• 検索結果がありません。

一対人行動イメージによる検討一 * ** ***

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "一対人行動イメージによる検討一 * ** ***"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)39号(1990)75−93       75

日常生活場面に表出する人間の攻撃性(皿)

一対人行動イメージによる検討一

     *      **      ***

̲永 典郎 ・吉田 昭久 ・小熊  均

(1989年9月9日受理)

Man of Aggression Occurring in an Ordinary Life(皿):

with Special Reference to Interpersonal Behavior Image

      ***       **       * morio KAMINAGA  Teruhisa YosHIDA  and Hitoshi OGuMA       ,

(Received September 9,1989)

は じ め に

前論文を通して,人間の攻撃性(aggression)を攻撃(aggressiveness)・攻撃行動(aggressive behaviors)と区別し,生得的動因を基盤として, 後の社会的学習を反映した内的動因すなわち心        1)

Iエネルギーと捉え,日常生活における行動水準に表出する攻撃性を因子分析的に検討し ,そこ      [ で捉えた構造に関して現象学的分析の視座から防衛的視点を導入して,その質的特徴の検討を試み

た2)。

E.フロムは,人間の攻撃を議論する場合,防衛的,反射的な攻撃(「良性の攻撃」)と,破壊 し絶対的支配を渇望する人間特有の傾向である「破壊性」と「残酷性」 (「悪性の攻撃」)とを区 別すべきこと主張し3),また,K.ローレンツの表した『攻撃』4)以後受け入れられるようになっ た,生物学的な適応としての生まれつきの攻撃の観点からの,人間の(悪性の)攻撃性に関する自 然発生的な説明を退け,「人間は動物よりずっと破壊的で,残忍であることを前提」とし, 「人間       5)

フ攻撃性が,動物のそれより大きいかぎり,それは人間存在の特殊な条件に基づいている」とする。

そして,この動物に比べて強大な人間の「過剰攻撃」は,人間の性格に基づいており,動物の持つ 生得的なものと性格に基づくものとを区別して,「性格についてもっと理解し,人間の表面的なふ るまいにたやすく影響をうけないように」ならなければならないと指摘している6)。

攻撃(aggressiveness)という言葉は一般的に使用する場合「怒り・敵意・憎悪・不満・怨恨な どにもとついて,他者・自己・その他の対象に重大な損傷・恐怖・苦痛を与える行動∫)のような,

現実的な攻撃行動(aggressive behaviors)を意味するものとして捉えられている。しかし, R.メ イも指摘するように,攻撃の語根であるaggrediは,「前進すること(to go forward)」や「接近す

*茨城大学教育学部附属小学校.

**茨城大学教育学部教育臨床心理学研究室.

榊*都留文科大学文学部.

(2)

ること(to approach)」を意味している。そしてその原初的な意味は,「相談ないし助言のために だれかに接近すること to approach someone for counsel or advice 」であり,第二にそれは,

「逆らって動くこと to move against 」,あるいは「傷つけるという意図をもって動くこと to       8)

高盾魔?@with intent to hurt 」を意味すると位置づけている 。すなわち, 攻撃の第二の意味が一 般的に言われる攻撃性であるが,その本来的意味である「対象への接近性」という視点が,人間の

「生」のエネルギーとしての攻撃性について検討する際の重要な視座となる。

人間の攻撃性についての定義は,その研究者の視点によって様々であるが9),本研究においては,

「他人を傷つけ,危害を加え,強制し,辱めるといった行動を,現実的な意志や幻想的な様式で実        10)

サする傾向あるいは諸傾向の総体をいう」 とする精神分析的視座に依る。

人間の攻撃性と動物の攻撃性とは同質のものか異質のものかといった議論に対して,本研究では,

攻撃性そのものの基盤は等しいが,動物の攻撃性が生得的動因と生得的反応で成り立っているのに 対し,人間の攻撃性は,高次の社会的学習によって,生得的動因が二次的動因にまで発展・展開す る動機であるとする視座に立つ。しかも,我々が直面する攻撃行動の問題は,種としての存在に関 わるものよりも,むしろより個体的な問題であり,攻撃性を表出する人間行動を日常的な生活水準 における種々の側面を捉えることを通して,解明する必要があるとする立場に立つ。

       ll)

サこで,前論文に引き続き本論文では,ラプランシュらの攻撃性の定義にもあるように ,攻撃 性の側面として,現実的に攻撃する側面すなわち行為(act)による側面と,幻想(image)におい て攻撃する側面のうち,特に後者について,心理ダイナミズムとしての攻撃性の構造に関して検討

,     する。その際,日常生活における人との関わりの中での対人行動の視点から捉えたイメージに基き,

そのイメージに表出される内的動因すなわち心的エネルギーとしての攻撃性に着目した。

なお,本論文の構成の概要を示すと,以下の通りである。

1 日常生活場面に表出する人間の攻撃性の特徴 1−1 防衛的視点から捉えた攻撃性の特徴

1−2 対人行動イメージにおける自我機能としての攻撃性 H 大学生を対象とした質問紙調査

H−1 質問項目の選定と調査票の作成 皿一2 調査方法及び調査協力者 皿 対人行動イメージの因子分析的検討

皿一1 因子分析の結果 皿一2 因子の解釈

】V 構造的に捉えた対人行動イメージの検討

W−1 対人行動イメージと対人認知構造との関連 IV−2 対人行動イメージで捉えられた攻撃性の構造

1 日常生活場面に表出する人間の攻撃性の特徴

1−1 防衛的視点から捉えた攻撃性の特徴

(3)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(m)      77

攻撃性の本来の意味から理解されるように,攻撃性は破壊的側面のみを示すものではない。

E.フロムは,個体から種までの幅広い立場において,攻撃性の表出である攻撃行動は,個体に とって生産的であるか非生産的であるかのいずれかであると述べている12)。また,人間の攻撃性の 側面についてA.ストーは,「必要なものであると同時に望ましくないものでもある。」とし,そ の二面性について言及する玉3)。この二面性とは,個体の存在を主張する攻撃1生が同時に種の保存の 水準においては,他の個体に害をなす行動を表出するということであり,個体の問題を種の側の問 題として捉えている。同様にR.メイも攻撃性の二面性を強調して,「攻撃は自分自身及び他人を 友好的に確認するなり敵対する目的で接触すること」とし,攻撃の反対物を「平和を愛することや 配慮しない友情ではなくて,孤立であり,全然接触を持たない状態」としている。さらに,攻撃性 を,一般に攻撃性についていうときのそれである破壊的攻撃性と,その対置としての建設的攻撃性 とに分け,建設的攻撃性について,「傷つけるという意図ではなく,他人の意識の中へ入ってゆく という意図をもって他人に直面することであり,ある人間の誠実さ(integrity>を脅かすような力を 避けることであり,敵対的な環境の中で,当人自身の自我や当人自身の思想を具体化すること」と

