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Title
有明海産コイチの初期生活史に関する研究
Author(s)
田北, 徹
Citation
長崎大学水産学部研究報告, v.38, pp.1-55; 1974
Issue Date
1974-12
URL
http://hdl.handle.net/10069/30797
Right
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
有 明 海産 コイ チ の初 期 生 活 史
に関 す る研 究
田
北
徹
Studies on the Early Life History of Nibea albiflora
(Richardson)
in Ariake Sound
Toru TAKITA
目
次
I.緒言 II.有 明海 に お け る コイ チ の 生息 環境 2 III.成魚 の形 態 と分布 3 1形態 5 2.分 布 5 1)コ イ チ の 分 布 7 2)シ ロ グチ の分 布 との比較 7 IV.産卵 11 1.産 卵 場 12 2.産 卵 期 12 3.産 研1時 亥IJ 13 V.卵 内発生 と初期成長 15 1.卵 と卵 内 発 生 15 1)卵 15 2)卵 内発 生 15 2.仔 稚 魚 の形 態 17 1)ふ 化 仔 魚 19 2)後 期 仔 魚 と稚 魚 19 3)糠 と消 化 管 の発 達 20 4)シ ロ グチ の仔 稚 魚 との 比較 24 3.初 期 成 育 期 の相 対 成 長 24 4.成 長 28 33VI・卵,仔稚魚と若魚の生態………・・……・…・… ……・……・ ・… ・33 1.分布………・・…・………・・…・…………・…・・… 1)卵分布………・…・・………・………・…・…____ 2)仔稚魚の分布………’.’………’…”……… 3)稚魚と懸魚の分布…………・・……・………・・… 4)初期成育期の分布環境………’”……… 2.食性………・・……・………・・t………一一・一・■一・ ・・ W・初期生活史における形態と生態との関係………●・ 珊・要約………・………・…………・…・…・・………・・…… IX・文献………・・…・………・・…・…・・ SUMMARY............................................,.................. ’”””””””H”一’”…’”””’一’””・一一・・一 R3 一一・一・・一・一 33 ’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’”・・・・・・・・・・…
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.,M.....””.…”.Hm.”..・・一・一・…@一一一・一・49 ・521 緒
言 コイチNi bea albi∫lora(Richardson)は全長約50cmに達する二べ科Sciaenidaeの魚で(Fig 1), わが国沿岸,朝鮮半島南西海域,黄海および東・南シナ海3)に分布するが,分布の中心は大陸沿岸とみられ, ここで特に多く漁獲されている。わが国沿岸では山陰地方27),九州西海域23),有明海52),土佐沖30) および瀬戸内海15)で分布が記録されており,さらに利根川下流の感潮域38)でも確認されていることから, 本州中部の太平洋側沿岸にも分布するとみられる。これらのうち,九州西岸に位置する有明海には本種が比 較的多く分布しており,高級な鮮魚として取り扱われるので,湾内の漁業の主要な対象の1つとなっている。 Fig. 1 M ature male and female of Nibea albzflora. Upper, male, 282 mm; lower, female, 290 mm in total length. 本種に関する研究は,上述 の分布に関するもの以外には, 成魚の形態に関するもの2・29), 卵とふ化仔魚の形態に関する もの35)があるに過ぎない。 また,わが国とその隣接海域 におけるニベ科魚類の生物学 的な研究については,シログチ Aτ9フノγoso m鴛s argentatus ( Houttuyn )9・25・26・32,43,49), クロゲチA.nibe(Jordan &Thompson)21・22・45),キ ンゲチPseudosciaena man− churica(Jordan & Thornp一 ・・n)11・31?ホンニベM伽・乃ツs 山回・ぬ・(M。t、ub。,a)6・7・33) などについて資源生物学的な立場から成長,成熟分布などに関する多くの研究が行なわれているが,仔稚魚については・形態はキング チ53),シログチ5),フウセイPseudosciαena croceα(Richardson)48)分布については前2者24’44)が部分 的に明らかにされているに過ぎない。北大西洋西岸に分布するニベ科魚類については,米国で仔稚魚の形態 と分布に関する多くの研究4・8・10・39・40・41・51・)が報告されている。 本研究は,コイチが多く分布し,各成育期の資料が比較的得やすい有明海において,コイチの初期生活史 を形態,生態および両者の関係をもとに明らかにすることを目的として行なった。 本文に入るに先立ち,この研究の指導と原稿の校閲を頂いた九州大学の塚原博教授,原稿の校閲と研究内 容の懇篤なる検討を頂いた九州大学の内田照章教授と元同大学教授の花岡資博士に厚く御礼申し上げる。ま た多くの助言を頂いた九州大学の内田恵太郎名誉教授,長崎大学の田村修教授と道津喜衛教授および元九州 大学助手の水戸敏博士に感謝の意を表する。さらに,東シナ海産ニベ類については西海区水産研究所の真子 砂博士,有明海の海況については長崎海洋気象台の松崎正夫氏,資料収集の便宜については長崎大学の山田 鉄雄名誉教授,漁獲統計について は農政局福岡統計調査事務所の方 々にお世話頂いたことについて深 く感謝する。また標本の採集に際 し,長崎大学の夏苅豊助手,水産 学部の学生諸氏および実習船“鶴 水”の道脇稔船長と乗組員の方々 に手伝って頂き,福岡県大和町中 島漁協,柳川市沖の端漁協,佐賀 県有明町龍壬漁協,太良町大浦漁 協,熊本県河内芳野村漁協,長崎 県有明町湯江漁協,深江町漁協, 布津:村漁協の方々に種々の調査に ついての御便宜を頂いたので感謝 の意を表する。
II 有明海におけるコイ
りしハやチの生息環境
この研究の主題に入る前に,;・ イチの生息環境としての有明海の 地形的,海洋学的な特徴を概説す る。有明海は九州西岸に位置し, 福岡,佐賀,熊本,長崎の4県に囲まれた広さ約1700㎡の内湾で
