50.

77 Adopted on 3 May 1996 and entered into force on 1 July 1999, ETS No. 163.

78 Article E of Part V of the revised European Social Charter.

79 Paragraph18 of the Recommendation No. 7

(19)

- 19 -

るなどによって民法の下での救済可能性が強化されることを提案する。欧州加盟 国政府は,この法的枠組みの中で,公的機関による表現の自由への干渉が,客観的 な基準に基づいて狭い範囲に限定され,独立した司法機関による監督対象となる ことを保証する義務がある。

勧告5は,ヘイトスピーチ被害者に対するカウンセリングや長期的なサポート を提供すべきことを定め,勧告10は,「他の制限的でない措置が効果的でなくか つ表現の自由が尊重されることを条件として刑法の適用を通じて適切かつ有効な アクションをとること」,とりわけ被害者が関連する手続きに効果的に参加するこ と(d)やヘイトスピーチ事件を扱う法執行機関,検察官および裁判官に対する適 切なトレーニングを提供すること(h),さらにネット上でのヘイトスピーチの普及 を撲滅するため他の国と協力することを求めている。

(3) このように,欧州評議会の条約およびそのシステムは,人種主義に基づく差別に 対して,表現の自由の観点にかぎらず,経済的,社会的,文化的権利の側面から,

またマイノリティの権利の側面から差別禁止をうたい,統合的,かつ,全体的なア プローチをとっているといえる。また,ECRI による意見や勧告は,表現の自由に 配慮しつつ被害者の視点からこれら法制度が適切に運用されることを担保するた めの具体的方法を示していると言える。

第4 提言

上記のようなヘイトスピーチをめぐる国際的なスタンダードおよび人種主義や人種 差別を克服するための地球規模での努力にも関わらず,日本政府は,長年にわたり,日 本における人種主義的憎悪,人種差別を規制する責務を懈怠してきた。日本は,197 9年市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下,「自由権規約」)を批准し,さら に1995年にはあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(以下,「人種差別 撤廃条約」)に加入した。しかし,日本政府は,人種的優越思想や憎悪に基づく思想の 普及,人種差別や暴力の扇動を犯罪化することを求める人種差別撤廃条約の第4条(a) および(b)に留保を付したままである。日本政府は,この第4条(a)および(b)が日本国 憲法における表現の自由の保護と相容れないことを留保の理由としてあげている。80 しかし,日本も批准する自由権規約第20条2項は,「差別,敵意又は暴力の煽動とな る国民的,人種的又は宗教的憎悪の唱道は,法律で禁止する。」とし,自由権規約委員 会一般的意見11(1983年7月29日)は,表現の自由を定める第19条と第20 条の関係について,自由権規約第20条の定める差別・敵意または暴力の煽動禁止の要

80 International Convention of the Elimination of All Forms of Racial Discrimination, Declarations and Reservations-Japan, UNGA Res 2106 (XX) (21 December 1965) UN Doc A/RES/2106 (XX)

(20)

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求は「その行使に特別の義務と責任を伴う第19条に含まれる表現の自由についての 権利と完全に両立する。・・・第20条が十分に実効性を有するに至るためには,そこ で規定された宣伝および唱道が公序(public policy)に反することを法律によって明確 化し,違反の場合については法律によって適切な制裁を定めるべきである。」 と明確 に述べており,暴力の扇動禁止が憲法的価値と相容れないとは考えられない。

さらに日本政府は,ヘイトクライム事案における刑罰法規の適用について,「刑法に 定める殺人罪, 傷害罪,暴行罪,暴力行為等処罰に関する法律違反等により,処罰の 対象とされており,人種差別的動機に基づく暴力行為については,法と証拠に基づき厳 正に処分を行」っていると答弁している81。しかし,現在の日本においては,マイノリ ティが被害者になるヘイト事案においては「表現の自由」の名の下で,現行の刑法違反 さえ事実上野放しとなっているのが現状と言える。ヘイトクライム事案の中でも,複合 差別82を受ける立場にある「在日コリアン」「児童」や「在日コリアン」「女性」の受 ける被害はさらに深刻である。加えて,日本の刑事法廷において差別的動機の認定手法 が存在しないに等しいことは先に述べた通りである。

ヘイト「スピーチ」という単語が一人歩きし,これが「表現の自由」の問題として誤 解され,過激化するレイシストらの行為に歯止めが効かない日本の状況の根本には,差 別は許されないという政府言論の不在がある。加えて,植民地主義に基づき日本政府が 自ら差別83を繰り返し助長してきた背景がある。このような状況においては,日本の表 現の自由・思想の自由市場は機能不全に陥っているといえる。

以上より,日本においてヘイトクライム・ヘイトスピーチをめぐって以下のような改 善が求められる。

① 刑法規定の適切な運用。そのためには,憎悪犯罪を扱う法執行機関,検察官およ び裁判官に対する適切なトレーニングを提供することおよび差別的動機の認定手 法における文脈的分析アプローチの採用が求められる。

② ヘイト被害者が関連する刑事手続に効果的に参加すること。ヘイトクライム・ヘ イトスピーチ被害者に対する被害実態調査・カウンセリングをはじめとする支援 制度を整備することが求められる。

811・2回政府報告審査にかかる「最終見解」に対する日本政府の応答(2007年8月)パラグ ラフ14

82 アメリカのフェミニストは,女性差別が「白人(中流階級)女性差別」を,人種差別が「黒人男性 差別」を意味しており,「黒人」「女性」がそのいずれからも取り残されてきたことを明らかにした。

マイノリティたる地位がかけ合わさる時,最も深刻な差別にあうことについては,国連「人種主義,人 種差別,外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」(第3回)(2001)における「ジ ェンダーを含む他の差別と人種差別の複合性(intersectionality)」の言及にも表れている。

83 1952年4月19日付け法務府民事甲第438号通達によって在日コリアンらの国籍を剥奪し た措置を含む

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