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塩水噴霧試験による表面被覆難燃性マグネシウム合金の耐食性評価

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Academic year: 2021

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(1)

塩水噴霧試験による表面被覆難燃性マグネシウム合金の耐食性評価 

南 守

*1

  土山 明美

*1

    

 

Evaluation of Corrosion Resistance for Surface Coated Non-combustible Magnesium Alloy by Salt Spray Test 

Mamoru Minami and Akemi Tsuchiyama    

鉄道車両用部材への適用が期待される難燃性マグネシウム合金に,最適な表面処理法を探索するため各種表面処 理した難燃性マグネシウム合金の耐食性を塩水噴霧試験により評価した。基材には難燃性マグネシウム合金AMX602

(X=Ca)押出材を用い,その表面に通常のマグネシウム合金であるAZ91D用の化成処理,陽極酸化処理を施した。

塩水噴霧試験時間は36時間とし,試験片下部にはクロスカットを施した。試験の結果,AMX602の耐食性は,化成処 理ではその向上は認められないが,陽極酸化処理では著しく向上することが判明した。 

 

1  はじめに 

エネルギー効率の観点から,次期新幹線では大幅な 重量削減に対するニーズが挙げられている。構造を工 夫することによる対策はほぼ飽和した状態であるため,

さらなる軽量材料の活用が求められており,実用金属 中最も軽量で優れたリサイクル性を有するマグネシウ ムが有望視されている。ただし,マグネシウムは大気 中で容易に発火・燃焼するため,車両のマグネシウム 化に関しては,安全性に対する十分な注意が必要であ る。 

産業技術総合研究所九州センターが開発した難燃性 マグネシウム合金は,カルシウム添加により発火温度 を 300℃高めたものであり,鉄道車両部材への適用が 最も有望な材料と言える。ただし,マグネシウムは実 用金属中最も卑な電位を示し,化学的に活性で他の金 属材料よりも耐食性が劣るという欠点を有している

1)

。 そのため,マグネシウム合金を実用部材として用いる 場合には,耐食性を向上させるために何らかの表面処 理を施す必要があり

1)

,一般には化成処理や陽極酸化 といった表面処理が施されている

2)

。 

難燃性マグネシウム合金においても,素材自体の耐 食性改善はなされていないため,構造用部材として用 いるには何らかの表面処理を施す必要がある。しかし,

難燃性マグネシウム合金に対して化成処理や陽極酸化 といった表面処理が適用できるかどうかは検討されて おらず,最適な処理条件の探索は行われていないのが 現状である。 

本研究では,表面処理された難燃性マグネシウム合 金の耐食性を JIS に準拠した塩化ナトリウム溶液噴霧 試験(塩水噴霧試験)により評価し,難燃性マグネシ ウム合金表面処理に関する技術データベースの構築と 最適な処理条件の探索を行うものである。 

 

2  研究,実験方法  2-1  表面処理 

基材には難燃性マグネシウム合金AMX602(X=Ca)押 出材を用いた。基材の化学組成を表1に示す。表面処 理には,通常のマグネシウム合金の表面処理法である 化成処理と陽極酸化処理を用いた。なお,表面処理作 業は外注し,処理液は市販のマグネシウム合金である AZ91D用の液を適用した。使用した表面処理液と外注 先を表2に示す。 

 

表1  化学組成(mass%) 

Al Ca Mn Si Zn Cl Mg 7.32 2.09 0.29 0.05 0.02 0.01 bal.

