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2013_セメント.indb

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(1)

要旨:模擬細孔溶液中に Ca/Si 比の異なる合成 C‑S‑H を加えたものを試料とし、炭酸化促進条件の CO2 ガス濃度環境に曝露することで、C‑S‑H の炭酸化性状に関して検討を行った。C‑S‑H は炭酸化が進行し pH がほぼ平衡値まで低下しても残存しており、その大部分は低 Ca 型の C‑S‑H であると推察されたが、

初期 Ca/Si 比 1.4 の C‑S‑H のみ、高 Ca 型の C‑S‑H も残存していた。初期 Ca/Si 比の相違によって、

炭酸化速度に差はなかったが、初期 Ca/Si 比が低い方がやや C‑S‑H の残存量が多い結果となった。この 要因は、Si の含有量が多く、炭酸化を阻害するシリカゲル生成量が多いためではないかと考えられる。

1 宇部興産株式会社 技術開発研究所(〒755‑8633 山口県宇部市大字小串字沖の山 1‑6)

*2 広島大学 大学院工学研究科(〒739‑8527 広島県東広島市鏡山 1‑4‑1)

キーワード:C‑S‑H、炭酸化、Ca/Si 比

1. はじめに

 炭酸化による埋設鉄筋の腐食は、RC 構造物にとって 避けえない経年劣化現象の一つであり、多くの研究が行 われてきた。とくに埋設鉄筋の腐食に密接に関連した、

細孔溶液の pH の低下(中性化)に関して多くの検討がな されてきたが、pH の低下挙動をより詳細に検討し、ま たそのモデル化を行っていくうえでは、炭酸化による 種々のセメント水和物の分解性状を把握する必要があ る。主要なセメント水和物である C‑S‑H はセメント硬 化体中に占める割合が大きく、また Ca の含有量も多い。

すなわち、炭酸化反応を生じる際には CO2の消費量も 多いため、炭酸化(中性化)進行に及ぼす影響も大きいと 考えられる。

 一般的に、コンクリートの炭酸化においては、まず Ca(OH)2の炭酸化が進行した後に C‑S‑H の炭酸化が 生じるとされており、そのためか、C‑S‑H の炭酸化を 取り扱った研究は少ない。合成 C‑S‑H を用いた炭酸化 実験を行った鈴木、西川らの検討1)、C‑S‑H の炭酸化 反応モデルを構築した石田らの検討2)、などが研究例と して挙げられるが、C‑S‑H の炭酸化性状に関しては未 だ不明な点が多く、また炭酸化反応モデルの検証例とな るような実験的検討も少ないといえる。

 以上のような背景のもと、筆者らは過去に、種々の CO2 ガス濃度環境における合成 C‑S‑H(Ca/Si モル比 1.4)の炭酸化実験を行い、いくつかの知見を得ている3)。 すなわち、C‑S‑H が炭酸化を受けると、その一部は CaCO3 とシリカゲルに完全分解されるが、同時に一部 は低 Ca 型の C‑S‑H へと変質し、さらに pH が平衡状 態まで低下してもこれらの C‑S‑H の一部は何らかのメ カニズムにより残存する、といったものである。このよ

うな C‑S‑H の炭酸化時の挙動は、他の水和物には見ら れない特徴的なものといえる。

 上記の知見をふまえ、本研究では、模擬細孔溶液中に Ca/Si 比の異なる合成 C‑S‑H を加えたものを、炭酸化 促進条件にあたる CO2ガス濃度環境に曝露することに よる C‑S‑H の炭酸化実験を行い、Ca/Si 比の異なる C‑S‑H の炭酸化性状に関して実験的な検討を行った。

2. 実験概要 2. 1 使用材料

 C‑S‑H には試薬の Ca(OH)2と高純度非晶質シリカ を用いて、原料を所定の Ca/Si 比となるよう混合して 合成したものを用いた。Ca/Si モル比の設定値は 1.4、

1.1、0.7 であり、実測した H2O/Si モル比はそれぞれ 1.9、1.3、1.2 である。以下、本論文では Ca/Si およ び H2O/Si はすべてモル比を表すものとする。なお、

Ca/Si 比 0.7 および 1.4 は、合成の際に用いた原料物 質が不純物として残留しないと考えられる、下限および 上限の Ca/Si 比であり、例えば混和材使用による Ca/Si 比の変化を想定している。合成試料に関しては、XRD により、C‑S‑H が生成していること、および Ca(OH)2

