電動機教材の研究
技術科電気研究室 新 妻 陸 利
§1 はじめに
中学校技術・家庭科男子向き(以下技術科と省略)の指導内容の問題点については,いろいろな立場か らいろいろな指摘が多く,とうぜんのことながら電気領域の内容についても,技術教育の研究者や技術科 教員などから数多くの問題点が出されている。
その電気領域の中でも,電動機の教材については,設備不足,時間不足,研究不足などのために,技術 科教員が敬遠気味で,現行の指導書の内容以下に軽く扱っている状況である。
そのような茨城県の現状を調査分析し,その上に立って,「電動機教材の在り方を探ってみようと思う。
§2 電動機指導の現状と問題点
1 指導書
昭和40年発行の旧指導書と昭和45年発行の新指導書の内容を,電気領域の電動機iに関する部分につ いて比較検討してみると,
① 旧では「電動機」として示してあった項目が,新では「電動機を備えた電気機器」という扱い方に変
り,
② 旧で「単相誘導電動機,三相誘導電動機など」が実習例として示してあったのに,新では「単相誘導 電動機と単相整流子電動機」が扱われることになり,
③ 旧では「原理や構造をじゅうぶん理解させ,学習した事項が,同種類の他の電気機器にも応用し適用 できるように指導する」ことだったが,新では「電動機のしくみと電気機器の動力伝達経路を重点的に 指導する」ことに変り,
④ 1日では「生活の能率化と電気の利用,電気技術の進歩が各種産業に澄よぼす影響などについて指導す る」ことが,新では「日常生活に必要な電気に関する法的制限について知ること」「生活を豊かにする ための電気の利用にっいて考えること」さらには「電動機を備えた電気機器の選び方を考えること」な どを指導することになった。
これらを通して言えることは,旧では電動機の原理,構造を理解させることから,生活への影響や技術
史的内容にまで発展していったのに,新では電動機のしくみから電動機を備えた電気機器の保存,点検に
入り,さらには法的制限や電気機器の選択などという形に変ってしまった。電動機のしくみということで
電動機を扱っても,電動機の原理,構造には深入りしないで,電動機を備えた電気機器の取り扱い方に焦
点が移ってしまっている。電動機の原理,構造を省略してしまっては,どのように導通試験や絶縁試験を
やったらよいのかという保守,点検の方法さえも理解しにくくなるし,学習した事項が同じ種類の他の電 気機器にも応用できるようにするというねらいも達成できなくなるであろう。ましてや・電気に関する法 的制限や電気機器の選択という方向へ目を向けてしまっては・技術科の電気学習で何を学ばせようとする のか理解に苦しんでしまう。狭い意味の日常生活と無理に結ひつけたような生活の知恵的内容は無意味で あり,電動機の指導内容については,旧指導書の方がまだましであると言える。
2 教科書
指導書の改訂にともなって,教科書もそれに準じた改訂が行われた。2社から出版されている教科書の 内容を,まず旧教科書から見てみると,電気領域はすべて中学3年生が対象であったが,
OK社では電動機としてP.85からR94まで10ページにわたって12枚の図入りで説明がされており9 その内容として次のような項目が示されている。
1.電動機の構造と回転の原理 も 1.電動機の種類・構造
(1)単相誘導電動機
② 三相誘導電動機
③ 整流子電動機 2.誘導電動機の回転の原理
(1)回転のしくみ
② 回転磁界
(3)回転方向
2 電動機の取りあつかい 1.点検
2.運転 3.手入れ
QJ社ではやはり電動機としてP86からP.94まで9ページにわたり11枚の図入りで説明されてお り,その内容は次のような項目で示されている。
1.誘導電動機のしくみ
(1)誘導電動機の回転原理
(2)単相誘導電動機の始動のしくみ
(3) コンデンサモータのしくみ
2 準 備 デ R 点検 , ,/
(1)分 解
(2)試験 4保安上の注意
なお,J社の方には学習の整理として整流子電動機のしくみがR 97からR100まで4ページ6枚の 図入りで補足説明がされている。
それに対して現在の教科書は,電動機に関する内容は中学2年生が対象となっており,
oK社では「電動機をそなえた電気機器」としてP.164からP.169までとP・180に7ぺ一ジにわたり・・
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、