(Fig 2),島原海湾とも呼ばれ る。この湾は長崎県島原半島南端 と熊本県天草とを結ぶ巾約4・5即 の湾口によって外海と連絡し,和 郎は福岡県と佐賀県に深く湾入し ている。湾奥部水域は特に有明海 または前の海といい,その南西の 長崎県側に諫早湾または泉水海と 呼ばれる湾入部を有している。こ 130010’ Saga Pref. R.2 33010t R5PL2
R.5 PI.5 1500sotl
R・J.!一 Fukuoka Pref.a一
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PL7
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Pref. Pl.8 Pl.10 PL 1 R4 N rSIN’,i l,L]),>iク群’KYUSHU
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PI.6PH5陀。
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R.6 Pl,9 R.7Kumamoto
Pl.ll Pref.Yatsushiro
Sound
20 km Fig. 2 Map of Ariake Sound. Pl. 1, Yanagawa; Pl. 2, Kashima; PL 3, Omuta; Pl. 4, Tara; Pl. 5, lsahaya; Pl. 6, Nagasu; Pl. 7, Ariake; Pl. 8, Shimabara; Pl. 9, Kawachi− Yoshino; Pl. 10, Fukae; Pl, 11, Misumi; Pl. 12, Yushima; Pl. 13, Kuchinotsu; Pl. 14, Oniike. R1, Chikugo River; R.2, Rokkaku River; R. 3, Shiota River; R. 4, Yabe River; R. 5, Honmyo River; R. 6, Kikuchi River; R 7, Midori River.こでは,湾口部の長崎県口の津:と熊本県翁町を結ぶ線以内の海域を有明海として取り扱った。 この湾に注ぐ主な河川としては福岡県の筑後川と矢部川,佐賀県の嘉瀬川,長崎県の本明川,熊本県の菊 池川と緑川などがあり,前の海奥部,諫早湾奥部と湾中央部の東側に多く注いでいる。しかし,前の海と諫 早湾の奥部を除く有明海の西岸および湾口部では山地が海岸近くまで迫り,大きな流入河川はない。 有明海の水深はFig.3に示したとおり,地域的な変化が大きい。すなわち,湾口部から中央部に湾内では 比較的深い水深30m以上の海底地形が形成され,一部ではその深さは100 m以上に達する。この深い地形は 湾中央部では西岸に片寄っているので,西岸の水深変化は比較的大きいのに対し,前の海,諌早湾および湾 中央部東側へ向かう水深変化は小さく,これらの水域には水深10m以浅の浅海が広く発達している。また, これらの水域の沿岸には,大きな潮位差と相まって干潮時に河口を中心に広大な干潟が形成される。このよ うな浅海と干潟は前の海と諌早湾で特に大規模に発達しており,湾中央部東側では海底の傾斜は湾奥部にく らべてやや大きい。 底質については湾口部は礫から粗粒の砂,中央部西側の深い水域は粗粒の砂であるカ㍉中央部東側と湾奥’ 部の底質は泥と細砂である20)。特に湾奥部河口附近には浮泥が深く堆積し,やわらかく,動きやすい泥 質の潮間帯を形成している。 有明海の塩素量と水温の分布については,長崎海洋気象台の1949ff 2,5,8,10月の観測資料17)によ り,その地域変化をFig.4,5に示した。この湾は狭い湾口で外海と接し,湾奥部と中央部東側に河川が多い ことから,湾口部から中央部西側で外海水の影響が強く,塩素量が多いが,湾善部と中央部東側に向かうに つれて陸水の影響が強くなり,塩素量は少な Kashima
Y
10 Shimabara 50渉
YanagawaOmuta
50 30総・b
lo Misumi20km
Fig. 3 Characteristic features of Ariake Sound basins, showing areas enclosed by isobath lines, 10m, 30m, and 50m くなる。また,湾口から下灘部と中央部東側 に向かうにしたがって浅くなることから,水 温は冬は湾口部の方が高く,夏は湾下部と中 央部東側の方が高い。 潮汐については,潮位差は奥耳ほど大きく, 湾興部沿岸で最大5m,湾口部で3mである が,流速は湾口に近いほど速く,湾口部で4 ∼5ノット,中央部で2∼3ノット,湾市部 で1ノ,ット前後である。Fig 6に1948年8月 置小潮時(月令7∼9)に長崎海洋気象台が 湾面部の1点で観測した流蝋と流速の時刻に よる変化18)を示した。これによれば上げ 潮時には奥部へ,下げ潮時には沖へ向かう交 互の反復がくり返されている。また潮流のほ かに湾内をゆるく環流する定常流もあると言 われている。 透明度は湾口に近いほど高く,湾口では10 m前後であるが,湾中央部西側では3∼4m, 湾奥部と中央部東側の浅海では1∼2mであ る。さらに河口附近を中心とする湾奥部沿岸 では海水は浮泥によって褐色ににごり,透明 度は極めて低い。 プランクトンの分布については,海洋気象 台の1937年10∼11月の観測結果19)によれば 植物プランクトンには水域による一定の傾向 は認められないが,動物プランクトンの大多数を占める韻脚類の分布には,後で述べると おり,湾口部と中央部西側に少なく,湾奥部 に多い傾向がある。 エビ類(Macrura)の分布については,種 組成に湾内でかなりの地域変化があるとされ ており14),二三部ではアキアミ A tie tes juPonicus Kishinouye,シバエビOMet a一 ♪enaeus joyneri (Miers),シラタエビ Palaemon orientis Holthuisが多く分布 するが,同じ浅海である中央部東側ではサル エビTrαchy♪enαeus curvirostris Stimp− son,アカエビMetaカeneo♪sis bαrうatα (De Haan>クルマエビPenαeusブα♪oη一 icus Bateなどのいくぶん外洋的な種類が優 溢する。また湾中央部西側の深い水域でもこ れらの外洋的なエビ類が主に分布するが,種 類数が豊富な点でも湾奥部と異なっている。 湾口部については充分な研究が行なわれてい ないが.イセエビ1)a7ZZtliTus ブαカonicus ( C) (%o) 18.0 .・za一一 三17.0さ 宏
