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1-1. 自動運転車は もはや 未来の話 ではなくなり 実現時期 の問題になっている 高速道路の同一車線内の走行制御から自動バレーパーキング 渋滞時の自動運転まで 様々な自動運転機能を備えた自動車が 2016 年初め頃までには市場に登場すると発表されている 自動運転技術の進化は 完成車メーカーやサプ

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2016-2020

自動運転の未来

〈特別編集版〉

この冊子は『自動運転の未来2016-2020』の一部を抜粋したものです。 禁無断転載

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開始した。このプロジェクトは、ヨーテボリ市内 および周辺の公道において、100台の自動運転 車が現実に起こり得る様々な交通状況の下で 走行するもので、最初のテスト車は既に公道を 走っている。また、米Google社の試作車の公道 テストは既に広く報じられている。  オランダのヴァーヘニンゲン大学では、2015 年後半に2カ所のキャンパス間をドライバーな しのシャトルバスが走行開始する。英国の計画 コミュニティ、ミルトン・キーンズでは公共交 通手段としてポッド型の自動運転車を開発して おり、2017年の導入を目指している。シンガポー ルは、2014年にドライバー不在で走る自動車の テストを2カ月かけて行い、その間に市内ジュ ロン・レイク地区にある公園内道路を行き来す る自動運転バギーに500人が試乗した。また、 2015年後半には、別の地域でも、短距離を低速 走行する自動運転路線バスの実験が開始予定 である。実験では、実際の公道の交通事情にお いて、交差点での歩行者や自転車への対応など の自動運転機能の実用性を確認する。  サプライヤーも自動運 転車の実現に向け て準備を進めている。ドイツBosch 社、ドイ ツContinental社、米Delphi Automotive社、 オランダMobileye社、フランスValeo社、米 Velodyne社、米NVIDIA社をはじめとする多 くのサプライヤーの自動運転車を実用化するた めに必要な測位・誘導・処理などの技術は、高 度なテストの段階にある。  自動運転車の普及に向けては、(1)消費者、 (2)技術、(3)法規制、(4)社会の四つの側面 を考える必要がある。ボストン コンサルティ  自動運転車は、もはや「未来の話」ではなくな り、「実現時期」の問題になっている。高速道路 の同一車線内の走行制御から自動バレーパーキ ング、渋滞時の自動運転まで、様々な自動運転 機能を備えた自動車が、2016年初め頃までに は市場に登場すると発表されている。自動運転 技術の進化は、完成車メーカーやサプライヤー、 他分野の技術企業、研究機関、地方自治体、規 制当局が密接に関わり、ここへ来て急速に本格 化している。自動車業界にとって、100年に1度 の重要な変化であると言っても過言ではない。  世界各地で部分自動運転車、完全自動運転 車の新技術が発表され、公道テストが行わ れている。米ラスベガスで開催された 2015 International CESで、ドイツAudi社は高速道 路の自動走行が可能な「A7」ベースの試作車を 披露した。この試作車はサンフランシスコから ラスベガスまでの550kmの距離を自動走行し、 会場入りした。  ドイツBMW社は自動運転機能を搭載した「2 シリーズ」の走行試験を、テストコースだけで なく公道でも行っている。ドイツDaimler社は 部分自動運転車と完全自動運転車のテストを 米国とドイツで行っている。米GM社は2016年 に、高速道路をドライバーによる操作なしで走 行できるモデルを本格展開すると発表した。日 産自動車は自社の自動運転技術「Autonomous Drive」のテストを日本の公道で実施している。 同社は渋滞時の自動運転機能を持つモデルを、 2016年後半に市場投入すると発表している。  スウェーデンVolvo社とスウェーデンの政府 機関は、2014年に「Drive Me」プロジェクトを

