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一女子大学生について一

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Academic year: 2021

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身体組成チャート法による非過体重性肥満の判定 一女子大学生について一

服 部 恒 明*1・田 中 茂 穂*1・松 坂   晃*1・巽   申 直*1 戸 部 秀 之*2・佐 竹   隆*3

(1996年10月14日受理)

Determination of Masked Obesity by Body Composition Chart Method:

AStudy on Female Students

Komel HATroRI, Shigeho TANAKA, Akira MATsuzAKA, Nobunao TATsuMI,

Hideyuki ToBE and Takashi SATAKE

(Received October 14,1996)

はじめに

肥満は様々な成人病の危険因子であると同時に,日常の活動性を阻害する要因でもある(Bjorntorp,

1988)。現代社会の中では肥満を誘発しやすい条件が多くみられ,欧米社会と同様我が国でも肥満の 予防は個人の健康の維持のために留意さるべきことであると同時に,より健康的な社会の実現の要 件としても重要である。

肥満とは体脂肪が過剰に蓄積された状態であるので,その判定には,体内にある脂肪の量を知る 必要がある。体脂肪量がわかれば体重に対する体脂肪量の割合(体脂肪率)が求められる。この体 脂肪率を基準にして,肥満の程度が判定される。

一方,身長別体重表や身長と体重からもとめた指数によって肥満を判定する方法は,集団的評価 においては迅速性や簡便性の点で有効であり,ひろく用いられている(塚本,1995)。とくに最近で は,体格(身長)の影響が及ばない条件で体重を比較できる指数として,Body Mass Index(BMI;体 重xlOOOO/身長2)が用いられ(服部ら,1977;Revickiら,1986),日本肥満学会での肥満の判定基準 としても採用されている(池田,1993)。しかし,BMIは身体組成を直接表すものではなく,非肥満、

性の過体重と肥満とが区別されないことに注意する必要がある(BehnkeとWilmore,1974;Gamら,

*1茨城大学教育学部保健体育講座(〒310 水戸市文京2−1−1;Department of Health and Physical

Education, Faculty of Education, Ibaraki University, Mito,310 Japan).

*2大阪教育大学保健学教室(〒582 大阪府柏原市旭ヶ丘4−698−1;Department of Health Science,

Faculty of Education, Osaka Kyoiku University, Kashiwa職 582 Japan).

*3日本大学松戸歯学部解剖学教室(〒271松戸市栄町西2−870−1;Department of Anatomy, Nihon

University School of Dentistry at Matsudo, Sakaecho−Nishi, Matsudo,271 Japan).

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1986;中山,1995)。

さらに,体脂肪率を基準とする肥満の判定であっても,体脂肪率が同じものの中にみられる身体 組成の変異や多様性の実態は表示されない。例えば,同じ体脂肪率30%の肥満者であっても,脂肪 を除いた(除脂肪)量の発達が悪いため,外見上スリムに見えるタイプから,力士のように鍛え上 げ発達した除脂肪量に加えて多くの脂肪を合わせ身につけているもの(Hattori,1995)まで,様々で ある。身体組成のこのような違いを明らかにしながら,肥満の程度を判定することが出来れば,健 康管理やヘルスプロモーション施策に役立つ基礎資料となり,またトレーニングの効果等を経時的 に評価するうえでも有効であろう。

本研究では著者らが近年提唱している身体組成評価法である「身体組成チャート法」(Hattori,1991)

を適用して,健常な女子大学生の肥満の実態について検討を試みた。この方法ではチャート上にプ ロットされた各人のプロットから体構成,%fat及びBMIが同時に把握できるので,外見上から判断 するのが困難な非過体重性の肥満者を容易に特定することが出来る(服部,1995)。

研究対象と方法

研究対象は本学および0女子大学に在籍する女子大学生70名である。被検者は,いずれも特定の運 動を習慣的に行っていない健康な一般学生である。測定は茨城大学教育学部保健体育講座生体測定 室において1994年一1996年に実施した。

体密度法による身体組成の評価:身体組成は,最も信頼性が高いとされる体密度法によって評価 された。体密度は水中体重法により体積を求めたのち算出した。肺残気量は酸素希釈法によって