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16.0 』、 、、 \、Max. ’\ 、、、一\ 、 、 MaX.\\ \ 、、意、 \\ \ Mean、、●、 \ 、、 Mean \ \ \ 、 ・ 、 『 \ へ Min. 、、\ \、 \、、、 、 Min. 15. OO 20 40 60’ 80
Distance from the mouth of the sound (km) Fig・ 4 Regional changes of chlorinity in Ariake Sound observed by Nagasaki Marine Observatory in 1949. Solid lines, surface; broken lines, bottom. 口9bpOH おO日杣Φ口口一Φ帽︸OΦ﹂O調の瀦廿OZl−1一 2so 200 む 5 1 雲ε讐Φα8Φ一−お捕 loe August ,ノ ,ノ” ’ ’噛一一一噛一一一一 ノ NN:NL N NN
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Distance from the mouth of the sound (km) ¢2bDΦ旨 窃08δ¢口一ωぷ担︸oω﹄o沼の∬↑﹂oZ Fig・ 5 Regional changes of water−tempera− ture in Ariake Sound observed by Nagasaki Marine Observatory in 1949. Solid lines, surface;broken lines, bottom (V.siebold)、もわずかに分布するとされて おり,より外洋的な分布相を示している。 この湾には数種類の特産魚が分布し52), その湾内における分布についてはまだ明らか にされていない点が多いが,平平部と湾中央部 東側,特に前者に多く,外海の影響の強い水 域には分布しない。 以上に述べたとおり,湾内では水理的,生 物的に大きな地域変化が認められるが,この 変化に基づいで湾内をFig.7に示す4水域に 区分し,各々,湾奥部(A),湾中央部東 (B),湾中央部西(C),湾口部(D) とし,また2つの門門部は前の海(AM), 諌早湾(AI)とした。これらのうちTAとCおよびBとCとの境界は20n1等深線にほ
ぼ一致し,CとDとの間には海洋学的な諸条 件と底質に比較的大きな変化がある。以下に 述べるコイチの各成育期の分布はこの区分に 基づいて検討した。 III 成魚の形態と分布 1 形 態 わが国近海には数種類の二べ科魚類が分布 するが,形態的にコイチによく似たものにニベN p.m. 0 3 N
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1 \1 \
》 ㌧ 60cm/sec. NiiNxiK 6 呆、 ’い、 “X Ntst 9 p.m. o 、ゆ Fig. 6 Changes of direction and speed of tidal current with the lapse of time at a station in the innermost region of the sound, observed by N agasaki Marine Observatory in 1948. Solid lines, layer of 10 m from the surface; broken lines, layer of 3. m from the surface. Ni beα而亡s漉副ゼ(Jordan & Snyder)がある。これは 長崎30)と熊本県天草23)で採 集が記録されているので.有明 海附近にも分布するとみられる が,その漁獲記録はほとんどな く,その分布量は非常に少ない と考えられる。農林統計によれ へ ば,有明海ではコイチのほかに シログチ,キグチ,ニベとクロ グチの漁獲が記録されているが, キグチとニベはコイチの地方名 が記録されたものであろう。シ ログチは湾内で多門されるが, クログチの分布については筆者 はまだ確認しておらず,稀に湾 内に迷い込むことがあるのかも しれない。 コイチの形態については,朝 ・鮮半島沿岸産のものによって詳 しく記載されている29)が,有明海産コイチの形態を検討するため・1962年に湾奥部で漁獲iされた個体を用 いて各形質の測定を行ない,また,これとの比較,検討のため,1960∼ノ62年ど66年に東シナ海で漁獲され 40寂
V 20 −op 唱 : 奪。駁 i一 40E
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Fig. 7 Divisions of sea area ac− cording to me−teorological conditions. Fig. 3.0 3.4 3.8 4.2 ∼ ∼ l l 3.1 3.5 3.9 4.3 1nterorbital length in head length 8 Comparison of interorbital iength−head length ratio be− tween fishes from Ariake Sound(A)and ones from East China Sea(B).たコイチの測定を行ない,有明海産をTable 1に,東 一シナ海産をTable 2に示した。両者の比較の結果,眼 下の相対値を除いて有明海産と東シナ海産との間に差 異は認められなかった。下闇については264尾の有明 海産コイチと87尾の東シナ海産コイチを測定し,その 頭長に対する比をヒストグラムによってFig.8に示し た。この値はコイチの特徴の1つとされている29)が, 有明海産コイチは東シナ海産のものよりやや大きい。 ニベ科魚類は一般に発音の習性を持ち,有明海産コ ィチも漁獲時によくなく,この機構については,魚票, 腹腔壁筋肉と腱の作用による3・ca)とされているが, 有明海産コイチにもこれらの器官があり,体長217㎜ の雌成魚の腹部横断面によってこれらの器官の配置を Fig.9に示した。東シナ海産クbグチでは腹腔壁筋肉 が雄だけにみられ,雄だけがなくと考えられる(西海区水 産研究所・真子澗専売による)。また米国の淡水産二べ科 魚類Aplodinotus grunniens Rafinesqueも成熟した 雄だけがなく姻とされている。有明海産コイチも腹腔壁 筋肉は明らかに雄の方が大きいが,雌雄ともにほぼ周年 にわたってなき・雌雄の鳴音は人の耳では区別出来ない。 Fig. 10 Dorsaj view of air−bladder of N. albz7Zora.