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実現が見えてきた自動運転車のある未来

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自動運転 普及予測 15 自動運転の未来 2016-2020 ング グループ(BCG)では(1)の消費者と(2) の技術に焦点を当てたレポート「The Road to Autonomous Vehicle; Revolution in the Driver’s Seat」を2015年4月に発表した。この 第1章では、このレポートの内容に加えて、日本 で実施した消費者調査の結果についてまとめ る。  このレポートでは以下のポイントについて論 じている。 • 自動運転機能に対する消費者の購入意向・意 欲を定量化 • 自動運転車の実用化に必要な技術・経済・社 会・法規制の進化を考察 • 部分自動運転車および完全自動運転車の普及 を妨げ得る主な要因を特定 • 乗用・商用の両方において、自動運転車の用 途を検討 • 自動運転車の投入時期、普及台数・普及スピー ドを推定 • 自動車業界、技術企業、規制機関が考えるべ き論点・課題を提示  このレポートでは、企業サイドからの分析と 消費者サイドからの分析を行っている。企業サ イドでは、コア技術と開発段階の調査や、規模 の拡大などによるコスト低減の分析を行った。 また完成車メーカーやサプライヤー、研究機関 にも詳細なヒアリングを行った。消費者サイド では、自動車を最近購入した、あるいは近々購 入を検討している、1500人以上の米国消費者を 対象にアンケート調査を行った。  今回、日本でも1500人以上の消費者に対して 独自にアンケート調査を行い、自動運転車に対 する購買意欲や重視する機能、根底にある消費 者の価値観など、米国との対比分析を実施した。  急速に技術が進化する一方で、自動運転車の ステークホルダーは、市場投入とともに生じる 社会や法規制の問題解決にも取り組んでいる。 BCGは世界経済フォーラム(World Economic Forum、以下WEF)とともに(3)法規制、(4)社 会への影響についても検討しており、問題と解 決策を分析したレポート「Revolution Versus Regulation」を2015年9月に発表している(コラ ム「技術だけでは不十分:自動運転車普及の社 会および法規制面の課題」参照)。

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自動運転車普及に向けた社会・法規制面の課題

 BCG と、世界経済フォーラム(WEF)が共同 で発表したレポート「Revolution Versus Regu-lation(2015 年 9 月)」では、自動運転車が社 会および法規制に及ぼす影響と、自動運転車普 及のために整備すべきことを考察している。レポー トの主旨の一部を以下に挙げる。  自動運転車市場の形成には、継続的かつ加速 的な技術開発が不可欠である。それに加え、運 用に関わる法規制が世界レベル、国レベル、地 域レベルで策定されることも必須である。これまで は、自動運転車のパイロットテストは特別な許可や 法律の制定によって進められてきており、市場投 入に向けては、規制当局は大きく三つの問題に対 処する必要がある。 交通規則:高速道路などの一部の条件下のみで あっても、人間が運転責任を持たずに、自動運転 車が道路を走行することは許されるか? 法的責任:自動運転車が関係する事故や誤作動 の責任を誰が取るのか? 車両認証基準:自動運転車の安全性の担保や確 実なサイバーセキュリティ対策のために、どのような 性能基準およびテスト方法が必要か?  米国、日本、韓国、中国、西欧諸国などでは 政府や規制当局が既に検討を始めている。なか でも法規制策定、特に交通規則の分野において 最も進んでいるのは米国で、既に五つの州が自動 運転車の使用を認める法律を制定している。また、 米国運輸省の 2015 ~ 2019 年の研究開発計 画に、自動運転車に関する研究の費用も盛り込ま れている。  法的責任の観点では、運転の自動化によって、 より大きな責任を担うことになり得る自動車メーカー のリスク低減策も考える必要がある。例えば、政 府が認めた性能基準を満たしていれば、自動車メー カーの責任に上限を設ける、という方法もありうる。 そのためには、現在の自動車規格を拡大し、自動 運転車も対象とする必要がある。また、基準策定 や実験の際に規制当局がデジタルシミュレーション やテストコースでの試験、実環境でのパイロットテ ストのような、結果を重視した手法を採用する可能 性も考えられる。  自動運転車は確実に、社会に極めて大きなメリッ トをもたらす。自動車事故が減ることで、多くの命 を救うことができるだろう。 今日、米国だけでも自 動車事故による死亡者数は年間 3 万人以上にな る。渋滞緩和による燃費向上も期待できる。1 日 の長い時間を自動車通勤により無駄にしている人 は、年間何百時間もの時間を、生産的な時間に 変えることができるだろう。  自動運転車による潜在的なメリットは非常に大き いため、世界中の規制当局は自動運転技術に強 い関心を抱いており、シンガポールやスウェーデン のヨーテボリなど、様々な都市で数多くのパイロット プログラムが進められている。  同時に、政策立案者は、一般の消費者や各 産業など、様々なステークホルダーに対する責任を 担っている。 米 Uber 社と欧州のタクシー組合と の対立のように、既得権益の問題が自動運転車 への移行を複雑にすることもあるだろう。タクシーや トラックの運転手、保険会社、人身事故や交通 事故専門の弁護士など、不利な影響を被るステー クホルダーが、自らの利益を守るために政策立案 者に圧力をかけることも考えられる。大きな影響を 受けるステークホルダーに対しては、影響の軽減 策を考えることも必要かもしれない。  社会からの圧力もまた障壁になり得る。現時点 では、自動運転技術の進化への期待は高まりそう だが、状況が急変することもある。例えば、市場 投入の初期段階で自動運転車が絡む重大な事故 が起きれば、規制当局は厳しい姿勢をとる可能性 もある。社会から支持を得るために、自動車業界 は技術の限界とメリットの双方を率直に開示してい く必要がある。

