Fig. 57 Mean monthly catches of Acetes joPonicus (broken lines) and
MetaPeitaems jo.vneri (solid lines) in the
innermost area of the sound from
1953 to 1958.出現盛期とみられる。両種の分布についてはア キアミエ2)は低潮線附近に,シバエビ13)は水深5
〜10mの水域に分布し,秋にはいずれもやや沖 合に移動する。またジバエビは若い個体は浅い 水域に分布し,成長にともなって沖合へ移動す る。したがって,浅海域にアキアミと小型のシ バエビが出現する時期がコイチ稚魚の出現期と 一致し,沖合域に比較的大型のシバエビが出現 する時期と若魚の出現期が一致する。秋から冬 に大部分の稚魚と若魚は成魚とともに湾中央部 から湾口部へ移動するが,この時期は湾三部で アミ類14)とアキアミが少なくなり,シバエビは より深い水域へ移動するとされていることから,
湾奥部における餌条件の低下もコイチの南下移 動をひき起こす要因の一部になると考えられる。
このように,主要な餌生物の分布はコイチの分 布と時期的,地域的によく対応し,餌条件につ いてば湾奥部はコイチの初期成育に好都合な条 件をそなえている。
盟 初期生活史における形態と生態との関係
仔魚から若魚までのコイチの形態,分布,食性は成長にともなって大きく変化し,形態と生態との対応が 認められたので,二こで初期生活史
における両者の関係を検討した。
まず,体各部の相対成長にはその 相対値の大きく変化する時期および 一定に達する時期が認められ,これ らをFig.58にまとめた。これより,
体型の主要な変化はほぼ体長6,12,
25〜32,60〜80,120〜140㎜に生
じており,ふ化直後より若魚期まで に6つの時期が認められた。次に上述の相対成長と各形質の発 達で示される形態変化および分布と 食性の生態的変化をまとめ,これら の形態,生態を対比,総合して,仔 魚期から若魚期までの成長過程を6 期に区分し,Fig,.59に示した。以下 にこの区分に従って形態と生態との 関係を述べる。
第1期:卵黄期の仔魚で,5〜8
月目湾奥部の比較的沖合の水域に浮 Fig。58
遊している。L。f head and 煤Cunk
@ /Body L Tail D/Tail L
Head L/勘dyL
Relation between
??≠п@D andb・dyD Eye dialneter
@ /Head L
Upper jaw L
@ /罫ead L
UpPer l弓w・・gl・
Caudal fin L
@ /Total L Intestine L
@ /Body L
Wof SP muscles
@ /Body W
O 30 60 90 120 150
Body length (mrn)
Synthesis relative growth of N. a l bifora.
第ll期:卵黄を吸収しつくしてのち,各鰭が完成するまでの期間で,体長3〜6㎜の後期仔魚がこれに当 たる。この期の浮遊二四は頭部が大きく,尾部は第1期の特徴を残してまだ細長く・前期の仔魚と同様に比 較的沖合に分散して分布する。また,口は全成育期の中で最も上方を向き・顎歯が形成されており・檎脚類
を主とする動物プランクトンを捕食する。
第唖蝉:こみ期の稚魚は各鰭が完成しており,その他の形態発達と体型からみて前期までの受動的な浮遊 生活から遊泳生活に変化しているとみられる。その分布域は全成育期の中で壕も岸寄りで,その多くは6〜
8月に河口域に分布し,分布環境に対する適応が極めて広い特徴がある。
第N期:6〜9月に出現する体長12〜27㎜の稚魚で,鼻孔が完成し,吻端が突出して頭部は長くなり,体
高が高まり,前期までの体型と異なって成魚にかなり類似してくるが,体型はなお大きく変化する。分布域 は河口域,湾奥部干潟域から浅海域に及ぶが,次第に沖1ト移行し,河口町からは少なくなる。主な餌はまだ 動物プランクトンで,この成育期の間にアミ類とヨコエビ類へ徐々に変化する。このように形態的にも生態的にも成魚に移行し始める特徴的な成育期である。
第V期:体型が成魚に極めて類似し,ニベ科魚類の特徴である鯨の形態が発達する。この期の稚魚は7〜
.9月に干潟域から浅海域に分布し,その主な餌は成長にしたがってアミ類 アキアミ,その他のエビ類と変 化し,成魚の餌に類似する。このようにこの期の稚魚は形態的,生態的に成魚に間近い状態にある。
第W期:外部形態は成魚にほぼ等しい体長60〜160㎜の稚魚と若魚で,発音器官の主要な一部である腹腔
壁筋肉はこの期に発達し,体長120㎜以上でなき始める。食性は成魚とほぼ同じで,主な生息域も成魚が分Body
撃?獅№狽?D
@ (mm)
Relative
№窒盾翌狽?