が残留していないことを確認しているが、非晶質シリカ の残留に関しては分析による確認を行っていない。ただ し、過去に行った同一条件での C‑S‑H 合成時において、

赤外分光光度計により非晶質シリカが残留していないこ とを確認している。また、摸擬細孔溶液の作製には試薬 の NaOH を用いた。溶液の pH は 13.2 を目標値とし、

活量を無視して目標 pH にあたる NaOH 量(25℃)を計 算し、計量した試薬を純水に加えることにより作製し た。なお、C‑S‑H はメノウ乳鉢で微粉砕した後に実験

(2)

3. 実験結果および考察 3. 1 溶液の分析結果

 CO2ガス濃度 0.5 および 5.0 %の場合の pH の経時 変化を Fig. 2 および Fig. 3 に示す。NaOH 溶液のみの 場合と C‑S‑H を加えた場合とを比較すると、C‑S‑H の 分解にともなう CO2の消費によって、pH の低下が若 干ではあるが抑制されていることが確認できる。しかし ながら、本研究の範囲内においては、C‑S‑H の初期 Ca/Si 比の相違が pH の低下挙動に及ぼす影響は、小さ いといえる。ただし、本研究の実験条件は、水/粉体の 比が非常に大きく、また 120 時間程度で pH がほぼ平 衡状態に至るなど急激な促進条件にあたる。このため、

上記の知見が、実際のコンクリート中の炭酸化反応、特 に大気中程度の低 CO2 濃度環境の場合に、そのまま適 用できるとは限らないと考えられる。

 CO2ガス濃度 0.5 および 5.0 %の場合の Ca 濃度の 経時変化を Fig. 4 および Fig. 5 に示す。Ca 濃度は炭酸 化 1 時間以降、ほぼすべての条件において検出下限濃 度(1.2×10−5mol/L 程度)以下となっており、炭酸化開 始後においては CO32−との反応による CaCO3の沈殿に よって、Ca は溶液中にほとんど存在していないと考え られる。ただし、本実験では曝露終了後に吸引ろ過を に供した。

2. 2 実験方法

 プラスチック製の長方形容器に、模擬細孔溶液 80ml と 1.0g の C‑S‑H を加え、これを試料とした。比較用 として模擬細孔溶液のみの試料も作製した。試料は作製 後、直ちに所定の環境にて曝露を開始した。炭酸化実験 は促進条件(CO2 濃度 0.5、5.0 %)にて行った。炭酸化 促進槽内の相対湿度はほぼ 100 %、雰囲気の温度は 25℃一定とした。Fig. 1 に実験の概念図を示す。

 所定の曝露時間が経過した後、ただちに吸引ろ過を行 い、試料を溶液と残渣に分離した。ろ液に関しては pH メーターにより pH を、原子吸光光度計により Ca 濃度 と Si 濃度を測定した。溶液中の Si に関しては、H4SiO4、 H3SiO4、H2SiO42−等が含有されると考えられるが、そ れぞれの存在比率は定かではないため、総称して Si 濃 度と表記する。なお、本研究における模擬細孔溶液の溶 液高さは 0.91cm であり、溶液中における垂直方向の 物質移動速度を無視できないことを過去の検討において 確認している4)。気液界面から溶液中に溶解した CO2

は炭酸となり、解離を伴いながら容器底面に向けて拡散 していく。一方で容器底面に存在する C‑S‑H は炭酸が 到達した後に分解され、Ca や Si が溶液中に遊離し、こ れらは気液界面に向けて拡散していく。よって、溶液中 には垂直方向に pH および Ca、Si 濃度の分布があると 考えられるが、測定前に吸引ろ過を行っているため、測 定値に関してはその平均値である。残渣に関しては、24 時間の脱気乾燥を行い、TG‑DTA により CaCO3量を 測定した。また、サリチル酸メタノールへの溶分を C‑S‑H 量とみなし、処理前後の質量差を測定すること でこれを求めた5)。なお、サリチル酸メタノールに溶解 する C‑S‑H は、Ca/Si 比が 1.0 以上程度の C‑S‑H で あ る と さ れ て お り6)、 本 研 究 で は こ れ を 高 Ca 型 の C‑S‑H と定義する。一方で、Ca/Si 比が 1.0 未満程度 と考えられる、サリチル酸メタノールに溶解しない C‑S‑H を低 Ca 型 C‑S‑H と定義する。また、本研究に おける残渣中の物質量の測定値および計算値はすべて質 量%で表すものとする。炭酸化によって残渣全体の質量 は増加していくものと考えられるが、残渣の質量変化を 正確に測定することが困難であったため、残渣中の割合