(Wilmoreら,1980),水中体重測定に先立ち水中体重測定時の姿勢に近似する椅座位にて測定し,体 密度を算出するときに補正した。得られた体密度からSiri(1956)の式により体重に対する体脂肪量 の割合として表される体脂肪率(Pefcent body fat;%fat)が算出され,ついで体脂肪量(Fat mass;

FM),除脂肪量(Fat−free mass;FFM)が得られた。

体脂肪率による肥満の判定:肥満は体脂肪の過剰蓄積状態であるから,肥満の程度は体脂肪率に よって判定されるのが望ましい。体脂肪率による肥満の判定は,Huenemanら(1966), Behnkeと Wilmore(1974)は成人女子で30%を境界値とするのが妥当であるとし,長嶺(1977)は成人女子では 35%以上を中等度の肥満とする基準を採用している。McArdleら(1981)は,体脂肪の望ましい量を 女子では体重の25%以下であり,肥満は30%以上であるとしている。一方日本の厚生省でも女子は 20−25%を適切な体脂肪率の範囲としている。本研究では女子大生の肥満の境界値を成人の基準とし て一般的な体脂肪率30%に設定した。本研究の対象である学生は,運動器系の発達度や身体の充実 度も高い青年期に相当し,体脂肪率30%を肥満の境界値に設定した場合,非肥満者を肥満と判定す

る危険性は小さいと思われる。

BMIによる肥満(過体重)の判定:日本肥満学会は1989年度にBMIを用いた肥満の判定法を提 言している(池田,1993)。それによると,男女共通にBMI値が20未満ならやせ(低体重),20以上24 未満なら普通(普通体重),24以上26.4未満ならやや肥満(過体重),26.4以上なら肥満(肥満体重)

と判定される。本研究でもBMIによる肥満判定は日本肥満学会の方式に従った。

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結果と考察

表1.女子大学生の身体組成(n=70)

表1に対象者の体格,身体組成の基本統計値が示され

Mean   S. D.

ている。身長および体重はほぽ平均的な値を示し,BMI

Stature(cm)      158.8   5.90 は20.4で佐久間と力丸(1993)の報告(20.1)とほぽ一

@      Weight(kg)     51.6   6.12

致している。FMとFFMはそれぞれ1a7kg,3&8kgで%Fat−mass(kg)    127  a58

fatの平均は24.4%である。 FMとFFMを身長の平方で除 Fat free mass(kg)  38・8  4・00

した脂肪量指数(Fat mass index;FMI)と除脂肪量指数 %fat        24・4  5・00

       BMI      20.4   2.06(Fat−free mass index;FFMI)は5.0,15.4を示しており,先

FMI       5.0   1.39

の報告(Hattori,1991)で, FMIが4.8, FFMIが15.6であ       FFMI      l5.4   1、24

ったのに近似している。

BMIは体脂肪率と明瞭な相関関係があり,疫学的な観点から肥満の判定基準として用いることが 出来る(Billewicz et a1.1962)。 しかし,個々人の肥満度を判定しようとするときには,脂肪組織の 密度が除脂肪組織の密度よりも小さいという基本的矛盾のため,その有効性は限られたものになる

(Gamら,1986)。そこで, BMIの本来的な意味を捉えながら,体脂肪率と組み合わせ評価すること BODY COMPOSIT10N CHART

12

11

22     24    26    2i8

45       40      35

10

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9

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0 11

12    13    14    15    16    17     18    19    20    21

FAT−FREE MASS INDEX

図1.女子大学生の身体組成チャート

(4)

で,各人の身体組成(構成)をより鮮明に理解することが出来る。身体組成チャート(Body composition chart;BCC)法は, FMIとFFMIをグラフの両軸に設定し,各人の身体組成の状態を特定する方法と して提唱されている(服部,1991,1995)。図1は被検者のBCCである。プロットはFMI, FFMIの両 軸で散らばり,相関は認められない。プロットを観察すると,チャート内の%fatラインとの関係 から大部分のプロットが体脂肪率が15−35%にあると判断され,またBMIラインとの関係からBMIが 15−25の間にあることが判る。