M・rph・10glcal
@devel・pment Distribution Main
?盾盾п@item
Developmental
@ period
Formation
The area. of
P〜5min depth
儒,∴)
13 of teeth
II Co即1etiQn of
6 fin formation
The area from Copepoda
Completion of the mouth of
9 external shape of river to the III
digestive organ COaStal area near low Completion of tidal leve1
12 external shape
盾?@nostril
15 Appearance 、
盾?@scales
IV.
Appendix 25〜32 formation
盾氏@air−bladder The coastal
≠窒?=@near lOW
Mysidacea fammaridae
tidal level ・Acεゴθs
V
Completion of ブα♪・ηゴ。秘5
60〜80 external shape of air−bladder
The area of
Natantia VI
120−140 about 5−10 m
in depth Brachyura
160
* main bending phase of relative growth (Fig. 58 )i
Fig. 59 Morpholog,ical and ecological changes of N. albiflora in young stag e.
布 す る水 深2〜5mの 湾 奥 部 沖 合 域 で あ る。 この よ う に コイ チ の形 態 と生 態 は こ の期 に成 魚 と同 じ段 階 に達 し,秋 か ら冬 に か け て成 魚 と と もに有 明海 の湾 奥 部 を離 れ,湾 中 央部 か ら湾 口部 へ 移 動 す る。
VIII要 約
有 明海 に分 布 す る コイチ に つ い て,成 魚 の形 態,分 布 と産 卵 生 態 に 関 す る知 見 を も と に初 期生 活 史 を研究 し,初 期 成 育期 の形 態,生 態 お よ びそ れ ら相 互 の 関 係 を明 らか に した 。
成 魚 の形 態 と分 布:有 明海 産 コイ チ の形 態 は従 来 の本 種 に 関 す る記 載 に ほ ぼ合 致 す るが,本 種 の特 徴 の1 つ と され て い る 眼 隔 の頭 長 に対 す る割 合 に つ い て は,東 シ ナ海 産 の 本種 との 間 に有 意 の差 が認 め られ た。
有 明 海 の コ イ チ は4〜5月 に湾 内 を北 上 し,春 か ら秋 まで湾 奥 部 の"前 の海",西 側 湾 入 部 の"諫 早湾"
と湾 中央 部 東 側 の いず れ も最 低 潮時 の水 深 が2〜5mの 浅 海 域 を中心 に分 布 す る。 そ れ ら は10〜12月 に次 第 に浅 海 域 を離 れ,冬 季 は 湾 口部 附 近 の 比較 的 深 い水 域 に移 動 して越 冬 す る。 こ の よ うに本 種 は全 生 活 史 を湾 内 で送 る。
産 卵:本 種 は5〜8月 に,こ の時 期 の主 な 分布 域 で あ る湾 奥 部 浅 海 を中心 に産卵 し,5,6月 が そ の盛 期 であ るが 、 この期 間 中 の産 卵 域 に お け る水 温 は18〜29℃(盛 期 は19〜23℃),海 水 濃 度 に つ い て は 塩素 量17.5
‰ 以 下 の か な り低 濃度 の海 水 が分 布 す るが,受 精 に不 適当 な ほ ど低 くは な い 。
産卵 は午 後3〜7時 の間 に行 な わ れ 、卵 巣卵 の 受精 能 力 は こ の問 に最 大 にな る変 化 を示 す 。海 中に は産 卵 時 刻 に 発 生 初期 の卵 が現 わ れ,時 刻 の経 過 につ れ て ほ ぼ一 斉 に 発生 が進 行 す る。
卵 と卵 内 発 生:卵 は ほ ぼ透 明,球 形 で,囲 卵 腔 は 狭 く,直 径0.17㎜ 前 後 の油 球 を1個 持 って い る 。卵 径 は 親魚 に よ って か な り変 化 す る が,平 均卵 径 は0.76㎜,卵 径 範 囲 は0.69〜0.83㎜ で あ る 。海 水 濃 度 に よ る卵 径 の 変異 は ご く小 さい 。 卵 の比 重 は媒 質 の比 重 に よ っ て変 化 し,産卵域 の海 水 濃度(塩 素 量15〜18‰)で は24℃ に お い て1.018〜1.020で あ る。
