スペインとの往復ビデオレターの試み
-沖縄国際大学スペイン語初修クラスにおける授業実践例を中心に-
福 地 恭 子 Kyoko FUKUCHI
1.はじめに
ラテン系の言語は,動詞活用の習得に多大な時間がかかる.スペイン語も例外ではなく,後期のス ペイン語Ⅱになると,ほとんど毎週,新しい動詞の活用を学習することになる.以前は,筆者のクラ スでも一般的なスペイン語の授業で行われているように,小テストを行い,学生に動詞を丸暗記させ ていた.しかし,毎週または隔週のテストは学生の心理的負担となり,モチベーションの低下を招く ことも少なくなかった.そこで,動詞活用といった文法事項の学習は従来通り行い,学生の学習意欲 を引き出すために,2010年度より,筆者が担当する沖縄国際大学のスペイン語クラスでは,ICT技 術を活用した教育実践と授業改善を試みている.その実践活動の一つが,スペイン国立レオン大学の 日本語クラスとインターネットを活用した共同学習により,双方の語学力の向上を目指す授業である.
活動を始めた2010年度の後期は,授業外の自由な時間にメール交換を行い,それぞれの母語を教え,
互いの語学力を高めるタンデム学習であった1.この学習法は,多くの学生から語学学習に適してい ると高い評価を受けたが,メール返信のタイミングをパートナー同士で合わせるのが難しく,クラス 単位での活動の継続は困難であることが分かった.そこで,翌年の2011年度からは,タンデム学習 は希望者のみに限定して,レオン大学との共同学習には,ビデオレター活動を取り入れることにした.
本稿では,ビデオレター活動を導入した1年目の2011年度,2年目の2012年度に筆者が行った実 践内容を取り上げる.学生のアンケートに基づいて両年度の比較を行い,授業実践を通して浮かび上 がったビデオレター活動における問題点を探り,活動を発展させていくためにはどのような方法が適 切なのか明らかにしたい.
2.先行研究
実践について述べる前に,ビデオレターの学習効果について概観する.ビデオレターとは,動画 の形で作成された手紙であり,2000年前後には国際交流活動に用いられ,語学学習の効果や異文化 理解を高める手段の1つとして注目を集めた2.しかし,2004年にSkypeがリリースされ,ビデオ通
1 「初級スペイン語授業におけるEメール・タンデム学習-沖縄国際大学スペイン語クラスとレオン大学日本語ク ラスとの交流」『沖縄国際大学総合学術研究紀要』14(2) 沖縄国際大学総合学術学会 2011年 pp. 37-59.
2 小林はくどう「ビデオレターの試み-クッションコミュニケーションの実践1」『成安造形大学研究紀要』(5) 成安造形大学 1998年 pp. 125-139. 小林は,ビデオレターとは,自分の目線でのテーマ研究であり,国際交流 に用いた場合は,やりとりが深まるにつれ,国際的な視野が広がり,学究的な姿勢が身に付くものであると述 べている.茜八重子「コミュニケーション能力開発のための試み-ビデオレター制作活動とその実践例-」
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話が普及し始めてくると,交流活動に適した方法としてビデオレター(非対面コミュニケーション)
ではなく,ビデオ通話(対面コミュニケーション)を使用するのが主流となった.その理由として,
Starcは,ビデオ通話は口頭でのコミュニケーションスキルを磨くことができると述べている3.その
1例を取り上げると,青島理工大学と徳島大学は,国際人材育成プログラムの一環として,両大学間
でSkypeのビデオ通話を使用した週1回のビデオ会議を1年間にわたって続けた.その結果,中国
側と日本側で異文化交流に対する理解度が増したり,また中国側では日本語の会話レベルが向上した りするなど,双方において高い評価が確認できた4.
しかし,ビデオ会議としてビデオ通話を活用した学習方法を筆者の授業に導入するには,3つの問 題点を指摘することができる.まず,時差の問題である.交流校同士の時差が大きい場合,両校の正 規の授業時間内に対話を行うことは困難である.そのため,どちらか一方が,または双方が授業時間 の調整を行わなければならない.次に,人数の問題である.筆者のクラスでは45名の大人数制クラ スであるが,一般的にビデオ会議は少人数制が適していると考えられている5.実際,スペイン語の 学習効果を向上させる目的でビデオ会議を行ったグラナダ大学とユトレヒト大学の両大学では,ビデ オ会議への参加人数を6名にした6.前掲の青島理工大学と徳島大学も,1回のビデオ会議における 人数を,5名~10名程度に制限している7.無論,ビデオ会議を交流の雰囲気を味わうために用い るのであれば,筆者のクラスのような大人数制クラスで行うのも可能であろう.しかし,会話力の 向上を考えて実施するのであれば,全員に発話する機会を与えなければならない.それには,登録 学生の人数に応じて,実施回数を増やす必要性があるが,各回で会議参加への人数制限を設けると,
参加しない学生に欠席者が出る恐れがある.最後に問題があると考えられるのは,会話力と聴解の 問題である.外国語に不慣れな学生は,ビデオ会議で円滑な会話を行うために,交流前に質問を準 備して,それに対して相手が発する回答を予測する.だが,質問に対して予想外の答えで返されると,
会話が途切れ,沈黙が続く8.また,双方の聴解がうまくいかない時には,何度も聞き直し,説明を 求める9.こうなると,初級者はなかなか発話ができなくなくなる.また,対話を行う学生同士で語
『別科論集』(1) 大東文化大学別科日本語研修課程 1999年 pp. 1-24. 茜はビデオレターの制作を,語学学習者 のコミュニケーション能力を高めるために,クラス活動に導入した.大塚みさ「授業における異文化理解の試 み-ビデオレター交換とその効果-」『実践女子短期大学紀要』(23) 実践女子短期大学 2002年 pp. 150- 159. 大塚は,制作したビデオを海外とのクラス間交流に使用した.
3 Starc Mariela K., “La utilización de las TIC en la clase de español como lengua extranjera”, http://www.salvador.edu.ar/
vrid/ead/StarcBenedetti.pdf, p. 9.
4 鄭愛軍,大橋眞「実例による異文化コミュニケーションの問題分析-青島理工大学と徳島大学とのインターネッ
ト交流を中心に-」『大学教育研究ジャーナル』(8) 徳島大学 2011年 pp. 69-75. 鄭愛軍,大橋眞「青島理工 大学と徳島大学との遠距離ビデオ会議(SKYPE)交流の実例分析-2011年4月から7月までの交流内容を中心 に-」『大学教育研究ジャーナル』(9) 徳島大学 2012年 pp. 74-80.