(質量%)で示している。

Fig. 2  Changes in pH(CO2 gas:0.5 vol.%)

Fig. 3  Changes in pH(CO2 gas:5.0 vol.%)

(3)

において、炭酸化 0 時間(C‑S‑H 粉末を模擬細孔溶液 に加えた後、炭酸化させず直ちにろ過したもの)の値を 比較すると、初期 Ca/Si 比が 1.4 の場合には、サリチ ル酸メタノールに溶解する高 Ca 型 C‑S‑H の初期値は 92 %、1.1 で は 85 %、0.7 で は 15 % で あ る。 な お、

炭酸化 0 時間の時点において、熱分析結果では CaCO3

は未検出であり、溶液中の Ca 濃度の値も低いことから、

炭酸化や Ca 溶出による C‑S‑H の変質はほとんど生じ ていないと考えられる。よって、炭酸化 0 時間の時点 でのサリチル酸メタノールへの不溶分は、低 Ca 型 C‑S‑H である可能性が高いと考えられ、初期 Ca/Si 比 が低いほど、炭酸化による分解を生じる以前から低 Ca 型 C‑S‑H が大きい割合で混在しているものと考えられ る。高 Ca 型 C‑S‑H 量に関しては、炭酸化開始直後か ら急激な低下が見られ、初期 Ca/Si 比 0.7 および 1.1 ではほぼすべての高 Ca 型 C‑S‑H が分解されている。

しかし、初期 Ca/Si 比 1.4 においては、pH がほぼ平 衡状態と考えられるまで低下しても、高 Ca 型 C‑S‑H は完全には炭酸化せず一部が残存しており、CO2ガス 濃 度 0.5 % で は 11 %、5.0 % で は 4.4 % の 高 Ca 型 行っているため、その際に溶液が混ざり合う。このため

例えば、溶液中に少量の Ca が存在していたとしても、

気液界面付近の高濃度の CO32−と反応し、沈殿してし まう可能性がある。よって、炭酸化が進行しても容器底 面の固体近傍には低濃度の Ca が存在している可能性も 考えられる。

 CO2ガス濃度 0.5 および 5.0 %の場合の Si 濃度の経 時変化を Fig. 6 および Fig. 7 に示す。Si 濃度に関しては、

炭酸化開始後、まず経時的な増加が見られ、炭酸化初期 においては初期 Ca/Si 比が低いほど Si 濃度の増加速度 が速い。しかし、炭酸化開始後 9 時間から 72 時間程度 でピークを示し、その後 Si 濃度は低下している。炭酸 化による C‑S‑H の分解に伴って溶液中の Si 濃度が増 加し、最終的にはある平衡状態に至っているものと考え られる。概ねの傾向として、Ca/Si 比が低いほど Si 濃 度のピークを示す時間が早く、また最終値も低いといえ る。

3. 2 残渣の分析結果

 CO2ガ ス 濃 度 0.5 お よ び 5.0 % の 場 合 の 高 Ca 型 C‑S‑H 量の経時変化を Fig. 8 および Fig. 9 に示す。図

Fig. 5  Changes in Ca concentration

(CO2 gas:5.0 vol.%)

Fig. 4  Changes in Ca concentration

(CO2 gas:0.5 vol.%)

Fig. 6  Changes in Si concentration

(CO2 gas:0.5 vol.%) Fig. 7  Changes in Si concentration

(CO2 gas:5.0 vol.%)

(4)

応式は式[1]で、C‑S‑H が部分的に分解し、低 Ca 型 C‑S‑H へと変質する場合の反応式は式[2]で表されると 考えられる3)。本研究の炭酸化実験においては、式[1]

と式[2]の炭酸化反応が同時に生じていると推察される が、残渣中の SiO2量を正確に測定することは難しい。

そこで、式[1]のとおりに完全分解の炭酸化反応が起こ ると仮定し、CaCO3量の測定値から SiO2量を計算した。

実際には式[2]の反応も生じていると考えられるため、

計算上、SiO2量を過大評価していることになる。また、

溶液中に溶出した Si 量は既知であるため、これを計算 した SiO2量から差し引いた。なお、この計算の際には、

残渣質量が 1.0g で不変であるとの仮定を行っている。

 計算した SiO2量を、高 Ca 型 C‑S‑H 量、CaCO3 量 の測定値と併せて Fig. 12 および Fig. 13 に示す。図に おいて、高 Ca 型 C‑S‑H 量はサリチル酸メタノールへ の可溶分の測定値であり、これ以外は不溶分である。不 溶分のうち、CaCO3量は TG‑DTA による測定値であ り、SiO2量は仮定に基づいた計算値である。SiO2 量に 関しては、前述のように式[1]による完全分解を仮定し た過大評価と考えられる計算値であるにも関わらず、

