応用解析学
2009 年後期 , 西岡
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/˜nishioka/
2 号館 11 階 38 号室 オフィスアワー : 水曜 4 限
1
( ∗ )
本講義では,
多次元の関数を扱う.
多次元の関数は複雑な挙動をとる.
例題0.1. f (x, y) = 2x 2 − 3y 2
は(x, y) = (0, 0)
で鞍点と呼ばれる振る 舞い.
• x
だけの関数f (x, 0) = 2x 2
としてみると, x = 0
が極小.
• y
だけの関数f (0, y) = − 3y 2
としてみると, y = 0
で極大.
5
0
5 2
0 2 20
0 20 40
2
変数関数のグラフ(3
次元)
はなかなか判りずらい.
鞍点をx
軸, y
軸方向 からそれぞれ見ると,
2 0 2
210 12 10
0 10
2 0
2
2 1 0 1 2
10 0 10
3
例題
0.2.
もっと複雑なグラフもある. g(x, y) = sin x sin y
4 2
0 2
4 4
2 0
2 4
1.0 0.5 0.0 0.5 1.0
4 2
0 2
4 4 2 0 2 4
1.0 0.5 0.0 0.5 1.0
( ∗ )
この講義では,
こうした関数を扱う.
1 2 変数関数
多変数関数を扱うための準備
.
1.1 距離と領域
まず平面上の
2
点間の距離を定義する.
2
次元平面R 2
の2
点P = (x, y) , Q = (a, b)
の 距離ρ(P, Q)
をρ(P, Q) ≡
(x − a) 2 + (y − b) 2
で定義する.
点
P = (x, y) ∈ D
にたいし,
部分集合(1.1) B r (P ) ≡ { Q ∈ R 2 : ρ(P, Q) < r } ⊂ R 2
を“P
を中心とした半径r
の球”と呼ぶ.
5
注意
1.1.
一般にR n
の点P = (x 1 , x 2 , · · · , x n )
と点Q = (a 1 , a 2 , · · · , a n )
の距離としては,
ρ(P, Q) ≡
(x 1 − a 1 ) 2 + (x 2 − a 2 ) 2 + · · · + (x n − a n ) 2 , (1.2)
ρ ∗ (P, Q) ≡ max {| x 1 − a 1 | , | x 2 − a 2 || , · · · , | x n − a n |} , ρ † (P, Q) ≡ | x 1 − a 1 | + 1
2 | x 2 − a 2 || + · · · + 1
2 n | x n − a n |
等があるが
,
どれも同値である.
ただし, ρ ∗
とρ †
は無限次元空間に拡張 できる.
D ⊂ R 2
を領域という.
ある数K > 0
にたいし, D
が原点を中心とした 半径K
の球に含まれる, i.e.
D ⊂ B K (0)
となるとき,
“D
を有界な領域”という.
7
1.2 2 変数関数 R 2
の領域D
において,
f : (x, y) ∈ D → R 1
という関係を“
D
で定義された実数値関数f
”という.
2
変数関数f (x, y)
の視覚的な意味は, 3
次元空間R 3
の図形である.
領域D
で定義されたf (x, y)
にたいしG = { (x, y, f (x, y)) : (x, y) ∈ D }
をf
のグラフという.
例題
1.2. (i) f (x, y) = − x − y + 1, D = { 0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1 }
のグラフは下図の左側の平面である.
(ii) g(x, y) = 1
x 2 + y 2 + 1 , D = {− 2 ≤ x ≤ 2, − 2 ≤ y ≤ 2 }
のグラフは下図の右側の曲面である.
0 0.2
0.4 0.6
0.8 0
0.2 0.4
0.6 0.8
-1 -0.5
0 0.5
1
0 0.2
0.4 0.6
0.8 0
0.2 0.4
0.6 0.8
-2 -1
0 1
2 -2 -1
0 1
2
0 25 5 5 1
-2 -1
0 1
問題
1.3.
関数f (x, y) ≡ x 2 + y 2
の概形を描け.
9 [
解答]
下の図,
回転放物面と呼ばれる.
4 2
0 2
44 2
0 2
4
0 10 20 30
1.3 関数の極限 1. 1
変数関数の極限( ∗ ) D
内部の点x 0
にたいし, lim x→x
0,x∈D f (x) = a
であるとき,
“関数f
はx 0
で極限a
をもつ”という*1.
( ∗ )
極限という言葉は,
数列{ a n }
に対してよく使われるが,
実は関数に対 する物と同じである:
命題
1.4.
関数f
がx 0
で極限a
をもつ.
⇔ { x n }
をD
に含まれる数列とする.
すべてのn
でx n = x 0
かつlim n x n = x 0 ∈ D
なら, lim n f (x n ) = a .
これにより
,
関数の極限は(
基礎数学で勉強した)
数列の極限に帰着するこ とが判った.
*1 ここで
f ( x
0)
の値とa
にはなんの関係も無いことを注意せよ.
11 2. 2
変数関数の極限定義域
D
の関数f (P )
にたいし,
点P = (x, y)
がD
内のいかなる路を 通って点Q = (a, b)
に近づいてもP lim →Q f (P ) = α
が存在するとき
,
“f
は点Q
で極限値α
を持つ”という.
ここで,
P = (x, y) → (a, b) = Q
は, (1.2)
で与えられたρ
にたいしρ(P, Q) → 0
を意味するが,
点P
が 点Q
に近づく方法は無数にあることを注意する.
例題1.5. (x, y) = (0, 0)
で定義された関数f (x, y) = x y
x 2 + y 4
はQ = (0, 0)
で極限値0
を持つことを示せ.
