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マグネシウム合金への表面処理技術の開発

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Academic year: 2021

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

  - 92 -

マグネシウム合金への表面処理技術の開発 

―ノンクロム化成処理における浴組成に関する研究― 

中野 賢三

*1

  古賀 弘毅

*1

 

 

Development of Surface Treatment for Magnesium Alloy

-Research on Bath Composition for Chromium-free Conversion Treatment-

Kenzo Nakano and Hiroki Koga 

 

マグネシウム合金へのノンクロム化成処理として, リン酸およびFe, Ni, Zn, Mn, Caの各種金属塩を添加して調製 した浴を用いてマグネシウム合金に化成処理を施し, 皮膜微細構造を調査するとともに耐食性を評価した。その結 果, リン酸Ca皮膜は最も高い耐食性を示し, さらに浴中リン酸濃度の低下によりクラックのない緻密な化成皮膜が 形成され, 耐食性が向上することが明らかとなった。

 

1  はじめに

近年, 地球温暖化防止の観点からCO2排出ガス削減 が要求されており, 自動車等の車両部材へのマグネシ ウム合金の適用による軽量化等の省エネルギー化技術 が注目されている。また, 携帯電話やノートパソコン 等の電子機器の筐体にもマグネシウム合金が一部適用 されている1)。マグネシウムは比重1.74g/cm3と実用金 属中で最も軽く, マグネシウム合金は高い比強度を示 すものの, 他の金属材料に比べ耐食性が劣るといった 問題がある。そのため、実用に際しては表面処理によ る防食が必要となっている。

現在, マグネシウム表面処理のうち塗装下地として 利用される化成処理では, RoHSやELVといった欧州 指令を受け, 従来からの六価クロム化成処理より耐食 性が劣る3価クロム化成処理やノンクロム化成処理が 施されている2)。クロムを使用しないため将来的に規 制対象となる可能性が低いノンクロム化成処理につい ては, リン酸系, シュウ酸系, スズ酸塩系, フッ化物 系, マンガン系等, 多数の化成浴が研究されており、

現在、リン酸Mn系が主流3)となっている。本研究では, 比較的安価なリン酸塩化成処理について, 高耐食性に 適した化成浴組成の検討を行った。

 

2  研究,実験方法

マグネシウム合金基材には15cm×7cmのAZ91板材

(日本マグネシウム協会)を用い, 前処理としてエメ

リー紙800番で表面を研磨した。化成処理を施さない箇 所にはテープでマスキングすることにより化成処理面 積を60cm2とし, これを化成浴に浸積することで化成 皮膜を形成させた後, 水洗, 乾燥を行った。

化成皮膜の裸耐食性は塩水噴霧試験24時間後の糸状 腐食および白さびを目視により観察, 評価した。また, 化成皮膜の深さ方向の成分分析にはグロー放電発光表 面分析装置(JY-5000RF, HORIBA)を, 化成皮膜表面 の微細構造観察および成分分析にはSEM(ERA-8800, ELIONIX)-EDX(EDAX32, EDAX)を用いた。

 

3  結果と考察

3-1  各種リン酸塩化成処理の検討

 

まず, pHが3程度で溶存し, かつpHの上昇によりリン 酸塩を形成する金属成分としてFe, Ni, Zn, Mn, Caを選 択し, それぞれの化成浴について, 化成皮膜の耐食性 を検討した。各リン酸塩化成浴の基本組成は, リン酸 および各種金属塩(FeSO4・7H2O, NiSO4・6H2O, ZnSO4・ 7H2O, MnSO4・5H2O, CaCl2)をそれぞれ0.10mol/L、

0.01mol/Lとなるように添加し, NaOHを加えて浴pHを

3に調製した。なお, 化成処理に際し, 浴温度は室温,

浸漬時間は3分とした。

図1に各種リン酸塩化成皮膜の表面SEM像を, 図2に それらの塩水噴霧試験後の外観写真を示す。図1におい て, いずれの試料も平面部においてクラックが発生す るものの, P, Oおよび各種金属がEDXにより検出され たことから, リン酸塩皮膜が形成することがわかった。

