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新開発Co基合金の産業への応用化技術開発

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Academic year: 2021

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新開発Co基合金の産業への応用化技術開発

飯村 崇

**

、園田 哲也

**

、桑嶋 孝幸

***

、千葉 晶彦

****

、井上 研司

***** 近年、医療現場ではMRI 診断が主流となり、非磁性で耐摩耗性が高く Ni フリーである材料 が求められている。これらの条件を満たすため、岩手大学で新しいCo 基合金が開発された。こ の材料を広く普及するため、産業用途への応用が必要である。そこで、普及に不可欠な加工法 として研削による鏡面仕上げ加工法を、具体的な製品として理美容用及び医療用鋏を開発する こととした。開発課題として、表面粗さがRz0.1μm 以下であること、鋏の切れ味が従来材料の ものと遜色がないことを挙げて研究開発を行い、それらを実現することが出来た。 キーワード:Co 基合金、鏡面、研削、鋏、Ni フリー、非磁性、切れ味

Development of Technology

for Applying the New Co-based Alloy to Industry

IIMURA Takashi, SONODA Tetsuya, KUWASHIMA Takayuki,

CHIBA Akihiko and INOUE Kenji

Recently, on medical site MRI diagnosis becomes main current, high resistance abrasiveness we need material which is Ni free, non-magnetic and high resistance against abrasiveness. With the purpose which satisfies these conditions, the new Co-based alloy was developed at the Iwate University. In order this material to spread widely, application to industrial use is necessary. Then, we researched the mirror surface finished process which is indispensable to spread, and beauty care and the medical application scissors as a concrete product. As development topics, we listed surface roughness is below Rz0.1 µ m and sharpness of the scissors compare favorably with which made by usual materials. And we could actualize those.

key words : Co-based alloy, mirror surface, grinding, Ni-free, non-magnetic, feeling of cutting 1 緒 言 医療の現場では、強い磁気を利用する MRI を用いた診 断方法が主流となり、磁性を持たない器具類への要求が 大きくなっている。この要求を満たす材料としてセラミ ックスやチタン(Ti)が挙げられるが、セラミックスは もろさが、以前より問題視されており、Ti は摺動部にお ける摩耗粉の発生が、近年問題となりつつある。その為、 これらに代わる材料の開発が強く望まれている。 このような要求に対し、千葉晶彦岩手大学教授は、コ バルト(Co)をベースとし、ニッケル(Ni)など金属ア レルギーの原因となる物質を極力排除した新素材を開発 した。この Co 基合金は耐摩耗性が高く非磁性であるとい う有利な特徴を有しており、加工技術を開発すれば、各 種産業への応用が期待できることから、岩大との連携の 下、Co 基合金の応用化技術について研究を行った。具体 的な目標として、次の 2 点を検討した。 1) 理美容鋏の開発 理美容鋏の材料としては、従来使用されたことが無く、 その加工性によって切れ味にも大きな影響が出てくるも のと推測される。そこで、以下の点について検討を行っ た。 ○鋏の切れ味を左右する因子の特定(H16 年度) ○鋏の切れ味評価方法の確立(H16 年度) ○新合金鋏の開発 2) 仕上げ加工技術の確立(目標値 Rz0.1μm) 耐摩耗性が高く、仕上げ加工が困難になると予想され る事から、効率的かつ高精度な加工が行える様に、研削 加工技術について検討を行う。目標値は Ry0.1μm 以下の 高精度な鏡面である。検討内容としては、以下のものが 考えられる。 ○砥石の材質及び組織 ○研削加工の条件…切込み量、送り量、砥石速度など 平滑面は直接製品を作る場合のみでなく、金型等を作 成する上でも基準となる物であり、今後この材料を様々 * 夢県土いわて戦略的研究推進事業 **** 岩手大学工学部 ** 電子機械技術部 ***** 株式会社 東光舎 *** 材料技術部