[
解答]
1.0 0.5
0.0 0.5
1.0 1.0 0.5
0.0 0.5
1.0
0.5 0.0 0.5
| x | ≤
x 2 + y 4
だから| x y
x 2 + y 4 − 0 | = | x |
x 2 + y 4 · | y | ≤ | y | → 0 as (x, y) → (0, 0). 2 13
例題
1.6. (x, y) = (0, 0)
で定義された関数g(x, y) = x 2 + y 2
x 2 + y 4
は
Q = (0, 0)
で極限値を持たない事を示せ.
ヒント:
下の図.
1.0 0.5
0.0 0.5
1.0 1.0 0.5
0.0 0.5
1.0
0.0 0.5 1.0
[
解答] x
軸に沿って 点P
をQ = (0, 0)
に近づけると, y = 0
だからg(x, 0) = x 2
√ x 2 = | x | → 0 as x → 0.
一方
, y
軸に沿って 点P
をQ = (0, 0)
に近づけると, x = 0
だからg(0, y) = y 2
y 4 = 1 → 1 as y → 0.
となり
,
点P = (x, y)
がQ = (0, 0)
に近づく経路によってlim P →Q g(P )
の値が異なる.
よって極限値は存在しない. 2
15
例題1.7. (x, y) = (0, 0)
で定義された関数h(x, y) = x − y x + y
は
Q = (0, 0)
で極限値を持たない事を示せ.
ヒント=
下の図.
[
解答] y = αx
を保って, x → 0, y → 0
となるとき(x,y)→(0,0) lim h(x, y) = lim
(x,y)→(0,0)
(1 − α)x
(1 + α)x = 1 − α 1 + α .
これはα
の値により異なるので,
極限値は存在しない.
例えば
, α = 1
のときh(x, y) → 0 , α = − 2
のときh(x, y) → − 3 , α = − 1/2
のときh(x, y) → 3
となる. 2
17
1.4 連続関数
I. 1
変数の連続関数関数
f
がx 0
で極限値a
をもち,
しかもf (x 0 ) = a
のとき,
“f
はx = x 0
で連続”といい, D
の全ての点x
で連続な関数を“D
で連続な関 数”という.
注意
1.8.
連続の定義をε - δ
論法を使って厳密に述べてみよう.
( ∗ )
“関数f
はx = x 0
で連続”
とは,
任意のε > 0
にたいし,
あるδ > 0
があり,
| x − x 0 | ≤ δ ⇒ | f (x) − f (x 0 ) | ≤ ε
となる事である.
II. 2
変数の連続関数領域
D
で定義された関数f (P )
が 点Q = (a, b) ∈ D
で連続とは,
P lim →Q f (P ) = f (Q)
となることである.
注意
1.9.
多変数関数の連続の定義をε − δ
論法を使って厳密に述べてみ よう.
( ∗ ) P = (x, y)
を関数f
の定義域D
内の点とする. f
が 点Q = (a, b) ∈ D
で連続とは,
任意のε > 0
にたいし,
あるδ > 0
があり, ρ(P, Q) ≡
(x − a) 2 + (y − b) 2 < δ ⇒ | f (P ) − f (Q) | < ε ( ∗ )
多変数関数も, 1
変数関数の場合と同様に都合の良い性質を備えて いる:
19
定理
1.10 (
最大値,
最小値).
有界閉領域D
で連続な関数f (P )
はD
で 最大値と最小値をとる.
定理
1.11 (
中間値の定理).
関数f (P )
は領域D
で連続.
任意にとった2
点Q, R ∈ D
でf (Q) < f (R)
のとき, f (Q) < c < f(R)
となる任意の数c
にたいし, f (S ) = c
となる点S ∈ D
が存在する.
2 微分の復習
いよいよ多変数関数の微分
(
偏微分)
を論ずる.
その前に一変数関数の微分 を復習しておこう.
2.1 微分の概念
微分は
,
“Newton
が質点の運動を研究するために考案した”とされている
.
f
をD
で定義された関数とする. D
の内部の点x 0
にたいし,
(2.1) lim
h→0
f (x 0 + h) − f (x 0 ) h
が存在するとき
,
“f
はx 0
で微分可能”と言い, (2.1) = f (x 0 ) = df
dx (x 0 )
と記述する
. f (x 0 )
をx o ∈ D
の関数と見たとき,
“f
の導関数”と呼ぶ. 21
2.2 1 変数間の微分公式
重要な微分公式を表にする
.
定理
2.1. (i) f, g
は微分可能な関数, α, β
は定数とする.
関数 微分
α f (x) + β α f (x)
関数の積
f (x) g(x) f (x) g(x) + f (x) g (x)
合成関数g
f (x)
g f (x)
f (x) f (x)
g(x) , g = 0 f (x) g(x) − f (x) g (x) g(x) 2
(ii)
初等関数の微分は以下の通り:
関数 微分
指数関数
e x e x
対数関数
log | x | 1 x
定数
c 0
べき乗
x n ,
ただしn = 0
なる整数, n x n−1
べき乗x α ,
ただしα =
整数 でx > 0 α x α−1
正弦
sin x cos x
余弦
cos x − sin x 23
2.3 重要な定理 -1 変数関数バージョン
重要な定理
定理
2.2. f
を 区間[a, b]
で連続, (a, b)
で微分可能な関数とする. (i) (Rolle
の定理) f (a) = 0 = f (b)
なら, f (c) = 0
となる点c ∈ (a, b)
がある.
(ii) (
平均値の定理)
次を満たす点z ∈ (a, b)
がある: f (b) − f (a)
b − a = f (z).
平均値の定理を使うと数学では許されない
0/0
の計算が出来ることが ある.
定理
2.3 (
ロピタルの定理).
