The Japanese Society for Plant Systematics
NII-Electronic Library Service
The Japanese Sooiety for Plant Systematios
May , 1962
Acta
Phytotax
.Geobot
. 99日 本 産 ア リ ド オ
シ 属 植 物
の 分 類 に
つ い て高
橋
真
太郎
Shintaro
TAKAHAsHI
:On
the classification of l)amnacanthus今か ら約
30
年 も前, 植 物 分 類 地 理 学 会 が 漸 く発 足した頃の こ とである。 こ の頃, 僕はア リ ドオシ 属 植物に 興味を抱い て い た。
その 原 因は本 草書で こ の属の 植 物の 根を漢薬 ・巴戟 天 (Pa − tie−t‘ien) の 基 源 とす る説を読み,あ れこ れ 採 集して 廻 っ てい る間に, 京 都の 東山,清 水 寺の 山 地で,全 く ジ = ズ ネ ノ キの 名に適わ しい Damnacanthus の 一種を得たこ とであっ た。
巴戟 天とい う薬 材は神 農 本 草 経に 収 載さ れて以 来,現 代まで中国で はずっ と用い ら れて お り 日本に も 少 量で はあるが輸入 さ れてい る漢 薬であるに も拘 らず その 基 源は ほ とんど 全 く不 明の ままで放置されてい る もの の 一つ である
。 江 戸 時 代 中 期に 日本の 本草 家に よ っ て 彼 我の 薬 材の
比 定 , 考 証が 盛 ん と な っ た頃, 平賀源内1)はこ の ジ ュズネ ノ キ を もっ て真の 巴 戟 天の基 源 と し た。 その後,小 野 蘭 山2)は こ の 平 賀 説を非 としてヒ メハ ギ科の Poiygala reinii FR ・et
SAv
・(カキ ノバ グサ)を 巴戟天の 一種で あ るとする説を建 てたの で あ る
。 その 説は 双方ともに岩 崎
灌園の本草図譜な どに 引用 さ れ てい るの で あるが, 僕は その い ずれ が 正 しい のか を知る た め ,
当 時入手した 中 国産 の 巴戟 天 とい う生薬とヵキ ノバ グサ そ れにジ =ズ ネ ノ キ属の 根を比 較 剖 見 して み た とこ ろ,双方ともに 巴戟 天の 構造 とは 一致しない こ とを 知っ た。それ以来, 僕は絶 え ずこ の 基源 植 物の こ と が頭 裡の 一部で執 拗に ご び りつ い てい たの で ある が,何れに ぜ よ,中 国
で も華 南の産で あ るだけにその 基 源植物の 入手は ほ とん ど 不 可能で漠 として 把み得ない 状態で 過 ぎて し ま っ た。 1958年に な っ て中 国 科学院・華 南 植 物 研 究 所の 候 寛 昭 (
Act
・Phytotax ・Si『nica
7
,(4
), 325,1958
)に よっ て 巴戟 天の基 源 植 物 は Rubiaceae の Morinda の 1新 種でM
.othcinalis How .であ る と し, その 分布は現 代で は 広 西 〜 広 東 (海南 島を含め て)〜四川 福 建であ るこ と,その 根ば念 珠 状に肥厚するこ と,一種の 蔓 性 灌 木で, 常 緑 植 物であるこ と な どの 特 徴は 宋の 図経本草の説に よ く符 合 す るこ とを証 明した。 饌ら3)はこれ に基い て再び 巴戟 天 を剖 見し そ れに 関 す る構 造上 の 特 徴を明か に した が, こ れは本 題か ら逸 脱 するの で こ こ で は
省 略 する。 この 剖見に よ っ て, 平賀源 内がジ = ズ ネノ キの根を 巴天とする説は誤 りで あ るこ と
は更に明確になっ た が, 彼の い うジ 」 ズネ ノキが 一体何を指す もの か とい う点と, こ の 属の植 物は互に その 種と し て の 特 徴が近似し てい るの で これを どの よ うに分 類 すべ きか とい う新しい
問 題に 興味を抱くよ うにな っ た。 それ と同時に牧野 富 太 郎 博上 が,
・日本植物図 鑑 (増 補 版,第 341図 )に ジ =ズ ネ ノキ と図 説してい る もの は平 賀 源 内の 指すジ ュ ズネ ノキ とは異っ た もの であ る とい う見解に た た ざ る を得 ない 事 実を知 っ たの で あ っ た。 牧野 博士 は その 図の解 説で 「じゅ ず ね の きノ 図ハ 本 草 図 譜並 二 物 類 品,二 在 リ テ卵 形 葉 ヲ呈セ ル 老ナ リ・是 レ決 シ テ
D
・mac 「o國 phyllus SIEB ,ニ ハ 非ズ, 和名ハ 其 根 数 珠 状ヲ成ス ヲ以テ斯ク名ケシ ト雖モ 此ノ如キ状ヲ呈 スル 者ハ 殆 ン ド之レ 無ク偶マ 単二 多少 彷 彿 トシ テ其状ア ル ガ如キ者 ヲ認ム ル ニ 過ギズ」とあるの 1) 平 賀 源 内 ;物 類 品 隲, 第3巻,草 部 (1763)
2) 小 野 蘭 山 ;本 草 綱 目 啓 篆,第 8巻,山草類上 (1844)
3)高 僑 真 太 郎,朝 倉 敏一,鷲見 府 子, 薬学 研 究 33,244(1961)
N工 工一Eleotronio Library
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100 Acta
