福岡市・北九州市漁業地区周辺域の環境特性に関する研究 その(2)
日大生産工(院) ○土屋 桂輔 日大生産工 宮崎 隆昌 日大生産工(PD) 中澤 公伯 日本生産工 里見 慎拓
1 研究の背景・目的
我が国の都市の臨海部には高密な商業・工業地 区が立地し、高度成長を支えてきた。しかし我国 の経済構造的変化に伴い、立地条件や輸送体系の 見直し、都市内の産業構造の変革が進展し、大規 模な未利用地が散在した。結果、臨海部には非連 続的な土地構造が形成され、現在に至っても大規 模な未利用地が存在している。このような地域変 容の中で従来から居住形態を続け、海域に生活・
生産的利用を継続しているのが漁業地区である。
しかし近年、漁業従事者の減少、臨海部・漁業 地区を中心をとした混住化が進んでおり、漁業地 区周辺の計画方途、高齢化が大きな問題となって いる。本稿では、漁業地区周辺域の施設面積、高 齢化率を把握することにより漁業地区周辺域を 中心とした計画方途を考察することを目的とし ている。
2.研究方法
統計局により発行されているH12年および H17年度における福岡市・北九州市の国勢調査結 果、福岡市役所・北九州市役所発行による建物用 途データを取り扱う。なお同データはGIS上に変 換し分析を行う。まずGIS上で、臨海部(海岸線 から2キロメートル)を抽出する。次に、海岸線 から0m-800m、 800-2000 mと距離帯を2分割 にして抽出し、それぞれ町丁別による人口統計を 加算していく。また漁業地区周辺域においては、
各漁港を中心に半径2000mを抽出し漁港から 0-500m、500-2000mと2 分割し分析した。
図1 福岡市沿岸域土地利用現況図 福岡市A・弘漁港 B・志賀島漁港 C・奈多漁港D・箱崎漁港
E・博多漁港 F・姪浜漁港 G・浜崎今津漁港
図2 北九州市沿岸域土地利用現況図
北九州市A・旧門司漁港 B・大里漁港C・長浜漁港 D・平松漁港 E・戸畑漁港 F・若松漁港 G・脇ノ浦漁港H・脇田漁港 I・岩屋漁港更に距離帯を2分割する際に分かれてしま町丁 においては、町丁の面積が優先して占有する距離 帯に含まれるものとする。
3.研究対象領域
研究対象領域として福岡市・北九州市の臨海部 に立地する,福岡市(志賀島,弘,奈多,箱崎,博多, 姪浜,浜崎今津)北九州市(岩屋,脇田,脇ノ浦,若 松,戸畑,平松,長浜,大里,旧門司)の漁港地区周 辺域を対象地区とした(図1・図2)。更に福岡市は D.I.D地区・郊外・離島、北九州市はD.I.D地区・
郊外・洞海湾内と立地条件別に分け分析をした。
Research concerning environmental property of region around Northern Kyushu City fishery district Fukuoka City(2)
Keisuke TSUCHIYA, Takamasa MIYAZAKI,Kiminori NAKAZAWA andNorihiro SATOMI
4. 臨海部における高齢化率
Ⅰ.福岡市
表1より全ての距離帯で高齢化率は上昇してい たが、上昇幅に大きな変化は見られなかった。福 岡市全体より沿岸域の高齢化率が高い傾向があ り、海岸線から0-800mで15.3%と最も高い値を 示した。
Ⅱ.北九州市
表2より北九州市全体でも高齢化率は、20.0%
を超えており超高齢社会となっている。特に海岸 線から0-800mにかけては25.5%と非常に高い値 を示しており、800-2000mも高い値を示している。
5. 立地条件別による漁港周辺域の高齢化率 a:D.I.D地区漁港
Ⅰ.福岡市
表3より箱崎漁港の高齢化率が比較的高い値を 示した。その他の博多漁港、姪浜漁港では、市の 高齢化率とも大きな変化はなく極端に高いとは 言えなかった。
Ⅱ.北九州市
表4より長浜漁港、平松漁港ともに全体的に高 くH12年に比べ大分高齢化か進んでいる。特に平 松漁港から0-500mではH12年からH17 年までに 3.4%上昇している。
b:郊外にある漁港
Ⅰ.福岡市
表5よりH12年・17年において奈多漁港、浜崎今 津漁港ともに漁港から0-500mで30.0%を超え非 常に高い値を示している。特に浜崎今津漁港から 500-2000mではH12年からH17 年までに6.8%上 昇しており急速に高齢化が進んでいる。漁港から 500-2000mより0-2000mが高い値を示すのは漁 港から0-500mで極端に高い値を示していること が根底にあると考えられる。