 

表2  表面処理液及び外注先 

試料名 処理液  外注先 

試料1  化成処理液a  A社 

試料2  化成処理液b  B社 

試料3  陽極酸化処理液c  C社   

 

*1  機械電子研究所 

(2)

2-2  基材及び皮膜の分析 

  表面  断面 

    (a)

   

    (b)

   

  (c)

   

  (d)

    基材の成分分析には蛍光X線分析装置(理学電機工

業(株)製,RIX3001)を用いた。皮膜表面及び断面 の観察には走査型電子顕微鏡(SEM)((株)エリオニ クス製ERA8800,(株)日立製作所製S-4500)を用いた。

皮 膜 の 成 分 分 析 に は 電 子 線 マ イ ク ロ ア ナ ラ イ ザ ー

(EPMA)((株)島津製作所製EPMA-1600)を用いた。

結 晶 構 造 の 解 析 は , X 線 回 折 装 置 (( 株 ) リ ガ ク 製 RINT-2500V ) を 用 い た 。 入 射 X 線 に は CuK α 特 性 X 線

(40kV,200mA)を用いた。 

20µm 

樹脂 

2-3  塩水噴霧試験 

各 種 表 面 処 理 し た AMX602 試 験 片 に 対 し て , JIS  Z  2371に準拠した塩水噴霧試験を行った。試験片形状は 20×50×2mmの平板とし,試験片下部には基材に達す るクロスカットを施した。試験時間は36時間とし,試 験前後の外観観察から耐食性を評価した。 

 

3  結果と考察  3-1  皮膜分析 

図1に未処理及び各種表面処理後の試料表面と断面 のSEM観察結果を示す。未処理材表面からは,エメリ ー研磨紙で600番まで研磨した際の研磨傷と粒状の介 在物が観察される。試料1表面からは,粒状の介在物 及び介在物が除去されて生じたと推測される窪みが観 察される。本化成処理条件では,表面調整工程によっ て表層がエッチングされ介在物が脱落するため,表面 に凹凸が形成されたものと思われる。試料2表面から は,粒状の介在物の脱落はあまり見られず,表面を薄 く覆う形で皮膜が析出していることが観察される。す なわち本化成処理条件では,試料1ほど表層はエッチ ングされないものと考えられる。試料3表面からは,

陽極酸化によ り生成した数

µ

m径の孔が多数観察され る。続いて,断面SEM観察から,試料1,試料2はとも に明瞭な皮膜の同定は出来ないことが分かる。一般的 に,化成皮膜は膜厚が1

µ

m以下と言われていることか ら,両化成皮膜とも1

µ

m以下の厚さと推察される。一 方,試料3は厚さ20

µ

m程度の多孔質な皮膜を形成して いることが分かる。 

次に,皮膜の結晶構造を解析するためX線回折測定 を行った。未処理材からはマグネシウムと金属間化合 物Al

2

Caに起因する回折線が得られた。一方,表面処 理材からは基材に関する回折線は得られるものの, 

図1  未処理及び各種表面処理後のSEM観察結果 

(a)未処理,(b)試料1,(c)試料2,(d)試料3   

図2  試料3のX線回折測定結果(X線入射角度 1°) 

 

皮膜に起因する明瞭な回折線については得られなかっ た。そこで,X線の入射角度を1°に固定した薄膜光学 系にて再度測定を行った。ただし,試料1,試料2に関 しては平坦な測定サンプルが得られなかったことから,

試料3についてのみ測定を行った。得られた結果を図2 に示す。20〜25°に集中光学系では検出できなかった ブロードなピークが認められることから,陽極酸化皮

20µm 

基材 

樹脂 

20µm 

基材  樹脂 

20µm 

基材 

20µm

0 30 60 90 120

10 20 30 40 50 60 70 80 90

2θ(deg)

強度(任意単位)

(3)