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な分野に応用していく上で、必要不可欠な技術である。 2 新素材鋏評価方法 新開発 Co 基合金 Co-29Cr-6Mo(以下 Co 基合金)を用 いた鋏を試作し、刃先形状の測定と、切れ味に最も大き な影響を及ぼす切断荷重試験を行った。また、Co 基合金 を用いた鋏の耐久性についても調査するため、10 万回の 開閉試験を行い、刃先端形状の変化について調べた。 2-1 刃先端形状調査 切れ味に影響を及ぼす値は、刃先端 R の大きさと、刃 先端粗さ、刃角度である。このうち、刃角度は鋏を研ぐ 際に刃を砥石に押し当てる角度で決定されるので、コン トロール可能な値である。一方、刃先端 R と刃先端粗さ については、材料の硬さ・砥石の状態・作業者の感覚な どによって変化する値であることが昨年度までの研究で わかっていることから、この 2 つの値について測定し、 SUS440C を用いた従来の鋏との比較を行った。 図 1 刃先端 R 測定 図 2 刃先端粗さ測定 2-2 切断荷重調査 昨年度製作した、切断荷重試験機を用いて、一般的な SUS440C の鋏と Co 基合金の鋏で切断荷重を比較した。切 断したものは Wig(ヘアカット練習用の、人毛に処理を 加えたもので直径は 0.1mm 程度)、ナイロン糸(0.2、 0.3mm)の 3 種類。また、材料が SUS 材より軟らかいが、 刃角度を大きくすることで、切断荷重を若干犠牲にしな がら耐久性を上げることが出来る。そこで、Co 合金につ いて、通常の刃角度 40°に加え、50°のものを作り、併 せて比較を行った。 図 3 切れ味試験機 2-3 耐久性調査 鋏の耐久性について調査するため、何も切断を行わな い状態で 10 万回の開閉試験を行い、その前後で刃先端形 状(刃先端 R と刃先端粗さ)が、どのように変化するか 調査を行った。通常の SUS440C 鋏の場合、何も切断しな いと、開閉動作により刃先端同士が摩耗し、先端 R・刃 先端粗さ共に値が小さくなることがわかっている。 3 新材料鋏実験結果及び考察 3-1 刃先端形状調査結果 図は一般的に製造されている SUS440C の鋏と Co 基合金 の昨年度試作品(試作 1)と今回の試作品(試作 2)につい て、刃先端 R と刃先端粗さを比較したものである。今回 の Co 基合金は昨年度の材料より硬さを増したことで、先 端 R・先端粗さ共に、良好な値を得ることが出来、従来 の SUS440C を用いた鋏と同等の鋭さを持つに至った。こ のことから、刃先の変形など特殊な事態をのぞけば、従 来の材料を使用した鋏と同等の切断荷重で切断を行うこ とが可能であると考えられる。 0 1 2 3 4 5 6 7 R Rz Ra 刃先端形状 大き さ ( μ m ) Co-Alloy(1st) Co-Alloy(2nd) SUS 0 1 2 3 4 5 6 7 R Rz Ra 刃先端形状 大き さ ( μ m ) Co-Alloy(1st) Co-Alloy(2nd) SUS 図 3 刃先端形状比較 3-2 切断荷重調査結果 Wig を切断する際は、SUS440C と Co 基合金の荷重にほ とんど差が無いことから、髪の毛を対象に考えた場合、 切断の性能は、両者とも同じであると判断することが出 来る。しかし、ナイロン糸のように、切断強度の高い物 (太いもの、硬いものなど)になるに従い、Co 基合金と SUS440C の切断荷重の差は大きくなっていく。この差は、

