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マグネシウム合金への表面処理技術の開発

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Academic year: 2021

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

  - 89 -

マグネシウム合金への表面処理技術の開発 

―樹脂被覆マグネシウム合金上へのめっき技術に関する研究― 

南 守

*1

  猪口 真規

*1

 

 

Development of Surface Treatment for Magnesium Alloy 

−Research on Plating Process on Resin Coated Magnesium Alloy− 

Mamoru Minami and Shinki Inokuchi

 

 

イオン交換樹脂粉砕粉を顔料とする樹脂を被覆したマグネシウム合金上へ無電解めっき処理を施し,樹脂被覆マ グネシウム合金に対するめっき処理の問題点および実用化の可能性について調査検討した。基材にはAZ91D鋳造用 マグネシウム合金板材を用い,表面処理には無電解銅めっき,無電解ニッケルめっきを採用した。試験の結果,イ オン交換樹脂粉砕粉を顔料とする樹脂を用いることで密着性,耐食性に優れためっき皮膜形成は可能だが,樹脂層 の凹凸を低減する,あるいはめっき皮膜の膜厚を増加する等の対策を講じない限り,マグネシウム合金上へ意匠性 の高い皮膜を形成することは難しいことが分かった。 

 

1  はじめに 

マグネシウムは実用金属の中で最も軽量であり,さ らにその合金は,比強度が高く,鋳造性,寸法安定性,

振動吸収性,電磁波シールド性,リサイクル性に優れ た特性を有している 1), 2)。そのため各種産業におい て,マグネシウム合金の適用が拡大しており,特に自 動車を始めとする輸送機器関連分野では,省エネルギ ーに寄与する軽量化材料として大きな期待が寄せられ ている 3)。しかしながら,マグネシウム合金は実用金 属中最も卑な電位を示し,化学的に活性で他の金属材 料よりも耐食性が劣るという欠点を有している 1)。そ のため,マグネシウム合金を実用部材として用いる場 合は,何らかの表面処理を施し耐食性を向上させる必 要がある 4)。このような背景を踏まえ,当所では耐食,

意匠,耐摩耗性に優れるマグネシウム合金表面処理法 に関する研究を行っている。 

表面処理の中でも,金属光沢を有する外観や耐摩耗 性付与といった理由から,マグネシウム合金表面への めっき処理に対する要求は極めて高い。しかし,めっ き膜とマグネシウム基材との密着性が低いことや皮膜 のピンホール欠陥に起因するマグネシウム素地の腐食 といった問題から,マグネシウム合金上へのめっきは 実用化が遅れているのが現状である。そこで当所では,

密着性やピンホール欠陥に影響されないめっき処理技

術としてマグネシウム合金上へ樹脂を被覆し,その上 に無電解めっき皮膜を形成する手法に着目した。 

通常,樹脂などの非導電性基材表面に無電解めっき 処理を施す際には,めっき皮膜と非導電性基材との密 着性を向上させるために有害なクロム酸などによるエ ッチング処理が必要となる。また,無電解めっき反応 前処理として触媒化行程が必要であり,通常は高活性 なパラジウム塩を用いることからめっき処理コストも 高くなるという問題点を有している。これに対して御 幡ら5)が開発したイオン交換樹脂粉砕粉を利用する新 規な無電解めっき処理法では,有害なクロム酸などに よるエッチング処理やパラジウム塩を用いた触媒化前 処理を必要としない等の特徴を有しているため,安全 かつ安価に非導電性基材表面に無電解めっき処理を施 すことが可能となることを明らかにしている。 

本研究では,AZ91D 鋳造用マグネシウム合金にイオ ン交換樹脂粉砕粉を顔料とする樹脂を被覆し,その上 に無電解めっき処理を行った際の,樹脂被覆マグネシ ウム合金に対するめっき処理の問題点および実用化の 可能性について調査検討を行った。 

 

2  研究,実験方法  2-1  基材 

基材には,AZ91D鋳造用マグネシウム合金材を用い た。化学組成を表1に示す。試験片形状は20×50×2mm の平板とし,エメリー研磨紙にて600番まで研磨後,

 

*1  機械電子研究所   

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

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アセトン中で超音波洗浄したのち樹脂被覆処理に供し た。 

表1 化学組成(mass%) 

Al  Zn  Mn  Na  Cl  Si  Mg  9.59  0.57  0.18  0.11  0.07  0.06  0.01 bal.

 

2-2  樹脂層 

樹脂原料には,陽イオン交換樹脂粉砕微粉を顔料と する無電解めっき用前処理剤(室町ケミカル(株)製 CRプライマーB100)を用いた。マグネシウム合金との 付着性を向上させる中間層形成後,上記前処理剤をシ ンナーで希釈しスプレー塗装して,60℃,1時間乾燥 させ,樹脂被覆基板とした。 

2-3  めっき前処理および無電解銅めっき 

樹脂被覆基板を40℃の塩化銅2水和物3.0g/100ml水 溶液中に15分浸漬し,基板表面にイオン交換反応によ り銅イオンを吸着させた。水洗後,40℃の水素化ホウ 素ナトリウム0.38g/100ml水溶液(水酸化ナトリウム によりpH14に調整)中に5分間浸漬し,吸着銅イオン の化学還元処理を行った。さらに,水洗後,無電解銅 め っ き 液 ( メ ル テ ッ ク ス ( 株 ) 製 メ ル プ レ ー ト CU- 390)中に投入し,25℃で45分間めっき処理を行い,