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自動運転 普及予測 17 自動運転の未来 2016-2020 は限界となる条件の明確化と対応策が必要に なるだろう。  以下に、ADAS、部分自動運転機能の例を挙 げる。 市場投入の時期  完成車メーカーは、基盤技術の実現段階とコ スト低減の状況を踏まえて、部分自動運転車を 段階的に市場に投入するだろう。投入時期は、 完成車メーカーによる技術の確立、各国の法規  「自動運転車」の機能は明確に定義されてお らず、搭載機能はメーカーや車種などにより異 なると想定される。現在は、自動運転技術の前 身として、ADAS(先進運転支援システム)が搭 載されている。2015年後半から2016年初めに は、ADASから進化した、部分自動運転車の第 一陣が市場に投入されると発表されている。完 全自動運転車は、すべての状況において運転者 の介入なく自律的に走行するが、悪天候などに おける自動運転機能の限界も考えられる。今後

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自動運転の各機能、市場投入の時期

ADAS

の機能(例) アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC):2006 年に市場投入。 先行車の速度をモニターし、安全な 車間距離を保つ。 縦列駐車アシスト:2006 年に市場投入。カメラと超音波センサを利用し、自動車を駐車スペースに誘導する。 自動緊急ブレーキ:2008 年に市場投入。自動車が他の自動車や歩行者、動物、モノに衝突する危険がある ときに、自動的にブレーキが作動する。 レーン・キープ・サポート(LKS、車線維持支援):2014 年に市場投入。自動車が車線から逸脱しそうになっ たときに運転者に警告する。逸脱そのものを防止する機 能もある。 部分自動運転機能(例) 高速道路の同一車線内での自動運転:運転者の操作を必要とせずに、高速道路上の同一車線内を走行する。 高速道路での車線変更を含む自動運転:高速道路において同一車線内での自動運転に加え、自律的に車線 変更も行う。 渋滞時の自動運転:低速走行、停止、進行を繰り返す道路状況で、自動車機能を制御する。 自動バレーパーキング:自律的に走行して空いている駐車スペースを探し出し、駐車する。呼び出すと自律的 に戻ってくる。 都市部での自動運転:高速道路以外の道路で自律的に低速走行し、渋滞、交通信号、交差点、歩行者な どに適切に対応する。

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制の整備、安全監督機関に求められるテストの 進捗次第である。しかし、技術進化の段階と完 成車メーカーの発表から分かる、おおまかな投 入時期は以下の通りである。  既存の完成車メーカーやスウェーデンの「Drive Me」プロジェクトのような新規参入組が行う公 道テストは、2025年よりも前に実施されると考 えられる  市場投入までには、次の項目が実現されてい ることが必要である。 自動運転車の市場への投入スケジュール 2015 年 高速道路での同一車線内の自動運転 2015 年中頃 Tesla 社が投入予定と発表 2016 年 GM 社が「スーパークルーズ」という名称でキャデラックの全新型車両に搭載予定と発表 2017 年 渋滞時の自動運転・自動バレーパーキングの機能 2018 年 高速道路での車線変更を含む自動運転 2022 年 都市部での自動運転 2025 年 完全自動運転車 2025 年 Daimler 社が「メルセデス・ベンツ」の完全自動運転車を市場に投入予定と発表 • 量産規模に達するだけの需要 • サイバー攻撃への万全な対策 • 自動運転車に関する法規制の整備 • 法的責任に関する不明点の解消 • 社会的な抵抗感の払拭 • 高精度地図などの重要技術の商用化