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刃先端 R の差から予想される切断荷重の違いよりも大き な値であり、切断による刃先の変形が SUS440C に比べて 顕著に起きているのではないかと言うことが予想される。 Co 基合金の刃先を SEM 観察したところ、0.2mm のナイロ ンを切断した時点で、SUS440C と比べて刃先に大きな変 形が起こる。以上のことから、理美容鋏としては十分な 切断性能を持っているが、万一、異物などを噛み込むよ うな場合には従来材料よりも不利な状況である事がわか った。ここで、H16 年度の研究から、刃先角を 40°から 50°にすることで、切断による刃先端粗さの劣化を 20% 程度押さえることが可能であることがわかっている。図 4 は Co 基合金鋏の刃先の強度を上げるため、先端角度を 40°から 50°に変えて試験を行った結果を追加したも のである。0.2mm を切断した場合の荷重は 40°の時より も若干高めだが、0.3mm を切断したときの荷重はほぼ同 等であり、かつ、刃先端の変形はほとんど起こっていな いことが SEM 観察からわかっている。その為、40°の時 に刃先が変形して荷重が大きくなった値と、刃角度を 50°に増やして切断したときの荷重増加分がほぼ同程度 であったものと考えられる。また、Wig の切断荷重につ いては 40°と同様、従来の鋏と変わらない。このことか ら、刃先端角度を 50°に増やすことで、刃先の強度を十 分に確保し、実用域での切れ味は従来通りの鋏になるこ とがわかった。 0 50 100 150 200 250 300 350 400 Wig 0.2mm 0.3mm 被切断物 切断荷 重( gf ) Co-Alloy(40) Co-Alloy(50) SUS 0 50 100 150 200 250 300 350 400 Wig 0.2mm 0.3mm 被切断物 切断荷 重( gf ) Co-Alloy(40) Co-Alloy(50) SUS 図 4 切断荷重比較 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 初期 20万回 40万回 R Ra Rz 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 初期 20万回 40万回 R Ra Rz 図 5 耐久性試験(空切り) 3-3 耐久性調査結果 図 5 は SUS440C 鋏と Co 基合金鋏の 10 万回開閉後の先 端形状を比較したものである。Co 基合金は先端 R の変化 が SUS440C 鋏よりも小さく、開閉による耗性への耐性に ついては SUS440C 鋏よりも優れていることがわかった。 3-4 理容師による切れ味の確認 試作した鋏を、2 名の理容師にテストしてもらい、切 れ味について聞き取りを行ったところ、硬さが感じられ るが、一般のものよりも良好であるとの感想をいただい た。ただし、材料の重さが原因と考えられる鋏のバラン スに関する問題が同時に指摘された。 図 6 試作した理美容鋏 4 鏡面加工技術開発に関する実験方法 Co 基合金を各種産業に応用していくためには、加工技 術の確立が必要不可欠である。特に、仕上げ加工を手作 業に頼らず加工機によって高精度に行うことが可能とな れば、高精度機械部品や金型などへの応用が可能となる ことから、研削加工による仕上げ加工技術の確立を行っ た。実験は粗加工・仕上げ加工の 2 段階で行い、粗加工 では主に砥石と材料の相性を、仕上げ加工では加工条件 の選定を中心に実験を行った。 4-1 粗加工実験 図 7 研削抵抗測定 加工には手離れの良さ(安定して長時間加工可能であ ること)、加工精度(仕上げ加工を容易にするため、ある 程度の加工精度があること)が重要なファクターとなっ てくる。これらを満足するには、安定した切れ味を長時 間保ち、砥石の摩耗量をある程度予測出来る必要がある。 そこで、耐熱鋼・非鉄合金などの加工に一般的に用いら れる GC 砥石・ダイヤモンド砥石・cBN 砥石の 3 種類につ いて、1 回 5μm ずつ切り込み、0.5mm 研削を行って、研 削抵抗と実加工量を測定した(加工条件は表)。研削抵抗 はキスラーの動力計を用いて測定した。実加工量は、ピ ックテスタを用い加工前後の被削材の高さ変化から求め た。(ピックテスタと加工面のあたり具合で、±1μm 程 度の測定誤差がある)またダイヤモンド砥石・cBN 砥石