関数f, g
を 定理2.2
の条件をみたすものと する. f (a) = 0 = g(a) , g (a) = 0
とすると,
b→a lim f (b)
g(b) = lim
b→a
f (b) g (b) .
25
2.4 高階微分
(i)
関数f
の導関数f (x)
にたいし,
その微分と導関数f (x)
を考える ことができる. f (x)
を2
階微分/2階導関数と呼ぶ.(ii)
さらに3
階微分f , · · · , n
階微分f (n)
も考えることが出来る. ( ∗ )
この高階微分の重要な応用として,
テイラー展開がある.
テイラー展開
定理
2.4.
関数f
は 区間(a, b)
でn + 1
階まで微分可能をする.
点c, x ∈ (a, b)
にたいし,
次が成立:
ある点y
がありf (x) = f (c) + f (c)
1! (x − c) + f (c)
2! (x − c) 2 + + · · · + f (n) (c)
n! (x − c) n + R n+1 , (| y − c | < | x − c |
でありR n+1 ≡ f (n+1) (y)
(n + 1)! (x − c) n+1 ).
(2.2)
27
3 偏微分
3.1 偏微分の定義
(i) f
を領域D
で定義された連続関数とする.
(3.1) lim
x→x
0f (x, y 0 ) − f (x 0 , y 0 ) x − x 0
が存在するとき
, f
は 点(x
0, y
0)
でx
偏微分可能 といい, (3.1) = f x (x 0 , y 0 ) (= ∂f
∂x (x 0 , y 0 )
とも表示する)
と表す.
さらに,
このf x (x 0 , y 0 )
をf
のx
偏導関数と呼ぶ. (ii)
同様に,
x→x lim
0f (x, y 0 ) − f (x 0 , y 0 )
x − x 0 ≡ f y (x 0 , y 0 ) (= ∂f
∂y (x 0 , y 0 )
とも表示する)
が存在するとき
, f
は 点(x
0, y
0)
でy
偏微分可能 といい,
この極限値f y (x 0 , y 0 )
をf
のy
偏導関数 と呼ぶ.
偏微分の直感的な意味
-
重要注意
3.1.
大雑把に言えば,
偏微分しようとする変数以外は定数と考 えて微分することが偏微分である.
そのため1変数の場合の微分公式 が,
そのまま偏微分にも適用できる.
例題
3.2.
次の関数をx
およびy
で偏微分せよ.
(i) x 2 y + y 3 , (ii) x 2 − x y + y 2 , (iii) e x+x y , (iv) sin(x y), (v) log x
y , (vi) log 1 x 2 + y .
29 [
解答] (i) f x = 2xy, f y = x 2 + 3y 2 . (ii) f x = 2x − y, f y = − x + 2y .
(iii) f x = (1 + y) e x+xy , f y = x e x+xy . (iv) f x = y cos(xy), f y = x cos(xy) . (v) f x = 1
y · y x = 1
x , f y = − x y 2 · y
x = − 1 y . (vi) f x = − 2x
(x 2 + y) , f y = − 1 x 2 + y .
偏微分を理解するコツ
( ∗ )
増分記号Δ :
変数x
が増える量を「x
の増分」と呼び, Δx
で 表す.
( Δx
は2
文字だが, 1
つの量である.)
x → x + Δx
と変化したときに,
関数f (x, y)
がどれだけ変化するか 考える.
Δx
が小さいとき, x -
偏微分の定義を思い出すと,
f (x + Δx, y) − f (x, y) = f (x + Δx, y) − f (x, y)
Δx Δx
(3.2)
f x (x, y) Δx.
同様に
, Δy
が小さいとしてy → y + Δy
と変化したときには, f (x, y + Δy) − f (x, y) = f (x, y + Δy) − f (x, y)
Δy Δy
(3.3)
f y (x, y) Δy.
31
( ∗ ) 2
変数関数z = f (x, y)
で, x, y
がともに別の変数t
の関数であると する:
x = V (t), y = W (t).
t → t + Δt
と変化したとき, f
がどう変化するか調べる. x
の変化Δx = V (t + Δt) − V (t) = V (t + Δt) − V (t)
Δt V (t) Δt, y
の変化Δy = W (t + Δt) − W (t) = W (t + Δt) − W (t)
Δt W (t) Δt.
これを
(3.2)
に代入して,
f (V (t + Δt), W (t + Δt)) − f (V (t), W (t + Δt))
= f (x + Δx, y + Δy) − f (x, y + Δy)
f x (x, y + Δy) Δx f x (x, y + Δy) V (t)Δt.
同様に
,
f (V (t), W (t + Δt)) − f (V (t), W (t))
= f (x, y + Δy) − f (x, y)
f y (x, y) Δy f y (x, y) W (t)Δt.
以上の
2
つを足してΔz = f (V (t + Δt), W (t + Δt)) − f (V (t), W (t))
= f (V (t + Δt), W (t + Δt)) − f (V (t), W (t + Δt)) +f (V (t), W (t + Δt)) − f (V (t), W (t + Δt))
= f x (x, y + Δ) V (t) Δt + f y (x, y) W (t) Δt.
両辺を
Δt
で割って, Δt → 0
とすると,
次の合成関数の微分公式(2
変数 関数バージョン)
が得られる.
33
d z
dt = d f (V (t), W (t)) dt
= lim
Δt→0
f (V (t + Δt), W (t + Δt)) − f (V (t), W (t)) Δt
= f x (x, y) V (t) + f y (x, y) W (t)
= f x (V (t), W (t)) V (t) + f y (V (t), W (t)) W (t).
問題
3.3.
次の関数をt
で微分せよ.
ただし, a, b
は定数.
(i) f (a t, b t), (ii) f (a cos t, b sin t), (iii) f (e at , e bt ).
