福岡県工業技術センター 研究報告 No. 19 (2009)
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マグネシウム合金への表面処理技術の開発
―マグネシウム合金用3価クロム化成処理技術の開発(第1報)―
古賀 弘毅
*1中野 賢三
*1宅野 千秋
*2Development of Surface Treatment for Magnesium Alloy
- Development of Conversion Treatment Using Trivalent Chromium for Magnesium Alloy(1
streport) -
Hiroki Koga, Kenzo Nakano and Chiaki Takuno
マグネシウム合金は大変反応活性な金属であることから表面に腐食生成物を生じやすく,塗装密着性を得るため には下地処理として化学的に安定な皮膜を付与する化成処理が必要不可欠である。本研究では自動車部材等へ使用 可能な高耐食性化成処理法を開発するため,リン酸,硫酸クロムカリウム等を使用した 3 価クロム化成処理方法を 検討した。リン酸量,クロム(Ⅲ)量等を最適化することにより,24 時間塩水噴霧試験においてに腐食生成物の 生じない処理条件を得ることができた。また,一般的に使用されるアクリル系塗料との塗装密着性についても充分 な密着性が得られた。
1 はじめに
マグネシウム合金は,軽量でかつ高強度であること から,ノートパソコンや携帯電話等の筐体などに使用 されており,今後,さらに使用量が増加すると言われ ている
1)。
一方,自動車産業においても二酸化炭素排出量低減 のため,車体重量の軽量化が必要不可欠であり,マグ ネシウム合金の利用が有効であるとされている
2)。し かしながらマグネシウム合金は実用金属中で最も卑な 金属であることから耐食性に劣るため,その利用もシ ートフレームやステアリングホイール等のコクピット 内の部材への利用に限られている。今後,マグネシウ ム合金の利用拡大のためには高耐食性の表面処理が必 要不可欠である。
現在,採用されているマグネシウム合金の表面処理 は塗装が一般的であり,その下地処理として低コスト な化成処理が採用されている。過去には6価クロムを 使用した化成処理が一般的であったが,昨今の欧州指 令(RoHS,ELVなど)の影響を受け,6価クロムを使用 しない化成処理方法が使用されるようになっている。
近年の化成処理の開発動向は,クロムを使用しない いわゆるノンクロム化成処理に関するものが中心であ るが,これらの処理は一般的に6価クロム化成処理の
耐食性に及ばないため,携帯端末等の商品寿命が短く,
かつ,腐食環境の緩やかなものに適用されている。自 動車部材として使用するためにはさらなる高耐食性が 必要不可欠である。
本研究では,自動車部材として使用可能な高耐食性 化成処理法の開発を目的として,リン酸,硫酸クロム カリウム等を使用した3価クロムを用いた化成処理方 法を検討した。
2 実験方法 2-1 供試料
実験には社団法人日本マグネシウム協会製のAZ91D 標準試験片(150mm×60mm×t3mm)を使用した。化成 処理のための試験片は研磨紙により♯600まで湿式研 磨して試験に供した。
塗装密着性試験では,化成処理した試験片について,
実際に二輪車部材について行われるアクリル系樹脂を 塗装をしたものを使用した。塗装条件を表1に示す。
表1 塗装条件
操作 条件
①脱脂 なし
②下塗り アクリル-アルキッド系樹脂,刷毛塗り
③乾燥 常温,5〜10分間
④上塗り アクリル-メラミン-エポキシ系樹脂,刷毛塗り
⑤乾燥 160℃,20分間
*1 機械電子研究所
*2 ケイアンドエムテクノロジィ(株)
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2-2 化成処理方法
マグネシウム合金に限らずあらゆる金属への表面処 理ではその前処理方法が重要であるが,今回は化成処 理剤とその処理方法の開発に重点をおくため,湿式研 磨したサンプルを用いることで前処理工程を省略した。
今回,化成処理剤の健浴には,硫酸クロム(Ⅲ)カ リウム12水和物(関東化学(株) 特級),リン酸(関 東化学(株) 特級),硫酸アンモニウム(和光純薬工 業(株) 特級)等を使用した。処理方法は単純な浸 漬法で行った。基本的な化成処理条件を表2に示す。
組成構成試薬量は最適組成を探索するため,適宜,変 更した。処理後は流水で軽く水洗し,エアブローで乾 燥した。
表2 化成処理基本条件
項目 条件
CrK(SO
4)
2・12H
2O 1g/L(Crとして)
(NH4)
2SO
41g/L(NH
4+として)
H
3PO
410g/L(PO
43-として)
pH 3.0 浴温 40℃
処理時間 1分間
2-3 評価方法
本法により得られた化成皮膜組成および深さ方向元 素分布の測定には,グロー放電発光分析装置((株)
堀場製作所 JY-500RF型,GD-OESと略す。)を使用した。
また,皮膜表面の観察にはX線分析機能付き走査型電 子顕微鏡((株)エリオニクス ERA-8800型,SEM-EDX と略す。)を使用した。耐食性評価には,塩水噴霧試 験機(スガ試験機(株) STP-120型)を使用して24時 間の中性塩水噴霧試験
3)を実施した。中性塩水噴霧試 験の試験条件を表3に示す。
表3 塩水噴霧試験条件
項目 条件
噴霧塩水組成 50g/L 塩化ナトリウム pH 7.0 試験温度 35℃
塩水噴霧量 1.5ml/hr(水平採取面積80cm
2当り)
試験片角度 20°(鉛直線に対し)
試験時間 160℃,20分間
塗装密着性の評価は,碁盤目試験
4)により実施した。
塗装後そのまま試験を行う一次密着性評価と,温水に 浸漬した後試験を行う二次密着性評価を実施した。二 次密着性評価を実施した際の温水浸漬試験の条件を表 4に示す。
表4 温水浸漬試験条件
項目 条件
水 イオン交換水 温度 40℃
試験時間 120時間
3 実験結果および考察 3-1 化成皮膜の組成分析結果
表2に示す基本条件による化成皮膜をGD-OESにより 深さ方向の元素分析を行った結果を図1に示す。クロ ム,リン,窒素については本来の濃度を5倍して表示 している。この結果から本処理ではクロム,リン,酸 素,窒素およびマグネシウムからなる化成皮膜が形成 されていることが明らかとなった。なお,本処理によ り得られた化成皮膜の膜厚は定量計算によると約1μm であった。この基本条件をベースにクロム濃度を変化 させたところ,クロム濃度が少ない条件では膜厚が減 少し,多い条件では膜厚が増大した。このことから化 成処理剤中にクロム濃度が多いと反応速度が増すと考 えられる。なお,基本条件により得られる化成皮膜中 のクロム濃度は深さ方向により増減があるが概ね10%
前後,リン濃度も同様に10〜15%程度であった。なお,
化成皮膜中のリン濃度は化成処理剤中のクロム量を増 やすと減少する傾向が見られた。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
深さ / μm
濃度 / %
P×5倍 Cr×5倍
N×5倍 O
Mg
Al