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については、砥石の一部が取り外せるセパレートタイプ を用い、SEM と非接触式の形状測定器(三鷹光器 NH-3) を用い表面を観察した。被削材は Co 基合金の他に、比較 材料として医療材料として最も一般的な Ti-6Al-4V 合金 (以下 Ti 合金)、鋼材として最も一般的な S45C を用いた。 表 1 研削条件 砥粒 ダイヤ・cBN GC 粒度 #230 #60 砥石 結合材 レジノイド ビトリファイド 主軸回転数 2000rpm(砥石周速 1570m/min) 前後送り 1.5mm/pass 左右送り 15m/min 切り込み 0.005mm/pass(総切り込み量 0.5mm) 加工条 件 研削液 ケミカルソリューション 表 2 ドレス条件 ドレッサ SUS304(100×100mm) ダイヤ・ cBN ドレス条件 加工条件と同じ (総切り込み量 0.02mm) ドレッサ 単石ダイヤ 切り込み 0.02×1, 0.01×2, 0×1mm 送り 80mm/min GC 砥石回転数 400rpm 4-1 仕上げ加工実験 仕上げ加工には、形状精度を崩さないための切れ味の 良さ、加工後のワーク表面の粗さの 2 点が大きな問題と なってくる。今回の Co 基合金は硬度が HRC35~40 と一般 的な鋼材と比較し若干硬めであることから、一般砥石で はなくダイヤモンド砥石と cBN 砥石を用いることとした。 番手はいずれも 1000 番を使用。ボンドは鏡面加工に適し ていると言われるレジンボンドを使用した。加工状況を モニタリングするため、研削抵抗を測定し、 表 3 加工条件1 砥粒 ダイヤ、cBN 粒度 #1000 砥 石 結合材 レジノイド 主軸回転数 1000rpm(砥石周速 785m/min) 切り込み 粗 0.002mm/pass 精 0.001mm/pass 総切り込み 粗 0.008mm 精 0.004mm エアカット 2 回 加 工 条 件 研削液 ケミカルソリューション 表 4 ドレス条件1 ドレッサ SUS304(100×100mm) ダイヤ、cBN ドレス条件 加工条件と同じ (総切り込み量 0.014mm) 出来上がった鏡面の評価には Zygo 社の NewView100 と Taylor Hobson 社の PGI1240 を使用した。加工条件とド レス条件は、一般的な金型材の仕上げ加工に用いる条件 1をベースに行った。 5 鏡面加工技術開発 実験結果 5-1 粗加工 図 8 のグラフはそれぞれ、被削材と砥石を換えて研削 を行った結果である。zAVE は研削加工時にワークに対し 垂直方向にかかる研削抵抗の平均値を、xAVE は水平方向 にかかる研削抵抗の平均値を表している。(zMAX・xMAX はそれぞれ垂直方向と水平方向の研削抵抗の最大値) 1 回目の測定は、加工開始から 10μm(前後に一往復)切 り込んで、加工が安定した時点での研削抵抗を、それ以 後は 10 分(約 65μm)加工する毎に研削抵抗を測定した 結果である。 0 10 20 30 40 50 60 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削抵抗 (N ) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 10 20 30 40 50 60 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削抵抗 (N ) xAVE xMAX zAVE zMAX a)Co 基合金-cBN 砥石 0 50 100 150 200 250 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削抵 抗( N ) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 50 100 150 200 250 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削抵 抗( N ) xAVE xMAX zAVE zMAX xAVE xMAX zAVE zMAX b)Co 基合金-ダイヤモンド砥石 0 20 40 60 80 100 120 140 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数(回目) 研削 抵抗( N ) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 20 40 60 80 100 120 140 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数(回目) 研削 抵抗( N ) xAVE xMAX zAVE zMAX xAVE xMAX zAVE zMAX c)Co 基合金-GC 砥石 図 8 研削抵抗測定値 Co 基合金はダイヤを使用すると、研削抵抗が大幅に増加 していくことがわかる。今回の Co 基合金は Cr を 29%含 んでいるが、Cr には高温で C と容易に反応しクロム炭化 物を生成する性質があり、これにより、ダイヤモンドが 急激に摩耗したものと考えられる。GC 砥石については、 2 回目の測定(加工開始後 10 分)までに研削抵抗が大幅 に増加し、その後は緩やかに増加する傾向にある。良好 な加工条件を見いだせば、2 回目以降安定した研削抵抗 で加工できる可能性がある。ただし、研削抵抗は超砥粒 と比べ大きくなってしまう。cBN 砥石に関しては、研削 抵抗が低く(垂直で 30N、水平で 10N)、0.5mm 加工した 時点でも初期の状態からほとんど変わっていないことか