Ⅱ.北九州市
表6より20.0%以上の値を示す漁港が多くあり 非常に高齢化が進んでいる。特にH17年岩屋漁港
表1.福岡市臨海部の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
福岡市 0-2000 0-800 800-2000
福岡市臨海部
H12 H17
表2.北九州市臨海部の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
北九州市 0-2000 0-800 800-2000
北九州市臨海部
H12 H17
表3.福岡市DID地区の漁港の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
H12 H17 H12 H17 H12 H17
箱崎漁港 博多漁港 姪浜漁港
福岡市
D.I.D地区の漁港
0-2000 0-500 500-2000
表4.北九州市DID地区の漁港の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
H12 H17 H12 H17
長浜漁港 平松漁港
北九州市D.I.D地区の漁港
0-2000 0-500 500-2000
では漁港から0-500mでH12年から6.3%上昇し
35.0%を超えており極端に高い値を示した。その
他、旧門司漁港、脇田漁港で30.0%を超えており
全体的にD.I.D地区の漁港と比べ高齢化が進んで
いることがよく分かる結果となった。
c:離島にある漁港
Ⅰ.福岡市
表7よりH12年・17年において弘漁港、志賀島漁 港ともに全ての距離帯で25.0%以上を示した。
H17年にかけて高齢化は進んでいるが、極端に高 齢化が進んだ距離帯というのはなかった。
d:洞海湾内にある漁港
Ⅱ.北九州市
戸畑漁港、若松漁港ともに全ての距離帯で 20.0%以上を示しており、特にH17年の若松漁港 から0-500mでは33.4%と最も高い値を示した。
戸畑漁港は距離帯によって大きな差はないが 25.0%前後で市の高齢化率と比較すると高い値 を示している。
6. 漁港周辺域の総延べ床面積 a:住宅
表9より博多漁港から800-2000mは、他の漁港 に比べ極端に面積が多かった。D.I.D地区に立地 していることから、0-800mにかけても他の漁港 と比較すると面積が多い。弘・志賀島漁港におい ては他の漁港と比較すると極めて少ない面積で あった。
b:商業・業務施設
表10より商業・業務施設も博多漁港から800-200 mは、他の漁港と比較すると面積が多いことがわ かった。同じD.I.D地区にある箱崎・姪浜漁港も 他の漁港と比較すると面積が多く弘・志賀島・奈 多漁港は極めて少ない面積であった。
c:公共公益施設
表11より箱崎・博多漁港から800-2000mで極端に 面積が多くなっていた。姪浜・浜崎今津漁港も面 積は少なくなく、姪浜漁業から0-800mでは他の 漁業と比較すると比較的高い面積を示した。
d:工業施設
表12より箱崎・博多漁港で0-800m、800-2000m で他の漁港より高い面積を示した。特に箱崎漁港 から800-2000mでは極端に面積が多いことが分 かった。姪浜・浜崎今津漁港から800-2000mでも
表5.福岡市郊外の漁港の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
H12 H17 H12 H17
奈多漁港 浜崎今津漁港
福岡市郊外の漁港
0-2000 0-500 500-2000
表6.北九州市郊外の漁港の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
H12 H17 H12 H17 H12 H17 H12 H17 H12 H17
旧門司漁 港
大里漁港 脇ノ浦漁港 脇田漁港 岩屋漁港
北九州市郊外の漁港
0-2000 0-500 500-2000
表7.福岡市離島の漁港の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
H12 H17 H12 H17
弘漁港 志賀島漁港
福岡市離島の漁港