醐灘
灘膿麟・
Fig・ 9 Cross−section of the abult of AI albi ora(female, 217mm in body length), showing sound producing apparatus in body cavlty. bl, air−bladder; mu, sound producing muscle; te, tendon; ki,kidney; li, liver. ニベ科魚類の鯉は種類によって形態が 顕著に変化し,重要な形態的特徴と考え られている。有明海産コイチの鯨の背面 図をFig. 10に示した。この籐は背側面に 1列ずつの樹枝状突起を持ち,前端の2 突起は特に大きい。また突起は前方ほど 多く枝分かれし,後端の数本は全く枝分 かれしていない。この形態は東シナ海産 コイチの魚票3)にほぼ等しい。 2 分 布 1) コイチの分布 コイチは周年にわたって有明海内に生息し,分布域は季節的に変化するが,常にどこかで漁獲されている。 一方,有明海の湾口に接する千石々湾でも漁獲されるが,その量は非常に少ない。また東シナ海にも分布す るが,先に述べたとおり,形態に若干の差異が認められる。これらの点から有明海のコイチはほとんど当湾 内だけに分布し,全生活史を湾内で送ると考えられる。コイチは有明海のほぼ全域で漁獲され,沿岸各地で アカゲチ,キングチ,ニベなどと呼ばれており,主要な漁獲対象魚の1つとなっている。本編の主な漁法は 湾奥部では竹羽瀬(潮流を利用した小型定置網),刺網,延縄,湾中央部東では桝網,刺網,湾中央部西で はあんこう網,刺網,湾口部では一本釣などである。 コイチは通常,農林統計の銘柄に含まれていないが,本種を重要な漁獲物とする有明海では年と地域によ って漁獲量が記録されている場合があり,これを用いて漁獲量の地域と季節による変化を検討した。Table 3 に1953∼’58年の有明海の周囲4県,5県区においるコイチの漁獲量を示した。この資料では1956年以後の 佐賀と1957年以後の長崎が空欄になっているが,両海区における漁業の実態からみて,この期間は漁礎がな かったのではなく,記録がなされなかったものと思われる。この表によれば,福岡と佐賀(前の海)におい て特に漁獲が多く,熊本(湾中央部東)がそれにつぎ,長崎(湾中央部西と諫早湾)と熊本天草(湾口部)員ζ ﹃¢ω ゴの .oりΦ罵。の ︻dg嘱℃5掴bρ自。[ 駒○ ﹄①£8訂7︹ ,のΦ罵ooり R 緯Φ讃邸縞一瓢bD 舶。旨㊤﹄霞づZ傷餌O . ⋮のあd﹄ ﹃hOち①q ︸oおの日づZ.ωあd﹄氏 おあd﹄ 自娼 冠g◎5︸o臼ΦρdqgZ6眺d﹄、< お眺雪q頓冠ω﹄oで︸o ﹄Φ﹄臼コZ .ω﹄“﹄ O 田上伺切q①︷ ①q昼の. ℃藏σq 、日のく 冒ω湿而﹄ =嘱bD窃Φbρgo悶︸0 4りbρ自Φρ.ρ餌〇 一﹄一㏄¢ω︻ 冠一口のHoH3自一.のoH ﹃①θ①門qd唄℃Φ臥ω、Qω 伊﹄ρbβ自Φ一一コ。¢の m自姻冠の縞。で︸o q矯℃oo一 Ω饗 一50自ω痢。 諏りbDqΦ、一.山︵[一の ロ﹄凱岩嘱ω﹄あ℃oQり、=Qり mぷ日賦qω一 ℃oΦ霞.ρ笛 X目口︶ ﹄ρbp¢Φ一﹄℃oρコ.日ρq
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Region
Year
Fukuoka
Saga Nagasaki
Kumamoto
Amaku
1953 20,670 93,563 20,069 19,166 2,302 1954 87,480 73,410 308 11,415 2,579 1955 74,805 180,019 23 21,158 71 1956 9,234 一 169 25,088 2,533 1957 150,578 17,704 3,464 1958 130,678 一 一 4,599 5,424 Sum. 155,770 175, 192 276,076 では少ない・次に漁獲量の季節変化をみるため,漁獲量が多く,資料も整っている福岡海区について1965∼ ’68年の平均月別漁獲量をFig・11に示した。これによれば,湾三部におけるコイチの漁期は3∼12,月,盛 漁期は5∼9月である。 さらに地域別の漁獲状況について漁船便乗による観 察と漁業者からの聞き取りから次のような知見が得ら れた。湾口部の湯島では12∼1月に一本釣によってコ イチが多獲される。湾中央部西(水深20∼30m)では 島原半島から出漁する一本釣,かご漁業,刺網などに よって4月のごく短い期間だけにコイチが漁獲される。 これらの漁業基地の1つ,長崎県深江町漁協の水揚げ 台帖によれば,1967年から3年間に,1日に10kg以上 の漁獲があったのは各氏2∼5日間で,その間の漁獲 量の合計は100∼200kgである。この時期の刺網によ る漁獲に際し,漁船による漁獲率の変動が特に顕著に あらわれると言われている。湾中央部西と湾奥部との 中間位置にある佐賀県太良町では例年4∼6月に地先 の桝網によってコイチが漁獲されるが,この期間のう ち初めの2∼7日間に豊漁があり,やや未熟な個体が 三二されるが,その後,いくぶん少ない漁獲が長く続 き,その期間に成熟魚が漁獲される。湾奥部で漁獲が 増大するのは太良町における豊漁期より約半月あとで ある。湾奥部の延縄漁業者によれば,コイチ漁は春に水 深のやや大きい西側から始まり,次第に湾奥部の水深 2∼5mの水域全体に及ぶ。湾中央部東の漁場の環境 と漁獲状況は湾三部に類似するが,漁場は湾奥部より 狭い沿岸水域に限られている。 loo ︵200一︾ 一〇 二〇もO ‘OΦΣ D N O S A Jh闘 蓄
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A M F J Fig. 11 Monthly mean catches. of IV. albzveora from the regionof Fukuoka Prefecture in
Ariake Sound from 1965 to 1968. 湾奥部における漁獲量の季節変化と上述の漁獲状況とを総合すると,有明海のコイチは5∼9月に主に湾 奥部の水深2∼5m(最低潮時)の浅海に分布するが,10∼12月に次第に深みへ移動し始め,冬季は主に 湾中央部の南部から湾口部に分布する。春の浅所への移動は通常,4月に密集した群を形成してかなり速い 速度で行なわれる。また春の移動に際し,湾中央部西をかなり短い期間に通り過ぎた魚群は照準部に近づく につれ,一部を各水域の産卵群として残しつつ,さらに湾奥へ移動し,産卵期には湾奥部の各沿岸に成魚が 分布すると考えられる。湾中央部東の浅海にも湾師部とほぼ同じ時期にコイチが分布するが,この水域は水 深とそれにともなう海洋条件の変化が湾奥部よりやや急であり,コイチの生息域も沿岸の狭い範囲に限られ, 分布量も少ないと考えられる。2) シログチの分布との比較