    14)

オている 。

吉田らは,我々・が直面する攻撃行動の問題は,種としての存在に関わるものよりも,より個体的 な問題であり,攻撃性を表出する行動を日常的な生活水準において捉らえ,その攻撃性の側面の個 体から社会的水準までの問題を建設的・破壊的の二方向に位置づけ,現代青少年の心理ダイナミズ ムの特徴を分析した15)。その結果,自己を律するという水準の建設的攻撃性は自己を律しより高次 なものへと高めようとするのではなく,過ちを避け自己の安定を保つといった消極的な志向性の中 にあることを明らかにしている。一方,自己への破壊的攻撃性は,社会生活の中で,他者との接触 を避け,孤立化し,焦燥感にさいなまれながら自暴自棄やアクティングアウトといった方向におい て,安定性を追求する心理ダイナミズムを見いだしている。また,他者への攻撃という人間関係性 において,主観的な自己概念が,その関係性の表出を規定していることを見いだし,主観的感情と

しての「優劣感情」と攻撃性とは関連性の高いことを明らかにしている16}。

前論文では,現代人の攻撃性を検討するに当たり,防衛的視座を分析の視点として位置づけたが,

この視点から検討した心理構造の特徴は,個体の欲動を抑圧し,他者へ向け変えることで充足しよ うとしているにも関わらず,このような自己の内面を認めず,より強い防衛的な働きを伴っている というものであった。また,欲動の直接的な充足が,人間の攻撃性の一側面としての習慣,儀式と いった限られた行動でしか表出し得なくなっていることを見いだしている。さらに,人間の攻撃性 の質的特徴を明らかにするために,自我の防衛的働きの上で,質的に対置する二つの様相,すなわ ち,防衛的働きが個体の「生」に生産的で「真」の対象に向かう「直接充足」の様相と,逆に非生 産的で「偽」の対象にむかう「抑圧一投映」の様相を中心に検討を進めている。その結果,多くの 場合positiveな攻撃性は,社会・文化的影響を強く受ける行動の水準でしか表出されないこと,対 人関係において表出される人間の攻撃性は,個体の「生」に非生産的な「抑圧一投映」という防衛 的働きによってしか表出されないことを示唆した。このことは,我々が日常生活場面において一般 に人と関わる場合,そこで抱く様々な「相」の情動の中で自己の欲動を抑圧し,互いにその欲動を 投影し合いながら人との関わりをもつということを予想させるものであった。つまりこの内的世界 を「開く(open)」人間的かかわりという分脈からすると,人間のかかわりの心理的距離を増幅さ

(4)

せ,個々が孤立してしまうことに連なるということである。また,人とのかかわりの中で,posi一 tiveな攻撃性を表出できないということは,一個の人間として, 「生」を生産的に発展させる心的 エネルギーを持つ「存在」としての自己を見失い,意識的,無意識的であるとを問わず,社会・文 化の影響を強く受けた「習慣」や「儀式化」に追従する方向の行動でしか,心的エネルギーを表出       17)

ナきないことを意味していると指摘している 。

神永は,このような視座に立ち,現代社会における青年の日常生活世界の中における認識の特徴        18)「自己を疎外する行為」という視点から検討した 。ここでいう「自己を疎外する行為」とは,

自らが自らの欲求に従って主体的に行動した行為でありながら,人間存在においてその本質に照ら して考えてみるとき,すなわち,自己の「生」を生産的な方向へと発展させる心的エネルギーの表 出という視点から捉えたときに,人間的水準で本来個人が主体的・創造的に行為するものとは異な り,結果として自己の主体性を否定してしまっている行為を指す。すなわち,一個の人間としての 自己を見失い,意識的,無意識的であるとを問わず,社会文化の影響を強く受けたものに追従する 方向の行動でしか自己発展させることができないでいる人間の行為性である。これは,E。フロム やR.メイの指摘する現代社会の特徴であり,神永はこの中で,「自分らしさ」を模索しようと取 り組みながら,自ら思考し創造しようとするのではなく,「マス情報の話題・流行への敏感な対応」

を主とし,血液型や星座,占いといった「生き方規定情報」などを受け入れて行為する現代青年の 特徴的な自己疎外の構造を見出している。

1−2 対人行動イメージにおける自我機能としての攻撃性

前述のように,現代人の多くは,個の「生」を生産的な方向へと発展させ得ず,個体としての「存 在様式」を主張しない傾向を示し,個体の主体性を喪失していることを推量させる。

人間が人間として主体的に存在するためには,かなりの不安と恐怖を伴い,一時的な孤立へと突 き放される19}2°)。この人間の不安や孤独を回避する方略として,人間は自己の統一性を放棄し,「個 人が自分自身であることをやめ」,「文化的な鋳型によって与えられるパーソナリティを,完全に 受け入れ」てしまう。このような方略は,人間存在にとって根本的な解決の方略ではあり得ず,結 果として自己の「存在」に対する内的な不安は増大することになる。

我々の日常生活の行動は,意識されない内的欲求と環境との間の障害を,拮抗する自我の働きに よって処理しているが,この自我のダイナミックな働きを自我機能(ego functions)の中核として位 置づける必要がある。

A.ミッチャーリヒは,攻撃性を人間の本質の一部であるとし,それは緩和することだけが可能 であるとする。彼は,攻撃行動を一次的欲求の水準と反応の水準とに分けて考えるが,反応の水準 での攻撃は,合図された危機に対する自我の防衛反応であると述べている2D。

すなわち,自我の機能が十全に働かない弱い自我,統制力のない自我であるときには,防衛反応 としての「良性の攻撃」すらもうまく発現されてこないことになる。このように十分に発現されな い,抑圧された攻撃性は,屈折した敵意を伴う攻撃性(aggression with hostility)へとつながって

いく。

福島は,精神分析学の治療目標から攻撃性を考察しているが22),彼は,S.フロイトの「エスの あるところに自我あらしめよ」という言葉は,「生」にあてはまるだけでなく,「攻撃性」につい

