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心臓ペースメーカ作用不全症例における マルチゲー ト心プールスキャン
宮崎 吉春 塩崎 潤 井上 寿 村田 義治 藤岡 正彦 伊藤 虞 宮永 盛郎 谷口 充* 油野 民雄 *
要 旨
ペースメーカ挿入患者のマルチゲー ト心プールス キャンを行 なった ところ,ペーシング不全であった ため,誤 ったデータを算出 した症例 を報告する。ペ ースメーカ挿入患者 におけるマルチゲー ト心プール スキャンを行 なう際,事前にペーシングが適切 に行 なわれてい るか否 か を確認 すべ きで あ る と痛感 し た。
は じめに
マルチゲー ト心 プールスキャン1)2)は,心機能 を 知 るうえで欠 くことので きない検査法である。同検 査 は,心電図の
R
波 を トリガー とし,不整脈 を除い た数百心拍分のデータを蓄積 して収集するため,算 出される値 は収集 された心拍内の平均 となる。 しか し,R
波 とは違 う信号 を検知 して トリガーが作動す れば,本来 と異なった値 を算出することになる。今回われわれは,体内式ペースメーカ挿入患者の マルチゲー ト心プールスキャン施行時,ペーシング 不全 に気付かずに検査 を行い,再度検査 しなければ な らなかった経験 を通 じて,事前にペーシング状態 が適切か否かを確認す る必要性 を痛感 したので報告 する。
症 例
7 6
歳,女性 で,1 9 8 0
年 に子宮癌手術,1 9 8 2
年1
月
s i c ks i nuss yndr ome
のためAAI
型ペースメー カを挿入 し,同時期のRI
検査でLVEF
は6 8%
を 示 した。1 9 8 8
年9
月風邪 にて某病 院受診 し,ECG
検査 よりペーシング不全 を指摘 され,当院内科 を受 診 し入院 となった。入院時 は血液検査上異常 な し, 胸部 Ⅹ線写真上心肥大 (心胸比5 9%)
あ り,安静暗の自発心拍数 は
60 ‑7 0
回/分であった。画像診断のポイ ン ト
入院後最初の
RI
検査 は,心プール像で左上肺野 にphot onde f fi ci e nc yar ea
を認 め,ペースメーカ の挿入者である と推測 された ものの,R‑ R
間隔が8 5 0ms e c ( 7 0
回/分)のデータが収集 されていた こ とか ら,ペースメーカが正常 に作動 していると判断 し,検査 を行 なった。この と き の 算 出 デ ー タ は,心 拍 数
7 0
回/分,LVCO 4 5 8 0m
g/分,LVSV 6 5m
g,LVEF 9%
,LVEDV 81 2m
gであ り, シネ描出で左室壁運動 は 全体的 にs e ve r e l yhypoki ne t i c
で あった( Fi g. 1 )
0しか し患者の全身状態はそれほど悪化 していないの に,得 られた
LVEF
が低す ぎることや,心プール 像 と比較するとLVEDV
が大 きす ぎることにより, データの信頼性 に疑問が生 じた。そのため,医師 に 問い合わせた ところ,ペーシング不全患者であることが判明 した。
当時の心電図では, 自発心拍が
6 0
回/分あ り, 自 発心拍 と関係な くペースメーカか らプ
b回/分の信号A cas er e por tofmul t トgat e dc ar di acpools cani npat i e ntwi t hmal f unc t i one dpac e make r
Yos i har uMi yas aki , J unShi oz aki ,Hi s as hil noue,Yos hi har uMur a t a,Mas a har uFuj i oka,Hi r os hil t oh
,Mor i r oMi yanaga,Mi t s ur uTani guc hi 串 ,Tami oAbur ano
*Di v i s i o n。 fRa d i o i s o t 。 p eS e r v 焼 No t oGe n e r a lHo s p i t a l ,a n d* De p a r t me n to fNu c l e a rMe d i c i n e ,S c h d o lo fMe d i c i n e
,Ka n a z a waUn i v e r s i t y
公立能登総合病院RI部 〒926七尾市藤橋町午部22,*金沢大学核医学科 〒920金沢市宝町13‑1
核医学画像診断 Vol.4No.11989.5. ‑ 39‑
Fig.1 Thevolumecurveofl
eftventricle atthe丘rststudy,wherethetriggerat the R waveand atthe
pacemaker wavearealternativelyincluded,sh
ows anearlyflatappeara
nce(LVEF:9%)・ Andtheseverelyredu
cedwallmotion ofleftventricleisobserved.