銅めっき処理基板を作製した。 

2-4  無電解ニッケルめっき 

銅めっき処理基板を触媒液(奥野製薬工業(株)製 キャタリストC-7)中に浸漬しパラジウムを樹脂表面 に付 与 後, 無 電解 ニ ッケ ル めっ き 液( 奥 野製 薬 工業

(株)製化学ニッケルSEP)中に投入し,40℃,1時間 のめっき処理を行った。引き続き水洗後,60℃,1時 間の乾燥処理を行い銅/ニッケルめっき処理基板の作 製を行った。 

2-5  試料評価 

試 料 表 面 及 び 断 面 の 観 察 に は 走 査 型 電 子 顕 微 鏡

((株)エリオニクス製 ERA8800)を用いた。なお,

銅/ニッケルめっき皮膜の膜厚測定を試料断面の電子 顕微鏡観察から試みたが,イオン交換樹脂の凹凸によ る影響から正確な値は測定できず,概ね銅めっき膜厚 は約 1µm,ニッケルめっき膜厚は約 4µm であった。め っ き 皮 膜 と 樹 脂 被 覆 基 板 と の 密 着 性 は , JIS K 5600 に準拠したクロスカット法により評価した。耐食性は,

JIS  Z  2371 に 準 拠 し た 塩 水 噴 霧 試 験 ( ス ガ 試 験 機

(株)製 STP-120)により評価した。試験時間は 24

時間とし,試験前後の外観観察から耐食性を評価した。

なお,マグネシウム基板上に直接約 15µm の無電解ニ ッケルめっき皮膜を形成した試料を比較材として使用 した。 

 

3  結果と考察 

3-1  表面観察及び皮膜密着性 

樹脂被覆基板表面,銅/ニッケルめっき処理基板表 面の電子顕微鏡写真を図1に示す。未処理材は,イオ ン交換樹脂粉砕粉が微細に分散して凹凸のある表面を 呈していることが分かる。銅/ニッケルめっき処理材 は,下地の影響を引き継いだ凹凸のあるめっき皮膜が 形成されていることが観察できる。クロスカット法に よりめっき皮膜と樹脂被覆基板との密着性を評価した 結果を図2に示す。皮膜の剥離箇所は観察されず,密 着性は良好であることが分かる。以上の結果より,イ オン交換樹脂粉砕粉を顔料とする樹脂層を用いること で密着性に優れたマグネシウム合金上へのめっき皮膜 形成は可能であることが明らかとなった。ただし,め っき皮膜の意匠性の向上に関しては今後の検討を要す る課題であり,樹脂層の凹凸を低減する,あるいはめ っき皮膜の膜厚を増加する等の対策を講じ表面平滑化 を目指す予定である。 

  図1 樹脂被覆基板表面と銅/ニッケルめっき処理基板

表面の電子顕微鏡写真   

  図2 密着性評価試験結果 

3-2  耐食性評価 

  塩水噴霧試験前後の比較材及び銅/ニッケルめっき 処理材の外観観察結果を図3に示す。なお,樹脂被覆 のみの試験片は,塩水噴霧240時間でも樹脂の剥離,

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

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マグネシウム合金の腐食等は生じないことを確認して いる。塩水噴霧試験後の比較材からは,表面全体にめ っき皮膜の剥離,ふくれ,素地の腐食が観察される。

これは,無電解めっき皮膜の欠陥を通して塩水が基板 まで浸透し,マグネシウム合金とめっき皮膜の異種金 属接触による腐食の促進効果により基材が著しく腐食 し,形成されるマグネシウム水酸化物の堆積により膜 の破壊と剥離が起こるからではないかと推察される。

その一方で,銅/ニッケルめっき処理材は,若干の変 色は見られるもののめっき皮膜の剥離,ふくれ,基材 の腐食は皆無であり,耐食性が著しく向上しているこ とが分かる。これらの結果から,マグネシウム基材と めっき皮膜との間に樹脂層を形成することにより,無 電解めっき皮膜の欠陥を通して浸入する腐食溶液とマ グネシウム合金との接触を遮断することが可能となり,

環境遮断性,耐食性に優れるマグネシウム合金上めっ き皮膜を形成できることが判明した。 

  図3 塩水噴霧試験結果 

 

4  まとめ 

本研究において,樹脂被覆マグネシウム合金上への めっき処理について検討を行った結果,以下の知見を 得た。 

1) イオン交換樹脂粉砕粉を顔料とする樹脂層を用い ることで密着性に優れたマグネシウム合金上へのめっ き皮膜形成は可能であることが明らかとなった。 

2)マグネシウム基材とめっき皮膜との間に樹脂層を 形成することにより,マグネシウム合金めっき処理材 の耐食性は著しく向上することが分かった。これは基 板とめっき皮膜界面に緻密な中間層が形成され,腐食 媒体からの環境遮断性が向上したことによるものと推 察される。 

終わりに,本研究を遂行するにあたり有益なご助言

を賜りました室町ケミカル(株)田中知樹氏に感謝の 意を表します。 

 

5  参考文献 

1) マ グ ネ シ ウ ム 加 工 技 術 , pp.12-33 , コ ロ ナ 社  (2004) 

2) マ グ ネ シ ウ ム 技 術 便 覧 , pp.55-65 , カ ロ ス 出 版 (2007) 

3)板倉浩二:金属,75巻(12号),pp.36-43 (2005)  4) 髙 谷 松 文 : 材 料 と 環 境 , 48 巻 (8 号 ) , pp.476-483 

(1999) 

5)御幡弘明,田中知樹:福岡県工業技術センター研究 報告,No.14,pp.107-108 (2004) 

     

参照

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