5 Jauregi K., S. Canto y C. Ros, “La interculturalidad a través de la videoconferencia”, La competencia pragmática y la enseñanza del español como lengua extranjera, Universidad de Oviedo, 2006, p. 758.
6 Ibid., p. 751.
7 鄭愛軍, 大橋眞 (2012), op.cit., p. 75.
8 Ibid., p. 77-78.
9 Ibid., p. 77. 坪田康,壇辻正剛 「ICT機器を活用した英語スピーキング活動-国際学会でのプレゼンテーションを
目指して」『理工系英語教育を考える-』 日本英語教育編集委員会 2012年 p. 50.
学力に差がある場合は,中上級者に会話のイニシアチブが取られてしまい,初級者の学習に適さな い状況となる.
では,ここで改めて,ビデオレター活動を見直してみる.ビデオレターは,リアルタイムではなく,
録画したビデオを使用する活動である.ビデオは正規の授業時間内に録画できるため,時差を気にす る必要はない.また,撮影は学生が各々のカメラに向かって話すため,時間的制約などによる人数制 限はなく,少人数制から大人数制まで対応できる.さらに,撮影中に求められることは,アイコンタ クトに気を付けながら,事前に準備した原稿を正しい発音とアクセントで読むことに限られる.だが,
ビデオレターは会話力を軽視した活動という訳ではない.会話にはオーディエンスの存在が必要不可 欠であるが10,ビデオレターはビデオを送る相手をオーディエンスとして意識させることができるた め,そこには一種の会話が成立する.そのため,ビデオレター作成を通じて,発話トレーニングを繰 り返すことで,徐々に会話の場で使用できる力が身に付くことになる.さらに,録画したビデオは客 観的に自分の発話を見直すことができるため11,気づきが生まれやすく12,口頭プレゼンテーション スキルの向上にも繋がる13.
このように,ビデオレター活動は,ビデオを撮影するために必要な発話力を高める活動であると同 時に,ビデオレターの原稿を書くために必要な文法力,語彙力,表現力,また受け取ったビデオレター を理解するために必要な聴解力をトレーニングできる総合活動であると考えられる.つまり,ビデオ レターは,近年の主流であるビデオ会議を用いた語学教育ではないが,今日においても,充分に学生 の語学力向上と勉学意欲を引き出す学習活動として期待できる.
3.授業実践(2011 年度)
ビデオレター活動は,沖縄国際大学で筆者のスペイン語Ⅱを受講している3時限クラス(英米言語 学科在籍)と4時限クラス(法律・地域行政・人文福祉学科在籍)で行った.学生のスペイン語レベ ルは,初級~中級である.学習済みの文法項目は,ser動詞,estar動詞,現在形の規則動詞と不規則
動詞,gustar型動詞,再帰動詞である.現在完了形,現在進行形,命令形はビデオレターの期間と並
行して学習した.ビデオレターの交換は2012年1月5日~2月9日に行われた.その間に,2往復 のビデオレターを送り合うことができた.1通目の送信は,沖縄国際大学側から自己紹介ビデオを送 る形でスタートした(図1).
10 坪田康,壇辻正剛 「外国語スピーキング演習におけるオーディエンスの影響」『信学技報』2010(11) 電子情報
通信学会 2010年 pp. 35-40.
11 坪田康,壇辻正剛 (2012), op.cit., p. 49.
12坪田康,壇辻正剛 (2010), op.cit., p. 36.
13Morales Juan C., Ferdinand Rosa, “Video Recording Feedback to Improve Oral Presentation Skills of Engineering Students: A Pilot Study”, http://www.laccei.org/LACCEI2008-Honduras/Papers/ET109 Morales.pdf.
- 90 - 3.1.1通目の往復ビデオレター
3.1.1.導入
撮影がスムーズに進むように,学生には事前 に宿題として,自己紹介の原稿を作成させた.
自己紹介は,沖縄国際大学で開講されている同 時間のスペイン語クラス間で行ったSkypeに よる教室間会話で既に学習していた.学生には,
その際に配布したテンプレート(図2)を参考 に,原稿を書かせた.また,原稿には,自己紹 介と合わせて,スペイン人へ質問したいことを 1問加えさせた.撮影は,スペイン語と日本語 の両言語で行うため,同様の内容の日本語文も 書かせた.レオン大学側の日本語学習者に配慮 して,語尾はかならず「です」「ます」調で終 わらせた.
3.1.2.授業構成
1通目のビデオレターの制作はCALL教室で行った.90分の流れは,音読練習(20分),操作方 法の説明(10分),Webカメラでの撮影と保存(50分),回収(10分)となる.参加学生数は3時限 クラスが26名,4時限クラスが37名であった.
3.1.3.音読練習
撮影前に,学生に宿題として書かせた原稿の音読練習をさせた.音読に不安のある学生に対し ては,音声認識開発の事業を手掛けるLoquendoのサイト上のInteractive TTS(Texto To Speech)
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図1 ビデオレターの交換日(2011年度)
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図2 教室間会話のテンプレート
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じめ27の言語から選ぶことが可能である.ス ペイン語はカスティーリャ語,中南米スペイン 語,カタルーニャ語,バレンシア語,ガリシア 語に対応している.言語によっては,出力され る音声の性別を選択することができる.入力し たテキストの音声は,メディアプレーヤーで再 生ができ,ネイティブスピードの声に合わせて 発音練習をすることができる.ネイティブスピ ードについていけない学生の場合には,音声 ファイルをWMV形式で作成させ,CaLabo EX のムービーテレコ(動画学習ツール)に保存さ せた.ムービーテレコに保存することによっ て,再生スピードを変えることができ,スロー スピードでの発音学習も可能となる.このよう に各々のレベルに合わせ,何度も音読練習をさ せた.
3.1.4.Web カメラでの撮影
Webカメラの操作,マイクの設定,ビデオの保存場所の説明の後で,学生はビデオレターの撮影 を始めた.カメラに向かって,日本語,数秒空けて,スペイン語の順で同じ内容を語った.ビデオレ ターの受信先であるレオン大学の学生は日本
語学習者であるため,学生には,日本語を話 す際は,大きな声で,ゆっくりと発音するこ とをお願いした.また,目線は原稿でなく,
カメラ目線で撮影することも心がけてもらっ た.撮影は自分が納得のいくまで,何度も撮 り直しが可能であることも伝えた.表1の録 画回数は,ビデオの保存回数を基に作成した ものである.1回~2回の撮影で終えた学生
写真1 テキスト入力の様子 (2013年1月10日撮影)
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図3 Interactive TTS Demo (Loquendo) のサイト
14 http://www.loquendo.com/es/demo-center/demo-tts-interactiva/
写真2 録画の様子 (2013年1月10日撮影)
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は3時限クラスが4割強,4時限クラスが5割弱である.それ以外は3回以上の録画を行っている.