Phytotax
.Geobot
.Vol
.XX
は , むし ろ牧 野 博士 の よ うな碩学の 人と しては納得し難い 言 葉であ り, 牧 野 博士 がこ の図 鑑で
ジ ュ ズネノ キとした もの と平賀源 内が物 類 品 隲で ジ ;ズネ ノ キ と した もの は 別物で ある こ と, す なわ ち牧野博士 の ジ ュ ズネ ノ キは いわ ゆるニ セ ジ ュズネ ノキで あるこ とを 指 摘 するこ と がで
きる。 もっ とも, 物 類 品 隲の図は針 状 小 枝が少し長 く描 きす ぎてい る よ うで は あ る が, その根 部は 明か に 数 珠 状を呈 して お り, ま た本草図譜の じゅ つ ね の 木とするもの は その描写が 拙い が 葉 形は 共に 同一植 物で あるこ と を想わ しめ る
。 こ れらの 本草 家の ジ ェ ズ ネノ キ とす るもの を 最
近の 分 類 学上の 種に 求め る と そ れは小泉 源一博士が
, 京 都 市東山清 水 寺境内で得た もの に 命 名 し た ・7 ル バ ジ
= ズネ ノ キ
Damnacantus
moniliformisKolDz
. inAct
. Phytotax .Geobot
.III
,159
,1934
が最 も適わ しい 。こ の もの は, 葉 形だげをみ る と
D
,major に極め て似て い るが, その 刺針は 5mm 以下で ときに は退 化 し て 2〜3mm
に し か 達せず, 小 形 葉 も 早 落 性で ,残 存 した もの も発 育が よ くない。
D
. macrophyllus に比 較 してその概 形は 甚だ よ く似て い い る が, 大 形 葉は 円 み を帯び 広 卵円形で,基 脚 も円く, 全体と し て小形であっ て,こ の形 態は産 地に よ っ て ほ ぼ一定 とし て お り,根 部は著しく念珠状に肥厚 す る。
原 寛 博 士 (日本 種 子 植 物 集 覧 ∬,
4
,1952
)および大 井 次三郎博士(日本 植物誌, 1086, 1953)は こ の種を独 立 種 と認めず,
D
. major の一変 種 と して取 扱い,
D
, major var . moniliformisHARA
と してい る が,以上の 特徴か ら み て, macrophyllus の変 種 とし た方が妥 当と思 う。 小 泉 源一博士 (Act . Phyt .Geo
. III,160
,1934
)は沖 繩か ら台湾にか けて 分 布 する ア リ ドオ シ に極め て類 似す る もの に ,
Tetraplasia
(REHDER
inJourn
.Amold
Arboret
.1
, no .3
,190,1920)を適用 して, その 特徴として, 若枝が 無 毛で, 刺 針を欠 き, 葉 柄が長 く, ア リ ドオ シ 属の もの よ り花 梗 もや や 長 く, 果 実 も 長 円 形である と してい る が, こ れ らの もの は刺 針の ない に 拘らず,根は念 珠状に 肥 大 しな い か ら, Damnacanthus とは別に扱 うのが妥当の よ うに考え る。
以 上の 諸 点か ら, 日本の ア リ ドオシ , ジ ュ ズネ ノ キ の類を整理 してみ る と 次の よ うにな る。
Damnacanthus
GAERTNER
fi
韮.Damnacanthug
indicusGAERT
. fii. ア リ ドオ シvar . microphyllus
MAKINO
ヒ メ ァ リ ド オ シvar . formosanus NAKAI タ イ ワ ン ァ リ ド オシ
Syn
.1
), indicus var . ovatus KolDz . (タマ ゴバ ァ リ ドオ シ)Damnacanthus major
SIEB
. etZucc
. ニ セ ジ ュ ズネ ノキ (誤 称ジ ュズネ ノ キ) var. parvifoliusKolDzuMI
コ ノ9ノ ニ セ ジ =ズ ネ ノ キvar .
lancifolius
OHWI
ホ ソバ ノニ セ ジ ュ ズ ネ ノキ va「. oblongusKoIDzuMI
コ バ ン/Rニ セ ジ =ズネ ノ キDamnacanthus
macrophyll 皿s SIEBOLD ジ ュ ズネ ノキvar . parvispini8 (
KolDzuMI
)TAKAHAsHI
comb . nov .マ ル バ ジ ュ ズネ ノ キ
Syn
.D
. moniliformisKolDzuMI
inActa
Phytotax
。 (日本の 本 草 家の 巴 戟 天 ) Geobot . II, 225 (1933), III, 158 (1934).D
.初 のoグ var .parvispini
.sKoidz
.三nTokyo
Bot
.Mag
.XXXIX
,4
(1925
). (オ オ シ マ ァ リ ド オシ )
1
).minut ’isPinis
KoIDzuMI
in
Acta
Phytotax
.Geobet
。IV
,158
(1935). (ビシ ンニ セ ジ = ズネ ノ キ)va 「・9iganteus
KolDzuMI
オ オ バ ジ ュ ズ ネ ノ キN工 工一Eleotronio Library