(5)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(皿)      79

てもあてはまるだろうと指摘する。福島は,A.ミッチャーリヒやK.メニンガーの批判的超自我 や自我理想を取り入れて,無意識的自我のあるところに,批判的超自我や自我理想を置くべきであ ると提言する。そして,自我機能としての攻撃性を重視する立場に立つなら,攻撃性を成熟した,

適応的な形態で機能させる道を探求すべきであろうと述べている。

このような視座に立つとき,自我が,その機能を十全に発揮できる強い自我,統制力のある自我 であれば,攻撃性は,敵意を伴わない攻撃性(aggression without hostility>として発現されるこ とになるであろうと仮説される。

そこで本研究では,攻撃性の側面として,現実的に攻撃する側面すなわち行為(act)による側面 と,幻想(image)において攻撃する側面のうち,後者のイメージに反映される自我機能としての攻 撃性の構造を捉えるために,日常生活における人との関わりの中での対人行動という視点から,そ の中に表出される内的動因すなわち心的エネルギーとしての攻撃性の検討を試みる。   

       H 大学生を対象とした質問紙調査

A

H−1 質問項目の選定と調査票の作成

本研究で用いた調査項目は,斎藤23)の対人行動における人間関係性において表出される攻撃性を 捉えるために作成された調査項目と同様のものを用いている。しかし,言葉のイメージを変えるこ とのないよう配慮し・漢字をひらがなに改めるなどの若干の修正を行っている。各々の項目の選定 は,他者とかかわる場合の人間関係性の中で生起する態度・かかわり方・関係の質・関係の中での 感情を反映する対人行動におけるイメージを指標に,Osgood, C. E. et al.によって創始されたS

D法24),長島他の「Self−Differentia1」 15}吉田・長島の「Body−Image」26)の,項目選定の過程を参

考にしている。本研究においては対人行動を捉える上で現象学的立場に立ち,個人が他者にかかわ る場合の内的経験を現象的フィールドにおいて客観的に捉えるための折衷的方法として,SD法を 用いることとした。

対人行動イメージの項目に用いる修飾語の抽出にあたっては,(1)国立国語研究所 『分類語彙 表』27),長島他の「Self−Differential」 に関する研究28)から,他者とかかわる場合の人間関係性 の中で生起する対人行動における態度・かかわり方・関係の質・関係の中での感情を反映すると思 われるものという視点で抽出した。その結果,形容詞・形容動詞など728語の修飾語が抽出された。

このようにして抽出した修飾語について,(2>他者とかかわる場合の対人行動イメージを表現する のに適切か否かについて,茨城大学教育学部教育心理学科の教官4名及び教育心理学専攻の大学4 年次生7名が7段階評定を行った。その結果,対人行動イメージを表現するのに適切であるとする 評定得点の高い項目,上位122項目が残された。次に,(3) これらの修飾語について反意語対の原 案を作成した。各修飾語項目に対する反意語対の作成の一般原則は,①前述の(2)における適切さの 得点の高い語同士で対をつくる ②反意語対は,あらゆる意味方向を考慮に入れてつくり,一つの 修飾語に対していくつもの反意語対を用意する ③用語として適切なものを検討し採用する の3点 である。この原則に従って(2)で残された122項目の修飾語のうち,106項目の修飾語について反意語 対の原案を作成することができた。(4)(3)で用意された修飾語の反意語対の原案に関して,対人行

(6)

動イメージを表現し,しかも各反意語が相互に修飾語項目の反対の意味方向をもつものとして,どの 程度適切かを評定した。評定は,(2)の評定と同様のメンバーによって7段階で行った。この結果に 基づき,対人行動イメージを記述するのに適切な項目として,最終的に70項目の修飾語対を選定し,

ランダムに配列して調査票を作成した。調査票は,Appendix 1−i〜1−iiiに示すように,「図形 認知とパーソナリティとの関連性に関する調査」と題するものであるが,調査票の構成は,[1]

として,本報告では触れていないパーソナリティ検討概念としてのField Dependence次元を測定す る集団式EFT検査用紙の「図形認知の方略に関する調査票」, [II]として本報告の調査である

「対人行動イメージ調査票」,「調査協力へのお願い」の3つの部分からなっている。

H−2 調査方法及び調査協力者

調査は,講義時間をさいていただいて,もしくは授業空き時間に講義室等に調査協力者に集合し てもらい,この調査のために用意した「調査実施の手引き」に従って実施した。手順は,まず,〔1〕

の検査に引き続いて, [R]を約10分間で行った。 [1]・[H]の両調査全体の所用時間は約25 分である。回答に先立って,回答方法を統一するため,Instructiortapeを用い, Appendix l−iに 示す説明文を読み聴かせた後,合図とともに各自のペースで回答させた。

各項目への回答に際しては,①一般的に人とかかわる場合,心理的にはどうであるかを思いかえ し,もっともよく当てはまる目盛りのところを選ぶこと,②日常使われている意味や使用法からで はなく,実際にいろいろな人とかかわる場合を想定し,言葉のもつ印象(イメージ)からチェック することの2点を指示した。そして「とても○○な」から,その反対の修飾語の「とても××な」

までの7段階のいずれかを自己評定させた。

本調査は, 〔1〕の検査をもとに,一部 の調査協力者に対して第2次調査を行う都 表1 調査協力者数      合から,調査協力の依頼できる者には記名

を求めて行っている。調査協力者として2 調 査校   男性  女性  計    年次生以上の大学生男女596名の協力を得 茨 城 大 学       たが,そのうち581名(男301名,女280名)

      が有効なデータであった。調査は,①自己(教 育)   117  199  316

のイメージを確立していると考えられる20

(人 文)   56  11  67   歳を迎えた大学2年次生以上を対象とし,

(理学)   77  30  107   ②調査結果が特定の大学,学部,地域に偏

       ることを避けるため複数の大学・学部で行茨城キリスト教大学     5    9   14

った。調査協力者は,茨城,東京の国・私 立 教 大 学   10   20   30   立5大学8学部にわたっている。その内訳 法 政 大 学   31   11   42    を表1に示す。なお調査の実施は,1982年

       11月中旬である。上 智 大 学    5   0   5

計     301  280  581

(7)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(㎜)      81

田 対人行動イメージの因子分析的検討

1皿一1 因子分析の結果

我々の日常生活場面において一般に他者とかかわる場合に抱く対人行動における様々な「相」の 情動を,攻撃性という視座からの内的動因とし,それをイメージに反映される意味空間の中で捉え るために因子分析を行った。

