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著者 守 翔子

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Academic year: 2022

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アフリカツメガエルの初期発生における前後軸形成 を制御する新規分子機構の解析

著者 守 翔子

発行年 2013‑06

出版者 静岡大学

URL http://doi.org/10.14945/00007940

(2)

(課程博士・様式7)(Doctoral qualification by coursework,Form 7)

学 位 論 文 要 旨

Abstract of Doctoral Thesis

専 攻: バイオサイエンス 氏 名: 守 翔子 論文題目:

アフリカツメガエルの初期発生における前後軸形成を制御する新規分子機構の解析

論文要旨:

受精卵では、まず卵割と呼ばれる現象にて細胞数の増加が行われ、続いてダイナミックな形態 形成運動が開始されることになる。この一連の時期を初期発生過程と呼び、脊椎動物の初期発生 では、前後、背腹、そして左右の三方向の軸について、それぞれ独自の運命決定の手段が用いら れる。この三つの軸の中でも、脊椎動物の初期発生に最も劇的な変化を初期にもたらすのが前後 軸決定であり、元々は頭部のみに分化する(ディフォルトとして前方に分化する)細胞背景を持っ ている胞胚は、1) CE (convergent extension: 収斂伸長運動)に従って前後に伸びた体軸に沿っ た 誘 導 現 象 の 影 響 を 受 け 、 な ら び に2)後 方 化 運 命 決 定 リ ガ ン ド 分 子 で あ るBMP (bone morphogenetic protein)、FGF (fibroblast growth factor)、Wnt、そしてレチノイン酸などの影 響を受けることによって、頭部から尾部構造を持つ胚へと分化していくことになる。私は、脊椎 動物の前後軸形成を理解する上で1)と2)の視点において、未解明な部分に焦点を絞り、それらを 埋める形で前後軸形成のメカニズムを明らかにする研究に取り組むことにした。

1)に関した研究として、CEにおいて細胞が伸びる際に発現する新規遺伝子のスクリーニング

に取り組んだ。CEの過程では、前方の細胞群と後方の細胞群が組み合わさった部分において大 きな伸長化が引き起こされることが、人工的に脊索化誘導を受けたツメガエル胚の培養片を用い た実験系によって明らかにされている。この実験系を用いてCEに関わる新規遺伝子探索を行っ たところ、CEのマーカー遺伝子であるFrizzled-8らと共に、これまでにツメガエルにおいて報 告されていない新規の遺伝子をいくつか確認することができた。特に注目したのが原ガン遺伝子 として知られているras遺伝子と高い相同性を示す新規遺伝子Ras-likeである。Ras-likeのアミ ノ酸配列の相同性検索を行ったところ、ゼブラフィッシュやニワトリのRRas2タンパク質と最も 高い相同性を示した。発現解析を行ったところ、Ras-likeは1細胞期から既に発現を開始し、後 期原腸胚以降は中軸中胚葉領域に限定された発現パターンを示すことが分かった。2細胞期のツ メガエル胚にRas-like mRNAを顕微注入し、機能獲得型の表現型を観察したところ、濃度依存

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的に前後軸の伸長を阻害する能力を有することが判明した。この変異胚に対する組織切片を用い た観察から、伸長が阻害された胚の内部では、脊索と神経管の肥大を確認することができた。

CEに関わる分子の活性を、CEが生じる系において上げた場合も下げた場合も伸長現象が阻害さ

れることが知られている。同じ事がRas-like mRNAによって引き起こされたことになる。これ らの結果から、Ras-likeが脊索領域で起こるCE現象に強く関わっている分子であると結論づけ た。

2)に関した研究として、アドレナリンが胚発生に与える影響の観察を行った。アドレナリンに 注目した理由は、アドレナリン受容体β2 (Adrβ2)が受精卵から発現しており、その下流には後方 化因子でもあるFGFの下流分子ERKが存在したためである。まず、アドレナリン処理胚におけ るERKのリン酸化(つまり活性化)を調べたところ、確かにリン酸化が生じていることが確認で きた。次に、機能獲得型ツールとしてAdrβ2 mRNAとアドレナリン溶液を用い、逆に機能欠失 型ツールとしてAdrβ2の翻訳阻害を引き起こすように設計されたアンチセンスモルフォリノオ リゴマー(Adrβ2-MO)を用い、機能解析に取り組んだ。その結果、機能獲得型の表現型では眼を 含む頭部構造の形成阻害が、欠損型の表現型では尾部等の後方構造の形成阻害が確認された。特 に機能獲得型による影響は、前方神経マーカーであるOtx2やRx2aの発現を抑えることによって 生じることも判明した。以上の結果より、アドレナリンはFGFシグナルと共役することによっ て、後方化に関わっていると結論づけた。尚、尾芽胚以降にアドレナリンを処理した場合には、

濃度依存的に内臓奇形を誘発することも分かった。これはノルアドレナリンで過去に報告された 知見と類似した結果と言える。

今後の発生生物学の研究は、対象となる現象の説明に必要な分子機序の理解ピースを集め、

それらをバイオインフォマティカルに統括していくことに推移していくと考えられる。最近の知 見ではFGFとレチノイン酸は共役して後方化を引き起こすことが分かっている。Wntシグナル とFGFシグナルも共にBMPシグナルの細胞内標的分子であるSmad1上で交叉することも判明 している。本研究前半の焦点であったRas-like遺伝子が属するRasファミリーの下流には、後半 の焦点であったアドレナリンの下流分子であるERKが存在している。今回の研究は、胚の前後 軸形成を理解する2つの重要な視点の両方において、その統括的な理解を進めるために必要なピ ースの一つとして確実に活用されることであろう。

参照

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