V枚の図表入りで説明されている。
1.電動機をそなえた電気機器のしくみ
(1)電動機と電気機器
(2)電気洗たく機と電気そうじ機のしくみ 2.電動機をそなえた電気機器の取り扱い
(1)点検
(2)取り扱いと安全
さらに電気機器の選択のところで,銘板,カタログが示されている。
oJ社では「電気機器」として,R192からP.199まで8ページにわたり,9枚の図表入りで説明されて いるo
1.電動機をそなえた電気機器
(1)単相誘導電動機をそなえた電気機器
(2)整流子電動機をそなえた電気機器 a 電気機器の正しい使い方
(1)電動機の定格
(2)安全な使い方 a 電気機器の点検
いずれにしても,原理,構造が5割以上の内容を占め,電動機の基本的内容を扱うことに重点が置かれ ていた旧教科書に比し,新教科書は図やページ数が7割位に減少したばかりか,電動機の原理や構造はほ とんど説明されず,電動機をそなえた電気機器という形で,電動機にはあまり立入らずに電気機器という 全体的な扱いに変ってしまっている。さらに,日常生活との結びっきに力点が澄かれ,電気機器の選択ま で含まれることになった。指導書に準じた改訂をしなければならないとは言え,教科書についても電動機 関係の内容は,旧教科書の方が指導内容も明確だったし,説明も親切であったと言えよう。
3 中学校設備
本年9月にi茨城県下の中学校197校に対して,電動機指導についてのアンケート調査を依頼し,86校 から回答が得られた。
その中で,電動機指導上の問題点および困難点について自由に書いてもらったところ,71校が回答し てくれたので,その結果を第1表に示す。
第ユ表 電動機指導上の問題点および困難点について
項 目 校数 割 合
1
教具,教材などの設備不足 37 52%
2 指導時間の不足 21 30
3 電動機理論が難解 21 30
4 指導内容,程度,範囲が不明確 14 20
5 教材研究や知識の不足 14 20
6 理科学習と無関係 9 13
※ 1校で2つ以上の回答もあるので割合の合計は100%以上となる。
その第1位が教具,教材などの設備不足で,半数以上の学校が設備不足を問題にしている。その内容をも う少しくわしく調べてみると第2表の通りである。
第2表 電動機機種別保有校台数調べ
機 種 保有校 平均台数
1
くま取リコイル形単相誘導電動機 15
1.62 コンデンサ始動形単相誘導電動機 39
2.43 分相始動形単相誘導電動機 12
1.34−一一
コンデンサ単相誘導電動機
5 1.85
三相誘導電動機 32
1.46
単相整流子電動機 、19
1.57 展開板式電動機 ・ 22
1.78 部分力。ト式電動機 49
1.69 電動機(機種不明)
4 2.6保有校数総計および平均保有台数 75 生6
86校中75校は何等かの電動機を1台以上保有しており,その平均保有台数は
その中でも説明用に使われる部分カット式電動機は57%の学校が1台以上保有して澄り,次いでコンデ ンサ始動形45%,三相誘導電動機37%の順で保有していることになる。
動機を1台も持っていないといヴことであり,今までの指導がどのような状態であったか推察できよう。
4 指導時間数
技術科第2学年電気領域の指導計画は,ほとんど学年の最後に配当されており,
度で最大35時間,最小18時間とまちまちで,81校の平均は26時間であったが,本年度は平均24時
間と減っている。
さてそのうち,電動機関係の指導にはどの位の時間がさかれているであろうか, 卜
す。
第3表 (電動機を備えた)電気機器の指導時間数
指導時間数
12 3 4
56 8 10
校 数
13 19 27 9 2 2
1その実習題材名は「電動機をそなえた電気機器」というものがほとんどで,
ることがわかる。その指導時間数は,無回答,不明確な22校を除いて,
開きがあるが,平均すれば4時間扱いということになる。しかし,第1表にもあるように電動機指導上の 問題点として約30%の学校が指導時間の不足をあげて澄り,この平均4時間の配当時間がさらに減って
しまうことも多いという。すなわち・第2学年における指導内容が多く・
時間を取られることも多く,第2学年の最後に計画されている電気領域にそのしわよせがでてきてしまい,
その中でも終りの方にある電動機関係の指導内容が,設備不足や理論の難解さと
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【