有明海にはコイチに近縁なシログチも生息しているので,シログチの分布についても調べ,両種の分布を 比較した。まず,湾内における分布の地域変化については1953∼’58年の地域別漁獲量をTable 4に示した。
Table 4. Catches of Argyosomus aTgentatus in Ariake Sound (kg ). Rεgion
Year
Fukuoka
Saga NagasakiKumamoto
Amakusa
Sum.1953 64,195 4,013 76,880 15,200 9,826 170,114 1954 8,251 24,474 75,700 24,822 8,303 141,550 1955 4,102 27,984 141,932 23,563 9,394 206,975 1956 24,435 115,148 11,254 6,039 156,876 1957 4,227 46,380 175,922 30,043 2,768 259,340 ・1958 105 3,166 121,522 50,336 14,172 189,301 これによればシログチは長崎で特に多く,佐賀と熊本がそれにつぎ,福岡と熊本天草は少ない。長崎は湾内 で特に深い外洋的な水域であるのに対し,福岡は特に浅い湾奥部浅海に当たり,佐賀と熊本には福岡にくら べていくぶん深い水域も含まれている。したがって湾奥部から中央部ではシログチはいくぶん深い外洋的な 水域に分布する。最も外海に近い熊本天草でシログチの漁獲量が少ないのは,底質が礫で,海底地形に変化 が大きく,曳網漁業が発達していないことによると思われる。 シログチの分布の季節変化については,Table 4と同じ資料から・長崎における月別漁獲量をコイチにつ いて示したもの(Fig.11)と同じ方法で求め,Fig、ユ2に示した。これによればシログチは冬季にも少し漁 ioo ︵200二 10 ‘OもO =OΦΣ o
JFMAMJJASOND
Month Fig. 12 Monthly mean catches of A. argenimzts from the region of Nagasaki Prefecture in Ariake Sound from !953 t o 1958. Fig. 13 Stations (marked by circle) where mature females having ripe ovarian eggs were caught in the fishing area in the spawning season (shaded area).。 (2e.e) / /ぺb ,f!伽
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Fig. 14 Water−temperature (OC) distribution i n Ariake Sound in the spawning season observed by Nagasaki Marine Observatory in May and August, 1949. Solid lines, bottom; broken lines, surface. 獲されるが,全体的な 変化傾向は湾両部にお けるコイチの変化傾向 に類似する。また湾内 の他の水域にも長崎に おける傾向に類似した 季節変化がある。以上 のような地域と季節に よる変化からみると, シログチは周年湾内に 分布するが,冬は湾口 部附近を中心に分布し て湾内の分布量は少な く,春から秋は湾中央 部を中心に湾内に広く 分布し,湾内の分布量: は多くなる。このよう にシログチにもコイチ と同様の季節移動がみ られるが,コイチにく らべ,より沖合に分布 する違いがある。N 月
垣 日 1 産 卵 場 湾奥部から中央部へ かけて産卵期に本種の 成魚が分布する範囲と 完熟雌魚が漁獲された 場所をFig.13に示した・ これによれば,完熟雌 魚は湾奥部と中央部東 の沿岸浅海で漁獲され, 中央部西では漁獲され ない。特に湾一部沿岸 では多くの完熟雌魚が 漁獲される。したがっ て本種の産卵は春から 秋の主な分布域で行な われ,湾奥部沿岸が主 な産卵域と考えられる。 産卵域の環境条件に 。/∠つミ
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Fig. 15 Chlorinity(o/,,) distribution in Ariake Sound in the spawning season observed by Nagasake Marine Ob− servatory in May and August, 1949. Solid lines, bottom; broken lines, surface.ついては,1949年の長崎海洋築象台による有明海海洋 観測資料17)から,産卵の始期(5月)と終期(8月) における水温と塩素量の分布をFig.14とFig15に示し た。この図によれば,産卵域における水温は5月は18 ∼20℃,8月は25∼28℃,また佐賀県水産試験場によ る観測資料42)によれば,完熟雌魚が多く漁獲された漁 場の過去19年問の平均水温は5∼8月は19∼29℃・産 卵盛期の5,6月は19∼23℃である。塩素量について は,産卵域に17.5%・以下の低濃度海水が分布しており・ 湾奥へ向かうにしたがって低くなる傾向にある。しか し,河口域と河口沖の干潟域にも高潮時の底層には15 ∼17%・の海水が分布している場合が多く,後に示すと おり(Table 8》産卵域に受精に不適当なほどの低濃 度の海水が分布する機会は多くないと思われる・ 2 産 卵 期 コイチの産卵域については,湾三部で漁獲された成 魚の生殖腺重量指数の月変化をFig.16に示した。これ によれば,本種の産卵盛期は5,6,月と推定される。 また4月中旬まで完熟個体がみられないことから,産
50
25 0 5 ×Φでεηo‘OOo
Femqle MaleM A M J J A S O N
Month Fig. 16 Monthly changes of gonad index (GW× 104/ BL3 ). Table 5. Relation between fertility of ovarian eggs and the time of insemination.Date Ti rne Body lenth
盾?@female Fertlity May 17 7:00p.m.