最も回数が多かったのは,3時限クラスの27回である.
撮影時間は最大50分を設けているが,学生によっては,終了時間以前に終わる者もいた.また,
撮影時間に入っても,発音練習にかなりの時間を割く学生もいた.撮影終了後は,ビデオをWMV形 式で保存させ,教員がCaLabo EXで一斉に回収した.
3.1.5.ビデオの確認
提出されたビデオの確認を行い,その中からレオン大学に送信するビデオを選んだ.学生のビデオ がビデオレターとして使用できるかを,以下の4つの条件で選択した.この条件については,学生に も事前に伝えていた.
(1) 日本語が聞き取りやすいか.
(2) 声が大きく吹き込まれているか.
(3) スペイン人への質問が 1 問含まれているか.
(4) スペイン語(文法・語彙)の誤りが少ないか.
(1)と(2)はスペイン語とは関係はないが,学生の話す日本語がレオン大学の手本になるため必須 の条件であった.(4)は,冠詞や複数形などの数の概念,またserとestar,conocerとsaberの使い分 けといった日本人学習者が習得するのが難しい項目の誤りに限定した.
(1)~(4)の条件でビデオを確認すると,基準をクリアしていたビデオは,63本中わずか7本であっ た.該当するビデオが少ない理由は,声が小さく,聞き取りにくいビデオが多かったことが原因であっ た.選んだ7本のビデオには,(3)の質問が被るものもあった.そのため,声が聞き取りやすいビデ オを選び,最終的に資料1で紹介する5つに絞った.学生がビデオレターで使用した動詞は,ser動 詞,規則動詞現在,不規則動詞現在(saber,tener),gustar動詞で既習範囲であった.スペイン語の
誤りは,conocerとsaberの使い分けであった.5本のビデオの録画回数を見ると,1~3回であった.
このことから,何度も撮影するよりは,録画前に発音練習を充分に行い,撮影は1回で行うという気 持ちで臨んだ方が,緊張感を高めたまま撮影を終えることができ,良い動画が残しやすいとも考えら
表1 録画回数(クラス別)
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れる.1通目ビデオレターは,Gmail(Googleメール)の添付ファイルで,レオン大学の日本語の教 員に受信された.
3.1.6.レオン大学側の受信
ビデオレターを受け取ったレオン大学の日本語の教員は,担当する日本語クラス(普通教室)で,
ビデオレターを学生に視聴させた.レオン大学でビデオレター交換を行ったのは,日本語学習歴が2 年以上の中級レベルの学生であった.ビデオレターを視聴中に学生は,「日本語の話すスピードが早い」
「聞きやすい日本語である」「習いたての文法が入っている」など,学生の話す日本語についてコメン トしていたそうだ.また,「女子学生が可愛い」「メイクが完璧」など,日本人の女子学生のファッショ ンについての話題でも盛り上がったそうである.レオン大学の学生はビデオレターを見終わった後,
個人携帯でスペイン語,日本語の順に撮影を行った.ビデオには,自己紹介,回答,質問1つが含ま れた.レオン大学の教員は回収後に,スペイン語が聞き取りやすく,日本語の誤りが少ないビデオを 5本選択して,筆者に送った.その際,大容量ファイルのアップロードが可能なfairestorage 15を使 用して,1通目のビデオレターの送信は行われた.
3.2.2通目の往復ビデオレター 3.2.1.導入
レオン大学からの5本のビデオレター(資料2)は,こちらからビデオレターを送ってから20日 後に送られてきた.確認すると,スペイン語を話すスピードが速く,初修学生の聴解レベルに適して いなかったため,筆者は,動画編集ソフトのWindows Live ムービーメーカーを使用して,全てのビ デオレターにスペイン語の字幕を付けた.
3.2.2.授業構成
ビデオレターの視聴から制作までをCALL教室で行った.90分の流れは,視聴(30分),音読練 習とWebカメラでの撮影(50分),保存と回収(10分)となる.参加学生数は3時限クラスが26名,
4時限クラスが42名であった.
3.2.3.ビデオレターの視聴と撮影
ムービーテレコに保存した5本のビデオレターを,スクリーンとPC画面を使用して一斉に学生に 視聴させた.まず,学生には字幕付きのビデオレターを見せた.学生が理解できるように,筆者がワ ンフレーズごとに一時停止をして,クラス全体で意味を確認した.ビデオレターを視聴したクラスの 学生は,「スペイン人の話すスピードが速い」と驚いていた.だが,字幕付きであり,またスペイン人
15 http://firestorage.jp/
- 94 - の使用する語が全て既習文法の範囲内であった ため,学生の理解度は高かった.
学生に,字幕付きビデオを視聴させた後は,
字幕なしのスペイン語と日本語のビデオを見せ た.その後,再び字幕付きビデオを見せて,訳 や回答の仕方についてメモを取らせた.そのメ モを参考に,2通目のビデオレターの原稿を書 かせた.
撮影に入る前に,原稿の音読練習をさせた.
音読練習から撮影までの流れは,3.1.4で述べ た内容と同じである.カメラやマイクの操作方 法は,1通目のビデオレター制作の際に説明を 行っていたため,2通目の作成時には省いた.
操作方法の分からない学生は個別に対応した.
また,3.1.5の結果から,音読練習の時間と撮
影時間を分けなかった.そのため,撮影に入る 前には充分に音読練習を行うことを学生に勧 めた.録画は1通目のビデオレターと同様に,
日本語とスペイン語の順で行った.