てしまうのだという。
5 技術科担当教員
2年前の茨城県技術・家庭科研究部の実態調査報告書によると,中学放技術・職業免許状所有者の年令 構成は,41才から45才が最も多く,全体の38%を占め,41才以上は67%にも達するという。ちな みに30才以下は7%弱であるという。したがって.免許状所有者でも教務主任や学年主任,その他の理 由で技術科を担当していない人も多く,逆に無免許で技術科を担当している人数は116名で18%弱,技 術科の免許状を持たずに職業の免許状で担当している者も含めれば,267名で全体の40%にも達す
るという。職業の免許状を持っている者は,主として農業関係の専攻者であるため,電気関係の力不足は いなめないと思う。
今回の謁査でも41才以上が63%を占めている。第4表がその年令構成で,1校が不明だったため85
第4表 技術科担当者の年令構成
年 令 25才以下 26〜30 31〜35 36〜40 41〜45 46〜50 51才以上 合 計 人数 4 人 20 17 27 53 45 14 180人
割 合 2 % 11 9 15 30 25 8 100%
このうち,技術科の免許状所有者はどの位になるであろうか,第5表にその内訳を示す。
第5表 技術科担当者の免許状の有無
年 令 25才以下 26〜30 31〜35 36〜40 41〜45 46〜50 51才以上 合 計
免許状有 3 人 11 15 17 31 36 8 121人
免許状無 1 人 9 2 10 22 9 6 59人
この調査結果でも,技術科担当者のうち3分の1が技術科の免許状を持っていないのだ。しかも86校中 15校は,いろいろと理由を述べてはあるが,技術科免許状所有者に技術科を担当させずに,技術科の免 許状を持たない者に技術科を担当させているという状態なのである。教務主任,学年主任などを担当する 年令層が多いこともあろうが,他教科の担当を優先させるという状況も無視できないように思う。
6 技術科教員研修
技術科の免許状を持たない者はもちろんのこと,免許状を持っている者に対しても,この教科ではとく に研修の機会が必要であろう。
電動機関係の指導内容には,電磁誘導,回転磁界,回転原理などを含むので,理論がむずかしく,指導 上問題があるし困難があると答えたのは,第1表に示すように30%にも及び,研修の機会が少ない,研 修の機会を設けて欲しいとの要望もつけ加えられていた。
文部省が教員の研修のためにと発行している「研究の手びき,中学校技術・家庭科,機械・電気編」を
みると・昭和37年発行のものでは,「電動機」としてP.90からP.102まで13ページにわたって16
枚の図を使い,原理,構造,測定,保守など,単相誘導電動機,三相誘導電動機について述べてある。し
かし整流子電動機については述べてないし,単相誘導電動機の測定のところは理解しにくい点もある。新
らしく昭和45年に発行されたものは,「単相誘導電動機の特性」「単相整流子電動機の特性」としてP.
164からP.174まで11ページにわたって16枚の図を使い,特性の測定法を中心として述べてあるが・
原理については述べてなく,しくみについて少し説明がしてあるだけである。指導書・教科書が改訂され・
研究の手びきが新らしくなっても,電動機についての研修は必要であると見ているようである。
さらに茨城県教育庁指導課が去年発行した「中学校技術・家庭科学習指導の手びき.製図・機械・電気 編(男子向き)」を見てみると,P.63からP.64にかけ・「電気洗たく機」として3時間扱いの例が かんたんに示されている。その中で「単相誘導電動機,整流子電動機のしくみと特徴について知らせる」
とあるが,「電動機の回転原理については深入りしない」とただし書きがあり,さらに問題点として「電 動機の取り扱いに関する知識が少なく正しい取り扱いができない」とも述べてある。学習指導のてびきと
してはこの内容では物足りないし,少なくともこの部分については指導書や教科書の内容を縮小してしま った感じが強い。「電動機の取り扱いに関する知識」は文部省の研究の手びきにもあるような内容の研修 はもとより,原理,構造についても理解しない限り,身につくものではないし,各種の電勤機に対応する
こともできない。電動機の原理,構造から地味に学んでゆく研修の機会が必要になってくる。
§3 電動機教材観とその内容
1 電動機の発明