因子分析にあたって,各個人の回答を,項目ごとに修飾語対の左から1〜7点に採点し,東京大 学大型計算機センター「HITACM−280H」を使用してSPSSにより処理した。分析に際し,

相関係数をPearsonの相関係数を用い,因子抽出法は主因子法によって因子軸回転前の因子行列を 求めた。ここで因子の解釈を明確に行うため,全体の60%以上を説明し,しかも固有値1.00000以上 の10因子を最大因子抽出数とし,Varimax法を用いて因子軸の回転を行った。最終的に求められた因 子負荷量行列をAppendix 2−i, i iに示す。

皿一2 因子の解釈

各因子の解釈にあたっては,各因子に帰属させる項目の選定基準として,因子負荷量が,1.300001 以上のものという条件を便宜的に定めて解釈を進めた。この結果,調査項目70項目中「(11)壊す一 造る」を除く69項目が解釈可能な因子項目として残された。因子解釈のための基準は,因子的に 純粋な抽出項目があり,抽出項目数が3項目以上の因子とし,この基準を満たす因子について,因 子の命名を行った。

それぞれの因子に含まれる因子負荷量がi.300001以上の項目番号を示したものが,表2である。

各項目に含まれる質問項目を因子負荷量順に整理し,表3に示した。

表2 対人行動イメージに表出する攻撃性に関する因子名及び各因子に含まれる項目番号

因 子   因  子  名        項    目    番    号

第1因子「開示一閉鎖性の因子」16.19.32.50.44.46.68.63.70,33.17.45.58.54.59.69.51.25,

31.60.47. 1.20. 3.38.39.36.24.28.23.64.41.13.43.57.29.

66. 6.49.40. 5. 9.65.21.42.10.56.

第H因子「信頼一不信性の因子」61.55.53.49.2.57.15.12.8.27.52.64.60.54.65.66.20.13.

14.30.41.70.47.45.56.58.17,63. 5. 1.22.

第皿因子「寛容一威圧性の因子」21.18.7.67.30.14.4.29.37.40.48.62.13.22.66.9.31.10.

41.39. 6.20.23.15. 3.45.

第IV因子「広量一狭量性の因子」28.38.35.25.39.69.

第V因子「表出一隠蔽性の因子」42.43.27.26.44.

第W因子「爽快一不快性の因子」34.59.70.

第W因子       52.66.64.

第㎎因子       56.60.

第IX因子      8.27.

第X因子      50.

(8)

この表から,各項目の内容に留意して,各因

表3−i 対人行動イメージに表出する攻撃性に 子を次のように解釈した。      関する各因子に含まれる項目と因子負荷量

第1因子には,全項目70項目中47項目が含

まれている。この因子では,因子負荷量が    肝番号   質 問 項 目   肝負荷量 備考

(+)の方向で「(16)気安い一気詰まりな」,   16・気 安 い一一気詰りな o・741go

19.陰う つな 一一一 明 朗  な 一〇.71939

「(32)うちとけた一よそよそしい」,「(44)開     32.うちとけた___よそよそしい o.71395

放的な潤鎖的な・・「(46>くつろいだ一堅苦  1鵬放気議=端幽宴欄IV

しい」, 「(68)とっつきやすい一とっつきに    46.くっろいだ一一一堅苦しい o.6go22

68.とっつきやすい 一一一 とっつきにくい  0.66110

くい」といった項目が,(一)の方向では「(19)    63.明 る い___暗  い o.654gon 陰うつな一明朗な」,「(50)陰気な一陽気な」,   70・快  い一一一不快 な o・61992n・w

33.閉  じ  た 一一一 開  い  た 一〇.60935

「(33)閉じた一開いた」という項目が因子的

に純粋で大きな値の負荷量(1.6・…1以上)  ll:謹まら惣=響霧8:;lll l,皿 をもっている。これらの項目は,人とのかか    58・近 づ く一一一遠ざかる 0・57404H

54.ご機嫌な 一一一 不機嫌な 0.5695g n

わりの中での親和的な関係を内容としている。  第5g.さわやかな__じめじめした 0.56866 W

そこでそうし襯和的な関係を「とれる一  :1:評蔀::ゴ灘1:謙lw

とれない」という,心理的な距離の隔たりを    25・おおらかな一一一卑屈 な 0.54834W

31.丸    い 一一一 四 角  い 0.54057 1匪

もった関係性を生み出す心理的ダイナミズム    60.親密 な___疎 遠 な 0.54020H

を捉えて, 「開示一閉鎖性の因子」と命名し   1      47.満 足 な 一一一 不 満 な 0.52437 H

た。      1.愉 快 な一一一不愉快な 0・52047H

第2因子には31囎が含まれる.この因子  鷺嚇に:笛迎す鋪罵1

では,因子負荷量(+)の方向で「(61)誠実    38・広  い一一一狭  い o・49282W

39.柔 軟 な 一一一 かたくなな 0.47246 1LIV

な一不誠実な」,「(53)信頼する一裏切る」,  因36.不 安 な___安心 な織46385

E(2)轍する一轍する・という項目1こ,  ;嶽∵乞::嚢∵宴撒W

(一)の方向では「(55)軽んずる一重んずる」,   23・凍  る一一一融 け る過・43756皿

「(12)疑う一信ずる」という項目が因子的に    64.澄 ん だ___濁 っ た o。424ggn

繍で比較的大きな値の鮪量をもっている 子欝 ユ::嘱 註二1:繕1:1

(1.500001以上)。これらの項目は,日常    43.現  す一一隠  す o.38638v

57.協力的な 一一一 排他的な 0.38154 H

の生活場面の中で,人とかかわる場合の人間    2g.拒否的な___受容的な 0.37828皿

関係における基本的信頼感を内容として・・る・ 鷲う髭::竣せ鑑1:llll琳皿

そこで信頼関係の次元を示す因子として,「信    4g.大切 な一一一疎 か な 0.34690皿       40.陰 険 な 一一一 温 和 な 一〇.34632 1皿 活齦s信性の因子」と命名した。