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自動運転 普及予測 19 自動運転の未来 2016-2020  BCGでは、コア技術の実現時期・コストの推 移・消費者の需要の変化から、自動運転車普及 の道筋をモデル化した。モデルは、企業サイド からの分析と消費者サイドからの分析を組み 合わせて行った。本節では、消費者サイドから の分析をまとめる(企業サイドからの分析は次 節)。  今回の調査では、自動車を最近購入した、あ るいは近々購入を検討している、1500人以上の 米国消費者を対象にアンケート調査を行った。 米国におけるACCの普及率は世界の平均普及 率とほぼ同じ約6%である。日本・西欧は世界 平均の約2倍、新興国は世界平均よりも低い。 ACCのようなイノベーションに対する消費者の 姿勢が世界平均と近いということで、今回は米 国での消費者調査の結果を、世界市場の代替指 標として用いた。  アンケートでは、消費者が自動運転車をどの ように使うか、なぜ使うか、自動運転機能にど の程度支払う意向があるかなどを探った。また、 性別、年齢、地域、現在の自動車保有状況、カー シェアリングに対する姿勢など、いくつかの要 素にひも付けて分析を行った。  通常、まだ実現していない機能に関する調査 は、その機能が想像しにくいため、調査自体を 行うことが難しい。しかし、今回は回答者の事 前調査でほとんどの消費者が自動運転機能を 理解していることが分かっており、それだけで もこの機能の可能性を感じさせた。

1-3.

消費者の視点から見る自動運転車の購入理由

55%が部分自動運転車を購入したいと回答 44% が完全自動運転車を購入したいと回答 是非購入したい 購入したい 言えば どちらかと どちらでもない 購入しない 言えば どちらかと まず購入しない 25 30 55% 44% 23 11 11 0 10 20 30 40 Q:今後5年以内に自動車を購入することを想定したとき、 部分的な自動運転車をどの程度購入したいですか? 是非購入したい 購入したい 言えば どちらかと どちらでもない 購入しない 言えば どちらかと まず購入しない 23 21 21 15 20 0 10 20 30 40 Q:今後10年以内に自動車を購入することを想定したと き、完全自動運転車をどの程度購入したいですか? 回答率 回答率 出所:BCG自動運転車調査(米国、2014年、回答者数 1,510人) 図1-3-1 自動運転車に対する消費者の購買意向(米国) 米国の消費者の自動運転車の購買意欲は強い (出所:BCG自動運転車調査(米国、2014年、回答者数 1510人))