3.2 座標変換
( ∗ ) x, y
が別の変数u, v
で,
x = g(u, v), y = h(u, v)
と表されてる
.
このとき 関数z ≡ f (x, y)
に,
前と同じ「増分」の考え方 を,
に適用する.
Step 1. u → u + Δu , v → Δv
と変化したとき, Δx = g(u + Δu, v + Δv) − g(u, v)
= g(u + Δu, v + Δv) − g(u, v + Δv) + g(u, v + Δv) − g(u, v) g u (u, v + Δv) Δu + g v (u, v) Δv.
Δy = h(u + Δu, v + Δv) − h(u, v)
= h(u + Δu, v + Δv) − h(u, v + Δv) + h(u, v + Δv) − h(u, v) h u (u, v + Δv) Δu + h v (u, v) Δv.
35
Step 2.
一方, x → x + Δx , y → y + Δy
と変化したとき,
前と同様にΔz = f (x + Δx, y + Δy) − f (x, y)
f x (x, y + Δy) Δx + f y (x, y) Δy.
ここに
, Δx , Δy
の計算結果を代入. Δz f x (x, y + Δy)
g u (u, v + Δv) Δu + g v (u, v) Δv +f y (x, y)
h u (u, v + Δv) Δu + h v (u, v) Δv . Step 3. ∂f
∂u
は,
「Δv = 0
としてlim Δu Δz
Δu
を計算したもの」だから, Δz
Δu f x (x, y + Δy) g u (u, v) + f y (x, y) h u (u, v)
→ f x (x, y) g u (u, v) + f y (x, y) h u (u, v).
(
ここでΔv = 0
であることを注意)
Step 4. ∂f
∂v
は,
「Δu = 0
としてlim Δv Δz
Δv
を計算したもの」だから,
前と同じ計算を繰り返して,
次の定理が得られた:
命題
3.4 (
偏微分の座標変換). (x, y) → (u, v)
という座標変換x = g(u, v), y = h(u, v)
を行うとき
, (x, y)
の関数z = f (x, y) = f (g(u, v), h(u, v))
の偏微分につ いて,
次の式が成立する.
∂f
∂u = f x (x, y) g u (u, v) + f y (x, y) h u (u, v)
∂f
∂v = f x (x, y) g v (u, v) + f y (x, y) h v (u, v).
(3.4)
注意
3.5 (
線形代数の利用). (i) 2 × 2
行列(3.5) ∂(x, y)
∂(u, v) ≡
g u (u, v) h u (u, v) g v (u, v) h v (u, v)
37
を使うと
(3.4)
は行列の記法を使ってf u (u, v) f v (u, v)
= ∂(x, y)
∂(u, v)
f x (x, y) f y (x, y)
ただし
x = g(u, v), y = h(u, v)
である.
(ii) (3.5)
の行列を ヤコビ行列(
ヤコビアン, Jacobian)
と言い,
多変数関 数の積分で重要な役割を果たしている.
38
3.3 極座標
xy
平面上の 点P = (x, y)
にたいし,
原点O
からP
までの距離をr
直線
OP
とx
軸とのなす角(
反時計回りに計る)
をθ
とおく
.
この(r, θ)
を点P
の 極座標 という. 39
( ∗ )
極座標(r, θ)
と 通常の座標*2(x, y)
の関係は前の図から直ぐ判る: x = r cos θ, y = r sin θ.
もしくは
,
r =
x 2 + y 2 , tan θ = y x .
注意
3.6.
原点(0, 0)
の極座標 はr = 0
でθ
は不定である.
問題3.7. (i)
次の極座標を直交座標(x, y)
に変換せよ.
(a) (r, θ) = (1, π
4 ), (b) (r, θ) = (2, π
2 ), (c) (r, θ) = (1, π).
(ii)
次の直交座標を極座標(r, θ)
に変換せよ.
(a) (x, y) = (0, 2), (b) (x, y) = (1, 2), (c) (x, y) = ( − 1, − 1).
*2 直交座標と呼ぶ
.
( ∗ )
ある図形は極座標で簡明に表示できる.
例題
3.8.
極座標(r, θ)
で表示された次の関数の概形を書け.
(i) r = 1, (ii) r 2 (1 + sin 2 θ) = 1, (iii) r = 1 + cos θ, (iv) r = 1 + 2 cos θ, (v) r = sin θ, (vi) r = θ
[
解答]
1.0 0.5 0.5 1.0
1.0 0.5 0.5 1.0
1.0 0.5 0.5 1.0
0.6 0.4 0.2 0.2 0.4 0.6
図
3.1 (i)
円, (ii)
楕円41
0.5 1.0 1.5 2.0
1.0 0.5 0.5 1.0
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
1.5 1.0 0.5 0.5 1.0 1.5
0.4 0.2 0.2 0.4 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
2 2 4 6
4 3 2 1 1
図
3.2 (iii)
カ ー デ ィ オ イ ド(
心 臓 形), (iv)
カ ー デ ィ オ イ ド, (v)
円, (vi)
螺旋例題
3.9. (i)
直交座標(x, y) →
極座標(r, θ) x = r cos θ, y = r sin θ
の変数変換の ヤコビ行列を求めよ.
[
解答]
まず∂x
∂r = cos θ, ∂y
∂r = sin θ,
∂x
∂θ = − r sin θ, ∂y
∂θ = r cos θ,
だから, (3.5)
より∂(x, y)
∂(r, θ) =
cos θ sin θ
− r sin θ r cos θ
2
43
問題
3.10. (i)
直交座標(x, y) →
斜行座標(u, v)
(3.6) x = u + v, y = u − v
の変数変換の ヤコビ行列を求めよ
.
(ii) f (x, y) = x 2 + y 2 + e x y
2 とする.