1800年の「ヴォルタ電池」の発明は,電気技術史の中でも画期的な出来事であった。これによって継 続的に電流を得ることが可能となり,エネルギー源としての電気動力の時代へ入ることになったし,これ 以後は電気現象の研究が急速に進み,それと結合して電気技術も急激に発展し始めたのである。
1820年にエールステッドが「電流の磁気作用」を発見,1824年に「アラゴの円板」の発見,1827 、
Nには「オームの法則」の発見,1831年にはファラデーが「電磁誘導」の発見をしているのである。「ア ラゴの円板」の発見は,当時充分な説明が行われないままであったが,フ7ラデーの「電磁誘導」の発見 によりその説明が可能となり,今日では誘導電動機の原理として,最初の説明には欠かせないものとなっ ている。また,ファラデーの「電磁誘導」の発見は,発電機の原理の発見でもあった。発電機の原理とし ては,直流よりも交流方式の方が自然であるが,当時としては交流をそのまま用いるという考え方は容易 に浮かんで〜二ないため,めんどうな整流装置をつけた直流発電機が開発された。1870年には・ほぼ今日 の形の発電機が作られ,電力利用の道が開けることになった。この頃から交流機や変圧器などが考え出さ れ,交流に対する関心が高まってはきたが,まだ交流の電動機が開発されなかったため・直流の時代であ った。交流電動機は,初め交流発電機を逆に使った同期電動機が考えられ・その後反発電動機が発明され・
さらに1888年にテラスが多相交流の誘導電動機を発明したのである。そして,1891年のドイッ,フラ ンクフルト電気博覧会での三相交流による電力輸送の実演から,交流電力の利用が決定的となっだいった。幽
今日では,直流電動機の発達は電車などの運転にも見られるように,制御関係などでの利点が多いし・
一方交流電動機も産業用として各方面に利用されているばかりか,一般家庭にまで単相の形で各種の電動 機が入り込んできている。
2 一般家庭に誇ける電動機
茨城県統計課の調査によると,昭和47年9月現在,茨城県1,000世帯当り,主要耐久消費財のうち電 動機を備えた電気機器の所有状況は,第6表のようであるという。
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」 馳
第6表 電動機を備えた電気機器の所有状況
品 名 台 数 備 考 扇 風 機 1,450 Oコンデンサモータ使用
電 気 冷 蔵 庫 1,029 Q主としてコンデンサ始動形使用 iこの数値は一部ガス冷蔵庫を含む)
電気洗たく機 1,027 oコンデンサモータ使用
iうち約80%は脱水機付洗たく機)
電気掃 除機 847 o単相直巻整流子電動機(シリースモータ,ユニバーサル
@モータ)使用
テープレコーダー 468 o直流マイクロモータ,ブラシレスモータなど使用 ス テ レ オ 457 oくま取り形,コンデンサモータなど使用
備考欄には,使用される電動機の主な種別も示して鉛く。な澄この他に,ミキサー,ジューサー,ルーム クーラーなどもあるし,さらに換気扇,電動ミシン,井戸ポンプ,ドライヤ,食器洗い機,電気時計,電 気ひげそり機,8ミリ映写機,電気大工道具,電気鉛筆削り機など,電動機を備えた電気機器をあげたら 数え切れないほどある。また,それらに使用される電動機も,その用途に応じて各種各様のものが開発さ れている。
扇風機,電気冷蔵庫,電気洗たく機,電気掃除機など普及率の高い電気機器に使われている電動機は,
電気洗たく機の脱水機電動機まで含めて考えると,コンデンサモータが飛び抜けて多く使われていると言 えよう。その次にコンデンサ始動形や単相整流子電動機が多い。さらにこのコンデンサモータを巻線方式 により分けると2つになる。すなわち,主巻線と補助巻線が同一の場合(第1図,②)と異なる場合(第 1図,⑲)とである。それにより,自動反転の方式やコンデンサの容量も異ってくる。そのしくみを第1 図に示す。(a)は(b)に比べてタイマ回路はかんたんになるがコンデンサCの容量が大きくなる。また,脱水 機の電動機は,洗たく機の電動機よりも出力は小さくてすむし,反転の必要唯ないので,(a)の回路のスイ
ッチa,bいずれかがない形になる。
a
b
a AC MC
C M AC
b
C 、
(a) (b)
MC:主巻線 AC:補助巻線 C:コンデンサ
第1図 自動反転接続図
3 電気工学の中の電動機