C‑S‑H が残存していた。

 CO2ガス濃度 0.5 および 5.0 %の場合の CaCO3 量 の経時変化を Fig. 10 および Fig. 11 に示す。概ねの傾 向として、初期 Ca/Si 比が高いほど CaCO3生成量も多 いといえるが、例えば Fig. 8 および Fig. 9 の初期 Ca/Si 比 1.4 の結果と比較すると、高 Ca 型 C‑S‑H の分解量 に対して CaCO3の生成量が少ないことがわかる。これ は、炭酸化により低 Ca 型 C‑S‑H への変質が生じてい るためと考えられ、以下に検討を行う。

3. 3 低CaC-S-Hに関する検討

 一例として、本研究で用いた Ca/Si 比 1.4、H2O/Si 比 1.9 の C‑S‑H の炭酸化反応式を以下に示す。

1.4 ・ 2・1.9 2 +1.4 2 3→  1.4 32+3.3 2 [1]

1.4 ・ 2・1.9 22 3→ 

(1.4− ) ・ 2・1.9 232 [2]

 C‑S‑H が完全に CaCO3と SiO2に分解する場合の反 Fig. 8  Changes in C-S-H with high Ca/Si ratio

amount(CO2 gas:0.5 vol.%) Fig. 9  Changes in C-S-H with high Ca/Si ratio amount(CO2 gas:5.0 vol.%)

Fig. 10  Changes in CaCO3 amount

(CO2 gas:0.5 vol.%) Fig. 11  Changes in CaCO3 amount

(CO2 gas:5.0 vol.%)

(5)

Ca 型 C‑S‑H への変質が生じつつ炭酸化が進行し、最 終的には高 Ca 型、低 Ca 型いずれの C‑S‑H も残存し ていることがわかる。

 また、低 Ca 型 C‑S‑H 量と高 Ca 型 C‑S‑H 量を足 し合わせた量で比較すると、初期 Ca/Si 比の相違によ る C‑S‑H の炭酸化進行速度は大差がなく、また若干で はあるが、初期 Ca/Si 比が低いほど最終的な C‑S‑H の 残存量が多い結果となっている。低 Ca 型+高 Ca 型 C‑S‑H 量の最終値は、CO2 ガス濃度 0.5 %において初 期 Ca/Si 比 0.7 で 73.9 %、1.1 で 66.5 %、1.4 で 64.8 %であり、CO2ガス濃度 5.0 %においては初期 Ca/Si 比 0.7 で 67.2 %、1.1 で 64.0 %、1.4 で 63.4 %となった。初期 Ca/Si 比が高い C‑S‑H の方が 明らかに Ca の含有量が多いことから、炭酸化に対する 抵抗性が高いものと予想されたが、C‑S‑H 量の分析か らは、初期 Ca/Si 比が低いほど残存量も多い結果となっ た。しかしながら、本研究において試料粉末の量は 1.0g で統一されており、モル量で比較すると、C‑S‑H 量は 初期 Ca/Si 比 0.7 で 0.0083mol、1.1 で 0.0069mol、1.4 で 0.0058mol となり、異なっている。このため、C‑S‑H 量による比較だけでは、C‑S‑H の炭酸化速度は比較で きないと考えられる。そこで、CaCO3 生成量に関して 更なる検討を行うものとする。

Fig. 12 および Fig. 13 において、高 Ca 型 C‑S‑H 量、

CaCO3 量、SiO2量を足し合わせた値は、100 %にはほ ど遠く、試料全体に対して 30〜40 %程度の値である。

このように、完全分解を仮定した計算において、大きな 差異が生じる原因は、式[2]で表されるような高 Ca 型 C‑S‑H から低 Ca 型 C‑S‑H への変質を伴う部分分解が、

完全分解と同時に生じているためと考えられる。よっ て、 高 Ca 型 C‑S‑H 量、CaCO3量、SiO2量 を 足 し 合 わせた値に対する、100 %からの差分値が、低 Ca 型 C‑S‑H 量の推定値に相当すると考えられる。ただし、