3.2.4.ビデオの確認
提出されたビデオの中から3.1.5で述べた条件で,レオン大学生の質問に正しく回答できた5人の 学生のビデオを,ビデオレター用とした(資料3).また,前回とは異なる学生の作品を選んだ.1 通目のビデオレターでは,5人の内3人の沖縄国際大学の学生がgustarの文を使用した質問をして いた.だが,2通目のビデオレターの質問では,“¿Cómo se prepara el conejo?(ウサギをどのよう に調理しますか)”, “¿Qué quieres comprar?(君は何が買いたいですか?)”, “Has tomado fruta esta mañana?(今朝,フルーツを取りましたか?)”,“¿Qué has desayunado esta mañana?(今朝,朝食に 何を食べましたか)”のように,再帰動詞,querer動詞,現在完了形も含まれていた.再帰動詞と現 在完了形は,2通目のビデオレターを撮影する直前の授業で学習した項目であった.このことから,
ビデオレターでは,習いたての項目でも,積極的に文に取り入れることが分かった.学生のスペイン 語の誤りは,冠詞と数の概念に関するものであった.筆者は,5本のビデオをfairestorageにアップロー ドして,レオン大学に送った.
写真3 視聴の様子 (2012年2月9日撮影)
写真4 メモを取る様子 (2012年2月9日撮影)
3.2.5.レオン大学側の受信
レオン大学の教員は1通目のビデオレターを送信して約1週間後に,日本から2通目のビデオレ ターを受信した.レオン大学の学生は,2通目のビデオレターを楽しく視聴したそうである.しかし,
時期的に試験期間中であったため,授業内では2通目のビデオレターを録画させる時間がなかった.
そのため,レオン大学の教員は余力のある学生用の課題としてビデオレターを作成させた.だが,授 業外活動として行った結果,1本のビデオレターしか回収できなかった(資料4).
3.2.6.沖縄国際大学側の受信
筆者がビデオレターを送信してから約2週間後に,レオン大学の教員から2通目のビデオレターが 届いた.だが,受信したのが学期末の最終講義後であったため,結局,筆者のクラスの学生に2通目 のビデオレターを見せることはできなかった.また,送られてきたビデオレターの内容を確認してみ ると,こちらの2通目のビデオレターへの回答ではなかった.これに対してレオン大学の教員から,
ビデオレターを課外活動として行わせたところ,中上級の学生から提出がなく,初級クラスに在籍す る学生から提出されたビデオレター1本になったと伝えられた.初級クラスの学生は,こちらからの 2通目の質問に日本語で答えることができなかったため,本人の分かる日本語を使用したビデオレ ターになったようである,ビデオレターを宿題として与える場合には,ビデオの相手の話す内容を理 解して,質問に回答できるレベルでなければならないため,ビデオレターは初級ではなく中上級者の 宿題として相応しい課題なのだろう.次節では,アンケート結果や感想を基に,ビデオレター活動の 問題点を見つけ出し,改善策を考える.
3.3.学生からのフィードバック 3.3.1.アンケート結果
アンケートの実施日はスペイン語IIの最終講義の2012年2月9日に行った.対象者は英米言語学 科在籍する3時限クラスの学生22名,法律・地域行政・人文福祉学科在籍する4時限クラスの学生 31名であった.
設問1.ビデオレター活動は楽しかったですか?
(1:全然楽しくなかった,5:とても楽しかった)
1 2 3 4 5 平均
3時限クラス 0 0 0 10 12 4.55 4時限クラス 0 0 8 10 13 4.16
- 96 - 設問2.スペイン人の話すスペイン語は理解できましたか?
(1:殆ど理解できなかった,5:よく理解できた)
1 2 3 4 5 平均
3時限クラス 0 7 8 0 7 3.32 4時限クラス 0 7 13 0 11 3.48
設問3.実際にビデオレター活動を行って,スペイン語の学習効果を感じましたか?
(1:感じなかった,5:感じた)
1 2 3 4 5 平均
3 時限クラス 0 0 1 13 8 4.32 4 時限クラス 0 0 6 15 10 4.13
設問4.ビデオレター活動の回数をもっと増やした方が良いと思いますか?
(1:思わない,5:思う)
1 2 3 4 5 無回答 平均
3時限クラス 1 0 0 0 20 1 4.81
4限限クラス 4 0 0 0 26 1 4.47
設問1,3,4のアンケート結果を見ると,語学を専攻している3時限クラスの学生の方が,語学を 専攻していない4時限クラスの学生よりも,ビデオレター活動を肯定的に捉えている印象を受ける.
しかし,両クラスの差はわずか0.19~0.38である.しかも,設問2の結果を見ると,4時限クラス が3時限クラスよりも理解度が高いことが分かる.よって,ビデオレターをクラスの活動の1つとし て,両クラスで実施できると考えられる.
3.3.2.感想
以下にそれぞれのビデオレター活動に関する感想を一部紹介する.[ ] はクラスを表す.
活動後の感想
・言葉を詰まらしてしまうことが多かったけど,ちゃんとできて良かったです.スペイン人に伝わる と嬉しいです.[4]
・スペイン人と実際に交流することはないので新鮮でとても楽しかったです.もう少しやりたかった です.スペイン語をもっと勉強したいと思った.[4]
・実際に本場の同じ年くらいのスペイン人の言葉を聞けてとてもよかったです.[4]
・なかなか現地のスペイン人の生の声を聞くことは無いので,すごく良い体験ができたなと思いまし た.[4]
・外国の人とこうやって交流できる機会はめったにないと思うのでいい経験になった.楽しかった.[4]
・実際現地の人の声を直接聞くことができるので,とてもいい機会だと思います.[3]
・間接的にでもネイティブと会話できたのがとても良かった. [3]
ビデオレターの映像
・日本人との見た目の違いもおもしろかった.もっとやり取りをしたかったです.日本語上手でし た.[4]
・スペインの人の映像は楽しかったです.自分たちと違った点があって,少しびっくりしました.[4]
ネイティブのスピード
・スペイン人はやっぱり話すスピードが速かった![3]
・本場のスペイン語は想像していたよりも早かった.[4]
・スペイン人に,スペイン語をもうちょっとゆっくり話してほしかったです.[4]
スペイン語の学習
・実際のスペイン人の話し方や,速さなどを知ることができて,勉強になった.[3]
・スペイン語の発音がよくて,勉強になった.[4]
・スペイン人のスペイン語を聞けてとても勉強になった.[3]
・スペイン人がしゃべるスピードが分かり,とても勉強になりました.[4] 活動方法の不満
・楽しかったけど,もっとやりとりしたかったです.[3]
・もう少し多くの人のビデオが見たかったです.[3]
・せっかく興味のある質問をしてあり,そこだけはきちんと聞きたいと思っていたのですが,最後に 返事がなかったので残念でした.返事がほしかったです.でも現地の人を知ることができてよかっ たです.[3]
今後の活動への要望
・もっとビデオレターの人数を増やしても良いと思う.[3]
・個人的に話ができたらもっとおもしろいなと思いました.[4]
・もっとスペイン人と関わる機会を増やしたら学力向上につながりいいと思う.[4]
・もっと回数を増やしたほうがいい.[4]
導入1年目の2011年度は,2回の往復レターを実施することができた.実際の活動及び学生の感 想とアンケートを通して分かったことは,ビデオレターを実践活動の一部として取り入れると,学習 のモチベーションを下げることなく,学習内容のアウトプットの場を学生に提供できるということで あった.録画ビデオという間接的な形で行った会話でありながらも,自らが作成した動画を相手に見 てもらえることを意識し,自身について語り,さらに相手の質問の受け答えするのは,スペイン語の コミュニケーション能力を育む大きな力になると言えよう.