この「チャート法」は肥満の判定法として利用できる。図2は肥満判定のためのBCC,すなわち,

%fatおよびBMIのそれぞれについて肥満を判定する境界値を示した「肥満判定チャート」に被検者 のデータをプロットしたものである。これにより,単独の基準のみによる判定では判らない正常体 重肥満などの肥満の特質について知ることが出来る。チャートから%fatによる肥満者は10例(14.3

%)認められるが,うちBMIが26.4−24のものが2例(2.9%),その他の8例(11.4%)はBMIは24未 満の値をとる。すなわち,女子大学生において肥満者の大部分は,外見上から肥満を特定すること が困難な非過体重者または正常体重者である。女子大学生の全体としての統計はさらに調査を累積 して結論づける必要があるが,先の報告(Hattori,1991)においても約10%の非過体重性肥満者が観 察され,現段階ではおよそ女子大学生の10%が非過体重性肥満であるといえよう。

BODY COMPOSITION CHART 12

11

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aODY MASS INDEX…      26.4

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FAT−FREE MASS lNDEX

図2.女子大学生の肥満判定のための身体組成チャート

(5)

この肥満者群について,さらに詳細に観察すると,2名の過体重性の肥満者はFMIが8以上で大きい が同時に活性組織としての除脂肪量の指標であるFFMIも平均より大きい。一方,非過体重性肥満者 では,FMIはおよそ6−7.5の範囲にあって,それぞれ比較的大きく,近似しているが, FFMIはおよ そ13.5−16.5と分散が大きく,被検者全体の平均値(15.4)より大きいもの(4例)から小さいもの

(4例)まで様々である。とりわけFFMIが小さい4例の肥満者は,除脂肪量が少なく日常の活動性が 乏しいことが予想される。図1から,肥満者には分類されないが体脂肪率は30%に近い肥満予備群で FF田が比較的小さいものも少なくない。すなわち筋など除脂肪量の発達の悪い肥満者やその予備群 は,女子大学生の中では比較的高い頻度でみられることになり,健康管理や健康指導の面から留意 する必要がある。このような正常体重者を含む非過体重性肥満者は「隠れ肥満」「軽量肥満」などと 呼ばれ,若年成人女子のみならず成人男性においてもみられることが報告されている(田中ら,1995)。

また,「チャート法」の適用により,肥満と判定されるが%fatの値が低い「過体重性非肥満者」も 容易に特定される。今回の被検者群では該当者は一例もなく,一般の女子学生では,過体重性の非 肥満はあまり発現しないと考えられる。しかし,運動者群を含め考えるときは注意を要する。著者 らは運動部に属する新入女子部員が1年後に体重の増加傾向を知り,それが期待されるトレーニング 効果であるにもかかわらず,身体が肥満化していると誤り,ダイエットやトレーニングメニューの 変更を試みた例を観察している。このような場合,「チャート法」による正確な身体組成の判定が極 めて重要な意味をもつ。 「チャート法」により肥満の程度を含む体構成を判定するうえでの問題点 は,BMIによる分類方法と異なって,まず個々人の身体組成の評価が必要なことである。だが最近 ではインピーダンス法など簡便で非侵襲的な身体組成の測定方法が開発され,また皮下脂肪厚から 身体組成を推定する方法も依然,有効な間接法として応用性が高い。福田(1976)は身長別皮脂厚 より学童の肥満をスクリーニングする方法を提示し,Komiyaら(1994)はBMIとWHR(ウエスト ヒップ比)の組み合わせによる肥満のスクリーニングを提唱しているが,体格を考慮にいれて肥満 の判定を試みる点では本研究の考え方と共通性がある。またVan Itallie(1985)や田原(1995)は, BMI と皮下脂肪厚2部位和の組み合わせから,本研究と同様に過体重性肥満と非過体重性肥満を区別する クロス分類法を提示している。このように従来から着目されているBMIを単独に利用するとき発生 する矛盾に対しては脂肪量指数,除脂肪量指数を用いた「チャート法」の導入が有効である。実験 室での測定に限らず,フィールドで身体組成測定が可能な現今では,より精度の高い身体組成の評 価法として身体組成チャート法が適用できるものと思われる。

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参照

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