前述のように SiO2量に関しては測定値ではなく、仮定 を設けた計算値であるため、低 Ca 型 C‑S‑H 量に関し ては定量値ではなく、あくまでも推定値である。

3. 4 Ca/Si比の異なるC-S-Hの炭酸化性状

 より詳細な C‑S‑H の炭酸化性状の検討を行うために、

低 Ca 型 C‑S‑H 量と高 Ca 型 C‑S‑H 量の経時変化を、

併 せ て Fig. 14 お よ び Fig. 15 に 示 す。 図 よ り、 初 期 Ca/Si 比 0.7 および 1.1 の C‑S‑H に関しては、炭酸化 初期に高 Ca 型 C‑S‑H がほとんど消失し、低 Ca 型 C‑S‑H へと変質した後に炭酸化が進行し、最終的に低 Ca 型の C‑S‑H として残存していることがわかる。一方、

初期 Ca/Si 比 1.4 の C‑S‑H に関しては、炭酸化初期 に高 Ca 型 C‑S‑H の分解は急激に生じるものの、低

Fig. 13  Changes in C-S-H with high Ca/Si ratio, CaCO3 and SiO2 amount(CO2 gas:5.0 vol.%)

Fig. 12  Changes in C-S-H with high Ca/Si ratio, CaCO3 and SiO2 amount(CO2 gas:0.5 vol.%)

(6)

 完全炭酸化時の CaCO3 量に対する、その時点での CaCO3量の割合の経時変化を、Fig. 16 および Fig. 17 に示す。図より、炭酸化の過程において傾向の変化はあ るものの、最終値で比較すると、初期 Ca/Si 比が高い ほど CaCO3量の割合が多い結果となっている。以上の ことから、本研究の実験条件の範囲内においては、初期 Ca/Si 比の低い C‑S‑H の炭酸化速度は、初期 Ca/Si 比  CaCO3量に関して、まず 1.0g の各試料が完全に炭酸

化したときの、試料中における CaCO3の量(質量%)を 求めた。すなわち、初期 Ca/Si 比 0.7 で 53.8 %、1.1 で 64.7 %、1.4 で 70.0 %となる。この完全炭酸化時の CaCO3量(質量%)に対して、ある時点での CaCO3量(質 量%)がどの程度の割合を占めるかを計算することで、

炭酸化の進行程度を表すことができると考えられる。

Fig. 15 Changes in C-S-H amount with low and high Ca/Si ratio(CO2 gas:5.0 vol.%)

Fig. 17  Changes in CaCO3 ratio in the CaCO3 amount when C-S-H is completely carbonated

(CO2 gas:5.0 vol.%)

Fig. 14 Changes in C-S-H amount with low and high Ca/Si ratio(CO2 gas:0.5 vol.%)

Fig. 16  Changes in CaCO3 ratio in the CaCO3 amount when C-S-H is completely carbonated

(CO2 gas:0.5 vol.%)

(7)

化の進行程度を表すと考えられる、完全炭酸化時の CaCO3量に対する、その時点での CaCO3量の割合 で比較しても、初期 Ca/Si 比が低いほど最終的な CaCO3 量の割合が少なく、C‑S‑H の炭酸化が進行 していない結果となった。

(4)  以上より、Ca/Si 比の異なる C‑S‑H の炭酸化性状 は、炭酸化進行時においては、高 Ca 型および低 Ca 型 C‑S‑H の割合が異なるなどの相違は見られ るが、炭酸化速度に大差はなく、最終的な C‑S‑H 残存量で比較すると、初期 Ca/Si 比が低い方がや や残存量が多い結果となった。

参考文献:

1)   鈴木一孝、西川直弘、林知延:Ca/Si 比の異なる C‑S‑H の炭酸化、セメント・コンクリート論文集、

No. 43、pp. 18‑23(1989)

2)   李春鶴、石田哲也:微細空隙構造と物質平衡・移動 の強連成に立脚したセメント水和生成物の炭酸化反 応モデル、コンクリート工学年次論文集、Vol. 28、

No. 1、pp. 701‑706(2006)

3)   石田剛朗、市場大伍、河合研至:C‑S‑H の炭酸化 に及ぼす二酸化炭素ガス濃度の影響、セメント・コ ンクリート論文集、No. 63、pp. 347‑353、(2009)