コ イ チ卵 の受 精 率 と媒 質 の塩 素 量 との 関係 につ い て は,13.55‰ 以 上 で は受 精 率 が比較 的 高 く,5.48‰ 以 下 で は全 く受精 しな い 。
卵 は水 温19℃ では37時 間30分,29℃ で は15時 間40分 でふ 化 す る。
仔 稚 魚 の形 態:ふ 化 直 後 の仔 魚 は全 長1.5㎜,筋 肉節 数8+19=27。 そ の 後3日 間 に 口が 開 き,目 に黒 色 素 が現 わ れ,胸 鰭 が形 成 され,尾 部 が 伸長 す る 。色 素 胞 につ い て は 黄 色 胞 は体 全 体 に分 布 し,黒 色 胞 は成 長 に と もな い体 の背 面 か ら側面 と腹 面 へ移 動 す る 。尾 部 中央 に両 色 素 胞 に よ る明瞭 な1横 帯 が形 成 さ れ る 。
後 期 仔 魚 と稚 魚 に つ い て は,体 長2.8㎜ で 歯 が形 成 され,約4㎜ で垂 直 鰭 の原 基 が 形 成 され,約6㎜ で各 鰭 条 が完 成 して稚魚 期 に は いる 。体 長7〜8㎜ か ら体 側 に黒 色 胞 が現 わ れ は じめ,体 長 約11㎜ で 鼻 孔 が完 成 し, 15㎜ 前後 に鱗 が形 成 され は じめ る。臀 鰭 の直 後 に あ る1つ の大 き な黒 色 胞 叢 は 後 期仔 魚 か らこの 大 き さ の稚 魚 ま で の特 徴 の1つ で あ る。体 長70〜80㎜ で各形 質 の 変化 は ほ ぼ 終 り,体 表 に成 魚 の斑 紋 が あ らわ れ て若 魚 期 に は い る。
鰾
は外 見的 に は ふ化 後3日 で形 成 さ れ,体 長25㎜ か らそ の背 側 面 に樹 枝 状突 起 が 発達 しは じめ,そ の形 態 は約80㎜ で成 魚 に等 し くな る 。鰾 に 付 随 し,発 音 に関 係 す る腹 腔 壁筋 肉 は鰾完 成 時 か ら形 成 され は じめ,体 長120㎜ 以 上 で な き は じめ る 。
消 化 管 は前 期 仔 魚 で は食 道から 直腸 まで ほ ぼ ま っ直 ぐに連 絡 して い るが,卵 黄 吸 収 時 に1回 転 して そ こに 胃が形 成 され,体 長4〜7㎜ で腸 管 が折 れ 曲が り,体 長9㎜ で成 魚 と同 じ形 態 に 達 す る。
各体 部 の比 較 に よれ ば,頭 胴 長― 体 長,尾 部 の高 さ―尾 部 長,頭 部 の高 さ―頭 長,頭 部 の 高 さ と体 高 との 関係,上 顎 長― 頭 長 お よび 上顎 の体 軸 に対 す る 角度 は仔 魚 の相 対 値 が成 魚 と最 もか け離 れ,あ る体 長 ま で変 化 し た の ち一 定 に達 し,仔 魚 の特 徴 的 な体 型 か ら の変 化 を表 わ す 。尾 鰭 長― 全 長 は体 長12〜30㎜ に 極大 に達 し,稚 魚 期 初期 の特 徴 的 な形 態 を示 す 。腹 腔 壁筋 肉 は体 長約80㎜ で形 戌 ざれ,そ の重 さ の体 重 に対 す る割合 は雄 は120㎜,雌 は140㎜ で 大 き く変 化 し,急 速 な増 大 を示 す。 体 長16〜150㎜ にお け る体 長(L㎝)と 体
重(Wg)と の 関係 は W= 0.0165L3.010 で表 わ され る 。
仔 稚 魚 と若 魚 の月 別体 長 組 成 お よび産 卵期 の成 魚 の体 長 組 成 に よれ ば,仔 稚 魚 は5〜8月 に現 わ れ,そ の 年 の 終 りまで に最 大 は体 長180㎜,最 小 は50㎜ と な り,生 後 満1年 の体 長 モ ー ドは約170㎜,満2年 で230
㎜前 後 に 達 す る。
卵 か ら若 魚 期 まで の 分 布:表 層 と底 層 に お け る卵 分 布 量 の比 較 か ら,比 重20.98〜22.63の 海 中 に お い て 卵 は発 生 初期 に は底層 に多 く,産 卵後5時 間以 後 は表 層 に 多 く分 布 す る とい う垂 直 分 布 の変 化 が認 め られ,コ イチ は底 層 で産 卵 し,卵 は環 境 水 の比 重 が卵 の 比重 よ り大 きい場 合 は徐 々 に表 層 に浮 上 す る と考 え られ た 。