240㎜
90.4% ﹂ 310 96.7 May 19 8:20 229 47.1 247 76.2 June 2 9:00 183 17.8 May 20 9:50 242 88.2 10:40 261 0.3 May 23 0:30a.m. 238 41.7 278 σ May 24 1:45 230 5.9 2150 291 21.5 May 11 3:00 239 0 187 0 May 12 3:30 222 0 May 14 5:00 215 0Table 6. A dvance of developinent observed on the percentage of egg number..in’each stage. . May 21 ”” 22, 1969 floating eggs of N. albiflbra. Figures show Ti me De▽elopmental stages of floati.ng eg9 1 H 皿 】V V
M
w
.v皿 3:30p.血. 28 6 67 4:30 38 18. 29 16 5:30(10w tide) 7 85 7 6:30 73 9 18 7:30 42 32 25 8:.30 2 86 2 11. 9:30 20 64 7 1 6 2 10:30 10 82 4 4 11:30 72 18 4 6 0:30a.m. 17 67 17 (high tide) 1:30 35 55 10 2:30 5 88 5 2 3:30 96. 2 2. 4:30 .67 31 2 5:30 46 54耀 June 9一“10, 1967 Tim∋ 1 H田∼Iv
V
M
w
w
5:00P現, 100 6:00 33 67 7:00 68 32 8:00 90 、10 9:00 95 5 10:30(hig与ti“・) 94 6 11:00 0:00 a.m. 2:00 3:00.70
[﹂−りOQゾ7−2
907.3
りσ727f
4 1 The stage previous to cell division; II Up to post morula stage; III BIastula stage; IV Gastrula stage,embryo being not formed; V The stage after embryo formation and before closure of blastopore; VI The s’ 狽≠№?@after closure of blastopore and before formation oftail on embryo; VII The stage the length of tail being no longer than the rest of embr・yo; VIII Up to hatching.卵は4月下旬または5月上旬から始まり,上記指数のカ\なり大きい個体が8月目で漁獲iされ,9月に小型の 稚魚が多数出現することから,産卵は8月まで行なわれると考えられる。
3 産卵時刻
産卵期に直話部で漁獲されるコイチの雌魚には卵巣卵熟度の時刻による変化がみられ,透明卵を持つ個体 は午後3時から午前5時までに現われる。この卵の受精能力は産卵時刻に最も高いとみて受精率の時刻によ る変化を次の要領で実験し,結果をTable 5に示した。すなわち,佐賀県太良町地先の桝網は夜間の一定潮 時に揚網され,午後7時から午前5時までの各時刻にコイチ成魚が漁獲されるので,漁獲直後の個体を用い て人工受精を行ない,受精率の変化を調べた。媒精には漁場の海水を用い,受精の判定は卵割が起こるかど うかによった。これによれば,受精率は午後7時から9時50分までは高く,午後10時40分から午前2時50分 までは低く,午前3時以後は全く受精しなかった。この実験より,コイチの卵巣卵の受精能力は午後7時か ら10時までに高く,それ以後は定置漁具の中に幽閉され,産卵出来ぬままに卵巣卵の受精能力は次第に低下 することがわかった。午後3時から7時までの問にも透明卵を持つ個体が出現するが,この漁業の操業が夜 間に限られでおり,その間の受精率を検討する機会は得られなかった。 次に,海中に浮遊している卵の発生状態から産卵時刻を推定するため・1967年6月9…10日(水温22℃前 後)と1969年5月21∼22日(水温200C前後)に湾奥部の岸から約6㎞,最低潮時の水深約4mの地点に船を 停泊させ,約1時間ごとに稚魚網を海中におろし,潮流で流れ込む卵を採集した。採集物はその場で約10% のフォルマリンで固定し,持ち帰って発生段階別にコイチ卵数を計測した。この結果得られた函数を各採集 時刻ごとに発生段階別の百分率によって表わし,Table 6に示した。 これによれば,卵は発生段階によって1∼V(未卵割期から胚体形成期)とV【∼VI皿(原口閉鎖期からふ化直 前)との2群に区別され,同一時刻にとれた各卵群は比較的狭い発生段階内にある。また各卵群の発生は時 刻にしたがってより進んだ段階に移行している。これより,コイチは一定の時刻の比較的短い時間内に集中 的に産卵し,海中の卵は時刻にしたがってほぼ一様な発生経過をたどるとみられる。Table 6の1一・ Vは採集 を始めた日の午後に,M∼珊は前日の午後に産卵されたものと考えられる。また5、月(Table 6,上段)と6 月(下段)との比較から,1,皿の卵が出現し始める時刻は5月の方がやや早く,産卵時刻は一定範囲の中で いくぶん変化すると考えられる。以上の検討から,コイチは午後3時から7時の間のさらに短い時間に集中 的に産卵することが明らかになった。V 卵内発生と初期成長
1 卵と卵内発生 コイチの完熟闘魚は一見して識別出来るほど腹部が大きく,その部分はやわらかい。卵巣は大きく,排卵 された透明卵が卵巣内の腹側に集まっている。このような雌魚の腹部を軽く圧迫すると透明卵が容易に流れ 出す。.また産卵期に雄魚の大部分は成熟しており,腹部の圧迫で容易に精液が流れ出るが,その量は少ない。 媒精は乾導法により,受精卵は海水で洗い,ペニシリンとストレプトマイシンを加えて観察と実験に用いた。 1) 卵 本種の受精卵はほぼ透明な球型卵で,囲卵腔は狭く,直径0.17㎜前後の1油球をもつ。卵径には親魚の個 体による変異が考えられるので,1971年5∼6月に体長変異の大きい5尾の親魚(体長183235.240,.294, 310㎜)から得られた受精卵を各200個つつ測定し,各々の頻度分布をFig。17に示した。なお,卵径の測定 は海中から採集された卵を測定する揚合と同様,フォルマリン固定後に行なったが,固定による大きな変化 は認められなかった。また発生の進行にともなう変化も認められなかった。この結果によれば,卵径と親魚 の大きさに一定の関係は認められないh:,個体による変異はかなり大きい。ここに得られた資料によれば受精卵 の卵径範囲は0・69∼0・83mm,平均0・76㎜,標準偏差は0.02㎜,各卵群の平均卵径の最大変異は0.04㎜である。また有明海のような海水濃度の変化が大きい海域では媒質の濃度が卵径に影響することが考えられるので, 媒質の濃度と卵径との関係についても実験した。