ただ,やはり学生の感想にもあったように,活動方法について見直さなければならない.まず,1
- 98 -
回で送受信する往復ビデオレターの本数である.2011年度には,日本語や録音の音が小さいといっ たスペイン語以外のミスで,ビデオレターとして該当しなかったビデオが多かった.よって,2012 年度では,前期の間に,学生にカメラやマイクなどの操作方法に充分に慣れさせる計画を立てた.
また,2011年度は授業スケジュールの関係で,レオン大学からのビデオレターをクラス全体で一 斉に視聴するにとどまった.しかし,本来であれば,学生自身で繰り返しビデオを見て,聴解のトレー ニングを行わなければならない.そこで,2012年度には,レオン大学からビデオレターを受け取っ た後,学生が何度もビデオレターを繰り返し視聴できるように,返信するまでの期間を延ばした.また,
視聴方法も学内外でできるように,受信したビデオレターをLMS(学生管理システム)にアップロー ドすることにした.次章では,上記の改善策を取り入れた2012年度のビデオレター活動を報告する.
4.授業実践(2012 年度)
前年度と同様,ビデオレター活動はスペイン語Ⅱを受講している3時限クラス(英米言語学科在籍)
と4時限クラス(法律・地域行政・人間福祉学科在籍)によって行われた.学生のスペイン語レベル は,初級~中級である.学習済みの文法項目は,ser動詞,estar動詞,現在形の規則動詞と不規則動
詞,gustar型動詞,再帰動詞である.また,現在完了形,現在進行形,命令形の学習はビデオレター
の導入時に合わせた.前年度の反省を生かし,前期に,動画撮影に必要な操作方法を学習する時間を 前年度より多く設けたが,学習した文法項目の範囲に大きな影響はなかった.ビデオレターの交換は
(2013年1月10日~2月17日)に行われた.その間に,1往復半のビデオレターを送り合うことが できた.2011年度は2往復できたビデオレターが,2年目の年に1往復半しかできなかった理由は,
レオン大学のビデオレターで聴解練習をさせるため,レオン大学へ送信するまでの期間を延ばしたか らであった.1通目の送信は,沖縄国際大学側から自己紹介ビデオを送る形でスタートした(図4).
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図4 ビデオレターの交換日(2012年度)
4.1.1通目の往復ビデオレター 4.1.1.導入
大まかな流れは3.1.1と同様である.2011年度と異なるのは,宿題の自己紹介を書かせる前に,前 年度のビデオレター(資料1,2,3)を視聴させた点である.
4.1.2.授業構成
1通目のビデオレター制作はCALL教室で行った.参加学生は3時限クラスが37名,4時限クラ スが41名であった.90分の流れは,2011年度のビデオレターの視聴(15分),音読練習と撮影・保 存(80分),回収(10分)である.学生には前期にwebカメラを使用した課題を定期的に与えてい たため,webカメラの操作方法の説明を90分から省くことができた.音読練習は3.1.3と同じである.
撮影は,日本語,スペイン語の順に行わせた.
4.1.3.ビデオの確認
学生から回収したビデオの確認は3.1.5で述べた条件で行った.4.1.1で学生に2011年度のビデオ レターを視聴させ,具体的にビデオレターがどのようなものかをイメージさせることで,前年度より もビデオの完成度が高かった.また,音声が小さいなどの操作上のミスも少なかった.判断基準をク リアしたビデオも増えて,3時限クラスで13本,4時限で7本になった.20本の内,スペイン人へ の質問が被るビデオがあったため,日本語が聞き取り易いものを選んだ結果,3時限で9本,4時限 で6本のビデオをビデオレター用として選ぶことができた(資料5).
ビデオレターで学生が使用している文法項目は,ser動詞, 現在形の規則動詞と不規則動詞現在
(conocer,saber,tener,jugar, tener ),gustar動 詞 で あ っ た.2011年 度 の 1 通 目 の ビ デ オ レ タ ー と 比 較 す る と,2012年 度 の ビ デ オ レ タ ー で は,“Me gusta EXILE.( 私 はEXILEが 好 き で す )”,
“¿Conoces a Arashi?(嵐を知っていますか?)”のように学生が好きな歌手,また具体的に”Me gusta
el balonmano.(私はハンドボールが好きです)”などサッカーやバスケットボールといったスポーツ名,
“Me gusta Naruto.(私は『ナルト』が好きです)”などマンガのタイトルが挙げられていた.筆者は,
ビデオレターをGmailの添付ファイルで数回に分けて,レオン大学の日本語の教員に送った.
4.1.4.レオン大学側の受信
ビデオレターを受け取ったレオン大学の日本語の教員は,担当するクラスで学生にビデオレターを 見せた.当初は,ビデオレターを中上級者向けの宿題としていたが,日本側から前年度よりも多いビ デオレターが送られてきたため,中上級クラスだけでは人数が足りず,やる気のある数人の入門クラ スの学生にもビデオレターを課題として与えた.方法として,まず,学生自身に気に入ったビデオレ ターを選ばせて,個人的にメッセージを送る形でビデオレターを作成させた.人気の高かったビデオ レターは,マンガについて語っていたもの,笑顔で話していたものだった.日本側から送られてきた ビデオレターは15本であったが,ビデオレターの希望者が16名になったため,日本人1人の学生
- 100 - に2人のスペイン人がビデオレターを送るこ
とになった(資料6).レオン大学の学生は,
主に自宅でスマートフォンの動画機能を使用 して,スペイン語と日本語の順に,各自ビデ オレターの撮影行った.その後,レオン大学 の教員が学生からビデオレターを回収して,
オンラインストレージサービスのDropbox16 に筆者との共有フォルダを作成し,ビデオレ ターをアップロードした(図5).