座標変換(3.6)
にたいし,
∂f
∂u , ∂f
∂v
を求めよ.
[
解答]
まず∂x
∂u = 1, ∂y
∂u = 1,
∂x
∂v = 1, ∂y
∂v = − 1,
だから
,
∂(x, y)
∂(u, v) =
1 1 1 − 1
(ii)
まずf
の偏微分を計算する.
f x = 2x + y 2 e x y
2= (u + v) + (u − v) 2 e (u+v) (u−v)
2,
f y = 2y + 2x y e x y
2= 2(u − v) + 2(u + v) (u − v) e (u+v) (u−v)
2.
⎛
⎝ ∂f /∂u
∂f /∂v
⎞
⎠ =
1 1 1 − 1
· f x
f y
=
⎛
⎝ f x + f y f x − f y
⎞
⎠
=
⎛
⎝ 4u + (u − v) (3u + v) e (u+v) (u−v)
24v − (u − v) (u + 3v) e (u+v) (u−v)
2⎞
⎠ . 2
45
3.4 高階偏微分
1
変数の場合と同様,
偏微分でも“偏導関数の偏微分”を考えることが出 来る.
x→x lim
0f x (x, y 0 ) − f x (x 0 , y 0 )
x − x 0 = f xx (x 0 , y 0 ) (= ∂ 2 f
∂x 2 (x 0 , y 0 )
とも表示する).
(3.7)
これ以外にも
y→y lim
0f x (x 0 , y) − f x (x 0 , y 0 )
y − y 0 = f xy (x 0 , y 0 ), (= ∂ 2 f
∂x∂y (x 0 , y 0 )
とも表示する).
(3.8)
x→x lim
0f y (x, y 0 ) − f y (x 0 , y 0 )
x − x 0 = f yx (x 0 , y 0 ), (= ∂ 2 f
∂y∂x (x 0 , y 0 )
とも表示する).
(3.9)
y→y lim
0f y (x 0 , y) − f y (x 0 , y 0 )
y − y 0 = f yy (x 0 , y 0 ) (= ∂ 2 f
∂y 2 (x 0 , y 0 )
とも表示する).
(3.10)
などの“
2
階偏微分”および“2
階偏導関数”がある.
注意
3.11.
ここで(3.8)
と(3.9)
は偏微分の順序が異なるが,
適当な条件 の下では同じになる(
次の命題).
命題
3.12.
関数f
の偏導関数f xy (x, y) , (3.8)
とf yx (x, y) , (3.9)
が 領 域D
で共に存在し,
連続である.
このとき,
両者は一致する.
47
この議論を何度も繰り返すと 自然数
m, n
にたいし∂ m f
∂x m (x, y), ∂ n f
∂y n (x, y), ∂ m+n f
∂x m ∂y n (x, y)
という“高階偏微分と高階偏導関数”を考えることができる
.
さらに 命題3.12
と類似した結果が成立する.
4 テイラーの定理
1変数関数の場合と同様
, 2
変数関数にも テイラーの定理がある. 1
変数関数のテイラー展開関数
f
は 区間(a, b)
でn + 1
階まで微分可能をする.
点c, x ∈ (a, b)
にたいし,
次が成立:
ある点y
がありf ( x ) = f ( c ) + f
( c )
1! ( x − c ) + f
( c )
2! ( x − c )
2+ + · · · + f
(n)( c )
n ! ( x − c )
n+ R
n+1, (| y − c | < | x − c |
でありR
n+1≡ f
(n+1)( y )
( n + 1)! ( x − c )
n+1) . (4.1)
49
定理
4.1 (2
変数関数のテイラーの定理).
関数f (x, y)
はある領域D
で 定義され,
そこでn + 1
階までの偏導関数が存在している.
点P = (a, b) ∈ D
と数h, k
はB ε (P ) ⊂ D, ε ≡
h 2 + k 2
を満たしている
.
このとき,
ある0 < θ < 1
にたいし,
次の等式が成立 する:
f ( a + h, b + k ) = f ( a, b ) + X
n m=11 m !
“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
mf ( a, b ) + R
n+1, R
n+1≡ 1
( n + 1)!
“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
n+1f ( a + θh, b + θk ) .
ただし“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
mf ( a, b ) = X
m=0
m
C
h
m−k
∂
mf
∂x
m−∂y
( a, b )
[
証明] F ( t ) ≡ f ( a + ht, b + kt ) , 0 ≤ t ≤ 1 ,
とおく.
Step 1.
このF ( t )
に「(1
変数の)テイラーの定理」を適用.
ある0 < s < t
が あり,
F ( t ) = F (0) + F
(0)
1! t + · · · + F
(n)(0)
n ! t
n+ F
(n+1)( s ) ( n + 1)! t
n+1.
Step 2. q = 1 , 2 , · · ·
にたいし,
次が成立することを示せば,
定理4.1
の証明が終 わる.
(4.2) F
(q)( t ) = “ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
qf ( a + h t, b + k t ) .
(i)
まずq = 1
のとき 命題3.4
でx = a + h t, y = b + k t
とおき, ( x, y ) → t
への座標変換を行う.
51
F
( t ) = f
x( x, y ) h + f
y( x, y ) k ⇒ k = 1
とした(4.2)
が成立. (ii)
「q
のとき(4.2)
が成立するとしたら, q + 1
でも成立する」ことをいう.