0-2000 0-500 500-2000
表8.北九州市洞海湾内の漁港の高齢化率
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
H12 H17 H12 H17
戸畑漁港 若松漁港
北九州市洞海湾内の漁港
0-2000 0-500 500-2000
少ないながら面積を示したが0-800mでは、ほと んど面積を示さなかった。
e:農林漁業用施設
先程までの施設とは違い郊外や離島にある弘・志
賀島漁港や奈多・浜崎今津漁港の周辺域で多い面
積を示した。特に志賀島漁港から0-800mで極め て多い面積を示した。
7. 考察
Ⅰ.福岡市
福岡市の漁港周辺域はほぼ全ての漁港で高齢化 が進んでいる。D.I.D地区<郊外<離島という順 序で高齢化率は高く、特に離島にある漁港から 0-500mでは、新規居住者も少なく以前から住ん でいる漁業従事者等の居住者が多いことが考え られる。農林漁業用施設も郊外・離島の漁業周辺 域に多く立地しており、従来の居住形態が保たれ ていることが伺える。しかし新規居住者が少ない ことにより、D.I.Dに比べ計画的な整備がなされ ておらず、急速な高齢化に伴い介護・福祉施設や 公共公益施設の重要性が懸念されている。D.I.D 地区の漁港周辺域では混住化が進んでおり市の 高齢化率と大きな差はない。住宅の総延べ床面積 も漁港から800-2000m極めて高く、漁港周辺域で の混住化、総延べ床面積はこれからも上昇の傾向 にあると考えられる。D.I.D地区ということで交 通の利便性、大型の商業施設等が点在しており住 環境整備が比較的成されているということが背 景にあげられる。
Ⅱ.北九州市
北九州市の漁港周辺域の高齢化率は25.0%を超 えている漁港も数多くあり極めて高いのが現状 となっている。市の高齢化率も19.3%と高い数値 を示している。北九州市の総人口は減少傾向にあ り特に30歳までの人の転出が多く市および漁港 周辺域の高齢化率はこれからも上昇の傾向にあ ると考えられる。特に漁港周辺域では新規居住者 も少ないために沿岸域全体としてアメニティー 空間や居住環境など魅力ある計画が求められる と考えられる。
8. 参考文献
参考文献
1)宮崎隆昌、中澤公伯、陸京子:大阪湾沿岸域における土地利用を主体とした環境特性 に関する研究、その2第36回 日本大学生産工学部学術講演会、pp.109-114 2)宮崎隆昌、中澤公伯:東京湾臨海部における土地利用の総体的把握と分析システムの構 築―大都市沿岸域における土地利用上の環境システムに関する研究―、日本建築学会技術 報告集、第9号、pp.213-218、1999
3)宮崎隆昌、他2名:メッシュデータによる土地利用異例用途間距離の算定とその性質―
大都市沿岸域における土地利用空間の乖離に関する基礎的研究(その1)、日本建築学会 計画系論文集、第539号、pp.171-178、2001
4)福岡県水産林務部漁港課:福岡県の漁港
菅9雅幸、他2名:大都市に近接した漁港地区の特性、日本建築学会計画系論文報告集385
表9.漁港周辺域の延べ床面積の合計(住宅)
表10.漁港周辺域の延べ床面積の合計(商業・業務施設)
表11.漁港周辺域の延べ床面積の合計(公共公益施設)
表12.漁港周辺域の延べ床面積の合計(工業施設)
表12.漁港周辺域の延べ床面積の合計(農業漁業用施設)
0 500000 1000000 1500000 2000000 2500000 3000000
延べ床面積の合計(住宅.㎡)
0-800 800-2000
0 500000 1000000 1500000 2000000 2500000 3000000 3500000 4000000
延べ床面積の合計(商業・業務施設.㎡)
0-800 800-2000
0 200000 400000 600000 800000 1000000 1200000
延べ床面積の合計(公共公益施設.㎡)
0-800 800-2000
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
延べ床面積の合計(農林漁業用施設.㎡)
0-800 800-2000 0
200000 400000 600000 800000 1000000 1200000 1400000
延べ床面積の合計(工業施設
.㎡
)0-800 800-2000