4.2.2 通目のビデオレター 4.2.1.導入
こちらからビデオレターを送ってから約2週間後,Dropboxの共有フォルダには,レオン大学から の16本のビデオレターがアップロードされた.個々のファイルには,沖縄国際大学の学生15人の名 前と誰から送られたビデオレターであるかが明記されていた(図5).ビデオレターは,受け取った その日に,普通教室でプロジェクターを使用して,学生に視聴させた.“Hola, ▲▲▲ san.(こんにちは,
▲▲▲さん)”と,スペイン人に自分の名前が呼ばれて驚く者や大はしゃぎする者,また,ビデオに 映るスペイン人に「カッコイイ」「可愛い」など言って興奮する者などがいて,教室は大盛り上がり であった.また,スペイン人が日本のアニメグッズを見せたり,バックミュージックにEXILEの曲 をかけたりするなど,映像にいろいろと趣向を凝らしていたため,クラス全員が16本のビデオレター を終始楽しみながら鑑賞することができた.普通教室では,視聴のみにとどめ,撮影は,後日CALL 教室で行うことにした.自分宛てのビデオレターをもらった学生は,撮影までに,相手に返事を書く こと,また,それ以外の学生は,ビデオレターの中から,興味のある話題を語る人を1人選び,その 人に返事を書くことを宿題にした.
筆 者 はWindows Live ム ー ビ ー メ ー カ ー を 使 用して,動画にスペイン語字幕を付けた.その 際,沖縄国際大学の学生の個人名は字幕から省い た.また,動画には,“Ninomiya es la persona que más me gusta de Arashi.(二宮は嵐の中で私が最 も好きな人物です)”など未習範囲であった最上 級の表現,またビデオレターと並行して学習して い た“Ahora estoy intentando leer en japonés “Blue
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ᅗ㸳 ᅗ㸳図5 Dropboxの画面ࡢ⏬㠃
Exorcist.( 今,日本語で『青の祓魔師』を読むことに挑戦しています)”のように現在進行形が多く 含まれていた.そのため,学生の理解を助けるために,日本語の動画もそのまま残した. 編集後に動 画をWMV型式に保存して,CaLabo LMSにアップロードした(図6).
4.2.2.授業構成
事前に学生には普通教室でビデオレターの全てを視聴させ,なおかつビデオレターの動画もLMS にアップしていたため,CALL教室では90分の全てをビデオレター制作時間に当てることができた.
参加人数は3時限クラスが34名,4時限クラスが39名であった.スペイン人から自分宛てのビデ オレターがあった15人は,必ず相手に返信ビデオを送信できることが約束されていたため,撮影前 には念入りに音読練習を行っていた.また,その女子学生の一部は,ビデオレターの相手に自分の 変化を気づいてもらおうと髪型やファションを変えてきたり,普段より少し濃い目に化粧をしてき たりして,レオン大学との交流に臨む女の子らしい表情も見られた.また,前回ビデオレターが送 られなかった学生も,今回は自分のビデオがビデオレターとして選ばれるように,真剣に撮影を行っ ていた.
4.2.3.ビデオの確認
学生から回収した全てのビデオを確認したとこ ろ,自分宛てのビデオレターがあった15人の学生 のビデオ(資料7)には,様々な特徴があった.
まず映像に,グッドサインのジェスチャーを交 えて話したり,ビデオレターの相手が好きなマン ガのイラストを自分で描き,それを見せたりする 場面があった(写真5).また,相手が同年代の女 の子だと知り,日本語で「▲▲ちゃん,こんにちは.」 と呼びかける学生もいた.これら15人の学生がビ デオレターで使用した既習項目は,ser動詞, e s t a r
動 詞 , 現 在 形 の 規 則 動 詞 と 不 規 則 形 現 在 (querer,recordar,recomender,probar,conocer,
decir),現在完了形,目的格人称代名詞,過去未来形の婉曲の表現であった.また,ビデオレターの
撮影の直前に学習した現在進行形も“¿Por qué estás estudiando japonés?(なぜ日本語を勉強していま すか?)”のように上手く使用されていた.同様に“Ven a Okinawa una vez.(一度,沖縄においで)”,
“Pruébalos algún día.(いつか沖縄料理を試してみてね)”と命令文も含まれていた.2012年度のビデ
オレターは,LMSでe-ラーニング教材としてアップロードされていたため,学生は何度も繰り返し 見ることができた.ビデオレターは,スペイン語には字幕が付き,加えて,日本語で同様の内容を 話す映像があるため,再生を繰り返す内に,スペイン人が使う表現を覚えることができたのであろ
写真5 沖縄国際大学の学生の動画
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う.まず,gustarの意味上の主語を強調する際に用いるa mí,a tiがレオン大学のビデオレターに多 く含まれていた.よって 15 人の2通目のビデオレターでは“A mí me gusta Takahiro.(私は(EXILE の)タカヒロが好きです)”のように“a mí”を使用する学生が増えた.また,レオン大学のビデオレ ターにあった“Mis personajes favoritos son Han Solo, Yoda, Darth Vader y Ron Weasley. ¿Cuáles son tus personajes favoritos?(私のお気に入りの登場人物は,ハン・ソロ,ヨダ,ダースベイダー,ロン・ウィー ズリーです.君のお気に入りの登場人物は誰ですか?)”をお手本にして,“Mi personaje favorito es Begita. ¿Cuál es tu personaje favorito?(僕のお気に入りの登場人物はベジータです.君のお気に入り の登場人物は誰ですか?)”と真似る学生もいた.さらに,”Qué manga es el más famoso en España?(ス ペインで一番有名なマンガは何ですか?)”などの未習項目であった最上級の表現を取り入れる学生 もいた.このことから,ビデオレターをeラーニング教材にすると,学生に未習項目や使い慣れない 表現を学ばせることができると分かった.加えて,レオン大学のビデオレターも,筆者の授業でも触 れなかった比較級を使って,”Yo canto One Dirección más que otros artistas extranjeros.(私はワン・ダ イレクションを他の外国人アーティストより歌います)”と語る学生もいた.ビデオレターでは,相 手とのコミュニケーションをより深めるため,学びへの積極性を高める効果があると言える.15人 の学生の主な文法の誤りは,数の誤り,冠詞であった.特に大きな誤りは,1人の学生が間接目的 語のmeとteを混同して使用したことである.「君は日本の映画を見るのが好きですか?」を“¿Me
gustan las películas japonesas?”と使うと,意味上の主語が異なり,意味は通じない.そのため,本来
なら,交流用のビデオレターとしては外すべきものである.しかし,本人宛てに届いたビデオレター の返信であるということ,また,日本語をはっきり正しく発音されているということで,このビデオ も送信用のビデオレターに加えた.2通目のビデオレターを見て感心したのは,日本人には難しい
saberとconocerを使い分けに誤りがなかった
ことである.saberとconocerは,1通目のビ デオレターで誤りが多く,レオン大学からも 指摘された.そこで,2通目のビデオレター の撮影前に,筆者は使い分けを説明した.15 人の学生に誤りがないのを見ると,個人的な やり取りを行うために,説明をよく聞いてい たということなのであろう.学習に対しての モチベーションの高さが表れていると言える.