また, Fe, Ni, Zn, Mn系において, 皮膜表面に数マイク

*1  機械電子研究所 

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ロメートル程度の大きさの付着粒子が点在しており,

EDX分析結果から, 金属粒子あるいはリン酸塩粒子で あると考えられる。化成皮膜の裸耐食性については, 図2よりFeおよびZn系では腐食とともに膜の剥離が観 察された。一方、NiおよびMn系では糸状腐食が点在し たが比較的耐食性が良く, 特にCa系では糸状腐食が少 なく, 最も高い耐食性を示した。

3-2

リン酸濃度の検討

  高耐食性を示すリン酸Ca浴処理について, 浴中リン 酸濃度が化成皮膜に与える影響について検討した。図 3, 図4にそれぞれ異なるリン酸濃度の化成浴を用いて 得られた皮膜のGDS深さプロファイルおよび表面

SEM像を, また図5に塩水噴霧試験後の外観写真を示

す。図3よりいずれにおいてもAZ91基材表面にP, Ca, O が検出されたことからリン酸Ca皮膜が形成されてお り, その膜厚は濃度とともに増加することがわかった。

また, 図4より0.10mol/L以上の比較的高濃度のリン酸 を用いた場合, 皮膜表面にクラックが発生し, 濃度増 加とともにクラックが大きくなるのに対し, 0.01mol/L

および0.05mol/Lの低濃度浴の場合, 表面にクラックの

ない緻密な皮膜が形成されていることが明らかとなっ た。また, 図5より0.10mol/L以上の比較的高濃度のリン 酸を用いた場合, 糸状腐食が発生しているのに対し, 0.01mol/Lおよび0.05mol/Lの低濃度浴の場合, 糸状腐

食がなく, 特に, 0.05mol/Lでは白さびの発生数も少な

い高耐食性皮膜が得られた。これらの結果から, 高濃 度リン酸Ca浴では膜厚が厚いためクラックが発生し やすく, それが糸状腐食発生を促進する要因になると (b) 

(e) 

(a)  (b) 

(c)  (d) 

図 1 各種リン酸塩化成皮膜の表面 SEM 像:

(a)Fe, (b)Ni, (c)Zn, (d)Mn, (e)Ca  (c) 

(e) 

図 2 塩水噴霧試験 24 時間後の各種リン酸塩化成皮膜 の外観写真:(a)Fe, (b)Ni, (c)Zn, (d)Mn, (e)Ca

(d)  (a) 

図 3 異なるリン酸濃度の化成浴を用いて得ら れた皮膜の GDS 深さプロファイル: 

     (a)0.01mol/L, (b)0.05mol/L,   (c)0.10mol/L, (d)0.20mol/L 

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考えられ, リン酸濃度を低くすることにより糸状腐食 を抑制して耐食性が向上することがわかった。

  4  まとめ

マグネシウム合金基材において、Fe, Ni, Zn, Mn, Ca の各種金属塩をそれぞれ添加したリン酸塩浴を用いて 化成処理を施し、化成皮膜の裸耐食性を評価した。塩 水噴霧試験の結果, リン酸Ca化成皮膜が最も高い耐食

性を示した。また, リン酸Ca浴におけるリン酸濃度が 化成皮膜に与える影響について検討した結果, 高濃度 浴では化成皮膜にクラックが発生し, 低濃度浴ではク ラックのない緻密な化成皮膜が形成されることから糸 状腐食がなく高耐食性を得られることが明らかとなっ た。

今後は, リン酸Ca化成浴条件についてさらに検討す ることにより, 地域化成処理ユーザーのニーズに対応 できる高耐食性ノンクロム化成処理浴の開発を行う予 定である。

 

5  参考文献

1) 

難波信次:日本パーカライジング技報, No. 21, pp.

52-56 (2009)

 

2) 

森田良治:表面技術, 53巻(3号), pp. 182-184 (2002) 

3) 

日野実:MATERIAL STAGE, Vol. 4, No. 8, pp. 33-40

(2004) 

図 5 塩水噴霧試験 24 時間後の異なるリン酸濃度の 化成浴を用いて得た皮膜の外観写真(●:糸状 腐 食 、 ○ : 白 さ び ): (a)0.01mol/L,  (b)0.05mol/L, (c)0.10mol/L, (d)0.20mol/L

(a)  (b) 

(c)  (d) 

(a)  (b) 

(c)  (d) 

図 4 異なるリン酸濃度の化成浴を用いて得られた 皮 膜 の 表 面 SEM 像 : (a)0.01mol/L,  (b)0.05mol/L, (c)0.10mol/L, (d)0.20mol/L

参照

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