4)   石田剛朗ほか:速度論に基づく高 pH 溶液中への二 酸 化 炭 素 ガ ス 溶 解 モ デ ル、 土 木 学 会 論 文 集 E、

Vol. 66、No. 1、pp. 80‑93(2010)

5)   鈴木一孝ほか:コンクリートの耐久性評価を目的と した水和組織の分析手法に関する研究、コンクリー ト工学論文集、第 1 巻第 2 号、pp. 39‑49(1990)

6)   鈴木一孝ほか:低カルシウム C‑S‑H のキャラクタ リゼーション、セメント技術年報、No. 42、pp. 36‑

39(1988)

分ではなく、その真偽は定かではないが、シリカゲルに よる阻害が C‑S‑H 残存の原因であるとするならば、初 期 Ca/Si 比の低い C‑S‑H の残存量が多いことの一因は、

相対的に Si の含有量が多いためではないかと考えられ る。

4. 結論

 本研究では、模擬細孔溶液(pH13.2 の NaOH 溶液)

に Ca/Si 比の異なる合成 C‑S‑H(Ca/Si 比:0.7、1.1、

1.4)を加えたものを試料とし、炭酸化促進条件にあたる CO2 ガス濃度環境(CO2ガス濃度:0.5、5.0 %)に曝露 することによる C‑S‑H の炭酸化実験を行い、Ca/Si 比 の異なる C‑S‑H の炭酸化性状に関して実験的な検討を 行った。本研究により得られた結論を以下に示す。ただ し、以下の結論はすべて本研究の実験条件の範囲内にお ける結果によるものである。

(1)  本研究ではサリチル酸メタノールに溶解する Ca/Si 比 1.0 以上程度の C‑S‑H を高 Ca 型の C‑S‑H と 定義し、サリチル酸メタノールに溶解しない Ca/Si 比が 1.0 未満程度の C‑S‑H を低 Ca 型 C‑S‑H と 定義した。Ca/Si 比を 0.7、1.1、1.4 と設定して 合 成 し た C‑S‑H に は、 高 Ca 型 と 低 Ca 型 の C‑S‑H が混在しており、初期 Ca/Si 比が低いほど、

大きい割合で低 Ca 型 C‑S‑H が存在していた。

(2)  いずれの Ca/Si 比においても、炭酸化を受けると 低 Ca 型の C‑S‑H への変質を伴いながら分解が進 行するものと推察された。初期 Ca/Si 比 0.7 およ び 1.1 では、ほぼすべての高 Ca 型 C‑S‑H は分解 されていたが、初期 Ca/Si 比 1.4 では pH がほぼ 平衡値まで低下しても高 Ca 型 C‑S‑H の一部は残 存しており、CO2ガス濃度 0.5 %では 11 %、5.0 % では 4.4 %の高 Ca 型 C‑S‑H が残存していた。し かしながら、いずれの Ca/Si 比においても、最終

(8)

2   HIROSHIMA  UNIVERSITY,  Graduate  School  of  Engineering(1‑4‑1,  Kagamiyama,  Higashihiroshima‑shi, Hiroshima 739‑8527, Japan)

ABSTRACT:Not  only  the  change  of  pH  in  pore  solution  but  also  the  decomposition  of  cement  hydrates has to be considered to accurately estimate the carbonation progress. A large part of  cement hydrates consists of C‑S‑H. Therefore the carbonation characteristics of C‑S‑H have to  be investigated in detail. In this paper carbonation tests of C‑S‑H with various Ca/Si ratios(0.7,  1.1 and 1.4)were carried out. Synthesized C‑S‑H in sodium hydroxide solution that is a simulated  pore solution were carbonated using atmospheres containing 0.5 and 5.0 vol.% CO2 gases. From  the results of experiments, carbonation characteristics of the C‑S‑H with various Ca/Si ratios  were discussed. A part of C‑S‑H was not decomposed, while the pH of solution decreased to the  equilibrium value. A large part of the undecomposed C‑S‑H was C‑S‑H with a low Ca/Si ratio. 

However, a part of C‑S‑H with a high Ca/Si ratio was not decomposed for the C‑S‑H with the  initial Ca/Si ratio of 1.4. There is no difference in the carbonation rate of C‑S‑H due to the initial  Ca/Si ratio. However, the lower the initial Ca/Si ratio, the more the C‑S‑H was not decomposed  even though the pH of solution decreased to the equilibrium value. It is because the decomposition  of C‑S‑H might be inhibited by the existence of silica gel.

KEY WORDS:C‑S‑H, Carbonation, Ca/Si ratio

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