15人の学生が作成した16本のビデオレ ターに加えて,他の学生からも3.1.5の条件 で31本を返信用のビデオレターとして選ぶ ことができた.47本のビデオレターは,4.1.4 でレオン大学の教員が筆者にビデオレターを
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ᅗ㸵 ඹ᭷ࣇ࢛ࣝࢲࡢࣇࣝࡢ୍ぴ 図7 共有フォルダのファイルの一覧
送信した同様の方法で,ドロップボックスで共有フォルダを作成して,ビデオのアップロードを行っ た.フォルダ内にはレオン大学の学生宛に16人の名前でフォルダを作り,ビデオファイルをフォル ダ別に入れた(図7).また,個々のフォルダ内を2つに分けた.1つは,15人の学生のビデオファ イル,もう1つは,「otros (その他)」と名前を付けたフォルダで,15人の学生以外のビデオファイ ルをまとめて入れた(図8).
学生がビデオレターを作成したのは,後期の最終 日であった.そのため,レオン大学には,2通目の 返信ビデオレターを作成した場合,相手の学生に渡 すことは可能であるが,3通目以降はクラス単位で 行えず,個人単位になると伝えた.もし,個人的に やり取りを希望する学生がいれば,メールアドレス などを筆者に伝えてほしいと付け加えた.このこと は,筆者のクラスの学生にも話していた.筆者は,
スペイン人と今後も交流を続けたいと希望する学生 4人からメールアドレスを預かっていたため,レオ ン大学の教員に送った.
4.2.4.レオン大学側の受信
ビデオレターを受け取ったレオン大学の教員は,すぐに日本から送られてきたビデオレターをクラ スで見せた.沖縄国際大学の学生の話す話題が,個人的な返事や,クラス全員に興味がある映画やマ ンガの話題であったため,1通目のビデオレターよりもさらに興味深く視聴していたそうだ.だが,
日本側のスペイン語のコースが終了するため,クラス単位でやり取りが継続できないと教員から伝え られると,学生は残念がっていたそうである.
2012年度の往復ビデオレターは,沖縄国際大学側では,オーディエンス(ビデオレターの相手)
の反応を気にして,表情や表現を含めビデオレターの内容が飛躍的に向上した学生,さらに僅かでは あるが,今後の個人的な交流を希望する学生も出てきた.レオン大学側では,興味を持った相手とビ デオレターを直接送受信できたことが好評であり,ビデオレターの継続を願う声があった.このこと から,往復ビデオレターの活動は,前年度よりも前進したことが分かる.
4.3.学生からのフィードバック 4.3.1.アンケート結果
以下に,2012年度に行ったビデオレターに関するアンケート結果や感想(資料8)を基に,今年 度に取り組むべき課題を整理する.アンケートは,クラス別,ビデオレターの返信の有無で結果を分 けた.前年度の各クラスの平均値を基に,前年度と比べて数値が上がり,ビデオレターのアクティビ
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㈨ᩱ㸶 ᅗ㸶 ࣇ࢛ࣝࢲෆ 図8 フォルダ内
- 104 - ティの改善が図られたことを示すものには網かけで記した.
アンケートの実施日はスペイン語IIの最終講義の2013年2月17に行った.対象者は英米言語学 科在籍する3時限クラスの学生31名,法律・地域行政・人文福祉学科在籍する4時限クラスの学生 37名であった.
設問1.ビデオレター活動は楽しかったですか?
(1:全然楽しくなかった,5:とても楽しかった)
[学生全体]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 3 2 26 4.74 +0.19 4時限クラス 0 1 8 16 12 4.05 -0.11 [ビデオレターの返信があった学生]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 0 0 9 5 +0.45
4時限クラス 0 0 1 3 2 4.17 +0.01 [ビデオレターの返信がなかった学生]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 3 2 17 4.64 +0.09 4時限クラス 0 1 7 15 11 4.06 -0.1
設問2.スペイン人の話すスペイン語は理解できましたか?
(1:殆ど理解できなかった,5:よく理解できた)
[学生全体]
1 2 3 4 5 無回答 平均 前年比
3時限クラス 3 9 5 0 14 0 3.42 +0.09 4時限クラス 4 15 13 0 4 1 2.58 -0.9 [ビデオレターの返信があった学生]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 2 3 2 0 2 2.67 -0.65 4時限クラス 2 1 1 0 2 2.83 -0.65 [ビデオレターの返信がなかった学生]
1 2 3 4 5 無回答 平均 前年比
3時限クラス 1 6 3 0 12 0 3.73 +0.41 4時限クラス 2 15 12 0 4 1 2.67 -0.81
設問3.実際にビデオレター活動を行って,スペイン語の学習効果を感じましたか?
(1:殆ど感じなかった,5:強く感じた)
[学生全体]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 2 7 22 4.65 +0.33 4時限クラス 0 1 4 16 16 4.27 +0.14 [ビデオレターの返信があった学生]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 0 1 8 4.89 +0.57 4時限クラス 0 0 2 3 1 3.83 -0.3 [ビデオレターの返信がなかった学生]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 2 6 14 4.55 +0.23 4時限クラス 0 1 2 15 16 4.35 +0.22
設問4.ビデオレター活動の回数をもっと増やした方が良いと思いますか?