第3因子には26項目が含まれる。この因子     5・透 明 な一一一不透明な o・33342騒

9.恐    い 一一一 優  し い 一〇.32228 皿

では,因子負荷量(+)の方向で「(18)ゆる    65.真すぐな___歪 ん だ o.32057H

い一きつ・出・(7)穏やかな一激し・泊,  鷺,磁窟=翫撃欄1四

「(62)なだらかな一急な」のような項目が     10・通  す一一一遮  る o・30328田

56. 濃       し、 一一一  薄       レ、  (♪.38154  皿

(一〉の方向では「(67)頑固な一寛大な」,

「(4)強情な一素直な」,「(37)辛い一甘い」,

「(48)気短な一気長な」のような項目に因子

(9)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(m)      83

的に純粋な負荷量をもっている(1・450001   表3−ii対人行動イメージに表出する攻撃性に 以上)。また,他に「(21)険しい一緩やかな」,     関する各因子に含まれる項目と因子負荷量

「(30)答める一許す」の2項目も大きな負荷

因子番号     質  問  項  目     因子負荷量  備考

量をもっているq.500001以上)。これら    61.誠実 な__一不誠実な 似6550。

の項目は,対人行動における他者への寛容1生    55 軽んずる一一一重んずる過・62829

53.信頼する 一一一 裏 切 る 0.61115

の次元を内容としている。そこでこの因子を    4g.大切 な一一疎 か な 0.5g2641

嚇一威圧性の因孔と命名し鵡本因子  億勢誌:=灘融1撫1

には,長島他のSelf−DifferentialのForm A     15・尊重する一一一軽視する o・52717皿

(大学生)の肝分析結果の第2肝・情緒  呈栞正鹸:::釜齢耀ll

安定1生」10項目中,本調査において選定した   第27°真  の一『一偽 りのo°48650v 7項目の全てが含まれている。         52.情深 い一一一薄 情 なo・48505・

第4肝には6囎が含まれる.この肝  :繍嫉=叢謡1:羅}

は一義的で明確である粧因子負荷量が大き   皿54°ご機嫌な一一}不機嫌な 0 431221

65.真すぐな 一一一 歪 ん だ 0.42996 1

い項目(L50000[以上)は「(28)広量な一    66.温 情 な一一一冷 淡 な o.422131,皿

狭量な・淑3砿い一狭hの2つの尺度  鷺斥す1:二:翫拷欄1珪1 だけである・その他に「倒丁寧な一雑な」・ 因驚足に探瓢1:llll詩班

「(39)柔軟な一かたくなな」, 「(25)おおら

かな一卑屈な・淑69)しなやかかぎこち  ll:饗 三:::鄭か紹:魏1・皿

ない」といった項目が負荷量をもっている     58・近 づ く一一一遠ざかる 0・365181

(』3・…D.内容的鳳他者とのかか 子鍍好的に蝶戦誌搬1・m

わりの中で,器量が広く,ものこしのやわら    30°答 め る一一一許  す℃ 32734皿

17.つまらない 一一一 おもしろい 一〇。32455 1

かさを表したものとなっている。この因子は    63.明 る い一一一暗  い 0・317271

その代表する囎から,・広量一狭量性の因  矯髭二::篇灘瀦:1

子」と命名した。

22.謙 虚 な 一一一 傲 慢  な 0.30283 皿

第5因子には5項目が含まれる。この因子

は「(42)ありのままな一飾った・,・(43)現  欝≧1:=:讐∵3欄1

す一隠す」という項目に代表され(1.500001    7・穏やかな『一激 し い o・60266

67.頑 固 な 一一一 寛 大 な 一〇.53161 以上),他に「(26)率直な一皮肉な」, 「(27)   第餓答 め る一一一許  す織㎜n真の鵬りの・・「(44)開放的な一閉鎖的な・  驚好情讐=嘆攣婁欄亜

の項目が相対的に因子負荷量が高い(L300001    29・拒否的な一一}受容的な{)・480981

以上)。これらの項駄人とのかかわりの 皿ll:蔭険に謀和婁:1搬,

中で事柄に対して直接に向き合っている様子

48.気 短 な 一一一 気 長 な 一〇.46147

を内容としている。そこで,そうした本音の   因62.なだらかな一一一急  な 0・45810      、

部分を直接に表すか隠すかという次元と捉え  1濃虚に蝦泌欄ギ て・「表出一駈性の因もと命名した・  認慧触=譲瞥器}』

第6因子では因子負荷量が1.300001以上の    31.丸  い一一一四 角 い o.359391

項目は3囎である・この因子はπ34)さっ  糠 曹:::諄 含獺1,、

39.柔 軟 な 一一一 かたくなな 034900 1,W

(10)

ばりした一しつこい」という項目に代表され,   表3−iii対人行動イメージに表出する攻撃性に

      関する各因子に含まれる項目と因子負荷量「(59)さわやかな一じめじめした」,「(70)快

い一不快な」といった項目を含む。これらの   因子翻   質 問 項 目  因子負礪 備考 項目は,人とのかかわりの在り様の好感の程    6.おうような __一こせこせした 0.341651

度を示す次元と捉斌・鍬一鞭性の因 語簑野:::欝:灘1ド

子」と命名した。      因15.尊重する 一一軽視する  0.33029皿

3.柔らかい   一一一 固い     0.31991 1

第7因子には因子負荷量が1.30000i以上   子45.暖な   ___冷やかな  o.31005 L皿 の項目が3項目含まれているがそのいずれ    28.広量な  ___狭量な  o,551761

熨謔Q肝にも含まれている囎であり・第 撫骸 ::職  器1

2因子への負荷量の方が大きい項目なので,   因25.おおらかな 一__卑屈な  o.348361

第2因子に含めて解釈し,命名は行わなかっ 子ll:灘か。=畿欝1:llll計皿

た。また,第8因子から第10因子までは,因      第 42・ありのままな 一一一 飾った    0・62630 1

q的に純粋な負荷量をもつ項目がなく,しか   V43.現す   _一一隠す   0.583401

子鯖量が1.3・…1以上の囎が2つ 因ll髭な =齪  1::lll:H

以下の因子であったので,因子命名するまで   子44・開放的な 一}閉鎖的な  0・335151 には行かなかった。      第34.さっぱりした___ しっこい  0.41346

W 59。さわやかな  一一一 じめじめした  0.38062 1 因70.快い    一一一 不快な    0.32887 1,皿

q

W 構造的に捉えた対人行動イメージの検討

W−1 対人行動イメージと対人認知構造との関連

解釈された対人行動イメージの6つの因子と,従来の研究結果を対応させて考察して見よう。

OsgoodらのSD法での3因子との対応関係を図1に示す。 Osgoodらの3因子については,対人場

対人行動イメージの因子      OsgoodのSD法    中村の対人場面の分析視点

自己観       対人態度      対人関係 1「開示一閉鎖性」の因子r    評価性       安定性       親和性       結合性

H,瞭不馳の因撮、 (evaliation) 映不快) (受容桶) (友好一敵対)       、

、、    、

       、   、@、

M「寛容一威圧性」の因子㌣・\\一一一一一活動性       刺激性       共通性       目標性

W・瞳狭馳の因子\忍㎞㎞㎞) (促進一㈱  (同質顯) (協同一競争)