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消費者の購入意欲は強い  アンケート調査から、米国のドライバーは自 動運転車の可能性に大いに期待していること が明らかになった。将来自動車を購入する際に 自動運転車を購入したいと回答した人は、部分 自動運転車で55%、完全自動運転車で44%だっ た(図1-3-1)。自動運転車に対する消費者の関 心は、電気自動車(EV)の投入前よりも大きい。 そのため、EVよりも自動運転車の普及スピー ドの方が速くなる可能性がある。  もちろん、自動運転車に対して懸念を持つ消 費者もいる。自動運転車を購入しないとした回答 者は、懸念点として法的責任への疑問、サイバー セキュリティへの不安、他の自動車がいる中での 自動運転機能の不確実性などを挙げている。 消費者が望む機能は特定されていない  自動運転車への消費者の期待は高いものの、 欲しい機能が特定されているわけではない。約 3分の2が複数の自動運転機能にとても関心が ある、あるいはやや関心があると回答し、自動 バレーパーキングや高速道路・渋滞時・特定ル ートでの自動運転のそれぞれに関心を持ってい る回答者の割合は、ほぼ同程度だった(図1-3-2)。そして、51%の回答者が自動運転機能をす べて備えた自動車を購入することにとても関心 がある、あるいはやや関心があると述べた。  関心を持っている消費者の多くは、自動運転 機能に対してその付加分を上乗せした価格を 支払う意向があると回答した。部分的に自動運 転機能を備えた車、また完全自動運転車に対し て、価格を上乗せして支払う意向があると述べ た回答者は50%以上に上る。さらに完全自動運 転機能を搭載した車に対し、回答者の24%が 4000ドル(約48万円)以上、17%が5000ドル(約 60万円)以上を本体価格に上乗せして支払う意 0 20 40 60 80 1) 質問:「以下のそれぞれの自動運転機能に関して、将来購入する自動車への搭載機能を検討する上でどの程度、 興味をお持ちですか?」 回答:「非常に興味がある/どちらかと言えば興味がある/どちらとも言えない/どちらかと言えば興味がない/全く 興味がない」 2)目的地で車を降りた後に、自動的に駐車スポットを見つけ駐車する 3)質問: 各自動運転機能に対して「追加で費用をかけますか」、回答は次の二つの選択肢から一つを選択「はい」「いいえ」 注:数字は四捨五入 0 20 40 60 0 50 100 消費者が望む自動運転機能は 特定されていない1) 各機能への興味 以下四つの 機能全て 高速道路での 自動運転 特定ルートで の自動運転 渋滞時の 自動運転 自動バレー・ パーキング2) 非常に 興味がある あり 回答率(%) 回答率(%) 51 67 66 64 67 どちらかと言えば 興味がある 1000ドル (約12万円)未満 自動運転機能に追加で支払う 意向のある消費者は50%以上3) 自動運転車に興味のある回答者の 各機能への追加での支払い意向 自動運転機能に追加で支払う 金額は5000ドル(約60万円)以上 支払い意向のある回答者の 追加での支払額 57 54 51 50 53 回答率(%) 30 26 19 17 16 1000∼2000ドル (約12万∼24万円) 2000∼3000ドル (約24万∼26万円) 3000∼4000ドル (約36万∼48万円) 4000∼5000ドル (約48万∼60万円) 5000ドル (約60万円)以上 29 13 9 6 13 37 15 9 2 11 48 17 6 3 7 47 16 9 3 8 52 15 7 2 8 図1-3-2 自動運転の各機能に対する消費者の興味、支払い意向(米国) 自動運転機能に、車両本体価格に上乗せして5000ドル (約60万円) 以上支払う意向のある消費者も少なくない (出所:BCG自動運転車調査(米国、2014年、回答者数 1510人))

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自動運転 普及予測 21 自動運転の未来 2016-2020 向があると答えた。しかし、突出して望まれて いる機能がないということは、完成車メーカー から見ると、優先して研究開発すべき機能が明 確になっていないという課題を突き付けられて いることになる。 高級車がけん引役  部分自動運転車と完全自動運転車の両方に最 も高い関心を示し、その機能に相当する価格を 上乗せして支払うことにも最も積極的なのは、 高級車の保有者だった(図1-3-3)。高級車保有 者の70%が部分自動運転車を、61%が完全自動 運転車を購入したいと回答している。もっとも、 大衆車を保有する消費者も自動運転車には高 い関心を示しており、約半数が部分自動運転車 を、36%が完全自動運転車を購入したいと回答 している。高級車と大衆車の保有者の両セグメ ントで関心が高いことを踏まえると、両市場に 堅固な地位を築いている完成車メーカーのドイ ツVolkswagen社、トヨタ自動車、GM社などは、 利益が見込めるようになったところで、高級車 に搭載した自動運転技術を大衆車に展開し、規 模の拡大を図ることができると考えられる。 保険料削減や安全性の向上が魅力  アンケート結果では、自動運転車により運転 の安全性が著しく向上し、保険や修理、メンテ ナンスにかかるコストが削減されると認識して いる人が多かった。今後約5年以内に自動車を 購入すると想定したとき、部分自動運転車を購 入したいと回答した人は、主な理由として保険 料が下がること、安全性が向上すること、操作 不要で高速道路の走行ができることを挙げた (図1-3-4)。今後約10年以内に自動車を購入す ると想定したとき、完全自動運転車を購入した いと回答した人たちも同様に、保険料が下がる こと、安全性が向上すること、移動中に他のこ とができることをその理由に挙げた(図1-3-5)。  完全自動運転車を購入すると回答した人た ちの半分以上は、最大の購入理由の一つとして 生産性の向上を挙げていた。つまり、半分以上 の消費者は、運転の喜びよりも、移動中に他の 0 20 40 60 80 100 回 答 率 ︵   ︶ 部分自動運転車購入意向 大衆車保有者 高級車保有者 購入意向 あり 20 27 27 13 13 32 32 18 6 6 0 20 40 60 80 100 完全自動運転車購入意向 大衆車保有者 高級車保有者 購入意向 あり 17 19 22 27 25 35 26 16 12 11 47 70 36 61 % 回 答 率 ︵   ︶% まず購入しない どちらかと言えば購入しない どちらでもない どちらかと言えば購入したい 是非、購入したい 図1-3-3 保有車両の種類別自動運転車の購入意向 高級車の保有者の方が自動運転車の購入意欲が強い (出所:BCG自動運転車調査(米国、2014年、回答者数 1510人))