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ら、摩耗がほとんど無く安定した加工が可能であること がわかる。このことから、今回の Co 基合金を研削する場 合、cBN 砥石が最も適していることがわかった。 参考までに、他の材料についても同様に測定結果を比 較した結果を図 9 に示す。Ti 合金の場合、Co 基合金とは 逆に cBN の研削抵抗が大きくなっている。研削開始後、 cB 砥粒の先端部分が摩耗して研削抵抗が大きくなり、そ れ以後加工が安定したものと考えられる。ダイヤモンド 砥石で研削抵抗が減っていくのは、Ti 合金の加工による 砥粒の摩耗が少ないことと、Ti 合金のドレス効果により 砥石がドレス(目立て)されて、抵抗を増加させる摩耗 した砥粒が脱落していき、良好な砥粒のみで加工が行わ れるようになったためではないかと考えられる。S45C に ついてはやはり Fe が C と反応しやすいことから、ダイヤ での加工抵抗が大きくなっていく。反対に通説通り cBN 砥石は鉄系の材料を削るのに適していることがわかる。 0 10 20 30 40 50 60 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削 抵抗(N ) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 10 20 30 40 50 60 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削 抵抗(N ) xAVE xMAX zAVE zMAX xAVE xMAX zAVE zMAX a)Ti 合金-ダイヤモンド砥石 0 10 20 30 40 50 60 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削 抵抗( N ) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 10 20 30 40 50 60 1 2 3 4 5 6 7 8 測定回数 研削 抵抗( N ) xAVE xMAX zAVE zMAX xAVE xMAX zAVE zMAX b)S45C-cBN 砥石 図 9 Co 以外の金属の研削抵抗 砥石摩耗量(=総切込み量-実研削量)について見て みると、やはり研削抵抗の大きかった Co をダイヤと GC で加工した場合、Ti 合金を cBN で加工した場合が大きく、 これらの組み合わせが適さないことを示している。S45C とダイヤの組み合わせは予想より摩耗量が小さく、組み 合わせ的にはあまり良好ではないが、加工は可能である。 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 Co -D ia Co -c B N C o -1 1C Ti 6 A l4 V -Dia Ti6A l4 V -cB N S4 5 C -Dia S4 5 C -cB N 被削材-砥石 切り 込 み量 -実 研削量 (m m) -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 Co -D ia Co -c B N C o -1 1C Ti 6 A l4 V -Dia Ti6A l4 V -cB N S4 5 C -Dia S4 5 C -cB N 被削材-砥石 切り 込 み量 -実 研削量 (m m) 図 10 被削材・砥石と砥石摩耗量 図は砥石表面を SEM により観察した様子である。研削 抵抗の小さかった Ti 合金-ダイヤ・Ti 合金-cBN・Co 基合 金-cBN は砥石表面に切れ刃である砥粒が露出しており、 加工が良好に行われていたことが見て取れる。それに対 し、Co 基合金-ダイヤの場合、表面に露出している砥粒 も少なく、露出しているものも完全にすり減っており、 ダイヤ砥石が今回の合金加工に適さないことがここから も判断できる。 a) Co 基合金を加工した cBN 砥石表面 b) Co 基合金を加工したダイヤモンド砥石表面 図 11 SEM による砥石表面 5-2 仕上げ加工 結果は図 12 のとおりで、1μm 切り込みでも次第に垂 直方向の研削抵抗(zAVE)が増加していくことがわかる。 垂直方向の研削抵抗増加は、切り込みに対して実際の研 削量が追いつかず、削り残しが出てくることにより起こ ると考えられることから、ダイヤを用いた場合、切り込 みを押さえても、5-1 の粗加工同様に切れ味が落ち、削 り残しが発生してしまうと考えられる。 cBN 砥石を用いた場合、粗加工(前後送り 1mm/pass)だ と、加工抵抗が大きくなるが、精加工では抵抗が安定も しくは低下していることから、切り込みに対し、充分に 加工できていることがわかる。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 切込回数 研削 抵抗 (N ) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 10 20 30 40 50 60 70 80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 切込回数 研削 抵抗 (N ) xAVE xMAX zAVE zMAX xAVE xMAX zAVE zMAX a)ダイヤモンド砥石による仕上げ加工