      、

@      、、        、   、 、

@      \  \・〜、      、

磨E拙一懸性・の因子 \編量性   責任性   支配性   分化性

       (potency)     (重視一軽視)   (優越一従属)   (上下一対等)Vl「爽快一不快性」の因子

図1 対人行動イメージの各因子とOsgoodのSD法,中村の対人場面の分析視点との対応

(11)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(皿)      85

面分析の視点として,対人場面における自己観・対人態度・対人関係の3つの対象について,中村 が9次元を対応させている29)。因子分析の結果を各因子に共通に含まれる項目に注目しながら因子 同士の対応関係を考察してみると,われわれの見いだした6因子はOsgoodらのように評価性・活動 性・力量性という3因子に分かれるのではなく,主要な第1〜第皿因子はそれぞれに評価性の因子

との結び付きが強い。また第1・第1因子は活動性の因子との対応を含み,力量性の因子との対応 関係ははっきりと示されてはいないが,第IV因子で力量性の因子との対応がみられる。このことか ら対人行動におけるイメージでは,まず,他人と関わる場合,相手に対する関係性の評価の視点が 重要となり,その関係性の評価視点が分化していることが伺える。

林は,対人認知の構造に関する研究の各次元の研究者同士の比較研究をするために,従来の6つ の対人認知構造の研究のいずれかで用いられた特性形容詞対79項目について因子分析的検討を行い,

各因子間の関連性の検討を行っている。そこでは各研究の対人認知構造をまとめて因子分析レ「社 会的望ましさ」,「親しみやすさ」,「力本性」の3因子を見いだしている3°)31)。林はこの3因子 について,対人場面での対象とする人物を変えて行ったいくつかの対人認知構造の研究から5つの 下位次元を見いだし,最終的にOsgoodらの研究と対応関係を検討している。本研究の因子分析は,

他者と関わる場合の関係性の対人認知構造を捉えていることにあるので,林の結果と本研究の6つ の因子との対応関係を示したのが図2である。Osgoodらの3次元との対応では,本研究と同じく,

評価性の因子について下位次元を見いだしている。そこでこの下位次元との対応を検討してみると,

林の研究では「社会的望ましさ」を第一の次元として見いだしているが,我々の6つの因子との対 応では,「親しみやすさ」の次元との対応が積極的に捉えられる。「社会的望ましさ」がこの種の 研究における調査上の反応傾向として,結果の中に含まれてきてしまうと考えられるので,林の研 究では,複数の調査を重ねた上で共通の次元を求めていることから,質問紙調査においては「社会 的望ましさ」が大きくなる傾向をこの場合も免れ得なかったものと考えることができる。この点を 考慮すれば,本研究で見いだされた6つの因子は,従来のパーソナリティ研究における対人認知構 造の研究の結果を支持するものとなっているといえる。

林の対人認知構造を構成する基本次元と 対人行動イメージの因子

OsgoodのSD法との関連

r一嘘曹 一曹曽一一曹9一一9曹一薗一一一一9一膚一一曽 一曹薗一一 幽 一一一一一一一一9曹曽「

ll欝離謂\3身盤曽讐く欝竺i 誕臨)               

       

@      

@         

@         ,       f噂一一一一一申一幽曽甲曽幽曽一一一一曹騨「略一一一冒一一騨}甲一響,,一騨一.曜藺一伽幽9塵一「

P灘1謂1 鞭三≦_蝶」 篇)      、      、       、       、       、

f難纏\憾1;;1ヨ1ヨll擁li 徽

図2 対人行動イメージの各因子と林による対人認知構造を構成する基本次元とOsgoodの SD法の関連との対応

(12)

】V−2 対人行動イメージに捉えられた攻撃性の構造 本研究では,対人行動イメージを

イメージに反映される自我機能と捉 えて,対人場面での自我機能として

       長島らの対人行動イメージの因子       Self−Differential

攻撃性を取り上げ,その構造を因子

1「開示一閉鎖性」の因子      1「向性」の因子

分析的に捉えている。

皿「信頼一不信性」の因子      皿「情緒安定性」の因子

従来の対人認知構造の研究で見い

皿「寛容一威圧性」の因子      m「強靭性」の因子

だされた次元は,それぞれその複雑

さなど,構造の分化の点で個人差の

】V「広量一狭量性」の因子      W「誠実性」の因子

あるものであるが,それはそのこと

V「表出一隠蔽性」の因子      V「過敏性」の因子

自体が,個人のパーソナリティを表

W「爽快一不快性」の因子      班「理知性」の因子

していることを示している。そこで,

長島らによって作成されたSelf−Dif一   図3対人行動イメージの各因子と長島らの

Self−Differentia1との対応

ferentia1によって捉えられた,本研 究の調査対象と同じ大学生を対象と

した自己のパーソナリティ分析次元と本研究の結果との対応を示したものが図3である 12)他者と 関わる場合の関係性としての評価の基準となっているものが,向性の次元であり,次に情緒安定性 と誠実性であることがわかる。この対応は,対人行動イメージにおいて捉えているものが,自己の パーソナリティ特性を対人行動という日常生活場面でのイメージに表出されてくるとし,日常生活 における人との関わりの中での対人行動の視点から,そこに表出される内的動因すなわち心的エネ ルギーとしての攻撃性を捉えて検討しようとした,本研究の検討視点を支持するものである。

本研究の調査項目のもとになった斎藤の研究では,今回と同様の質問項目を用いて213名の大学生 を対象に調査を行い,その結果の分析をElementary Linkage Analysisで行い,対人行動に表出され る攻撃性としての4類型を見いだしている33)。この類型との対応を図4に示す。