電気工学として電動機を学習する場合,必ずしも電気技術史的観点によるわけでもなく,実際に使用さ れている状況などからでもなく,学術的体系として学習するのがふつうである。すなわち,電力工学,も っと専門的には電気機械工学として,直流機,同期機,誘導機澄よび交流整流子機という形の中で,それ それの電動機が扱われることになる。
① 直流機
直流発電機と直流電動機とは原理,構造が同一であり,励磁方式により分類すれば,
⑧ 他励式
分巻式
職離嚢{幾
となるが,このほか速度による分類や電圧,電流による分類も考えられる。また,特殊直流機や回転変流 機も直流機の応用として学習できる。
②同期機
同期発電機と同期電動機も原理,構造は同じで,現在の交流発電機はほとんど全部同期発電機であり,
発生する周波数は一定に保たれている。また逆に,同期電動機の回転速度は・常に一定の同期速度に保た
れる。同期機の構造は,その回転速度によって大きく変ってくる。同期発電機は,それを駆動する原動機によ
って分類されることが多く, 、
@(a)水車発電機
(b)タービン発電機
(c)エンジン発電機
などという呼び方をする。また,同期電動機は,その定速性と任意に力率を調整できるという特徴のため・
広く産業用に利用されている。
③ 誘導機澄よび交流整流子機
誘導機も可逆性はあるので,誘導発電機として運転できないことはないが・ほとんど電動機として利用 されている。その中でも,三相かご形誘導電動機は,構造かんたん,堅牢,安価で取扱いが容易なため,
最も広く産業用などに使用されている。このほか大形になると・三相巻線形の誘導電動機が利用される。
また,数100W以下の小容量のもので,単相電源で駆動される前述のような一般家庭向けの誘導電動機 があるが,これは三相かご形誘導電動機の固定子巻線を単相にしたもので,特殊誘導電動機の中の一っと
して,かんたんに扱われるのが普通である。
交流整流子機はもっぱら電動機として利用され,三相と単相とに分けられる。三相整流子電動機は・固 定子が三相誘導電動機と同じであり,回転子が直流機の電機子と同様のものである。単相整流子電動機は,
直流直巻電動機と同様な構造と考えてよい。が,界磁巻線と補償巻線や回転子回路との組合せによって・
いろいろな種類が考えられる。
以土のように,技術の発達が人間社会にどのような影響を与えたか〔技術更的観点)・生徒たちの日常
一88一
生活にどのように入り込んでいるのか(生活状況的観点),また,学術的体系の中ではどのように扱われ ているのか(学術的観点)の3つの観点について述べてきた。このほかにも幾つかの観点は考えられるが,
d庚けでも技術科の中で電気を学習する限り,内容や程度は別として,電動機教材の必要性は否定できな いであろう。
4 電動機教材の内容
ここでは各方面の具体的な提案のうちから幾つかを取り上げ,電動機教材を堀り下げてみることにする。
①教員養成大学教官を中心とし,文部省調査官や中学校教員も含め30数名が執筆したという文理書院 発行の「技術科教育論」は,指導書のてこ入れといった感じが強く,前述の問題点には答えてくれていな い。そのP.163には,電動機に関して次のように述べてある。
「電動機に関する完壁な知識をこの年代の生徒に期待することは無理」であり,「装置や回路の内部は いちおう問題の外において,これを暗箱(black bOX)として取り扱う学習が,初期の電気技術の学 習指導に澄いては重要なことがらである」とし,電動機の出口,入口の関係に着目させるような実践的な 指導過程が考えられるであろうという。
この「暗箱」という発想が,指導書や教科書の中身を薄くし退化させてしまっているといってもよいで あろう。電動機の出口,入口の関係を指導すれば,その中身について知りたくなるのが自然であろうし,
電動機の原理や構造を知ることによって,他の電動機への発展や応用も可能になるであろう。もし,単相 誘導電動機に焦点をしぼるにしても,アラゴの円板による電磁誘導の原理は指導する必要があるし,その 磁石を動かす代りに,2組のコイルを電動機に巻き込み,そこへ2つの交流を流すのである,というよう な説明は,どうしても必要になってくるであろう。このような「暗箱」の発想を持込む限り,家庭用電気 機器のしくみ,取り扱いは指導するが,電動機については指導しなくてもよいのだ,という考え方になっ
てしまっても不思議ではないように思う。