すなわち,1971年6,月に産卵域の塩素量の最大変異巾に近 い6.91∼17。69%。を7段階の濃度に分け,水温約210Cにおいてこれらの濃度の海水中で同一親魚から得られ た卵を受精させ,それぞれの卵径組成をFig.18に示した。これによれば,鉄壁の卵径分布には重複が大きく, 平均卵径の最大変異は0.01㎜と小さいが,高濃度で小さく,低濃度で大きい傾向がある。 海中で卵の浮遊層を左右する卵の比重については下記の要領で測定した。すなわち,水温約24.3 OC,塩素 量12.25,15.05,16.83,1&52%・の4濃度の海水中でコイチ卵を受精させ,一方,上記とほぼ同じ水温 で約0.5%・ずつ数段階の濃度の比重測定用海水を用意し,受精旧約4時間に上記の4卵群から各数個ずつの 卵を各段階の比重測定用海水に移し,その直後に卵が沈む場合はその海水より高い比重,浮上する場合は低 い比重として卵の比重の範囲を求めた・Table 7に受精と卵飼育に用い牟海水の塩素量,その比重およびそ れぞれの卵の比重を示した。これによれば,媒質の比重が増すにしたがって卵の比重も増すが,卵の比重範 囲は1.018∼1。020と小さく,したがって比重1.018以下の媒質中では沈み,1.020以上の媒質中では卵の 比重が比較的大きいにもかかわらず表層に浮く。 20 o 20 O O O 2 ︵辞︶きΩ∈309↑o 0 2 20匡
D
︵承︶﹄岩日コ¢bDbDεo Φ駕 20 ︶︵ 20 o 20 o .20 o oo o 2000
2
oE
o 20O.70 O.75 O.80
Egg diameter(mm) x=O.769 s= ao 14A
x=O.770 s= O.012 B x= a770 s= ao13 C x=O.771 s= O.01 4D
x=a774 s=ao 13 E x= O.779 s==ao 13 F x=e.775 s=ao17G
Fig. 17 Changes in diameter of fertilized egg among five batches from five females. Body length of females used in this examination was as follows: A, 310mm; ’B, 294mm; C, 240mm; D, 235mm; E, 183mm; OL O. 73 O. 77 O. 81 Egg diameter (皿の Fig. 18 Correlation between egg diameter and sea water c on− centration of the medium. Con− centration is shown in chlorinity as follows: A,一17.69%o, B, 16.25%,i C, 1433%o; D, 12.41 %o; E, 10.63 %o; F, 8.78 900; G, 6.91 %, ]Table 7. Specific gravity of egg varying with sea water concentration of its mediu!m.
Waters* (24.2∼24。40C◇ Eggs
Chlorinity(%。) Specific gravity Ranges of specifc gravity
18.52 P6.81 P5.05 P2.25 1.0215 P.0202 P.0178 P.0140 1.’0196∼1,0202 (ciose to P.◎184∼1.0190 (close to P.0184∼1,0190 (close to 戟C0178∼1,0184 (close to 1.0196 P.0190 P.0184 P.0178
︶︶︶︶
* VVaters i n which eggs were fertilized and reared. Table 8. Relation between ferility and sea water concentration of the medium. Chlorinity (%・)Number
?№№r of (%) 17.5§* 956 48.7 16.81 763 34『.0 15.26 1008 33.4 13.55 642 33.7 12.66 755 22.0 10.26 848 14.1 9.15 757 15.6 7.78 1001 1.0 5.48 1094 0 3.56 729 0 1.80 601 0 0 831 0 * water of fishing ground. 次に,本種の産卵が行なわれる湾奥部は海水濃度の時空間的な変動が特に大きいので,受精と海水濃度と の関係についても人工受精による実験を行ない,結果をTable 8に示した。媒精は水温210C前後において濃 度が各々異なる媒質の中で湿導法によって行ない,受精は卵割が起こるかどうかによって判定した。また, 海水濃度は塩素量によって表わした。この結果によれば,塩素量13.55%。以上では比較的高い受精率が得られ, 5.48%・以下では全く受精しなかった。2)丁丁発生
卵内発生については,1967年6月23目に行なった人工受精による発生経過を述べる。媒精は午後6時5分 に漁船上で行ない,5時間後に実験室に持ち帰った。実験室では1eの寿ラス容器に入れて室温(26∼27℃) で飼育し,卵内発生を観察した。受精後,ふ化までの主な発生経過をTable 9とFig.19に示した。コイチの 卵内発生はこのように海産魚の浮身卵の一般的な発生経過に類似するが,次のような特徴がある。すなわち, 原口閉鎖から黒色胞出現までの期間を中心に胚体と卵黄に半透明の星状胞が現われる。Table 9. Embryonic develepment of N. albiflora. Time*
Figure
Embryoni c development hr. ■ 窒獅撃氏D (Fig.19) 0 20 Formation of blastodisc. 1 30 Early morula stage. 2 30 Late morula∼blastula stage. 1 5 00A
Early gastrula stage. 7 10B
Formati on of embryo, germ ring reachihg. three .quarters・of eg9−diameter in lateral view. 8 40C
Closure of blastopore, semitransparent granules bei ng scattered on embryo an.d yolk sac. 9 40D
Formation of eye vesicles,. Kupffer,sr vesicle, and three myomereres,. chromatophores appear一 lng on dosal part of embryo and oil glqbule. 10 20 Appearance of xanthophores on almost whole part of embryo and lower part of oll globule. 14 00E