それぞれの類型の特徴は,Aの不快・疎遠性の類型では,「うっとうしい」,「不快な」という 項目を原型にして,また,Bの陰湿

・狭量性の類型では, 「陰気な」,

「陰うつな」という項目を,Cの拒        斎藤の対人行動イメージの因子       攻撃性の類型

否・不信の類型では,「排斥する」,

「嫌う」という項目を,そしてDの

1「開示一閉鎖性」の因子

@          ・こ・、

閉鎖・隠蔽性の類型では,「よそよ サしい」,「堅苦しい」という項目 それぞれ原型としている。それぞ

皿「信頼一不信性」の因子・こ〜∵…7A「不快・疎遠性」の類型      \ぐ、\

撃兼蛛F慧欝璽置:灘甚灘       、       、      、

れ各項目ごとに今回の6つの因子と       、

u「表出一隠蔽性」の因子一一………一△D「閉鎖・隠蔽性」の類型

の対応関係を検討していくと,①第

Vl「爽快一不快性」の因子

1因子は,類型A,B, C, Dに関

連しており,対人場面でだれもが〔♪   図4対人行動イメージ各因子と斎藤の の中に抱くであろう一般的な攻撃的      攻撃性の類型との対応

(13)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(皿)      87

な感情を反映したもの。②第H因子は,類型A,Cに関連し情緒的に向けられる攻撃性を,第皿因 子は類型A,B, Cに関連し,行動の質として表される攻撃性を,そして第V因子は類型Dとそれ       , サれに若干異なった攻撃性の側面を反映していることが示唆されよう。

このように,本研究では,攻撃性の側面として,現実的に攻撃する側面すなわち行為(act)によ る側面と,幻想(image)において攻撃する側面のうち,後者のイメージに表出される内的動因すな わち心的エネルギーとしての攻撃性の構造には6つの因子構造があることを示した。

お わ り に

これまでの研究においては,他者と関わる場合の対人認知の分析を通して,その構造分析を行い,

その個人差を個人のパーソナリティ特性において捉えるという視点はあった。しかし,われわれは,

日常生活場面で表出されるその行動は,パーソナリティを形成している根元としての自我の機能を 反映したものであり,またその本質として,人間存在の本質に関わる「攻撃性」の問題として捉え ることの必要性を提唱したい。このことは,人間性の喪失が唱えられる現代社会に生きる我々にと って,人間の存在性に立ち帰り,人間の成長を考えていく上で,自己が十全に自己発揮することを,

どのような視点に置き捉えるのかといったことについて,根本的視座を与えるものと考える。

最後に,本研究は神永の1982年度茨城大学教育学部卒業研究で得た資料のうち, 「対人行動イメ

一ジに表出される攻撃性」の調査結果を,因子分析的に検討したものである。小熊が担当した資料      ・ 解析を基に,吉田が草稿を検討している。

なお,本研究の一部は,日本社会心理学会第25回大会で発表し,また神永の1984年度千葉大学大 学院教育学研究科提出の修士論文に報告している。研究の実施にあたっては,教育心理学研究室で ゼミナールを構成した学生諸氏の多大な貢献のあったことを付記して,深甚の謝意を表したいと思

う。

1)山口浩,吉田昭久,小熊均「日常生活場面に表出する人間の攻撃性  心理ダイナミズムとしての攻撃性 の構造一」 『茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)』第37号,1988,pp.85−106.

2)山口浩,吉田昭久,小熊均「日常生活場面に表出する人間の攻撃性(n)一攻撃性の現象学的検討一」

『茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)』第38号,1989,pp.83−95.

3)E.フロム(作田啓一,佐野哲郎訳)『破壊一人間性の解剖一(上・下)』(紀伊國屋書店,1975),p.xiv.

4)K.ローレンツ(日高敏隆,久保和彦訳)『攻撃一悪の自然誌一(1・2)』(みすず書房,1970)を参照。

5)E.フロム(佐野哲郎,佐野五郎訳) 『人生と愛』(紀伊國屋書店,1986),p.71.

6)E.フロム「攻撃の発生源について」,前掲書5),pp.67−97を参照。

7)福島章「攻撃性」 (梅津八三,相良守次,宮城音弥,依田新監修) 『新版・心理学事典』(平凡社,1981),

pp.229−230.

8)R.メイ(小野泰博訳) 『わが内なる暴力』(誠信書房,1980),p.185.

(14)

9)攻撃性に関する研究は,比較行動学の立場ではK.ローレンツが,精神分析学的な立場ではS.フロイト の「死の本能」カ㍉社会的学習理論の立場ではJ.ダラードらの「フラストレーション=攻撃仮説」やA.

バンデューラーらの「モデリング理論」が,社会病理学的な立場ではE,フロムやR.メイ,A.ストー,

A.ミッチャーリヒなどが挙げられよう。

10)J.ラプランシュ,J.ポンタリス(村上仁監訳)『精神分析用語辞典』(みすず書房,1977), pp.123−128.

11)J.ラプランシュ,J.ポンタリス,前掲書10), pp.123−128.

12)E.フロム,前掲書3),を参照。

13)A.ストー(高橋哲郎訳)『人間の攻撃心』(晶文社,1973),p.48.

14)R.メイ,前掲書8),pp.185−186.       、

15)吉田昭久,吉田信仁,小熊均 「現代青少年の心理ダイナミズムの特徴〔H〕一行動に表出する攻撃性 を指標として一」 『茨城大学教育学部教育研究所紀要』第19号,1987,pp.167−180.

16)吉田昭久,吉田信仁,小熊均 「現代青少年の心理ダイナミズムの特徴〔田〕一攻撃性の基底因として の『優劣感情』  」 『茨城大学教育学部教育研究所紀要』第20号,1988,pp.13−23.

17)山口浩ほか,前掲論文2)を参照。

18)神永典郎,安香宏「現代青年の生活意識における自己疎外の構造(1)一『自己を疎外する行為』に関 する質問紙の検討一」 『千葉大学教育学部研究紀要』第34巻,1985,pp.1−17.

19)R.メイ(小野泰博訳)『失われし自我をもとめて』(誠信書房,1970),p.144.

20)E.フロム(日高六郎訳) 『自由からの逃走』(東京創元社,1965),p.103.

21)A。&M.ミッチャーリヒ(林峻一郎,馬場謙一訳)『喪われた悲哀』(河出書房新社,1972)を参照。

22)福島章『現代人の攻撃性』(太陽出版,1974),p.258.

23)斎藤孝子「攻撃性と不安に関する操作的研究」 (茨城大学教育学部卒業論文,1970,未発表)

24)Osgood, C. E., Suci, G. J. and Tannenbaum, F.ηε8、M8α∫配rε〃28η (〜プM8侃 ηg(University of Illinois Press,1957).

25)長島貞夫,藤原喜悦,原野広太郎,斎藤耕二,堀洋道「自我と適応との関係についての研究(1) Self一

differential作成の試み一」 『東京教育大学教育学部紀要』第12巻,1966, pp.84−91.