(1:思わない,5:思う)
[学生全体]
1 2 3 4 5 無回答 平均 前年比
3時限クラス 0 0 0 0 31 0 5 +0.19
4時限クラス 4 0 0 0 32 1 4.56 +0.09 [ビデオレターの返信があった学生]
1 2 3 4 5 無回答 平均 前年比
3時限クラス 0 0 0 0 9 0 5 +0.19
4時限クラス 0 0 0 0 5 1 5 +0.53
[ビデオレターの返信がなかった学生]
1 2 3 4 5 平均 前年比
3時限クラス 0 0 0 0 22 5 +0.19 4時限クラス 4 0 0 0 29 4.52 +0.05
3時限クラスでは,設問の全てにおいて2011年度に比べて数値が高いため,活動が改善されてい ることを示している.設問3の学習効果は最も数値が上がっているため,学習効果を感じた学生が増 加したことが分かる.特に,スペイン人からビデオレターの返信のあった学生の数値は,設問1,3,
4で,3時限クラスの平均よりも高いため,より満足したことが推測できる.唯一,平均値が低かっ たのは設問2である.これに関しては,資料8の感想を考察すると,ネイティブスピードが想像以上
- 106 -
に早く,字幕や日本語に頼ってしまったため,自己反省としての数値の表れだと考えられる.相手か ら直接自分宛てにビデオレターが届き,返事を書く必然性に迫られたため,スペイン語の聞き取りを 集中して行った学習への取り組みの実態が反映されたのであろう.この設問2に関しては,4時限ク ラスのスペイン人からビデオレターを受け取った学生も同様の傾向があることが分かった.以上のこ とから,3限クラスでは,結果として僅かな数値の変化ではあるが,全体的に2011年度よりもビデ オレター活動は改善されたと言えよう.
一方,4時限クラスでは,クラス全体,またスペイン人からビデオレターの返信があった学生の 結果を見ても,2011年度との改善度が分かりづらい.ビデオレターを楽しかったと答える学生も
+0.01であるため改善効果に大きな変化は見られない.これは,おそらく3時限クラスはビデオレター
が返信された学生の割合がクラス全体の29%を占めていたのに比べ,4時限クラスは全体の16%に 留まっていることが原因かもしれない.また,設問3の学習効果では,ビデオレターの返信があった 学生の方が,2011年の平均よりも-0.3,さらに返信がなかった学生と比べても-0.52低く,学習効果 を感じない学生が増える結果となってしまった.しかし,設問4でビデオレターの回数をもっと増や した方が良いかという問いに対しては,返信があった学生は2011年度より+0.53と高い数値となっ ている.また,クラス全体でも+0.09と僅かではあるが,ビデオレターの複数回のやり取りを希望 する学生が前年度よりも多いことが分かった.資料8,資料9のビデオレターに対する感想を見ても,
3時限クラスと変わらない肯定的な感想が書かれている.これを考慮すると,今後,ビデオレターの 交換回数を増やすこと,あるいは直接やり取りをする人数を増やすことで,活動の改善が図られるの かもしれない.
5.おわりに
これまで2011年度と2012年度に行われた往復ビデオレターの活動について見てきた.両年度とも に,1通目のビデオレターに比べると2通目は動詞のバリエーションや内容が充実することが分かっ た.特に,2012年度の直接スペイン人から返信があった学生の2通目のビデオレターには,それが 顕著に見られることから,モチベーションの高まりが,学習姿勢に変化を及ぼすことが分かった.今 後,直接,相手と複数回のビデオレターのやり取りを行うことが可能であれば,学生のスペイン語力 は着実に伸びることが推測できる.
そのためには,2つの課題がある.まず,1つ目の課題の実施時期である.本稿で述べた実施時期は,
学生にある程度の動詞の運用力が身に付く後期の後半である.だが,そこから始めると交換期間は約 1カ月程度しかない.そのため,2013年度は,複数回のやり取りを行うことを優先にして,後期の 授業開始後すぐにビデオレター活動を始めることをレオン大学と決めた.10月から始めると,1月 末までには5回程度の往復ビデオレターができる予想である.後期開始後すぐにビデオレター活動を 導入できるように,今年度は前期から頻繁に、パソコンやスマートフォンの動画撮影機能を使用して、
自らを語るトレーニングさせている.
- 107 -
次に,2つ目の課題が,両大学の人数の差である.レオン大学の日本語クラスは初級,中級,上 級の3クラスの学生を合わせて約50人である.しかし,実際にビデオレターを行えるのは,主に中 上級レベルの学生であるため,実際はこれよりさらに少ない数となる.筆者の担当するスペイン語II では3時限クラスと4時限クラスの学生数の合計が例年約80名であるため,レオン大学と人数の差 が大きく,学生が望むような1対1のやり取りをクラス全員に行わせることは困難である.そこで,
2013年度は往復ビデオレターを1対多で行い,その問題解決を図ることにした.つまり,人数の少 ないレオン大学の学生1人に対して,沖縄国際大学は数人の学生をまとめてグループを作り,個人対 グループでやり取りさせるのである.グループ数はレオン大学の希望者数で決まるため,まずビデオ レターをレオン大学から送信させる.沖縄国際大学では送られたビデオレターの数を基にグループ分 けを行い,グループ全員で興味のあるビデオレターを1つ選ぶ.その際,選んだビデオレターの相手 とビデオレターを交換するという方法である(図9).この方法であれば,グループの形ではあるが,
クラス全員が相手と複数回のやり取りを直接行うことが可能となる.これにより,両クラスにおける ビデオレター活動の満足度も上がり,学習効果も前年度よりも高まるのではないかと思う.さらに,
やり取りの回数が増えると,各グループの学生の趣味や関心事について,詳しく紹介することも可能
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図9 往復ビデオレターの方法(2013年度予定)
- 108 -
になるため,ビデオレターの内容はより充実するようになる.そうなると,これまではCALL教室内 だけで行っていた撮影を,紹介する内容によっては,スマートフォンの動画撮影機能を使用して,大 学,町,家など教室外の映像も登場するようになるかもしれない.また,レオン大学からも同様の映 像がビデオレターとして送られてくるのであれば,学生のモチベーションも上がり,スペイン語また スペインに対する興味はさらに深まるであろう.
2013年度のビデオレター活動に関して,また追って報告したいと思う.ビデオレター活動の継続が,
学生にとってグローバル社会における異文化間コミュニケーション能力を身に付ける契機になっても らえれば幸いである.
謝辞:本研究をするにあたり,2011年度のビデオレター活動に関して2012年春のCALL講習会にて 発表する機会を与えて頂いた沖縄国際大学・外国語センター長李イニッド教授,副センター長尚真 貴子准教授,筆者また学生の技術的サポートをして頂いた同大学のCALL管理室スタッフ松川知加 さん,共にプロジェクトを進めて頂いたレオン大学・日本語教師 今村梨沙先生に感謝の意を表したい.
参考文献
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