Beg量nning of embryo tail elongation, anddisap→ pearance of Kupffer’s veSicle. 16 40F
Formation of optic lens and otocyst。 Heart pulsates and embryo wriggles occasionally。 17 00G
A little before hatchlng. * The time elapsed from fertilizatiori. Table 10. Incubation petriod of N. albiflora egg at varipus water−temperatures. Wat er, temp. (℃) Incubation period 19 37hr. 30皿in. 21 28 00 23 24 00 25 18 50 27 16 30 29 15 40 また,.前記水温において受精後10時間20分以後,油球は黄色胞と黒色胞によっておおわれるが,上面に黒色 胞(Fig.19, E,. F,),側面または側面と下面に黄色胞が集合し・上下に色分けされる・発生後期に油球 の約半分が卵黄のう外に露出する。しかし・このような卵の大きさと形態は同海域で同じ時期に産卵するシ ログチその他の浮性魚印に最も多い型5・34)であり,コイチ卵は他魚種の卵との区別がむつかしい。c
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辱h皆 Fig. 19 Developing eggs of IV. a.lbi ora. The progress is sbown in Table 9. 卵は上記水温において受精後17時間からふ化し始めるが,海中から卵を採集する際に1日に産卵された卵 だけを区別する必要から,産卵期の水温範囲,19∼29。Cにおいて水温とふ化時間との関係を求め.Table 10 に示した。これによれば,ふ化時間は水温によって15時間40分から37時間30分までに変化する。 2 仔稚魚の形態 ふ化直後から卵黄吸収までの形態については人工受精卵からふ化した個体について,それ以後は主に稚魚 網による採集個体を用いて観察した。前者の大きさは生きた個体,後者のそれはフォルマリン固定後の個体 によったが,ふ化仔魚の全長の固定による収縮率は4∼13%,平均約10%である。 1) ふ化仔魚 ふ化直後(Fig.20,A):全長1.5㎜,卵黄長径0.9mm,筋肉節数8+19・=27(成魚の脊椎骨数は25)。 肛門は卵黄の直後に位置する。膜鰭侭背側は肩部,腹側は卵黄後端から始まり,尾端で連なる。膜鰭に泡状 模様がある。油球は卵黄後方に位置する・色素胞の分布については・黒色・黄色ζも体全体に分布するが・ 体の背面と尾部中央に特に密集することと腹面に少ない点が特徴的である。酒球上の分布は卵にほぼ等しい。ふ化後1日(Fig.20, B):全長2.4㎜,頭胴長0・8㎜,眼に黒色素が現われる。胴尾部の色素胞は体の側 面と腹面に移動し,尾部側面の2個所に密に集合する。 ふ化後2日(Fig.20,C):全長2.6㎜,口が開き,胸鰭が形成される。卵黄は吸収しつくされ,1小油球 が残る。後頭部と腸管背面に色素胞が発達する。 ふ化後3日(Fig.20,D):全長2.5㎜,卵黄,油球ともになく,顎の発達が顕著である。体の色素胞,特 に黄色胞が少なくなる傾向にあり,尾部側面の集合は1個所となるが,ここはのちに二べ科魚類の仔稚魚に 特徴的な黒色両国に発達する。 ふ化後4日(Fig.20,E):全長2.2㎜,標が形成され,色素胞の分布はさらに少なくなっている。 これらの仔魚の行動については,ふ化直後の仔魚は卵黄を上にし,仰臥の体位で表層に静止しており,ふ 化1日後に水槽の中層を正常な体位で浮遊または遊泳するようになる。 2) 後期仔魚と稚魚 体長2,8㎜(Fig.21,A):両顎に数本の歯があり,前総覧骨後縁に棘がある。尾鰭掠基がわずかに形成さ れている。黒色胞の分布はふ化後4日の仔魚(Fig.20,E)とほぼ同じである。 体長4.2mm(Fig.21,B)=2。8mmの仔魚にくらべて頭胴部がさらに発達し,尾部が大きくなり始める。 歯の数が多くなり,背・轡鰭の基底と尾鰭の鰭条が形成され始める。 体長4.3㎜(Fig.21,C):各垂直鰭とも二条が現われ,二三二条は定数に達しているが,背・尾鰭にはま だ未分化の部分がある。尾部の高さがさらに高くなり,体型が稚魚のそれに類似するが,肛門はまだかなり 前方に位置し,肛門と高冷前端との間にかなりの隔たりがある。脊索端が上屈している。前三蓋骨前部の上 下に走る稜線に小さな棘が形成され始め,品品の直方に将来,棘が形成される突起が生じる。腹腔内壁に発 達した黒色胞が腹部筋肉をとおして見える。尾部腹面では黒色胞が少なくなる傾向にあるが,二二基底後方 の1ケ所に黒色胞叢が大きく発達する。二べ科魚類の仔稚魚の形態は,わが国近海ではシログチ36)とフウセ イ48)について,米国沿岸でも数種について明らかにされているが,轡鰭後方の黒色胞叢は大部分の二べ科 魚類に共通した特徴である。 体長5.9mm(Fig.21,D):背・三七は完成し,胸・尾鰭は発達途上にある。これまで円形の大きなくぼみで あった鼻孔はまが玉型に変化している。鰍蓋背方の突起に1小棘が形成される。体長5∼6mmに達すると背 鰭前方に黒色胞が現われるが・その時期は個体によっていくぶん異なる・各鰭は体長6∼7mmで完成し・こ れより稚魚期にはいる(図表説明と英文要約ではMansueti and Hardy28)に従って稚魚をprejuve nile, 若魚をjuvenileとした)。 体長7.0㎜(Fig.21,E):各鰭の鰭条は定数に達しているが,まだ分節していない。脊索後端は不明瞭で, 尾部後端と尾鰭の形はほとんど上下相称となっている。聴蓋背方に4本の棘が形成される。黒色胞が背鰭前 方と肩部に出現している。 体長8.2mm(Fi 9.21 ,F):この稚魚は背鰭前方に2列の黒色胞が並んでいるだけで,体側には黒色胞はまだ 現われていない斌7.Ommの個体(E)にくらべ,魚体が大きく,門門の分節も生じている点でより発達し ている。このように,体側の黒色胞が発達する時期は個体によっていくぶん異なる。 体長11.2mm(Fig.21,G,Fig.22,a):肛門が後方へ移動して体型が成魚にかなり近づき,鼻孔が2対に分 離する。体側の黒色胞は通常,二部より胴部側面に密な群をつくって分布する。また,このほかに数個の小 さな黒色胞群が規則的に現われ始めるが・黒色胞の発達9程度には個体による変化が大きく・胴部が黒くお おわれている個体から小さな黒点群が散在する程度までの変異がある。 体長15.o㎜(Fig.21, H,Fig.22,b):鱗が尾部側面を中心に形成され始める。体側の黒色胞の分布は尾部 にも及ぶが・建網後方の黒色胞叢は不明瞭になる傾向にある・胸鰭腱膜には個体によって黒色胞がほとんど ないものから鰭膜全体が黒くおおわれているものまでの変異がある。