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活動ができることのが魅力的だと思っているの である。これは、自動運転車が第二の「個人生 産性革命」になり得るということも示唆してい る。自動運転車により生み出される生産性の向 上は、洗濯機や食器洗い機などの家電製品によ るものを上回るかもしれない。 (出所:BCG自動運転車調査(米国、2014年、回答者数 1510人)) 設問: (5年以内に自動車を購入することを想定したとき、部分的な自動運転車の購入に関して [是非購入したい、どちらかと言えば購入したい、どちらでもない]と回答した人に対して) 購入の主な理由としてどの項目があてはまりますか?(複数回答可) 0 100 200 300 400 自動運転車だと保険料が低くなるから 自動運転機能のない自動車よりも安全だから 高速道路で自動運転に切り替えられるから 自動運転機能のない自動車よりも燃費が良いから 行政機関により高い安全性が示されているから 自動運転車だと自動車関連の税金に優遇措置が受けられるから 渋滞で自動運転に切り替えられるから 移動中に他の作業を行うことができて生産性が向上するから 交通の流れがより円滑な自動運転車専用の車線を走行するから 排ガスによる環境負荷を低減できるから 目的地で車を降りた後に自動的に駐車スポットを見つけて駐車してくれるから 自動運転車が目新しいから 自動運転機能の無い自動車よりもメンテナンスを安く計画的に実施できるから 高齢者が多いエリアでも運転ができるから カーシェアリングによって費用負担を低減できるから 自動車の相乗りがより可能になるから 子供の送り迎えに自分が行く必要がなくなるから 418 396 372 335 331 326 320 293 268 262 238 234 221 174 152 116 113 回答者数 設問: (10年以内に自動車を購入することを想定したとき、完全自動運転車の購入に関して [是非購入したい、どちらかと言えば購入したい、どちらでもない]と回答した人に対して) 購入の主な理由としてどの項目があてはまりますか?(複数回答可) 0 100 200 300 400 自動運転機能のない自動車よりも安全だから 自動運転車だと保険料が低くなるから 移動中に他の作業を行うことができて生産性が向上するから 行政機関により高い安全性が示されているから 高速道路で自動運転に切り替えられるから 渋滞で自動運転に切り替えられるから 自動運転機能のない自動車よりも燃費が良いから 自動運転車だと自動車関連の税金に優遇措置が受けられるから 交通の流れがより円滑な自動運転車専用の車線を走行するから 目的地で車を降りた後に自動的に駐車スポットを見つけて駐車してくれるから 自動運転車が目新しいから 排ガスによる環境負荷を低減できるから 自動運転機能のない自動車よりもメンテナンスを安く計画的に実施できるから 高齢者が多いエリアでも運転ができるから カーシェアリングによって費用負担を低減できるから 自動車の相乗りがより可能になるから 子供の送り迎えに自分が行く必要がなくなるから 337 323 292 281 275 274 273 271 251 237 214 212 204 164 131 113 103 回答者数 図1-3-5 完全自動運転車の購入理由 購入理由の上位は、安全性の向上、保険料削減、移動中に他の作業ができること 図1-3-4 部分自動運転車の購入理由 購入理由の上位は、保険料削減、安全性の向上、操作不要での高速道路の走行 (出所: BCG自動運転車調査(米国、2014年、回答者数 1510人))

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自動運転 最新動向 53 自動運転の未来 2016-2020 自動運転の進展に伴う業界構造の変化  業界構造の変化を説明するために、まず自動 運転により生まれる新たな技術ニーズについ て簡単に述べることとする。自動運転を実現す るための要素技術として、「認知」「判断」「操作」 の3つが大きく挙げられる。 ▷認知  ミリ波レーダ、LIDAR(レーザレーダ)、カメ ラなどの車載センサ、3次元地図、車車間通信や 路車間通信などによって車両周囲の走行環境を 認識する技術である。 ▷判断  認知技術によって得られた車両周辺の走行  近年、完成車メーカーおよび米Google社をは じめとした新規参入企業の間で、自動運転技術 の開発競争が激化している。各社が発表する 情報を鑑みると、2020年以降、Google社を筆頭 として自動運転車の市場投入が相次ぎ、2020 年が自動運転車の市場形成のターニングポイン トになると考えられる(図2-2-1)。  自動運転の技術開発の進展を受け、自動車の 業界構造は大きな変化を遂げつつある。本章で は、自動運転の進展に伴う業界構造の変化とし て、現在構築されつつある新たな生態系と、従 来のピラミッド型業界構造に起きつつある変化 について述べることとする。

2-2.