F
(q+1)( t ) = “
F
(q)( t ) ”
= d dt
“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
qf ( a + ht, b + kt )
= d dt
X
q=0
q
C
h
−k
∂
qf
∂x
q−∂y
( a + ht, b + kt )
= X
q=0
q
C
h
q−k
∂
q∂x
q−∂y
d
dt f ( a + ht, b + kt )
= X
q=0
q
C
h
q−k
∂
q∂x
q−∂y
“
f
x( a + ht, b + kt ) h + f
y( a + ht, b + kt ) k ”
=
q+1
X
=0
q+1
C
h
q+1−k
∂
q+1f
∂x
q+1−∂y
( a + ht, b + kt ) = q + 1
の(4.2) . 2
4.1 極値
領域
D ⊂ R 2
で定義された関数f (x, y)
が 点P = (a, b)
で極大値をとる とは,
あるε > 0
がありf (a, b) ≥ f (x, y), (x, y) ∈ B ε (P ).
一方
,
点P = (a, b)
で極小値をとるとは,
あるε > 0
がありf (a, b) ≤ f (x, y), (x, y) ∈ B ε (P ).
注意
4.2.
イメージとしては立体地図を考えればよい.
関数f
の値は標高 だから,
極大値をとる 点P
は山頂になる.
53
-1 0
1 -1
0 1 0
0.25 0.5 0.75 1
-1 0
1
関数
f
は連続な2
階偏導関数を持つとし, 2 × 2
行列式*3を(4.3) H (x, y) ≡
f xx (x, y) f xy (x, y) f xy (x, y) f yy (x, y)
で定義する
.
*3 ヘッセの行列式 と呼ばれる
.
極値の判定
定理
4.3.
関数f (x, y)
はある領域D
で定義され,
そこで2
階まで の連続な偏導関数が存在している.
(i)
関数f
が 点P = (a, b) ∈ D
で極値をとるなら, (4.4) f x (a, b) = 0 f y (a, b) = 0.
(ii)
逆に,
関数f
はある 点P = (a, b)
で(5.1)
を満たしている. (a) H ( a, b ) > 0 , f
xx( a, b ) > 0
aなら, f
は 点P
で極小値をもつ. (b) H ( a, b ) > 0 , f
xx( a, b ) < 0
なら, f
は 点P
で極大値をもつ. (c) H ( a, b ) < 0
なら,
点P
はf
の極値ではない.
(d) H ( a, b ) = 0
なら,
これだけでは極値かどうか判定できない.
a
(a)
と(b)
で, f
xx( a, b )
をf
yy( a, b )
で代用してもよい.
55
5 極大と極小 5.1 極値の定義 2変数関数 f (x, y)
が
(i)
「点P = (a, b)
で極大」とは,
点P
の適当な近傍U
にたいし, f (P ) ≥ f (Q), Q ∈ U, Q = P.
(ii)
「点P = (a, b)
で極小」とは,
点P
の適当な近傍U
にたいし, f (P ) ≥ f (Q), Q ∈ U, Q = P.
56
図
5.1 1
変数関数の極大と極小(i)
極大と極小を併せて,
「極値」という. (ii)
応用上は,
極値を調べることが重要.
(iii)
極値は最大/
最小とは必ずしも一致しない.
cf.
図5.1
を見よ.
全区間( −∞ , ∞ )
では最大,
最小ともに存在し ない.
(iv)
ではどうやって極値を調べるのか? ⇒
微分/
偏微分. 57
2 1
0 1
2 2
1 0
1 2
0.0 0.5 1.0
2 1
0 1
2 2
1 0
1 2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8
図
5.2 2
変数関数の極大と極小定理
5.1.
関数f (x, y)
は2
階までの連続な偏導関数が存在している. (i)
関数f
が 点P = (a, b) ∈ D
で極値をとる. ⇒
(5.1) f x (a, b) = 0 f y (a, b) = 0.
(ii)
逆に,
関数f
がある 点P = (a, b)
で(5.1)
を満たしていると, P
で 極値を取る可能性がある.
問題
5.2. f (x, y) = 1 − 2x 2 − xy − y 2 + 2x − 3y
の極大,
極小を求めよ.
[
解答] Step 1. f
が(a, b)
で極値を持つと, (5.2) f x (a, b) = 0, f y (a, b) = 0
をみたす.
0 = f x (a, b) = − 4a − b + 2 0 = f y (a, b) = − a − 2b − 3 (5.3)
Step 2.
この(5.3)
をみたす(a, b)
を計算する. (a, b) = (1, − 2)
59
Step 3.
では「(a, b) = (1, − 2)
では極大/
極小のどちらを取るか」を判定せよ
.
[Step 3
の解答] f
の値を計算する. f (1, − 2) = 5
f (1.1, − 2) = 4.98, f (0.9, − 2) = 4.98, f (1, − 1.9) = 4.99, f (1, − 2.1) = 4.99, f (1.1, − 1.9) = 4.96, f (1.1, − 2.1) = 4.98, f (0.9, − 1.9) = 4.98, f (0.9, − 2.1) = 4.96
よって(a, b) = (1, − 2)
では極大値をとる.
( ∗ ) Step 3
の極大/
極小判定方法は煩雑.
⇒
もっと,
スマートな方法はないのか?
5.2 極値の判定
関数
f
は連続な2
階偏導関数を持つとし, 2 × 2
行列式*4をH (x, y) ≡
f xx (x, y) f xy (x, y) f xy (x, y) f yy (x, y)
= f xx (x, y) f yy (x, y) −
f xy (x, y) 2 . (5.4)
で定義する
.
定理
5.3 (
極大/
極小の判定).
関数f (x, y)
は2
階までの連続な偏導関数 が存在している.
関数
f
がある 点P = (a, b)
で(5.5) f x (a, b) = 0 f y (a, b) = 0.
を満たしている
.
*4 ヘッセの行列式 と呼ばれる
.