有 明 海 の ほ ぼ 全域 に 及 ぶ11地 点 の表 層 と水 面 下4mの 層 で行 な っ た稚 魚 網採 集 の結 果 に よれ ば,コ イチ 卵 は主 な産 卵 域 で あ る湾 奥 部 浅 海 を中 心 に分 布 し,湾 中央 部東 側 の浅 海 に も若 干分 布 す る 。
湾 奥部 と中央 部 に お け る底 層 曳稚 魚 網 採 集 に よ れ ば,体 長15㎜ 以 下 の仔 稚 魚 は湾 奥 部 沿 岸 の最 低 潮 時 の 水 深5m以 浅 の 水 域 に多 く分 布 し,大 型 個 体 ほ ど岸 寄 りの浅 い水 域 に分 布 す る傾 向 が あ る 。ま た仔 稚 魚 の多 く
は湾 奥 部 沿 岸 の限 ら れ た水 域 に集 中 して分 布 し,そ の傾 向 も大 型個 体 に顕 著 に認 め られ る 。
稚 魚 と若 魚 の分 布 につ い て は,諌 早 湾 奥 部 に 注 ぐ本 明 川 の河 口域,前 の海 最奥 部 に 当 た る筑 後川 河 口沖 の 干 潟 域,そ れ に続 く低 潮 線 附 近 の浅 海 域 と水 深5m前 後 の湾 奥 部沖 合域 に お い て採 集 を行 な っ た 。上 記 の各 水 域 別 の 出 現期 と体 長 組 成 の 月別,水 域 別 変 化 に よれ ば,体 長6‑20㎜ の稚 魚 は河 口域,干 潟 域 か ら浅海 域, 21〜80㎜ は干 潟域 か ら浅 海 域 に分 布 し,81㎜ 以 上 の若 魚 は成 魚 が分 布 す る湾 奥 部 の水 深2〜5mの 沖 合域 に 分 布 し,稚 魚 と若 魚 は成 長 に と もな っ て沖 へ 移 動 す る。
各 成 育 期 の生 息 域 の環 境条 件 に つ い て は,産 卵域 の環 境 水 温 は18〜29℃,塩 素 量 は15〜18‰,若 魚 と成 魚 が9〜11月 に 分 布 す る沖 合域 の水 温 は15〜27℃,塩 素 量 は16〜18‰ で あ る 。 これ に 対 し,河 口 域 で稚 魚 が多 く分 布 す る環 境 の水温 は22〜33℃,塩 素 量 は1〜17‰ で,コ イ チ稚 魚 は分 布環 境 に対 す る適 応 が極 め て広 い 特 徴 が あ る。
食 性:湾 奥 部 で採 集 され た仔 稚 魚,若 魚 と成 魚 の 胃 内容 に よれ ば,仔 魚 と体 長40㎜ 以 下 の小 型稚 魚 は橈 脚 類 を,大 型稚 魚 は ア ミ類,ヨ コエ ビ類,ア キ ア ミ,若 魚 はそ の他 の エ ビ類 とカ ニ類 を主 に捕 食 し,成 魚 は エ ビ類 と カ ニ類 の ほ か に イ ワ シ類,ヨ コエ ビ類,ワ レカ ラ類 も多 く捕 食 して お り,コ イチ の食 性 は成 長 に と も な っ て ほ ぼ こ の順 序 で変 化 す る とみ られ る 。
コ イチ の 餌 生 物 に対 す る撰 択 性 は許 容範 囲が 広 い が ,対 象 とす る餌 生 物 の 変化 は基本 的 に は仔 魚 期 と稚 魚 期初 期 の浮 遊 性 か ら稚 魚 期 後 期 の遊 泳 性 と付 着 性 へ,稚 魚 期 後期 の 食性 か ら若 魚,成 魚 期 の ほ ふ く性 も含 め, た広 い範 囲 の食 性 へ とい う生 態 的な 要 素 お よび 小 型 か ら大型 へ とい う大 き さの要 素 に規 定 さ れ る 。
初 期 生 活 史 の主要 な餌 で あ る橈 脚 類,ア ミ類,ア キア ミ,シ バエ ビの分 布 と コ イ チ の分 布 は時 期 的,地 域 的 に よ く対応 して お り,餌 条 件 につ い て は,有 明 海湾 奥部 は コ イ チ の初 期 成 育 に 好 適 な条 件 をそ な えて い る 。
初期 生 活 史 に お け る形 態 と生態 と の 開係:相 対成 長,各 形 質 の発 達,分 布,食 性 の対 比 に よ り,コ イチ は 仔 魚期 と稚 魚 期 に形 態 的 な対 応 の も とに独 特 な環 境 で特 徴 的 な生 活 を し,若 魚 期 に形 態 的,生 態 的 に 成魚 と 同 じ段 階 に達 し,こ の 間 に,卵 黄 期,体 長3〜6㎜,6〜12㎜,12〜27㎜,25〜80㎜,60〜160㎜ の6期 の 各 々特 徴 あ る成 育 期 を経 て 成 長 す る こ とが 明 らか にな った 。
IX文 献
1)有 明 海 漁 業調 整事 務 局:有 明海 水 産 要 報,第1,2編,515pp.(1959)