26)吉田昭久・長島貞夫「Personality要因としてのBody Imageに関する研究」『日本教育心理学会第11回総

会発表論文集』1969,pp.228−289.

27)国立国語研究所『分類語彙表』(秀英出版,1964).

28)長島貞夫ほか,前掲論文25).

29)中村陽吉『対人場面の心理』(東京大学出版会,1983),p.231.

30)林文俊「対人認知構造における個人差の測定  認知的複雑性への多次元解析的アプローチー(昭和51 年度教育心理学専攻修士論文概要)」『名古屋大学教育学部紀要(教育心理学)』第24号,1977,pp。221−222.

31)林文俊「対人認知構造の基本次元についての一考察」 『名古屋大学教育学部紀要(教育心理学)』第25号,

1978,PP.233−247.

32)長島貞夫,藤原喜悦,原野広太郎,斎藤耕二,堀洋道「自我と適応との関係についての研究(2)−Self一

differential作成一」 『東京教育大学教育学部紀要』第13巻,1967, pp.59−83.

33)斎藤孝子,前掲論文 23).

34)神永典郎「知覚判断における集団内同調行動とPersonality一図形認知に反映されるFidd Dependenceを 中心にして一」 (茨城大学教育学部卒業論文,1982,未発表).

35)神永典郎・吉田昭久・小熊均「Field Dependenceと対人行動イメージとの関連(その1)一対人行動イ メージに表出される攻撃性の検討一」『日本社会心理学会第25回研究発表論文集』1984,pp.26−27.

36)神永典郎「社会的圧力への 気づき と認知機能との関連一知覚的場依存  場独立次元からの検討一 一」(千葉大学大学院教育学研究科修士論文,1984,未発表).

(15)

神永ほか:日常生活場面に表出する人間の攻撃性(皿)      89

Appendix 1−i 調査票(その1:調査のお願いとフェイスシート)

叢.

図形認知とパーソナリティとの関連性に関する調査

調 査協 力 へ の お 願 い

この調査票は,皆さんが,複雑な図形の中から単純な図形をいかにして見つけ出していくか を研究するためのものです。内容は, 〔1〕図形認知の方略に関する調査票, 〔H〕対人行動 イメージ調査票の2つから構成されています。

現在,私どもの研究室では, 「図形認知とパーソナリティとの関連性」についての研究を進 めております。今回,皆様にご回答いただくのは,この研究の重要な資料となるものです。つ

きましては,皆様のご協力をお願いいたします。

なお,調査の結果は研究以外の目的には使用いたしませんので,自分の思った通りにご回答 下さい。   ・

茨城大学教育学部教育臨床心理研究室

次の事項にご記入下さい。   性別 男・女(○印)   年齢 満   歳

なお,この調査結果をもとに,一部の方に,後日次の調査をお願いすることがありますので,下 の事項にもご記入下さい。(皆様のご回答は,統計的に処理し,個人の結果が外部にもれるような ことはありませんので,ご協力をお願いいたします。)

名前 学年    学科        学生番号 連絡先 (住所)      (TEL)(  )  一

〔1〕図形認知の方略に関する調査票(略称:GEFT)

※ 省略

〔H〕対人行動のイメージ調査票

下の対になった言葉は,皆さんが自分以外の人とかかわるときの,すなわち, 対人関係において の,態度・かかわり方・関係の質・関係の中での感情などを表している言葉です。

それぞれの対について,「あなたが一般的に人とかかわる場合,心理的にはどうであるか」を思 いかえし,あなたが,最も良くあてはまると思う目盛の所を,下の例のように○印で囲んで下さい。

チェックの際には,日常使われる言葉の意味や使用法からではなく,あなたが実際にいろいろな 人とかかわる場合を想定し,言葉のもつ印象(イメージ)からチェックして下さい。

目盛は,両端になるほどその言葉の性質が強く,真中へ近づくほど弱くなります。また,「どち らでもない」には,それ以外どうしてもつけられないような場合にだけつけるようにして下さい。

(16)

Appendix 1−ii 調査票(その2:質問票一i)

と  カ、 や  ど  や  カ》  と

   ち@  ら

ト な   で   な て

@  も@  なも   り  や  い  や   り  も

(例)浅  い      深  い

と か  や  ど や  か  と      と か  や  ど や  か  と ち       ぢ

ら      ら

て な   で    な て      て な   で    な て も       も

な       な

も   り  や  い  や   り  も      も   り  や  い  や   り  も

(1)愉 快 な      不愉快な

(17) つまらない       おもしろい けいべつ

(2)尊敬する       軽蔑する (18) ゆ  る い      き つ  い

(3)黎らかい        箇 い (19)陰うつな      明 朗 な

(4)強情な        素管な

(20)霧寮する       歓迎する

(5)透 明 な      _L_⊥_」 不透明な ⑳稜しい        懸やかな

けん きょ       こう まん

(6) おうような      こせこせした (22)謙 虚 な      傲 慢 な

(7)霧やかな        霰しい (23)謎 る        巌ける

き      き

(8)不正直な      正 直 な (24)気どった      気さくな

やさ ひ  くつ

(9)恐   い      優 し い (25)おおらかな      卑 屈 な    ■

 とお       さえぎ

i10)通   す      遮   る  そっちょく       ひ  にく

i26)率 直 な      皮 肉 な

 こわ       つく

i11)壊   す       造   る

 まこと       いつわ i27)真   の      偽 り の

 うたが i12)疑   う       信 ず る

(28)宏}♪ぎな        きダ寮な

 つめた       あたたか

i13)  冷       レ、       暖       し》

(29)拒否的な      受容的な

とが       ゆる

(14)友好的な      挑戦的な

(30)答 め る      許   す

まる

(15)尊重する       軽視する

(31)丸   い      四 角 い

(16)豪嬰い        嬬りな (32) うちとけた      よそよそしい 次のページにつづく

参照

関連したドキュメント

私たちの行動には 5W1H

成績 在宅高齢者の生活満足度の特徴を検討した結果,身体的健康に関する満足度において顕著

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

UVBVisスペクトルおよびCDスペクトル を測定し、Dabs-AAの水溶液中での会へ ロ

(実被害,構造物最大応答)との検討に用いられている。一般に地震動の破壊力を示す指標として,入

tiSOneと共にcOrtisODeを検出したことは,恰も 血漿中に少なくともこの場合COTtisOIleの即行

市場動向 等を踏まえ 更なる検討

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配