②学文社刊「技術科教育法」P.192には,直流電動機を電圧と回転数の定量的実験によって学習させ る提案がのっている。すなわち,エネルギー変換という視点に立ちながら,さらにエネルギーを目的に応
じてコントロールすることの把握が,理論的にも実験的にも容易であるという。ただ,磁石形直流電動機 の例では,最も一般的な界磁束の変化による回転数の変化は実験できないことになる。しかし,技術科教 材の選定には,生徒たちの身近かな環境からあまり遊離してしまわない内容のものが望ましいので,直流 電動機の指導を中心にしながらも,誘導電動機や単相整流子電動機にも入り込む必要があると思うし,実 験装置を工夫し測定器の準備をすれば,交流電動機でも定量的扱いが可能になると思う。
③産業教育連盟編集の自主テキスト「電気の学習(1)」によれば,電動機の誕生,三相誘導電動機,単相 誘導電動機,直流電動機,電動機の種類と利用という内容で,三相交流と三相誘導電動機を中心に述べら れている。もし,技術史的観点から扱うのなら,誘導電動機よりも直流電動機を先に扱ってみてはどうか と思うし,その後に交直両用の電動機として単相整流子電動機を扱い,単相誘導電動機,三相誘導電動機 という順序で扱うのも一方策であろう。直流でも交流でも電気は2本線で流れるという感じの方が,生徒 の生活経験からは理解されやすいからである。いずれにしても限られた時間の中で.どの程度まで原理,
構造,取り扱いを指導するのかが問題になろう。ちなみに工業高校電気科では,三相誘導電動機について
は約25単位時間の講義のほかに実験も2,3やるし,三相交流理論も学習するのであるが,必ずしも三
相誘導電動機が理解されたとは言えない状態であるという。
§4 ま と め
電動機教材がどのように扱われているのかの現状分析から始まり,電動機教材指導上の問題点も洗いだ し,それについての具体的な提案もいろいろと検討してきた。その結果,指導書や教科書を中心にした電 動機教材の指導が普通である現状では,設備不足・時間不足などの理由ともからんで・各方面からの貴重
な提案は,抵抗があり過ぎて受入れ難い状況であることも知った。そのため・電動機教材としては・単相 誘導電動機の指導を中心に据え,その回路学習を通しながら原理,構造・保守・点検に発展させ・電気機 器としての扱いはかんたんにすませ,電気機器の選択は省略してしまい・そこで浮いた時間を他の電動機 の学習にあて,三相誘導電動機,単相整流子電動機・直流電動機を扱う形にしてみてはどうかと思う・そ の学習内容の概略を次に示してまとめとしたい。
① 単相誘導電動機の回路測定と構造の理解
o電動機には,古物を容易に集めることのできる洗たく機用のコンデンサモータを使用し,回路計に よるグループ学習を主とする。
O電動機から出ている3本又は4本のリード線の導通試験をし・抵抗値も記録する。その結果から2 組の巻線が巻かれている状態を知る。
oコンデンサの導通試験は別途に行い,回路計の針の動きを注意する。
O電源電圧をどのように加えるか,リード線とコンデソサの組合せを考える。その組含せによっては 反転も可能であることを運転しながら確かめる。
②原理,特性の理解 oアラゴの円板の実験
カットモータ又は分解した電動機と比較して,コンデンサと2組の巻線が・磁石を動かすことに相
当し,
転子が円板に相当することを確かめさせる。ここで原理に深入り可能ならば,旧教科書や 適当な教具を使って回転磁界の説明をする。
Q電動機の負荷試験
洗たく機用のベルトとプーリーを利用して,ばねばかりで電動機に負荷をかけてゆく。入力側へは 電圧計,電流計を入れ変化をみる。回転計で回転数もはかる。もし,電力計があれば,力率や効率 の計算も可能となる。
③他の電動機
できるだけ実物を用意し,運転や実験を通しながら,原理,構造などの特徴や用途を考えさせる。
o他の種類の単相誘導電動機
・コンデンサ始動形
・分相始動形
・反発始動形
・くま取リコイル形
〇三相誘導電動機 o直流電動機 o単相整流子電動機
以上,いろいろな角度から電動機教材について考察を加え,単相誘導電動機の指導を中心にしたおおよ その計画案も立ててみた。この計画の具体的内容についての実践研究は,土浦一中の五頭昇先生と共同で
一90一
9
sうことになっている。またこの研究のために,アンケート調査や事前研究にいろいろと協力いただいた 五頭先生や県下の中学校の先生方に厚くお礼を申し上げます。
参考引用文献