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0 10 20 30 40 50 60 70 80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 切込回数 研削抵 抗( N) xAVE xMAX zAVE zMAX 0 10 20 30 40 50 60 70 80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 切込回数 研削抵 抗( N) xAVE xMAX zAVE zMAX xAVE xMAX zAVE zMAX b)cBN 砥石による仕上げ加工 図 12 仕上げ加工における研削抵抗 加工後のワークの表面粗さを図 13 に示す。ダイヤモン ドの場合 Rz で 0.2~0.16μm であり、加工面には不規則 な模様が見られた事から、切れ味が悪く、砥石の回転時 に振れが発生していたものと考えられる。cBN の場合、 加工面が整っているが、いくつか深い溝が見られ、その 影響で粗さの数値が悪くなっていると考えられる。これ は cBN 砥石表面に余分に突き出した砥粒があり、それに 加工されて出来た溝ではないかと考えられる。 a)ダイヤモンド砥石による加工面粗さ b)cBN 砥石による加工面粗さ 図 13 Zy さ比較 こで、突き出し量の大きい砥粒を排除出来るように、 ド を目視で確認すると、まだ規則的な綾目 模 6 結 言 のための技術開発として、理美容鋏の 開 考えた場合、不可欠である鏡面加工 文 献 1) :工業雑誌, 53,(1925),685 465-481 go New View 100 による加工面粗 そ レス条件の左右送り速度を 2 倍にし、砥石への負荷を 大きくした。この砥石を用い仕上げ加工条件1で加工を 行った結果、表面粗さ Rz0.12μm まで粗さを改善するこ とが出来た。 ただし、表面 様が見え、粗さ曲線にも所々段差のようなものが見ら れることから、まだ砥石の負荷が最適とはいえないと考 えられる。そこで、従来の工程に、さらに切り込みを 0.0005mm(0.5μm)まで落とした仕上げ加工工程を加えた。 これにより最終的に Rz0.09 程度の鏡面を得ることが可 能となり(図 14)、目標を達成した。このときの粗さ曲線 が図 15 であるが、粗さが全域にわたって均一に存在して おり、安定した加工面が得られていることがわかる。 図 14 鏡面加工サンプル 図 15 表面粗さ測定結果 Co 基合金普及 発及び鏡面加工技術の開発を行い、以下の成果を得た。 1)新開発の Co 基合金について、H16 年度試作からの改 良で材料の硬さを高め、また、刃先端形状を変化させて 刃先強度を持たせることで、理美容鋏として十分な性質 を持ち、耐摩耗性については従来の鋏よりも高い性能を 持つ鋏を試作することが出来た。今後は、「毛束の切断」 など実際の切断環境に合わせた耐久性試験の実施や、デ ザイン面の見直しなど、製品としての完成度を高めるた めの支援を行う。 2)金型への応用を 技術(Rz0.1μm)を実現した。これにより、高精度・高 品位加工面を要する分野への Co 基合金の普及の可能性 が高まった。H18 年度は、さらに高品質な仕上げ面を得 るために、砥石の番手を#2000 に上げ、より良い加工面 を追求していきたい。また、県内を優先に、希望する企 業に対し技術移転を行う。 青山 兵吉 2)本多 光太郎:金属の研究, 10-3,(1926),

参照

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