Notethe photondeficiencyareaintheleftup
per lung丘eld,duetothe
implantedpace‑ maker.
が出ていた(Fig,2a)。 このペースメーカは, 自 発 心拍が
7 0
回/分以上では作動せず,7 0
回/分以下 に なるとペーシングが開始 されるように設定 さ
れてい る。本症例ではデータ収集時, 自発心拍
の
R
波 を トリ ガー として感知せず,ペースメーカの信号 を感知 し てデータを収集 した と考 えられ,その結果,心拍の 全位相が混合 して記録 され,低いLVEF値 を示 し,
かつシネ描出で も左室壁の動 きがほ とん ど無いような結果 を示 した もの と考 え られた。
したが って, この患者の真のデータを
得 るには, ペースメーカ よ りの信号の影響 を除かなければな らない。そこで,ペー
スメーカの電位が小 さ くなるよ うに心電図の誘導 を変化 させて,再び検査 を行 なっ た。その結果,LVEFが51%と
な り,左室壁の動 きも良 くな り, これが真のデータの ように思われた(Fig, 3)。 しか し, この時 は心電図の誘導 を変 えた ために, 自発心拍のR波の
みを トリガー としてデー タ採取が行なわれたのでは
な く,脈拍が
7 0
回/分前後 に上昇 したため,ペースメーカよりの信号が出た Fig.2 a.
Electrocardiogram atth e丘rst studyshowstheupward良‑wave(R) from the malfunctioned p
acemaker (RM)alternati
vely.
b.Electrocardiogram
atthe second study stillincludes the PM wa
ves occasi
onally.
C. Electrocardiogram at the third studyincludesnoPM w
aves. り出なかった りの状態 にあ り,ペー
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Fig.3 Thevolumecurve
ofleftventricle atthesecondstudy,whereth
etrigger atthepacemakerwaveisoccasinally included,showstheLVE
Fvalueof
5 1 %.
しか もそれが
トリガー として作用 していたので,誤 ったデータが
得 られた もの と推測 され る。 トリガー としての条件
は,一定値以上の心電図上 の電位 を有 し,電位の変
化率が最大の波形 を兼ねそなえる こと である。 その
ために,電位の変化率が極 めて速 いペ ースメーカの
信号 により, トリガーがかか ることに なる. さらに
,ペースメーカの作用不全が生 じ,ペ ースメーカの信号 と自発心拍の信号が無関係 に発生 す るよ
うになる と,本症例 の初 回時の検査 の如 く, 誤 ったデータが収集 され ることになる. また,今回
使用 した コンピュータ (シンチ ビュー, シーメ ンス 社)は,デ ィスプレイ上 に心電図波形
を表示す るこ
と無 しに,マルチゲー ト心プールスキャンを行 なう Fig.4
ThevoltlmeCurveOfleftventricle atthethirdstudy,wherethetriggerat thepacemakerisnotincluded,
shows theLVEFvalueof71%.Andthegood wallmotionofleftventricle
isobser‑ ved.
ので, この
ことが,異常 データ収集の発見 を遅 らせ た一因で もあ
った。
以上 よ り,ペースメーカ挿入患
者のマルチゲー ト 心プールスキャン施行時 は,モニター心電
図にてペ ースメーカの作用状況お よび作用不全の有無 を常
に 監視 しお くことが必要 と