自動運転の進展に伴う自動車業界の構造変化

(出所:各社発表およびニュース記事よりEYA作成) 図2-2-1 国・地域と完成車メーカーの自動運転ロードマップ

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環境を基に、車両の走行経路の生成や障害物と の衝突可能性を判断し、安全な走行のための経 路推定、車両の操作タイミングを判断する技術 である。 ▷操作  判断技術によって生成された走行経路や衝 突可能性などの情報を基に車両を操作する技 術である。 (出所:各社発表およびニュース記事よりEYA作成) 図2-2-2 自動運転における新たな生態系

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自動運転 最新動向 55 自動運転の未来 2016-2020  従来は、クルマの運転をする人間が認知・判 断の機能を担っていたが、自動運転を実現する には、これらをシステムによって自動で行う必 要がある。 新たな生態系の構築  自動運転の実現に向けてこれらの要素技術 が新たに必要とされていることを受け、現在、 自動車業界では、「認知」の機能を担う車載セン サや「判断」の機能を担う人工知能といった新 規分野を手掛けるプレーヤーの参入が相次ぎ、 新たな生態系が構築されつつある(図2-2-2)。  図2-2-2は、自動運転技術の開発を進める完 成車メーカーおよびTier1メーカーがこれまで に発表している他社との提携・協業体制を示 すものである。ここで注目すべきは、これらす べての企業が「認知」「判断」といった新規分野 を手掛ける複数のプレーヤーと提携・協業して いるという点である。つまり、自前のリソース だけで自動運転を実現できる完成車メーカー、 Tier1メーカーはいないというのが現状なのだ。 当然、新規分野の製品を自社開発するという選 択肢もあるが、認知系・判断系のキーデバイス は開発投資が大きいと同時に、自前のリソース だけでは早い技術進歩についていくのは難し い。そのため、内製化に向けた多大なリソース 投下を行うのではなく、既に成熟した技術を有 する専業プレーヤーと協業するという方法が取 られているのである。 ピラミッド型業界構造の変化  新たな生態系の構築を受け、完成車メーカー を頂点とした従来のピラミッド型の業界構造に も変化が生じつつある。第一に、図2-2-2で示 す通り、認知系・判断系の優れた技術を有す るメーカー(または大学)は、Tier1メーカーを 通さずに、完成車メーカーと直接提携・協業し 始めている。従来は、Tier1メーカーは完成車 メーカーが求める仕様に応じてシステムを設 計し、それに必要となるデバイスや部材の生産 をTier2、Tier3メーカーへ依頼するというピラ ミッド型の構造となっており、Tier1メーカーが 完成車メーカーとTier2、Tier3メーカーの間で デバイス・部材の開発を取りまとめるという役 割を担っていた。認知系・判断系のメーカーが Tier1メーカーを通さずに完成車メーカーと直 接共同開発を行うことになれば、Tier1メーカー がこれまで担ってきた役割が薄れることとな る。  一方で、Tier1メーカーも認知系・判断系の メーカーとの協業・提携を通じて中核技術を囲 い込むことによって、デバイス・部材の開発を 取りまとめるという従来の役割を越えて、クル マの企画や設計といった従来完成車メーカーが 担ってきたポジションを狙い始めている。実際、 ドイツのBosch社やContinental社、米Delphi 社などのTier1メーカーは、自社製品を中心と した自動運転車の企画や設計ができるだけの 技術力・ノウハウを蓄積するために、自動運転 の試作車の開発を自前で進めている。  今後Tier1メーカーがどのような役割を担っ ていくかで業界構造の変化の方向性は大きく 変わると考えられるが、いずれにせよ、完成車 メーカーを頂点とした従属的な関係は変化する といえるだろう。

参照

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