61
判定条件(ii-a) H (a, b) > 0 , f xx (a, b) > 0 .
a⇒ f
は 点P
で極小値をもつ. (ii-b) H (a, b) > 0 , f xx (a, b) < 0 . ⇒ f
は 点P
で極大値をもつ. (ii-c) H (a, b) < 0 . ⇒
点P
はf
の極値ではない.
(ii-d) H (a, b) = 0 . ⇒
これだけでは極値かどうか判定できない.
a
(ii-a)
と(ii-b)
では, f xx (a, b)
をf yy (a, b)
で代用してもよい.
5.3 極値判定の原理
2
変数関数のテイラー展開f ( a + h, b + k ) = f ( a, b ) + “
h f
x( a, b ) + k f
y( a, b ) ” + 1 2!
“
h
2f
xx( a, b ) + 2 h k f
xy( a, b ) + k
2f
yy( a, b ) ” + · · · + 1 n !
“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
nf ( a, b ) + R
n+1,
R
n+1≡ 1 ( n + 1)!
“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
n+1f ( a + θh, b + θk ) .
ただし“ h ∂
∂x + k ∂
∂y
”
nf ( a, b ) = X
n=0
k
C
h
n−k
∂
nf
∂x
n−∂y
( a, b )
63 (∗)
これが,
極値判定の原理となる定理.
⇒
では,
多変数関数のテイラー展開から「なぜ 定理5.3
の原理が導かれるのか」.
問題5.4.
次の不等式が,
任意のs
にたいし,
成立している.
係数A, B, C
の条件 を導け.
ただしA = 0
とする.
A s
2+ 2 B s + C > 0 . [
解答]
式変形.
0 < A s
2+ 2 B s + C = A `
s
2+ 2 B A s ´
+ C
= A `
s
2+ 2 B
A s + B
2A
2´ − B
2A + C
= A ` s + B
A
´
2+ A C − B
2A .
この不等式がすべての
s
で成立するには,
A > 0 , AC − B
2> 0 . 2
問題
5.5.
次の不等式が, ( s, t ) = (0 , 0)
を除く任意のs, t
にたいし,
成立してい る.
係数A, B, C
の条件を導け.
ただしA = 0
とする.
A s
2+ 2 B s t + C t
2> 0 . [
解答] s = 0 , t = 0
とする.
A s
2+ 2 B s t + C t
2> 0 .
の両辺をt
2> 0
で割る.
A ( s
t )
2+ 2 B s
t + C > 0 .
ここでu ≡ s/t
とおけば,
A u
2+ 2 B u + C > 0 .
「この不等式がすべての
u
で成立」は,
問題5.4
そのもの.
よって, A > 0 , AC − B
2> 0 .
65
であればよい
.
(∗)
極大/
極小の判定条件に戻る.
いま( a, b )
が極小点とする.
多変数関数のテイ ラー展開を使うと,
0 < f ( a + h, b + k ) − f ( a, b ) = “
h f
x( a, b ) + k f
y( a, b ) ” + 1 2!
“
h
2f
xx( a, b ) + 2 h k f
xy( a, b ) + k
2f
yy( a, b ) ” + · · ·
の不等式が,
微小で任意のh, k (| h | + | k | = 0)
にたいして成立している. (i)
まず 点( a, b )
は極小点なので,
(5.6) f
x( a, b ) = 0 , f
y( a, b ) = 0 .
(ii) (5.6)
より 多変数関数のテイラー展開は,
0 < f ( a + h, b + k ) − f ( a, b )
= 1 2!
“
h
2f
xx( a, b ) + 2 h k f
xy( a, b ) + k
2f
yy( a, b ) ” + · · ·
A = f
xx( a, b ) , B = f
xy( a, b ) , C = f
yy( a, b )
とおくと,
これは0 < 1
2!
“
A h
2+ 2 B h k + C
2k
2”
が「微小で任意の
h, k (| h | + | k | = 0)
」にたいして成立することである.
問題5.5
よりA > 0 , AC − B
2≥ 0
⇒ f
xx( a, b ) > 0 ,
H ( a, b ) ≡ f
xx( a, b ) · f
yy( a, b ) − `
f
xy( a, b ) ´
2> 0 . (5.6)
と併せて,
これが( a, b )
が極小である十分条件. 2
(∗)
極大の条件を調べる.
問題
5.6.
次の不等式が,
任意のs
にたいし,
成立している.
係数A, B, C
の条件 を導け.
ただしA = 0
とする.
A s
2+ 2 B s + C < 0 . 67
[
解答]
式変形.
0 ≥ A s
2+ 2 B s + C = A `
s
2+ 2 B A s ´
+ C
= A `
s
2+ 2 B
A s + B
2A
2´ − B
2A + C
= A ` s + B
A
´
2+ A C − B
2A .
この不等式がすべての
s
で成立するには,
A < 0 , AC − B
2> 0 . 2
→
今まで同じ議論で,
極大の判定条件が導かれる. f
xx( a, b ) < 0 ,
H ( a, b ) ≡ f
xx( a, b ) · f
yy( a, b ) − `
f
xy( a, b ) ´
2> 0 .
例題
5.7. f ( x, y ) = xy (1 − x
2− y
2)
の極値を求めよ.
[
解答] Step 1.
まずf
x( x, y ) = y (1 − y
2− 3 x
2) , f
y( x, y ) = x (1 − x
2− 3 y
2)
だから, f
x( x, y ) = 0 , f
y( x, y ) = 0
を同時に満たす点(0 , 0) , (±1 , 0) , (0 , ±1) , ( 1 2 , ± 1
2 ) , (− 1 2 , ± 1
2 )
という9
個の点が極値の候補である.