膜は非晶質な状態で存在しているものと推測される。

なお,試料1,試料2の結晶学的な情報は得られなかっ たため,今後はX線光電子分光分析により表面処理材 の皮膜構造について詳細に検討する必要がある。 

3-2  塩水噴霧試験 

図 3 に塩水噴霧試験前後の外観状況を示す。未処理 材,試料 1 及び試料 2 からは,クロスカット及びクロ スカット部以外からの著しい腐食が見られる。化成処 理しているにも関わらず,試料 1 及び試料 2 から激し い腐 食 が発 生 した 原 因に つ いて 調 査す る ため , 次に EPMAによる皮膜表面分析を行った。試料 1 及び試料 2 表面の元素マッピング結果をそれぞれ図 4 及び図 5 に 示す。両化成皮膜からはリン,カルシウム,マンガン が検出され,皮膜はともに不均一に析出していること が分かる。梅原らの研究結果から,AZ91Dではマグネ シウムマトリックスと金属間化合物相の間に局部電池 が構成され,化成皮膜の形成量が異なることが判明し ている

3)

。よって,難燃性マグネシウム合金の場合も AZ91D同様,マグネシウムマトリックスと金属間化合 物相間で局部電池が構成され不均一な皮膜が形成され ることは十分考えられる。従って,試料 1 及び試料 2 が未処理材と同様全面腐食となった原因は,難燃性マ グネシウムの組織,組成を考慮した化成処理プロセス 

 

図 3  塩水噴霧試験前後の外観状況 

(試験片サイズ 20×50mm) 

  図 4  試料 1 表面の元素マッピング結果   

  図 5  試料 2 表面の元素マッピング結果   

を適用するのではなく,市販のAZ91D用化成処理条件 をそのまま用いたため,マグネシウムマトリックスと 金属間化合物相Al

2

Ca間で化成皮膜の析出量が不均一 となり,難燃性マグネシウム合金全体で十分な防食効 果を発揮する程度の皮膜性能には至らなかったことが 起因しているのではないかと推察される。 

  未処理材  試料 1  試料 2  試料 3  試

験 前 

 

 

試 験 後 

 

 

試料 3 の塩水噴霧試験結果を見ると,クロスカット

部に若干の腐食は見られるが,それ以外の箇所から腐

食は見られない。一般的に,絶縁性の薄膜は電気化学

反応に関与しないため,絶縁性の膜を被覆された材料

の耐食性は,試験溶液が薄膜中の欠陥(貫通孔やクラ

ックなど)を通して基板に達することに影響されると

考えるのが妥当である。よって,試料 3 が多孔質な構

造であるにもかかわらず高い耐食性を示した原因につ

いて調査するため,次に EPMA による皮膜断面分析を

行った。図 6 に試料 3 断面の元素マッピング結果を示

す。多孔質な皮膜と基板との界面に厚さ 2

µ

m 程度の

層が形成されていることが分かる。この層は,多孔質

な皮膜と比べ緻密で,マグネシウムは高く,リンは低

くい組成となっている。よって,試料 3 が多孔質な構

(4)

  図 6  試料 3 断面の元素マッピング結果   

造であるにもかかわらず高い耐食性を示した原因は,

基板表面に緻密な層が形成され貫通型欠陥が減少し,

基板の溶解が抑制されたことによるものと推察される。 

 

4  まとめ 

軽量構造部材として非常に期待の大きい難燃性マグ ネシウム合金表面処理に関する技術データベースの構 築を図るため,各種表面処理された難燃性マグネシウ ム合金の耐食性評価試験を行った。その結果,市販の AZ91D 用 化 成 処 理 条 件 で は 難 燃 性 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 AMX602 の耐食性向上は認められないこと,すなわち,

難燃性マグネシウム合金専用の化成処理条件を開発す る必要があることが判明した。一方,市販の AZ91D 用 陽 極 酸 化 処 理 条 件 で は 難 燃 性 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 AMX602 の耐食性は著しく向上することが分かった。

これは基板と皮膜界面に緻密な層が形成され,腐食媒 体からの環境遮断性が向上したことによるものと推察 される。 

 

5  参考文献 

1)高谷松文:材料と環境,48巻(8号),p.476(1999)  2)秋本政弘:工業材料,47巻(5号),p.45(1999)  3)梅原博行,高谷松文:まてりあ,43巻(4号), 

p.281(2004) 

参照

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