69
1
0
1
1 0
1 1
0 1
Step 2. f
xx( x, y ) = −6 xy = f
yy( x, y ), f
xy( x, y ) = 1 − 3 x
2− 3 y
2 だから, H ( x, y ) = 36 x
2y
2− (1 − 3 x
2− 3 y
2)
2である
.
f
xx( x, y ) H ( x, y )
(0 , 0) 0 −1
(±1 , 0) 0 −4
(0 , ±1) 0 −4
(1 / 2 , 1 / 2) −3 / 2 2 (1 / 2 , −1 / 2) 3 / 2 2 (−1 / 2 , 1 / 2) −3 / 2 2 (−1 / 2 , −1 / 2) 3 / 2 2
これより 4個の点
(1 / 2 . ± 1 / 2) , (±1 / 2 . 1 / 2)
だけでH > 0
となる.
結局
, f
は(1 / 2 , 1 / 2) , (−1 / 2 , −1 / 2)
で極大値, (1 / 2 , −1 / 2) , (−1 / 2 , 1 / 2)
で極小 値をとる.
71
問題
5.8.
次の関数の極値を調べよ.
(i) f ( x, y ) = x
2− xy + y
2− 4 x − y, (ii) f ( x, y ) = xy `
a − x − y ´ . (iii) f ( x, y ) = p
x
2+ y
2. [
解答] (i) (3 , 2)
で極小−7.
(ii) ( a/ 3 , a/ 3)
で極大a
3/ 27.
(iii) (0 . 0)
で極小値0. 2
6 最適化問題
6.1 線形最適化問題の例
例題
6.1 (
文章題の数式化).
ある工場で, 3
種類のネジA, B, C
を毎週決められ た数だけ作る.
そのネジの製作には, 3
台の旋盤1, 2, 3
を使う.
•
旋盤によって性能が異なるので,
ネジ製作の所要時間が異なる.
•
ネジを作るため1
分当たりのコストも旋盤によって異なる.
•
ネジの所用数量,
加工時間,
製造コストは次の表の通りである.
所要時間(
分)
旋盤1
旋盤2
旋盤3
ネジ
A (4000
個) 0.2 0.4 0.5
ネジ
B (9000
個) 0.1 0.3 0.5
ネジ
C (7000
個) 0.2 0.2 0.4
製造コスト
(
円/
分) 12 9 9
制限時間(
時間) 40 40 40
費用の総額を最小にするために,
解析する方程式を求めよ.
73
問題
6.1
解答 それぞれの旋盤で作るネジの個数をつぎのように置く.
(
所要時間)
旋盤1
旋盤2
旋盤3
ネジ
A (4000) a
1a
2a
3ネジ
B (9000) b
1b
2b
3ネジ
C (7000) c
1c
2c
3次に 製作するネジの個数は
,
a
1+ a
2+ a
3= 4000 , b
1+ b
2+ b
3= 9000 , c
1+ c
2+ c
3= 7000 . (6.1)
まず ネジの製作に要する時間を見る
.
旋盤
1
旋盤2
旋盤2
ネジA 0 . 2 · a
1 分0 . 4 · a
2 分0 . 5 · a
3 分 ネジB 0 . 1 · b
1 分0 . 3 · b
2 分0 . 5 · b
3 分 ネジC 0 . 2 · c
1 分0 . 2 · c
2 分0 . 4 · c
3 分75
よって
旋盤
1
の使用時間T
1= 0 . 2 · a
1+ 0 . 4 · a
2+ 0 . 5 · a
3≤ 40 × 60 ,
旋盤2
の使用時間T
2= 0 . 1 · b
1+ 0 . 3 · b
2+ 0 . 5 · b
3≤ 40 × 60 ,
旋盤3
の使用時間T
3= 0 . 2 · c
1+ 0 . 2 · c
2+ 0 . 4 · c
3≤ 40 × 60 . (6.2)
製造コストを最小にするので
,
方程式(6.1) + (6.2)
を満たす下で,
min n
12 T
1+ 9 T
2+ 9 T
3o
= min n
0 . 2 · a
1+ 0 . 4 · a
2+ 0 . 5 · a
3+ 0 . 1 · b
1+0 . 3 · b
2+ 0 . 5 · b
3+ 0 . 2 · c
1+ 0 . 2 · c
2+ 0 . 4 · c
3o
2
問題
6.2 (2008
年 公務員一級教養, No 17).
ある工場で2
種類の製品A, B
が 製造されており,
製品1
個当たりの人件費,
原料費並びに製品を出荷する際の製品 単価がそれぞれ表の通りである.
人件費の上限は130
万円,
原料費の上限は220
万円であるとき,
製品A, B
の出荷額の合計の最大値はいくらか.
(
単位:
万円)
人件費 原料費 製品単価 製品A 3 4 12
製品B 2 5 10
77
[
問題6.2
解答]
製品A, B
の出荷量をそれぞれx, y
とする.
上限は130
万円,
原料費の上限は220
万円なので,
3 x + 2 y ≤ 130 , (6.3)
4 x + 5 y ≤ 220 , (6.4)
x ≥ 0 , y ≥ 0 (6.5)
の範囲で
12 x + 10 y = c
をである
c
を最大にすればよい.
図
6.1
青い部分が(6.3), (6.4), (6.5)
を満たす領域3 x + 2 y = 130
と4 x + 5 y = 220
の交点は, (30 , 20).
よってc = 12 · 30 + 10 · 20 = 560 . 2
79
6.2 一般の – 等式制約条件付き最適化問題
前節ので論じた“多変数関数の極大
/
極小”より難しい問題を論ずる.
等式制約条件付き最適化問題問題
6.3.
二つの滑らかな関数(6.6) f ( x, y ) : R
2→ R
1, g ( x, y ) : R
2→ R
1 と 実数b
が与えられている.
このとき(6.7) max
(x,y)
f ( x, y ) subjects to g ( x, y ) = b
の値